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一遍死んで生まれ変わって、この世界がまだ普通の現代日本社会だと信じていた僕は、しかしこの世界に自分以外の転生者が割と大勢いると知っていた。切っ掛けは、まあ気まぐれにネットサーフィンしてた時に見つけた、転生者同士で駄弁る掲示板。
で、同じ前世持ちに会えたという嬉しさと気安さもあって、しばらくその掲示板に軽く書き込みしたりしつつ雑談していたりしたのだが、だいたい僕がその掲示板を見るようになって半年くらいたった頃だろうか、僕達の内の誰か一人が、この世界がメガテンの世界だと気付いた。彼だか彼女だか知らんその誰かの書き込みに貼られたリンクを辿って僕が見たのは、メガテン世界の中でも最悪のカルト宗教団体メシア教のホームページ。それを目にしたその瞬間に、僕は覚醒していた。
曰く『────我は汝、汝は我。我は汝の心の内に潜むもの』と。何か特別な努力の必要もなく、何か特殊な体験や修行をしたわけでもなく、そんな声が脳裏に響いて、僕はペルソナに覚醒した。
その衝撃で思わず放心している内に、僕と同様にこの世界がメガテンである事を悟った転生者達によって掲示板のレスが進んでいき、その当時から護国の異能者だった神主、後の通称ショタオジの提案により、富士山麓にある彼の神社で開かれた霊力修行オフ会が開かれることになった。
そのオフ会の修行、座禅とか暗闇体験とかの優しいコースと、アホみたいな勢いで臨死体験を繰り返すとかいうハードモードの二種類があったのだが、その時既に覚醒済みで割と心に余裕があった僕は楽な方を選択。で、ざっと3分間ほどの座禅体験と、30分くらいの居眠り体験を経て、特に何か苦労するとか疲労で気絶するとかそういう事もなくさらに第二段階の覚醒を果たし、悪魔変身能力者デビルシフターとして、妖獣ヌエの姿への変身能力を獲得していた。
同じく参加した同輩の中には必死に臨死体験を繰り返して、心にトラウマを幾つも作るようなキツい修行の果てにようやく覚醒した挙句、引いたスキルが噛みつきだとか、ペルソナ能力を獲得してもペルソナがスライムだったりとか、そういう人達を見ると、割と申し訳ない気もするのだが、まあそれはそれとして。
ともあれ無事と言う以外に何一つ言う事もないくらいに無事に二重の覚醒を果たした僕は、そのままショタオジの紹介でいくらかの仕事をやるようになった。小さな事故物件の悪霊駆除や、ちょっとした祟りの除霊とか、そんな感じの簡単なのから始まって、最終的には小規模な異界の攻略とか、そんなの。
僕の場合はそもそもスタートダッシュからしてペルソナ使いとデビルシフターの同時発動で、レベル1の段階からレベル15くらいの戦闘力を発揮できるとかいうチート臭いアドバンテージがあったからして、依頼をこなすのも割と簡単だった。
んで、そうやって異能者として経験を積んでいく傍ら、ショタオジに術を習ったりもしていた。僕のペルソナ『ドウマン』は要するに“芦屋道満”、つまりは日本史上で最も有名な陰陽師である安倍晴明のライバルとして、安倍晴明に引っ張られる形でそこそこ有名になっている悪役陰陽師であり、その能力を技能として引き出す形で術を覚えていった。今では白フンドシとか言われる簡易式神“妖鬼シキガミ”くらいなら一人でも片手間に作れるし、頑張れば本格的な式神制作も行ける。それ以外にも結界やら何やら、一端の陰陽師みたいな事は一通りできる。
僕が当時、時間に比較的融通が利く大学生という立場だったのも割と大きい。大学一年の時にうっかり必須科目を一つ取り忘れたせいで、その科目を取り直すためだけに一年留年する羽目になり、そのせいで大学最後の一年などは一週間の大半が休日とかいう狂った時間割だったという事もあって、結構な時間を異能者としての活動と修行に当てる事ができたわけだ。
