ファッション無惨様のごちゃサマライフ   作:頓西南北

1 / 64
まだ二話を書き溜め終わってないけど、本家ごちゃまぜサマナーが完結する前に投稿してみるドン。


ガイアよいとこ一度はおいで

   ◆   ◆   ◆

 

 

 

 転生といえば、普通は何かしら最強の転生特典をゲットして、何かしら原作キャラの美少女と遭遇してそれっぽいハーレムを築き上げていたりとか、そういう事をするものだ。少なくとも、僕の知っている転生ネタを扱った作品、主にネット投稿されていた一次創作や二次創作の小説なんかはそんな感じだった。

 

 で、この僕『奇仏寺無漸』は、といえば。

 

「ハーレムとかどうでもいいけど、チートな転生特典は欲しかったな。無限の剣製とか、ザ・ワールドとか、そういうの」

 

 そんな風に思うのも、僕が実際に転生を経験したからだ。別に猫を庇ったとかそういう大した原因があるわけではなく普通に交通事故だったし、チート特典とかそういったものは存在しなかった。ついでに原作キャラの美少女とのハーレムも存在しなかった。

 というかメガテン世界に原作キャラの美少女とか……あー、いや、まあ、いたりする、のか? よく分からんけど、何か違う気がするし。

 

「まあ常識的に考えて、ハーレムとかあっても持て余して困るだけに決まってるけど」

 

 そりゃ、僕も性別男なので一時の気の迷いでハーレムっていいなとか思う事もあるし、現実に複数の美少女を侍らせているリアルハーレム野郎のチャラ男なんかを見掛ければ嫉妬込みの苛立ちを禁じ得ないのだろうけど、いざ自分がその立場になってしまえば、正直耐えられないだろう、とか思う。面倒臭いし。恋愛関係なんて人付き合いの中でも一番に面倒臭いものを複数同時進行で続けるとか、どう考えても死ねる。

 

 …………まあ、今そんな事は本気でどうだっていいのだが。

 

「はぁ」

 

 楽がしたい。面倒とかいらない。派手な幸せとか波乱万丈とかいらないから、努力もせずに三割くらいの力でのんびりと生きていきたい。むしろ、働かずに一生不労所得だけで生きていきたい。ま、そんな上手い話、そうそうあるはずもなし。

 もう一度溜息を吐いて、僕は懐から引き抜いた木製のペーパーナイフの刃の部分を首筋に当てて、そのまま喉笛を掻き切るようにその刃を引いた。

 

「ペルソナ・アンド・デビルシフト」

 

 歌うように呟くと同時に、僕の全身が蒼白い鬼火と暗雲が入り混じった生体マグネタイトのオーラに覆われ、その中から浮かび上がってくる異様の影。見た目は平安貴族を象った黒赤の浄瑠璃人形、その顔面をつるりとした真っ黒な無貌の仮面で覆い、貌がないその代わりとでもいうかのように赤黒い陰火に包まれた巨大な眼球が三つ、その周囲を衛星のように周回していた。

 人の心の奥底から引き出した“悪魔のカタチ”を自身の力として使役する能力者「ペルソナ使い」としての僕のペルソナ『ドウマン』。司るアルカナは背徳と耽溺、あるいはそこからの覚醒を意味する“悪魔”。

 

 それが鋭い鉤爪を生やした両手を渦巻く生体マグネタイトの流動の中へと突き込めば、さらに発現するのはもう一つの能力。渦巻くマグネタイトを内側から喰い尽くすようにして肉体を変容させた新たな姿へと変化する。渦巻く暗雲と陰火の中に肉身が溶け混ざり、まず形成されるのはナイフのように巨大な牙と鉤爪、それを起点に捩じれ狂った骨格が拡大変容、追随して膨張した筋肉と共に作り上げられた妖獣の躯体の表層へと凝結したマグネタイトが混色の毛皮を形成し、完成するのは異様の怪物。

 

 その貌は狒々。

 その躰は狸。

 その四肢は虎。

 その尾は蛇。

 

