connect   作:苺のタルトですが

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朝起きてローの部屋から出ると昨日リーシャを罵倒してきた男と擦れ違う。

 

「昨日は悪かった。反省はしてるけど後悔はしてない」

 

それだけ言うと足早に去っていった。

謝られたけれど、思う所はあったから言ったまでの事だ。

と言われた訳だ自分は。

確かにリーシャはローに助けられ、それに甘んじている身なのでそう思われても仕方ないと前々から思っていた。

相手も謝ったし、彼の言い分も分かるし理解出来るので怒る気持ちは湧かない。

彼はただそれを声に出したうちの一人だ。

声に出さないままそう思っている船員はまだ居るのだろうと薄々感じている。

人は何かを感じ常に何かを諦め何かを考え個々の意見や感想を抱く。

なので、人それぞれ。

 

だからローは罵倒してきた人間が出てきた時にリーシャを庇わなかった。

これはリーシャの考えだが、恐らくロー本人が庇った場合更にリーシャへの不満が溜まるので何も処置を取らなかったのではないかと思っている。

これで解決だと気を取り直して三人部屋へと行くとまだ二人は寝ていた。

一応音を立てないように扉を開けたのだが、うっすらと目が開いているのが見えて気付かれたかと苦笑。

 

「リーシャさん……私は、私は貴方を守りたくて強くなったんです」

 

マイは寝ぼけ眼で言う。

 

「それなのに、そのせいで貴方を悲しませてしまうなら強さに拘らなければ良かった……ごめんなさい」

 

泣きそうな顔で独白を告げる相手に近寄り手を握る。

 

「私は二人が頼もしくなって嬉しいよ。強くなれば二人が私の不幸体質に巻き込まれても自分達で自分達を守れるもん」

 

リーシャは守って欲しいのではなく、マイとヨーコに自衛をして、自分の身を自分で守ってもらいたいのだ。

何かあった時にせめて。

 

「お帰り。よく頑張ったね。私の事を考えてくれて嬉しくない訳ない。泣かないで」

 

まだ高校生なのだ彼女達は。

全く訳の分からない異世界トリップをして不安じゃない訳がない。

強くなりたい、それは悪い事ではない

ユルユルと頭を撫でているとまた眠り出すマイ。

ヨーコの頭も撫でてからそっと部屋を出た。

 

「じゃ、これ餞別な」

 

「毎回そう言って渡されてるけど」

 

リーシャが言うとベポが深く考えるなと笑う。

前に貰った中型船に乗ってから手を振る。

三人分の女を乗せた船は前よりも少し変わっていた。

何でもニョンガ島で少し改築して改装したらしく、食料も豊富に積んである。

確かに女が過ごしやすい空間になっていたので流石女しか居ない島だとしみじみ思った。

 

それを見たローも「気に入られたみたいだな」と楽しそうに言っていた。

リーシャ的にはボア・ハンコックに石にされずに済んだ事に安堵している。

彼女は猫もアザラシも蹴るタイプなので冷や冷やものだ。

半年振りに出航する中型船にまた旅が出来るのだと嬉しそうな二人。

ローは今回は出てこなかったが、餞別はきっとローが言ったものだろうと頬が緩む。

優しいというと彼は不機嫌になるからあまり言わないけれど優しいとしみじみ思った。

 

 

 

マイとヨーコは肌身離さずボウガンとトンファーを所持しつつそれぞれ過ごしている。

毎日欠かさず鍛錬して練習しているので頑張っているなとリーシャはのんびり眺めていた。

次の島に着きそうな朝、二人はいつものように武器を手入れしている。

 

「マイは直感、鍛えたの?ヨーコも何かトンファーが黒いけど……」

 

「はい。直感で遠くの獲物に当てれるように頑張って鍛錬しました」

 

「あたしは直感とかいうのは無いけど武装色の覇気が出せるようになってトンファーに具現化させられるようになったのよ」

 

それぞれ鍛えた成果を説明してくれた。

成る程と納得する。

 

「という事はマイは遠くからでヨーコは前衛ってやつか」

 

「うん。そういう事。コンビネーションも今ではバッチリよね」

 

「だね」

 

二人はまるで青春の一ページを体言しているように思うが、今は確かに戦闘のお話しをしている。

現実の青春とは何と遠いのだろう。

少し遠くに目をやってしまうが何とか持ちこたえる。

もしかしてお腹が六つに割れてたりという事もあり得る。

 

(考えたら駄目な奴だなこれ)

 

二人のお腹から目を引き離して話しを戻す。

 

「マイは途中で矢が切れたらどうするの?」

 

「このタガーと弓を使って戦います」

 

