ファッション無惨様のごちゃサマライフ   作:頓西南北

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ボンコッツさんごめんなさい・・・
いや今回は本当に。


他で三次書いてる人のところだと現地民に厳しい系の主人公とか結構少ないんだね、って事で今回の話。
マイ支部建てたりとかする人だと、現地民と関わらざるを得ないから仕方なし。
という事で今回の主な敵はメシア教会よりも名家(笑)になっていく感じ。

だから割と全方位に喧嘩売ってくスタイル、というか他で三次書いてる人の主人公とはそこまで相性良くないと思われる。





転生夏油さんの摩擦ライフ

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 夏油赤紗。

 

 今生での俺の名前である。

 

 前世で読んだ超有名霊能バトルマンガ『呪術廻戦』に登場したキャラ『夏油傑』に名前も容姿も似ている気がするし、何ならそれにプラスしてもう少しマイナーな霊能バトルホラーマンガ『屍姫』の邪僧『鹿堂赤紗』にも微妙に似ている気がするのだが。

 死者を操る霊能テロリスト僧侶の二倍役満とか洒落にならないが、そこまで過激派に突っ込んだ人生を送っているつもりは毛頭ない、はず。

 まあ確かに異能に覚醒して最初に目覚めたスキルが死者を操る『ネクロマ』だった辺り、思い当たる節はないでもないが。

 

 で、今生、というのはつまり、一度死んで生まれ変わった記憶があるから。残念ながら転生してもチート特典はもらえなかった……と断定すべきかどうかは微妙なところか。

 割と不思議な能力には目覚めたし、そもそもガイア連合自体がチートだからして、その御陰でそれなりに暮らしにも困ってないからな。

 

 ともあれ前世で暮らしていた世界よりも一回り以上ファンタジー、それも頭にダークと付く方向に振り切れた側に寄ったこの世界には、悪魔とかそう呼ばれるファンタジー的存在が跳梁跋扈している。

 古今東西様々な神話や伝承に伝えられる異形の姿を取った悪魔は、その身を維持するための生体マグネタイトを求めて人間を襲い、喰らう。

 

 まあ、さすがにそんな無節操に襲ったり食ったりしていればあっという間に人間なんて絶滅してしまうからして、割と交渉できる連中もいるのは確か。

 

 そんな世界……どうやら前世でマニアックな人気を築いていたゲーム『女神転生』シリーズ……略してメガテンの世界に生まれ変わった俺であるが、比較的マッタリと平和に暮らしていた。

 

 幸いにも俺達転生者はこのメガテンワールドでは規格外ともいえる霊能の才を持ち合わせているようで、それに加えて俺と同じ転生者達が『ガイア連合』なる組織を築き上げており、その勢力と技術の恩恵に与れたという事もあり、それなりに修行して、それなりに異能を身に着け、とりあえずガイア連合の外では規格外といえる程度の実力を獲得する事は出来ていた。

 

 ガイア連合様々である。

 

 シキガミも入手できた。ショタオジ謹製の高級シキガミだ。基本的には獣型に分類される彼女であるが、人型変化スキルを搭載しているからして、美少女の姿に変身する事だってできる理想の嫁だ。

 

 とはいえ、それなりに後悔したりするような事もあったりなかったり。

 

「うーむ…………今回も面倒な仕事って話だったし。ちょっと気が重いねぇ……」

『でも、その代わりに報酬はよろしいのでしょう? ますたぁ、心配しないでください。必要なら私一人で片付けておきますから』

 

 などと脳裏に響くのは、半ば甘く蕩けた少女の声。我がシキガミ『清姫』に搭載された汎用スキル【テレパシー】によるものだが、東名高速道路を法定速度ギリギリでカッ飛ばすイケメンスポーツカーの車内に見える人の姿は俺のもの一つだけ。

 これも清姫に搭載されたスキル【影潜】で姿を消しているため、だ。

 

「そこまで君に頼り過ぎるのも良くないからな。とりあえず、今回もサクッと片付けるぞ」

『ふふ、承知いたしました。そこでやる気を出してくれるますたぁも好きですよ』

 

 軽くやり取りを交わし、運転席に座ったまま、運転はガイア連合の手で組み込まれた自動操縦に丸投げしたまま、手元のタブレットに表示された依頼情報を確認する。

 依頼内容はダークサマナーの討伐とかいう、それ自体は割とよくある内容なのだが……その依頼が問題だった。

 

「討伐対象は『暁切歌』『月詠調』なる二人組で、双方共にデビルシフター能力保有者。現地霊能組織である名家の人間を三名殺害したとかいう容疑が掛かっている、と」

 

 タブレットの画面に映し出された資料をタップすると、二人の顔写真が映し出される。

 元々、ガイア連合の外部受け入れにも一応の登録があった人間なので、写真や大雑把なデータは残っているのだ。

 実年齢が中学生とかいう話で、どちらも見た目は、まあ美人ではあるにせよ年齢相応で、これといった異貌でもなければ、その辺を歩いているだけで職質されるような凶相であるわけでもなし。

 せいぜい白系ブラジル人のハーフとかいう暁切歌の方がその経歴通り金髪で、西洋系の顔立ちをしているくらいか。

 

「半年ほど前にコンビで活動を始めた現地人異能者で、どっちも経歴自体はシロ、と。でも二月前に別の事件でこの村に来た時に、突然ここの名家を襲撃して、人を二、三人ばかり斬り倒して、そのまま山の中に消えたんだとか」

『理由は?』

「不明だと。何かしらのオカルト的な原因でバーサークして暴れた可能性を考えるなら、憑依とか、装備すると乗っ取られる呪いアイテムとかその辺の可能性もあるし、あるいはもっと単純にそこの名家(笑)のアホがセクハラ仕掛けて返り討ちに遭ったみたいなオチも想定すべきだろうけど────その辺、何の説明もなしにダークサマナー扱いで指名手配だ。理由も経緯も何一つ吐かずに被害者ヅラしてやがる」

 

 何も言わないという事は、つまり疚しい事があると半ば自白しているようなもの。

 その辺の話があっさり事務に受理されてしまっている時点で杜撰な話だ。

 これが事務の千川さん辺りが受付なら容赦しなかっただろうが、ガイア連合でも受付が現地人だと、現地人の権威が効くからな。

 

「まあその辺、最近は色々理由があって雑になってるみたいな部分もあるからねー、仕方ないといえばその通りなのかもしれんけど」

 

 静岡と長野の県境に近いこの辺を管轄するのは、富士山麓南側の山系から太平洋沿岸の海沿いまでを統括するガイア連合霊山同盟支部、なのだが。

 まあその辺、今の霊山同盟支部周辺には、面倒な事情が色々と重なりまくっているのだ。

 

 まず、霊山同盟支部自体の組織構造が未だマトモに出来上がっていない事。

 山岳地帯一円を統括する霊山同盟支部、などといえば聞こえはいいが、そもそも霊山同盟支部自体、立ち上げたばかりで組織としてのまとまりが未だ薄く、数週間前に着任したばかりの新米支部長である鷹村ハルカとその後見人である“クソミソニキ”、そしてその二人の取り巻きといえる数人の黒札と数人の現地人異能者を幹部格として据えただけで、その幹部陣とそれ以外との接続が出来上がっていないのだ。

 

 霊山同盟支部自体は、その名の通り元々この辺を仕切っていた霊能組織である『霊山同盟』を取り込んだ組織であるが、その組織構造はといえば、件の霊山同盟とその呼び掛けに答えて傘下に入った地方霊能名家の集合体の上に、ガイア連合の黒札……が後見する金札霊能力者である鷹村氏を無造作にポンと置いた程度の出来。

 鷹村氏の最側近集団といえる旧霊山同盟は、管理する霊地の格自体はそれなりで、霊能的にも(現地人基準では)結構な異能者集団ではあるものの、その勢力圏は彼らが管理する霊山周辺に集中しており、それ以外の領域、特に人口の集中する都市部に対しては特にできる事がない言わば一介の地方カルト止まり。

 そしてそれ以外に勢力圏を持つ地方名家の方も、諸事情あって旧霊山同盟とあまり仲が良いとはいえない上に、コイツらはそもそも明確な組織図とかない緩やかな名家同士の連帯でしかなく、厳密なトップや組織構造など存在しないまま、とりあえず雑に“自分たちはエラい”しその中でも“自分はエラい”という肥大化した自意識だけ抱えながら無駄に派閥争いを繰り広げていたりする。

 

 そんな具合であるため、誰に報告し、どこに連絡し、何を相談すればいいのか、そういうルートがしっかりと確立されていない。

 

 支部長である鷹村君がナメられている、という部分もあるだろう。

 黒札持ちの“俺ら”じゃないから“俺ら”からは隔意を持たれやすい、という部分もある。

 

 だがそれ以上にまだ幼い。常人よりも濃密な人生経験を送ってはいるのだろうが絶対量が足りないし、それ以上に実年齢という数値が足りていない。

 単純に幼いからナメられる。

 侮られるし、下に見られる。

 それは転生者相手に限った事ではなく、現地人も同じ事だし、むしろ現地人は単純に下に見るだけでなく『力があっても付け入る隙はある』『利用できそう』と思うのだ。

 