 多様な獣の容を併せ持ち、しかしどれでもない存在、異様の魔獣────『妖獣ヌエ』。悪魔変身能力者「デビルシフター」としての僕が持つ、もう一つの姿だ。狒々を象っている頭部はぽっかりと空間ごと穿たれたような闇に覆われてその全貌を視認できず、その中に双眸と口腔だけがはっきりと視認できる。全体的な体格のバランスは直立二足歩行する獣人に近く、大振りな鉤爪を持つ両腕はゴリラにも似て、しかしそれを支える胴体は狸というには痩せており腹の出方が足りない。背後には長く伸びた毒蛇の尾が鞭のように宙を叩いて躍る。

 

 デビルシフターとして妖獣ヌエの姿に変じ、爪牙と雷電を操る。

 ペルソナ使いとしてドウマンの姿を呼び出し、多様な呪術を操る。

 

 その二つの力を同時並行して操るのが、護国組織ガイア連合に所属する僕のスタイルだ。同時二つ、悪魔の力を身に纏った僕は妖獣ヌエの能力でそのまま空中へと飛び出すと、上空から地上を確認する。そこそこ広い異界だが、敵の所在は確認できている。

 

「さて、と。とりあえず調子はオールグリーン、感覚に異常はゼロ、と。で、敵の方は、と……おーおー、やってるやってる。この調子なら僕の出番はなさそうだねー」

 

 草原のような異界を蹂躙するのは凄まじい数の『悪霊レギオン』、一体にして軍団と呼ばれるその名の通り、暗紫色の鬼火の塊の中に無数の顔が浮かんだような不定形の怪物が、少なくとも百は越えているだろうか、いい加減数えるのも面倒なほど溢れ出して青々と茂った草原を、樹冠に覆われた山肌を覆い尽くしていき────割とあっさり、まとめて蹂躙し返される。

 マハブフ、マハブフ、マハブフーラと範囲氷結呪文の連打によって紫の鬼火は白銀の氷に覆われ凍結して砕け散り、次から次へとその身をマグネタイトの塊へと変じていく。まさに蹂躙、無双と呼ぶに相応しい一方的な戦果を積み上げていく味方、ガイア連合側の戦力はたったの三人。

 ガタイのいい傷顔の白スーツと、その式神たる鎧姿の金髪美女と、黒フードの若者。ちなみに氷結呪文を連発していたのは黒フードの仕業だ。その後ろには本来この異界【恐山】の管理者だった巫女姿のイタコ達の姿もあるものの、戦力値に差があり過ぎるので、言い切ってしまうと彼女達には悪いのだが、ぶっちゃけ見届け役くらいの意味しかない。

 

「物理前衛二人に、魔法攻撃担当の後衛一人。まあバランスがいいとは思うけど、ゲーム脳的に考えたらヒーラーとバフデバフを兼ねるサポーターがもう一人くらい欲しいところだよな。後はダンジョンアタックを考えるなら索敵とか罠解除とか解錠とかその辺を担当するシーフ役なんかも」

 

 翼もないのに空を飛ぶ妖獣ヌエの力である空中歩行能力、そしてドウマンの妖術による気配遮断。その二つを組み合わせた隠密行動はよほどレベル差のあるバケモノとぶつかりでもしない限り、悪魔のひしめく異界の中でも割と優雅にフライトを楽しむ事ができる。

 その余裕を全身で味わいながら、君はどう思う、と、妖獣形態の僕の肩へとふわりと腰掛けた相棒へと話し掛ける。月の光のように透き通った銀色の髪を長く伸ばした、可憐な少女。

 

「何にせよ、私達がサポーターでもシーフでもないのは確実でしょうね。何せ、仕事していませんから」

「バックアップも立派な仕事だって。イタコ連中か他の誰かしらがあの三人に奇襲を仕掛けるようなら、その一手先に僕達が奇襲を仕掛け返す。それが僕達の仕事だよ」

 

 言うと、ガイア連合謹製オーダーメイド高性能式神の一体にして僕の相棒でもある銀髪の少女「メディア・リリィ」は、肩をすくめた。

 

「で、その心は?」

「お空の上でのんびり観戦してるだけでマグネタイトどっさりに円換算で報酬七桁とかマジ美味しいです」

 

