connect   作:苺のタルトですが

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セイナル島という島に上陸してから五分。

三人で歩いていると雪が積もっている所が多い場所にドサァ!と爆音がした。

爆音の後に沢山の雪が上に上がる。

三人揃って固まっていると赤い色が見えて、それが人だと分かると足が動いていた。

二人も同じ頃に走り出して赤い人の所へ向かう。

それから病院へ連れて行きその人から感謝された。

サンタの格好をしている人に。

 

「全く、感謝以外の言葉がありませんなァ~」

 

わっはっは、と笑う人は中年くらいの時の人で落下してきた理由も説明し出した。

何でもこの島は無機物や動物が浮くらしく、トナカイも浮くのでソリを引いてもらい人は浮けないので運搬業としても仕事をしている。

人だけが浮けない島など珍しい、流石新世界だ。

そのソリから誤って落下して、この人は骨折したという訳である。

説明し終えた彼はそうだ、という顔でこちらを見据えてから笑顔で言う。

 

「君達に運搬して欲しいんだ。今はクリスマスというイベントの時期で私が居ないとなれば人手不足になってしまう。給料は勿論出します。お願い出来ませんか」

 

「「「…………」」」

 

三人の心は微妙であった。

何故なら落下事故を目の前で目撃してしまったからだ。

彼の白い包帯を見て(こうはなりたくない)と思うのは当然である。

落下サンタ(の格好をしている人)は三人の足の視線を感じたのかしょぼんと肩を落とした。

病院から出ると街角に向かう。

バイトを探す為である。

ヨーコとマイは比較的安全であるお店、カフェやレストラン系の方向で働いてもらっていた。

二人も交渉が上手くなり経歴も積んできているので結構スムーズにいく。

前方に歩いて右に曲がると一番大きなお店に着く。

マイとヨーコには適当に近くに出歩いてもらっているので一人である。

 

「…………あっ」

 

店の中に行くと見慣れた服や見慣れた人達が見えてひたりと止まる。

あの一から一番先に見えるだろう位置に居る男がこちらを目敏く見据えた。

ニヤッと笑みを張り付けてお酒のコップをクイッと呷ると彼は隣に居た綺麗な女性、この店の女性らしき人に何かを耳打ちしてからまたお酒を呷る。

女性は席を離れ違う男の所へ座っていくのを見て内心(退けたな)と理解。

 

「あれっ、船長?どこ行くんすか」

 

船員の一人に声を掛けられた船長であるローがデートだと発言したので船員達が「ええー!?」と驚愕した声を上げる。

 

「ででで、デートォ!?誰とですかっ?」

 

「どんな美人なんですかァ!?」

 

「おれらも見たい!」

 

ローがフフフ、と笑い歩いていく先に居るリーシャを見て船員達がシン、と静まる。

 

「あ、成る程」

 

「リーシャかよ」

 

「美人なお姉さんなんて居なかった訳だな」

 

「いくら私でも怒れるんですけど!」

 

激怒すると船員達がどーどー、と宥める。

ムカッときている顔でいきり立てばローが口元を上げたままリーシャを外へ連れ出す。

 

「あ、あの!私此処に面接しに来たんですけど!」

 

「いくら払えば良い?」

 

「はい?」

 

「デートしてもらおうってんだ。金を払ってやる。あの店で働いて他の男に笑顔と酒を与えるなんて事をされるんならおれが給料を出す」

 

「……そんなのは必要ありませんよ。ローさんの好意を利用したくないです」

 

「利用、ねェ?利用してるのはお前じゃない、おれだ。おれの女に金貢いで何が悪い」

 

「だから……私はローさんの女となる事を了承した事はないです」

 

困ったように言うとローは青筋を浮かべると黙れと言われて口を閉口。

確かに自分は人として女として異性として失格であり酷い事をしているとは自覚している。

 

「愛してる」

 

ピタッと身体が止まる。

上を見上げるとローの真剣な顔を浮かべていて、ビクリとなった。

泣きそうになる。

 

「狡い、止めて……私にそんな、そんな事……言わないで下さい」

 

絞り出すように言うとローの腕が背中に回されてギュッと抱き締められた。

ギュウギュウと締め付けられる包容に涙がポロッと落ちる。

ホロッと何かが頬に掛かり、視界を開けると白い雪が舞っているのが見えた。

 

「私も、好きです……」

 

「!」

 

