connect   作:苺のタルトですが

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三人となって集まると諦めると思っていたが、全くそんな素振りはなく寧ろもっと懇親的に話し出した。

三人だけの女で出歩くのは危ないのでローの偽物は一緒に付いていくと言う。

そこでふと思いついたのだが、彼は別に本物ではなく偽物。

つまりは七武海という意識もなければ、彼は七武海並に強い訳もない。

という事はこの厄介事を退けられるかもしれない。

 

「あの、私達急いでますのでもう言っても宜しいですか?」

 

リーシャは笑顔を張り付けて完璧スマイルを向ける。

相手が少したじろぐのが窺えた。

ロー偽物がそんな感じなのでマイとヨーコも援護射撃してきた。

 

「私達、こんな感じですが腕には覚えがありますのでご心配なく」

 

マイがお淑やかに言う。

ヨーコはヨーコでそれに加えて「じゃあね!」と言ってバビューンとその場から逃走。

追ってくる気配もなく、後ろを見ても人影はなく、死角の曲がり角で二人は止まる。

息を吐いてはいるものの荒ぶっていたり息を乱している事もない。

それに比べてリーシャは走っている途中で既に荒い息を吐き出しては空気を吸って、懸命に呼吸を繰り返していた。

二人との体力の差はこの通りである。

 

「船長さんに電話してからもうすぐ一時間ですよね?それまでは宿屋にでも身を隠しておきましょう」

 

「私達が居ない間に何があったのかはしっかり話してもらうわよ」

 

二人に言われてトホホとなる。

その流れで全て言うとなると二人のお説教が一割と過保護九割になる事は間違いない。

それにロー達への黙秘も視野に入れておかなければ後々苦労するだろう。

偽物ローにタイプと言われたりしたと言うだけで二人に猛追求が来た。

それにコクリと何度も何度頷いていくと首が痺れてきた。

序でに肩も凝ってきたので白旗を挙げて二人を宥める。

確かに、今回はあまり関わり合いにならない方が良いだろう。

そうして部屋でだらだらして寛いでいると外が何やら騒がしい。

窓から見ても騒がれている相手は分からないが、もしかしかたらロー達が陸に降りたから噂が広がっているのかもしれないと頬が緩む。

その時、部屋に備え付けられている電話が鳴り、手に取るとフロントからであった。

何でも七武海がリーシャと会いたいと言うので降りてきてはくれまいかと泣き声寸前の様子で言ってきた。

ローか偽物ローか。

どちらか分からない。

見なければ判断出来ないと思うと少し時間を稼いでおいて欲しいとフロントに無茶を言う。

フロントの人間だって自分の存在を知り生け贄として言って欲しいと言っているのだからこれくらいはするべきだ。

仮に本物でも、フロントの人間は彼の探している女のリーシャを隠そうとせずに教えた可能性だってある。

下手をしたら部屋番号を言ってこの部屋へ向かわせているかもしれない。

急いで二人に簡潔に言うと荷物を直ぐにまとめて外へ出る。

相手がローのように壁を抜けられる能力ではないのが救いだ。

窓から逃げるとベランダを伝い隣のベランダに移る。

やっている事はまるで大泥棒の逃走劇だなあ、とぼんやり思う。

下に降りるとコソコソと入り口を窺い遠目に見えたのは。

 

(ガチ偽物)

 

確かロー達には宿を教えといたが、何故偽物は此処に居るの分かったのだろうか。

もしかして付いてきたから場所を知っていたのかもしれない。

沸々と湧く疲れが溜息を吐かせた。

 

「あの、お客様?」

 

外にいたフロント係が声を掛けてきた。

コソコソやっているとそりゃあ不審者だろうけれど、無理な話しではあるが空気を呼んで声を掛けないでいただきたいものだ。

 

「もしかしてリーシャ様でございますか?」

 

「違います」

 

此処で肯定したら生け贄決定だ。

濁った目で言うと相手は怯んだように笑う。

 

「あの七武海様は何時頃までこの島にいらっしゃるのですか?」

 

マイがナイス質問をする。

それにフロント係は今日の夕方には出て行かれるとの噂ですと答えた。

この宿の個人情報取り扱いについて一日完徹で問い詰めてから上書きしてやりたくなる。

ついでに五発くらいは殴らせて欲しい。

人間が施設を運営している限り完全に情報は守れないのだとヒシヒシ感じた。

 

「あ、あの変態こっち来る」

 

ヨーコの発言にマイとリーシャは納得してまう。

確かにあの男は変態の称号を上げても良いくらいの粘着質男だ。

わざわざ宿まで探して呼び出すなんて、そこまでする事は無いだろうと高を括っていた自分も悪い。

そして、今後はもっと警戒しようと決めてから二人に言う。

今日行ってしまうのなら、ロー達が来るまでの時間稼ぎをするので後は任せてくれと。

それに反対する暇も無く彼はこちらへ近付いて来たので私は平気だと気丈に振る舞った。

彼女らの納得していない視線を交わして正面へ挑む。

 

「あの、こういうの凄く困ります」

 

先ずは一番初めに困っているアピールをする。

そして次は相手の出方でやり方を変えていく。

バイトで身に付けた臨機応変である。

こんな所で役に立つとは、経験とは何と素晴らしいのだろう。

ロー偽物は謝ってから今日出発するから一目会いたくてと言い訳にしても悪い気はしない。

好意も慣れないが、此処までストレートだと言葉に詰まる。

 

「今日お発ちになるのですね…………此処では何ですから何処か個室で話しませんか?」

 