 ズゴー、とダイソンよろしく妖獣形態の口から大量のマグネタイトを吸い込みながら少女と同じく肩をすくめる。氷結呪文で砕け散ったレギオンが吐き出したマグネタイトは、倒した本人である黒フードの青年と、その同行者である白スーツ&金髪美人へと吸収されていくがその割合は一割程度、残りは異界や自然界へと還元されていくのだが、僕はそのプロセスにドウマンの吸魔スキルで介入し、大半を自分の腹へと収めていた。これぞ不労所得というヤツである。

 

「ま、一番美味しかったのはイタコ連盟からもらった封魔管だけどね。これで仲魔枠が増えた」

「私としては、もう少し見せ場があってもよかったかもしれませんね。まあ獣姿のマスターの毛皮はモフモフで素敵だと思うのですけど」

 

 前世でプレイしていたスマホゲーのキャラを模したこのオーダーメイド式神は、可憐な容姿に違わず、僕の下に来た時から戦闘でも、家事や生活管理の面でも、何かと献身的に働いてくれて正直助かっている。実によく出来た相棒だ。僕には勿体ないくらいかもしれないが、だからといって手放す気はない。永遠にだ。

 と、そんな事を考えていると肩の上でメディアが声を上げる。

 

「あ、見てくださいマスター、大物が出てきますよ!」

「おおマジだ。どう見てもボスだな。じゃあアレを潰したら御仕事終了か」

 

 氷結魔法のとばっちりで凍り付いて綺麗な銀色になっていた大岩が砕けて、何やら真っ黒なドロドロが溢れてくる。どうやらあの岩が封印的なアレだったようだが、もしかしたら氷結魔法に巻き込まれたせいで岩の耐用年数に限界が来たのかもしれん。溢れたドロドロはそのまま不格好にヒトガタを象ったような黒泥の巨人と化し、その顔面と腹部に赤く輝く無数の眼球が出現する。

 まあ黒フードの手でブチ込まれたブフダインを食らって一瞬で凍り付いた挙句、その上から白スーツと金髪美女に嬉々として殴られまくっているので割とあっさり死にそうだ。まあ、あの連中はガイア連合の中でも別格のショタオジを除けばトップクラスの戦力を誇る最精鋭。あの程度は当たり前にやってのける強者達だ。

 

「まあ、マスターもその同類扱いなんですけど」

「どう考えてもガラじゃないけど、否定はしない」

 

 レベルも似たり寄ったりだし、と呟いて、しかし。はぁ、と溜息を一つ、眼下の一点に視線を向ける。残念ながら、空の上の自堕落タイムは終了らしい。せっかくそろそろ御仕事終了の時間だったはずなのに、全く空気の読めない奴らだ。

 

「メディア、気付いてるか?」

「ええ。ボス戦の座標から北東方向に五百メートルほど。いますね、人間が十五、天使が十二。内訳からしてメシア教会の部隊でしょうね」

 

 メディアの頭上にふわりと浮かぶのは、宇宙から来た浮遊円盤のような奇妙なペルソナ『ナコティック』。戦闘に向かないサポートタイプのペルソナだが、だからこそ索敵能力は一級品であり、敵を見逃すという事がまず有り得ない。

 ペルソナ使いである僕の血肉を素材としているからか、偶発的に生まれたペルソナ能力を持つ式神。完全なイレギュラーとして誕生した彼女であるが、その彼女を基にしてペルソナ機能搭載、という特殊仕様の式神の研究が行われているのは、また別の話。

 

 メディアのペルソナであるナコティックの捕捉した敵の位置が、彼女に搭載された汎用スキル《テレパス》によって僕の脳裏に送信される。その位置を周囲の地形情報と照らし合わせ、状況を確認。どうやら僕の仕事だ。

 僕達の仕事はあくまでも後詰、つまりは主力である白スーツ達に奇襲を掛けようとする相手に逆奇襲を掛けて始末する事、だが。どうも、それをやろうとする馬鹿共が出てきたっぽい、という事で。

 あの三人をどうこうできるような実力はなさそうだが、それはそれとしてもこれから給料もらう身だ、事案が起きなかったならともかく、起きた癖に何一つ仕事していない、というのは非常にマズい。

 