 その上で、現霊山同盟支部自体にもやるべき事が結構多い。日本列島屈指の強大な概念を持つ“道”である東海道を霊道として確立させるための霊的工事やら、現地人向けの量産型デモニカであるG3シリーズの生産ラインの確立やら、新潟支部と連携を取ってのノロイ米の仕入れやら、霊能組織として将来を見据えて進めておくべき案件が多過ぎる。

 それこそ、リスクを理解していてもある程度は足元を御留守にせずにはいられないほどに。細かい部分に注意していられないのだ。

 

 しかもこの足元御留守状態、程度の差はあれ多分割と当分このまま続行だ。さらに優先せざるを得ない問題課題が山程あるからな。

 

「で、霊山同盟が支配する霊山以外は、地方名家出身の連中の管轄だ」

『一番問題がある人達ですね』

「そういう事。まあ“一番問題がある”というよりは、鷹村氏とその取り巻きの霊山同盟以外の大半がガイア連合にとってイマイチ信用できないってだけかもしれんけど」

 

 まあ現地人だからね。

 仕方ないね。

 俺もそうだ。

 

 むしろ俺自身、鷹村君当人も信用していない。

 現地人だからね。

 

 そんな具合で御覧の有様だ。

 

「……これだからまあ、現地人の猿ってクソだわ」

 

 何が面倒臭いって名家連中、腐敗が酷い。

 普段から意味もなく派閥争いで足引っ張り合って、ともすればガイア連合から派遣された黒札持ちの“俺ら”の足すら巻き添えで引っ張るくらいに足の引っ張り合いが大好きな癖に、名家同士の利害が絡まない場所だと無駄に連帯感を発揮して、汚い便宜を図ったり、報告の改竄に手を出したりと、意味もなく被害を拡大させてやっぱり“俺ら”の足を引っ張るのだ。

 

 今回もそう。依頼を寄越してきた依頼主がまあそっち系の名家の出身であるというだけで、受付を担当していた名家(笑)出身のアホが情報の精査もせずに相手の報告を鵜呑みにして回してきやがったあからさまな疑惑案件が、そのままこっちに降りてきたというオチ。

 

「もっとも、この事件のクソっぷりはそこで終わりじゃないけどな」

『と、言いますと?』

「つまり、だ────」

 

 元々、この“ダークサマナー”二人……占術で生存自体は確認できたものの、異能者であっても、プロのマタギでもなければ、レンジャー資格持ちの凄腕自衛官でもない。半年前までは一介の中学生でしかない女の子二人が、ガスも電気も通っちゃいない山の中に隠れて二ヶ月ものんびり姿を隠していられるとか、その時点で明らかにおかしい。

 地元の名家(笑)や村人と結託しているか、あるいは何かしらの神性や怪異に“保護”されている可能性も考慮する必要がある。

 もちろん、その“保護”とかいうのが基本的人権を尊重した文明的な生活を伴っている保障なんてどこにもないし、最悪のパターンであればどこぞのエロゲよろしくエロ触手肉袋の中に保管されて生命維持だけされながら苗床になってる可能性も無きにしもあらず、ってところが問題だが。

 まあ、それ以前に単純に悪魔化している可能性もある、か。

 

 何にせよ、さっさと捕獲なり救出なり済ませる必要があるな。

 

 そんな事を心に決めながら、俺はシキガミ式オートパイロット中のデモニカスーパーカーの運転席から、ぼんやりと窓の外の景色を眺めるが、どうにも退屈が拭えない。

 元々日本最大の工業地帯である太平洋ベルトを横断する大型トラックが行き交う運輸道として敷設された東名高速道路は、その大半が左右を防音壁に区切られた高架上か、さもなければひたすら切り立った山の合間を走るだけで、代わり映えのしない風景が続く退屈な道だ。

 そんな単調な道を数時間も走っていれば、嫌でも眠気を催してくるというもの。唯一の例外が海に面した浜名湖畔だが、そっちは今回のルートには入っていない。

 

「えーと、静岡辺りまで行ったら中央自動車道に乗り換えて北上。それから山の方を目指して、っと……うん、結構掛かるな」

 

 目的地は、大雑把に長野県との県境近くにある山間の小さな村落だ。厳密には市町村の統廃合で戸籍登録上は既に別の町になっているのだが、ともあれそういう地域が存在して、そこで強権を振るっている名家があるんだとか。

 まあ名家(笑)猿の家名なんて割とどうでもいい話だが、ともあれ時間が掛かるのは間違いなし、と。

 

「長野ってガイア連合だと……えーと確かKSJ研と、あと狐神を嫁にした人も長野だったな。ふむ」

 

 とりあえずスマホも手元にある事だし、掲示板でも見て時間潰すか。

 

 

 

   △    △    △

 

 

 

【クソ因習】最悪だったクソ依頼貼ってけ【クソ報酬】 Part.12

 

327:名無しのクソ依頼

あークソ、マジ最悪。

 

328:名無しのクソ依頼

いきなりどうした? 何があった?

 

329:名無しのクソ依頼

お、新人さんかな?

とりあえず>>327はスペックと依頼内容よろ

 

330:327

ワイ、23歳で関西支部勤務の戦闘班。レベルは8の物理型で素手ビルドやけど、先週のレベルアップでファイアブレス覚えたから火炎属性も逝ける口や。

 

おととい関西支部の事務所で、まあ小規模異界の湧き潰し依頼受けたんだが、その報酬もマッカ払いで結構な額でな、しかも追加で【房中術】のスキルカードまで付いてくるとかいう大盤振る舞いやってん。

依頼内容も、まあ幽鬼ガキを15体倒せばいいっていう楽な内容でな、火炎弱点いうから楽な仕事や思うて行ったら、アカンかった。

 

それが地獄の始まりやった。

 

331:名無しのクソ依頼

嘘乙。

そんな楽な依頼で【房中術】スキルなんて報酬に出すわけないだろアホが。

 

332:名無しの事務員

>>331

いや、それ多分アカン依頼や。騙して悪いが系のアレや。

327、関西支部所属って言うとったやろ。あそこ、上の方にそういう事するタチ悪いヤツがおってん。

 

333:名無しのクソ依頼

>>332

いやいや言うて俺らやろ? メシアや名家(笑)じゃあるまいし、俺らにそんな事するヤツがいるとか、さすがにない、よな?

 

334:327

マジで!? いや、でも本当かもしれん。

依頼の異界に入ったんやけどな、ガキなんて一匹もおらんかった。出てきたのは物理無効・火炎反射の悪霊インフェルノの大群や。

 

335:名無しの髑髏眼球

敵の方が完全対策済みで草wwwwww

 

336:名無しのクソ依頼

>>335

草に草生やすなwwww

 

337:名無しのクソ依頼

これ、>>327のスキルにここまで完璧に嵌まってるとなると、ひょっとして受付側が故意に殺しに来たって事になるんじゃ・・・?

 

338:名無しのクソ依頼

オイオイ>>327、何か受付の恨みでも買うような真似したのかよ?

 

339:327

いや、そんな心当たりはないねんけど……これ、そういう事でええんかな? ヤバない? ヤバいよな?

でも、何で?

 

340:名無しの事務員

関西支部やろ。あそこの副支部長の幸原な、そういう事をマジにやらかすクソ女なんよ。

何やツイフェミこじらせたみたいな厄介お局なんやけど、最近は何や支部どころかジュネス側の総務と経理まで仕切り出しとる。

 

で>>327、その様子やとまだ受付に報告はしてへんやろ?

 

345:327

ああ、でもこういうのって早いところ報告しないとマズいんじゃないか?

 

346:名無しの事務員

普通はな。

せやけど、今回のケースに限っては普通に報告した方がヤバい。

>>327が報告するとな、事前情報の齟齬は綺麗さっぱり揉み消され、普通に依頼失敗扱いにされて、さらにとんでもない額の違約金を払わされる仕掛けになっとる。

しかもその後も依頼失敗のペナルティ扱いで、色々とブラックな仕事を山ほど押し付けられたりな。

 

そういうケースが今まで何件かあったんよ。

幸原の派閥の常套手段や。

せやけどアイツら手慣れてるみたいで、トカゲの尻尾切りもしっかりやっとるから足取りも追えへん。

本部の事務方も怪しいところはもう目星つけとって、どうにかやろうとしとるんやけど、証拠抜きだとどうにもアカンでな。

 

347:名無しのクソ依頼

おいおい、それはマズいんじゃないか?

 

348:名無しのクソ依頼

やる気があるヤツなら誰でも幹部になれる。

ガイア連合の弱点がモロに出た形やな。

 

349:名無しのクソ依頼

まあ、言うて俺らが幹部やるのはちょっとね。

 

350:名無しのクソ依頼

ほんそれ

 

351:327

マズいのはよう分かった。

せやけど、どうすればええ?