周りからの視線が焦れったくてまどろっこしい。

フロント係の一人に目をやると待っていたのか鍵を持ってこちらですと先導していく。

ヤケに手際が良い事を見るとフロント係も盗み聞きしていたようだ。

中へ通されると個人的に商談とかに使われていそうな部屋で、スペースは他の部屋と違わない。

椅子に座って正面を進めると相手は刀を脇に置く。

 

「で、具体的には私と会ってお話しする為に此処へ来た。で合っていますか」

 

自分優位に話しを進める為に自分から切り出す。

 

「嗚呼。その…………おれは本気だ。もし、貴方が良ければ…………おれと一緒に来て欲しい」

 

「…………海賊船に、ですよね?」

 

ローにだってそんな事を言われた事もない。

というか、色々理由があるが、絶対に乗らない。

彼一人という旅で、一ヶ月くらいはまあ何とかやれるだろうが、彼の仲間を思い出すととてもでは無いが大切なものを失ったり奴隷にされる予感が至極する。

そんな治安の悪そうな沈没船に乗りたくない。

リーシャが渋っている(心底嫌悪している)ように見えるのか、彼は少し慌てたように言う。

 

「勿論、危険な目には絶対に遭わせない」

 

と、言われても。

彼は守ると言うが、彼の周りに居る性格が良くなさそうな人達相手に上手く立ち回れるとは思えない。

男なら暴力で済み、女だと捨て身のレベルだ。

無理だと答えると彼は緊張のせいか、手を堅く握る。

何かを決意して実行に移そうとしているという顔だ。

それに女の感というか、脳内に危険だと信号が送られる。

相手は徐に立ち上がるとスッとこちらへ寄った。

本能的にリーシャは立ち上がるとドアへ向かう。

しかし、腕を取られて反動で相手方の身体がある方向へ向かう。

グッと握られる腕に目をしばたかせるしか出来ない。

何をされるのか、襲われるのか、告白されるのか、誘拐されるのか。

どれか起こるというのは辛うじて理解し、警戒し身構える。

此処に自分の味方は居ない。

自分の身は自分で守るしかないのだ。

彼女達に教えられた護身術(初級編)をやっと本格的に実践する時がきた。

ローには喉潰しをしたが、彼は一般人に比べてタフだから対して効果はなかった。

 

「無理矢理、連れて行く気はない」

 

「っ…………何故腕を捕まれているのか説明を求めても?」

 

聞くと彼は俯き、更に顔を寄せてくる。

これは、顔が近い。

 

「あ、あの?」

 

どうしようかと脳内でグルグル回る。

もう目と鼻の先の距離にあって、冷や汗が出た。

 

(どうしよう。殴るべき?蹴るべき?)

 

傍らにある刀を抜かれても堪らない。

でも、好きにさせるのも嫌だ。

動転する程ではないにしろ、この真面目な人の対応に悩む。

 

──ズバァン!

 

轟音に耳を塞ぐ暇も無く目を閉じる。

もしかして賊でも侵入してきたのか。

それくらいはあり得るくらい運が無いのを自覚しているので可能性はある。

目を開けて情報を入れ出した途端、ぽかんとなった。

 

「あ、え、あ…………え?」

 

(確かに私が呼んだし、居ても何ら可笑しくないけど…………派手な登場だなあ)

 

刀を抜いている姿勢で剃刀(かみそり)の如き視線でギロッとこちらともう一人を見据える。

これは相当頭に来ている顔だ。

扉が横に向けて真っ二つになっている。

それだけでもう静かな激怒を胸に秘めているのが窺える。

偽物ローはリーシャの腕を掴んでいる状態で呆けていた。

目の前でこういう事が起きると普通はこんな感じなので仕方がない。

状況を呑み込めずにいる相手をローは見て、更に額の皺をギュッと寄せる。

のこのこ此処に付いてきて話しを聞いた事か、一緒に居ている事についてか。

それともローだと本人を差し置いて偽物が横暴的に行動している事に怒っているのか。

ロー(本物)は偽物に向かって「その女を渡してもらうぞ」と言う。

流石に模しているからかローだと認識しているらしい男は彼の言葉に掴んでいる腕を更に強くする。

此処は離す所ではなかろうか。

怖くて離すに離せないのかと思っていると、果敢にも(しかし、無謀でもある)偽物は彼に「この人はおれが見つけたんだっ。お前には関係無い。渡す事は出来兼ねる」と言う。

渡した方が身の為だと感じるが、此処は黙れば良いのか、進言して自分から行くと告げる方が良いのか。

こちらとしては機嫌が悪いローの相手を後にも先にもしなければいけないのだ。

少しでも機嫌を良くしてもらいポイントを稼ぎたいと思うのは当然。

というか、今は取り敢えずこれ以上彼を怒らせるままにさせてはおけない。

相手が彼の王下七武海であり、こちらは単に純粋な偽物。

勝負をするまでもなく負け戦になる。

 

「あ?関係あるに決まってんだろ?おれのもんを横撮りしてんのはてめェだ。頭の悪い言葉を無駄に撒き散らすな」

 

一瞬で目の前に移動したローはリーシャと位置を入れ替え、ハッとした時には既に彼は男を長い臣足で蹴飛ばしていた。

数秒の間の出来事に騒然となる。

その直ぐ後にマイ達も入ってきて、地に伏せっている偽物を見て安堵すると同時に何もされていないかと言ってきた。

ギリギリセーフだと心の中で呟くが、結局はどうともなかったので大丈夫だと報告。

無駄に心配させたりする必要もない。

壁に亀裂が走るくらいは強く蹴られた偽物の心配を少ししてしまうのは、駄目だろうか。

気になってチラチラ見ているとそれを阻止するかのように立ち塞がるロー。

そう言えば少し、忘れていた。

うっかりしていた自分に呆れつつもローに礼をする。

 