 ああ、嫌だ嫌だ面倒臭い。さすがはロウ代表組織、こんな時にも出てくるとか、実に勤勉だ。深々と溜息を吐きまくって三本の封魔管を開放し、内部に封じられた三体の悪魔を解き放つ。現れるのは獅子の頭を持つ翼長数メートルの巨鳥『凶鳥アンズー』、冷風を巻き起こして空に浮かぶヘラジカの角を生やした白猿『邪鬼ウェンディゴ』、黒鷹の翼を広げて空に浮かぶ山羊頭の『邪神バフォメット』の三体。

 

 そして、もう一体。誰よりも信頼する僕のパートナー。

 

「行くぞ、メディア」

「ええ、行きましょうマスター!」

 

 メディアの左手薬指に嵌められた銀色の指輪からもさらに追加でもう一体の悪魔が召喚される。見た目は空中に浮遊する真鍮の壺に入った小鬼『妖魔アガシオン』、僕が従えている個体は紫がかった体表と、顔を覆うSFじみた機械的なゴーグルを合わせ、悪魔らしからぬどこか機械的な印象の個体。

 式神と同じくガイア連合に所属する異能者の標準装備となりつつあるアガシオンだが、その中でも僕のは専用装備である可変式大型防盾『オルテナウス』を中心に、僕やメディアに対する攻撃を防ぎ止めるように防御型に調整された代物だ。

 

 ヌエの身体能力を全開にして、仲魔を引き連れて空中を疾走する。向かう先、空を駆け抜けて眼下に見えるのは一点、山間に存在する小さな窪地。そこに蠢く白い斑紋を構成するのは白い法衣を着た集団。人間と天使が半々ずつ、集まって隠密性を重視した陣地を構築している。どこからどう見ても完璧なまでにメシア教会だ。一体どこで情報を嗅ぎ付けてきたのか知らんが、目的は十中八九こっちの妨害だろう。

 白スーツと黒フードが気付かないのは距離があって、かつ地形利用が上手いというゲリラ兵じみた戦術運用が最大の理由だが、上空からの広域監視なら問題なく炙り出せた。だがそこまで猶予はない、メシアンの集団が用意しているのは銃火器、最低でも狙撃銃が数挺と、加えて迫撃砲が三門。詳しい事は分からんが、ボス戦やってる三人組や、その後背のイタコ集団にも十分届く距離なんじゃないだろうか。

 

「ま、撃たせないけどな」

 

 地響きを上げて着地するのは三門並んだ迫撃砲の真上、神敵に砲弾を撃ち込むはずの機械仕掛けが妖獣形態の体躯に押し潰されてスクラップと化す感触を足に感じつつ、顎を大きく広げてパニックボイス、敵陣全域に混乱を振り撒いて陣形が崩壊するのを眺めつつ、同時に動かす蛇の尾は一際豪奢なリーダーらしき法衣の人間に巻きつきを仕掛け、蛇の顎で狂いかみつき。どうにか撃退しようとこちらに武器を向けてくる兵士達には両腕からのマヒひっかきで応戦。そして同時進行で背中に浮かぶペルソナ『ドウマン』が両手で印を結んでマハムドオンを発動させる。

 妖獣形態の全身で異なるスキルを同時進行で四つ、さらにペルソナの分も入れて五つ。現実であれば同時進行でこういう事もできる。特に呪殺の戦果が大きく、雑魚天使の大半と兵士の半数以上を殺傷したのはこれによるもの、呪殺を使われる事を見越して呪殺耐性か即死無効の護符くらいは用意していたようだが、こちらもそれ対策で呪殺貫通スキルくらいは持っている。

 僕のペルソナ『ドウマン』が得意とするのは呪殺、デバフ、サポートという便利過ぎる三分野であるが、特に呪殺は呪殺高揚、呪殺激化、呪殺ブースタ、呪殺プロレマ、呪殺貫通と、頭がおかしいレベルで補助スキルをガン積みしているので単なるマハムドが某死んでくれる級の殺傷力を誇り、大半が呪殺を弱点とする雑魚天使の集団が生き残れるものではない。

 

「……そんな、護符が効かないなんて!?」

 

