なんかいつもの倍以上長くなった。
◆ ◆ ◆
混乱。
恐怖。
憤怒。
抗議。
聖歌。
暴力。
痛苦。
宗教。
暴行。
儀式。
破壊。
凌辱。
出産。
嫌悪。
絶望。
契約。
狂気。
邪神。
さながら、記憶と感情のミックスジュース。ドロドロと混濁した情報が頭の中で渦を巻き、非現実的ではあっても生々しい悪夢を形作る。それに耐えかね、僕は思わずベッドから跳ね起きた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…………ッ!」
ここのところ、毎晩同じ悪夢を見て、こうして恐怖と嫌悪に飛び起きる。それは、僕ではない別の誰かが見た夢だ。純白の輝きと共に天使が降臨し、そしてその天使に囚われてどこかの教会らしき施設に連れていかれ、そこで凌辱を受ける。
眼球や舌、手足といった“不要な”パーツを切り落とされた、いわゆる“人豚”として加工され、拘束具に繋がれて無数の天使に凌辱され、その果てに無貌の怪物と対面して契約を結び、自らも邪神と化して無数の仔を生み落とす。そんな、僕の知らない誰かの夢。
────もっとも、それは夢の“前半”でしかないのだが。
「今、時間は……」
寝ていただけなのに、疲労感が酷い。ぐったりとベッドの上に身体を投げ出し、視線をサイドボードの置時計に向ける。現在時刻、午前二時。……ああ、それじゃあまだまだ寝ていなくちゃならない。また、悪夢へと引き戻される。
そうして、僕はまた泥のような眠りの中に引き戻されていった。
▽ ▽ ▽
『天使、様…………待って、聖母って何、私知らない!?』
『何をするの、やだやだやだ、目玉……!!』
『痛い、痛い痛いイタイ、あ、あぁ……私の足ぃいいいいいい! 返して、返してぇええええええええ!』
『いやぁああああああああっ! 助けて、誰か、誰か!』
『お願いします、誰か! 誰か!』
『検体No.29の調子はどうかね?』
『実験の成果は上々で────』
『素晴らしい、これだけの資質を持つ子供を安定して製造する事ができるとは』
『ええ、中々いい個体でしょう。それに締まりも悪くないようで、お使いになられる天使様方にも実に好評で────』
『我が名は這い寄る混沌────』
『君が望むのなら、私と契約しよう。君の望みを私が叶える代わりに、私の役に立ってもらうよ。これは契約だ。その身、その魂と引き換えに身を焦がし魂を焼く復讐の念を実現する力を君に────』
「あれ、苦しいの? ふーん、じゃ苦しくないようにしてあげる」
凌辱と怨嗟。そんな、苦しいだけの誰かの追憶が、唐突にグルリと反転する。苦痛は快楽に、怨嗟は多幸感に。ドラッグでも注射したかのように全身が熱を帯び、自己認識が急激に蕩けていく。情欲に顔を歪めて下劣に笑いながら迫る天使共の姿こそ変わらずとも、肉の感触、粘膜の味、皮膚を焦がす情欲の熱。貪り尽くした相手の全てが子宮の中で波打って疼痛にも似た熱を伝えてくる感覚。
いつの間にか背景は白で塗りたくられたような研究施設から、毒々しいほど豪奢な中華風の宮殿へと書き換わり、毒のように甘やかな香の煙が生理的嫌悪を押し流し、耳に響いてくる祭礼の楽が拒絶の念を蕩かしていく。彼女ではない僕の身体に天使共が毒にも似た粘液を放つ度に、濃厚な酒精にも似た熱が全身へと染み渡っていく。正義だの主の教えだの言ってお高く止まっている天使共が下劣に顔を歪め、快楽に流されて精気と生命を差し出しながら融けていく姿が、笑いたくなるほどに心地よい。
そうして、数十体ほどいた天使共がマグネタイトの欠片すら残さず僕の“子宮”の中で消滅していった後。頭上から見下ろす巨大な山羊と狐が楽しげに見守る中で、僕の意識はゆっくりと遠ざかっていき。
▽ ▽ ▽
そうして、意識が再び裏返る。取り戻した正気の中で蘇る記憶を反芻し、嫌悪と吐き気に苛まれながら飛び起きる。
「…………はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ、…………本当に何なんだ、この夢?」
ユングだかフロイトだかによれば、淫夢というのは心の中で抑圧された本当の欲望だとかいう話だが、その割には夢の内容が具体的に過ぎる。荒い呼吸を繰り返しながら心を落ち着け、未だに快楽の余熱が燻ぶる身体の調子を整えてから、ようやく周りを見る余裕が生まれてきて、そこでようやく気付く。
「……どこだ、ここ」
イメージとしては、瀟洒な洋館の一室。洒落た内装には不似合いに配置された大量の人形やぬいぐるみは子供部屋を思わせる。窓の外に見えるのは、降りしきる雪で白一色に染め上げられた異国の街並み。……こんな部屋を、僕は知らない。
が。
「ロシアよ。ただし、私の夢の中なんだけど」
答える者はいた────薄青のエプロンドレスを着た少女。視認した瞬間、“美”“可憐”という概念で殴り付けてくるような感覚。精神が侵食されるような純粋美の暴力に魂が塗り潰されるその感覚を一歩手前で押し留められたのは、先程までの絶望と凌辱と快楽の悪夢の記憶が残っているからだろうか。
「……ロシア?」
「ええ、そうよ。せっかく町一つ潰してお友達パーティー始めたのに、誰も遊びに来てくれないし。やってくるのは無粋で頭がおかしい天使とか、そんなのばっかりでつまらないのよ。ここには何も喋らないお友達と、後は冷たい雪しかないの。だから、こうして夢の世界でもお屋敷以外には雪と氷しか見当たらないのよ。それでも紅茶くらいは出せるけど、退屈な事この上ないわね」
ぱちり、と少女が一つ指を鳴らすと、ベッドの脇に可愛らしいティーテーブルが出現し、その上に湯気を立てる紅茶のカップが出現する。それを手に取って口に含むと、僕の知らない銘柄や種類なのだろう、僕が知るインスタントのそれとは比べ物にならない香りと共に、紅茶の熱が口を潤した。
紅茶の香り、紅茶の熱さ。少女の言葉通りであればここは夢の中なのだろうが、そうは思えない強烈な現実感を持っていた。
「ふふ、ロシアンティーはお気に召したかしら? これでも高級品……この場所で出せる限りの、だけれど」
「ああ、うん。君は、一体……?」
青い瞳。金色の髪。白過ぎるほどに白い肌。無垢な少女という概念をそのまま形にしたかのような美しさ。そんな彼女の名前を、僕は知識として知っていた。そう、彼女こそは。
「私は、アリス。魔人アリスよ────よろしくね、私の初めての生きたお友達」
前世での女神転生シリーズに登場する、それこそ女神転生シリーズにおけるアイドルのような存在。かつてどこかの時間軸において唯一神が定めた運命により幼くして死を迎えるも、そのあまりにも無垢で純粋な在り方に魅了された魔王ベリアル、堕天使ネビロスは神の理不尽さに憤り、運命すらも覆した二体の大悪魔の手によって、人類最悪最美の魂は魔人として新生した。
それが、魔人アリス。
「貴方がここに流れ着いたのも、きっと名前の繋がりでしょうね。ふふ、面白い縁もあったものよね」
本来ならば人間世界の常識を一欠片も理解していないまま気儘に振舞う彼女の在り方を思い出して思わず肝を冷やしたが、それでもそうやって微笑む彼女を見るに、少なくとも、即座にゾンビにされるような事はなさそうな事に安堵した事を、僕はまだはっきりと覚えている。
▽ ▽ ▽
僕の記憶を覗き見ていたらしいアリスから受けた大雑把な説明によると、この世界はメガテンで、世界は日本を残して終末状態であり、そしてそんな世界で僕は覚醒したらしい。その覚醒の仕方が問題だったようだが。
「悪魔の姿に変身するデビルシフターと、心の海から悪魔の仮面を引き出すペルソナ使いの組み合わせ。でも問題はそのペルソナの形が、海の向こうを根城にする邪神と一緒だったって事かしら」
ペルソナ『塔・シュブ=ニグラス』。それが僕の魂が心の海から引き出した魂の仮面。それと全く同じ邪神が、アメリカで大暴れしているんだとか。ソイツとペルソナが共鳴した事によって向こう側の記憶と経験が流れ込み、さらにその上でデビルシフターとしての変身先の悪魔の本体にまで干渉を受けた結果が、ここ一月ほどの悪夢であるそうだ。
「確かこういうの『びじょんくえすと』って言うんだっけ? だからこんなにレベルが上がっているのね」
「…………レベル? それは経験値的な?」
「ええ、そうよ。天使を一杯殺したでしょう?」
うん、殺しました。サキュバス的な意味で。まあ確かに、あの調子で大量の天使を毎晩毎晩吸い殺しまくっていれば、そりゃ経験値も貯まるし、レベルも上がるってものだろう。それが真っ当な戦闘によるものじゃなく、淫魔的な吸精行為による生命の略奪だというから色々と微妙な気分だが。
「貴方は男の子だものね。まあ、今は精神的にも女の子に成り掛けてるみたいだけど。だから悪魔変身も解けなくて、元の男の子の身体に戻れないのよね」
「うん、まあ。……これ、どうにかならない? どうやって戻ればいいんだ?」
「簡単よ。男の子の感覚を思い出せばいいの。貴方の場合はそれが一番難しいでしょうけど……そうね、ふふ、今回は特別サービスよ」
【マリンカリン】、と少女の唇が一言を唱えた刹那。僕の脳裏に意識を塗り潰す強烈な魅了の力が叩き込まれ、それでようやく悪魔変身が解除されて、僕は元の人間の姿を取り戻していた。悪魔変身解除の起点となるのは、男としての感覚を思い出す事。
つまり性的に、だ。……相手がいない時点で、詰んでる気もするが。
「ううん、さすがにそれは自分で何とかしてもらうしかないわね。悪魔召喚ぷろぐらむ、とかいうのがあれば悪魔を捕まえられるみたいだから、夜魔とか適当な悪魔を捕まえてどうにかすればいいんじゃないかしら」
「あー、それしかないかー」
「そうね、それから────」
そうして、色々な事を話した。ついでに少しだけアリスの遊びに付き合ったりもして、そんなこんなであっという間に時間が過ぎた。退屈していたせいか、想像以上にアリスが面倒見いい、というのが意外だったが、ともあれ。
「そろそろ、時間みたいね。少し名残惜しいけど…………私の加護とガーディアンの力をあげるから、これで悪夢は防げるはずよ。代わりに、時々ここに遊びに来ること。約束よ!」
最後にそんな約束を交わし、色々と説明を受け、しばらく彼女の遊び相手を務めて、そんな具合に時間が過ぎて、そうして僕は夢から目を覚ました。
◆ ◆ ◆
などという事があったのが、おおよそ一年前の事。
「……懐かしい夢を見たな」
ポケットに入れたスマホの震動で目を覚ました僕『立花アリス』は、夢の記憶を反芻する。真っ当な夢を見るのは久しぶりだ。海の向こうの邪神に由来する悪夢も、アリスの加護をもらい、加えてガイア連合から専属のシキガミを受け取って二重の精神防護を得た事でほとんど見る事はなくなった。
だから今の僕が見る夢といえば、ビジョンクエストという名前の魔人アリスとのゲーム大会が大半であり、それ以外の夢など滅多に見ないから、今回のは結構珍しい。
アリスに助けられてから、大体一年ほどの時間が経った。その一年の間に、それなりの事があった。
魔人アリスのお陰で極悪なビジョンクエストから解放された僕は、アリスに教えられた通りまず最初に地元のジュネスに向かい、そこでガイア連合に登録して異能者になった。まあ、勝手が分からなかったのでちょっとした騒ぎを起こしてしまったが、それでもブラックカード持ち、要するに転生者という特権的な地位のお陰か、大した問題にもならなかったのは助かった。で、それから一年ほどレベルを上げて装備を整え、まあそれなりの実力を持つ異能者になって今に至る、わけだが。
