connect   作:苺のタルトですが

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ベポ side

 

 

 

 

今日のまとめ

記入者 ベポ

 

キャプテンがキレて白衣の男を沢山バラバラにして【ピー】で【ピー】に【ピー】して【ピー】【ピー】てた。

追記。

次の日読み返したら文字が殆ど黒く塗りつぶされていた。

誰が黒く塗ったんだろう。

 

ハートの航海日誌より抜粋

 

 

シャチ side

 

リーシャという記者は一言で体言するのならズバリ『不幸体質』だ。

本人も認めているので公認であった。

公認してしまう程彼女の人生は不幸が敷き詰められているとしか思えない。

この間は宝石にされてたし、今回は変な科学者風な男に騙された。

本人はまだ目覚めていないので騙されていた事など知らないだろう。

寧ろ知らないままの方が幸せかもしれない。

今回は特にそう思う。

今回何をされたのかと言うと、あの変態科学者でリーシャに告白したという(本人が手口の一つだと自白した)経緯で彼女を実験のモルモットにした。

被験者に相手の同意を取らずしたという行為に勿論ローはブチ切れた。

宝石事件よりもかなり血管が浮き出ていたので比較し易い。

その男の末路は口に出来ないが自業自得だと思う。

何せローの女(お互い特にそれを認めた訳ではないが)に手を出したのだ。

何かの病原菌だったならばヤバかったが、そういう訳ではない。

後にその出来事は門外不出となったが、男と見るや媚びを売ったり艶めかしく迫ったりする手練れ『ヒロイン症候群』という症状を引き起こす薬を飲ませたらしかった。

聞いた時は何の冗談だと笑ったが、起きたリーシャを見てから目が取れるのではないかと錯覚。

開いた口がなかなか閉まらなかった。

確かにいきなり近寄ってきてニコッと笑ってきた時は「あ、この笑顔違う感じだ」と鳥肌が立った。

その間に次々と船員達の間を行き交い猫撫で声で媚びた仕草をし出して認めるしかなかったのである。

こういう事が起きないように見張っていたのに、相手に薬を盛らせてしまった失態はデカい。

告白した相手がまさか何かをしてくるなんて、なんて、なんてベタな展開に巻き込まれる女なんだ。

と思った。

ローが急いでヒロイン症候群になったリーシャを押さえて回収する。

その際も男好きという面とイケメン好きというのがローに当てはまっていたからか、ローにも甘い声を出していた。

きっと彼女が二人居、いつもの方がそれを見ていたならば鳥肌を立てて海に吐いてからもう一人の自分にかかと落としか張り手か、海に投げたりしていただろう。

それ程有り得ない光景だった。

甘い声に胸へとしなだれ掛かられたローの顔は満更でもなさそうだったのでこの病はローに至福しか与えないのだろうと思った。

女神はローに微笑んだらしい。

シャチは去っていくローとリーシャを見送り船員達と安堵の息を吐いた。

 

 

 

ロー side

 

変な男に引っかかったリーシャを自室に監禁した。

軟禁するには症状が深刻だ。

何でも男好きで誰でも誘ってしまう性格になる薬を飲まされたから。

自分の物にした筈の彼女が他の男に媚びを売る姿なんて見たい訳が無く、症状のせいでそうなっているのも含めてローしか居ない空間にするしかなかった。

 

「ね、ローさ~ん」

 

「?」

 

甘い声で普段では考えられないような、首に腕を回してくる行為に一瞬息を呑む。

彼女は熱の籠もった目でクラクラとしそうな色香を漂わせる。

 

「私、ローさんの事好きぃ」

 

あの科学者は何を思ってこんな薬を飲ませたのか。

飲ませる対象を選び間違えたとしか思えない。

けれど、悪い気は感じない。

 

「くくく、お前の口からそんなのが出てくるとはなァ?」

 

「ん」

 

唇を合わせてきたリーシャに微かに驚いたが、自ら飛び込んできた事を無碍にする程ローは理性が堅くはないので欲しいならば与える。

 

「んん」

 

強請るように押しつけられて、迫られるのも悪くないと思った。

このまたと無いチャンスに普段ならば絶対に出来ないあれやこれをさせられるし、出来るのではないか。

ニヤッと笑みが浮かぶのが止められなかった。

 

 

 

***

 

 

 