 などという兵士が上げる恐慌の声がそんな推測を裏付けてくれる。最初の強襲だけで敵陣は半ば崩壊し、トドメとばかりに仲魔達が襲い掛かる。邪神バフォメットが吐き掛ける灰色のガス“石化ブレス”を浴びた兵士達がその全身を石に変えていき、その上から凶鳥アンズーが飛ばすマハザンマの衝撃波が兵士や天使の石像ごとそれを破砕していく。それを生き残っても邪鬼ウェンディゴのブフーラによる掃討で、敵は次から次へと減っていき、結局兵士と天使の集団が耐えたのはせいぜいが十数秒、残るはギリギリ生き残ったネームドらしき天使が一体。

 あっという間に死に絶えてしまった御仲間を見て、口をあんぐりと開けて驚愕の感情を表現しながら、誰もいなくなった周囲を見回している。背中に二枚の白翼を広げ、純白の法衣を身に纏った褐色毛皮の熊、という天使としてはかなり異例の外見だが、まあ天使ではあるのだろう。

 

「き、貴様ら……神の力を理解できぬ愚かな悪魔めが!!」

「神の愛ではなく力を語るかね。その時点でロウ属性の天使としては失格だって、はっきり分かんだね」

 

 と煽ってやると、まあ予想通り怒りのツボだったらしく熊の天使はその場でガチギレし、両手から鉤爪を伸ばして大きく顎を開く。そこから放たれる憤怒の咆哮が空気を揺らし、広がった余波が周囲の大地を揺らして岩に罅を入れ、震動で転がり落ちた小石が点々と岩肌を転がっていく。

 

「貴っ様、言うに事欠いて…………許さん! もう許さん! 絶対に許さんぞ邪教の悪魔が! 貴様らはこのペルシャの大天使ドビっ────」

「駄目です、おイタはいけませんよ」

 

 だが残念。余計な事を言う前に天使熊に向かってメディアが発動した精神術式が白い毛皮の巨体を直撃し、シバブーの脊髄を駆け巡る激痛を受けて大天使ドビ何とかが歯を食いしばって苦悶の呻きを上げる。叫ばなかっただけ褒めてやるべきかもしれないが、それでも動きが止まった時点で致命傷だ。

 ヌエの能力でジオンガによる鮮やかなアーク放電の閃光を叩きつけ、感電で動きが止まったところにメディアの頭上に浮かぶペルソナが“ナイス・ショート”、細かい火花を散らす放電が波のように周囲の空間へと拡散していく。電撃系魔法スキルとしては低威力だが、この技の恐ろしさは威力ではない。その正体は『感電している相手がこの技を受けた時、その相手を確実に即死させる』という電撃属性の即死スキルだ。

 感電の効果時間はごく短いため扱いづらいスキルだが、波状攻撃で畳み掛けるようにして使えばそれほど問題はなく、有効に扱える。とりわけ妖獣ボディとペルソナで疑似的な二回行動になっている僕であれば尚更。感電によって痙攣を繰り返していた大天使がカッと目を見開くと、その両眼がぐるんと裏返って白目になり、そのまま地響きを立てて地面に崩れ落ちる。

 

「…………無念」

 

 その言葉通りに無念の情が籠った呟きを最後に、熊型の大天使はそのままマグネタイトの塊に融け、空気中に揮発して消滅した。とりあえず、この場の戦闘はこれで終わりであるようだ。

 

 

 

   ◆   ◆   ◆

 

 

 

 ふぅ、と溜息を吐き、ぼんやりと酒杯を傾ける。イタコ連盟が持っていた異界【恐山】も解放されて、これで無事に仕事は完了。現在はイタコ連盟主催の祝宴の真っ最中だが。

 

「……やれやれ、華やかだねぇ」

「華やかは趣味に合いませんか、マスター」

「うーん、まあ食事は悪くないかな?」

 

 僕の溜息を耳ざとく聞きつけたメディアは、卓に戻した杯に酒を注ぎ直そうとして、しかし杯の酒が減っていない事に気が付いて徳利を戻す。僕と同様に異界の掃討に参加したメンバーも歓待を受けており、彼らの周りにはそれぞれイタコ連盟に所属する巫女が数人ほど付きっきりで世話をしているが、僕の隣にいるのはメディア一人だ。

 多分、妖獣への変化というデビルシフターの特異性に隔意を抱かれているか、あるいは単純に僕が今回果たした仕事の性質上、イタコ連盟の構成員を伴っていなかったために印象が薄いのかもしれない。まあ、どうでもいい話なのだが。