結局依頼未達成は変わらへんで。

 

352:名無しの事務員

安心せえ。

今の時間ならイナバニキが小遣い稼ぎでトラポート屋を開いとるはずやから、電話一本で山梨まで一っ飛びや。

後は山梨の受付で、依頼内容と起きた事全部しっかり報告して相談すればええ。

幸原を追い落とすまでは行かへんと思うけど、〉〉327が借金漬けにされんようにするくらいはできるはずや。

 

353:327

了解。

おおきにな。ホンマ助かるわ。

上手く行ったらまた報告するな。

じゃ、行ってくるわ。

 

354:名無しのクソ依頼

健闘を祈る。

 

355:名無しのクソ依頼

いてら~ノシ

 

356:名無しのクソ依頼

応援しとるで

 

357:名無しの髑髏眼球

>>327

頑張って

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 ふむ。

 

 と、俺も後追いで>>327に対する応援レスを打ち込んで一息、スマホをポケットに戻したところで、影の中に潜んだままの我がシキガミから注意を促す声が飛んだ。

 

『ますたぁ、そろそろ目的地です。忘れ物はありませんか?』

「そうだな、ちょっと待て」

 

 手元のタブレット端末を手早く操作して、大雑把な依頼内容を問題がないかもう一度チェック……まあ問題しかない依頼なのは最初から分かり切っているので今更か。とりあえず最低限の要点をもう一度チェックし直して最終確認。

 後は身を守る防具である僧衣霊装と、武器となる各種霊装。

 メインウェポンである伸縮式の長剣────ホビー部謹製のライダー兵装再現装備『ガンガンセイバー』に、袖口に隠したガントレットと、その裏に仕込んだ投擲用の独鈷杵。

 ポーチに収納した各種消耗品。

 どれも問題なし。

 

「おっし確認完了、いつでも行ける」

『ええ。私もいつでも行けますよ。頑張っていきましょう』

 

 毎度毎度気が重くなるようなクソ依頼だけど、さっさと片付けて帰って清姫とのんびりガイアカレーを食べるのだ。

 

 

 

   △    △    △

 

 

 

423:名無しのクソ依頼

>>327、無事に生き残れるといいな

 

424:名無しのクソ依頼

せやな。

俺も祈ってるよ。

 

まあ、こんな世界じゃ祈ってマトモに助けてくれる神様なんていないんだけどな!

 

425:名無しのクソ依頼

お排泄物!

 

426:名無しのクソ依頼

そんな世界でちゃんと世話焼いてくれる神様と契約してる俺は勝ち組

 

427:名無しのクソ依頼

>>426

それ、本当に大丈夫?

裏で子種とか盗まれてない?

 

428:名無しのクソ依頼

やめて!

 

429:名無しのクソ依頼

それはそうと話は変わるんだけど、そういえば静岡にも新しい支部できたんだよな。

あそこ、新支部長が俺らじゃなくて現地人だって聞いたんだけど、大丈夫?

 

430:名無しのクソ依頼

あー、新支部長のハルカ君、ちょっと話してみた感じだと、悪い子じゃなさそうやったで。

 

 

 

 

 

 

むしろ初の現地人支部長で名家(笑)の連中が調子付いとるのが本当クソ。

 

431:名無しのクソ依頼

それな。

 

現地人で名家(笑)の血も流れとるハルカきゅんが立場上俺らより上

 

 

名家(笑)である自分達はハルカきゅんと同等

 

 

つまり自分達名家(笑)は俺ら黒札よりも上の立場

 

とこんな感じで脳内変換されとるみたいや。

 

432:名無しのクソ依頼

本当クソ。

 

現地人が俺らより立場上だとモヤモヤする勢のワイ将、名家(笑)クソ野郎に煽られてマジ切れ寸前。

これ、もうやっちゃっていいよね? いいんだよな?

 

433:名無しのクソ依頼

それな。

 

イマイチ現地人が信用できないワイ将、山梨への移住を検討中。なお移住費用ry)

 

434:名無しのクソ依頼

静岡県だと、恐カツニキが頑張ってくれとるからな。

せやから現地人に厳しい勢のワイももうちょっと静岡で頑張ってみようかなって気分になれる。

 

435:名無しのクソ依頼

恐喝?

何それ怖い。

 

436:名無しのクソ依頼

恐喝やないで。

恐カツニキや。そこんとこ間違えないであげてな。

 

恐カツニキっていうのはな────

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 水田の合間を縫って伸びる道路の上を、デモニカ車両のオートパイロットはカーナビを頼りに走っていく。

 きっちり法定速度を守り、この狭い田舎道での制限速度は時速20km。超田舎である。

 

 山に囲まれた田畑の合間にぽつぽつと家がある、そんな具合にありふれた日本の農村の、その片隅にある、周りの家々と比べても一際大きな屋敷が目的地。依頼主にしてこの辺一帯を代々守護してきた、という事になっている地元霊能組織たる地方名家の屋敷である。

 屋根上の厳めしい鬼瓦が印象的な屋敷で、それなりの歴史のある霊能組織らしく屋敷の周囲には鬼瓦を起点にして少々の結界が張ってあったが、生憎とロクに手入れもされていないようで経年劣化も激しく、あれではレベル1にも満たない最底辺の悪霊を阻止できるくらいだろう。

 

 ま、現地猿の衰退具合なんぞ本当にどうでもいい話だが。

 

 とはいえそんな内心の感情は表に出さずに綺麗に仕舞っておくのが仕事というものだ。

 俺は出来るだけ外面良く爽やかなビジネススマイルを心掛けながら車から降りると、屋敷のインターホンを押した。

 

「ごめんくださーい、ガイア連合の方から参りました夏油と申します」

『ああ、しばらく待っとれ。今行く』

 

 インターホンからそんな返事が聞こえた後、“今行く”という返答に反してたっぷり十数分の時間を掛けた後、引き戸を開けて屋敷から出てきたのは、作務衣を羽織った和装の老人。

 その矮躯からは少々の霊力が滲んでおり、こっそりアナライズした限りではそのレベルは4……一般的な現地人覚醒者としては、まあかなりマシな方か。

 

 老人はじろりとこちらを一睨みすると、気に入らないと主張するように一つ鼻を鳴らした。

 

「男か。それにガイア連合の黒札は見目麗しい式神を連れ歩くと聞いたが、それもおらんようだな」

 

 デリヘル注文した訳じゃないんだから、その辺に文句を言う権利はこの爺さんには存在しないと思うんだがね。どうでもいいが。

 

「まあいい。女を捕えたら、きちんと儂の下に連れてくるのだぞ。ああ、間違っても余計な傷など付けるでないぞ、後で楽しむからな」

 

 下衆い追加注文が来たな。

 

 老人の癖に、御盛んで結構な事だ。

 

「生憎ですが、その注文にはお応えしかねます。ガイア連合からこちらが受けた仕事は、あくまでもダークサマナーの討伐のみ。彼女達を捕縛する事があれば、その身柄はガイア連合のいずれかの支部の預かりとなりますからね」

「何だと!? 名家当主である儂が命じておるのだ、大人しく従うのが道理であろう! 分を弁えよ!」

 

 ひゅん、と風を切る音。老人が振り回した杖を顔の直前で掴み止めると、そのまま拳に力を込めて握力だけでへし折ってやる。思わず後ずさった老人が、その事実を恥じるように声を張り上げる。

 

「貴っ様、よくも家伝の霊装を……二つとない家宝を……!」

「だからどうした? 何の道理もなく仕掛けてきたのはそちらからです。それで家宝を失おうが、それはそちらの責任だ。まあもっとも、その程度の粗品を家宝などと呼んでいる時点で底が見えている。それに────」

 

 砕けた杖の中から、その内側に封じられていた悪魔が解放される。黄色く汚れた牙を剥き出しに飛び出してくるのはアナライズによれば『屍鬼ボディコニアン』だ。製造法すら既に途絶えた、悪魔を封じてその力を使役する魔晶武器……だったのだろう。正確にはその劣化品で、完全な製法もガイア連合技術部が既に確立済みの代物ではあるのだが。

 古い時代の屍鬼らしく安っぽくも派手な着物で身を飾った遊女風の屍鬼が、霊装に封じ込められて以来の鬱憤と解き放たれた歓喜を殺意に変えて、無力な老人を引き裂くべく咆哮を上げ、しかし。

 

 ボディコニアンも、そして老人も。

 

「ひぃっ……化け物ぉ!」

 

 真昼の陽光がいつの間にか、雲と見紛う天蓋のごとき巨大な影に遮られている事に気付き、そして揃って頭上を振り仰ぎ。

 

「そうそう、紹介を忘れていました。“彼女”こそ俺のシキガミ────」

『ええ、私こそますたぁのシキガミ────』

 

 顎関節で上下に分かれた巨大に過ぎる顎が、一息に閉ざされる。それに巻き込まれ、顎に挟み込まれたボディコニアンは碌な抵抗一つできずに一瞬で噛み砕かれた。自分を遥かに超える強さを持っていた悪魔が一瞬で咀嚼され即死するのを目の当たりにした老人は腰を抜かしながらしめやかに失禁。

 

「『清姫』です」

 

