もしもテニプリに女子テニス部があったなら〜交流編〜   作:ハネ太郎

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 対決編を書き終わってないのにこっち書いてごめんなさい。現実のバレンタインデーの前に、どうしてもこの話を書いて置きたかったのです。


王子様のバレンタインデー・前編

 ここは青春学園中等部。

 

「ねえ、手塚くん。今度のバレンタインデーの事で相談なんだけど・・・」

 

 バレンタインデーを間近に控えた1月下旬。三年生の教室で、男子テニス部の部長・手塚国光に話しかけるは、女子テニス部の部長・水島吉乃(よしの)

 

「あ、いや、気遣いは無用だ・・・」

 

 彼女の突然の申し出を、思わず反射的に断わってしまう手塚。

 

 齢15という歳に似合わぬ威厳を備え、実際に生徒会長という地位にもいる彼に、こんなふうに気楽に話しかける女子は、現時点では水島吉乃以外に存在しない。そして彼女には、それを許されるに足る実力と実績があった。

 

 前年に行われた男子テニス部と女子テニス部の交流試合において、彼女率いる女子部員たちは、男子と互角の戦いを演じてみせた。その選手としての実力もさることながら、長らく廃部だった女子テニス部を復興すべく、自ら部員を集め、素人同然だったメンバーに選手兼監督兼コーチとして指導を施し、ついには全国制覇まで成し遂げる。その八面六臂で大車輪な超人チート女子ぶりには、さしもの手塚も相応の敬意をもって接しなければならないのであった。

 

 

 

「そういう訳にはいかないわ。考えても見なさい、あなたこのままだと、最低でも81個のチョコが飛び交うことになるのよ・・・?」

「・・・どういうことだ!?」

 吉乃の衝撃発言に、手塚も思わず身を乗り出す。

「私たち女子テニス部のレギュラー部員は9人。あなたたちも同じく9人。これだけの人数に、皆が等しく義理チョコを送ったら・・・どうなると思う? 簡単な掛け算よ」

 先の試合以降、両テニス部は固い友情で結ばれ、合同練習などの積極的な交流を続けている。普通なら義理チョコのひとつも送るところではあるが・・・。

「九九・・・八十八!」

「八十一でしょ・・・なんでそこでボケるのよ。それに加えて補欠やサポート部員の分まで加算したら、それはもう・・・送る方も貰う方も地獄だわ」

 いわゆるレギュラー以外の部員を、男子は補欠、女子はサポート部員と称している。

「わ、わかった。それで、相談というのは・・・?」

「この悲劇を回避するための秘策が用意してあるの。ぜひとも協力してほしいのね・・・」

 

 

 

 そして時は流れ、バレンタインデーの直前の日曜日。水島吉乃の邸宅に、男女テニス部員たちが集結した。

 

「義理チョコ友チョコ、みんなこれで一気に済ませちゃいましょう! チョコレート・パーティーの、はじまりはじまり〜!」

 

 パーティー用の大広間に、吉乃の声が響き渡る。長テーブルに並べられたのは、チョコケーキ、チョコクッキー、フォンデュ、ホットチョコレート・・・。およそ考えられる限りのチョコのフルコース。資金は吉乃が出し、メニューのアイデア、材料集め、セッティングなどなど、全て男女の共同作業だ。

 

 総勢18名+αの少年少女が、チョコの山に群がる。要は各自が友人たちにチョコを送りあう分を、このパーティーでまとめて片付けてしまおう、という寸法なのだ。

 

 

 

「アメリカ育ちの越前リョーマくん、日本のバレンタインデーはいかがかな?」

「・・・チョコレートこわいッス・・・」

 帰国子女の越前リョーマに話しかけるは、天才・不二周助。アメリカにもバレンタインデーはあるが、こんなにチョコレートに特化していない。リョーマも甘いものは苦手ではないが、流石に辟易していた。

「そういう先輩は、これだけチョコレート責めにあって平気なんすか?」

「僕はむしろ、チョコレートより熱いお茶がこわいね〜」

 

 他の部員たちの反応は・・・。嬉々として食べまくる者も何人かいるが、大半はチョコの山を前に尻込みし、見ただけでお腹いっぱいだと目を回す。それでも食べることは食べるのだが。

「・・・いいアイデアだと思ってたんだけどね・・・」

「着眼点は悪くなかった。しかしな、物には限度と言うものがある・・・」

 メンバーの微妙な反応にショックを隠せない吉乃、それに冷静にツッコミを入れる手塚。

 

 

 

「・・・せっかく水島部長(おねーさん)がそうやって気を遣ってくれたのに、結局、チョコ責めッスか」

 バレンタインデー当日の学校。越前リョーマの両手と頭の上には、紙袋だったりラッピングされた箱だったり、大量のチョコが存在していた。

「モテる男はつらいよね、お互いw」

 傍らの不二先輩もまるっきり同じ状態だった。恐らく他の青学メンバーも似たようなものだろう。

 

「やっぱり、こんなことだと思った」

 様子を見に来た吉乃。

「何とかしてくださいッスよ、朝から知らない女子が次々とチョコレートくれるんスよ」

 リョーマの懇願に対して吉乃の答えは?