 

「それにしても、そろそろ二年、か」

 

 僕が所属する『ガイア連合山梨支部』が発足して、そろそろ二年になる、か。終末の訪れにはまだまだ猶予がある。だが、その始まりは確実に近づいている。それがいつになるかは分からないが、このいつまで続くかも分からないモラトリアムの間に確実にレベルを上げて、文明が崩壊した終末の世界でも生き残れるような強さを身に着けておく必要がある、と。

 

 現状、ガイア連合の首魁であるショタオジこと神主を別格として、連合の中で一番経験値を稼いでいる異能者は、あちこちで修羅場をくぐっている霊視ニキ、要するに今回の【恐山】攻略戦で攻略メンバーの主力を務めた白スーツのマッチョだ。

 メシア教会に拉致されて拷問を受けて覚醒しても霊視しかできない、とかいう謳い文句の割にその存在は詐欺そのもの、肉食獣の目付きをした巫女十人以上に取り囲まれてこちらに助けを求める視線を送ってくる姿からは想像しがたいものの、その正体は物理こそパワー、を地で行く圧倒的なマッスルにより通常攻撃だけで一切合切を粉砕していくガイア連合の最強戦士。

 メシア教会に恨み骨髄のその経歴からメシア教会の相手をする事が多く、メシア教会の主力が呪殺に弱い天使であるため、呪殺魔法を得意とする僕はそのサポートに回される事が多く、だから彼の事はよく知っている。

 

 それに次いで強いのが、向こうで無表情系の巫女少女に付きっ切りで世話をされているブスジマ君だ。見た目はどうにも覇気がなく、服装・髪型も割とボサッとしたものだからいかにもモテない感じの陰キャフツメンに見えるが、僕の見立てではやや伸び過ぎの前髪を整えて少しファッションに気を遣うだけでどこぞの事務所に所属していてもおかしくないようなイケメンへと早変わりしそうな感じの、早い話がハーレムラノベやエロゲーの主人公になりそうなタイプの一般学生である。

 ボス戦で霊視ニキや彼の式神と並んでメインを張っていた黒フードの正体が彼だ。霊視ニキと同様に何度か共闘した事もあるので知っているが、彼の現状のレベルは僕と同じ30で、得意分野は氷結と呪殺。呪殺という得意分野が被っているものの、彼の戦闘スタイルは氷結属性の魔法攻撃がメインであって、その性質は微妙に異なっているわけだが、そういうわけで二人揃ってメシア教会相手に駆り出される事は割と多い。

 今回の異界のボスは物理・氷結耐性、呪殺反射とかいう面倒な耐性を持っており、彼の得意とする氷結・呪殺の双方がほぼ効かず、霊視ニキの物理攻撃も利きが悪かったという事もあり、あそこは予備戦力だった僕が彼と交代して、対メシア教会を彼にやってもらい、僕が代わりにボス戦に回るのが正解だっただろう。タイミングが悪かったという事もあるが、それはそれとしてその辺の戦術判断のミスは反省点だ。

 

 強いといえば、雑魚担当の別動隊を率いていたエヴァンズ夫妻もそうだ。金髪碧眼、高身長、高収入という夢の王子様を具現化したような旦那さんの方には宴会が始まった辺りから霊視ニキ同様に男に飢えた巫女さん達が片手の指では数え切れないくらい群がっていたのだが、隣にいた奥さんの方が呪殺即死100%って感じの非常にヤバい目付きで睨んでくるのに耐え切れず、数秒でどこかに散ってしまった。その分の被害は霊視ニキが受ける羽目になったのは御愁傷様といった所か。

 今は二人して隣にいる少年の話を聞いているところで、何やら幼馴染のために頑張りたいとか言ってる少年を励ましたり、アドバイスを送ったりと二人して色々と微笑ましげに世話を焼いている。

 

 別動隊の中にいた沢田君なんかは最初の頃はMPが足りなくて撃てなかった初期スキルのアンティクトンが、最近ではレベルアップのお陰で一発くらいは撃てるようになったとかいう話で、アイテム係兼砲台担当として別動隊に参加していた。彼も左右に巫女さんが二人ほど張り付いて酌をしてもらっているが、少し離れたところからそれを睨んでいる女の子がいるから怖い。

