絶対転生特典間違えただろ in 咲-saki- 作:ナカタカナ
モモが遊びにきたあの日から一ヶ月が経った。
この一ヶ月は特に何かあったというわけはなかったが、小学校は冬休みに突入した。
というわけで、俺は一度、岩手に行って、父さんと母さんの墓の掃除に行きたいと思っている。
「婆ちゃん。ちょっと出かけてくる。夕方には返ってくるから。」
「寒いから暖かい格好して行くんだよ。」
「分かってるよ。じゃあ、行ってきます。」
逆廻 十六夜の身体能力は化け物である。
全速力を出せば第三宇宙速度、つまり時速60100㎞で動けるのだ。
長野から岩手までは約600㎞。全力を出せば一分もいらないだろう。
かといって、俺が全速力で走れば、周囲にちょっとした被害が出てしまう。
時速600㎞ほどの速度に抑えて移動しようと思う。
それでも十分早いな。
次に走る場所なのだが、新幹線の線路の傍を走りたいと思う。
建物の屋上を飛んで渡ってなるべく、人目に付かないように移動する。
一時間後
「ふぅ、まだ二ヵ月なのに、随分懐かしい気分になるな。」
俺は見慣れた景色の村に着いていた。
約600㎞の移動を一時間で済ませたというのに、この体は疲労を感じていない。
「にしても、まじでこの体はヤバいな。これに更に
村について、まず最初は村の共同墓地に足を運んだ。
共同墓地ということもあって、掃除するための道具が用意されている。
供えるための花と線香は村に着く前に買っておいた。
「えっと、確かこの辺りだよな・・・あった。」
逆廻家と書かれた墓の前で俺はゆっくりと話しかける。
「ただいま、父さん、母さん。」
それから俺は長野での生活の話をした。
「俺さ、友達できたんだぜ。モモっていうんだけどな、すんげぇ面白いんだ。」
話しかけながら、バケツに汲まれている水を墓石に掛けて磨く。
「婆ちゃんの煮物な、めちゃくちゃうまいんだぜ。」
大体綺麗になったら、今度は周囲に生えている雑草を抜く。
「・・・・・・」
一時間くらい経っただろうか。
最後に花を添えて・・・
「じゃあな。また来るぜ。今から豊音に会うんだ。豊音には内緒だけど、会うの結構楽しみだったんだぜ。ヤハハ。俺は元気でやってるからさ・・・天国で見守っててくれよな。」
そういって、俺は立ち去った。
今の時刻は午後一時。
俺は豊音の家の前に立っていた。
ピンポーンとベルを鳴らす。
「はぁ~い、どちら様ですか?」と豊音のお母さんの声がした。
ガチャ
「こんにちは。久しぶりです。」と優等生風の挨拶をした。
「あら、十六夜くん!? 戻ってきてたの?」
「はい、一時間ほど前に戻ってきてました。」
「そう、ちょっと待ってて、豊音ぉ~早くきてぇ~。」
「なにぃ~お母さん~。今、麻雀のテレビが良い所なの。」
「いいから、早く来なさい。友達が来てくれてるわよ。」
どうやら豊音のお母さんは豊音をビックリさせたいのだろう。わざわざ俺が来たではなく、友達が来たといっている。
「もう、何よ・・・えっ、よ、よいくん?」
「よぉ、久しぶり。といっても電話で定期的に話してたからそうでもないか。ヤハハ。」
「よいくんっ!!」
すると突然、豊音は俺に抱き着いてきた。
「うわっ、ど、どうしたんだよ。」
「えへへ、本物のよいくんだぁ~ちょ~嬉しいよぉ。」
そういって更に力強く俺を抱きしめる。豊音の顔があるところだけ、少しずつ濡れてきた。
「よしよし、泣くなって。約束しただろ? 定期的に戻ってくるって。」
「う、ん。でも、やっぱり寂しい、よぉ~。」
声が震えている。
「あらあら、とりあえず寒いから、十六夜くんも上がっていきなさい。」
「ありがとうございます。ほら、いくぞ豊音。」
「もう少しこうしていたい。」
そういって俺から離れようとしない。
「やれやれ、ほいっと。」
俺は豊音をお姫様抱っこしてやると、ゆっくりと家に入る。
「ほんと豊音は甘えん坊だな。」
「誰のせいで甘えん坊になったと思ってるの?」
「ヤハハ、誰のせいだろうな。」