「対策は立ててあるわ。ほら、うちの部室にお持ち帰り用の箱を用意してあるから。そのまま持って帰るの大変でしょう? もらった物入れておいたら、うちのスタッフがあとで梱包して届けるから」

「・・・結局、食べなきゃいけないんスね・・・」

「なにもいっぺんに全部食べなくてもいいのよ? 例えば練習のあとのエネルギー補給に一粒とか、そんな感じで少しずつ消化してけばいいの」

 

 件の箱は、男子テニス部のレギュラー、すなわち青学メンバーの人数分用意された。それぞれに名前入り。郵便ポストのごとくスリットが設けられていて、贈り物はそこから入れるのだが、そこに入り切らない大きな包みは箱の上に置かれた籠の中に入れる。

「これ下手すると、誰がどれだけもらったか一目瞭然な、残酷なシステムになってたよね・・・」

 包みを丁寧に箱に納めつつ、不二はつぶやく。

 

 

 

 そうこうしている間に、リョーマの前にまた知らない女子が、お菓子の包みを持って現れた。どうやら三年生のようだが・・・?

「越前リョーマくん・・・だよね? よかったら、これ、あげるね」

「え? あ、どうもありが・・・」

 お礼を言い終わらないうちに、件の女子はダッシュで去っていく。

 

「いや〜、流石はリョーマさま。おモテになりますなぁ〜♡」

 背後から声がした。友人の小坂田朋香だ。自分の王子様、激推メンのリョーマが大人気なのを実感してホクホク顔だ。

「まあね。でも、誰に何貰ったかなんてわかんねーけどな。今みたいに、知らないやつがヒットアンドアウェイで渡してくるから、顔を認識するヒマもない」

 

「もしよろしければ、私の愛も、お仲間に加えてください♡」

 朋香もまたチョコを差し出す。彼にはパートナーがすでにいるので本命チョコとは言えないが、愛は最大限に込めてある。

「あ、サンキュ」

 リョーマは快く受け取った。

 

「ついでと言っちゃ、なんだけど・・・俺のも君のコレクションに加えてくれ♡」

「あ、てみー先輩・・・」

 不意に姿を見せたのは、女子テニス部の実力者、てみーこと谷中待見。右目と右足とバレリーナの道を失う過去を持ちながら、テニス部のエースとして活躍しているボーイッシュ少女。眼帯代わりに巻くバンダナは、今日はピンクのハート柄のバレンタインデー仕様だ。

 どうも交流試合前から、リョーマの隠れファンだったらしく、グループ交際が始まってからはこうしてたびたび彼に絡んでくる。

「ほほう、先輩は手作りクッキーですか♡」

「上手くできたと思うけど、どうかな?」

 同じ男を推しメンにする朋香とも仲がよく、こうして乙女トークに花が咲く。

 

 義理チョコは人気の証。リョーマも悪い気はしなかった。しかし、彼にはそれより何より欲しい物があった・・・。

「俺に本命チョコをくれるはずの、アイツはどこ行ったんだ!?」

 リョーマは、朝から姿を見せない恋人の竜崎桜乃を思いやっていた。

「抜かりはありません。リョーマさま、あちらの曲がり角に差し掛かりますと、桜乃が不意に現れて『これ・・・受け取ってください!』とやる予定てすので」

「シチュエーションも込みなのね・・・まあいいけど」

 

 

 

 そして問題の曲がり角。

「・・・誰もいないぞ」

「あるぇ〜?」

「なにやってんだ、あのドジっ子は・・・お、おい、あれ!」

 リョーマが発見したのは、倒れている人影! それはまさしく・・・!

 

「さ、桜乃〜!」

 

              つづく




 恋人たちの素敵イベント、バレンタインデーにいったいなにが!? 桜乃の運命やいかに! 次回「王子様のバレンタインデー・後編」お楽しみに!
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