陰キャ友希那さん   作:魔女マリ

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ガルクラが面白かったので投稿します。


陰キャ友希那さん、練習

「それじゃあ、また明日ねー」

 

「.....ええ、また明日」

 

玄関前でリサを見送る私。

太陽は沈みかけ、夕日が二人を照らしている。

まるでアニメや漫画の1シーンのような光景だが見送る意味はほぼ無い。

携帯電話という文明の利器を持っているし、なんなら家が隣な以上部屋の窓を開ければ会話できる。

それでもこうして見送るのは親友としてのある種の様式美のようなものだ。

 

リサが家に帰ったのをを見届け、私も家の中に戻ると疲労感にも似た感覚を私を襲った。

緊張から解放されたというのが正しいだろうか。

リサに”夢”の話を切り出されただけでも驚いたのにバンドをやろうと言われた時はどうしようかと思った。

結局やることを決めたが、そこにあまり大きい理由は無い。

私のコミュ障を治せるならそうしたいというのもあるし、湊友希那ならばやらなければいけないという使命感のようなものもあった。あと、陰キャコミュ症にありがちな緊張から本心ではないことを適当に言ってしまったというのもある。だから今は若干、後悔している。

......面倒なことは大体リサに丸投げしてしまおう。

 

しかし気になるのが昔、リサと自分が憑依する前の湊友希那がバンドをするという約束をしていた事だ。原作ではそんな話無かったはず。

何が原因で約束をしたのだろう。考えても全くわからん。

いやそもそも、リサが私と全く同じ夢をみた時点で色々と変だ。

私は憑依する前の湊友希那の記憶を持たない。そのため先の約束もおそらく、それ以前だろう。

もしかすると、私がこうなったのも私が憑依する前に起きたバタフライエフェクトの結果だったりするのだろうか。

 

まあ、私が憑依する前の出来事や夢の事なんて分かりっこないと思うのでこれ以上考えるのはやめよう。今は素直に、バンドをやれるという喜びを噛み締めよう。

ただどうしても、本当にバンドをやっていいのだろうかという思いが頭をよぎる。

今まで、仮にも湊友希那でありながらバンド活動に全く興味を示さず避けてきた自分にそんな資格はあるのだろうか。どうにも、そう考えて頭の片隅から消える気配がない。

思わず自嘲する。

前世で二次創作を読んでいて、自身が二次創作に求めるハードルが高くないこともあるが憑依だの転生だので原作キャラになったオリ主がその子の人生を奪ったとか言ってうだうだ悩むのを意識高い系とか言って内心馬鹿にしてたがこれでは、前世の私をばかにできない。

 

 

ともかく、リサとの話し合いで決まった事はまず、来週の休日にスタジオを借りてバンド練習すること。

勿論、借りるスタジオはCIRCLEだ。

バンド名に関しては保留になった。正確には保留にさせた。

湊友希那と今井リサがバンドをやるならば絶対に他のメンバーも集めてRoseliaにしなければならない。

だから色々屁理屈こねくり回して、リサの名前案を次々にボツにした。

 

次、肝心のメンバーだが、私が『せっかくだし夢に出たメンバーを探してみない?』と提案した所リサがかなり前向きに賛成してくれた。

これで、Roseliaのメンバーを集めるに際して問題は起こらないだろう。

リサはあこを知っているので今度二人で学校でスカウトする。燐子はあこ経由で知り合えるだろう。問題は紗夜だ。CIRCLEに通い続ければ会えるだろうがこちらのスカウトに応じてくれるかどうかといえば否だろう。

紗夜は原作の湊友希那のレベルの高い歌声を聞いてそれに応えた。だから、今の私の実力では確実に相手にされないだろう。

というのも、今世どころか前世含めても人前で歌ったのは学校で強制されるような合唱の時くらいしかない。だから今の自分の実力というのがわからないのだ。来週のバンド練習の時にリサの前で歌うことになるだろうが、声が裏返って変なことになるのが想像に難くない。ともすれば、全くの他人ならば裏返るどころか発声出来るか出来ないかというレベルだ。仮に声を出せたとしても小声で何を言っているか聞き取れないのは確実だろう。

その為、紗夜はRoselia再現にあたっての一番の障壁だ。原作イベントストーリーの時系列や時期は正確には分からないがおそらく『秋時雨に傘を』に当たる時期は過ぎている可能性が高い。そうなると今、紗夜が今どういう状態なのかがさっぱり予想がつかない。正直ギター捨ててるかもしれない。

 

