もしもテニプリに女子テニス部があったなら〜交流編〜   作:ハネ太郎

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 リアルが忙しくてなかなか執筆できませんでしたスイマセン。


破局の危機・・・!? その3「雪降って地固まる」

 夕暮れの公園。帰路につくリョーマと桜乃の背後から、何者かが襲いかかる! 思わず彼女を突き飛ばしたリョーマの右手に異変が・・・!

 

「あ? う、うあ・・・!」

「キャー! り、リョーマくん、そ、それ・・・あ、あ・・・!」

 尻もちをつき、青ざめる桜乃、震える指を差す。なんと・・・リョーマの右手の甲が大きく切り裂かれていた! おびただしい血が流れ、公園の土を赤く染める! 激痛に顔を歪めるリョーマのすぐ近くに犯人の姿。

 

「あははひゃはは! しね、しねぇ〜! あはははあ・・・」

 

 驚くなかれ、先程倒したと思われた玉川久助だ! 顔も拳も潰れ、冷水に溺れて瀕死だったはずなのに、ま〜だ立ち上がって二人に復讐せんと襲いかかったのだ!

 両手をリョーマに潰され(実際は彼がリョーマを殴ろうとして自滅したのだが)おまけに冷水でしこたま感覚が麻痺、ナイフも何も持てないはずなのに、彼はいかなる兇器を用いたのか? それは、コートの袖口から飛び出しているカラクリだ。元々は雑貨屋で普通に売られているジョークグッズで、手首に取り付けて服の袖で隠しておき、スイッチひとつで柔らかい樹脂製ナイフがスプリングで飛び出す仕組み。しかし久助は、そのナイフを本物と交換して、いざというときの護身用として装備していたのだ。もっとも、こんな形での使用は本人もメーカーも想定外だったろう。

 

 

 

「うぐ・・・あ・・・!」

「はあ〜、はあ〜、あひゃひゃ・・・!」

 

 理性があるのかないのか、狂気の笑い声とともに久助はリョーマに復讐の刃を向ける。一方で当のリョーマは、未知の恐怖に震え、立ちすくんでしまった。彼もテニスアスリートとして、怪我は日常茶飯事だ。例えば目の近くを負傷し、派手に流血したことなどもある。しかしそれらは、あくまで「試合」、ルールに則ったスポーツの中での出来事だ。いつもの彼なら涼しい顔で乗り切るだろう。今彼が経験しているのはルール無用の「喧嘩」、さらに言うなら自分の命を脅かさんとすることが明白な「殺意」だ。

 

 試合の対戦相手がよく口にする「ぶっ殺すぞ」などの発言と、眼前の玉川久助の殺意は全く別物だ。その本物の殺意に対する恐怖が枷となり、頭も体もフリーズしてしまったリョーマと、目の前で彼が殺されるかも知れないという恐怖に怯える桜乃。

 

 

 

 右手から伸びた赤く染まった兇器を構え、いよいよ獲物にとどめを刺さんとにじり寄る久助。リョーマは逃げない、いや逃げられない。懸命に足を動かし、ようやく一歩二歩と後ずさる。目に見えて絶体絶命、王子様もここで一巻の終わりかと思われた・・・。

 

 

 

 と、その時!

 

「うわあああああ!」

 

 雄叫びと共に、何かが久助に向かってタックルを敢行した! 完全に不意を突かれた久助、派手に倒れて頭を強打!

 

「に、逃げて・・・リョーマくん、逃げて!」

 

 なんとタックルの主は桜乃だった! 自分よりはるかに大きい久助に必死の形相で覆い被さり、奴の両手を押さえつける。

 普段の彼女がこんなことをすれば、タックルしても即座に跳ね飛ばされるか、それ以前に途中で転んで終わりというオチだったろう。しかし奇跡は起こった。元はと言えばこのような事態を招いた原因は自分。それで愛する彼が危機に立たされてしまった。その責任感と罪悪感、それ以前に彼を救いたいという純粋な思いが彼女に力を与えた。一方で久助も、復讐心で立ち上がったとはいえリョーマのせいで体力は限界まで削られていた。その好条件が重なったがゆえの会心の一撃だった。

 

 

 

「ふざけんな、このアマぁ!」

 ドカッ!

「ふぐっ!?」

「さ、桜乃ー!」

 

 仰向けに倒れた状態で久助は、自分の上にいる桜乃の腹を思いっきり蹴り上げた! ふっ飛ばされた桜乃は、地面に転がりそのまま動かなくなった。それを目の当たりにしたリョーマは反射的に彼女の名を叫ぶ。

 

「舐めたマネしやがって、お前から先に片付けてやる!」

 頭を打った衝撃でようやく人の言葉を思い出した久助、気を失った桜乃に迫りくる。先ほどとは逆に彼女に覆い被さり、ナイフを突き立てんとする!

 

「ふざけんな、この野郎!」

 ドカッ!

