陰キャ友希那さん   作:魔女マリ

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大型アプデ前には投稿しないといけないと思ったので投稿します。
リサ視点です


陰キャ友希那さんをバンドに誘うリサ

時刻は午前10時過ぎ。アタシは友希那の家を訪れていた。

インターホンの呼び鈴を押し、軽快な音が鳴る。少し待つとインターホンのスピーカーから友希那のお母さんの声が聞こえてきた。

 

 

「はーい、どちら様でしょうか?」

 

「友希那の友達の、今井リサです。友希那に課題教えてもらいにきたんですけど....」

 

「あら、そうなの?でも、友希那からは何も聞いていないのだけれど。あの子ったら忘れてたのかしらね?取り敢えず、ずっとそこに立たせている訳にはいかないし、入っちゃって」

 

 

そう言い終え、こちらに向かって来る足音が聞こえたかと思うと、ドアが開いた。

 

 

「お邪魔しまーす」

 

「どうぞ、ゆっくりしていってね。友希那は部屋に居るから勝手に入っちゃって良いし、もし寝てたら布団引っ剥がして無理矢理起こしても良いわよ」

 

 

そう言われ、苦笑いを浮かべつつアタシは友希那の部屋へ向かう。

自分で言うと気恥ずかしい気分になってしまうが、アタシと友希那は仲が良い。少なくともアポ無しで家に来ても、このように家に上がれるくらいには。

恐らく友希那は、アタシの送ったメッセージを確認せずに寝たのだろう。だが、夜に送ったアタシにも非はある。今日は部屋の整理がされてなくても、今日は大目に見てあげようかな。

 

友希那とは幼少期からの付き合いだ。小学校より前、アタシ達がまだ本当の意味で幼かった時。

よく、友希那と友希那のお父さんとの3人で近所の公園で小さな演奏会をしていたのを今でも昨日の事のように思い出せる。

演奏会は小学校入学を機に自然消滅していったがアタシと友希那の関係は終わらなかった。

 

友希那は人付き合いが苦手だった。自分から誰かに話しかける事はまずなかったし、誰かに話しかけられてもとてもじゃないがまともな応対なんて出来てなくて、むしろ嫌そうな感じだった。

が、当時の自分はそんな”当たり前の事”が出来ない友希那を疑問に思い、自分なりに友希那が人とあまり話さない理由を考えた。

考え抜いた末、当時のアタシは『友希那は友達が欲しく無いんだ』という結論に至った。

しかし、同時に新たな疑問も生まれた。

友希那にとってアタシは何なのか?なぜ、アタシと話すときは嫌そうな顔をしないのか。

再びアタシは考えた。今度はさっきと違い、いくら考えても分からなかったので直接聞きに行くことにした。

 

昼休み、友希那はいつも図書室で本を読んでいた。

椅子に座って本を読んでいる友希那を見つけるとアタシは駆け寄って尋ねた。

 

 

「なんでいつも、図書室にいるの?外でみんなと一緒に遊ぼうよ」

 

 

アタシの問いに友希那はぶっきらぼうに答えた。

 

 

「嫌」

 

「みんな、友希那ちゃんと友達になりたがってるよ」

 

「友達なんて要らない」

 

「じゃあ、アタシは?友達が要らないなら、友希那ちゃんはアタシの事どう思ってるの?」

 

 

そう言うと友希那は黙り込み、暫くして持っていた本で顔を隠すように寄せて言った。

 

 

「リサは........友達じゃなくて.....親友。他の子とは.......違う」

 

 

アタシは思わずその場で友希那を抱きしめた。嬉しかったのだ。

友希那がアタシのことをそう思っているなんて思ってもみなかった。

当時のアタシは無意識に友希那を他の学校の友達と同じように扱っていた。だから、学校で友希那と一緒にいる時間は他の友達と比べて、同じどころか友希那の消極的な姿勢も相まって少なかった。

しかし、それでも友希那にとってアタシはただの幼馴染の友達ではなく親友だった。

 