いつものように目が覚めると隣にローが居て、自分は記憶もないのに下着姿だった。

内心混乱して(え?え?)と自問自答しても何も思い出せない。

目の前に居る寝ている本人に聞いたら色々と聞きたいが、この姿から察するにあまり楽しい話では無さそうだ。

となれば、此処は何もなかったかのようき振る舞い何があったかを聞かず去る事を選んだ方が良いかもしれない。

ソロリソロリとベッドから降りると散らばっている服に頭が猛烈に痛くなる。

まさか酔ってこんな事になった訳ではなさそうだ。

記憶が飛ぶくらい飲んだのならば今頃酷い頭痛になっている筈。

 

「なかった事にならないがな」

 

モヤモヤとしたまま思考していると背後から寝ていた筈の声が聞こえギクリと肩が跳ねる。

錆びたゼンマイのように首を動かすとさも楽しそうな笑みを浮かべたまま頭を手で支えて横になっている男。

 

「な、何も、無かった筈です……から。だって、記憶無いですし……」

 

「あ?無いのか?記憶が」

 

眉をギュッと寄せて不服そうに聞いてくるローに頷くと更に口を引き結ぶ。

 

「……まァ、それが一番良いか……というか、好い加減こっち来い」

 

「えっ」

 

下着姿なのに来いと良われて服を着出すと「着るな」と言われる。

 

「いやいやいや!着なかったら下着だけですけど」

 

「だからどうした。今更恥ずかしがる間柄か?フフフ、胸をデカくしてやるよ」

 

良いことを思い付いたみたいな言い方は止めて欲しい。

困惑しながらもこんな姿で近寄る度胸も無いのでそそくと服を着る。

 

「良い眺めだったのに着やがって……」

 

エロいローは無視だ。

セクハラで訴えてやる。

 

「何だその目は。この二日間は楽しんだ癖に瘴気に戻ったらこうなるのか……」

 

さっきから何を言っているのか分からない。

 

「ご飯食べてきます」

 

「おれも食べる。この部屋に持って来い。お前も此処で食えよ」

 

「えー」

 

「また可愛がってやろうか、あ″あ?」

 

「持ってきますごめんなさい」

 

チキンな心臓は従う事を考えるまでもなく選択した。

スタタッと部屋から出て急いで食堂に行くとそこに居た船員達の視線が絡む。

何だか皆警戒しているような目で見てくるのでおはようの言葉が出せなかった。

 

「お前、もしかして……元に戻ったのか?」

 

怯んでいると恐る恐るその家の一人が聞いてきた。

何の事が分からないが、しっかり意識が有るのは確かだ。

 

「私から見たら皆の方が可笑しいけど……」

 

リーシャに怯えたり警戒するなんてどうかと思う。

自分はただの記者なのに、何かを確認するかのように。

まるで人ではない何かを見ているみたいな視線に不審が募る。

 

(変なの)

 

「おい、皆……船長が外に出したって事はこいつはいつものこいつになったって事じゃねーのか?」

 

シャチが言うと周りも確かにそれもそうだと自己完結してきく。

だから、何が何なのか説明して欲しい。

 

「リーシャー!元に戻って良かったな!」

 

ベポが抱き付いてきて驚く。

 

(もう、何なの一体……)

 

説明をされる事がなかったので尚更今日と言う日が可笑しく思えた。

周り曰くこの二日間の事は禁句というか、門外不出らしく、誰も口を割る事はなかったのでリーシャの中では皆が可笑しかった日として記憶に残る。

後で記憶が無くなる前の記憶を思い出してデートをしていた事を思い出したが、その事を言っても誰も詳しい事を語る事無く謎の空白期間が出来てしまった。

 

 

 

もうそろそろ一人旅に戻ろうかと考えていたらローがリーシャを甲板にグルグル巻きにして放置するという暴挙をしたので唖然となった。

どういうつもりなのだと問うても口に布を詰められて声も出せなくなる。

んーんーと喉で声を出しても船員は全く助ける所か、誰も彼もがリーシャをひたすら無視して居ないものとして扱った。

どんな新手のいびりだと嘆いたけれど、その日の夕方、二人の女の声にぴたりと体が固まる。

ワイワイと賑やかになる甲板に近付いてくる足音。

 

「プレゼントって何なんですか?……リーシャさん!?」

 

「ちょっと、どういう事これ!?何でこんななってんの?」

 

二人の少女は視界に入った塊に度肝を抜かれる。

久々の再会というのに、それはもう生まれて初めてのインパクト有る光景だっただろう。

 

「ぶはっ!」

 

布を外されて口から息を吸うと半年ぶりになるマイとヨーコに苦笑を向けた。

 

「あはははー。久しぶり二人共。元気だった?私は今こんなだけど朝までは普通の生活送ってたんだよ」

 

「「………………」」

 

会って早々に可哀想な子を見る目で挨拶を受けた。

 