 全長四十メートルを越える巨体を持つ、獣脚類の肉食恐竜にしか見えない何か。

 屍鬼ボディコニアンを一口で噛み砕いたその“獣竜種”がその巨影を老人に見せつけるように咆哮を上げ、それを真っ正面から浴びた老人はしめやかに脱糞。

 

 細かく棘の生え揃った暗緑色の体表、頭部から胴体、そして尾に掛けては四肢とは不釣り合いに異様に発達した筋骨は常の恐竜にはありえない強靭なボディラインを作り出し、また首元まで裂けた巨大に過ぎる顎部の先端からは口腔に収まらず顎の外にまで生え出した牙が無数の棘となっている。

 

 見る者が────ゲーム好きの“俺ら”が見れば、モンスターハンターシリーズの“イビルジョー”なるモンスターと呼ぶだろう。もっともサイズは元ネタの倍だが。

 

 この子が俺の専用シキガミ『清姫』だ。分類としては獣型だが、その中でもサイズはガイア連合最大級、俺の自慢の相棒であり、その持ち味は絶大なまでの物理攻撃力にある。その分市街では連れ回せないとか、本気で暴れさせるなら異界の中ですら場所を選ぶ必要があるとか、色々と制約も多いのだが、しかし馬鹿を脅すにはこれ以上ない“脅威”だ。

 

「さて、それじゃあ御協力願うとしますか。まずは……問題の“ダークサマナー”について、知っている事を根こそぎ吐いてもらいましょうかね」

 

 さて。

 

 一緒に連れてきた撮影スキル搭載済みの簡易シキガミ“鎹鴉”も大絶賛撮影中。ガイア連合の掲示板に送り付けて、後の判断は同じ転生者の他の面子に任せるとしようかね。

 

 

 

   △    △    △

 

 

 

436:名無しのクソ依頼

恐喝やないで。

恐カツニキや。そこんとこ間違えないであげてな。

 

恐カツニキっていうのはな、恐竜でカツアゲするから恐カツニキなんやで。

 

437:名無しのクソ依頼

恐竜でwwwwww

 

438:名無しのクソ依頼

カツアゲwwwwwwww

 

439:名無しのクソ依頼

人間、全長四十メートルのイビルジョーに睨まれてもイキれるようにはできてないんだよなあ・・・

 

440:名無しのクソ依頼

それはそうと、また動画出とるで。

恐カツニキの新作や。

 

441:名無しの髑髏眼球

楽しみ。

 

442:名無しのクソ依頼

まーたクソ名家だよ。

滅べばいいのに。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 本当に、滅べばいいのに。この名家猿ども。

 

 思わず舌打ちが出たのも、仕方ないと主張する。

 

 ウチの可愛いイビルジョーで脅して聞き出したクソボケ老人の話を要約すると、だ。

 

 

 曰く、ガイア連合霊山同盟支部に依頼して異界の湧き潰し用の人員を募集して、やってきた中学生異能者が想像以上に美人だったので、薬盛って犯そうとしたら寸前でバレて抵抗された。

 仕方ないので妾にしてやるから抱かせろと取引を持ち掛けたがあっさりと断られたので、家人を嗾けて取り押さえさせようとしたら反撃された。“ダークサマナー容疑”の話で出た死人というのは、返り討ちになったコイツの手下というわけだ。

 で、さらにもう一つ仕方ないのでさっきのボディコニアンの杖の力で動きを封じようとしたら、数ヶ月前にガイア連合で購入した封印用霊装が杖を振った拍子のうっかりミスで開いてしまい、中に封じていたはずの悪霊が解放されて、問題の中学生二人に憑依して逃げていった。不良品だ。謝罪と賠償を要求する。

 

「あーこれ、【魔封波電子ジャー】だな。確かにガイア連合製だけど……」

 

 ガイア連合家電部が作ったヤツか。封魔管の劣化・廉価版として開発された代物で、封魔管みたいに中に悪魔を封じて持ち運ぶ事ができるとかいう。

 それも強制吸引機能が実装された後期モデルだから、それを使って強制封印用の武器として使っていたのだろうが。

 

 これは元来、あくまでも単なる封魔管の代替装備として開発された代物で、友好的な悪魔を封印して持ち運ぶ前提だから、中に封じた悪魔が解放されて所有者を襲うとか、そういう事態は考慮されていないのだ。じゃあなぜ強制吸引機能が付いているのかといえば……まあ原作再現としか言いようがない。

 ともあれ、これをそういう用途で扱うのなら、封印としては少々不安な代物だ。何せ物が炊飯器なだけに、普通に炊飯器を開けるのと同じプロセスで中身を解放できるのだ。しかも、何気に物理的な衝撃にも割と弱い。

 

「…………とか本体の裏に書いてあるんだけどさ、注意書きくらい読めよ、猿」

 

 これだから現地人のクソ猿は。

 

 まあ、どうでもいいが。

 

 ともあれ。

 

「自業自得過ぎ、かつアホ過ぎてツッコむ気すら起きないな。後はガイア連合の有志に適当な判決でも下してもらえ」

「何じゃと!? 名家の当主である儂の子種を孕めるなど、名誉以外の何物でもなかろう! それを拒むなど、全く最近の若い者は……────」

 

 色々と漏らしながらも、何やらとにかくやたらとブツブツ言っている。どれだけ御盛んなんだか。

 ともあれ言ってる事の大半が中身のない自己正当化で、反省するような言葉は何一つ出てこないし。

 脳味噌をシキガミパーツに付け替えた方がいいんじゃないかな?

 

「そうじゃ、貴様ら黒札は儂ら名家に奉仕できることをもっと喜ぶべきなんじゃ! だいたい、後ろ盾のない娘を犯すなど、どこの家でもやっておる事じゃ! 名家の血を継ぐために当然の嗜みじゃろうが!」

 

 才能一般人未満のロバの血がそんなに大切らしい。

 

 本当コレ、猿としか言いようがないな。

 もういい加減、聞くのが嫌になってきた。

 

「あの娘達も儂の子を孕むという名誉を賜れるところだったのじゃぞ! 貴様らもよくも惨い事をしたものじゃ! 人の心がないとはこの事じゃ!」

 

 密輸課のトラポートで山梨から捕縛部隊が到着するまで、短くても十分は掛かる見通し。

 その間、ずっとコレ聞いてなきゃならんのか。

 

「儂ら名家の血筋は、あの無能のヤタガラスや根願寺が無駄に東京で結界をこねくり回している間も護国の務めを果たしてきた名誉ある血筋! この程度の報いはあって当然だろうが!」

「だからどうした?」

 

 もう鬱になってくるな、本当。

 

「儂は悪くねぇえええええ~!!」

 

 そんな叫びに言い返す言葉があるならただ一言。

 

「ギルティ」

 

 とりあえず一発ブン殴っておいた。

 

 

 

   △    △    △

 

 

 

624:名無しのクソ依頼

ギルティ

 

625:名無しのクソ依頼

ギルティ

 

626:名無しのクソ依頼

ギルティ

 

627:名無しの髑髏眼球

ギルティ

 

628:名無しのクソ依頼

ギルティ

 

629:名無しのクソ依頼

ここまで満場一致で草wwwwwwww

 

ギルティ

 

630:名無しのクソ依頼

セー……と見せ掛けての、ギルティ!

 

631:名無しのクソ依頼

まあ当然やな。

 

ギルティ。

 

632:名無しの不死鳥推し

ギルティ。

 

あ、今日はイナバニキ先輩がハムネキにタルタロス強制連行キメられて不在なので、私がトラポートしますね。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 と、いうわけで現在大絶賛没シュート中のイナバニキに代わって同じ密輸課の不死鳥推しネキが山梨から連れてきた捕縛チームが糞ボケ老人を取り押さえて連行していき、同様に山梨から来た調査班が老人の屋敷の家宅捜査へと取り掛かる。

 その途中で老人宅を守る契約をしていた低位悪魔がワンパンで処刑されたり、あるいは何やら地下からエロゲさながらのエロ拷問室が見つかったとかで軽い騒ぎになったりと色々あったようだが、俺は知らん。

 

 とにかく、俺は自分の仕事をするだけだ。

 

「さあ、狩りの時間だ────清姫」

『承りました、ますたぁ。さあ、嘘吐きを焼き殺す時間です』

 

 仕事は一つ、“ダークサマナー”の保護。糞ボケ老人に強姦され掛けた挙句、悪霊に憑かれて帰れなくなった女の子を助けよう、という至極単純な話。

 

 俺の足元に落ちた影がユラユラと揺らいで膨れ上がり、大きく広がって水面のように波打ち、そこから影の水面を割って巨大な何かが出現する。現れるのは全長四十メートルのイビルジョー、耳元まで裂けた顎を広げる巨体の獣脚竜。

 ほとんど怪獣サイズの怪物がその場に出現した事で、屋敷を制圧する黒札達からは驚愕の声が上がるものの、その一方で村からは何の反応もなく静かなものだ。【隠密】【光学迷彩】【気配遮断】【マグネタイト隠蔽】【霊体化】と、自己隠蔽用のスキルを山ほど積み込んだ結果がこれだ。

 

