夢の地、星の雨が降る   作:口の端にほっぺが!

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守護者

「忠義を捧げます!!」

 

広大な王座の間に、聞きなれない女性の声が響き渡る。

やや震えを帯びたアルベドの声は、誰が聞いてもその内に万感の思いがこもっていることがわかるだろう。

事実、下を向く女悪魔(サキュバス)は、涙をこらえるので必死だった。

そして、二人の主人の帰還に、セバスや、ほかのメイドたちも同じ心持ちだった。

 

 

 

(な、にが、起こった...?)

コンソールを開き、時刻の確認を試みる。

指輪を発動させ、ギルドの存続を願った時。確かに、0:00:00を指していたはず。

(ん?───あれ?)

 

「コンソールが、開かない...」

 

いくら空中をタッチして、いつも通りコンソールを開こうとしても、モモンガの指は文字通り空を切るだけ。

 

「GMコールもつながらない。強制アウトもできないみたい」

 

いくらか落ち着いたホシコが、戸惑うモモンガにこたえる。

以前と変わらずチームの冷却器の役割を果たすホシコの様子に、幾分かモモンガも心を落ち着かせる。

(そうだ、焦ってはいけない...)

それに、ここに集う3人は、ギルドでも頭脳派の一翼を担っていたメンバーだ。

モモンガにおいてはそれが戦術や戦略だったり、ギルドの中で多数決をとるだけのものであると彼自身は思っているが───今は、心強い仲間がいる。

 

「タブラさん。これ、何が起きてるのかわかりますか?」

 

多くの知識を持ち、いついかなる時でも───なんならホラー映画を見ている時でさえ───冷静さを保っていた頼れる仲間がここにいる。

(ユグドラシルⅡでも始まったんだろうか。いや、そんな告知はなかった...)

最後の最後で、盛大に運営がやらかしたのだろうか。

気持ちの良い最後だっただけに、不快感と苛立ちが積もる。

 

(しかし、こんな出来事なんか聞いたことがない。コンソールもGMコールも使えない、さらに強制アウトもできないとなると、完全に電脳法違反じゃないか)

不可解な出来事に、顎に手を当てて黙考する。

いったい何が起こっているのか。こういうことに詳しそうなタブラも多少考えをまとめる時間がいるだろう。

どうしたというのか。

 

「タブラさん?」

 

鈴の鳴るようなホシコの声が、不安げにタブラを呼びかける。

その様子に、モモンガも振り返ると。

 

「ちょ、タブラさん!?」

 

苦し気に過呼吸をするタブラが、突然崩れ落ちた。

 

 

 

---

 

 

 

「タブラさん、大丈夫ですか...?」

 

第九階層、ロイヤルスイートにある幾多もの部屋のうちの一つ。

タブラに割り当てられた部屋のベッドで、膨れ上がった水死体が、静かに横たわっていた。

文字だけで見れば手遅れ感甚だしいが、本人は気を落ち着かせたようでしきりにモモンガに謝っていた。

 

「すいません。迷惑かけちゃって...」

 

「そんなこと言わないでください。今はログアウトできないタブラさんが一番心配ですよ」

 

現在、タブラの部屋には、モモンガとタブラ二人だけだ。

ホシコは宝物殿に自分のメイン装備を取りに行き、その後セバスたちと合流してナザリック地下大墳墓の地表を捜索する手はずとなっている。

 

王座の間でタブラが倒れてすぐ、頭が真っ白になりかけたモモンガは、あわててタブラに駆け寄るアルベドに、ハッと意識を取り戻した。

一瞬、タブラさんが害されるのでは、などと思ってしまったために、ひとまずギルメンだけの時間を作ろうとアルベドには守護者たちへ一時間後に第六階層の円形闘技場(アンフィテアトルム)に集まるよう伝達に行かせた。

セバスには、前述のとおり、ここナザリック地下大墳墓で何が起こっているのかを確認させるべく外へと行かせ、メイドには9階層の警備にあたらせてある。ホシコは精神系魔法に特化しているため、「外の人たちと会ったら、情報を引き出せる」とのことで、セバスに同行することとなった。

 

(今考えると、うかつな指示だったかもしれない)

ただ、そばには肉弾戦に特化したNPCであるセバスや、おとりとして使うためソリュシャンもつけた。

ただ一つの心配は、自我を持ったようなそぶりを見せるNPCが彼女に手を上げないかどうかだ。

 

ただ、今の急務はタブラの容態を確認すること。

問題に問題が重なり猫の手も借りたい状態ではあるが、一人でないことに心の底から安堵する。

(一人できていたら、相当取り乱していただろうなー)