で、そうやって特に壁にぶつかるとかそういう事もなく、異能者として順当に成長して、今に至る。
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単調なエンジンの駆動音に合わせて、薄暗い地下道の光景が背後へと流れていく。緩やかに蛇行しながら複雑に枝分かれして入り組んだ地下道は、どこから入ってきたかも分からない茫洋とした昏い血色の光だけを光源として人を拒絶するような闇の中に沈んでいる。地下道を吹き抜ける冷たい風に乗って細かいゴミや埃が飛んでいくのが、余計に寒々しさを増幅していた。
しばらく車を走らせていると、隣の車線の向こうから何か重々しい駆動音が近づいてくる。とりあえずぶつかる事はなさそうなのでそのまま車を走らせていると、やがて向こうから走ってきた“地下鉄”が、巨大な金属が噛み合う轟音を上げて対向車線を走り去っていく。
────ここは地下鉄。厳密には、地下鉄の環境を模倣した特殊異界『メメントス』。大衆の集合意識と直結した認知異界であり、メガテン世界屈指の厄ネタの一つ。僕が日常的にレベル上げのための狩場にしながら探索を続けている異界である。
ここメメントスは探索するための敷居が非常に高く、日常的にここを探索の場にしているのは現状、ガイア連合の中でも僕一人しかいない。
認知異界であるメメントスではペルソナ使いしか侵入・活動できない。そういう意味では『タルタロス』や『マヨナカテレビ』などのように似たような認知異界は存在するが、それ以上にここの探索は、メメントス自体が単純に途方もなく広いという一点がネックになっていた。
普通に入ることはできる。だが、奥まで届かない。距離があり過ぎて、日帰りとか絶対無理。少なくとも水と食料、ついでにキャンプ装備とか色々と山ほど欲しい。
前世の世界における女神転生シリーズでメメントスが登場したのは『ペルソナ5』の話であるが、その時の主人公パーティですら“モルガナカー”という車両型の移動手段を必要としていたように、広過ぎるこの異界を探索するためには何かしらの移動手段を持ち込む必要があるのだが、しかしペルソナ使いしか侵入できない認知異界に通常の車両は持ち込めないため、何かしら裏技的な手段が必要となる。
僕の場合は悪魔召喚技能を持つペルソナ使い、という事で、自動車型の悪魔『外道クリス・ザ・カー』を召喚し、モルガナカーの代わりの移動手段として活用している。基本的にスタイリッシュなスポーツカーの形態がトレンドのクリス・ザ・カーだが、僕が使役する個体の場合は見た目地味な黒のハイエースだ。
この辺に関しては、ペルソナ召喚機能を搭載して認知異界に侵入できるようになった式神とか、式神を制御コアとして組み込んだデモニカ仕様装甲車といったイロモノ技術がガイア連合で研究されていたりするため、その辺が完成できればそれぞれの技術を統合する事で認知異界の内部でも活動できる装甲車なんていう新装備が完成するんだろうけれど……それもまだまだ先の話である。
薄暗い地下道を走りながら運転席から横目でガラスを見ると、そこに映る顔はどこか自分のものとは思えず余所余所しい。切れ長の吊り目は険の強い印象を与えるが、鼻筋の通った秀麗な顔立ちは癖の強い黒髪と併せて舞台俳優と言われても違和感がない程に整っている。
総じて眉目秀麗な、一言でいえばイケメンである。一般受けしそうなアイドルとは路線が異なるものの、少女漫画や乙女ゲーであれば主人公と敵対する美形悪役としての需要はありそうな、そんな感じの顔つきだ。
もっとも僕と同じ転生者であれば、こんな風に言うだろう────『無惨様』と。
鬼舞辻無惨────前世において国民的な人気を誇った漫画の一作品に登場する悪役だ。千年前から生きる吸血鬼っぽい人喰い鬼の原種であり首魁、主人公にとっては家族を惨殺して妹を鬼へと変貌させた憎き仇。ついでに、味方側の登場人物の大半にとってもだいたい憎悪すべき仇でもある。