「本当に反省してるのか?男と二人っ切りになっておいて。これじゃあいつもと変わりやしねェ」

 

怒気を僅かに含んだ声音で咎めるローに今回ばかりは反省する。

言う気は無いが、彼が来なかったら何かをされていただろう。

マイとヨーコにも心配を掛けてしまったという罪悪感にごめんと謝る。

次からはリーシャ一人ではなく三人で行動して欲しいと言われて頷く。

緊急性が高かったから無視だが。

内心こっそり思うとローがこちらの頬を無遠慮に引っ張ってきた。

 

「いひゃ、いひゃいれす」

 

涙目になりかけているとローは二人にこいつから目を離すなとまるで心の中を読んだような絶妙なタイミングで言った。

 

 

 

 

 

自分は一つ、嘘を持っている。

一人だった時は、一人だったからこそその嘘を抱いて暖めて眠れば後は何でも良かった。

既に肩書きは無くなったのだと自覚するには、この世界は辛すぎたのだ。

だがしかし、今はどうだろう。

嘘を抱いて眠らなくても眠れる。

これほどまであっさりと感じるのはマイやヨーコが居てくれた。

リーシャは一つ、嘘を持っていた。

過去形である。

笑いたくなる程、何とも思わなくなっていた。

 

 

 

潮風に当たって日光浴をしているとマイがお茶を入れたと言って渡してきてくれた。

彼女の入れるお茶は雅で美味しい。

 

「凄いですよ。船長さんがまた新聞に載っています」

 

「期待の新人七武海だもんねえ」

 

戦い方を習った相手を敬う気持ちはヨーコ達に根深くある。

毎回記事が出ているとまるで自分達の事のように嬉しそうに見ているのが分かった。

ローは二人を一喜一憂させる罪な男であろう。

本人に言ったら鼻で笑われるレベルの事を抱いていると、ヨーコから前方から船が見えると報告を受けた。

 

「どれどれ?」

 

ヨーコの居る見張り台へと向かい双眼鏡を覗き込む。

黒煙が上がっている。

そして、片方の二隻目の船へと動かすと口元が引きつった。

 

「あれは!直ちに方向転換!ほら、早く!」

 

マイを急かすと彼女は慌てて下へ降りる。

ヨーコは何処かで見た事があるような無いようなと唸っている。

確かにあやふやな記憶になるのは致し方ない。

船は徐々に方向を変えて真横へと向く。

 

──ガコン!

 

しかし、突如船が真正面へと動く。

 

「あれ?マイ、何やってんのよ!」

 

ヨーコは運転の不手際を叫んだが、これは恐らくマイによるものではない。

そのまま中型船は黒煙の上がる船の方向へと進み出す。

マイは操縦が可笑しいと嘆いているが、最も混乱しているのはマイだと思う。

スイスイと進んでいく船を騒然としながら見ているしかない。

どうにもこうにも何も出来ないという訳だ。

やがて船が接近して目と鼻の先となる。

警戒しているマイとヨーコを見ながら内心(どうしてこうなるかなあ)と頭が痛くなる。

もしかしたら、この船を何かの商船か何かかと勘違いしているから引き寄せているのかもしれない。

あの仰々しい船は一度見たら忘れられない。

この船は──。

 

「女?女が居るぜ、頭ァ!」

 

「……マイ、行くわよ、三で」

 

「うん」

 

二人が囁き合うのが聞こえて咄嗟に後ろを向く。

行かない方が、と口にしようとしたら横を二人が駆け抜ける。

 

「ふ、二人ともストップぅ!」

 

止めても彼女達は止まらない。

既に相手の船に乗り込む姿に慌てて追いかける。

二人がド初っ発で猛攻してきたので相手も驚いて防御をして、相手の男達が剣を抜き出した。

そこでギョッとなりリーシャは慌てて前に出て庇うようにする。

マイとヨーコは咎めるように退いてくれと言われるが落ち着けと宥めた。

二人は納得していない顔でムスッとしている。

 

「随分腕の立つ女だな」

 

足音を響かせて出てきたのは殺戮武人キラー。

彼は髪は靡(なび)かせて颯爽現れるとこちらを見るや「嗚呼、誰かと思えばお前か」と言ってくれた。

これで敵と認識されなくなると安堵。

息を吐いて「お久しぶりです。今回は覚えていて下さったのですね」とにこやかに笑う。

印象を良くしときたいし、切りかかったのはこちらの不手際でもある。

 

「元を辿ればキッドが無理矢理引き寄せたせいだ。警戒しても何ら不思議ではない……だろ、キッド?」

 

後ろを見たキラーに吊られて見ると赤いキッドが居た。

 

「知らなかったんだ。しゃーねー」

 

「しゃあねえって……」

 

マイが不服そうに言う。

引き寄せたのに悪気も何もない。

そう運悪く出会してあまつさえ、船を能力で引き寄せた男、ユースタス・キッドである。

今や新世界の勢力と恐れられる海賊の船長であった。

ひとまず知っている相手だったのは不幸中の幸いであろう。

キッドの方を向いて「お久しぶりです。その節はどうも」と言うと何とも思っていない顔で「偶然やった事だ」と言われる。

マイとヨーコに一度助けられた事があるから攻撃をする必要は無いと伝えると彼女達は納得顔で武器を構えるのを止めた。

これで取り敢えずは安心だ。

仮に戦うにしても負け戦同然の結果となる。

今や億越えの中でも最も力を付けて、着々と懸賞金を上げている新世界での真の実力者であるわけだ。

キラーはキッドに何やら言うと面倒そうな顔で額を皺だらけにする。

 

「あの女を出て行かせる為…………仕方ねェか」

 

何やらムズムズと胸が騒ぐ。

何か厄介事を押し付けられそうな予感にマイとヨーコに船に戻ろうと小声で言う。

コソコソと船へ戻ろうとすると、むんずと腰に太い腕が巻き付く。

 

「リーシャさん!貴様ぁ!その手を離しなさい!」

 

マイが再び武器を取り出してヒュッとこちらへ走る。

だから、勝負にならないのに!