「じゃあ清姫、今日も頼むぞ」

『ええ、手早く行きましょう』

 

 車のトランクから取り出した折り畳み型自転車────ガイア連合自転車部に試作してもらった、不整地走行はおろか空中走行すら可能とし、しかも一般人からは不可視のステルス性を備えた便利な移動手段。それでいて持ち運びも楽。

 物理系異能者の身体能力で勢いよくペダルを漕いで走り出し村外の山林へと漕ぎ出せば、この程度の山道など平地と変わらぬとばかりに軽快な走りで、巨体に反して足音一つなく疾走する清姫と並走し、アスファルトどころか整地すらされていない獣道を軽々と走破していく。

 

 と同時に、人差し指に金無垢の指輪を嵌めた右手の指を軽く鳴らして、中に封じられたアガシオン『ドラパルト』を呼び出し、その視界を借りる。

 全翼爆撃機に酷似した三角翼型の頭部から、トカゲのような胴体が伸びるポケモン型のアガシオンは、見た目とは違い広域索敵と指揮管制に特化しており、周囲一帯の地形情報を手早く取得しつつ、その中から生体マグネタイトの反応をサーチしていく。

 

 加えて俺の周囲に無数の“黒い渦”が出現し、そこから湧き出すのは無数の悪魔だ。

 かつて壇ノ浦から湧き出した平家の怨霊、黄泉平坂から溢れた黄泉軍や黄泉醜女、あるいは鬼や天狗のようなポピュラーな悪魔、それどころか天使まで、種族が一律に『悪霊』に変化しただけでステータスや相性、スキル、権能に至るまで“生前”のそれと同一。

 ただ一点、意志を宿さぬ虚ろな眼だけが異なったまま、俺の意志をたった一つの目的として出現し、山林の中へと散っていく。

 それこそどう見ても、それは『呪術廻戦』の“夏油傑”が操る生得術式“呪霊操術”そのもの────俺のレベルがある程度上がると共にネクロマからスキル変化したそれは、その名の通り【呪霊操術】と呼ぶ他ないような代物だった。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

【ステータス】

■夏油赤紗《Lv.??》

ステータス:運重視物理型

耐性:呪殺・破魔無効

(スキル)

・呪霊操術:ネクロマから変化したスキル。呪術廻戦仕様。自身や仲魔が殺害した、または視界内で殺害された悪魔の霊基を保存し、ステータスや耐性、スキル、技術、権能など全てをそのままに使役する。五感の共有なども可能。ただし種族は一律で『悪霊』となる。

・極ノ番・うずまき:【呪霊操術】から派生したスキル。【呪霊操術】で使役する悪霊群を圧縮投射する。敵全体に万能属性極大ダメージ。また投射する悪霊の持つスキルや権能の効果を上乗せ可能。

・暗夜剣:敵単体に物理属性ダメージ+封技の物理攻撃。

・金剛発破:敵全体に物理属性大ダメージの物理攻撃。

・空間殺法:敵全体に物理属性特大ダメージの物理攻撃。また大跳躍や三次元的な高速移動が可能。

・成仏拳:敵単体に物理属性小ダメージの物理攻撃+睡眠の物理攻撃。睡眠状態の敵に対して威力上昇。打撃の瞬間に同時にドルミナーを打ち込む事で威力と睡眠の成功率を瞬間的に上昇させる事ができる。

・霞駆け:敵全体にランダムで物理属性ダメージ+幻惑の物理攻撃。また相手の視線から逸れて高速移動する特殊な歩法として使用可能。

・黒迅斬り:敵単体に呪殺属性ダメージの物理攻撃。

・奥義一閃:敵単体に物理属性極大ダメージ+確定即死、踏みとどまり効果無効。

・アナライズ:視界に捉えた敵のステータスを開示する。霊視が可能。また他者から借りた視界からもアナライズを使用可能。

・アギ系:修行で習得したスキル。適性中。火炎属性攻撃魔法。中確率で炎上付与、また生物に対して異様に引火しやすく、鎮火しづらい。マハラギオンまで使用可能。

・ザン系:修行で習得したスキル。適性やや高。衝撃属性攻撃魔法。マハザンマオンまで使用可能。また空中に足場を生成しての空中機動や、衝撃波の反動による高速機動が可能。

・ジオ系:修行で習得したスキル。適性中。威力は低い代わりに感電の発生率が高い。マハジオまで使用可能。

・ブフ系:修行で習得したスキル。適性低。ブフのみ使用可能。

・グライ系:修行で習得したスキル。適性やや高。重力属性攻撃魔法。マハグライバまで使用可能。また重力操作による身体制御補助により軽身功や壁歩きが可能。

・ムド系:修行で習得したスキル。呪殺魔法(即死)。適性やや大。マハムド、ムドオンまで使用可能。また呪詛返しや遠隔呪殺、ムド主体の結界術なども使用可能。また味方全体で破魔属性を無効化する闇の壁スキルも使用できる。

・ハマ系:修行で習得したスキル。破魔魔法。(即死)。適性やや大。マハンマ、ハマオンまで使用可能。相応に高度な結界術や土地の浄化なども扱える。

・エイハ系:修行で習得したスキル。呪殺魔法(ダメージ)。適性中。エイガオン、マハエイガまで使用可能。

・ディア系:修行で習得したスキル。回復魔法。適性大。メディラマまで、また各種初歩的な状態異常解除魔法も使用可能。リカームもギリギリ扱える。

・状態異常系:修行で習得したスキル。適性それなり。大雑把に一通りは使えるが、成功率はスキルによって偏っており、高いものと低いものがある。成仏拳のコンボが成立するドルミナーは比較的多用するため錬度が高い。

・補助系:修行で習得したスキル。適性それなり。カジャ・ンダ系統は一通り使用できるが、出力よりも持続・範囲を重視した形。転移系はトラフーリの発動速度・精度に優れており戦闘手段の短距離転移として扱える他、またトラエストを異界内の好きな場所に転移する手段として扱えるが、トラポートは整備された霊地の間、かつ一度行った事がある場所にしか転移できない。他、リフトマやエストマなどは一通り扱える。

(パッシブ)

・猛将の逆鱗:物理貫通を得る。また物理攻撃を受けた際、物理属性特大ダメージのカウンター。敵に機先を制された際、敵の行動速度を大きく制限する。

・見覚えの成長:見稽古。戦闘に直接参加する必要なく経験値を取得できる。また見覚えにより技能の習得率も向上する。

・龍眼:命中率上昇大。また動体視力が強化される。

・三分の活泉:HP増加大。

・不屈の闘志:死亡時、HP完全回復状態で踏みとどまる。

・ダークギャザリング:現代オカルトを基盤にした独自魔術。悪霊祓いと悪霊の捕縛・使役に長ける。単純な呪物の作成も可能。また特徴的な技法として、悪魔を利用した蟲毒法により、さらに強力な悪魔を製造する悪霊蟲毒が扱える。

(仲魔リスト):シキガミ 清姫、妖魔アガシオン(ドラパルト)、邪龍トウビョウ×3

 

■シキガミ 清姫《Lv.??》

ステータス:物理特化型

耐性:魔法・状態異常全般耐性

(スキル)

・丸かじり:敵単体に物理属性大ダメージ、ダメージ分のHPを回復。

・暴飲暴食:敵全体に物理属性大ダメージ、ダメージ分のHPを回復。

・暴れまわり:敵一集団に物理属性ダメージ。

・ファイアブレス:敵一集団に火炎属性中ダメージ+炎上の物理攻撃。

・アイスブレス:敵一集団に氷結属性中ダメージ+氷結の物理攻撃。

・マハザン:敵全体に衝撃属性小ダメージの魔法攻撃。

・バインドボイス:敵全体に神経属性の緊縛効果。

・雄叫び:敵全体の攻撃力低下大。

・チャージ:次に発動する物理攻撃の威力を倍加する。

・トラフーリ:短距離転移魔法。味方全体で戦闘から確実に離脱する。

(パッシブ)

・生得武器(牙):噛みつき系の物理攻撃の威力上昇大。

・物理ブースタ:物理属性攻撃のダメージ上昇。

・物理貫通:物理耐性・吸収を貫通する。

・龍眼:命中率上昇大。また動体視力が強化される。

・龍の反応:命中率・回避率上昇大。

・三分の活泉:HPが大幅に向上する。

・食いしばり:死亡時、HP1で踏みとどまる。

・吸血衝動:攻撃時、ダメージ分のHPを回復。

・再生:時間経過でHPが自動回復。

・猛反撃:物理攻撃に対して高確率で自動反撃を行い、物理属性大ダメージを与える。

・丸呑みカウンタ:物理攻撃に対して自動反撃を行い、確率で即死させる。

・声プロレマ:声を媒介にしたスキルの効果上昇。

(汎用スキル):隠密、光学迷彩、熱源遮断、音響遮断、臭跡遮断、気配遮断、気流鎮静、マグネタイト隠蔽、認識妨害、霊体化、影潜、物質透過、テレパシー、口寄せ、追跡、単純格闘、忍術、軽身功、空中歩行、大跳躍、森渡り、操縦席(開放型)、操縦席周辺バリア、情報リンク、人間変化、房中術、嘘発見、料理、汎用スキル詰め合わせパッチ