 彼の友人の中では数少ない、彼と同じ異能者である立花さんの事だが、彼女の前世は男のTS転生者とかいう話だったと思ったが、あれは女の子を侍らせている沢田君に嫉妬しているのか、それとも恥ずかしげもなく沢田君に貼り付いている女の子に嫉妬しているのか、どっちなんだろうか。

 

 その隣では別動隊でMVPを取ったらしい禁書目録の白シスターのコスプレをした少女がお立ち台の上でフィーバーしていたりとか、他にもスタンド使いのコスプレした青年が同じく波紋使いコスプレの男性とビールジョッキ片手に肩を組んでいたり、同じくコスプレ勢の青年同士が殺意の波動と北斗神拳でラッシュの速さ比べをしていたり、小太りの青年が頭上に浮かべたペルソナ『外道スライム』の不定形を活かした隠し芸を披露していたり、それをハム子や他のペルソナ使い組が囃し立てていたり、と。

 

「皆、楽しそうだねえ……」

「そうですね、マスター」

 

 終末が来ても、誰一人欠けずにいられるだろうか。願わくば、この中の誰一人欠けることなく終末を乗り越える事ができますように。祈りを聞き届けてくれるような都合のいい神様なんてこの世界のどこにもいないけど、それでも。

 

 

 

 




BiSHの『CAN WE STiLL BE??』『GiANT KiLLERS』の二曲、ごちゃまぜサマナーの本家様の雰囲気に当て嵌まり過ぎて困る。


簡易キャラ紹介

・奇仏寺無漸
 見た目だけ無惨様。見た目だけなので頭無惨様ではないのだが、人間相手に平然とかみつき系スキルを使うとか、本物の無惨様とは別方向で頭がアレ。
 性格的には割と大雑把で能天気。コミュ障で人付き合いに対して極端な苦手意識を抱いているが、基本的にオタク集団であるガイア連合内部に関しては親しい友人がいないわけではない。
 好きなものはラノベとチキン南蛮とメンチカツ。嫌いなものは大根とメシア教。メシア教を食べ物の好き嫌いと同レベルで語っている時点で、何かおかしいって分かる。

 ペルソナ使いでありデビルシフター、しかもペルソナの能力で陰陽術と封魔管を使った古式の悪魔召喚まで使いこなすとかいうチート臭い能力の持ち主。ペルソナと悪魔変身の重ね掛けで耐性の穴が全部潰れているとかいうインチキ。
 スカウター破壊組の一人。
 まあ言うてペルソナもワイルドじゃない脇役御用達の固定タイプ、悪魔召喚もDARK属性限定とかいう感じで、それなりに制限はある。

 それ以外にも何かしら問題があるようで。具体的にはペルソナ『ドウマン』、ひょっとしたらバレバレかもしれないけど、地の文に何気にマズいキーワードが揃っていたり。

・メディア・リリィ
 主人公のパートナー式神。
 ベースはFGOの若い頃のメディアさん。主人公の凶行に笑顔で手を貸しかねない型月公式サイコさん。これで属性が善とか嘘やろ。
 式神としては回復・補助特化で、これは主人公が召喚するDARK属性の悪魔には回復系の能力を持つ悪魔が全然いないため。
 それ以外にも地味に魔法攻撃が複数属性揃っていたり、元キャラと違って近接戦にも対応できたりと割と器用。家事もできる。

・大天使ドビエル
 本日の被害者。
 オリ悪魔。メシア教会過激派の大天使であり、日本メシア教会の大半を占める穏健派に対する抑えになっていた。彼がここで始末された事で、穏健派が日本メシア教会の掌握を進める事になる、みたいなイメージ。
 今回の一件はイタコ連盟の霊地解放の動きを察知して、とりあえず何か知らんがシメとこう、くらいの割と軽い気持ちで部隊を動かしたらこんな事になった。その辺の堀でフナでも釣ろうとしたらメガロドンかモササウルスが飛び出してきたくらいの大珍事。