 

 

 

 

 

二人が何故括り付けたのかとロー達に問い詰めるとローはシレッと「逃亡しようとしてたからだ」というのでバレていたのかと内心歯噛み。 

別に二人が来る事は知らなかったが、逃亡のタイミングが非常に悪すぎただけのようだ。

ローは人間なのに鼻が利く。

 

「あと、おれの支配欲求が疼いたからな」

 

「「「ええええ」」」

 

三人ハモってローに向けて放った。

自分の為かよと船員達も思ったが、言わなかった。

保身に走ったのだ。

改めて久々の再会にリーシャは考えまいとしたが、一人旅はもう無理そうだと諦めた。

どう見ても一時帰宅では無さそうだ。

聞けば、一年だった修行を半年に詰めて終わらせてきたらしい。

理由はリーシャが途中から行方不明になった事で目が離せないと判断したかららしい。

 

「電話でも無事って分かってたけど、気になってしょうがなかったのよ」

 

「生きてますよね?幽霊とかじゃないですよねっ?」

 

仕切に体を触るマイに大丈夫だと言う。

これからまた賑やかな旅になりそうだ。

 

「二人共、一年間でやる筈だったものをそんなに急いでやって、平気なの?」

 

「ええ。ものにしました」

 

「あたしも!」

 

「ほー、凄いねえ」

 

リーシャなら三日坊主間違いなしだ。

関心しながらそれをお披露目しようかと二人に言われて「え?」となる。

此処でするよりも実践でやった方が効率が良いのではないかと思ったからだ。

でも、俄然見せる気満々の二人を見ているとそれも言い辛くなり、結局宴の席にてお披露目する事となった。

ハートの海賊団の面々はお酒が飲めるとあってテンションが高い。

折角再会したのだから水入らずで部屋で過ごせと後押しされて興奮に疼いている甲板から追い出される。

ローも目で言ってこいというので言われる通りに三人で三人部屋へ向かう。

 

「何だかこういうの久ぶりですね」

 

「「同感」」

 

マイの発言はリーシャも言おうと思っていたものだ。

三人で過ごすのは半年振りである。

話すのも何をするにしても。

宴まで時間が掛かるのでそれまで、お互いに何があったのかをお喋りするのは決定事項であった。

リーシャの場合何か言う度にお説教と悲鳴と混乱が付いて来るだろう。

特に誘拐とかは半叫コースで決まりだ。

話し出しては叫び泣き笑い。

何故か殆どリーシャの人生が話題だった。

不幸しかないのに聞きたがるなんて物好きだと終わらせたいが、何も二人は楽しくて聞いているのではない。

 

「「いやー!」」

 

最後ら辺は最早気絶しそうで、胃に穴が空きそうだったとはヨーコ談。

もう胃に穴が空いて手遅れだとはロー談である。

 

「三人の再会を祝して……乾杯!」

 

音頭を取った一人に全員がビールや酒のグラスを掲げて宴は始まった。

今回は気を遣っているのかローは隣に座れと強要する事はなかったので、いつもこうだったら良いのにと内心愚痴る。

隣に座れと言う癖に更に酒も注げやらもっと近くに寄れやら、注文を言ってくるので相席するには忍耐力が試された。

マイとヨーコと並んでご飯を食べるのも久々で懐かしい。

これからそれもいつもの日常になるので浸っているのも今だけ。

もう直ぐ大人になる年齢の二人に船員達は遠慮なくお酒を勧める。

 

「飲ませないで下さい皆!」

 

酔っ払いに言うには気迫が足りない。

ローに頼んでも好きにさせろの一点張り。

確かにそろそろお酒に慣れさせた方が良いのかもしれないが、どうにも向こうの世界に対して申し訳なく思ってしまう。

向こうでは未成年。

こっちでは別に飲んでも咎められない世界なのだ。

難しい顔をしていると酔った船員がポロッと何かを言う。

 

「あん時は可愛かったのによー」

 

「あの時?」

 

いつの話しだろう。

疑問を抱いているとローが鞘に入れたままの刀を振り下ろすのが見えた。

ゴンッという音がするとその船員の意識が地に落ちた。

船員に何て事をと言うとローは何食わぬ顔で「明日には今の事何てどうせ忘れてる」何て言うのでそういう問題じゃないんではと冷や汗をかく。

船員達は揃って口に手を当てて「くわばらくわばら」と唱えていた。

何故「あの時は可愛かったのに」発言からくわばらくわばらなのか。

更に疑惑を抱くとベポが酔った風な足取りでこちらへやってきてカンフーのポーズをする。

 

「アチョー!」

 