その時、アタシは思ったんだ。アタシもその思いに応えて、どんなことがあろうと親友として友希那のそばにいて支えてあげなきゃって。

それからアタシは学校に行く時は友希那と一緒に登校したし、学校でも常に一緒にいるようにした。

友希那が自分から積極的に動く事もなかった影響でクラスの子達と先生からは「クラスに馴染んでいない生徒に自ら関わろうとする優しい子」なんて思われたりもしたが、アタシから言わせればとんだ思い違いだ。友希那はアタシを信頼してくれている。だから、アタシもそれに応える。それだけのことだった。

中学ではアタシが周りのあまりにもしつこく誘われた為にダンス部に入部してしまい、友希那といる時間は減ってしまったがそれでも可能な限り時間を作って一緒にいるようにしている。

 

けれど、最近、それが本当に正しい事なのか分からなくなってきた。

友希那は人付き合い、というかコミュニケーション能力が非常に低い。

家族とアタシ以外の人とまともに会話ができないし、一人の女子としてありとあらゆる事に無頓着だ。だからアタシは学校以外、日常生活でも友希那に色々なことに口出しをしてきた。一緒に羽丘に行こうと誘ったのも私だ。

でも、そばに居て支え続けることが本当に友希那の為になるのか?

どうにかしてコミュニケーション能力を付けさせねば将来的に困るのは友希那の方ではないのか?

そもそも友希那は、アタシが日常生活にまで助言をするのを鬱陶しく思っていたりしていないだろうか?

小学校のあの日以来、友希那がアタシのことをどう思っているんかなんて一度も聞いていない。

アタシは今でも親友と思っている。それで、ずっと友希那のそばに居たい。

そんな想いがここ数年、アタシを悩ませていた。

 

けれど、今朝見た"夢"がアタシに一歩踏み出す勇気を与えてくれた。

友希那は変わらなければならない。少なくともコミュ力をどうにかして付けさせ、他人とある程度は喋れる様にしなければ。

 

部屋に着き、二回ノックする。

 

 

「友希那ー入るよー」

 

 

返事はない。この感じはあれだな。おそらくだけど.....

アタシは扉を開けた。視界に綺麗とは言い難い光景が入った。

床には色々な物が散乱している。が、一番ため息をつきたくなるのがゴミをゴミ箱に入れず、大きいゴミ袋に詰めてそのまま部屋に置いてしまっている事だろう。

 

 

「友希那ーほら、出てきて」

 

 

呼んでみるが友希那は出てこない。が、ベッドの上の布団には明らかに不自然な盛り上がりが一つ。

ベッドに近づき布団を思いっきり引っ張ると、そこには体育座りをしながら両手で頭を抑えた寝間着姿の友希那がいた。

やっぱり。友希那は何か嫌な事があったりするとこうする癖がある。大方、部屋を掃除してなくて怒られると思ったのだろう。

 

 

「大丈夫、怒んないよ。今回は夜にメッセを送った私が悪いとこもあるし。でも、普段から部屋は掃除した方が良いよ?特にあれは次のゴミの日に絶対捨てること」

 

「........うん、分かったわ」

 

 

ゴミ袋を指差しながら言うと、友希那は両手を下ろしてアタシを見つめながら頷き、ベットからも体を降ろした。

 

 

「これ、持ってきたクッキー。出来立てじゃないけど結構自信作なんだよ。課題やりながら食べよ!」

 

「........えぇ、そうしましょうか」

 

 

そう言いクッキーの入った入れ物を差し出すと、友希那は入れ物をアタシからひったくる様にとったと思えば食べ始めた。

友希那は私が作ったお菓子をかなり気に入ってくれている。だからこんな感じで私がお菓子を差し出す度、お菓子の入った入れ物を奪う様に取ったかと思えば食べ始めてしまう。正直こういうのはよろしくない行為だが私以外にはしていない様なので許してしまっている。

 

 

「.....美味しい!」

 

 

目を輝かせ、満面の笑みでこちらを見る友希那。これが今の私が生きる糧となっていると言っても過言ではないだろう。

 

 

「でしょー言ったじゃん、自信作だって」

 

「さすがリサね」

 