ホシコのことはひとまずセバスたちがアインズ・ウール・ゴウンの味方であることを信じ、後回しにすることを決めた。

根拠もなしに人を信じることなど迂闊極まりないが、ただ攻撃に特化しただけのNPCならば逃げおおせることなど可能だろう。

伝言(メッセージ)もつながることがわかっているため、呼ばれたら完全武装で出撃する準備は整っている。

 

「もしかして、具合が悪い時にインした感じですか?」

 

「ああ、ええと。だね」

 

「熱で頭が回らない感じなら、ゆっくりでいいです。コンソールも表示はされないですが、緊急なら必ず落ちられますよ」

 

また過呼吸を起こさないように、ゆっくりモモンガは声をかける。

今まで見たことがないほどにタブラが慌て、そして衰弱しているのだ。

それに比べれば、体の心配が少ない自分のほうが何倍も安心できるはずなんだと心を落ち着かせる。

 

「あー。ええと」

 

「なんでしょう」

 

やはり熱でぼんやりしているのか、タブラの言葉はいつもの歯切れの良さがない。

なんならどこかの不具合の影響か、タブラが話し始めるたびに、脳食いの顔らしきあたりがムニムニ動く。

 

「ええと、一つ可能性が思い浮かんだんだけど」

 

「ええ。何でしょう」

 

「あんまりにも突飛に聞こえるかもしれないけど───怒らないで聞いてくれよ?」

 

「怒る...?いいですよ?」

 

タブラ言葉に首を傾げながら、話を聞こうと近くの椅子に腰を落ち着ける。

(何だろう。余命だとか病気だとかそんな話かな。確かにそんな話は聞いてないし、そうだったのなら前もって知らせてくれれば、無理に誘うことなどなかったんだけど───)

 

「ええと。まず、私は死んでる」

 

「は?」

 

「そのまま永遠の眠りについたと思ったら、この格好で宝物殿にいたんだ」

 

「え、ちょっと待ってくださいよ。し、死んでたって、どういうことなんですか...?」

 

「そのまんまの意味だね。私は、爆発に巻き込まれてついさっき死んだはずなんだよ」

 

唐突なオカルト案件にモモンガの頭の中はごちゃごちゃだ。

そんな骸骨に、タブラは自分の死にざまについてゆっくり説明を始めた。

 

 

 

「───要は、アーコロジー内のとある会社の制御室で工作をしていたら、思わぬカウンターが発動されて、死んでしまった、ってことでいいんですね」

 

「ええ。無様な最後だったよ」

 

そういってタブラはふふふと笑う。

いまいち理解しにくい話ではあるが、重要な場面で嘘をつかない彼の人格を鑑みるに、これは本当のことなんだろう。

 

「それで、それとこの出来事の関係って」

 

「それが第2段階だけど、こっちのほうもかなり突拍子もないね」

 

その言葉に、今度は何を聞かされるんだ、と喉を鳴らす。

タブラは、一瞬躊躇したが、申し訳なさそうに下を向いたままつぶやく。

 

「死者である私がここに紛れ込んだせいで、二人も死者としてこちらの世界に招かれた───。そんなところだよ」

 

そういうと、タブラは体を起こし、ふかぶかとあたまをさげる。

 

「この仮説が本当であれば、モモンガさんやホシコさんに対して、本当に迷惑をかけていることになる。申し訳ない」

 

「ちょ、タブラさん!謝ることなんてないですよ!」

 

慌てたモモンガは、そっとタブラの顔を上げさせる。

 

「何の根拠もなければ、本当に突拍子もないですね。───それなら、俺のみんなにこのギルドに戻ってきてほしいっていう執念が二人を縛り付けた可能性だって言えますよ!」

 

モモンガのあわただしい慰めに、タブラはやっとおかしそうに笑った。

灰色の不気味な顔が、まるで人間のものかのように口角が上がったところを見て、モモンガはぎょっとした。

 

「わかった。とりあえずこの話は、ホシコさんにも話す感じでいいよね?」

 

「ええ、そうしてください。俺にだけ話されて、彼女にだけ言わないのは不公平ですから」

 

「ふふ、それもそうだね。ともあれ、ありがとう」

 

「いえ...」

 

そして、言うべきか言うまいか一瞬悩み、やはり生きているように動く表情を見つめて、モモンガは再び口を開く。

 

「それと、タブラさんの表情。なんだか動いているような気がしますよ?」

 