一眠りするために倒していたリクライニングシートを元に戻すと、運転席に座っていた僕のシキガミ『シトナイ』が話し掛けてくる。
「おはよう、マスター。お湯湧いてるし、お茶淹れられるけど、どうする?」
「ああ、頼むよ。どうも寝起きで頭が回らない」
「ふふ、じゃ、少し待っててね」
コンソールを叩いて操縦をオートに切り替え、席を立って車の後部スペースへと移動するシトナイの姿を見送って、溜息を一つ。静かだ。窓の外は白一色、地平線の彼方まで一面の雪景色。常に暗雲に閉ざされた灰色の空と、ブリザードが吹き荒れる凍てついた雪の大地。ここは日本ではなく、ロシア。半終末の訪れによって発生した国土全体の半異界化により、終わる事のない厳冬に包まれた雪と氷の大地。
今、海外の大半はメシア教過激派の暴走によりほとんど制限のない戦火に包まれている。中国、インド、ヨーロッパといったユーラシア一円ではガイア連合のバックアップを受けた多神連合とメシア教穏健派が肩を並べて天使の軍勢に対抗している。南米やオーストラリア、アフリカだって平和ではない。何となればメシア教過激派の本拠が存在する北米大陸ですら、何かの間違いで降臨したクトゥルフ神話の邪神が居座ってメシア教過激派の背後を脅かしている。
その中で今一つ現状が掴めないのがロシアだった。国土それ自体が半異界化により概念的な氷雪に包まれ、事実上の氷河期と異界化による空間拡大によって人口密度が極端に低下し、生体マグネタイトの供給が困難になった事もあり、人間どころか悪魔ですら活動が覚束ない。無線通信の類も半分はメシアの洗脳電波、残り半分はクトゥルフ神話の汚染電波でジャックされており、真っ当な通信が稼働しない。そのせいで連絡も物流も機能せず、状況が掴めない。
そんな現状をどうにかするために、まずは雪と氷に閉ざされたロシア国土を探索する誰かを送り出す必要がある。これは、そういうプロジェクトだった。
僕達の足になっているのはガイア連合製シキガミ多脚装甲車T95Dの寒冷地・極地仕様改造モデル『T95D-BWT』。水陸両用“バケガニ”型をベースとし、そこに極地対応の改造と、長期に渡る単独行動を可能とする循環システム、無限ループ異界式永久発電機関などといった特殊装備を組み込んだ大型多脚装甲車両だ。
歩行用の多脚ユニットは悪路に強いだけでなく、先端に冷気を纏う事で格闘戦時の攻撃力を補強するだけでなく、足場を凍結させ固定して、深い雪の上でも通常の地面と同様の機動性を保つ事が可能。加えて別系統のホバー駆動まで搭載するために基礎設計レベルで見直されている。
機体内部は異界化を応用した空間拡張が行われており、見た目は多脚を除けば中型トラック程度のサイズであるにも関わらず、内部には大型トレーラー数台分に匹敵するペイロードを有し、搭載された循環システムや物資生産システムと合わせ無補給でも数年分の単独行動を可能とするだけの物資を搭載していた。
それでも、ロシアは広い。半終末に伴う環境の変動、半異界化によって国土面積が時空間的に拡大し、都市や集落の位置関係まで変動してしまった上に、天使を始めとする敵性悪魔との会敵や、その他のアクシデントを警戒しながらではそこまでの速度は出せず、こうして丸一日進み続けても周囲の風景がまるで変り映えしない、などという事も珍しくはない。探索行が丸一日操縦席に座って暇を潰しているだけに終始するのも、比較的普段通りのルーチンだ。
だから、こうしてスマホを確認している暇もあるわけであり。スマホを確認すると、メールが一件入っていた。この氷雪と汚染電波の下でも普通に機能するDDS経由でガイア連合から何か業務連絡でも来たかと思って確認すると、意外にも実家からの連絡だ。確認すると何やら従姉妹が『彼ピッピがローマ皇帝になったので駆け落ちしてギリシャ』などという謎のメッセージを遺して失踪したとかいう話だが。
「えーと、意、味、が、分、か、ら、ん、っと送信。時間は……まあ、こんなところか」
ふぅ、と軽く溜息を吐いて、スマホの画面を切り替える。COMPとしても使っているスマホには悪魔召喚プログラムが搭載されており、そこに関連して色々なアプリなども内蔵されていたりする。その中から『アナライズ』のアイコンをタップして起動、自分とシトナイのアナライズデータを確認する、と。
【ステータス】
■立花アリス《Lv.??》
ステータス:運・速重視型
耐性:呪殺・破魔無効
(スキル)
・死んでくれる?(呪殺):アリス専用スキル。敵全体を超高確率で即死させる。死亡時に踏みとどまる効果を無効化する。
・死んでくれる?(万能):アリス専用スキル。敵全体のHP・MPに現在値に等しい万能属性ダメージ。
・M.ティーパーティー:アリス専用スキル。敵全体に高確率で魅了・混乱。
・ライフドレイン:アリス専用スキル。超広範囲の敵に万能属性ダメージ、ダメージ分のHP吸収。
・獣の眼光:行動回数増加。体感時間加速による高速行動。
・コンセントレイト:次に発動する魔法攻撃の威力倍加。
・挑発:敵全体の攻撃力増加大、防御力低下大、自身にターゲットを集中させる。
・ネクロマ:死亡状態の対象一体を屍鬼・悪霊状態で蘇生させ使役する。また屍鬼ゾンビーケンペイを大量召喚する。
・狐火のアプト:シキガミパーツ搭載スキル。敵全体に火炎属性中ダメージ。
・○○ひっかき系:修行で習得したスキル。指先を魔力で強化して人間の首くらい簡単に刎ねる。鉄も斬れる。麻痺ひっかきなど。一部の魔法スキルをエンチャントして上乗せ可能。
・○○針系:修行で習得したスキル。魔力で形成した針を飛ばすか、棒状の物体を投げるか。単発の九十九針、夢見針、邪毒針、珍しいところでは傀儡針(銃撃ダメージ+睡眠&魅了)など。また一部の魔法スキルをエンチャントして上乗せも可能。
・ザン系:修行で習得したスキル。衝撃魔法。適性高。マハザンマまで撃てる。
・ムド系:修行で習得したスキル。呪殺魔法(即死)。適性最高。マハムドオンまで撃てる。
・エイハ系:修行で習得したスキル。呪殺魔法(ダメージ)。適性特高。マハエイガオンまで撃てる。
・精神系:修行で習得したスキル。適性特高。ドルミナー、プリンパ、マリンカリン、ハピルマ他、基本は大抵使える。他、広範囲魅了のキャンディボイスなど。またムド・エイハ系の呪殺魔法や戦闘外の呪詛、一部の物理スキルに追加効果としてエンチャントしたりも可能。
・アギ系:修行で習得したスキル。移植シキガミパーツの補正込みで適性それなり。単体系に絞ってマハ系は習得していないがアギラオが使える他、ファイアブレスに派生している。キャンプファイヤーの焚き付け程度には十分。
・ブフ系:修行で習得したスキル。大半シキガミパーツの補正だが適性高。ブフーラ、マハブフまで撃てる
・ハマ系:修行で習得したスキル。適性低。一通りの霊祓いの結界やら最低限のみ叩き込まれたが、実戦レベルで戦闘に耐えるのはハマくらい。
・ディア系:修行で習得したスキル。適性それなり。とりあえず今はディアラマかメディア程度。他はバステ治療系がポチポチ。
・支援系:修行で習得したスキル。強化よりも弱化の方が得意、呪詛なので。スクンダ、ラクンダなど。戦闘では使える術は少ないが、安全なところから時間を掛ければ遠隔でも結構えげつない弱体化が使える。
・吸魔:修行で習得したスキル。万能属性小ダメージ、及びMP吸収。他の技に上乗せして使用可能。
・ペルソナ《塔・シュブ=ニグラス》
・悪魔変身《妖獣チェフェイ(四尾)》
・ガーディアン《魔人アリス》
(パッシブ)
・太母の祝福:魔王シュブ=ニグラスの祝福。。ペルソナが『塔・シュブ=ニグラス』に固定される。加護自体がレベル上昇に応じて成長し、ペルソナも強化される。肉体が出産に最適化される。男性なので肉体成長が女性的になる程度だが、どんな場所でも出産を可能とするため周辺環境による悪影響、異界のフィールド効果によるマイナス補正を無効化する。女性専用装備使用可能、男性専用装備使用不可。
・白面金毛の祝福:妖獣チェフェイの祝福。悪魔変身形態がいずれかの『妖獣チェフェイ』で固定される。悪魔合体で変化できない。加護自体がレベル上昇に応じて成長し、悪魔変身形態が段階的に強化されていく。容姿が男性を惹きつける方向に強化される。女装に抵抗がなくなる。無意識下の挙動・仕草が女性的になる。悪魔変身形態の耐性に「物理全般反射」を付与。
・無垢なる狂姫の加護:魔人アリスの加護。ガーディアンが常時『魔人アリス』で固定される。加護自体がレベル上昇に応じて成長する。肉体的な成長・老化が女性的・少女的な魅力の上昇に置き換えられる。魔王シュブ=ニグラス、妖獣チェフェイからの精神干渉を遮断する。魔人アリスの固有スキルのダメージ・状態異常付与率・射程・効果範囲に補正極大、及び貫通効果。
・はやくしんでよ:即死スキルのMP消費0、及び即死確率補正特大。
・呪殺貫通:対応する属性のスキル・魔法に貫通効果。
・精神貫通:対応する属性のスキル・魔法に貫通効果。
・勇者の精神:味方が攻撃の対象になった際、その味方より上位の耐性を持っていれば対象の受けるダメージを引き受ける。知覚範囲内の味方、もしくは悪魔契約で接続状態になっている仲魔に限られる。
・シキガミパーツ移植:高位悪魔の加護、及びデビルシフター特有の精神侵食現象に対するリミッターを兼ねる。また悪魔変身解除時の霊質を聖獣チロンヌプに寄せて調整・偽装している。
・生得武器(爪):シキガミパーツ搭載スキル。指先から鉤爪を展開可能。素手攻撃・ひっかき系スキルの攻撃力強化。
・火炎ブースタ(弱):シキガミパーツ搭載スキル。火炎属性ダメージに補正小。
・氷結ブースタ:シキガミパーツ搭載スキル。氷結属性ダメージに補正中。
・我慢のフホホイ:シキガミパーツ搭載スキル。食いしばり効果。
(仲魔リスト):シトナイ、妖魔アガシオン、マシンT95D-BWT、外道ショゴス、邪鬼ウェンディゴ、神獣レプンカムイ、霊鳥コタンコロ、妖魔アペカムイ、軍勢チシナプ、地霊コロポックル、外道エペタム、軍神ホンカンカムイ、魔王キングフロスト、地母神セドナ、破壊神チェルノボーグ
◆悪魔変身・妖獣チェフェイ(四尾)
ステータス:速重視バランス型、魔法寄り
耐性:物理全般・火炎・氷結反射
(スキル)
・ひっかき:敵単体に格闘小ダメージ。
・イナズマキック:敵単体に格闘小ダメージ。または瞬間的に脚力を強化して加速・跳躍が可能。
・ザンマ:敵単体に衝撃属性ダメージ。また衝撃波の反動を利用した高速機動・空中機動が可能。
・マハザンマ:敵全体に衝撃属性中ダメージ。
・セクシーダンス:敵全体に魅了。
・ドルミナー:敵単体に睡眠。
・プリンパ:敵単体に混乱。
・マカジャマ:敵単体に魔封。
・ディアラマ:味方単体のダメージを回復。
・ラクカジャ:味方全体の物理・魔法防御力強化。
・タルンダ:敵全体の物理攻撃力低下。
(パッシブ)
・妖気迅雷:高速機動、超跳躍が可能。
・才気煥発の極み:スキル使用時のMPコストを0にする。汎用スキルの効果・習得率向上。
・魅了追加:物理攻撃時、一定確率で魅了付着。
・白面金毛の仙姑:カルトマジック『仙術(左道)』、汎用スキル『中国拳法』『房中術(強)』を獲得。ドレイン効果、『房中術』スキル効果上昇。礼儀作法や歌舞音曲、漢詩など上流階級向け各種教養や化粧、ファッションなどの技術の他、交渉、誘惑、詐術、言いくるめ、煽り、マウント取りなどの対人スキルに補正大。非変身時にも有効。
・邪気の左手:攻撃時、ダメージ量に応じた生体マグネタイトを収奪する。
・欲望の右手:攻撃時、ダメージ量に応じた魔貨を収奪する。