話を戻して、そして一番重要であろう作詞作曲はなんだかんだで私が担当することにした。

リサからは不安やらなんやらと言われたが、行き詰ったら相談するのとアイデアは積極的に受け入れると言ってなんとか宥めた。

前世では音声合成ソフト使ったことがあるからできる.....とは思う。Roseliaの曲も全て前世では聴き込みまくり、今でも脳内再生できるくらいなので曲は問題ないはずだ。曲のアウトプットは湊友希那の体の素質を信じるしかない。

そうなるとこのままRoseliaを結成したら原作との違いは時期が遅い事と私がコミュ障な事になる。役割の違いも私がコミュ障な事でグループのまとめ役のリサの重要性がさらに上がるくらいか。今のうちにリサを労う手段をたくさん考えておいた方が良さそうだ。

そこまで考え、私はリサとの話し合いで決めてない事があることに気づいた。

 

 

「リーダー誰か決めてない......まあ、決める必要性もないけれど...」

 

 

 

 

一週間後、私とリサはCIRCIEの練習スタジオにいた。スタジオ予約など、会話が必要な手続きは全てリサにぶん投げようと考えていたがリサから『それじゃあ、友希那のためにならないよ』と正論を言われたので勇気と塵程もないコミュ力を引き出し、なんとかスタジオの予約をとることに成功した。

正直何度も吃ったし、陰キャ特有の語頭に『あ...』とか言ったりしたのも両手の指の数では収まらない程、予約直前と最中は心臓バクバクで、このまま発作起こして死ぬんじゃないかと思った。それでもなんとか予約をとった私をリサはこれでもかというほど褒めてくれた。

ほんっと、リサがいなかったら私はやっていけない。ここ数年、湊友希那を遵守できず嫌悪感に苛まれていた私に生きる希望を与えてくれていたのはリサだ。もし、何かの拍子にリサがいなくなっていたら間違いなく私は自死していただろう。いや、流石にそれは言い過ぎか。ビビリな私に自殺なんてできるわけがない。

 

そういった湊友希那の順守は、憑依当初から私の問題だった。なんとかしなければと幾度となく悩んだが解決策、というよりバンドをやる勇気がでずに時間だけが過ぎていき、高校に入ってからはもう手遅れだと半分開き直っていたがそれでも原作だったら今頃....と考えてしまい、その度に精神を病んでいた。

一番精神にきたのは街中でポピパを見かけた時だろうか。つい最近の事だがたまたま用事があり、外に出た休日のとある日、楽器店の前を通った際に運がいいのか悪いのかポピパのフルメンバーと遭遇し思わず、今彼女たちは何をやっているんだろうか、原作では今頃Roseliaはなどと考え、控えめにいって気が狂ってしまうかと思った。あの時は頭痛、吐き気、倦怠感等、様々な不調が体に現れて思わずその場に蹲り、あまりの辛さに耐えられず救急車を呼ぼうかとも考えた。

幸運だったのはすぐに症状が治まったのと、ポピパ含め目撃者がいなかったことだ。治まった後すぐに私は走って家に帰宅し布団の中で自分自身の存在を嫌悪し呪った。自分の不甲斐なさ、ただ一点を。

 

 

「じゃあ.......まず、何からやる?」

 

「....これ、作ってきた」

 

「ん?これって、もしかして曲?友希那が作ったの?!」

 

「そうよ。言ったじゃない。作詞作曲は私がやるって」

 

「いや、確かにそう言ったけれど、まさかこんなに早く曲を出してくるなんて思わなかったから...」

 

 

曲のプットアウトだが、結論から言うと成功した。徹夜する羽目になったが、徹夜をして曲を出せるなら、良い方だろう。

今回私が持ってきた曲は『軌跡』だ。本当は『BLACK SHOUT』とか色々やりたい曲があったが『BLACK SHOUT』はRoselia五人揃ってから歌いたし、何より『軌跡』は曲調がシンプルでRoseliaの曲の中ではプットアウトが楽だった。

ちなみにもし仮に、五人揃わなければどうするかというのはあまり考えないようにしている。真面目に考えたらまた発作が起きてしまう。

 

 

「それじゃあ、やりましょうか」

 

「そうしたいんだけどさ....」

 

「何かしら?」

 

「友希那はさ、ベースとかギターやったことあるの?」

 

「出来るわけないじゃない」

 

「.........」

 

「.........」

 

何も言わない。練習スタジオを静寂が包む。当然だった。友希那の担当はVoだ。作中の描写的にギターは出来たっぽいがそれは原作での話。そうなればBaのリサもできる理由はない。

 

「リサは?」

 

「出来ると思う?」

 

「......」

 

「......」

 

「どうしましょうか」

 

「練習、しよっか。基礎から」

 

 

その日は動画サイトにある、ギターやベースの練習動画をひたすら観て時間を潰した。

なんというか、何故あそこまで考えといて楽器の演奏歴について二人とも考えが至らなかったのはは今考えても謎である。

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