「ああ、それ私も思ったんだ。骸骨の顎がさっきからがくがく揺れてるから」

 

二人でしばらく笑った後。今見つけられる疑問点について話し始めた。

 

 

 

---

 

 

 

「とりあえず、この周りは湿地なんかじゃなく、何もない草原だってことがわかったね」

 

「それだけでも大きな収穫ですよ。ホシコさん、ありがとうございます」

 

数十分して円卓の間に戻ってきたホシコから外界の情報を共有してもらい、先ほどタブラと出し合った情報もまとめて整理する。

 

「守護者との邂逅が終わったら、一緒に外見に行きましょうよ。ものすんごいのが待ってますよ!」

 

いつもは冷静なホシコも、外から帰ってきてからはこの状態だ。

(何だろう。空を大きなドラゴンが飛んでたりしたのかな...)

気になりはしたが、それよりもおそらく人格を得て動き始めたNPC、特にギルメンたちと同レベルである100レベルに設定してある階層守護者たちへの挨拶について考える。

 

ホシコの話では、セバスも戦闘メイドたちも彼女に対しては最大限敬意を払っている様子で、敵意は全く感知できなかったらしい。

アルベドの話の中でも、忠義とか至高の御方々などという言葉もあったくらいだし、NPCにとって、3人は親みたいな存在なのだろうということで意見は固まった。

 

「まあでも、一応聞いておくつもりです」

 

「了解」「わかった」

 

そして、次の話題へと話が移る。3人の体の変化の話だ。

ゲームではありえないような表情だったり、NPCの動きだったり、体の奥底で感じる魔力のような何かの感触だったり、魔法ではない不思議な何かの感覚だったり───。

誰かが謝ることになるような解釈を避けつつ、何が起こったのか意見を重ね、行き着いた先は───。

 

「ゲームでは最強の俺、サーバーダウンとともに異世界転生」

 

「そのジャンル、廃れてからしばらく経ってますって...」

 

面白そうなタブラに、同じようにライトノベルに造詣があるモモンガは溜め息をつく。

しかし、ギルドの中では戦闘よりも頭脳派であると自覚しあっている3人は、同時にこうでも解釈しなければ、説明のしようがないとも気づいていた。

実際に外に出てみたホシコは、魔法も、アイテムを使った飛行もできていたという。

まるで現実世界のようにリアルなこの世界では、魔法が使える。

そんなところから考えても、もはやそんな突拍子もないことでしか、この現象は説明できないだろう。

 

ほかにも、円形闘技場で何を話すかを考えているうちに、約束の一時間後が迫ってきていた。

果たしてうまく転がってくれるのか、若干の不安を抱えた三人は、第六階層へと転移した。

 

 

 

---

 

 

 

「第一、第二、第三階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン。御身の前に」

 

「第五階層守護者、コキュートス。御身ノ前ニ」

 

「第六階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラ。御身の前に」

 

「お、同じく、第六階層守護者、マーレ・ベロ・フィオーレ。お、御身の前に」

 

「第七階層守護者、デミウルゴス。御身の前に」

 

「守護者統括、アルベド。御身の前に」

 

風が立ち、背後でわずかに砂埃の上がる円形闘技場の中心で、ひざまずいたNPCたちは、忠誠の儀を行っていた。

黒い後光をまとっているのに、ぬぐい切れない緊張感。

アルベドが「第四階層と第九階層は───」と続けてはいるが、そのほとんどが左から右へとモモンガの耳を通り過ぎる。

まあ、耳なんてないのだが。

 

(これは、どうすればいいんだ───)

あれだけ円卓の間で話し合ってきたのに、ないはずの心臓が音を立てていると錯覚してしまうほどにモモンガは焦る。

とりあえず、魔王ロールのために資料を見て知った、それらしいポーズをすることに決めた。

 

 

 

「最後に各階層守護者たちに聞きたいことがある。まずはシャルティア───お前にとって、私たち3人はどんな人物だ」

 

帰還したセバスによる地表の周囲1キロまでの報告、マーレへのナザリック地下大墳墓の地表部の隠蔽の命令、階層の警備レベルの引き上げを言い渡したのち、三人で話していたことについて、守護者たちに問う。

黒いオーラをまとい、恐ろしいアンデッドそのままのモモンガ、その右手の膨れた水死体のようなタブラ・スマラグディナ。そしてその反対側に浮かぶ美しい精霊、ホシコ。

3人が見つめる中で、シャルティアのみならず、すべての守護者たちは、緊張に一層頬をこわばらせた。

 