・貪欲界の女王:異界の支配を奪い、構造を部分的に作り替えることが可能。認知異界に対しても有効。サイコダイブが可能。
・貫反の霊圧(狐):自身が生存している限り、自身に対する貫通・ガードキル系やその他の耐性無効・緩和・書き換えを無効化する。反射ダメージを大幅増幅。
・変化の権能:妖狐としての変身の権能。他人に化ける他、服装を変えるなども。またステータス偽装や気配・殺気の遮断のような隠密行動向けの応用も可能。
・酒池肉林の権能:魅了ハイブースタ効果+その他精神・神経系状態異常ブースタ効果。また酒や肉、菓子、煙草、麻薬、アダルトグッズなど嗜好品などを生成する事ができる。
◆ペルソナ《塔・シュブ=ニグラス》
ステータス:体・魔重視耐久型
耐性:魔法・万能反射、物理全般弱点、状態異常無効
(スキル)
・触手:敵全体に打撃攻撃+感電。
・狂乱の触手:敵全体にランダムで複数回打撃ダメージ。
・コズミックフレア:敵全体に核熱属性絶大ダメージ。炎上・凍結・感電状態の対象に効果大。
・ムドオン:敵単体を呪殺
・カオスエレメント:敵全体に呪殺属性大~極大不定ダメージ。
・混濁の瘴気:敵全体に高確率で毒。
・眷属産み:その場に妖樹ダークヤングを大量召喚する。
(パッシブ)
・邪神の狂気:戦闘時、継続的に敵全体にスクンダ・ラクンダ効果、及び低確率で発狂効果。また精神系状態異常を与えた対象を信徒化。
・屍食経典儀:精神・神経・魔力・呪殺属性のダメージ・状態異常付与率に補正特大。即死効果に抵抗した敵に呪殺属性ダメージ。
・覇王の密約:攻撃にMPドレイン・敵行動遅延を追加。
・異形の生命:時間経過で自動的に負傷・欠損を再生する。
・豊穣の権能:生命の賦活・増強及び植物操作の権能。植物の成長を促進、あるいは作物、肉類を生成する。または森林を形成し異界化を行うことが可能。
・地母の権能:ドレイン時の余剰値をMAGに変換、仮想子宮に蓄積する事が可能。また生物・悪魔を仮想子宮に取り込んで眷属として再誕させる事が可能。
・黒森の権能:龍脈への強制接続・侵食能力。また龍脈に対するドレインが可能。
(汎用スキル):農業、植物学、調合、カルトマジック『ウィッチクラフト』『神話呪文』
■シキガミ シトナイ《Lv.??》
ステータス:速重視魔法型
耐性:精神・呪殺・破魔無効、主人以外からの精神系状態異常無効
(スキル)
・氷結刃:敵単体に物理+氷結複合属性ダメージ物理攻撃。
・忠義の氷結:敵全体に氷結属性ダメージ+凍結。忠誠度によって威力と状態異常付与率が上昇する。
・アイスクラッシュ:敵単体に氷結属性ダメージ+凍結状態の敵を確定即死。
・キャンディボイス:敵全体に魅了。
・子守唄:敵全体に睡眠。
・永眠の誘い:敵全体に効果、睡眠状態の敵を確定即死。
・精神ガードブレイク:対象の精神耐性相性を無効化する。
・限定的悪魔召喚/カムイ神族:マスターの契約による共有召喚。
・ペルソナ《悪魔・パヨカカムイ》
(パッシブ)
・氷結高揚:氷結属性のダメージ・状態異常付与率に補正大。
・精神高揚:精神属性のダメージ・状態異常付与率に補正大。
・凍結ハイブースタ:凍結の状態異常付着率に補正大。
・スクカジャオート:戦闘開始時、味方全体にスクカジャ効果。
・食いしばり:戦闘不能時にHP1で踏みとどまる。
・道具の智慧(攻・癒):消耗品攻撃・回復アイテムを使用可能。
・隠形鬼の残影:本来はオンギョウキの能力。存在喪失・情報抹消レベルの隠密行動が可能であり、範囲攻撃でも捕捉不能。能動的な攻撃を仕掛けるまで有効。味方一体に同時適応可能。
・本霊通信ON『神樹チキサニカムイ』
(汎用スキル):剣術、騎乗、探知、テレパス、口寄せ、霊体化、歌唱、家事、料理、看護、食事、ロシア語、通訳、地形適応:寒冷地、カルトマジック『カムイユカラ』、特殊機器接続、房中術、吸精
◆ペルソナ《悪魔・パヨカカムイ》
ステータス:速重視物理型
耐性:氷結吸収、破魔弱点、身体系状態異常無効
(スキル)
・影無しの一矢:敵単体に銃撃小ダメージ+毒・風邪状態の敵に特大ダメージかつ確定即死。
・ヤブサメショット:敵単体に銃撃大ダメージ+的状態の敵を確定即死。
・切なさ乱れ打ち:敵複数に銃撃ダメージ+消沈。
・召魔の一矢:敵単体に銃撃ダメージ+着弾点に仲魔一体を召喚。
・マハブフーラ:敵全体に氷結属性ダメージ+凍結。
・マハアクエス:敵全体に水撃属性ダメージ。
・疱瘡のフホホイ:味方全体の身体系状態異常を治癒、敵全体に風邪状態を付与。
・アムリタ:味方単体の状態異常を治癒。
・トラフーリ:短距離転移。戦闘から確実に離脱する。
・トラポート:長距離転移。
・リフトマ:地形効果を無効化。
(パッシブ)
・射撃武器装備
・風邪追加:物理攻撃時、一定確率で風邪付着。
・的追加:物理攻撃時、一定確率で的付着。
・感知タイプ
(汎用スキル):弓術、長距離狙撃、千里眼、変化(鳥)、サバイバル
うん、中々悪くない。というか、僕自身の能力はちょっと洒落にならんレベルでチートの部類だ。悪魔変身とペルソナを同時発動すれば耐性が物理・魔法どころか万能含めて全部反射になり、しかもアホみたいな攻撃力を持つ魔人アリスのスキルをノーコストで連射できるようになる。しかも何気に近接戦もできるとかいう完璧っぷり。
まあ、その代償として性自認、精神的なジェンダーが滅茶苦茶に狂ってしまったのは高かったのか、安かったのか。ちらり、とルームミラーを見ると、そこには起き抜けで眠そうな目つきをした美少女が、ジト目で僕を睨み返している。
「立花アリス……「橘ありす」じゃなくて、立花アリスなんだよなあ……」
まあ、漢字の違いなど声に出しても何一つ変わらないのだが、まあ。
元から女顔だった、という程度の自覚はある。だが、ここまでじゃなかったし、少なくとも普通の格好していれば普通に男だと判別される程度の見た目ではあった。しかし今の僕はどこからどう見ても、それこそ骨格から体脂肪の付き方に至るまで、見た目中学生前半くらいのスレンダーな女の子だ。
豊穣の女神である邪神と、最高位の淫魔でもある妖獣の影響により、第二次性徴が中途半端に、というよりは女の子寄りに進んでしまった。何なら見た目幼女であるシトナイと大差ないサイズとはいえ胸もある。装備中のゴスロリ型デモニカ薔薇乙女シリーズ・Ver薔薇にも違和感は一切存在しない。
「女の子の恰好するのにも抵抗なくなってきたからなあ……」
「いいじゃない、似合ってるんだし。私は男の子のマスターも、女の子のマスターも、どっちも好きよ」
ふわり、と背後から抱きすくめられる。そのまま肩越しに口腔を掻き回すようなキスを交わしながら、スカートの中に潜り込んで来ようとするシトナイの手を恋人繋ぎで握り締めた。ああ、これは駄目なやつだ。男としての感覚、女としての欲情、何もかもがごちゃ混ぜになった泥のような快楽が理性を押し流す感覚。
「ぷぁっ、シトナイ……ん、ふぅ……っ!」
「マスター、何をして欲しい? 愛してほしい? 尽くしてほしい? 犯してほしい? ふふ、もちろん全部してあげる。大丈夫よマスター。マスターが男の子でも女の子でも、私はマスターの事が大好きだから。ずっとずっと永遠に傍にいますから」
何よりもマズいのは、それをもたらしているのが誰よりも信頼している大好きな相手だという事。心が罅割れ砕かれていく感覚は何よりも恐ろしいはずなのに、それに対して抵抗する気が一切起きない。抵抗しなきゃならない理由が分からないまま、堕ちていく恐怖の一切合切が快楽へと変換されていく。
「ねえ、マスター。まずは男の子として私の事を孕ませて。そうしたら次はマスターが女の子になって、私がマスターを孕ませてあげる────」
耳元で紡がれる淫秘な熱を伴った囁きに、どくん、と心臓よりも奥深い場所でもっとずっと何よりも根源的な臓器が脈打った。取り返しがつかない方向へと、背徳的な熱に蕩けた理性が崩れ落ちていく。それを繋ぎ止めるようにシトナイの手をぎゅっと握り締め、その暖かさに呑まれるようにしてそのまま意識が流されていく。
「二人でお母さんになって、大きなお腹のまま結婚式を挙げましょう。二人でウェディングドレスを着て、教会で、バージンロードを歩いて、誓いのキスを交わすの。そしてキスしたらそのまま、その場で一杯一杯赤ちゃんを作るの。素敵でしょう、マスター────」
「うん、大好き。シトナイ、大好き。大好きだから、僕と、僕に、────」
キス。唇を重ね、舌を絡ませ、唾液を混ぜ合わせ、そのまま抱き合って溺れていき、わずかな理性に縋るように少女の身体を抱き締めて、そして。
「いいのよマスター、そのまま私に溺れて下さいな。二人で溺れて、二度と戻れなくなって、そうして永遠に二人一緒に。どうせ時間なんていくらでも…………────え!?」
その瞬間、甲高い警報が響いた。
そこそこ広い操縦室の空気を引き裂くようにして唐突に響き渡った警報に、シトナイは跳ねるように身を離す。多脚装甲車が足を止めた反動の揺れに身を任せるようにして、遠ざかっていく熱の余韻に安堵と、そしてわずかな不満を覚えながら僕も浅い呼吸を繰り返して体調を整えた。
「……TPOもわきまえずに、無粋よね」
「いいからシトナイ、状況確認お願い」
「了解……エネミーソナーでも、イセカイナビでもないみたい。この警報は……熱源センサーからね」
運転席のサイドコンソールから立ち上がるホロウィンドウに細い指を滑らせて、シトナイが各種センサーの反応を確認。その報告を聞いて、僕は思わず安堵の溜息を吐いた。僕達が乗っている間、このT95D-BWTは本来ショタオジの仲魔であるオンギョウキが有していた、シトナイの権能によってステルス状態になっている。
さすがはショタオジの仲魔というべきか、存在喪失レベルの隠形を可能とするこの力は通常の悪魔では見破れない。それこそ全知一歩手前の看破系の権能でなければ見破れないし、そもそも痕跡すら残さないし、何なら当てずっぽうで適当に範囲攻撃を振り撒いても透過するだけ、とショタオジからも太鼓判をもらっている以上、この機体が発見されるという事は、そのレベルのヤバい敵が湧いているという事なのだが。
「そういう事もなし、と。反応はどこから?」
「北西、1km先。見た感じ、小さな集落があったみたい。盛大に燃えてるみたいだけど」
操縦室前面を占有するメインモニターに表示される真っ白な地平線の一点が、うっすらと赤く染まっている。その映像がシトナイの操作に反応して四角く切り取られ、数回に渡って部分拡大されて表示される。そこからさらに画像解析プログラムを起動して解像度を引き上げていけば、やがてそれが炎に包まれた小さな村落であると分かる。
「規模はともかく、ただの火災ね。見るべきものもないと思うけど、どうする?」
そう言ってこちらを振り返るシトナイの表情は、面倒だから関わらないようにしよう、と明確に言っている。実際、その通りだ。何よりよろしくないのは“頼られること”。このT95D-BWTには十分な物資が積んである、とはいえ、それは式神と二人での探索行であるからだ。あの村にどれだけの生き残りがいるかなんて分からないが、だからといってそれら全員を養って守りながら安全地帯まで連れていけるような生存リソースは存在しない。
命の天秤を間違えちゃいけない。命は確かに重いが、自分の命はもっと重い。僕がまず最初に守るべき命はシトナイと自分自身であって、彼らじゃない。彼らを助けられるような力を、僕は持ち合わせていない。
「……マスター」
「シトナイ、もう少し接近してから集音マイクを起動。せめて、あそこが人間の住んでいた町かどうかくらいは確認したい」
