もしもテニプリに女子テニス部があったなら〜交流編〜   作:ハネ太郎

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 基本的コンセプトは「作者が読みたい話は、作者自身で書くしかない」です。なので、かなりやりたい放題です。
 今回の話も、「別に女テニいらねーじゃん」と思われる方が大半でしょう。まあ、「いなくてもいいけど、いてくれたら盛り上がる」ということで。



破局の危機・・・!? その1「走れ、ベルベル」

 ある冬の日のこと。越前リョーマと竜崎桜乃がケンカした。

 

 

 

 二人の間には今、冬将軍にも負けぬブリザードが吹き荒れている。怒りを通り越して無表情、顔も合わせようとしない。

 

 そんな二人の異常事態に、男子テニス部と女子テニス部の仲間たちも戦々恐々だ。

 

「な、なあ? 冷静になって、もう一度話し合おう?」と桃城が声をかけても、

「・・・ふん!」

リョーマは取り付く島もない。

 

「アタシがいくら聞いても、何も答えてくれないんだよ・・・」

 桜乃の祖母、竜崎スミレもただただ困惑。

「ね、ねえ桜乃!? せめてリョーマさまとの間に何があったのか教えて・・・」

 親友・小坂田朋香の問いかけにも、

「・・・朋香! 私と友達でいたかったら、しばらく彼の名前は出さないで・・・!」

 この有り様だ。

「度し難いね。ここは一旦引いて、作戦を立て直そう」

「桜乃〜!(泣)」

 てみー先輩ともども、退散するしかなかった。

 

 

 

 仲間たちの苦悩をよそに、桜乃は町外れの公園でたたずんでいた。

「・・・あんなやつ! 好きにならなきゃ良かった・・・!」

 彼との出会いからこれまでの自分の人生、全てを否定し始めた。そうとう重症だ。

 

 ・・・と、その時。

「お嬢さん。キレイな顔が、台無しですよ。さあ笑って笑って!」

「誰ですか、あなた? ナンパはお断りですよ」

 彼女に声を掛ける、ひとりの男性の姿。

 

 

 

「頼む・・・水島吉乃! 俺たちだけでは手に負えない・・・」

「わかっているわ。なんとか彼らの心を開いてみせる。長期戦になると思うけど・・・!」

 手塚が珍しく弱音を吐き、吉乃に助けを求める。この手の色恋沙汰については、彼を始め、男子テニス部連中ではお手上げなのだ。身近に相談できる女子の集団がいる、それだけでも心強かった。

 

 

 

 破局の危機が始まって三日目。女子テニス部のレギュラー部員がひとり、ベルベルこと鈴村鈴美は、街で見覚えのある顔を目撃した・・・竜崎桜乃だ!

 そしてその傍らには、遊び慣れしたファッションに身を包んだ、そこそこイケメンな見慣れぬ男性の姿。賢明なる読者諸氏ならお解りであろう、先日桜乃をナンパした男だ! 普段ならこんなナンパに引っかかるような桜乃ではない。しかし、恋人と喧嘩して傷心の彼女を慰めるだけの話術を、彼は持ち合わせていた。

 

 

 

 ベルベルは走った。背丈はリョーマより1センチ高いだけだが横幅は1.5倍、スリーサイズ全てが90オーバーという重量級美少女である彼女は、その外見に反してかなりの俊敏。ではなぜ、彼女は走る? それは、あのナンパ男に見覚えがあったからだ!

 

 走って走って、たどり着くのはリョーマのところ。市内のスポーツセンターにいた。

「・・・ベルベル先輩。なんか用すか?」

 普段に輪をかけて無愛想な彼。まるで青学に来たばかりの頃の、恋も友情も知らなかった彼に戻ったかのよう。

「・・・桜乃ちゃんを見たわ。別の交際相手・・・玉川久助という男と一緒にいたわ」

 息も絶え絶え、報告するベルベル。体中の肉という肉が震えている。

「あっそ、そりゃ良かったね。もう違う彼氏できたんなら、俺も心置きなく別れられるというもんだ」

 事もなげに言ってのけるリョーマ。

「・・・今すぐあの子の所へ行って! 彼女を救うべきは、あなたしかいないの!」

「いやもう、俺アイツとはかんけーねーし」

 

 バシィっ!

 

 業を煮やしたベルベルの平手打ちが、リョーマを直撃した! その勢いで床に倒れ込む!

「う・・・! な、な!?」

 事態が飲み込めず、混乱するばかりのリョーマ。

「あなたは何もわかってない! あの男は危険なのよ!」

 ベルベルの目から光るものが、一粒、二粒。

「・・・どういうことスか?」

 

 

 

 玉川久助は高校生にして稀代のナンパ師。彼に口説かれた女性は、数分でその虜となってしまう。しかしその一方で彼は、稀代のDV男でもあった。少しでも彼の意に沿わぬ言動をした女性は、その暴力の餌食となる。判明しているだけで、被害者は30人以上。

 

 ベルベルの説明を聞いたリョーマの、顔色が変わった!