「もうっ、よいくんのせいだよ!」
「はいはい。」
口では邪険そうに扱っているが、内心ではこのやり取りができて、非常に嬉しいのだ。
もちろん、口に出したりはしないがな。
「久しぶりによいくん成分を補給するぞぉ~。」
「なんかどこかで聞いたことあるセリフなんだが・・・というかよいくん成分ってなんだよ。」
「説明しよう! よいくん成分とはよいくんを抱きしめることで補給できる特殊栄養素であり、これが枯渇すると、私は泣き出してしまうのです。」
「なるほど、ようするに寂しかったからもっと抱きしめると?」
「そうともいう。」
そういって、豊音は更に俺を抱きしめた。
柔らかいウェーブのかかった黒髪が俺の鼻腔をくすぐった。
「よしよし。」
「えへへ。」
俺が頭を撫でてやると犬の様に笑う。可愛い。
「それで、俺がいなくなっても宿題とかちゃんとやったのか?」
「当たり前だもん! よいくんは私のことなんだと思ってるの? 私の方がお姉ちゃんなんだよ。」
「いや、お姉ちゃんって感じしねぇけど。」
すると頬をプクゥーと膨らませリスみたいになる。
「ぷんぷん! もう怒ったぞ。お姉ちゃんにそんな態度をとる、よいくんはお仕置きだ!」
急に抱きしめた状態から指をワキワキさせて俺の脇腹をくすぐる豊音。
「ちょ、やめ、やめろって。ヤハハハハハ。やめっ、くる、しい、ヤハッ、ヤハハ。」
「うりうりぃ~お姉ちゃんには勝てないんだぞぉ。」
五分後。
「はぁ、はぁ、し、死ぬ。」
それにしてもどうしたのだろう。モモといい、豊音といい、最近はくすぐりがブームなのか?
くっそ、くすぐりにはどうしても勝てる気がしねぇ。
「分かった? これに懲りたらお姉ちゃんを敬うのです!」
「分かった。降参する。」
「よし、じゃあ気を取り直して・・・」
そう一呼吸おいたあと、豊音はとびっきりの笑顔でこういった。
「麻雀しよっ!」
「はいはい。」
「お友達きたよぉ~ツモ!四暗刻 大三元!」
「えっ?・・・はあああ!? なんじゃそれ。」
「私は親だから96,00点ね。」
「と、跳ばされた・・・ウッソだろ。」
麻雀を開始して既に東場が終わり、南場の三局だったところで、まさかのオーバーキルを喰らった。
始めて見たぞ。流石の俺もこれには叶わない。
「えへへ、やったね。今日は久々によいくんと会えたからたから運気が上昇してるのかなぁ~。」
「くっそぉ~悔しい。悔しいけど、この負け方には清々しさを感じるぜ。」
「ねぇ、もう一回やろう!」
豊音がルンルンでそういった。
俺はチラリと時計を見てみる。
四時半
「悪い。そろそろ帰るわ。」
「えっ。」
「婆ちゃんに帰るっていってるから、そろそろ帰らないと。」
俺がそういうと、先ほどまでキラキラの笑顔だった豊音の眼から涙が溢れる。
「よしよし、泣くなって。また来るっていっただろ。」
「うん、わかってるけど・・・泊まらないの?」
目をウルウルさせて俺を見る姿は捨てられた子犬のようだ。クッソ、可愛いな。
「悪いな。またすぐ来るからさ。」
優しく頭を撫でながら抱きしめる。
豊音の方も俺を抱きしめて、顔をスリスリと肩にすりつけた。
「・・・分かった。やっぱり悲しいけど、よいくんは約束破らないから、信じるね。」
「あぁ、今日は負けたけど、次来たときは俺が勝つぞ!」
「次も私が勝つもんね!」
良かった。豊音がいつもの調子に戻った。
「そうだ、いつか豊音が長野に来いよ。モモも紹介するぜ。三人で麻雀したら楽しいぞ。」
「ほんと!? 分かった。楽しみにしてるね。」
そして俺と豊音は指切りをした。
「じゃあな。」
「うん。ばいばい。」
こうして、俺は再び走って長野に帰ったのだった。
まさかの四暗刻 大三元・・・こんなの喰らったらひとたまりもないですよね。
そして次回から再び長野に戻るわけですが・・・オーホッホな予感がしますわ。
えっ?モモちゃんは?モモちゃんはヒロインです。何が何でもヒロインです。ワンちゃん一ちゃんがヒロインになるかもしれないです・・・