このロシア探索行における僕の最終目標は、恩人である魔人アリスが住まう都市の位置を見つけ出す事。一応かなり低い確率とはいえ、あの現在進行形で火災が起きている村がアリスの在所である、という可能性を無視する事は出来ない。
「マスター、分かっていると思うけど……」
「ああ。でも、アリスがいるかどうか程度の事は確認しておきたいからさ」
アリスは、彼女の保護者である赤おじさんと黒おじさん────魔王ベリアルと堕天使ネビロスのコンビ抜きで人間らしい知能を持ったゾンビを生産する事ができない。それができれば、彼女ももう少し色々楽しくやって過ごしているはずなのだし。
そしてアリスの口ぶりからすると、今アリスが住んでいる場所には既に命のある住人は存在しない。だから逆説的に、あの村落から人間らしい悲鳴やその手の音声を拾う事が出来たなら、それはそこにアリスがいないという事でもある。
「…………それが貴方の意志なら、仕方ないわね。T95D-BWT、戦闘機動。距離500まで接近して音声を拾うわよ」
「うん、助かる」
呆れたような表情を顔に浮かべたまま、シトナイは多脚装甲車を加速させる。遮るもののない雪原を疾走する多脚装甲車の操縦席に座る彼女の綺麗な銀色の髪に、僕はそっと指先を滑らせた。
「…………ありがと、シトナイ」
▽ ▽ ▽
天使とは何だろうか。一言で表すなら、“神の走狗”“偽善者の集団”“悪意の化身”“全世界共通の敵”“脳味噌カルト軍団”等々、人によって意見が分かれる(とは言ってない)所だろうが、僕の場合はこうだ────羽の生えたモヒカン。集音マイクで拾った音声によると炎に包まれた集落の中では、ぶっちゃけその通りとしか表現できない状況が広がっているようだった。
曰く────。
『ハレルヤァー! 汚物は消毒です! マハラギ!』
『ぎゃぁああああああ! 熱い熱いぃいいいいい!!』
『エイメェエエエン! 新鮮なMAGだぁッ!』
『いやぁあああああ! 助けて、誰か助けて!』
『異端者共め、こんなものまで持っていましたよ! ルーブル紙幣なんて今では尻を拭く紙の代わりにもならないというのに!』
『ああっ、その金はおっかあの手術に必要な……!』
『やめてくれ、その種モミがなかったら来年からオレ達は……!』
『来年の種籾ですか! ハハハ尚更その種籾を主に捧げたくなってきましたよ!』
『おかあさああああん! たすけておかあさああああん!』
『子供だ~~!! 子供がいるぞ~~!! 働ける子供を探せ! 大人は処刑せよ!』
『待って、やめてやめて、誰かぁあああああああ!!』
『頼む! ワシだけは、ワシだけは見逃してくれええええええ!』
『10! 9! ハレルヤ! ああっ待ちきれません0だァ!』
『待ってくれ、村の連中を売ったら俺だけは助けてくれるはず……うわあ~!! 来るな、変態だ! 誰か助けてくれ、犯されるぅ~!!』
『フフン、レザーをつけるとすぐ勃ってしまいますねえ!』
『そんな、約束が違っ……やめろ、来るな、来るな、うわああああああああああああ! アッー!!』
『ああ、なんて事を! あなた、あなたぁあああああ!』
……うん、まあ。
数年前までは日本国内でもこれがデフォだったらしい、とかいう話を思い出して、あらためて頭が痛くなる。というか最後だけ何か違うモヒカンが混ざってたような気がするんだが。あいつらラファエロだかミケランジェロだかのせいでポークピッツが標準装備の癖に、本当よくやるわ。
「……どうする、マスター? どう考えてもあそこに魔人アリスはいないと思うけど?」
「そうだね、それじゃ偵察用のシキガミを飛ばしてくれ。それでアナライズして、ヤバそうな相手がいないか確認して」
言った途端、シトナイは忙しなくコンソールを叩いていた手を止めて、こちらを振り返った。顔は不満そうな表情を浮かべていたが、その眼には純粋にこちらを心配する色が浮かんでいる。
「マスター、戦う気? どうせあいつら、こんな試される大地であんな真似をしているようじゃすぐに死んでいくし、わざわざ手間掛けて殺していく必要もないわ。純粋に、時間と手間の無駄よ」
「それについては同感。でも、ここでアイツらに好き放題させてるのもあんまり気分良くないからね。それで助かる人間がいたとしても、僕達が知った事じゃない」
あくまで僕は、天使を殺すだけ。助けないし、救わない。それだけの話。別に、被害を受けた村人がかわいそうとか、そういうのは理由にならない。かわいそうだとは思うが、戦う理由にはならない。でも、天使共が楽しそうにしていると僕が安心して、くつろいで熟睡できないんだ。そういう、どっかのジョジョの爆殺殺人鬼と大差ない理由で殺し合いに行く、だけ。
「……そう。きっちり線引きができてるなら、私がとやかく言う事じゃないわ。私はシキガミの役割を果たすだけよ」
「うん、いつも助かってる」
「マスターは、本当にもう……」
我儘な子供を見る目で僕を見たシトナイは、溜息を吐いてコンソールを叩く。モニターには炎上中の村落の3Dマップデータが展開され、その上に無数の小ウィンドウが展開して一つ一つに天使の簡易アナライズデータが展開される。
T95D-BWTから射出された偵察用の量産型シキガミ“鎹鴉”、速度もさる事ながら隠密性と索敵能力に優れたそれで村落を詳しくスキャンし、隠密裏に索敵を行っているが。
「どれもこれも15レベル未満。危険そうな相手はなし。マスターなら何一つ問題にならないレベルよ」
「そっか。なら大丈夫か」
僕は席から立ち上がって軽く体をほぐすと、そのまま悪魔変身を発動させる。掌に形成された狐面を顔に押し付けるように被ると、紐もないのに面が顔に固定され、同時に服が赤い着物へと変化して、そして何より体の奥深いところから肉体が根本的に変容していく。シトナイの補助がなければ半ば機能を維持する事もできないとはいえ曲がりなりにも男としての形を保っていた肉体が、幼さはそのままに妖艶な少女のものへと変質し、その背中からは黄金色の毛に覆われた三本の尾が、頭からも同様に耳が現れる。
────悪魔変身『妖獣チェフェイ』。幾多の国を傾けた白面金毛九尾の狐、その最古の姿が僕の変身形態。
姿を変えた僕は一通りの装備を手早く身に着けていく。防寒用の霊装マフラー、一通りの武器とCOMP、腰のポーチには各種消耗品。狐面の裏には通信用の小型インカム。うん、大丈夫。全部持った事を確認し、視界の邪魔になる狐面を横にずらして顔を露出させる。
「……怪我、しないでね」
「うん。バックアップお願い」
「分かってるわ。────ペルソナ」
シトナイがペルソナを発動させ、器用にそのペルソナ『パヨカカムイ』だけを多脚装甲車の外へと出現させる。白いダイバースーツを全身に纏い、顔面をペストマスクで覆った人型のペルソナ『パヨカカムイ』は、手にしていた大型のクロスボウを未だ炎上する集落の一点へと向け、トリガーを引き絞った。
パヨカカムイとはアイヌ民族の伝承に謳われる、本州が存在する南の海から来るという疫病の神。閉じた世界の外から来る来訪者を神格化した客人神の暗黒面を象徴したかのような、不可視の姿で現れて病毒の矢を放つ極寒の地の厄病神だ。
そのスキルの一つ【召魔の一矢】、放たれた矢は集落の中で一番背が高かった時計塔の根本へと突き刺さり、そこから悪魔召喚が発動する。召喚されるのは『神獣レプンカムイ』、空中を海のように泳ぎ回る全長十メートルほどの巨大なシャチ。アイヌ神話において海がもたらす最大の恵み、クジラを陸に追い上げる海の最高位に位置する獰猛なカムイ。
その巨大な尾が召喚と同時に空中を一打ち、発動する【Sマハアクダイン】。召喚された瞬間に即時発動する水撃魔法の波濤が天使達を薙ぎ払うと同時に、村落全域に広がって火の粉を撒き散らしていた炎を半ば消し止める。
「それじゃ、行ってくる」
「ええ、いってらっしゃいマスター。気をつけて帰ってくるのよ」
そっとキスを交わし、そして。
遠く、モニターの向こうでレプンカムイが発動するスキルは【瞬転の舞踏】。送還と同時に他の仲魔やサマナー自身と位置を交換する事ができる特殊スキルを発動し、レプンカムイを遠隔操作でCOMPに戻すと同時に、僕自身がその場に姿を現した。
眼前の光景が一瞬で切り替わり、降りしきる雪が火災の赤い輝きを反射して曇天の空に火の粉のような無数の煌めきを散らす凍土の大地。眼下には半ば凍り付いたまま炎上する石畳の街。そこに落下する前に足元に撃ち込んだ衝撃魔法を足場に跳躍、空中で体勢を立て直しながらCOMPを操作して、肩の上に地霊コロポックルを召喚。
「やーい、バーカバーカ! オマエらの神様でーべそー!!」
「何だと!?」
「汚らわしい異教の悪魔め!」
「おのれ、我らが主を侮辱するとは!」
頭上からスキル【挑発】を起動して煽り立てると、反射的に怒りに目を剥いた天使どもの視線が一斉にこちらに集中する。今時小学生でもやらないような煽りだが、基本的に天使どもの煽り耐性はゼロだ。一瞬で頭に血を上らせて、こちらを殺しに掛かってくる。
同時に、豊かな白髭を蓄えた老小人コロポックルがトラフーリを発動してその場から一旦離脱。半ば崩れた家屋の間、裏路地の奥の積み上がった瓦礫の合間に身を隠すと、頭に血を上らせた天使達の怒鳴り声がここまで聞こえてくる。
「逃げたぞ、探せ!」
「異教の悪魔を殺せ!」
「見つけ出して血祭りに挙げろ! 聖戦の焚き付けにするのだ!」
小柄な体躯は瓦礫の間に上手く隠れてくれる。瓦礫に背中を預けて頭上を見上げると、焼け落ちた建物の間から覗く空を複数の天使が羽ばたいて村中に散っていくのが見える。でもまあ、自分からケンカを売っておいて、誰がただ逃げるかよ。
腰のポーチと一体化したホルスターに固定されたCOMPを叩き、コロポックルを送還してから走り出す。太腿のレッグバンドに固定されたバトンを引き抜いて一振りすれば、バトンは勢いよく伸長して身の丈以上の長さを持つ長棍となり、その杖身に噴き上がる火炎を纏う。
「あー、気持ち悪い。変にテンション上げて特攻してくるんじゃなかった」
気持ち悪い。吐き気がする。そこに天使がいるというだけで、ビジョンクエストで何度も何度も何度も反芻し続けた“あの人”の記憶がフラッシュバックしてきて頭が痛い。耳にこびりついた讃美歌のメロディ、絶えず胃袋に流し込まれる甘苦い培養液の味、身体を這い回る汚らしい手指と、腹腔の浅い部分を前後する粗末な肉棒の感触。
本音を言えば、今すぐにでも逃げ帰ってシトナイに抱き着いて甘えたい。やろうと思えばすぐにやれる。それこそコロポックルを召喚してトラフーリ一発で転移して終わりだ。
「でも、やらない。これでもまだまだ男の子だからね」
ぎり、と口の中で奥歯が擦れる音。せめて、シトナイの前では格好つけたい。これっぽっちもできていない事は脇に置いておくとしても、せめて一回くらいは“可愛い”じゃなくて“格好いい”って言って欲しいのだ。長棍を背中でぐるりと一回転、そのまま足音高く駆け出して。
「だからさあ……────オマエら全員、僕の見せ場のために死ね!!」
路地から飛び出した瞬間に敵と鉢合わせ、正面にいた天使に向かって長棍を振り下ろす。棍の形に凹んだ顔面をさらに抉り抜くように棍の能力を発動、爆発的に発火した長棍の先端から【猛炎乱撃】が発動。本来なら数メートルの範囲を巻き込める爆炎を至近距離から浴びた天使が粉々に吹き飛び、その後ろで一斉に武器を構えた天使共が巻き添えになって燃え上がる。