引き抜かれた銀色の刃物とを握って何かを切る仕草をする。

さらば学生の相棒シャープペンシルよ。

リーシャは儚く割れるシャープペンシルの芯に内心心の涙を零した。

 

「流石は、ジョシコーセイ」

 

二人の両親に深く謝った。

二人のお腹をちょっとムキムキにしてごめんなさい。

二人からシャープペンシルと消しゴムを取り上げて一生握る事はなかった筈の刃物の柄とトンファーを握らせて申し訳ございませんと。

謝ったらほんの少し罪悪感が薄れた。

 

「それは実践が楽しみだね」

 

一応ハートの海賊団ででも組み手をしているのや、船員達と戦っているところは見た事がある。

流石にボウガンを飛ばしたりはしなかったようだが、体術も半年でかなり腕を上げて力を付けたらしく船員に褒められているのを見ていた。

 

「ま、私達の戦いは追々ね。それよりもあんたの事を聞きたいんだけど」

 

「私?何を聞きたいの?」

 

粗方話した筈だと考えているとそれとは全く違うジャンルが口から飛び出してきた。

 

「どぼけるんじゃないわよ……あんた何か女っぽくなってるし……大方、トラファルガーさんと何か進展したでしょ」

 

「あ、それ私も気になります……!何だかリーシャさんと船長さんの距離が近いって言いますか……」

 

(そんなのバレるの?)

 

リーシャの感覚では関係を持つ前と態度を変えていない筈だと思っていたので思わぬ指摘に目を丸くする。

 

「付き合ってないよ?」

 

「付き合ってなくても絶対何か変化があったでしょ?」

 

「もしかして、キスとかしたんですか?……キャーッ」

 

マイが頬を染めて恋バナに悶える。

 

(キスでテンションこんなに高くなるんだ今時の子って)

 

「んー、想像にお任せ?」

 

「何がお任せよ?ぜーったい進展したわよね!?」

 

「キャーッ、私も恋したいなぁ」

 

三人寄せれば何とやら。

 

「じゃあ私達勝手に邪推するわよ?ていうか、トラファルガーさん押し」

 

「私もです!というか、船長さんの方は隠してないですもんねっ」

 

「何が?」

 

何を隠していないのかさっぱり分からなくて聞けば、二人はニヤニヤと笑みを浮かべる。

 

「リーシャさんを見る目に決まってるじゃないですか」

 

「前からそれっぽいのあったけど半年振りに見たら何か更に視線が熱い」

 

言われて改めて思い返してみれば確かにローと目が合えば必ず見られていたような気がする。

でも前からそんな感じで目が合っていたのでいつもの事だと思っていたので第三者から見るとそんなドラマチックに見えるのかもしれない。

 

「ていうか付き合いなさいよ!私達が楽しいし!」

 

と言われても困るだけだ。

苦笑いでかわした。

話しているうちに時間も過ぎていつの間にか島へ着いていた。

島に降りると沢山コスプレしている人が居て最初は何かの祭りかと思ったが、どうやら演劇が盛んな島らしい。

演劇の殆どが魔王とか勇者とか姫が出てくる物語らしく、とある国で言うならばお侍が出てくる物語が好まれる国があるのならば、この島は勇者の系統の同じが民衆に好まれるらしい。

 

「ねぇ、これ何かどう?『勇者殿堂記』」

 

「それも絶対勇者出てくるよね」

 

勇者以外の演劇はあまり好まれないのか。

というか良く飽きないものだ。

 

「お侍の国でちょんまげはもう見飽きたって言ったら駄目ですからね」

 

「言わないよ。それ言ったら私首チョンパされる」

 

げんなりしているからかマイが笑顔で注意してきた。

いくら何でもそんな事は言わない。

この島で勇者見飽きたとかは言うかもしれないが。

一応この島では勇者の演劇から見るのが普通らしいのでそれに習って適当に演劇の舞台がある建物へ入る。

 

「あ、お手洗い行ってくる」

 

「私も行きます」

 

「え、なら私も行く」

 

と結局三人まとめて演劇前にお手洗いに行く。

 

「席取り誰がするんだじゃあ」

 

と言われて反射的に聞こえた方向へ向くと三日前に分かれたハートの海賊団船長が不釣り合いな場所で三つの席を無意味に手を広げて独占していた。

 

「「「お願いします」」」

 

三人の心は一致した。

その三つ分を四つ分に増やせば三人座れるじゃない、と。

 

「は!?おい待て!」

 

呆然となった顔で一瞬絶句した王下七武海を気にする女は此処には存在しない。

強いて言うなら斜め隣に居るシャチが盛大に「慣れって怖い」と吐きそうになっていた。

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