connect   作:苺のタルトですが

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大会はサポート役でという話しでリーシャも応援する為に通過地点へ向かう。

隣に何故かローが居るのはよく分からない。

スポーツは詳しい専門家でもないので詳細は不明だがマラソンで大切なのはマメな水分補給と持久力、つまりはサポートに大会の続行は託される。

ローも今回は体力があるだろうにサポート役なのは彼曰わく「汗をかく必要性を感じない」かららしい。

まぁ確かに彼が本気で出るとなると一般人には負ける事は恐らくないので、優勝する気がないのであれば出る理由にもならないと感じた。

汗を流して走る姿を想像すると、色気のある汗の方向で思い出してしまいサッと赤面。

 

「顔が赤い」

 

「え!?あ、赤くないっす!」

 

変な反応を起こして顔の前で手を高速で振る。

 

「?、そろそろ始まるな」

 

首を傾げたそうにしていたローはアナウンスに首を違う方に移動させたのでこれ以上何かを探られる事もなかった。

この男とそれなりの男女の関係になってから自分は偶に、稀に意識するようになってしまったらしい。

不覚だ、不純だ。

 

「あ、来た」

 

前を見るとハートの海賊団の船員達がワラワラとやってきた。

流石にマイとヨーコは新米冒険者(?)なので後ろに居るのだろう。

彼等はこちらに気が付いたらしく余裕ぶって手なんて振ってくる。

海賊とバレないように私服で参加しているようだ。

大会が終わったら海軍に待ち伏せされていましたなんてなったら元も子もなさそう、という理由だと聞いた。

 

「はい、お疲れ様」

 

「まだだ、完走するまでが勝負だ。あ、さんきゅ」

 

船員の一人に水を手渡すと去っていく。

船員達の数は少ないのでこちらも気兼ねなくサポート出来る。

当初はマイとヨーコのみのサポートをする為にかり出たのだが、いつの間にか船員達に頼まれてあれよあれよとサポート役に納められてしまった。

釜の中の飯を食った仲だろう、なんて事も言われた。

まあ、暇になりそうだったので受けたが。

次々と通る船員達に水を渡せば各自に得た大会の通過情報が届けられ、マイとヨーコも近々通ると教えられる。

今か今かと待つ間、ローが喉で笑う。

 

「お前が緊張してどうする」

 

「ア、アイドルを待つのと一緒で、緊張すんです……!早く来ないかなあ」

 

待つ間の緊張状態が苦しい。

楽になりたいので目をキョロキョロさせて見る。

ローの方が背が高いので彼にも彼女達が来ていないかと聞いてみた。

 

「お、見えてきた」

 

「えっ、水!用意しますっ」

 

いつもの自分ではないようなテンパり方をしながらワタワタと渡す。

子供の運動会にやってくるビデオ撮り興奮パパと後に二人の少女に例えられるそれをやっていると見慣れた二人が視界に入る。

 

「リーシャさあーん」

 

「待たせたわね」

 

「いいや?ゆっくり自分のペースで走らないとスタミナ切れするしね」

 

「わ、ありがとうございます」

 

水を手渡すと二人はコクンと喉を潤した。

ヨーコがニヤッと笑ってからかってくる。

 

「あんた随分ソワソワしてたわよ?こういうの慣れてないの?」

 

「う、そ、それはその……いや、うーん。いつも一人旅でこういう応援するイベントとか参加もせずにただ傍観に徹してたし、サポート役とか責任あるのは緊張するといいますかね」

 

隠しているつもりでも態度に出ているらしく筒抜けだ。

いつも海では常に危険がないか、自分が先導してこの子達を導かなければならないという使命感に駆られてお姉さんぶっているのでこういった素を見られると気恥ずかしい。

耳を赤くしていると彼女達はそろそろ行くと言って去っていく。

 

「リーシャ」

 

「なな、何でしょう」

 

どもって答えるとローの口元が上がる。

目が意地悪な感じがするのは如何なものか。

 

「そんな顔で上目遣いされたらお前をこれからホテルに連れ込みそうになるから早く火照りを冷ませ」

 

「!?……ば、馬鹿!ローさん破廉恥ぃ!」

 

発言がヤバい。

子供みたいに返すとローはリーシャのほっぺをグニニ、と餅のように引っ張った。

 

 

 

大会の結果、船員達は当然の如く上位に食い込み、マイ達は中間より少ししたという予期していた通りの内容と終わった。

その夜は大会達成という名目を付けた船員達の希望でお疲れ様会的な祝杯を上げた。

シャチが酔って意識が混濁していたりと変わらない光景がそこにある。

マイ達もお酒をリーシャの監視の元、チビチビ飲んでいるのだが、ヨーコが「十九歳でもゴクゴク飲める世界なのに解せない」とぼやいていた。

ヨーコは十九以下なのにそれ程までにお酒を飲みたがる事がこちらにとっては解せないのに不思議な子だ。

 

「酒を飲んだら飲まれるのは常識です」

 

部屋に戻って説教をみちっとやったら眠気も相まってヨーコはコクコクッと頷き根負けした顔で枕に身を沈める。

マイはヨーコのように反抗期ではないので可笑しそうに笑みを浮かべてお説教を聞いていた。

 

 

 

また再び海に繰り出す事になり、中型船はゆっくりと次の島へと向かっていた。

ギッチギッチに縛られた縄はローの能力によりまるでバターのように切れた。

あれだけ頑張って外そうとしていた己の努力を蹴散らす勢いのそれに密かにローを睨んだ。

恨めしい恨みの目線にローが気が付き振り向いたが瞬時に真顔にしたのでバレずに済んで気持ち良くこうして海に乗り出せた。

乗り出す前にローにお約束の壁ドンさん攻撃をされて、秘密裏に行われたそれに真っ赤になった。

彼がああいう事を平気でやるなんて分かっていたが、対象となると心臓が保たない。

咄嗟に此処の船に乗っていた“赤目″のレバリー。

海軍のみにしか嬉々として攻撃しない女性の行方やらこの船にはまだ乗っているのかどうかやらを聞いた。

 