その反動に乗って跳躍、空に身体を跳ね上げながら、ベクトルを横軸の回転に変換して長棍を振り回し、巻き藁のように燃え上がった天使共を頭上から強襲して再度の【猛炎乱撃】。その爆炎を合図として天使共がこちらに気付き、一斉に集まってくる。空を飛べることもあって障害物となる町並みを気にする事もなく、その動きは相当に速い。
「いたぞ、こっちだ!」
「捕まえろ! 捕まえて火刑にするぞ! 見せしめにするのだ!」
「集え同胞たちよ、神敵に罰を下すのです!」
そんな声が村中に木霊し、集まってくる天使共に捕まってやるつもりもなく、今の爆炎を生き延びた天使共が飛び掛かってくるが。
「遅い!」
体の周りを旋回させるようにして長棍を回し、斬り掛かってくる天使の剣を弾き、捌き、受け流し、弾いていく。肩を並べて左右に立った二人の天使による剣と盾のコンビネーションは機械的だが、その分だけ正確だ。右の剣で素早く撃ち込み、生まれた隙を左の盾でカバーする。左の盾で確実に受け、その隙を右の剣で的確に撃ち込んでくる。
基本に忠実で正確な剣術が左右から圧力を掛けてくるが、千日手の流れは向こう有利の戦いだ。時間を掛ければ敵の増援が到着して包囲される。ある程度敵が集まってきたところで勝負に出た天使共は、こちらが撃ち込んだ長棍を片方が盾で受け、剣を捨てて体で押さえ込んだ。そしてその剣を拾って二刀流になったもう片方が一気呵成に飛び掛かってくる。
「とどめだ、愚かな異教徒よ!」
「そうは行くか!」
どうせ物理反射で弾けるが、しかしだからといって馬鹿正直に当たってやる必要もなし。長棍が三つの節に分解し、三節棍に変形。三本のロッドを直線的に繋いだ三節棍の扱いは、まず中心のロッドを持って振るえば双剣に近く、変形によって動かせるようになった片側を盾持ちの顔面に突き込むと、先端から放電が走り盾持ちを感電させる。
それによって押さえ込まれていた三節棍が外れた事によって、本格的に三節棍を稼働する。三節棍という武器の扱いは難しいが原理の上ではそこまで難しくはなく、棍と同じように体の周囲を回すようにして回転させ、その回転を左右のロッドに伝えて高速回転させる。間合いの上では長棍よりも一回り短くなるものの、回転を掛けた事により攻撃力は増し、回転に合わせて発生する激しい放電を増幅し、見切りづらいトリッキーな軌道を描いた三節棍を左右の敵に高速で叩きつけていく。
盾持ちの頭を叩き潰し、二刀流の横腹を殴り付け、盾の後ろにロッドを回して肘を砕き、下から跳ね上がるロッドが二刀流の拳を砕いて剣を一本跳ね上げて、吹っ飛んだ長剣が空中でクルクル回転しながら落下を開始、その上で今度は回転する三節棍から【猛雷乱撃】を発動。迸り飛び散る雷電が二体の敵を薙ぎ払い、ついでに周囲に集ってきた敵集団にまで被害を撒き散らす。
可変型霊装『キングケルベロス』。どこぞのゲームに登場する武器を再現したそれは、魔獣ケルベロスの霊基を三つに引き裂き、一つ一つを妖獣ガルムに変化させてそれぞれの属性に特化させスライムコアとし組み込んだパーツを組み合わせる事で三形態・三属性という面倒な注文をクリアした高性能武器。
火炎属性の長棍、氷結属性のヌンチャク、電撃属性の三節棍という三形態に変形し、それぞれ【猛炎乱撃】【猛氷乱撃】【猛雷乱撃】という三種のスキルを発動可能な高性能武器。武器としての性能も悪くなく、そして同時に魔獣ケルベロスを素体としているがためか引っかき・かみつき系の物理スキルの媒体としてスキルを発動できるという特殊性を持つ、割といい武器だ。
「くっ、距離を取って押さえ込め! 魔法で牽制し、槍衾で仕留めろ!」
「まあ、それこそそっちの方がやりやすいけど」
落下してくる長剣が地面に突き立つと同時、天使共は盾を構えて左右一列、その間から突き出した槍と共に整然と行進しながら距離を詰めてくる。同時に射線を取ってその背後、一段高い空中に陣取って魔法を展開した背後の魔法部隊が一斉に魔法を撃ち込んでくる。破魔、火炎、電撃、破魔、氷結、破魔、衝撃、火炎、破魔、とにかく節操なく撃ち込まれてくる無数の属性魔法、身を低くして回避して獣の動作で地を蹴って間合いを詰める。
同時に三節棍が再び変形、中心のリングから霊体の鎖で繋いだ三本のロッドが伸びるヌンチャクと化し、手首に引っ掛けたリングを中心にホイールのように高速回転。壁を形成しながら進行してくる盾の陣列へと風車のように回転するヌンチャクを叩きつけた。同時に発動する【猛氷乱撃】、吹き荒れるブリザードがファランクスの隊列の中で炸裂し、その盾の一部をランダムに凍結させて地面へと縫い留める。
これによって隊列を維持できなくなった天使共が戸惑いの声を上げると同時に、僕の頭上に暗雲のようなペルソナ『塔・シュブ=ニグラス』が浮かび上がる。それが花開くように触手で囲われた巨大な口腔を展開し、その中に溢れる白熱の核反応球【コズミックフレア】。
この世界では数少ない核熱属性、それもメギドラオン並みの高火力によって軒並み残らず消し飛んだ天使共だが、それも十数人程度の事。その程度ならまだまだ増援が駆け付けてくる。
「だったら…………こっちも数を増やすだけの事。出ろ────『軍勢チシナプ』!!」
腰に付けたCOMPを叩いて起動し、召喚される悪魔の姿は、一言でいえば“人形”。それもビスクドールや市松人形のような格調高いものじゃない、乾燥させた草を編んで作った、藁人形とかそういう系統の草人形だ。それが人のように動き、武器を構え、僕の前に整列する都合六十一体で一組の兵士達。
アイヌの英雄神オキクルミが海の彼方から現れた疱瘡神を祓うためにヨモギを編んで作った人形に命を与え兵とした、いわば神造の造魔兵士。一体一体の体躯は僕の腰までしかないが、火のカムイの力を宿した消し炭を心臓とし、邪を祓うヨモギの枝で作られた武具で武装した、屈強な兵士達。
兵数六十一の軍団を一体の悪魔としてカウントする群体型。統率も取れており、兵士としての技量もあり、士気も高い。
「それじゃ一仕事の時間だ。この村を襲撃してる天使どもを叩いて蹴散らせ! 行け!」
「ヨモ!」
「ヨモモ!」
「ヨモ、ヨモヨモ!」
「ヨモー!」
「「「「「ヨモー!」」」」」
しばらく騒いでいたと思えば、ぴたりと止まって声を揃えて一斉に敬礼し、そして数体でまとまり小隊を作って村中に散っていく。枯草人形のようなビジュアルとは裏腹に、その動きはぞっとするほど機敏で、そして何より統制が取れている。
その動きは我らガイア連合と協力関係にある自衛隊『ゴトウ師団』の動きに酷似しており、装備しているヨモギの武具もアサルトライフルを象ったものになっている。定期的にゴトウ師団の演習動画を鑑賞させた成果は、どうやら確実に出ているようだ。
「ヨモ!」
「「「「「ヨモ!」」」」」
護衛の心算なのか、数体が僕の傍に残って声を上げ、敬礼する。どうやら僕の代わりに周囲を警戒してくれるようだ。そんな彼らを引き連れて、僕は村の中央を歩き出した。
「【ライフドレイン】【ライフドレイン】【ライフドレイン】【ライフドレイン】────!」
今の時点で最大の効果範囲を持つ攻撃スキルを遠慮なく連打して死を撒き散らしながら村中央の大通りをゆったりと歩く。デビサバ版【ライフドレイン】はMAP兵器、大兵力を雑に薙ぎ払うにはちょうどいい。それでも【食いしばり】みたいな系統の生き残りスキルを持っているようなヤツがちらほらいるので、時折生き残りが出るのだが。
それを掴み潰すペルソナの触手は、既に重機も同然だ。唸りを上げて叩きつけられる強烈な打撃を食らった天使が地面に叩きつけられ、石畳の地面に叩き付けられて数回バウンドしながら転がった。血反吐を吐きながら立ち上がろうとする天使エンジェルだが、そこに向かって素早く反応したチシナプの群れが一斉にヨモギの銃弾を放つ。撃ち抜かれた天使の全身が痙攣するような動きで跳ね、絶命した天使はマグネタイトの塵に分解し、炎と雪の温度差が生み出す微風に乗って石畳の上に積もった白い雪の上を流れていく。
それを蹴散らすようにして現れた増援の天使達が祈りの文句か何か、よく分からない叫びを上げて手にした剣を盾を振り上げて襲い掛かってくる。
「魔女を殺せ、悪魔を殺せ! おお唯一なる神よ、邪悪なる魔性に正義の鉄槌を!」
「「「「殺せ! 殺せ! 殺せ!」」」」
こちらを逃がさないためか左右一列に並んで盾を構え、純白の翼を羽ばたかせて天使共が加速する。その様は炎光を反射する白銀色の盾と相まってまるで輝く光の壁だ。それに向かって長棍の先を向け、背後で一回転させて分解し、ヌンチャクに変形。
「だったらまずは、天使とかいう一番腐った悪魔から鉄槌していきましょうね、っと────【猛氷乱撃】!」
銀色の波濤が光の壁を押し止める。波を思わせるその一撃に天使達の数体が凍り付き、陣形が崩れる。乱れた陣形の一角にチシナプの放つヨモギの銃弾が集中し、数体の天使が倒れる。剣を振り上げ眼前まで迫ってきた天使の顔面にヌンチャクを叩きつけて股間を蹴り上げ、動きが止まったその腹部に棍に戻したキングケルベロスの先端を突き込んで【猛炎乱撃】。
その背後から飛び込んできた二体の天使には三節棍の左右の端を双剣のように叩き込み【猛雷乱撃】、そして長棍に変形させ一回転、棍を翻して左右から連打を見舞い【猛炎乱撃】。基本的に防御はせず、ひたすら攻撃に注力する。だいたい全部反射するので。
爆炎に巻き込まれた天使の隊列が崩れたところに、頭上に浮かぶペルソナから放つ【コズミックフレア】。それで敵陣は完全に崩れ、天使共の一隊は完全に焼け落ちて消滅する。
「…………片付いた、かな」
眼前の敵が一掃され、それでとりあえずの余裕ができる。その余裕で、僕は腰のCOMPを叩いて新たな仲魔を召喚する。召喚するのは魔王キングフロスト、そして地母神セドナ。最大の切り札である軍神と破壊神を除き、僕が召喚できる中では最大の力を持つ二枚看板。
COMPから溢れたマグネタイト光が収束・実体化し、電子データの形で圧縮封印されていた二体の悪魔が解放され、こちらに向かって押し寄せてくる天使共の群れに向かい合うように並び立つ。
小さな宝冠を頭に乗せ、真鍮色の装甲で胴体を覆った巨大な雪ダルマが、冷気を立ち昇らせる全身のコリを解すように体を揺らした。
純白のマントを翻して少女の姿の地母神が雪に覆われた地面に降り立つと同時に、その武器である無数のサーベルが地面に突き立ち、僕と天使共を隔てるようにして簡易的な壁を作り出す。
「また天使かホ……しかもめっちゃ怒ってるみたいだホ。サマナー絶対何かやって怒らせたホ?」
「うん。ちょっと煽ってやったらこうなった。相変わらず連中、煽り耐性低いみたいだね」
何事もないかのように肩をすくめて余裕を演出。それでいて声に見苦しい嘲笑が混じるのは仕方ない、と自分でも諦めている。心の裡に染み付いた怯えをそれで抑えられるのなら十分過ぎる、そんな風に自分を鼓舞して、押し寄せてくる天使共へと武器を向けた。
「ちょっと、って、また無茶したの? シトナイも後ろに置いてきちゃって……まあ仕方ないといえば仕方ないけど、本当にもう、無理だけは駄目よ、サマナー」
「分かってるよ。性能的に考えて、この程度なら無理じゃない」
そんな脆い内心を見通しているのか、心配そうにこちらを見る地母神は活動的なショートヘアの少女にしか見えないが、これでも魔王に比肩する程の高位分霊だ。地母神と魔王の二枚看板、そうそう簡単に破れはしない。まして、この程度の敵くらいなら。
「相変わらず変なところでキレる癖は直した方がいいホー。メシアの天使と見た途端に暴走するのはどう考えても早死にフラグだホ」
「うちのサマナーの場合は、もう本当に仕方ないわよフロスト。治すのだって本当に時間を掛けなきゃだし、それも私達の出番はないしね。私達の仕事は────」