 

■妖魔アガシオン ドラパルト《Lv.??》

ステータス:速・運型

耐性:銃撃・衝撃耐性

(スキル)

・ドラゴンアロー:主人の契約している仲魔を弾頭として高速射出する。敵単体に召喚対象の攻撃力に応じた銃撃属性小ダメージ+召喚。

・マハスクカジャ:広範囲の味方全体の命中・回避上昇。

・フォッグブレス:広範囲の敵全体の命中・回避低下大。また煙幕を展開する。

・アナライズ:標的のステータスを解析する。

・トラエスト:転移魔法。異界から脱出する。

(パッシブ)

・龍眼:命中率上昇大。また動体視力が強化される。

・見覚えの成長:戦闘に参加していなくても経験値が得られる。

・食いしばり:死亡時、HP1で踏みとどまる。

・逃走加速:逃走成功率上昇。

(汎用スキル):隠密、光学迷彩、熱源遮断、音響遮断、臭跡遮断、気配遮断、気流鎮静、マグネタイト隠蔽、認識阻害、霊体化、高速飛行、テレパシー、口寄せ、千里眼、透視、探知、測距、広域索敵、追跡、水先案内、情報分析、視界共有、情報リンク

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 【呪霊操術】で呼び出した悪霊共を猟犬代わりに放っての人海戦術。ゾンビドッグやガルム、オルトロスなどの犬系悪魔を文字通りの猟犬として放つ地上偵察、あるいはハーピーなどの妖鳥系悪魔を多数利用しての航空偵察。

 そうやって捜索範囲を広げていけば、この静岡と長野の県境の山林がそれなりに広いとはいえ、近くにいればその内捜索に引っ掛かるというもの。程無くして、標的を発見することに成功した。

 

「あー……見つけた見つけた、アレだな。清姫、見えてるか?」

『はい、ますたぁ。この上なくはっきりと。情報と視界の共有、普段通りに』

 

 管理が行き届いていない山間は地形的にも起伏が多く、また背の高い木々が鬱蒼と生い茂っており普通なら視線が通りづらいものだが、上空偵察に飛ばした妖鳥系の悪魔には猛禽の千里眼を持つ個体が少なくなく、標的を見つけるにはそれほど困るものではない。

 異界の気配は存在しないが、その代わり密度の高いスギの樹林の合間に、森の中、朽ち果てた山小屋が建っているのを発見。その中に二人、人の気配がある事を、悪霊を介した音響探知で確認。

 さらに周辺地形を軽く索敵して確認するにどうやら閉鎖したキャンプ場であるようだが、【呪霊操術】で大量の悪霊を展開するには十分な広さ。閉鎖されているだけあって周辺に人の姿もなく、存分に戦う事ができるはず。

 

「じゃ、始めようかね」

 

 まずは簡単な挨拶代わり、山小屋が炎に包まれた。上空から飛来した『幽鬼おしち』数十体による【アギラオ】一斉射、炎を操る人面鳥の幽鬼が放つ亡霊火が一瞬で山小屋に引火し、火災を引き起こす。

 常人ならこれで簡単に仕留められるところだが、相手は悪霊憑きの異能者。この程度でどうにかなると考える方が間違っている。

 

 燃え上がる朽木の小屋が内側から縦横に引き裂かれ、飛び出してくるのは唸りを上げて回転する円盤鋸だ。轟音とともに崩れ落ちる山小屋を背景に、飛び回るバズソーが悪霊を引き裂いて飛び散らせ、その背後から飛び出してきた少女が大鎌を振るう。

 そうして燃え落ちた山小屋を背後に置いて並び立つのは、虚ろな眼をした少女二人。デビルシフターではあるも、その姿は怪物じみた印象からは程遠く、悪魔変身形態は共に衣装が変化したようにしか見えず、未成熟ながら女性らしいボディラインを浮き彫りにする軽装甲の人型だ。

 

 暁切歌、悪魔変身形態『地母神フレイヤ』。戦乙女の女王なる神格に違わず、採魂の大鎌を携えた翡翠色の軽装甲。

 月詠調、悪魔変身形態『幻魔フレイ』。自在に飛翔する勝利の剣を回転鋸として顕現させ、自在に操る薄紅色の戦神。

 

 左右のツインテールから伸びる円盤鋸に巻き込まれ、天使の悪霊数体がまとめて千切れ飛んだ。

 大鎌の曲刃に捉えられ、平家武者の怨霊の首が落ちる。

 両踵から突き出した回転鋸を車輪代わりにした高速移動に翻弄され、対応し切れない猟犬の群れが轢き潰される。

 

 対となる二柱の神格を宿した二人の少女は、憑依された者特有の、肉体の強度的限界を無視した強引な身体駆動により単純なレベルやステータス以上の身体性能を叩き出しながら暴れ回る。

 生体マグネタイトを過剰消費する事で、本来のレベルを越えて悪魔変身の出力を引き上げてもいるようだ。

 無理な身体稼働に、強引な過剰出力の合わせ技。

 あれじゃ肉体にも霊質にも結構な後遺症が残りそうだが、憑依している悪霊にとって異能者の肉体は使い捨てのガワに過ぎないという事か。

 

「まあ、こっちもやられてばかりじゃないがね」

 

 辺りの物陰、瓦礫の後ろや木々の影から溢れるように大量の悪霊が出現する。数百を越える膨大な悪霊による波状攻撃、常に複数方向から襲い掛かって対応力に負荷を掛けながら、その後ろから状態異常や弱体化を繰り返し飛ばしてその力を削いでいく。

 低位の悪霊共は次から次へと轢き潰されていくが、その程度は被害の数にも入らない。

 

「ムールムール、やれ」

 

 俺の隣に立つ元堕天使の悪霊ムールムールが地面に槍を突き立てれば、また再び地面から湧き出すように、斃されたばかりの悪霊の半数以上が復活し、少女たちへと攻撃を再開する。だが復活したのは半数止まり、本来は死霊術を操る堕天使の全体蘇生スキル【流転邪槍】だが、蘇生し切れない個体も多い。

 

 ……さすがに鎌にやられたのは復活しないか。

 

 あれは本来ヴァルキリーが振るう魂斬りの大鎌、死神の得物の原型ともなった、死者の魂を斬穫する冥府の迎え刃だ。だから今復活できなかった分を蘇生しようと思えば、その前にあの緑の子を倒しておく必要がある。

 

 逆にいえば、勝てばいくらでも蘇生可能。

 倒された個体も大して強い悪霊ではなく、いくらでも代わりがいる雑兵に過ぎない。

 “呪術廻戦の呪霊操術”でいうところの特級呪霊に相当する大駒どころか、中級相当の悪霊すら、まだ出していない。

 数を補うのであれば、新たな悪霊を雑に数百追加してやれば済む話。

 

 同時、木々を薙ぎ倒しながら隠形を解除した清姫が、その恐竜を象った巨体を露わにしてその場に飛び込んだ。

 圧倒的な巨体はそれだけでも“巨大”という概念を帯びて物理的な破壊力を二段も三段も引き上げる上に、絶大な筋力によって振り回される単純な質量はそれだけでも凶悪な戦術兵器に匹敵し、顎の一薙ぎで木々や岩が枯れ木のように吹き飛び、足を踏み下ろすだけでも地面が粉砕されていく。

 

 そして雑兵を相手にしている内に弱体化が進んでいく、が、少女たちの動きが鈍る様子はない。

 動きに疲労の影も見えないのは、中の悪霊が無理矢理肉体を動かしているからだ。

 だから動きが落ちる事もないし、重ね掛けされた弱体化で鈍り、状態異常で麻痺した肉体でも変わらず動き続ける事ができる。

 

 どうにかして悪霊を引き剥がさなければ、どうしようもなさそうだ。

 

 そうこうしている内に戦いは進み、同時進行で悪霊やアガシオンの視界越しに進めている【アナライズ】の解析率も上がっていき、少女達の裏側に潜んだ悪霊の正体も見えてくる。

 

「外道ヤマノケ、女に憑依するネット怪談の悪霊だな。古くから伝わる悪霊の類かと思ったら、そうでもないのか。レベルは9……まあ、あの糞ボケ猿じゃ倒すのは無理な相談……どころか、あの女の子二人と合わせれば結構な戦力になるし、下手な黒札ぶつけても返り討ちに遭う可能性すらあるわけで。まあ、来てよかったって事になるかね」

 

 まあ、絡繰りが見えてしまえば割とどうって事もない。

 

「だから早いところ、片を付ける」

 

 ちょっとだけ激しく行くとしよう。

 

 清姫が一旦飛び退いて距離を取ると、開いた空間に他の悪魔が殺到する。周囲に展開したツチグモやジョロウグモが糸を張り巡らせて回避に使える空間を削り、水に属する悪霊が霧を撒いて視界を潰し、その上で剣のような形態の悪霊を雨のように降らせて動きを牽制して、そこに突っ込むのは悪霊馬に騎乗した平家武者の亡霊だ。