 

「動きは悪くねー。けど」

 

「わ、き、キッドさん!」

 

彼が動くから自分も揺れる。

突然の激しい動きに吐きそうだ。

 

「っう!」

 

避けたキッドに悔しげな顔のマイ。

 

「惜しいな」

 

したり顔で言う男。

人質抱えて言われてもと溜息を吐く。

好い加減挑発するような態度は止めてくれと頭を抱えたくなる。

 

「キッド、あまり機嫌を損ねると頼まれてくれなくなるぞ」

 

キラーが執り成してくれた。

 

「そもそもこいつらが帰ろうとしたから止めたまでの事だろ」

 

「だって、厄介事を押し付けられるような予感がしまして」

 

「はっ、何だァ?鋭いじゃねェか?」

 

ニヤッと笑うキッドは顔を寄せてくる。

それにまた憤慨するヨーコ達。

 

「ていうかさっさと離しなさいよ!あんたと違ってリーシャの身体はか弱いんだから!折れたらどうしてくれるわけ!」

 

ヨーコの言葉にそこまでか弱くない、と内心苦笑い。

彼女の叫んだ内容にキッド本人は胡散臭さそうに抱えている人間を見つめた。

そんな人間ならば海に流されていた時点で死んでいるだろうと声を出したくなる。

 

「じゃあ、そんなにか弱いんだったら何で新世界に来てんだ」

 

「んなの私達の勝手!ていうか、リーシャを話しなさいよっ」

 

ヨーコの言っている事は最もだが、短気なキッドにはご名答でもなかった。

眉に皺を寄せて少し不機嫌そうだ。

このままでは平和な時間ではなくなる。

頭脳をこれでもかと回転させるとパァ、と閃く。

妙案でも明暗でも無いけれど、険悪な空気を変えるにはこれだ。

 

「そう言えば、ユースタス・キッドさん。貴方、さっき厄介事を否定しませんでしたよね?」

 

「あ?嗚呼」

 

肯定したのでその先へグイグイ行く。

話しだけでも聞くから話し合いの席を設けて欲しいとキラーに頼む。

変わらずビクともしない太腕に抱えられているので自分の身体を無理矢理捻る。

仮面の見える方向に頼み込むと頷いてくれた。

 

「キッド、此処で話していてもラチが明かない。一旦冷静に話し合ってみてはどうだ?」

 

流石は右腕。

身体を浮かしたまま運搬されていくリーシャを追う形で二人も付いてきた。

後はキラーがその後ろから。

キッドだけでは喧嘩になると踏んだのだろう。

キッドの事を良く理解しているからこそ成せる行動だ。

キッドは部屋に着くとソファーにふんぞり返るとリーシャを膝に乗せた。

乗せる理由が分からなくて居心地が悪い。

身体を捩って何とかせめてキッドの膝から降りようとするが腰に回っている腕によって退かそうとしても動かせない。

その内、無機質な腕に腰を抱かれて、生身の腕が肩に回されて髪をクルクルと絡めて巻き出す。

キッドのその行動に青筋を立てて睨み付けている少女等全く気にする素振りはない。

 

「その手を今すぐ離して下さい」

 

「っていうか、頼まれても断るからね、私達!」

 

完全に嫌われたなぁ、と内心仕方ないと頷く。

 

「こいつの黒髪、好みだから遊びたくなるんだよな」

 

「私の髪だって黒いし、ヨーコの髪だって真っ黒ですが?」

 

マイがキレている。

 

「お前等は真っ黒過ぎんだよ。こいつの髪は太陽に焼けて少し茶色い。これくらいがおれには良い。後、お前等は若過ぎて全く食指が湧いてこねェ」

 

「キッド!」

 

最後の言葉に立ち上がる二人。

キラーが彼を咎めたくなるのは同然だ。

 

「リーシャさんを厭らしい目で見てるなんて不潔!最低!」

 

「てか、若過ぎって何?あんた二十二でしょ!?あたし等の方が歳近いわよ!!てか、好い加減手ぇ離せ!このパンク系ギタリストモドキ!」

 

二人がやいのやいのと言い初めてキッドは面倒そうに息を吐く。

いやいや、こっちが吐きたいんですけど。

貴女のせいで二人の心は大荒れだよ!