 見た目は天使の羽を生やした白いプーさんとかいう天使系悪魔としては割と珍しいデザイン。その名前は『熊の神』とかいう意味だとか。
 一説ではガブリエルが受胎告知のために席を外した折に業務を代行していたとかいう割と由緒正しい来歴がある中間管理職だが、本編では名前すら名乗らせてもらえなかった。
 戦闘では鉤爪を使った格闘戦を得意とする肉体派なのだが、ロクに描写がなかった。





スペシャルサンクス、友情出演

●どくいも様/本家『カオス転生ごちゃまぜサマナー』
・霊視ニキ:霊地解放の対ボス戦主戦力担当。主人公とは対メシアで割と共闘する仲。頼れるマッスル系イケメンの風格を見せつけてイタコ連盟の御姉様方に凸されまくる。

・スライムニキ/やる夫:宴会でちょっとだけ登場。別動隊でアイテム係として活躍。スライムペルソナの粘体の特性を生かした隠し芸とか、ペルソナ芸が妙な方向に器用になっている様子。

・ハム子:別動隊に参加していた。

・某最強スタンド使いのコスプレをしてるの:宴会で登場。本編というか外伝のやる夫スレの方の登場人物。仮定名称は『狂雷と一緒!』で登場した時のもの。
 後にメメントス担当幹部になるが、今は車両担当がいないので浅い層のみの探索、またはパレスでの活動がメイン。
 同じジョジョラーの仲間を見つけて意気投合した。


●ガイヤ様/『【カオ転三次】俺が不幸なのはどう考えてもメシア教が悪い!』
 (※)冒頭の霊地解放戦はこの作品の第三話の別視点。
・ブスジマ ヒデオ:霊視ニキと並んで対ボス戦主戦力担当。相性が悪い敵にぶつけられて相当苦戦した模様。
 対メシアで大規模戦闘があると割と一緒に駆り出されるので、主人公とはたまに顔を合わせる。

●謎の食通様/『終末が来たりし世に英傑の旗を掲げよ』
・アーサー・エヴァンズ:宴会で登場。別動隊のリーダーとして活動。リーダーの素質マシマシのトップ系イケメンの風格を見せつける。対軍戦には嫁ほど向いてないので指揮官役に徹していた模様。
 主人公とはあまり面識がない。嫁を通じてちょっと知ってる程度。

・モルガン・エヴァンズ:同じく旦那と一緒に別動隊。別動隊の火力担当。宴会では旦那に群がる御姉様方を龍の眼光で蹴散らしていた。
 ガイア連合の技術屋として、主人公とはある程度面識がある。

●霧ケ峰 リョク様/『狂雷と一緒!』
・沢田綱吉:宴会で登場。半終末がまだ来てない時代なので、まだローマ皇帝になっておらず、本編の強さには至っていない。現在は修行とレベリングの成果によりようやくベビーサタンを卒業してめぐみんになった位の強さ。一発なら爆裂(アンティクトン)できるくらい。
 やる夫と一緒にアイテム係として別動隊に参加していた。
 ガイア連合内の友人の大半がペルソナ使いという事なので、多分主人公もその中に入っている。

・立花響:宴会で登場。綱吉と一緒に別動隊に参加、多分やる夫をリーダーとして綱吉・響でスリーマンセルを組んで一小隊。

●犬西向尾様/『コミュ障ぼっち、ガイアを行く』
・聖女ちゃん:宴会で登場。別動隊に参加していた。破魔弱点の敵がゾロゾロ出てきたため、範囲破魔即死の連発で敵を撃破しまくってレベルを二つ三つ上げ、相性の良さによって二回り三回り以上も格上のモルガンを僅差で押さえて撃墜数トップを飾り、MVPと相成った。なお、その後のフィーバーについては黒歴史になったとかならないとか。

●漬け物石様/『幼馴染が終末思想のヤバいカルト宗教にハマってしまった件』
・幼馴染:宴会で登場。別動隊に参加していた。アーサー・モルガン夫妻と仲良くなり、色々とアドバイスをもらった。幼馴染のために頑張ってる少年とか、彼ら二人からするとわかりみの塊でしかなさそうだし。

●ウェルディ様/『ガイア連合で学ぶ 真・女神転生』
・波紋ニキ:宴会で登場。別動隊に参加していた。同じジョジョラーの友人と意気投合した。

・波動ニキ&北斗ニキ:宴会で登場。別動隊に参加していた。




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。