connect   作:苺のタルトですが

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王子(仮)達はどうやら海王類に船を襲われたらしい。

運が悪かったとしか言えないので仕方なく船を引っ張る事になる。

マイへ何かを呟いた後の王子の身の翻し方は見物だった。

必死にそちらへ行かせてくれだとか、挨拶をしたいだとか。

兎に角マイと話したがった。

それを理由に住所、身元不明の男など船に上げるわけもなく船越しでの会話ばかりとなる。

王子は思い出したようにデレデレとなるが、ヨーコとリーシャには我が儘のままだった。

マイが居るとまだマシ、程度だ。

 

「余が何故床で寝なければならぬのだ!」

 

「……ね、鬱陶しくないあの自称王子」

 

ヨーコが面倒臭そうに言うのでマイも同意して三人でこそこそ言い合う。

最初、船を繋ぐ時に王子は無断でこちらへ渡ろうとしたので無言でナイフを取り出して結んだロープを切ろうとしたら兵達が蒼白な顔で止めに入っていた。

分かりやすい命のやり取りである。

もしロープが切れたら王子は助かっても兵は助からないと理解している辺り常識があって良かった。

この王子の為に船と共に沈むなんて忠誠心の持ち主だったら無理だっただろう。

一応食料は無事だと言うので向こうは向こうで非常食を食べていた。

その折り、またあの王子(仮)が「何故そっちの食べ物を寄越さぬ!余は王子だぞ!」とテンプレートな台詞を吐いたが誰も反応する事はなかった。

一々反応するのも疲れたのだ。

 

「何故船は難破したのに国へ助けを求めないのですか?」

 

「無断で抜けて来たからです」

 

「つまり、プライドのせいです」

 

兵が王子の馬鹿っぷりを暴露し、電伝虫を海へ放り投げたらしい。

何て馬鹿なんだと思わずにはいられない。

つい同情の目で見てしまい兵士は顔を赤くし俯く。

幸い、王子達の国がある島はログポースの示す次の島らしいので少し遅くなるがそこへ送り届けられるのは確定となる。

せめて次の島で縁が切れればと思っているが、何か嫌な予感がしてつい手元にあるナイフでロープを切ろうかと脳裏を過ぎた。

ハッと意識を取り戻して取り付ける作業を終えた後はお昼の時間も過ぎて夕食の時間に差し掛かっていたので準備をしたという経緯なのだが、どうも王子がとても五月蠅くて食事が進まない。

三人で愚痴り合いつつ食べ終えると外の様子を見に行く。

見た所エンジンがやられているし、所々ボロボロだが帆や寝る所はちゃんと確保出来るスペースもある。

これならこちらへ乗せる必要もない。

安堵しつつ、しかし、こちらにいつ無断で来るか分からないので二人に自分は今日は見張っておくからと告げて外へ出る。

交代でと言うことで納得させたが、二人は心配し過ぎだと思う。

主にリーシャに対して。

大丈夫だと言っても信じているという手応えが微塵にもない。

二人の心配している顔が思い浮かびついつい笑ってしまう。

 

(こんなに心配されるのって初めてかも)

 

二人は異世界から来たと言うのに、この世界に馴染もうとしている。

そして、この世界で生まれたリーシャはあまり馴染もうと感じない、しようと言う気がしない。

ローに生きる気力がないからだと指摘された。

ドキリとしたし、事実だ。

この世界は自分にとって至極生きづらい世界と言っても過言ではない。

マイとヨーコは結構楽しく生きているようで何よりだ。

三人で旅をしようと言って、こうやって外へ航海に乗り出してはいるものの二人にはこれと言った目的もない。

目標もなければ目指すものもない。

 

「…………私は…………夢、ないなあ」

 

儚い声が出てしまった。

慌てて周りを見てから誰にも見られなかった事を確認してから安堵の息を付く。

考え事をしている時ではないと思い直してから向こう側にある船を見る。

 

「危ないな……火の気?キャンプファイヤーじゃないんだからさあ…………」

 

多分王子らへんが暗いから明かりを灯せとか言ったのではないかと推測する。

兵達も苦労してそうだ。

帰れる事が確定したから王子もこうやって余裕で火を囲めるのだと自覚しない。

いっそもう置いていってから迎えにきた方が教訓になるのではないかとさえ思う。

不寝番をする為に此処へ座って船の様子を日が明けるまで監視して、交代だと言われて振り向くとヨーコが居た。

 

「あっち、どんな感じ?」

 

船の上でキャンプファイヤーしてた、と伝えるとヨーコは顔をしかめる。

 

「は?あいつら馬鹿なの?消し炭にそんなになりたい感じ?それとも早死に?兎に角、こっちに移らなくて良かったわ」

 

ヨーコは一頻り言うと交代の場所である所へ座る。

リーシャは寝ようと自分の就寝場所へ向かった。

 

 

 

起きるとマイ達がお昼ご飯を作っていた。

 

「あの王子マジでうっさいんだけど!」

 

「かなり我が儘が過ぎますね……」

 

扉越しに聞こえて扉を開けると調理中の二人がこちらを向いて朝の挨拶をする。

もう昼だが、海においてそんな些細な事は関係ないのだ。

愚痴が昨日より悪化しているのを感じて尋ねると、良くぞ聞いてくれました!とマイ達が顔を緩める。

此処まで怒らせるなんて王子は何をやらかしたのだろう。

 

「マイの手作り料理が食べたいから作れってさ!誰が作るか!船に生えてるカビでも食っとけ!」

 

「船を引いて助けているだけでも私達、結構時間がかかってるのが分かっていないみたいですね……」

 

本来、この船は半日前に島に付いている予定だったが、船を引いている為にスローな進行となっているのだ。

マイは悩ましげに困ったと眉根を顰める。

 

「ほら、ご飯出来たわよ」

 

テーブルに置かれていく彩りのサラダ。

 

「え?何でサラダが此処に?え?私嫌いって」

 

思わず二度見してしまうサラダにリーシャは狼狽する。

マイとヨーコは無言で無視をしてから椅子を進めて来るのでどうにか残してまおうと考えた。

 

「残しちゃいけませんよ?」

 

「あの王子に上げたらどうかな?」

 

試しに提案するとヨーコが憤慨する。

 

「あのクソ王子にやるくらないなら海に捨てた方がマシ!」

 

そこまで言われてしまう王子の株は既に底辺だろう。

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