もしかして宴の席の一発芸という奴か。

それに続いてヨーコとマイも中心に出る。

ニョンガシマにて鍛えたそれをお披露目だという訳か。

マイの手には弓矢よりも重みのあるボウガン。

ヨーコの手には長く細い中くらいのトンファー。

先ずはマイかららしく、彼女は的らしきそれを甲板に取り付けてヨーコは近くに大きな石を置く。

それを興味しんしんに見ている周り。

マイは狙いを付けて、見られているというのに、一切集中を切らさずに矢をつがう。

キリリリ、と音がして矢が飛ぶと的に当たりその的が破損した。

破損、つまりは貫通して甲板の場所に刺さった。

周りがその光景に絶句していると次はあたしね、とヨーコが石に向かってトンファーを振り下ろす。

銀色だったトンファーが黒くなっている事に気付いたのは石が粉々に砕けた後。

真っ二つに割るのかなと簡単に予想していたリーシャは口を開けて固まった。

ハッと意識を取り戻すまで五分は要した筈。

その間にマイはローに弓を貫通させて船を傷付けてしまった事を謝っていた。

ヨーコは粉々にした石を箒(ほうき)で掃き出していた。

ローや船員達が二人を海賊にならないか、とかまた船員にならなかと勧誘する気持ちがとても理解出来る。

 

(てか、只の女子高生だったよねこの前まで……)

 

この前というか一年も経過していない。

驚異の成長である。

リーシャは信じられないが信じるしかないその事実に悩む。

もし向こうの世界に戻ったら二人は変な研究対象にでもされかねないのではないか、と。

向こうに帰らなければそれは分からないし、今更どうする事も出来ないので成り行きに任せるしかないのであろう。

諦めるというか、思考を放棄した。

 

「ちょ、お前らほんとおれらと海賊しねェ?」

 

「ストップストップストップー!」

 

勧誘されて困っている二人の間に入り船員達から切り離す。

悪の道に勧誘はさせない。

 

「お前に聞いてねーつの。船長に擁護されてのうのうとしてるお前なんてお呼びじゃねェ」

 

「!」

 

お酒が入っているにしても過ぎた言葉を出すのはこの船に乗っている中でそこそこ長い男だ。

この男はリーシャがローと出会った後に入ってきたので、その不満はそれからもずっと溜まっていたのだろう。

 

「てめー言い過ぎだろ。酔ってるからって」

 

「うるせーな。お前だってこの女が新世界に来る程強くないの分かってんだろっ!」

 

「だからっててめーに関係ねェだろ!?」

 

「嘘つくな!ほんとは邪魔なお荷物って思ってる癖に善人ぶってんじゃねー!」

 

殴り合いがついに始まった。

 

「……あ、リーシャさん!」

 

唖然とそれを見ていた内の一人であるマイが自室に籠もろうとするリーシャを引き留めようとする。

 

「マイ達は主役だからまだ此処に居た方が良いよ」

 

何か言おうとするマイ達を押し止めてトボトボと甲板を去る。

 

(痛いとこ抉ってくるぜー)

 

何て湿っぽく感じながら廊下を歩く。

 

「寝るのならこっち来い」

 

グイッと腕を引いてくる相手に力なく笑みを見せてから引かれるままに付いていく。

 

「ローさんも遠慮なく言ってくれても良いんですよ?」

 

今は何を言われても構わないと思えた。

 

「じゃあやらせろ」

 

「そういう言ってとかじゃないですってば……」

 

好きな事を言えとは言ってない。

というか、やらせろとか先程言われた事よりも悪質だ。

 

「裸になれば男も女も力も弱さも関係無くなる」

 

(確かに正論だけど暴論)

 

今の台詞は何かから抜粋したような発言だ。

 

「だから服を脱げ。それから考えるのも放棄して、考えるな」

 

慰めてくれているのかもしれない。

それにしてはローにとってはペースに乗せるだけの展開だ。

そのままの空気で裸にさせる気満々だろう。

しかし、ならない。

 

「でも脱ぎません」

 

「別に上は脱がなくても良い」

 

「最低ですからそれ」

 

下だけ脱げと言われても。

さっきまで落ち込んでいたのに、ローの下ネタのせいで気力が少し戻った。

 

「弱い奴は弱い。お前も弱い。んな事全員知ってる」

 

「……ローさんなじり方、普通」

 

「いつ死んでも可笑しくないお前が強くなるなんておれも誰も期待してねェから安心しとけ」

 

「ふふ……心得ておきます」

 

世界一不器用に慰められて、慰められるリーシャは何と単純な女だろうか。

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