「美の結晶。モモンガ様の白磁の御身体に比べれば、どんな宝石も霞んでしまいます。タブラ・スマラグディナ様はまさに生物のあるべき御姿。そしてホシコ様はどの女性もが憧れる素敵な相貌をお持ちです」

 

「───コキュートス」

 

「守護者各員ヨリモ強者デアり、マサニナザリック地下大墳墓ノ絶対ナル支配者ニフサワシキ方々カト」

 

「─────アウラ」

 

「慈悲深く、深い配慮に優れたお方々です」

 

「───────マーレ」

 

「す、すごく優しい方々だと思います」

 

「─────────デミウルゴス」

 

「賢明な判断力と、瞬時に実行される行動力も有された方々。まさに、端倪すべからざる、という言葉がふさわしき方々です」

 

「最後になったが、アルベド」

 

「ホシコ様は世界を創造する手腕に長けた、慈悲深き御方。タブラ・スマラグディナ様は私の創造主であり、世界の誰よりも深い知識をお持ちの御方。そして、モモンガ様は至高の方々の最高責任者であり、最後までこの地に残ってくださった、最高の主人であります」

 

「───なるほど。各員の考えは十分に理解した。それでは、私たちの仲間たちが担当していた執務の一部までお前たちを信頼しゆだねる。今後とも忠義に励め」

 

それだけ言い残して、大きく頭を下げる守護者たちの前から、三人は姿を消した。

 

 

 

「え、マジであの高評価の中やりぬかなきゃいけないの...」

 

ログアウトの可否がわからない以上、このナザリックの存続と未知なる土地の調査をすることに張り切り始めたところに、あの聞いたこともないような評価の数々。

タブラは疲れたように、ホシコは、どこか嬉しそうにぼうっとしている。

 

「まあ、低評価の中、背後から刺されないか気を配ることにならないだけ、いいと思おう」

 

「ああ、そうですねタブラさん。とりあえず地表に出てから、多少魔法を使ってみましょうか」

 

安堵と不安の混じったため息をする二人のほうを、やはりどこか嬉しそうなホシコがこちらを向く。

 

「さ、さっきさ...」

 

「ど、どうしたんですか...?」

 

何かの感情を抑えるように震えるホシコに、モモンガは飲めないはずの唾を飲み込む。

タブラは、何かを察したのか、あきれたように首を振った。何かをシェイクするようなジャカジャカという音が響く。

 

「あたし、あのヴァンパイアの子に、このビジュアル褒められた───」

 

「あ、ホシコさんはちょろかったですもんね。思い出しました」

 

「ちょ、ちょろいって何よ!」

 

「とりあえず、ホシコさんが見せたいって言ってたものがある地表にでも行きましょうか」

 

「ちょっとお!」

 

 

 

---

 

 

 

「す、すごく怖かったね、お姉ちゃん」

 

「ほんと、あたし押しつぶされるかと思ったもん」

 

第六階層円形闘技場(アンフィテアトルム)

帰還したタブラ、ホシコ。そしてモモンガたちが去ったその場所では、モモンガたちの圧倒的な存在感に発汗を禁じえなかった。

一部、失禁も禁じえなかったものがいたようではあるが。

 

「アルベドの言うように、タブラ・スマラグディナ様、ホシコ様がご帰還なされたというのは本当の事だったようだね」

 

「実ニ喜バシイコトデアル。御二方トモ我々ニ言葉ヲクダサラナカッタトモ、ソノ気配ハ正ニ超常タルモノデアッタ」

 

真っ赤なストライプに身を包む悪魔、氷の外骨格を纏う巨大な虫が、口々に喜びの感情を言葉にする。

帰還した至高の御方方。

そのまとめ役を務めていたモモンガの圧倒的なオーラに恐怖すら覚えかけたアウラは、ふと気付いた違和感を、タブラの創造したNPCであるアルベドに目を向ける。

そして、今度は別の疑問がアウラの内に浮かぶ。

 

「アルベド、どうしたの?」

 

跪いたままのシャルティアを放っておき、不安げな表情をうかべるアルベドにアウラは不思議がる。

 

「タブラ・スマラグディナ様がご帰還なされたんでしょ?なんで喜ばないのよ」

 

その言葉に、守護者全員の視線がアルベドに向く。

アウラの言葉の通り、アルベドは創造主が帰還したというのに、守護者にあるまじき態度をしていた。

彼らの全員が、自身を作った主たちの帰りをのどから手が出るほどに待ち焦がれているのだ。

はっきりしないアルベドの態度に、言葉にはしないものの殺気を向ける。

 