 

「あー、えっと……キッドさん。貴方とそういう関係になる気は一ミリも無いので、あと予定も……てな訳で話しを聞くというお約束なので、話してもらえます?」

 

「んなもんヤッてみねェと」

 

「はい、ブーです、キッドさん!」

 

「あ?何がだ?」

 

「私もこの子達もそういう下世話なお話は好きではないのでー、控えてもらいましょうかね」

 

「ちっ、前にヤッときゃ良かったぜ」

 

リーシャだけに聞こえる音量で言うキッドの発言を無視してからキラーに催促をする。

キッドに話しを聞くには時間が無駄に掛かるだろう。

キラーは視線を理解してくれた様で頼みたい事の概要を言い始めた。

 

 

 

キラーの話しを聞いていく内に全く聞く耳を動かさなかったマイとヨーコの顔色が変わっていく。

内容はこうだ。

ある日、拠点(城)でいつものように過ごしているとキッドが退屈だと漏らしたらしい。

その途端、天井から(落ちた本人から言わせるとアスファルトから落ちた)女が落ちてきたという。

 

「そいつ、此処が漫画の世界だの、おれの事を見て興奮したりして気味が悪ィったらねェ」

 

確かにいきなり現れて「貴方の事知ってます」と言われたらそれ以外に感じる人は居まい。

リーシャだってそんな事を言われたら距離を作る。

キッドの気持ちを少しは理解出来るのでキッドに「可哀想に」と視線を投げ掛けるけれど、彼は同情される為に語ったのではないと言う。

でも、この話しはかなり同情され易いとは思うが。

 

「って!その女、天井からって言った?もしかして、トリップしてきたんじゃ!」

 

ヨーコが耐え切れ無い様子でキラーに聞く。

それにキラーは嗚呼と言って肯定するのを見てマイも歓喜と戸惑いの様子で「その人は今……」と居場所と安否を確認。

海賊の上に落ちたとなれば生きていても普通のままである等、あまり考え難い。

 

「今は軟禁してる。別に何もしていないが煩くて迷惑している。持て余している状態でな……同じ民間人のお前達ならばどうにかしてくれるかもしれないとおれ達は思ってる」

 

「どうして持て余しているのですか?キッドさん達ならねじ伏せてでも大人しくさせておけると思うのですが」

 

リーシャが疑問点を指摘するとキラーが無駄に情報を知っているから放つに放てないと述べるので嗚呼、と納得。

ヨーコがこの世界の物語があると言っていて、この世界の知識を知らない人間は少ないと前に言っていたので『知識有り』の人間がこの場所へ飛ばされたという事だろう。

簡単に理解し終えるとキッドに尋ねる。

 

「貴方達はその人に何を望むのですか?私達にどうして欲しいのです?具体的に言ってもらわないと私達の手にも余ると思いますよ」

 

「やっぱ賢いなリーシャは。くくっ」

 

キッドは更にお気に召してしまったのか上機嫌に笑っている。

 

「笑ってないでさっさと言いなさいよ!後、何度も言ってあげるけどっ、離しなさいよ!」

 

ヨーコが焦れったく催促するのを聞いてキッドはキラーに説明しろと丸投げした。

船長とはこんな風だっただろうか。

傍若無人であろうその性格は器があるようだが、知識の方面はキラーに任せているようだ。

 

「キッド、争いの元になる事をするな……説明は向こうへ行きながらで良いか?その女は住処の一室に居るから案内する」

 

「待って下さい」

 

キラーが行動に移そうという時、マイが待ったを掛ける。

 

「その女性と私達の相性が悪い場合、負の連鎖が起きます。先ずはその人について詳しく教えて下さらないと行けません」

 

「マイ?もしかしたらあたし達と同じ……人かもしれないのよ?」

 

「ヨーコ。確かに親近感を持つのは何ら不思議じゃない。けど、その人が私達の知る民間人みたいな人じゃなくて……裏の人間だったらどうする?」

 

ヨーコの息がゴクリと鳴る。

先程までマイも同じトリッパーかもしれないと期待に歓喜していたのに、見事な切り替えの良さだ。

リーシャとてそんな事態は流石に想定していなかった。

そうか、そっちの世界にもそういう類の人間が居る。

しかも、この世界の無法者のような話しの通じる人間かどうかも考えものである。

下手をしたら警戒されて怪我をしてしまうかもしれないし、変に関わって、こちらがトリッパーだと知られでもしたら、情報を売られる可能性も捨て切れない。

マイの予感は侮れ無いので気を引き締める必要がある。

 

「でも、マイ。そんなポンポン一般人じゃない人が来る何て滅多に無いと思うけど。トリップものの話しだって、普通は一般人が基本だけど」

 

ヨーコの言いたい事は分かるが、この世界のイレギュラーと人の構想の中の常を一緒くたにするのも危険だ。

 

「ヨーコ……そもそもトリップというもの事態有り得ないんだから。私達の常識を混合したら失敗する」

 

マイはヨーコの構想脳に呆れた声を出して再び注意をする。

ヨーコは分かったと渋々頷き立ち上がろうとした腰を下ろす。

それで良いのだと見ていたリーシャはキッドに目隠しさせてから来させるように頼む。

彼は楽しそうだとそれを呑むとキラーに命令する。

一室に案内されて五分経過後、まだ来ないのかと聞くと地下に監禁しているから時間が掛かると言われた。

軟禁していたんじゃないのかと聞くと海に出る時は万が一を期して監禁するのだと述べられてそれならば仕方ないと言う。

 

「ははは、随分冷たく言うな。お前、記者より海賊の方が性に合ってんじゃねェのか?」

 

高笑いしたキッドにそう誇示されてとんでもないと首を振る。

もしも海賊になった場合インペンルダウンに一瞬で入れる自信がある。

そう言うと彼はそうならないようにおれがクルーとして入れてやると言われたが、もしも、の話しであって成る気は一切無いと断言。

キッドは残念だと肩を竦めてまた腰をスルリと撫でた。

軽いセクハラに黙っているとヨーコ達がキッドを睨んで小声で「呪ってやる」と言うので止めようと心に決めた。

呪いはやった本人、つまり自分にも帰ってくるので彼女達を呪いに巻き込むのは勘弁願いたい。

それに、呪いのやり方何て知らないだろうに、呪うとは良く言ったものだ。

 