 武勇に長けた鎧武者の怨霊が手にするのは刺又、突棒、袖搦。無数の棘を生やした奇怪な長柄武器はいかにも凶悪そうな見た目だが、その実その本性は凶器にあらず捕具だ。江戸時代の捕物でも使われたそれら、突棒は大鎌に斬り捨てられるが、袖搦と刺又が薄紅の少女の腕を抑え込んだ。

 

 その隙を衝いて現れるのは、巨蟹を象った大鎧を着た怨霊武者『悪霊スケモリ』、足元の土砂を噴き上げて地中から飛び出した異形の武者が、見事な組み討ちの腕前で少女二人を抑え込む。自身の両腕を自壊させながら逃れようとする二人の頭上に現れたのは、白い翼を広げた天使の群れ。

 一手分離れた場所から機を窺っていた清姫が巨大な肺と声帯を存分に利用した【バインドボイス】を放つと同時、俺自身の切り札も解放される。

 

「そら行くぞ────【極ノ番・うずまき】」

 

 メシア教会の過激派と一戦交えた時に【呪霊操術】に取り込んだ天使共は、一斉にその構成を失い、渦巻く生体マグネタイトに還元されて一点収束、球状に凝固した後、強力な破魔相性の即死効果を伴った閃光として解き放たれる。

 無数の天使が絡み合い融け合いながら押し寄せ、少女の影に潜んだ外道ヤマノケに向かって破魔属性の即死効果を解き放つ。これ以上ない程の弱点属性を総身に浴びた悪霊は、これまでの暴れようが嘘であったかのように一瞬で溶けて消滅し、そしてその場に残された少女たちは力を失ってそのまま倒れ伏した。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 さて。

 

 因習村の名家(笑)がやらかした馬鹿に巻き込まれ、外道ヤマノケに憑依されていた少女二人を解放した、は、いいものの。

 

「……これ、どうすっかな」

 

 山火事を消火して戦場の後始末をした後、溜息を一つ。

 

 女の子二人、この場に置いていくわけにも行かないだろう。いくら村に巣食う強姦魔が滅んだとはいえ、これまで悪質な強姦魔を養っていた村に女の子を置いておくのは正直、気が咎めるし。

 

「不死鳥推しネキはもう帰ったし、俺のトラポートはここからじゃ飛べないしな。諦めるしかない、と」

 

 少々面倒臭いが、連れていくしかなさそうだな。

 

 見た目はどこにでもいるような普通の女の子だ。県内のどこかの学校だろう制服を着ており、大量の悪霊相手にあれだけ猛威を振るったデビルシフターには見えない。その制服にしたって、ガイア連合技術部の手が入ったコスプレ霊装などではない、本当にどこにでもあるような普通の衣服だ。

 

「はぁ……仕方ないな。ちょっと清姫、悪いんだけど人間形態で力仕事、頼めるか」

『承りました。少しお待ちくださいましね』

 

 清姫が【人型変化】を発動すれば、全長四十メートルの巨体がするすると縮み、現れるのは白を基調にした和装の美少女だ。元ネタから倍の巨体を誇るイビルジョーとは思えぬ大人しげな美貌の小柄な少女は、しかし単純な筋力でいえば俺より上だったりする。

 別に単純な力であれば俺でもいいのだが、後になってセクハラで訴えられでもすれば面倒だし、その辺気にして清姫に頼る事にした。

 

 俺が移動に使っている車はガイア連合製のシキガミコア搭載車両で、見た目は黒いアメリカ製スポーツカー。ただし座席が二つしかないので、三人は座れない。清姫は霊体化するなり影に潜むなりすれば問題ないが、それでもシートが一つ足りない。

 とはいえ運転席に二人分詰め込むわけにも行かないので、二人は助手席で狭いのを我慢してもらうしかない。

 

 ともあれ仕方ないので助手席に重傷の女の子二人を詰め込んだまま村を出て、山間の道を抜けて国道に出る。色々な……性的な部分以外の意味でマズいかと思ったが、その辺は仕方ない。

 正直【呪霊操術】での波状攻撃よりも、二ヶ月に渡る憑依と、肉体・霊体双方から限界以上の力を引き出した過剰な悪魔変身による負荷が大きく、どんな後遺症が残っているか分かったものじゃない。

 

 まあ最悪、死んだとしてもリカームという手もあるから、難しく考える必要もないか。

 

 そんな風に考えながらカーナビの表示に従い、県境を長野県側へと抜け、中央自動車道を通ってガイア連合の中心部がある山梨へと向かう。その途上で、隣の助手席で女の子の片割れが呻き声を上げたので、途中にあった半ば山に埋もれたようなサービスエリアで一旦車を停めた。

 

「……とりあえず、飲み物でも買ってくるかね」

 

 清姫に車を任せ、サービスエリアの自動販売機で四人分の清涼飲料を買い込んで車に戻ると、助手席のシートに詰め込んであった女の子二人が目を覚まして、ちょうど身体を起こしたところだった。

 

「ん……あ、あれ、私……」

「えぇと、ここは……?」

 

 二人は身体を起こしてお互いに目を合わせると、よく分からないといった様子で車内を見回し、次いで窓の外の景色を見て首を傾げている。

 

 アナライズした限りでは命に別状はなさそうだが、その代わり結構な後遺症が残っているようだ。

 

 暁切歌は半身不随で、多分、右腕と右足が動かなくなっているはず。

 月詠調も同じく片眼と片耳の機能が喪われて、さらに左手も使えなくなっている。

 揃って霊質も肉体も大きく傷付いており、通常の回復魔法での治療も難しそうだ。

 

 ま、山梨に行けば普通に治る傷だから問題はないが。

 

「お、気が付いたか。無事……とは言い難いが、元気そうで何より」

 

 助手席のドアを開けて声を掛けると、振り向いた少女二人の内の金髪の方……暁切歌は、こちらを見た瞬間に目を見開いて声を上げた。

 

「げ、夏油さんがいるデース……!?」

 

 自己紹介した覚えはないにもかかわらず、名前を言い当てられた。デビルシフターとしての能力か、それとも俺もガイア連合の異能者として名前が売れてきたのかもしれん、などと思ったところでもう一人、月詠調の方が爆弾発言を追加した。

 

「違うよ切ちゃん、頭に縫い目があるのは夏油傑じゃなくて羂索の方だったはず……!?」

「っ、ヤバイ方デース!?」

 

 縫い目……ふむ。

 

 そういえば取るのを忘れてたな、と清姫からタオルを受け取って、十字を横に連ねたような額の縫い目模様を拭き取って消す。

 

「はわわ!? 本物夏油になったデース!?」

「ほ、本物夏油の方なら、異能者である私達にそこまでひどい事はしないはず……!?」

 

 ちなみに、この縫い目(偽)はホビー部謹製のれっきとしたネタ霊装だ。分類としてはボディペイントの一種で、専用のスプレーにインクとマグネタイトを充填して額に吹き付けると、自動で縫い目模様になる。効果はテトラジャ一回分で、即死効果を防いでくれるそこそこ便利な代物だが。

 

「ところで君達、『呪術廻戦』ってマンガの事は知ってるかな?」

 

 と話し掛けると、途端に二人はぎくりと表情を引き攣らせた。

 その表情は、やはり知っているんだな。

 

 『呪術廻戦』。

 

 前世で一世を風靡したオカルトバトル漫画だが、前世の作品を再現しているニキネキが所属しているガイア連合内部でもこの作品についてはまだ一巻しか発表されていないので、羂索なんて名前を彼女達が知っているはずはない。

 

 たった一つの可能性を除いては、だが。

 

「な、何で知ってるデスか!?」

「前世」

 

 そう、“俺ら”と同じ転生者、という可能性を除いて、だ。

 

「……夏油さん、も?」

「そうだよ。呪術廻戦、戦姫絶唱シンフォギア、そして女神転生。全部それなり程度には知ってるよ」

 

 助けてよかった。

 

 “俺ら”の仲間であれば、家族みたいなものだからな。

 

「私達、ずっと二人きりだと思ってて、だから……っ!」

「仲間ならたくさんいるよ。だからガイア連合なんて組織ができたんだ。外には言えないけど、ガイア連合の黒札になる基準は“俺ら”の仲間だって事。君達も仲間だよ、もう二人きりじゃない」

 

 とうとう二人して泣き出した。悪霊に憑かれていたのがよほど辛かったのか、どうか。

 

「良かったデス……」

「うん、良かったね! 良かったね、切ちゃん…………!!」

 

 うん、まあ良かった。

 

 とりあえず二人が泣き止むまでは、ゆっくり見守っておくとしよう。

 

 

 

 