「それに偽りはありません。でも、でも……貴方の足枷にも、荷物にもなりたくないんです。分かって下さい、ローさん」

 

「分かる気がしねェな……!」

 

グググ!と一気に顔を近付けてきて奪った息に目を反射的に閉じた。

さっきまでのシリアスを物ともしない展開。

動じないなこの人。

 

「海賊は海賊らしく……待てはしねェ。我慢もな……承諾なんて初めから取る気はなかった」

 

「!?」

 

取る気はなかった。

何とヤバい思考をしている男であるのだとびっくりだ。

 

「てめーに拒否権何てある訳ねェ。四の五の言わせねェよ。お前が何と思おうがおれの所有物」

 

くつりと笑うローに絶句した。

 

「おれが好きという言質は得た。降りる事は不可能だと思え」

 

罠に嵌められた気分になるのは果たして勘違いなのだろうか。

 

 

 

起きてからローに何度か復唱させられていた。

 

「私は貴方の女です」

 

解せぬ。

 

「私が好きなのは貴方です、復唱」

 

「私が好きなのは貴方です……あの、そろそろ喉が限界っす」

 

復唱はベッドの中でもさせられていたので喉がヤバい。

只でさえ疲れているのに。

 

「あいつらにおれが好きなのかと聞かれたら?」

 

「うん」

 

「うん……だと?」

 

「……うん。好きだよ」

 

うん、の他にも文章を足されてしまう。

やはり洗脳寸前だ。

 

「どこが好きなのかと聞かれたら?」

 

「目の色」

 

「と?」

 

他にも必要らしい。

 

「ぜ、んぶ」

 

「躊躇したな今。言い直しだ」

 

洗脳されてる、助けて誰かっ。

ローは満足したのか解放してくれた。

船に戻るとポケットに膨らみがあるのが見えて冷や汗が出た。

デジャヴだこれ。

ポケットに手を入れて中身を出すと札束。

 

「ガッデム」

 

重ねられたそれにタラッと汗が落ちる。

 

「デートの給料?」

 

昨日言われた内容を思い出してプルプルと手を震わせてソッと金庫にしまった。

 

「リーシャさん?帰ってきたんですか?」

 

「うん」

 

「船長さんから昨日電話をもらって、ふふふ、デートだったんですよね」

 

「!?……な、んで知って……」

 

リーシャはキョドってしまう。

それに目を輝かせるマイに怯む。

 

「キャー!ローさんが電話でデートをするから借りるって!言ってましたよ!?」

 

(い、言ったのか!?)

 

借りると言うなんて何て木っ端恥ずかしいことを言うのだ。

カアア、と赤く染まる頬にマイの目がキラキラとなる。

 

「やっぱりデートだったんですね?どうでした?手とか、つ、繋ぎました?」

 

質問責めにされてしまい「う、えと」とどもる。

ローによって洗脳済みの思考が口を滑らせた。

 

「うん…………っあ!?」

 

「認めましたね!?今、うんってっ」

 

興奮しているマイ。

 

(うぐあ!)

 

「船長さんと付き合ってるって事ですよね?」

 

「うん。付き合ってる………………もう嫌だ」

 

洗脳の成果が見事に開花してますトラファルガーさん。

 

 

 

船に居ている時にローがどうやって場所を知ったのかこの船に何の連絡もせずにやってきた。

 

「…………何かご用で、七武海のトラファルガーさん」

 

「自分の恋人に会うのに理由が必要か?しかも何だその呼び方」

 

「さァ?洗脳の後遺症では?」

 

トゲトゲしく言うとローはニヤニヤと笑みを見せる。

 

「くくく。マイ達にサンタの仕事を受けた出来事を聞いてな。面白そうだからお前受けろ」

 

「やです、骨折したくありません」

 

ローはあれを見ていないから簡単に言えるのだ。

落ちる光景が今でも鮮明に思い出せる。

顔を青くして震えてから大きく首を振ると彼はクスリと笑う。

 

「おれもやる。落ちる事も落とす事もしねェと保証してやるから」

 

「う、うーん……そう言われても……ローさんは空飛ぶソリになんて乗った事ないでしょう?」

 

素人にそんな真似は期待出来ない。

リーシャだっていつ落ちるかも分からない不安定な所に座るのは嫌だ。

それでもローは安心しろと言うと問答無用で手を引く。

甲板に居たマイとヨーコに「こいつを連れて行く」と言うと止めてくれる訳もなく快く見送られた。

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