地面に突き立っていたサーベルの一本を引き抜き、セドナはそれを向かってくる天使に向けた。甲高い金属音が鳴り、頭上へと弾き上げた剣が回転しながら宙を舞う。それに気を取られた天使が、真っ正面からの真っ向唐竹割りで両断され、左右に分かれて雪の降り積もった地面に崩れ落ちる。
「分かってるホ。サマナーを守ってコイツらをぶっ飛ばす事だホー!」
手にした王杓を一振り、キングフロストが放つ【アイスバウンド】。横一直線に放たれる強烈な打撃と、それに伴って迸る冷気が、天使の隊列を薙ぎ払う。吹き飛んだ天使どもの半ば以上が空中でそのまま凍り付き、そのまま慣性に乗って石畳に叩きつけられた時点で砕け散って無惨な残骸を晒す。
「ふふ、二人ともよろしくね」
その中から転がり出てきた天使の生首が一つ、足元に転がってくる。その上に足を乗せて体重を掛けると、凍り付いた生首は普通の氷と何一つ変わらない質感のまま砕けて潰れていった。棍をくるくると回して一振り、一歩前に踏み込んで、そして。
【猛炎乱撃】の爆炎で道を切り開く。
▽ ▽ ▽
先行して偵察に出した地霊コロポックルの視界をCOMPのモニターに表示すると、映し出された村の中央広場には、結構な数の人間が集められているようだった。全員普通の私服や、中には寝間着を着ている者もおり、見た感じ普通の村人というか一般市民であるようだ。見た感じ、百人くらいはいそうに見える。あるいはこの村落の残存人口の大半がここに集められているのかもしれなかった。
その周囲を天使達や、あるいは銃火器で武装した少数のメシアンが取り巻いており、村民を逃がさないように見張っている模様。あからさまに剣呑な空気を村人たちに向けているのが分かる。
その中心には巨大キャンプファイヤーのような大きな篝火が焚かれ、それを左右から挟むように瓦礫の木材を組み合わせて作った一際大きな十字架が二本、建てられている。それぞれの十字架には人影が二つ、縄で括り付ける形で磔にされており、その傍らに立つ天使達が槍を突き付けている。
片方はボロボロの服を着た年若い男性、拷問でも受けたのか全身傷だらけで、流れる血もまだ止まっていない。よく見れば着ている服はメシア教の司祭服だ。もう片方は体型からして女性、それも両腕とまとめて拘束された二枚の白翼からして天使であるらしいが、その身の白衣は引き裂かれており、あからさまに性的な凌辱の跡が見える。
「……仲間割れかな? 人口もロクに残ってないのに、何やってんだか」
生存が掛かったギリギリの状況でも人は醜く争い合う、なんてゾンビ映画やパニックホラーのテンプレであるが、それは天使共も何一つ変わらないようだった。思わず鼻で笑うと同時に、十字架の傍らに立っていた中年の司祭が突き出た腹を震わせて声を張り上げる。
「この者共の罪状を告げる────信徒のためと称して聖戦に供出すべき各種物資を隠匿し、清貧であるべき一般信徒に対して分配した事! 聖戦のための犠牲として神に捧げるための子供らを隠し、マグネタイトの提供を拒んだ事!! 何よりぃいいいいいいいい……っ、天使様方への敬意が足りぃいいいいいいい~~~~ん!!!! このメシア教会でも上級司祭の位を戴いておるこのワシに対して酒も出さず、ロクな接待もできんとは何事じゃぁああああああ~~~~!!!!!! 上級司祭に対する侮辱は天使様への侮辱!!!! 物資がなければ生きてゆけぬなぞ言い訳にもならん!! 若い女の十人や二十人、命と引き換えにしてでもむしろ喜んで差し出すのが当然じゃろうが、この不信心者共がぁあああああああああ~~~~!!!!!!!!」
神父が磔になった方の十字架の根元を何度も蹴って、その蹴り足を痛そうに押さえた後、大声を上げ過ぎて喉が疲れたのか肩で大きく呼吸してから、フゥフゥと苛立ちを強調するように脂ぎった肥満体の上級司祭は判決を告げる。
「判決、死刑! 死刑! 死刑! 異端者らしく魔女のように火刑に処してやるぅうううう~~!!! これは神罰であるぅうううう~~!!!! 神罰!! 神罰!! 神罰ぅううううう~~~~!!!!!! ヒャァハハハハハハハハ! 貴様らには特別にワシ自らが火を着けてやるぅ!! 聖別された覚醒者であるワシのアギは痛いぞぉおおおおおお~~~~!!!!!!」
上級司祭が掲げた掌に小さな火球を灯す。最初指先程のサイズだったそれは一瞬でバレーボール程にも膨れ上がり、火球を乗せた掌が十字架の方へと突き出される。……どうでもいいが、火炎魔法使ったらあの脂分多そうな司祭に引火したりしないんだろうかね?
「どうでもいいけど……やっぱメシア教ってクソだわ」
キングケルベロスをヌンチャクに変形、回転させながら【猛氷乱撃】を撃ち上げた。上空で花火のように弾けた冷気の渦が、極低温の流星群となって地上へと降り注ぐ。村民共を避けて的確に天使達に向かって雪崩れ落ちていく氷渦の一つが、偶然にも磔になった神父の十字架の根本へと着弾。今にも十字架に燃え移ろうとしていた火が消し止められる。
「そうそう、偶然。あくまでもこれは偶然だ」
でもまあ、腐ったヒキガエルを生かしておく意味はないよね。地球的に考えても酸素の無駄だし、世界美化の為に消えてもらおう。大梟の翼を広げて滑空する霊鳥コタンコロの背中から飛び降りた僕は、そのままCOMPを操作して空中にキングフロストを召喚する。
「ヒーホー! 天使なんてシャーベットにして食べてやるホー!!」
どこかユーモラスな雄叫びを上げて直径10メートル近い白雪の巨体が地響きを上げて着地し、その反動で土と積雪を上空に巻き上げる。それに巻き込まれて上級司祭が吹っ飛んで雪の上を転々とバウンドしながら投げ出され、広場の中央に出現した雪山のようなキングフロストの巨体に天使達が反射的に一斉攻撃を放つが。
「────効かないんだなあ、これが」
アナライズなら弱点と表示されているはずの火炎属性まで含めて撃ち込まれた全ての攻撃を等しく反射し、自身の攻撃をマトモに浴びた天使たちが悲鳴を上げる。僕のスキル【勇者の精神】によって、反射耐性を持つ僕がダメージを引き受け、それによって反射が発生したからであるが。
「異教の魔王め、滅びよ!」
「馬鹿な、火炎が効かない!? それも反射するだと!?」
「別属性で攻めろ! 氷結はともかく、他属性なら通るはずだ!」
「駄目です、ザンマもマハジオも全て反射されます!」
「マカラコワースを撃ち込む! それに続いて一斉射撃……そんな、まだ反射するのか!?」
「魔法反射耐性だ! 物理なら効くはず……ありえん、これも反射するだと!?」
天使どもの撃ち放った魔法や矢弾がキングフロストの凍った体表の上で爆ぜる度に、肌の上でパチパチと炭酸が弾けるようなこそばゆい感触が走る。キングフロストのダメージを肩代わりして、僕自身の耐性がそれを反射する。
反射まで撃ち抜ける真V版の貫通を持っているヤツはいないらしい。持っていてもこの程度の霊格なら何であれチェフェイの加護による防御で貫通効果自体を打ち消されるから、何一つ問題はなし。
視界の隅で、倒れた十字架に付けられていた天使が拘束を抜け出して、折れた足と翼を引きずりながらもう一本の十字架に磔にされていた神父を救出しているようだ。確かにあれも天使だが、どうせ襲ってこないから優先度は最底辺だし、放置の方向性で。
「おお天使様方、あの女悪魔はワシが直々に躾を行いますので、生かしたまま捕まえていただければと!」
キングフロストの方の上にいる僕に目を留めた上級司祭がこちらを指さして間抜けな事を言うが、天使を含めて誰も相手をしない。とりわけ天使共にはその余裕もなく、そしてその余裕を得るまで待ってやる必要もなく、キングフロストが全身から放出した魔力が絶対零度のブリザードとなって荒れ狂う。
「いい加減、鬱陶しいホー! ────【コンセントレイト】【大冷界】!!」
空間を極低温の純白で埋め尽くす殺意の波濤が、致死性の濁流となって天使共を押し潰す。即死効果を伴った純白の嵐が広範囲を薙ぎ払った後には、クリームで塗り潰したかのような厚い雪化粧の中から凍り付いた天使の手足や翼が点々と突き出した不気味なオブジェだけが残される。
それに合わせて、別動隊として広場を包囲していたチシナプ達がヨモギのアサルトライフルを手にして一斉に飛び出して逃げ道を塞ぎ、被害に巻き込まれずに残っていた天使共に対して一斉に銃弾を浴びせ掛ける。自衛隊の五島師団による戦闘がそうであるように、悪魔に対してダメージを通せる悪魔による銃弾の一斉射は、並の悪魔を容易く確殺し得る。それはチシナプとて同じ事だ。
チシナプ達の半分くらいの数にまで削られた天使共が、フルオートの十字砲火を食らって奇怪なタップダンスを踊るように四肢を跳ね回らせながら、次々に倒れ、数を減らしていく。飛んで逃げようとした天使共も上空から飛来したコタンコロの発動した【マハグラダイン】の重力増幅によってあらためて地上へと叩き落とされ、瞬く間に銃撃の餌食になっていく。
「生かして帰すなホー! 全員天国にも帰れないようにカチ割り氷にしてやるんだホー!」
「殺せ殺せ! 一匹残さずMAGと魔貨に替えて、地元の子達に仕送りしてやる!」
キングフロストが発動した【冬将軍の号令】によって仲魔達の攻撃力が跳ね上がり、その高揚効果によって威力・氷結効果を底上げされて斬り込んだセドナの【霜剣乱舞】が敵を薙ぎ払う。密集して抵抗しようとする天使どもの隊列の中に無数の斬線が走り、その後を追い掛けるように白い氷晶が散って冷気が膨れ上がって鮮血と残骸が飛び散り、それすら空中で凍り付きながらマグネタイトに分解して消滅していく。
乱戦というよりは、ほぼ一方的な蹂躙。その中でゴキブリのようにこそこそと動く天使とは異なる色彩が視界の隅で動いているのが見えた。腰を抜かしてへたり込んだ肥満体の上級司祭が、脂肪で不格好に膨れた指を震わせながら首から掛けた十字架型のCOMPを操作して内蔵された召喚プログラムを起動する。この状況で使うからには、切り札なのだろう。
同時、狐面に仕込んだインカムを通して後方のシトナイから通信が入る。
『マスター、前方十五メートル地点で召喚反応! 気を付けて!』
「ごめん、もう見えてる!」
阻止できない。十字架型のCOMPが上級司祭の体内マグネタイトの半分以上を消費する事で、溢れた生体マグネタイトを通じて高位悪魔を召喚する。膨れ上がるマグネタイト光の中から無数の結晶を連ねたような翼が広がり、雪晶を象った光輪が展開する。
「我は大天使シャルギエル! 雪を司る神の使者の一柱、大天使なり!!」
名乗りを上げ、凍てついたマグネタイトの残滓を散らして顕現するのは、背に翼を広げた天使の姿。その姿を目にした上級司祭が高々と哄笑する。
「ヌフッハハハハハハハ!!!! Dレベルにして50を越える大天使様じゃ! その力は正に圧倒的、もはや誰も逆らえん!! さあ大天使様、あの悪魔共を偉大なる御力で氷漬けにしてやってくださいませ! さ、お早く! お早く!」
「ん? …………Dレベルで?」
Dレベル────デモニカスタンダード。レベル基準の一つだ。制定時に最も安価なレベル測定装置で測れる上限がレベル30だったため、それをレベル100として計算するとかいう新たなレベル基準。当たり前だがガイア連合では使われていない。
そのDスタンダード基準でレベル50よりちょっと上って事は、つまりウチの基準だとレベル15をちょっと越えた程度ってことになるんだが。
『ごめんマスター。計測レベル16、結局雑魚だったわ』
