connect   作:苺のタルトですが

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どうやら人魚の女の子の友人の救出作戦は功を成したようだ。

今はたこ焼きを食べている。

自分は何もしていないからと断ったのだが、友達の友達なんだからという無茶苦茶なルフィの言葉に渋々出て行って、たこ焼きを食べていた。

こんなに強引なのはあの男以来だ。

 

(あの男………?)

 

誰の事を考えたのだろうとつい首を捻ってしまう。

何か忘れているような気がしたが、それなのかもしれない。

けれど、そこまでして思い出せないのなら思い出さなくても良いのだろう。

 

「ニュー、もっと食えよ」

 

「あ、どうも」

 

はっちん、ケイミーという人魚は人の名前に~ちんというのを付ける。

それに引きずられて言ってしまう。

そう言えば、あの男も屋号呼びだった。

 

(だからあの男って誰?)

 

何度も掠めるその記憶。

良く出てくるその黒いシルエット。

モヤモヤとする気持ち。

 

(あー、なんか意味分かんない………もう何も考えないでおこう………)

 

今は兎に角マイとヨーコ達に生存を知らせるべきではない、だから隠すというミッションで頭が一杯なのでかまけている暇はない。

もぐもぐとたこ焼きを口一杯に詰めて、ただひたすら食べる事に集中した。

 

 

 

***

 

 

 

ハートの海賊団side

 

 

静かに怒りを現したローの手並みの成果により、見事船を奪還。

それにより今は宴であった。

宴をするのは彼女達の「もしかしてリーシャは……」という不安を少しでも払拭させる為の船員達の気遣いだ。

ローは此処までする必要はないと思ったのだが、シャチ達が落ち込む女達をどうにか元気にしたいと言っているのを聞いて仕方なく許可した。

ローとて宴が嫌いな訳ではない。

それに、酔いたい気分だった。

決して彼女達を今回の奪還による起こった戦闘には参加させなかったが、事実を改めて知ってしまった。

どうやら船員達が報告した内容と間違いなく、彼女は海に飛び込み藻屑となったらしい。

自棄酒せずにいられなかった。

酔わずにいられなかった。

何故死んだ。

それをこの数時間で何度も思い、問うた。

 

(ちっ。酒がまずィ)

 

この酒はあの襲った奴らから強奪した酒だ。

既にこの船も次の島へと向かっている。

今更襲われたという場所に言っても亡骸さえ無いだろう。

鮫か海王類等辺が食べている。

 

(何が宴だ)

 

笑う気にもなれない。

だというのにシャチやベポは笑顔を強請ってくる。

そんなに二人の機嫌が取りたいのなら自分達だけですればいいと言えればどんなに楽だろう。

どんな人間だろうと仲間である事は何よりも変わらないので、此処は少しでも協力しとくか、という気持ちになる。

 

(やってらんねェ)

 

しかし、今日は無理だ。

 

『あの女は身投げした………!』

 

命乞いと共に吐き出された言葉が何度も何度もリピートしては脳裏に焼き付く。

耳にも間違いなく残っている。

 

『船から飛び降りた!………俺は知らねェ!』

 

懇願するように、哀れな男の言葉に脳が逆に冷えた。

スッと。

 

「ほら、飲め!飲んで今日は寝ろ!」

 

やんややんやと聞こえてきた。

女達が船員達のいつもより高いテンションに苦笑していながらもきっと感づいている。

きっと、彼女達は理解し始めているのだと思う。

 

『私は、どうなってもいいんです』

 

いつか、そんな事を聞いた。

何かで負った傷を手当している時だっただろうか。

 

『ローさんは優しいですね』

 

何を馬鹿な事をと鼻で笑った。

 

『ありがとうございます』

 

礼を言う前に命を自分で守れと思った。

 

『ロー、さん』

 

情事の時の姿は今でも鮮明に思い出せる。

濃い夜の時間だった。

抱きたいと今も焦がれ始めているのに、もうこの腕にさえ閉じこめられない。

あの声も聞けない。

 

「さん………船長さん?」

 

いつの間にか呼ばれていたのに気が付く。

顔を上げるとマイが眉根を下げて困ったという顔で口元を緩く上げていた。

 

「船を取り返して下さりありがとうございました。これでまたリーシャさんと旅ができます」

 

マイは現実から目を背ける選択肢をしたらしい。

後ろで酔いつつも聞き耳を立てていた船員達の悔しげで遣りきれない顔付き。

ローはマイをジッと見てから「借りだ」と荒波を立てずという言葉を選ぶ。

そちらがそういう選択肢を取っても何も変わりはしない。

生きていてもいなくても、曖昧なまま彼女達は生きていくのだろう。

 

「いっそもう陸で暮らせばいい」

 

餞別の代わりに投げかけた台詞にマイは無表情になった。

それは一瞬だったが、彼女の堅い意志を知るには十分だ。

 

「………シャボンディ諸島までは乗せてってやる」

 

帽子を被り直して立ち上がる。

そのまま自室に篭もろうと決めたローは後ろを振り向かなかった。

 

 

 

ローが去った後の甲板でマイとヨーコが大泣きしたと後日ベポから聞いた。

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