(もしかしてマイとか知ってるのかな?有り得るのが怖い……)

 

呪いよりそっちの方が危ない。

彼女達の堪忍袋の緒を切れさせない為にはキッドを先ずどうにかせねば。

根本さえ退かせば彼女達の気に触る事もない。

キッドの手を退かしても離れないので軽く抓ってみた。

 

「お前…………握力、弱ェ」

 

逆に憐れまれた。

こんな筈では。

 

「海賊は無理だな……ま、おれの下でなら沢山ヤる事はあるから別に暇にはならねェ」

 

やる、の言葉のイントネーションの差が決定的にある様に思えるのは気のせいではなさそうだ。

絶対に何があってもキッドの所へは助けは求めないと決めた瞬間である。

きっと、碌でもない事をさせられるであろうと悟る。

キッドにもう直ぐ人が来るから離してと言うと、名残惜し気に離された。

リーシャの腰にそこまでの魅力は無い筈だけれど。

疑問と疑惑に駆られつつ前を向き、少し、耳を傾けると足音が聞こえてきた。

二人分。

その前に一旦立ち止まった足音はきっと目隠しをしているのだろう。

 

「何で!?──ちょ──」

 

騒いでいる。

きっと目隠しする理由を聞いていないのだ。

明確な説明も無しに目隠ししたら己とて騒ぐ。

けれど、此処まで相手の神経に触る騒ぎ方はしない。

下手をすれば煩いと殺される危険性を考慮したら、騒ぐという選択肢も消える。

扉の向こうに居る女は恐らく自分の今居る立場を良く理解していないと見た。

 

「やっぱ煩ェな……猿轡もさせるべきだな」

 

キッドの発言に動揺したのは二人で、リーシャはキッドの性格上そう言うのではと予期していたので衝撃という衝撃は特に無かった。

海賊と言うのは気分屋な人間も多い。

ルーキーと嘗(かつ)て呼ばれていたキッドもその性格で、その時の気分で決まる消える命も多いだろう。

その中で、噂のトリップ女性が生きていられたのはある意味幸運だ。

彼が死ね、もしくは殺せ、もしくは殺す、という言葉を口に出していたらその瞬間彼女は命を散らす。

良く無事だったと感心さえ起こる。

だからローよりも、キッドが好きにリーシャの髪を弄んだり、抱き抱えたりしてもあまり反抗せずに甘んじて受け入れたのだ。

出来るだけご機嫌を取っておこうと。

マイとヨーコの同じ異世界の人間を助けたいという想いが少しでもあるならば、もしくは仄かに感じていた場合、交渉し易いように。

幸運だったのはキッド達から厄介者をどうにかしてくれと依頼された事。

これがもしこちらからどうにかするから会わせてくれと頼んだ場合は手札を相手に握られて対価を何か渡さねばならない確率が上がる。

今回はキッド達の頼みなのでこちらがどう行動してもこちらで預かる事だって出来る。

手放したがっているというは即ち執着していないけれど、存在を持て余している訳だ。

彼女は実にラッキーな人なのだ。

しかし、それもキッド達が只生かしておいたというだけで、何も殺さないという訳ではない。

もう少し賢かったら良かったのだが、そこだけは大きく期待外れである。

 

「随分ガッカリしてんな……ついでに手足も奪っておくか?」

 

リーシャの心を少しばかり汲んだキッドに指摘されて「それをされるとこちらが困ります」とノーサンキュウを伝える。

良心が痛む、というのもあるが、それもあるし、それをされるとマイとヨーコに多大なるトラウマが植え付けられてしまう。

それが心配だ。

三人のケア等、こちらの精神が擦り切れる事間違いなし。

起こる可能性の無いトラウマは生まれなくて良い。

入ってきた人は、一言で言うと『捕虜』の姿がしっくりきた。

目隠しされているので顔は知らないが、姿はボロ布の服に髪はパサパサしている。

彼女を連れてくる前にキラーと相談して、こちらが筆談した事をキラーに読んでもらい、全てこちらの情報を与えずにやっていくという手筈だ。

色々考えて、相手が一般人であれ、違う場合であれ、それが確認出来るまで声だって相手に与えない。

 

「お前の名を言え」

 

紙に書いた順に質問していくキラー。

すんなり答えるのがこういう場面でのテンプレートだが、彼女は逸脱していた。

やはり、あまり頭が宜(よろ)しくない。

 

「真っ暗だし、なんで今更名前なんて言わないといけないの!?外してよ!」

 

「聞かれた事に答えろ」

 

キラーが言っても彼女は「キラーってこんな人じゃないのに……」と発言。

それにキラー本人は「お前がおれの何を知っているんだ」と少し呆れた声音で返す。

この会話を何度かやっているらしいやり取りである。

確かにこれはキラーやキッド達を警戒させるには十分だろう。

 

「名前を、言え」

 

「…………コジシマ、アリサ……ほら、言ったわ!」

 

「「!!?」」

 

名前に反応したのか、彼女の態度に反応したのか、マイとヨーコが立ち上がる。

直ぐに彼女達の肩に手を置いて座らせた。

 

「年齢、性別、生年月日」

 

キラーの質問に答えていくアリサ。

アリサの言葉の途中でマイが紙にサラサラと何かを書いてキラーに手渡す。

それをキラーはカタコトで述べた。

 