「いやーそれほどでも〜。じゃなくて、課題今日は課題教えてもらいにきたんだから。ほら、ちゃっちゃっと終わらせよ!」

 

「そういえば、そうだったわね.....」

 

 

その後、友希那の手助けもあって私は課題を三十分足らずで終わらせると、クッキーを食べながらお喋りが始まった。

内容はたわいもない事。友希那といない時での学校での出来事や、私生活の話。

幾分か経った頃、私は話を切り出した。

 

 

「今日さ、夢を見たんだ」

 

「.............」

 

「ライブハウスみたいなところで、私と友希那がステージに立ってる夢。二人だけじゃなくて、私たち含めて五人いたんだー。友希那がセンターにいて、私は友希那から見て右端にいてベースを抱えててさ、友希那は目の前にマイクスタンドがあったから多分ボーカルだと思う。

それでね、目の前にお客さんが大勢いるの!みんなが私達の演奏を今か今かと待ちわびているんだ。まあ、演奏始める前に夢から覚めちゃったんだけど」

 

「...........」

 

 

夢の内容を大方言ってみたが友希那の反応は乏しいどころか無だ。眉一つ動かすどころが、まばたきすらせず真顔で俯いている。

これはちょっと予想外だなぁ。少しは反応くれると思ったのに。

しかし、ここで話を止めるわけにはいかない。友希那をコミュ障から脱却させるには。

アタシは満を持して言った。

 

 

「それでさ提案なんだけど、二人でバンドやってみない?」

 

 

友希那のコミュ障を治す方法、それは一緒にバンドをやること。

あの夢を見て、不思議とやれると確信した。

その昔、友希那のお父さんと公園で演奏会をやっていた頃、印象に残っている事がある。それは、友希那の歌は上手だったと感じた事。

もちろん、当時の友希那の歌は歳の割には上手いという域を超えていなかっただろうし、今聞いたら失笑モノだろうが重要なのは今だ。昔で上手いなら今は上手いなんてもんじゃないと勝手にだが思っている。

そしてアタシは友希那を見つめながら言った。

 

 

「昔さ、友希那は覚えてないかもだけど約束したんだよ?おおきくなったら一緒にバンドやろうって」

 

「?!」

 

 

ずっと俯いていた友希那が顔を上げ、驚いた表情でこちらを見てきた。

よしよし、効果は抜群だな。

 

 

「.....昔の私はそんな約束をしていたの?」

 

「アタシの記憶ではね」

 

「............」

 

「嫌?」

 

「.............」

 

 

友希那は黙して何も話す気配はない。何か思案しているようにも見える。とにかく、このままだと埒が明かなそうなのでアタシの懸念を言ってみようか。

 

 

「私さ、友希那にもうちょっと社交的になって欲しいなーって思うんだ。なんというか、友希那が社会に出た時このままじゃ色々苦労しちゃうと思うの。だから、バンド活動を通して少しでも社交性を身につけて欲しー」

 

「分かった、やるわ」

 

 

突然だった。もっと時間がかかるものと思ったが、さっきまでの態度から一転して提案を承諾したので私は驚きと困惑が入り混じりながら言った。

 

 

「え、やるの?いや、嬉しいんけどさ。なんかアタシとしてはもっとじっくり、時間をかけて交渉するかもとか考えてたから」

 

「......そんなに私を剛情な人間だと思ってたの?」

 

「いや、そこまでは思ってないけど.....とにかく、やるなら色々決めないとね!まず.....何から決める?」

 

「まさか、何も考えていなかったの?」

 

「いやぁ、実はそうなんだー。そもそも、”夢”を見たのが今朝だからね。それでなんとなく、友希那がボーカルで私がベースそれぐらいしか考えてなくって....」

 

「それじゃあまず最初に、練習場所を決めましょうか。家では出来ないでしょう?」

 

「そ、そうだね!まず、近くのライブスタジオ借りれる所探そっか」

 

 

妙に乗り気な友希那には驚きだったが、アタシはすぐに気を取り直し日が真っ赤に染まる頃まで私たちのバンドに関して様々なことを決めてゆくのだった。

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