「・・・あいつは、どこにいる?」

「桜乃のスマホをGPSで・・・出たわ。誤差はあるかも知れないけど、笹野台公園あたり。・・・行くのね。私達もすぐ後を追うわ、まずは急いで!」

 

 

 

 そしてここは笹野台公園。小高い丘の地形を利用した設計で、昼間の頂上からは街が、川が、一望できる。隠れたデートスポット。

 しかしどれだけデートに適した場所でも、いつまでも滞在しているわけにはいかない。午後五時を回って、あたりはすっかり暗くなってしまった。

 

「あの・・・そろそろ帰らないと、明日も学校だし。早く帰らないと、お母さんに叱られちゃう・・・」

「なんでそういうこと言うんだよ! ずっと俺と一緒にいるって言ったろ!」

「痛い痛い、やめて!」

 桜乃の三つ編みを乱暴に引っ張り回し、怒鳴りつける久助。いよいよDV男の本性を現した。

「あなたがそんな、酷い人なんて知らなかったから!」

「お前が悪いんだろうが! 俺の言う事を聞かないから!」

 久助は桜乃の頭にゲンコツを一発見舞い、さらに彼女のスマホを奪い取り、突き飛ばす!

「痛い・・・、桜乃、大ピンチです・・・、こんな人の口車に乗ったばっかりに・・・」

 殴られた頭を押さえ、今にも泣きそうだ。

「親への抗議だったら、俺がしてやるよ!」

 そういうと彼女のスマホを操作しようとする。ロックがかかっている可能性を考慮できないほど、怒りに支配されてるようだ。

 

 次の瞬間、久助の怒りの火に油を注ぐ事態が!

「おい。なんだこりゃあ! なんでお前のスマホに、違う男の待ち受け画面が出てんだこらぁ!」

 スマホを彼女に投げつける久助。知り合って間もないとか関係なく、自分以外の男が彼女にいる、その事実が許せないのだ。そしてその待ち受け画面の男こそ、他ならぬ・・・!

「・・・越前リョーマ! 私の・・・恋人!」

 桜乃は、久助に決然と言い放つ!

「誰だそいつは!」

 

「無愛想で、生意気で、年柄年中テニスのことばかり、強い人に勝つことが頭から離れない、女心も解さない朴念仁で・・・気の利いた口説き文句のひとつも言えないけど! 強くて! 優しくて! あなたなんかより、百万倍はすてきな男の子なのよ!」

 

「てめえこのアマ、俺のこと馬鹿にしたな!」

 いよいよ逆上した久助、座り込んだままの桜乃に蹴りを見舞い、さらに彼女の胸倉を掴み上げ、

「二度とそんな口を聞けないようにしてやる!」

「ひっ・・・!」

 桜乃は無意識に、心の中で叫んだ!

(助けて・・・! リョーマくん、助けて!)

 

 

 

 絶体絶命のその時!

 

 スパァン! ギュオアアァ! ドゴォン!

 

「ぐああああああああ!?」

 

 桜乃から見て左手の方向から突然飛んできた何かが、久助を直撃! 暴力男はその勢いで少女から手を離し、カーレース中にクラッシュした車めいて吹っ飛び二転! 三転! 顔から地面に叩きつけられた!

 

 桜乃は、一連の出来事の直前に聞こえた、その音に覚えがあった。そう、仲間たちと散々聞いてきた、それは・・・テニスのスマッシュの音! そしてそれを裏付けるかのように、足元に転がるボール。

 

 

 

「人のこと散々言ってくれちゃって、まあ・・・いいけど」

「あ・・・あ・・・!」

 声のした方、左側から悠然と歩いてくる、小さいけれど誰よりも超然なるオーラを放つ影。そう、それは、何より少女が待ち望んだ、存在!

「・・・リョーマくん・・・!」

 天に祈りが通じたか、越前リョーマの登場だ!

 

「大丈夫か!? わりいな、たどり着くのに手間くった・・・」

 そう言うと彼は、自分のマフラーを彼女に巻いてあげる。

「ちょっとこれ、持っててくれ」

 呆然としたままの桜乃に、続けて自分のラケットを預けるリョーマ。そこで桜乃は、ハッと気付く。ラケットは彼の何より大事な物。少なくとも、口もききたくないほど嫌いな相手に預けるものではない、と。つまり・・・。

 

 

 

「い、痛え・・・ふざけた真似しやがって、コラあ! 誰だてめえ!?」

 あれだけの衝撃を受けながら、玉川久助は即座に立ち上がる。彼の怒りの矛先は、突然の乱入者にチェンジされた。目の前の相手がスマホの顔写真の主とは気付いていないらしい。

「アンタに名乗る名前なんてありゃしないね。ま、あえて言うなら・・・」

 相手の怒りなど意に介さず、少年は平然と言い放つ。そしてトレードマークの帽子のつばをクイッと上げ・・・。

 

「テニスの王子様とでも、呼んで貰いましょうか」

 

             つづく




 桜乃のピンチに間に合ったリョーマ。しかし相手は暴力男、いつもの試合とは勝手が違うぞ、大丈夫か!? 次回「破局の危機・・・!? その2「男の価値は」」お楽しみに!
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