「出身地、県から言え」

 

見事にカタコトで、此処では言い慣れない「県」という言葉。

その言葉にアリサは淡々と苛々という感じの声音で答える。

 

「前に県って何だって、意味の分からない事言うなって言ってたのに何でまた聞くの!?」

 

不可解であろう数々の質問。

キラーは綺麗にそれを無視し、次の質問を言う。

ヨーコが渡した紙を読み出す。

 

「高校?の名?を言え……?」

 

綺麗にカタコトで言うと、アリサが息を呑んだ。

 

「……っ」

 

彼女の紡いだ言葉に二人の緊張が高まる。

 

「最後の質問だ。お前は何という場所からきた?お前の住む世界の名を言え」

 

「ち、きゅう……青い惑星、地球から、来た……」

 

この子はどうやら普通の子だと判断するのはリーシャでなく、二人のようだと首をもたげた。

 

 

一旦キラーに部屋から離れた所にアリサを隔離してもらい、二人に話しを聞く。

意見を出し合って決めねばならない。

けれど、恐らく、二人は反対所か、保護するとでも言い出しそうである。

アリサの名を聞いて反応したので大方の意見は聞かなくても分かる。

でも、一応キッドの手前だから聞く。

 

「あのー、キッドさーん?」

 

二人の反応は異世界の事と明確に判断出来なくても、同じような事を体験した人間と思わせるような態度ばかりであった。

二人にそれをフォローする気持ちの余裕が無かったとは言え、キッドに知らぬはぜぬをお願いしとかなければ。

猫撫で声でキッドを呼ぶと彼はスッと目を合わせてニタリと笑う。

 

「はっ!言わなくても分かってる。そっちに厄介者押し付けようってんだ、こっちもそれなりに約束してやる。」

 

おお、太っ腹である。

 

「ま、別に知ったところで言う奴何てそもそも居ねーしよ。海軍とも仲良くなりてェとも思わねェ」

 

「ありがとうございます。絶対に秘密でお願いしますねっ」

 

「ああ」

 

「キッドさんのお株が上昇中ですよーもう~」

 

にこにことしながら言うと寂しくなったらいつでも空いてるぜ、と宣伝してくるキッドに「それはお株も大暴落なのでー」と避ける。

彼はそういう会話が好きな人種なのだと悟ってしまったので扱いが楽だ。

ローみたいに言葉より先に口が、というのではないから。

 

「さて、二人はどうしたい?」

 

「……引き取りたい。だって」

 

「あの人、私達の高校の同級生でした」

 

ヨーコが何か言う前にマイが説明した。

ヨーコはその言葉に頷くが次の言葉には首が固まった。

 

「そして、私の嫌いな人、です」

 

「へぇ、うん、成る程。つまり、マイをいびってた人って事だねえ」

 

「!……そうよ。私の友達……って程仲良く無いけど、まあつるんでたわね」

 

ヨーコが知っていたのかという顔をする。

知っていたとも。

 

「でも、異世界に落ちたのなら、私達の方が先輩で……もう、怖くないです」

 

マイは強い瞳で言い切る。

 

「今は、私の方が強いですからね。岩だって砕けるのに、あの人が怖いなんて気持ち、自分でも笑えてしまうくらい無くなってます」

 

マイの言葉にヨーコがクスッと笑う。

確かに岩も砕けてしまう力を手に入れたのだから現代の人間何て敵ではない。

彼女のグレートークを聞いて自分も頼もしいと笑う。

引き取る事が可決されて、その意向をキラーに伝えると間もなく彼女が目隠しされていないまま姿を現した。

今は大学生となった同級生との再会。

そこでリーシャはふと、向こうではマイ達はどういう事になっているのかと思って、アリサの態度を観察。

アリサは二人を見た途端に、最初は目を細めて、段々と見開いていく。

 

「も、もしかして、マイ……?ヨーコ?なの?」

 

確かめるように呟き名を出すと二人は頷く。

それは例えるならば幽霊を見たような顔。

二人が元の世界で失踪扱いになっている可能性が出てきた。

異世界あるあるの向こうの世界では存在も忘れられてなかった事になっている可能性は消えたも同然。

覚えているという事は存在は認識されているから、次に心配なのは異世界での年月の差だ。

 

「失踪したんじゃっ……嘘!」

 

失踪したという事ならば少なくともかなり年月も空いている。

恐らく彼女達がこの世界で過ごした期間イコール失踪期間と見て間違いなさそうであった。

アリサの反応に二人はどう説明すれば良いのだろうかと悩んでいて口を引き結んでいるようだ。

少し助けてみよう。

このままでは平行線である。

 

「取り敢えず、二人はこうして生きてる。二人が向こうではどんな扱いになってるのか教えて欲しいです」

 

そう口にするとアリサはニュースや噂を纏めて教えてくれた。

誰だこの人と言う視線は無視。

神隠しにでも逢ったんじゃ無いかと言われて、高校生二人の失踪事件は随分と騒がれたと後に二人は聞かされる事となる。

大凡、そんな風にリーシャは纏めて整理した。

もっと説明は長くて五分以上を要したけれど、未知の世界に同士が居た安心からか口がかなり緩んでいる。

まあそれも仕方ない事だろう。

キッド達には話しが長くなるから四人で過ごさせてくれというと直ぐに退室してくれた。

リーシャも出ようかなと概要を知ったので後はプライベートな会話しかしないだろうしと空気になっていたが、そろそろ出ようかと腰を上げる。

 

「あ、ところで、この人は?」

 