 ……別にアンチ書いたつもりはないけど、ボンコッツさん本当に申し訳ない。



~割とどうでもいい設定集~


・夏油赤紗
 元ネタは呪術廻戦の『夏油傑』、プラスして屍姫の『鹿堂赤紗』。見た目は普通に夏油さん。

 ガイア連合に所属する転生者。

 基本的には物理戦闘が得意なフィジカル系異能者だが、ネクロマから派生した【呪霊操術】の存在があって物量戦には異様に強く、余程のスペック差か相性差がない限り大抵の相手は圧殺できる。
 山梨の異界の中層を含む各階層に大量の悪霊を常駐させて間引きを行わせ、その上で見覚えの成長と【呪霊操術】で使役する悪霊との視覚共有の合わせ技により膨大な経験値を得ているため、単純なスペックでも修羅勢上位に匹敵する。
 また例によって修行ハードモード受講生もであるため、戦闘技術その他も相当高い水準で保有しており、割と隙がなく原作夏油さんレベルで戦える。

 主な仕事は現地民からのカツアゲ……と称した地雷系塩漬け依頼の消化、兼、厄介系現地名家(笑)への分からせ。その性質上、地方名家を中心とした現地民からは蛇蝎のように嫌われて、そして恐れられてもいる一方で、面倒な地雷系依頼を消化してくれているため事務方からの評判は良い。
 同じ転生者を家族として扱い大事にする一方で、現地民には厳しい、というより悪質な現地民を猿と呼んで憚らないため、現地民に優しい勢の黒札とは基本的に相性が悪い。
 その一方で現地民を見下しているというわけではなく、現地民を敵視するのは名家(笑)の傲慢さ、メシア教会の非道さ、何より現地民ガンギマリ勢の見境のなさを見るにつけ、最終的に転生者達にとって最も危険なのは神々ではなく現地民の方、と考えているため。

・シキガミ 清姫
 イビルジョー。ただしサイズは元ネタの倍。
 人間形態時のビジュアルはFGOの清姫。
 製作コンセプトは『とにかく圧倒的な物理攻撃力』『巨体を生かした構成』で、理想の嫁とかは後で人間変身スキルを搭載すればオッケー、とかいう予定で製造された割と初期のシキガミ。
 そのため後で人間変身と房中術が標準装備になった事でいい空気を吸っていたりする。
 シキガミとしても規格外の巨体を持ち、それに見合った絶大な物理攻撃性能がある。実際、少し暴れただけで周囲の地形が滅茶苦茶になる程。
 ステルス系汎用スキルの多重搭載により、結構な隠密性能を持つ。
 現地人との交渉では基本的に脅し役を担当する。

・アガシオン ドラパルト
 航空管制に特化したアガシオン。ポケモン型。
 【呪霊操術】による悪霊の広域展開を行った際に、上空から戦場全体を俯瞰する形で観測情報を提供する。
 追跡以外に探知系の能力をほぼ持たない清姫に対しても観測情報を送信する役目があるため、戦闘でも間接的な脅威となる。

・鷹村ハルカ
 ボンコッツ様『霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。』より。

 仮面ライダーギルス。

 ガイア連合霊山同盟支部、支部長。
 非転生者でありシキガミ改造人間の金札異能者。

 曰く、ある種の聖人。
 または“宗教家、もしくは組織のトップ”に向いた人間。

 元々、彼が支部長になった時点で、現地人に冷たい系の黒札は息しづらいだろうな、と思ったのが今回の作品を書こうと思った切っ掛け。
 そこから設定を膨らませていって、現地人冷たい系の転生者と、現地人霊能組織との軋轢をメインに話を作っていって、結果的にこうなった。
 こうなるしかなかった、とも。

 『霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。』で言うと『【危険が】スクールライフが地獄です……【危ない】』辺りか、少し前の時期に相当する話。

 結果的にアンチみたいな話になってしまったのはボンコッツ様には重ね重ね申し訳ない。

・幸原みずき
 塵塚怪翁様『【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法』より。

 元弁護士で関西支部副支部長。基本的には事務方。ただし後にガイア連合を脱退して弁護士に戻り、その上でガイア連合(に所属する特定の黒札)の足を引っ張るよう画策している。
 シキガミはいない模様。

 ガイア連合内部のヴィラン、という非常に珍しい性質のキャラクター。
 ガイア連合内における敵を出す際にこれ以上ないくらいに便利な存在ともいえるので、一度しっかり登場させてみたいキャラ。

 基本的な性格はネットで良く取り沙汰される迷惑系ツイフェミそのもの。ただし本人は特にツイフェミ思想を掲げてはいないようで、基本的に男を見下しておりマトモに話もしないが、特に女性を尊重しているなどという事もなく、むしろ縄張りが女所帯なので日常的なパワハラの対象も基本的に女性。
 元作品では流れるような四連続のパワハラを披露しており、しかも描写からして日常的にそんな事をやっているようで……。
 さらに男性女性の差だけでなく非覚醒者も見下しているらしく、また自分より有能な相手も敵視の対象。その両方を兼ね備えた事務方の上司といえる千川ちひろをとりわけ敵視しており、あえて内部から足を引っ張るような行動に出ている模様。
 また覚醒者でも戦闘班に対しては3K仕事と見下してもいる様子。
 総合して上下横とありとあらゆる方向に敵を作っては敵対するザ・敵対者(サタン)。

 覚醒者。元作品によれば能力的には補助と交渉スキルに全振りしたような性能。
 元弁護士であり法律には詳しい様子だが、異能・オカルト絡みの知識はそれほどでもない様子。
 元作品中でもガイア連合脱退後は、ガイア連合に対する嫌がらせを行った上で抗議に来たガイア連合員を法的に訴えるために準備をしていたようだが、本家様の掲示板で遠隔呪詛がどれだけ気軽に飛び交っているかを考えると、その用意にどこまで意味があったのかは微妙なところ。呪詛とか、警察に訴えてもどうしようもないし。

・デモニカ車両
 塵塚怪翁様『【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法』より。
 『ナイト2000』のレプリカ。
 見た感じはSF的なカッコいい黒のイケメンスポーツカー。ただし2シートなのが時折足を引っ張る弱点になったりも。
 機体の電子制御部分をシキガミコアで代用した試作機。

・魔封波電子ジャー
 塵塚怪翁様『【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法』より。
 見た目は炊飯器、実質的な機能は封魔管。
 糞ボケ老人が使用したのは、元作品で使用されたモデルより少しバージョンが進んだもので、強制吸引機能が付いている。
 ただし普通の炊飯器並みに簡単に開いてしまうため、武器として使うには安全性に欠ける。

・ガイア連合自転車部
 十八様『運使い対無貌の仮面……VSメシア教会』より。
 転生夏油が使っている自転車は、元作品の主人公が使っている『WILDHUNT』と同じ技術の産物で、オカルト面の性能は似たり寄ったりだが、向こうはバリバリのイケメンスポーツ自転車、こっちは折り畳み自転車になっている。
 転生夏油が自転車部に投資した時の見返りとしてもらったもの。
 折り畳み式なので車のトランクに格納しておく事もでき、車では入れないような場所での機動力確保として役立っている。

 ぶっちゃけ異能者用自転車って、整備もまあ車やバイクよりは楽だし、物理系異能者やデモニカのスペックを考えればエンジンや燃料も要らない分エコでローコストだしで、実用性は下手するとバイク以上だと思うんだがその辺どうだろう……?

・イナバニキ&不死鳥推しネキ
 ブロウタス様『ガイア連合武器密輸課職員の日常』より。
 武器密輸課のトラポートマスター。
 能力があまりにも便利過ぎ、ノリがよくネタに走りがちな部分も含めて周りと絡みやすいため、新旧問わずあっちゃこっちゃの三次に出張っている愛されキャラ。
 ルーニー。

・暁切歌&月詠調
 元ネタはシンフォギア。

 本来は転生者。異能者として覚醒して以来、在野のデビルシフターとしてガイア連合に登録していたのだが、ガイア連合は彼女達が転生者である事を察知できておらず、また彼女達もガイア連合の転生者絡みの事情を把握していなかった。

 デビルシフターコンビ。変身先は切歌が『地母神フレイヤ』、調が『幻魔フレイ』。
 元が双子神という特性もあり、両者が意志を通じ合わせる事で爆発的なバフを引き出す事ができたのだが、ヤマノケに憑依されている間は表面的なスキルやステータスしか使えていなかった。

 救助された後は通常の治癒魔法でも治せないかなりの後遺症を追ってしまっていたが、その辺も無事に治療され、ガイア連合の黒札として登録された。
 なお治療費に加えて治療に使うシキガミパーツも夏油が立て替えた模様。

 ところでカオ転のシンフォギアキャラって、立花響だけ本家様・三次様も含めて最低三人くらいいる気がする格差社会な気がする。

・外道ヤマノケ
 テンソウメツの名でも知られる、洒落怖の悪霊。

・悪霊スケモリ
 平資盛。元々は壇ノ浦の異界にいた中ボス格悪魔。元種族は猛将。
 【呪霊操術】で操られる中では割と強いが、特級呪霊と呼ぶほどには強くない。

・縫い目スプレー
 ホビー部製のネタ霊装。
 額にスプレーすれば、吹いたインクが自動的に縫い目模様になり、誰でも羂索気分になれる。なお需要(ry。
 効果としてはテトラジャ一回分くらい。凶悪な即死をお手軽に防いでくれるので、ネタ霊装の中では結構便利な部類。
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