つい先程新たに忠誠を誓ったばかりだ。

それなのに、守護者のまとめ役たる彼女がそんな状態では...。

 

「アウラ...。───これは、話していいことなのでしょうか...」

 

どうにも迷うように思案げな顔を見せる彼女に、彼らは首を傾げる。

そして、不快な感情も同じように湧き上がっていた。

 

アウラがそれをアルベドに向ける前に、それまで沈黙していたセバス・チャンが声を上げる。

 

「特にお止めにはなられておりません。ほかの至高の御方々の境遇を知るためにも、話すのが懸命でしょう」

 

「...何よ、それ」

 

「そうね、セバス」

 

行儀よく俯いていた彼女は、ようやく顔をあげる。

その態度に、なにか至高の方々の大事な話が始まる、と守護者たちは姿勢を正した。

 

「ホシコ様とタブラ・スマラグディナは、先程帰還されたわ。ホシコ様は特にお怪我なく戻られた。けれど、タブラ・スマラグディナ様は...」

 

そこまで言って、彼女は悔しそうに顔を歪める。

 

「ご帰還とともに崩れ落ちられたのよ。呼吸も乱れてらっしゃったし、酷く憔悴されたご様子で...っ」

 

「...!ご、ごめんねアルベド」

 

声を震わせるアルベドに、アウラは申し訳なさそうに謝った。

同時に彼女は忠誠の儀の最中に感じた違和感にあたりをつける。

タブラやホシコのオーラがモモンガより薄いのが、りあるの影響である、と。

 

アルベドの話をじっくりと聞いたデミウルゴスが、なるほど...と話し始める。

 

「りある、というのは至高の御方々ですら手を焼くほどに厳しい環境である、と...。」

 

「そ、そんなに危ないところなんですか...?」

 

「少なくとも、私たちでは帰ってくるだけでも難しい場所なのだろうね」

 

そこまで言うと、デミウルゴスは光沢を放つ眼鏡をくいっとあげて、アルベドに問う。

 

「それで?ただそれを伝えるだけでは、もちろんないのだろう?」

 

「ええ、察しがいいわね。」

 

アルベドは、そこでセバスをちらりと見る。

 

「先程、セバスとともにホシコ様がナザリック外の偵察へ出かけなさったわ」

 

「な!?」

 

「言いたいことはわかるわ、デミウルゴス。けれど、肉弾戦最強のセバス。それに精神系魔法の中でも情報操作系の魔法に特化したホシコ様がお出になられたこと───」

 

「...至高の方々は、外の世界に脅威が潜んでいる可能性を考慮しておられる───」

 

「それだけではないわね。今までタブラ・スマラグディナ様のように憔悴されて帰還なされた方はいなかった───りあるの危機が、ここナザリックにも迫りつつあるということよ」

 

「ソレナラバ我ラガ御方々ノ盾トナレバ良イ話デハナイノカ」

 

「いいえ。盾となることに加えて、情報収集やその速度を通常の想定よりも迅速に行うことが必要になるわ」

 

『まさに、性格を除けば完璧才人である───』

そう設定づけられたアルベドは、自らの欠点である性格───ビッチであることを抑え、ただひたすらにこれから起きる可能性をはかる。

 

そして、守護者たちも同様にして、顔を引きしめた。

いつの間にか立ち上がっていたシャルティアも、酷く顔をしかめている。

彼らの脳裏に浮かぶのは、ナザリック地下大墳墓第7階層まで陥落、という言葉。

創造主たちと同じようにリアルからこのナザリックに侵入してきた彼らの悪逆の限りは、記録としてではあるが鮮烈に彼らの記憶に残っている。

そして、彼ら自身が抱いた、自らの弱さに対する消化しがたいやるせなさ。

 

「やりましょうか。例えこの世界がりあるであろうと、我々の支配者方が最高の方々であると、全世界に知らしめてやりましょう」

 

「ええ。そのつもりよ、デミウルゴス」

 

自分の創造主をあのように弱らせた相手に強い怒りを覚えながらも、冷静な頭で守護者たちの顔を見渡す。

いつも以上にやる気に満ちた彼らに、守護者統括は役割を配るのであった。




どうも、柊楓です。
十分ぶりですね。

不殺のナザリックを目指しているのに、さらなる激情を胸に抱く守護者たち...。
さて、どうなることやら。

<捏造設定>
時間の都合上、モモンガたちはレメゲトンに行かず、アウラたちに「思ったより優しい」とは思われていません。
言わずもがなアルベドはビッチのまんまである。
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