「この世界に来た時に初めて会った人で、今も一緒に旅してる。ね、マイ」

 

「うん」

 

「ヨーコは兎も角、マイも?」

 

怪訝そうに言うアリサにまだ見下している節があるなと感づいていた事を考察。

マイもヨーコもそれとなく感じているが、今はまだ特に顔には出ていない。

 

「じゃ、私は出とくね」

 

一声掛けてから歩き出すと扉の外側に耳を付けた。

 

「うん。この壁分厚くて聞こえないなー」

 

何となく分かっていたけれど。

見聞色の覇気とやらをキラーが持っていないだろうかとキラーを探す為に城を散歩する事にした。

道成に進み、けれど船員が居ない。

迷子になりそうだ。

 

「あ、えっと、確か……」

 

「名前か?ワイヤーだ」

 

「そ、そう。ワイヤーさん。キラーさんを探しているのですが、場所って知ってますか?」

 

「キラーさんなら映像が見られる部屋に居るぜ」

 

「え!この城にそんな設備があるので?」

 

「嗚呼。便利な電伝虫も居るものだ」

 

「わー、私も欲しい電伝虫です。映像が見放題ですものねえ」

 

「だな」

 

話しが盛り上がって八分くらい経過した後に別れてキラーの居る映像の部屋を目指す。

聞いた場所から見えた扉に向かってノックをすると入れと聞こえてきて扉を引く。

 

「終わったのか?」

 

「いいえ。私だけ出てきたんです。その事でキラーさんに聞きたい事がありまして。見聞色の覇気って使えます?」

 

「ああ、少し」

 

その期待していた言葉に頼んでみようと困っている顔で言う。

あくまでもフリである。

 

「あのー、三人の会話を盗み聞きして欲しくてですねえ。あ、決して下らなくなんてありませんよ?あの子達が心配で……」

 

本気で本望と言うのをしかと伝えるとキラーが喉で笑う。

クツリと聞こえて面白い事なんて言ってないのだがと思う。

 

「過保護だな。お前よりも強いあの二人を心配だなんて」

 

「確かにあの子達は強いですけれど、言葉に対しても強いかというと違う訳ですからねー」

 

鍛えても精神が鍛えられるのはなかなか難しい。

 

「あの子達の当時の関係と今の関係は確実に変化している筈です。それで、あのアリサという人はどうにもマイを傷付けるのではと感じています」

 

「……分かった、協力しよう」

 

「!、ありがとうございます」

 

キラーは常識人なので女同士の会話を聞き取るのを渋るかもしれないと思っていたので頷いてくれた事に安心した。

本当は聞き耳を立てるなんていけない…………と思うような超真面目な性格は持ち合わせていないので躊躇しない。

二人が大切で好きだから何か知らない間に不足の事態に陥るのは絶対に嫌だ。

そうなると、こうするしか方法が思い付かない。

キラーは情報収集をする事に重きを置いているので見聞方面が強いらしい。

キッドは色々武力派なのでそういうのは無理だという。

聞く前から何となく悟っていた、とは言わないでおこう。

 

「……で、何と会話しているのですか、キラーさん」

 

ソワソワしてしまう。

キラーだけが頼みの綱である。

 

「……知らない言葉を使っているようだな……そのまま言う」

 

知らない言葉とは、彼女達の世界にある言葉の事かもしれない。

リーシャも時々何を行っているのか聞く。

例えば『スマホ』なんて物があるらしい。

 

「もう帰れないのか。分からない。何年此処に居る。二年くらいだ。じゃあ、私も失踪扱いになってるの?泣き声がする……慰める言葉をかけているようだが、何故か怒っているようだ」

 

「……続きをお願いします」

 

キラーにまた頼んで内容を吟味していく。

どうやら怒っているのはマイが慰めたからで、弱い癖にだとか、私達に怯えてた癖にとか、そんな事。

昔の事をその場に持ってくるなんて、よっぽどあの子は心が荒れている。

マイは冷静に返していて、ヨーコも何を言っているのだと窘(たしな)め、アリサは動揺しているらしい。

昔、共にマイをイビっていたヨーコの態度に驚いているのだと分かる。

それに、マイがもう昔の事だと言う。

格好いいな、マイ、と応援。

それに、またアリサが怒って立ち上がる音が聞こえたとキラーが言うので慌てて部屋から出て彼女達の居る部屋に向かい乗り込む。

キラーに口止めはきちんと頼んでおいたので多分安心であろう。

バレてもはぐらかすけれど。

キラーにお礼も言ったし、彼は常識人の筈なので期待を込めておく。

さて、此処のフラグの回収に向かうとしよう。

リーシャは何でもないフリをして部屋へ入ると物音がしたけれど、何かあったかと聞く。

すると、二人は何でもないと苦笑して返してきたのでやっぱり隠すのかと内心溜め息を吐く。

後で話してもらえると良いのだが。

今は兎に角今後どうするかを聞くとアリサと言う女性は眉を下げて「私もヨーコと行く」と言い出す。

それは初耳だったのかマイ達は彼女を仰ぎ見て困った様な顔をする。

そんな二人にお構いなくアリサはマイを見て「勿論乗せてくれるよね?」と威圧的に言う。

 

「…………リーシャさんと話し合って決めます。私一人の事じゃないので」

 

マイのきっぱりとした声音にアリサの額の皺が寄せられる。

それに(よくぞ言った!)と拍手を心の中で送ってから了解と二人を退室させて三人でキラーの所に向かった。

アリサは放置してあげた。

心細さに泣き叫ぶが良い!

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