狐面の裏のインカムからシトナイの溜息が聞こえてくる。うん、全く問題ない。これでも、それなりにレベル上げはしてきているので。通常の計測器なら吹っ飛ぶ程度のレベルにはなってるから、シトナイの言う通り、この程度は雑魚だ。
「……………………ヒトの子よ」
「ははぁっ、何でしょうか大天使様!!」
地上に降り立った大天使シャルギエルは無言で【アナライズ】を発動させると、上級司祭に向かって何もかもを悟り切ったような穏やかな笑みを浮かべた。その姿に感動の涙を流して祈り始める上級司祭から一歩二歩と後ろに下がって距離を取った大天使は、翼を広げてふわりと空中に浮かび上がっていく。
「────ヒトの子よ、私は重要な用事を思い出しました。大天使として日課のシエスタを主に捧げねばなりませんので、今日はこれにて!」
「なっ、大天使様! お待ちを、大天使様ぁ~~~~~~!!!!」
清涼飲料水のCMにでも出てくるような爽やか満点の笑みを浮かべ、そのまま神々しい光に包まれて空へと昇っていこうとする。全身から光を放つと共に、雪の権能で周囲に無数の氷晶を散らして光を乱反射させて輝きを演出しているようだ。わざわざ逃げる時でさえセルフ演出を怠らない、過激派天使の鑑である。
「……逃がすと思うか羽虫が。消毒してやる!」
無論、逃がさない。キングフロストの肩を蹴って飛び降り、そのまま妖獣の脚力で駆け抜けて前方に回り込む。その顔面に長棍の先端を叩き込み、前歯を数本まとめてへし折りながら口の中に長棍の先端を突っ込んで【猛炎乱撃】を発動。
口から爆炎を吹きながら上空に吹っ飛んだ大天使シャルギエルは、そこで腹の奥から爆発し、血肉と氷晶を撒き散らしてマグネタイトの塵と化し消滅する。
「偽善と傲慢の腐った臭い、ゲロとヘドロを煮詰めてトイレ用洗剤で味付けしたみたいな、気持ち悪い臭い……本当に汚い花火だな」
長棍を背後で一回転させ、纏いついた炎の残滓を振り払った。絶え間なく雪を降らせる分厚い暗雲が作り出す薄闇の中、炎の跡を曳いた棍の先端が鮮やかなオレンジ色の円形を描き出し、巻き上げられた雪が蒸発して薄っすらと蒸気を散らす。
後ろを振り返ると、どうやら既に雑魚天使の掃討もあらかた終わっており、残るは一人、雪溜まりの中で身を縮めて息を潜めている上級司祭くらいか。棍を一振りすれば衝撃が飛んで、数メートル離れた場所の雪が弾け飛ぶ。別にスキルでも何でもない通常攻撃の部類だが、それに巻き込まれて上級司祭が吹っ飛び、石畳の上に転がった。
僕が一歩踏み出すと、雪が擦れる足音が響く。その音でこちらの存在に気付いた上級司祭が、膨れた腹を揺らして飛び上がるように振り向き、顔を引き攣らせた。
「ひぃっ、くっ、来るな悪魔め! 天使様!」
震える指でCOMPを操作し、繰り返し召喚コマンドを起動して天使を召喚する。連続召喚、といえば聞こえはいいが、召喚される度に周囲のチシナプが銃撃を集中させて数秒で仕留めていき、天使共は何もできずに出てくる傍からあっさりと消滅していく。その様は最早モグラ叩きだ。
やがてストレージの中身も尽きたのか、上級司祭がどれだけCOMPを操作しても天使が出てこなくなる。それでも執拗に祈りながら空になったCOMPを動かそうとする上級司祭の姿に溜息を一つ、長棍を横に振り払った。
「あひぃ~っ!! 痛い、痛いぃ~!! ワシの手が、ワシの手がぁああああ~~~~!!!!」
中身を使い尽くして単なる十字架型の飾りに成り果てたCOMPが吹っ飛んで雪の上に転がり、叩かれた手を押さえて上級司祭が雪の上を転がり回る。そのまま雪の上で犬掻きでもするかのように逃げ出そうとするが、残念ながらそちらは既にチシナプ達が塞いでおり、セドナとキングフロストが並んでいる。
恐る恐るこちらを振り向いた上級司祭の視線の先で、僕の肩に止まった霊鳥コタンコロが翼を広げて彼を威嚇すると、引き攣った声を上げて上級司祭が尻餅をつき、周りに雪が飛び散った。
「ま、待て! ワシはメシア教会の上級司祭、それに手を上げたとなれば上位の天使様方が黙っておらんぞ! 十字軍を編成している最中のモスクワ本部とて軍を動かさざるを得ん! ワシを傷つけて貴様に先があるなどと思うな!」
「馬鹿が。この永久凍土帝国でメシア教会に、ちんけな中間管理職一匹の為に大部隊を動かせるような余裕なんてあるものかよ。動いたら動いたで雪中行軍で全滅してざまぁ展開、動かなくてもこちらに被害はゼロ。お前に殺さない程の価値があると思うな」
本音を言えば、十字軍とかいうのについて聞きたいんだけど、拷問するような技術もないし、この村に収容しておくのも難しいし、ガイア連合の支部まで連れていくために多脚装甲車に積み込むのもやりたくないし。……ネクロマで蘇生するのを前提に一時的にでも死体にしておけば有り、だろうか? 確かセドナが冥界神の権能を持っていたはずだから、それで魂ごと凍り付かせてやれば魂を天使に運び去られる事もなく安全に回収する事ができるだろう。
すっ、と手が伸びる。長棍を握った手を頭上に振りかぶった。絶え間なく雪を降らせる暗雲に差した長棍の先端が、僕の意志に呼応して赤々と炎を灯す。それを見上げて、尻で後ずさりながら上級司祭が怯えの声を上げる。
「待て待て待て、何をするつもりだ! やめろ!! 金が欲しいならくれてやる、上級司祭の立場があれば愚かな信徒からいくらでも搾り取れるからな!! そっ、そうだ、ワシの愛人にしてやるぞ!! ワシの地位とお前の力があれば金でも何でも欲しいものが手に入る!! メシア教会は全てを与えてくれる!! カスみたいな平民の身では味わえない天国のごとき贅沢三昧だぞ!!!!」
「こんなにも……こんなにも殺意を催す命乞いは初めてだよ。だからさあ…………もういいから、【死んでくれる?】」
薄桃色の光が弾ける。周囲を乱舞するのは華麗にして可憐な装飾を施されたトランプの絵札と、目を灼くサイケデリックなネオン光。踊り狂うウサギとイモムシとドードー鳥のシルエット。その中から整列したトランプの兵士達が赤黒く濁った血色の杭を幾本も突き出して、上級司祭の身体を乱雑に串刺しにしていく。
「ああ~~~~~~!!!!!! 痛い痛い痛いぃいいいいい~~~~~~~~!!!!!!!! 何でワシが、このメシア教会上級司祭のこのワシがこんな目にぃ~~~~!!!! 神様ぁ~~、どうしてこんなひどい事が起こるのですかぁ~~~~!!!! 生まれてこの方正しい事しかしておらんワシが、一体何をしたと言うんじゃぁ~~~~~~!!!!」
身の程知らずにも絶叫しながら、全身に突き立った杭から許容量を越えた極大濃度の呪詛が流し込まれ、そのたっぷりと脂肪を溜め込んだ身体をさらに膨張させながら全身をドス黒く染め上げていく。その周囲をグルグルと踊り狂うようにして無数のトランプが渦を巻き、収束しながらその内側を閉ざしていき、やがて。
「そりゃ、ゴキブリが生きてたら潰すだろ? 他に理由なんている?」
ぱぁん、と弾け散った。渦巻くトランプの幕の内側での話であり、外からは何一つ観測できないそれは、まるで確定で死んだ猫しか入っていない矛盾したシュレーディンガーの呪わしい異形の匣そのものだ。トランプの回転が止まった後には、ただ誰のものとも知れない鮮血と肉片が狭い範囲に飛び散っているだけの話。
「ああ、いや、北海道にはゴキブリはいないんだっけ? ならロシアにもいないか。まあどうでもいいけどね」
だがまあ、せいせいした。ああ、ようやくこれでせいせいした。赤く染まった足元の雪をグリグリと踏みにじってから散らばっていた肉を【猛炎乱撃】で焼却処分して、ようやく人心地ついた。後はまあ、適当に後処理して、なるようになれ、だ。
◆ ◆ ◆
天気がいい日は雪、天気が悪い日はもっとひどい雪。永遠にそんな毎日が続くフロストパンクの世界。気温は最大でも摂氏マイナス二十度を上回る事はなく、低い時にはマイナス四十度を軽く越える真冬が国土全体を覆っている。それが、半終末を迎えた今のロシアの現状だ。
空は曇天。空を覆う暗雲からは絶え間なく雪が降り注ぐ永久凍土の大地。代り映えのしないメインモニターの投影画像をぼんやりと見つめながら、僕は暖房の利いた多脚装甲車の操縦室にのんびりと腰掛けていた。基本的にこのロシア探索行において外の景色が変わる事は滅多にないし、大半の時間はシトナイと二人きり、自動操縦任せで暇な時間が続く。それが不満というわけじゃないのだが。
「マスター、何考えてるの? やっぱり、さっきの村の事?」
「まあ、ね。あの村、これからどうなるんだろうかな、って」
最低限の事はやった。村の位置はガイア連合のロシア支部に通報しておいたから数日もすれば救助の人手が到着するだろうし、その間に必要なものも用意しておいた。シュブ=ニグラスの豊穣神の権能で食料となる穀物や肉、野菜も置いてきたし、セドナとキングフロストに協力してもらって倒壊した家屋の代わりにイヌイット式の氷の家を家族分設置しておいた。
この辺、物資は権能で用意したもの、その元手となるマグネタイトは攻めてきたメシア教会の生き残ったテンプルナイト数人を生贄にして捻り出したもの。氷の家もその辺の雪をキングフロストの冷気で凍らせたものをセドナのレクチャーに従って積み上げただけ。よって、こちらからの持ち出しは実質ゼロ、多脚装甲車のコンテナに収納されていた物資には全く手を付けていない。
「やる事はやったんでしょ? なら、これ以上を考える責任はマスターには存在しないわ」
「うん。それについては僕も同感」
向こうの村人達は留まって欲しそうにしていたけど、そういうわけにも行かないし。そもそも穏健派とはいえメシア教徒や天使がいる場所に同居とか絶対やりたくないし、だからといって相手を殺すわけにも行かないし。ストレスが限界になる前にさっさと逃げるのが正解だ。
こちらからの持ち出しはゼロだが、こちらにとってのメリットもゼロ。それでも最低限やる事はやってやったのだ、少なくとも労力を払ったのはこちら側、文句は言わせない。
「なら、いいじゃない。それとも、何か気になってるの?」
「ああ、うん。何というか……十字軍がどう、とか言ってたから。いつも通りに普通に自滅するだけのギャグイベントならいいけど、そうじゃなかったら大変だし、どうもね」
シトナイに聞かれて、少し考え込んで、それでようやく、何が引っ掛かっていたのか思い出した。
「そうは言っても、上級司祭の魂は形代に封じて確保してあるんでしょう。なら後はいつも通りガイア連合に報告と一緒に持ち込んで、専門の人に確認してもらうだけで十分でしょう」
「そうなんだけど、ちょっとだけ心配になってさ。それだけ」
尋問も情報分析も何もかも僕の仕事ではないのだから、僕が心配すべき事じゃないのは分かっているのだが────どうにも、嫌な予感がするのだ。僕はポーチから取り出した藁人形をじっと睨みつけた。セドナの力で凍結された藁人形の表面にはびっしりと白く霜が降りていて、掴んだ掌からひりつくような冷たさが伝わってくる。
これを持ち帰ってガイア連合に提出したら、後はガイア連合にいる専属の人員がネクロマを使って悪霊系悪魔に変化させ、契約による強制力で情報を引き出してくれる。元々は味方の魂を天使に持ち去られないように回収するための対メシア戦闘における必需品だが、こういう裏技もある。
「……じゃ、今日は早めに帰りましょうか。明日は窓口に行って、その脂っぽい藁人形を早めに提出しちゃいましょう」
「そだね。いい加減さっさと手放したい。持ってるとデバフ入りそうで嫌だ」