『頂上戦争の後に降りていった』

 

彼女は最後に「海軍の勝利は私にとって地獄よ」と言い残して言ったらしい。

彼女の海軍に対する憎悪が垣間見える発言だ。

 

「ねぇ、島見えたわよー」

 

「着きましたね」

 

見張り台に居るヨーコの張り声にマイがのほほんと笑う。

島に降りると春島らしく気候は良好で好ましかった。

城下町らしく頭上に高く聳(そび)えるヨーロッパ風のお城が見える。

それを見てマイ達は歓声を発っした。

 

「馬鹿王子の時はアラビアン風の宮殿だったけど、此処はまさにお姫様が住んでそうね」

 

馬鹿王子とはマイに好意を持っていてお供達が苦労人だった件の時の王子だ。

 

「ヨーコ、何だか、フラグって物が立ちそうだから止めてよそういうのは」

 

「え?マイ、あんた私のフラグ発言にいっつもそんな事有るわけないって言ってたのに、そんな事言うなんて。とうとうあんたもフラグの素晴らしさに気付いた?」

 

「違うってば……ただ、何だかリーシャさんが巻き込まれ易い人だから安易に口に出すと現実になってくるような予感がしただけ」

 

マイにしては歯に着せる論だ。

 

「もしかして所謂虫の知らせ?」

 

リーシャは首を傾げて聞くとマイは納得いかないような感じで頷く。

 

「あ、もしかしてあんた直感でも目覚めかけてんじゃないの?ローさん言ってたじゃん。修行したり自分を高めるとそういうのに目覚める人が居るって」

 

マイは眉をしかめて困惑していたが、リーシャは納得した。

確かにこの世界ではそういう事が起きても何ら不思議はない。

 

「やったわね、マイ」

 

「何だか変な感じ……」

 

直感の感覚に慣れないのかマイはそわそわと体を揺すった。

ヨーコは羨ましそうにしている。

 

「無理に開花させる必要はないと思うよ」

 

「……でも、私、リーシャさんを守れるようになりたいです。だから……頑張ってみます」

 

普通の人でも難しいので誰も責めないという意味で言ったのだが、本人を燃えさせたようだ。

世の中には雷を科学的に作り出したり斬撃を能力でないのに起こしたり身体を硬化させてしまったり足で飛んだり出来る人間が居るのでマイが開花しても可笑しくない世の中。

 

「ま、今考えても堂々巡りだから何か食べて気分転換しよう!」

 

今、自分がしっかりこの子達を導かねばならんと空気を変える。

 

--ドンッ

 

「キャッ」

 

「うっ」

 

視界に写った直前に何かがぶつかってきて、それが人だと分かるも相手は何も言わず逃げるように去っていく。

唖然としていると二人の声が耳に聞こえた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ちょっと、何なのあの人……」

 

ぶつかっておいてと怒るヨーコに大丈夫だからと気にしないように言い含めてマイの手を借りてよろめきを納める。

辛うじて転倒しなかったのは幸いだろう。

既に相手の陰は無く人混みに紛れたらしくヨーコはキョロキョロと探していた。

 

「特に怪我もないし、そろそろ進(すす)も」

 

「リィア姫!」

 

「リィア姫が居たぞ!」

 

言葉の途中で人集りが割れてそこから中世ヨーロッパ風の騎士の格好をした団体がやってきてこちらへ猛進してくる。

避けようと動くと相手は迷う事無く何故かリーシャを取り囲む。

 

「へ?な、に?……何!?」

 

意味不明な何かに対して混濁、困惑、兎に角戸惑って不安に駆られる。

 

「ちょ!何なのあんた達!」

 

ヨーコが叫ぶと騎士の男達がガシャガシャと音を立てて近寄りリーシャの身体を動けないように掴んでくる。

 

「さ!城へ帰りますぞリィア姫!」

 

「え?え?ええええ!」

 

意味も分からないまま何人も居る騎士に連れられてあっという間に何処かへ連れて行かれた。

いや、考えなくても城なのだろう。

城へ帰るという言葉を言っていたから可能性は高い。

しかし、何故民間人所かこの島の人間でもない自分を拘束したのか全く心当たりのない事だ。

連れて行かれたのは城の中で門番が扉を開けるとお城が全貌を現して壮観だと感じた。

何故暢気にそんな感想を抱けるのかというと、何も出来る事がないからである。

一応騎士達に「私、リィア姫とやらではありません」と言ったのだが市民の服を着たくらいで我らの目は誤魔化されませんと言い切られた。

 

(誤魔化されてるし目が節穴ですけど)

 

何を見てるのか馬鹿なんですかアホなんですか、間抜けにも程がありますけど、と内心不満が炸裂である。

何せ何の納得もなく、勝手に連れてこられたのだ。

嘗(かつ)て無い誘拐事件という事だ。

悪党に連れ去られるならば相手を完璧なまでにボッコボッコにしてもらう(するのは無理なので二人に頼む)のだが、相手はどうやら王族らしい。

姫と言っていたし、どうせ自分が本物ではないと言っても謝ってもらえるどころか、間者扱い、又は姫の代わりに捕まった説なんて説かれる身勝手な未来すら考えていたら出てきた。

そんな事になったらいくらリーシャと言えど人間に対して善意という感情ではいられない。

きっと腹が立ってめちゃくちゃキレる。

てめえーら頭腐ってんのか、と。

 

「リィア姫」

 

私服で立っていると誰かが入ってきた。

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