「ぐえっ!?」

 

 久助の顔に横から衝撃が。桜乃の決死の行動で己を取り戻し、ようやく動けるようになったリョーマがダッシュで接近、奴の横っ面に無造作な蹴りを浴びせたのだ。見事に決まり、無様に転がる久助。

 

 

 

「お前、俺を刺したいんだろうがぁ・・・! 来いよオラあ・・・!」

 痛みと怒りで気性が荒くなりつつも、ギリギリのラインで理性を保ち、久助を挑発するリョーマ。桜乃から離れ、奴の関心を自分の方へ惹きつける。

 先ほど彼女に預けていたラケットを探すリョーマ。さっき突き飛ばしたときに飛んでいったのを・・・見つけた。利き手である左を負傷しなかったのはせめてもの幸い。ラケットを拾ったリョーマは、続けてテニスボールを探す。これまた離れた場所にあった。

 

「・・・痛っ! うう・・・! くっ・・・!」

 

 ボールに反射的に右手を伸ばすと、鋭い痛みが! いわゆる手首の動脈は免れたものの、傷は思ってたより深い。少し動かしただけでも痛く、額に脂汗。とても物を拾える状態ではなかった。しかたなく彼は、サッカー選手がやるようにボールを器用に蹴り上げ、水平にしたラケットに乗せた! そのままポンポンとボールを弾ませる。

 

 

 

「おい・・・なんだそりゃあ! 何のまねだ!」

 そのさまを見ていた久助には、リョーマがただ遊んでいるようにしか見えず、いぶかしげに非難の声を浴びせた。

「見て分かんねーかよ。テニスだよ・・・こいつが俺の武器だ。ケリつけようぜ・・・!」

 返答するなりリョーマは、ついてこいと言わんばかりにダッシュ。やがて広場の一角で立ち止まり、ラケット上のボールの動きを加速させた。

 

「・・・来い!」

 リョーマは振り向き、ボールを空高く跳ね上げた!

「行くぞオラあ!」

 その声を受けて久助は、ナイフをかざして突進! 待ち受けるリョーマは落ちてきたボールを打つ構え。彼が打つのが先か、久助のナイフが到達するのが先か!

 

 

 

「やっぱ、やーめたっと」

 

 リョーマは不意に構えを解き、体をかわす。かわされた突進のその先にあったのは・・・下り階段だ!

「え!? あ、おわああああ!!」

 小高い丘の上に建てられた公園に上がるには必須の階段を、勢い良く転げ落ちる久助。ピンボールよろしくあらゆる所に体をぶつけ・・・最下層まで到達して、やっと止まった。

 

「世界と戦うスーパーショット、アンタにゃもったいないよ」

 奴が動かなくなったのを見届け、階段の上からリョーマは呟いた。

 

 

 

「・・・うあ! はあ、はあ、はあ・・・」

 戦いはおわった。そして少年は、その場にへたり込んでしまった。先ほどスーパーショットを撃たなかったのは『もったいないから』だけではなかった。右手の傷は深く、彼は大量に出血していた。痛みと疲労、そして死の恐怖。もう体力気力は限界に達していたのだ。

 

「・・・リョーマくん・・・リョーマくん・・・!」

 

 意識が朦朧とする中、彼の名を呼ぶ声。見たら、少女・・・竜崎桜乃が、先ほど蹴られた腹を押さえながらヨロヨロと近づいてきた。

 

「・・・リョーマくん、ごめんね、いま、手当てしてあげるからね・・・」

 倒れ込むように彼のもとへたどり着いた少女は、彼の右手をハンカチで包まんとする。その顔には、殴られたり物をぶつけられたりの傷が痛々しい。そんな彼女を見ていたら、不意に少年の目頭に、熱いものが込み上げてきた。

 

「桜乃・・・バカヤロー、お前、自分だって傷だらけじやないか、なのに・・・いつも、お前は、自分より、他人のこと、ばかり・・・!」

 

 声が震える。言葉が出ない。少年は、必死に絞り出した。

「・・・桜乃! ごめんな・・・俺が、悪かったよう・・・」

 リョーマの目から、大粒の涙。泣くところを見たことがない、想像もできないと、仲間たちは口を揃えて評する、この男がである。謝罪の言葉と共に、眼前の少女にしがみつき、今日このときばかりは、みっともなく泣くのだった。

「ごめんなさい・・・私のせいで、ごめんなさい・・・!」

 少女もまた、涙とともに精いっぱいの謝罪。

 

 

 

 すっかり日の落ちた公園。深い傷を負い、お互いに抱きしめ合いながら声を上げて泣く二人を、降り始めた雪が、やさしく包み込もうとしていた。

 

 

 

 その後、駆けつけたベルベル他のメンバーたちによって110番と119番が通報され、三人は無事、救急車で運ばれたのだった。

 

              つづく




 一連の騒動から数日後。リョーマと桜乃は仲間たちになにを語るか? 次回「破局の危機・・・!? その4 嵐のあとさき」お楽しみに!
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