どうせ祟られても大した事なさそうな相手だったけど、出てこられたら嫌だし。気分的には冬眠状態のゴキブリを入れたケージを運んでいるような感覚なので、本当はこうやって装甲車の中に持ち込みたくもなかったが、仕方ない。まあ冥界神でもあるセドナに逆らって何かできるような根性があるようにも見えなかったが。
軽い憂鬱気分に小さな溜息を一つ吐き出したところで、ぽーん、と操縦室に軽い電子音が響く。モニター隅の時刻表示に目をやれば、そろそろ“帰宅時間”だ。それを受けてシトナイがモニターに新たなウィンドウを展開し、多脚装甲車のレーダーによる各種観測データが表示される。
レーダーの感知情報を表示したウィンドウの感知範囲に小さな光点が灯っており、光点は点滅を繰り返しながらこちらの上空を横切るような軌道を通っている。
「南南東空域、高度32,856mより機影接近中。識別信号を確認、データベースと照合……完了。ガイア連合所属【スーパーシルフ-23】と特定したわ。今日もスケジュール通りね。双方向通信可能域まで残り5秒……3、2、1、定時連絡用のデータ送信、開始します」
スーパーシルフ────ガイア連合が保有する高レベル鳥型シキガミだ。速度と偵察能力に秀でた性能を持ち、大半に日本上空の防空哨戒に使われているが、その内の数機がロシア国内を始めとする海外への高高度偵察へと使われている。
それを利用した通信によって僕達はガイア連合ロシア支部や日本と秘匿通信ができるわけだ。まあ用途は大概が何のヤマもオチもない定時連絡であるわけだが。
スーパーシルフ-23へのデータの転送率を示すバーがあっという間にその色を変えていき、数秒で100%に到達する。それを確認したシトナイは一仕事終えた様子で大きく背中を伸ばした。彼女がシートから立ち上がると同時に、操縦室後部に固定されていた高強度セラミック製の容器の拘束が独りでに外れ、その中から飛び出してくるのは浮遊する壺から顔を出した小鬼────妖魔アガシオン。シキガミとは異なる、しかしガイア連合製のメジャーな高級使い魔だ。
体色が白く、猫科らしき獣耳を頭に付けたアガシオン『シェロ』はそのままシトナイと入れ替わるように座席に乗り、シートから展開した拘束具でその身体を固定し、装甲車のシステムへと接続する。シトナイ不在時に彼女に代わって装甲車の操縦を行うのが、彼の最大の役割だ。
「さ、帰りましょうマスター。帰ったらゆっくり休んで、それから学園の窓口に報告。いいわね? それじゃあユーハブコントロール、シェロ。操縦代行、よろしくね」
『了解。アイハブコントロール、ブラザーフッド・シトナイ。マスター共々、よき帰還を』
シェロはシステムを掌握すると、近くにあった岩場の雪溜まりへと装甲車を寄せて、そこで機体を停止させると脚部を折り畳み、雪の中に身を隠すようにその場で停止して環境適応迷彩を展開する。軽くホバーを噴出して地面の雪を巻き上げると同時に、機体後部のノズルから高濃度スチームを噴霧して機体表面に吹き付けると、装甲表面に降り掛かった雪が凍り付いて固定され、白を基調とした極地迷彩の装甲色と合わせ、完全に雪原の中に埋没する。
シトナイのようなほぼ完全な隠密行動は不可能だが、こうして休眠状態になっていれば高位悪魔でも簡単には発見されない程度のステルス能力は備えている。
装甲車の隠蔽が完了すると、僕は自分の手元にあったコンソールを叩いてメインモニターに大きなドアが表示されたウィンドウを展開する。シトナイの手を握ったままモニタ越しにドアに手を触れると、ドアノブを握った感触が手に触れたと思った瞬間、僕の手首がシトナイと共にモニターの中に引き込まれていく。
元はイレギュラーから生まれた技術でもあるからガイア連合の異界化技術の粋、と呼ぶのはいささか語弊があるかもしれないが、しかし電脳異界へと侵入できるペルソナ使いやデビルシフターであれば、電脳異界を利用してDDSネットワーク越しに長距離移動ができる。
これを利用して、僕達は一日おきにロシアと日本の間を往復している。ロシアは常に真冬だが、日本には普通に四季があるから不思議なものだ。
「帰ったら桜が咲いている季節、か。不思議なものだよね」
「そうよね。報告が終わったら、二人で桜を眺めるのも楽しそうね、マスター」
そうして僕達はそのまま、モニタに開いた扉の中へと吸い込まれて、DDSネットの向こう側、日本へと帰還した。
長かった。というか長くなった。
ロシアといえば今はウクライナで紛争やってるけど、こっちだとロシアが紛争を通り越してポストアポカリプス状態。
でも多分ウクライナも巻き添えで一緒に試される大地になってるんだろうなー、とか。
山羊「愛する子供を産む喜びを教えてあげなくちゃ!(善意100%)」
狐「ちょっと大変みたいだから苦痛をやわらげてあげるよ。逆に気持ちよくなっちゃうけど、問題ないよね!(善意100%)」
アリス「待てやおまいら(良識派ムーブ)」
主人公の過去はだいたいこんな感じ。やっぱ悪魔って本当最悪やな。なお元人間(ry
~割とどうでもいい設定集~
・立花アリス
元ネタは『アイドルマスター』シリーズ。
元ネタと違って性別は男、というかむしろ男の娘。三柱分の神格(?)から押し付けられた加護の全てに何かしらメス化機能が搭載されているとかいう。
受けというよりはネコ。
山羊演出、狐監修による一ヶ月連続メス堕ちビジョンクエストと、トドメのアリス遭遇により晴れて覚醒を果たす。
これがトラウマになっており、いい空気を吸っているメシアンや天使を見ると憎悪に駆られて割とよく暴走するとかいう早死に待ったなしの弱点を持つ。
普段はガイア連合製多脚装甲車T95D-BWTに乗ってロシアの探索を行っている。基本的な仕事は現地調査だが、個人的な目的として恩人である魔人アリスの捜索を行っている。
本人的には魔人アリスを見つけたら、彼女のために居場所を作ってやりたいと思っており、ガイア連合の俺ら内部でも割と賛同者がいる。
ペルソナ使いでデビルシフター、加えてガーディアン憑きとかいう過重搭載型異能者。ペルソナはP2仕様がベースの『塔・シュブ=ニグラス』、悪魔変身はifベースの『妖獣チェフェイ(四尾)』。ついでに悪魔召喚プログラムが配布されている時代なので、普通にCOMPでサマナームーブも可能。
ペルソナと悪魔変身を同時発動すると物理反射の悪魔変身と魔法・万能反射のペルソナが上手く噛み合って穴のない全方位反射耐性とかいうチートが完成する。
攻撃面でも二種類の死んでくれる?を始めとしたアリスの各種固有スキルにより狂った火力を発揮し、しかもチェフェイに搭載したIMAGINE仕様の特性によりノーコストで乱射できるとかいうチート。
サマナーとして戦う場合も勇者の精神スキルで自分の耐性を仲魔に疑似的に付与する事ができるので、仲魔全員が万能含む全門反射とかいうチート状態になる。
弱点といえば、コンボが前提の仕様であるため各能力が単独だと運用が難しい事。単純に不意打ちに弱いというだけでなく、アリスのスキルは重コストのため呪殺以外は悪魔変身時でなければ簡単には撃てない。あとペルソナは後衛に居座るにしても物理全般弱点なので銃撃が怖い。
一見最強っぽく見えるが、勝てない相手には割とどうしようもなく、とにかく相性が悪い相手も存在する。
またメス堕ちビジョンクエストの影響で男性としての意識を引っ張り出さなければ悪魔変身解除ができないとかいう変な弱点も持っているので、気軽に悪魔変身ができない。
・式神 シトナイ
元ネタはFGOのシトナイお姉ちゃん。
製作コンセプトは『非戦闘時の緊急対応、主に変身・ペルソナ発動までの時間稼ぎのための近接戦闘・カバーリングスキル』『戦闘時には大人しく引っ込んで後方から支援』『ロシア探索のための寒冷地適応、足となる車両の操縦』『認知異界・電脳異界への同行のためペルソナ搭載』『アリスの悪魔変身解除用のサキュバス系技能』。
タチというよりは攻め。
主な仕事はT95D-BWTの操縦であり、そのため戦闘時には後方からナビゲートを行うのがメイン。
主に剣を使った接近戦、魔法や弓による射撃戦、カルトマジックその他色々と多芸なシキガミに仕上がっている。何気に必殺パターンを三つも搭載しているのがポイント。
偶発的にショタオジのところのオンギョウキのステルス能力が取り込まれたイレギュラーのスライムコアがベース。このため異常なほどに強力なステルス能力を持つが、その一方で廃棄処分寸前までいった事を覚えており、その事に対して何気にトラウマを抱えている。
・霊装キングケルベロス
元ネタは『Devil may cry』シリーズ。
ガイア連合製の霊装。
火炎属性の長棍、氷結属性のヌンチャク、電撃属性の三節棍と三形態に変形し、それぞれの属性に合わせ【猛炎乱撃】【猛氷乱撃】【猛雷乱撃】を発動可能。
またシキガミ由来の技術により魔獣由来のスライム素材がコアとして使用されているためかかみつき・ひっかき系スキルの媒体としても機能する。
それだけの多機能性に加え、攻撃力も強度も高いとかいう高性能っぷりを誇るが、その割にヌンチャク、三節棍とかいう形態の扱いの難しさから事故を起こし、しばらく倉庫に死蔵されていたとかいう経歴の持ち主。
主人公にとってはチェフェイ由来の衝撃スキルと合わせて四属性全てが使用可能になり、またひっかき・かみつき系の近接スキルとも好相性、チェフェイに搭載されていた中国拳法スキルにより扱いにも問題なしとかいう良武器。
・T95D-BWT
ガイア連合製シキガミ多脚装甲車のバリエーション。T95Dにツチグモ・バケガニタイプのバリエーションがあるのはウェルディ様作『ガイア連合で学ぶ 真・女神転生』より。
基礎フレーム部分から設計見直しを行うレベルの改修が施された寒冷地・極地対応型。機体内部は異界作成技術を応用した空間拡張が施されており、大型トレーラー数台分のペイロードを有しているため、循環システムや物資生産システムと合わせ、無補給でも数年の単独行動ができる。またデビルシフター・ペルソナ使いであれば電脳異界を通じて日本と往来を可能としている。
水陸両用のバケガニタイプがベースになっているのは、何かあった時にこれ一台で海をわたって日本に帰還するため。
・地母神セドナ
さやかちゃん。
アメリカに顕現した地母神セドナが出稼ぎ用にデビオクに流した出稼ぎ分霊。地元には大量の子供を抱えており、とにかく色々支援が欲しいのでモチベが高い。
面倒見もいい。
個人的にも色々と事情があってメシア教会が大嫌いなので、その辺で主人公とは相性がいい。
本来の地母神セドナとは異なり、耐久型の物理戦闘型。
・大天使シャルギエル
本日の被害者。
Dレベルにして50を越えるとかいう、ガイア連合基準だと半終末前ですら片手でやられる程度の実力者。大天使の中では最底辺クラス。
ただし天使系の中では非常に珍しい雪を司る権能により、試される大地ロシアでも普通に活動可能なだけでなく、加護を与える事で下位天使や人間にも同様に雪中行軍を可能としており、ロシアの過激派メシアンを裏で支える大立役者だった。
ただしその辺の能力は権能に由来するため、天使召喚プログラムでも簡単には呼び出せない感じで稀少性は高い。
上級司祭があれだけイキっていたのも、これと契約した事で過激派メシアン内部でも割と高い発言力を持っていたため。
・邪神シュブ=ニグラス
クトゥルフ神話の邪神。元人間、しかも元転生者であり、ニャルと契約した事で北米でのクトゥルー顕現に合わせて自身も邪神と化した存在。
初出はVISP様作『【カオ転三次】不運な転生者達 』。
主人公のペルソナ『塔・シュブ=ニグラス』とシンクロしてしまった事、さらにそこから妖獣チェフェイの介入により悪夢のメス堕ちビジョンクエストが発生した。