ワンマン、気まぐれ、傍若無人、無慈悲、残忍、極悪非道とロクでもなさを極め切ったかのような人格の持ち主で、彼が部下の前に姿を現す時にはだいたい罵倒か処刑、もしくは両方が飛んでくる。挙句の果てに作中では幹部級の鬼の殺害数において主人公を差し置いてトップとかいう訳分からん成績を残していたりもする、最悪のブラック上司だ。
で、僕の名前は『奇仏寺無漸』。出来過ぎているとしか言えないシチュエーションではあるのだが。
「はぁ」
「どうかしたかお?」
と、溜息。色々とどうでもいい事をゴチャゴチャと考えていると、後部座席に座っていた同行者である小太りの青年『入即出やる夫』が気づかわしげな視線を向けてくる。
覚醒してペルソナ能力に目覚めたはいいが、得たペルソナが『愚者・スライム』とかいう残念ペルソナ使い────通称“スライムニキ”。しかし、それはそれとして戦闘時の動きは割と機敏かつ的確で、総じて優秀なアイテム係。ついでに指揮官としても、戦闘以外の実務にもとにかく優秀。そんな感じの、パーティ追放されたらチート最強スキルに目覚めそうなキャラがやる夫さんだ。
普段は他のペルソナ使い達と組んでここと同じような認知異界『マヨナカテレビ』の探索を行っている彼だが、今日は都合により他の面子が揃わず一人で異界に突入するとかいう無茶をやろうとしていたところをショタオジに捕まり、ちょうど実験のためにペルソナ使いの人手を欲しがっていた僕のところに連行されてきた、という訳で。
「やー、未だにコレが自分の顔って気がしなくてさー」
「ふーん、あの見た目無惨ニキにもそんな悩みがあったとは、やる夫も感無量だお。でもまあ、その辺は転生者にはたまにある事だお。翠や銀も前に似たような事を言ってたお」
実際問題、僕は“無惨様”ではない。あそこまでパワハラできないし、あんな風に口も回らない。どうやったらただ単に口を開いただけであんな風にペラペラと人を煽ってマウントを取りまくる事ができるのやら、どうにも理解しがたい話だ。
要するに、僕は自分を“鬼舞辻無惨”と同一視できない。せいぜい見た目だけのファッション無惨様といった程度。だからまあ、これが僕なのだ、と割り切って生きていくしかないのだろう。
「まあ、そこまで深刻に悩んでる訳じゃないから、気にしないで欲しいかな」
「ならいいけど……っと、前、前、誰かいるお!」
とやる夫さんが前を指さして全力で注意を喚起する。スルーして走り去るつもりだったが、とりあえずここで用事を済ませてしまうのもいいだろう。僕は一気にハンドルを切りながら、躊躇なく全力でアクセルを踏み込んだ。鈍い激突音が響き、車体側面に走る軽い衝撃と共に、黒い人影が吹っ飛んで地下道の壁に叩き付けられる。
「ちょっ、無惨ニキ轢いた! 轢いた! 今思いっきり人撥ねたお! しかもアクセル踏んだし、今!」
「やる夫さんちょっと落ち着け。ここはメメントスの中だ。バレなきゃ犯罪じゃない……じゃなくて、どうせシャドウしかいないんだから轢いても問題ない」
「…………今、洒落にならない問題発言を聞いたような気がするお」
僕とやる夫さん、そして後部座席に乗っていたメディアは揃って車を降りる。そこでは、先程吹っ飛んだ人影が複数に分裂して影の塊となり、そこから溢れ出したマグネタイトから実体化してシャドウが形成される。現れるのは山羊のように湾曲した大角を持つ黒馬が二頭、頭部に大輪の花を咲かせた小人が一体。レイピアを手に直立して真紅のマントを羽織った銃士風の猫。
それに対峙するように僕とメディア、やる夫さんがそれぞれ戦闘態勢に入る。僕とやる夫さんがペルソナを召喚し、僕はさらに悪魔変身と悪魔召喚、召喚するのは邪鬼ウェンディゴと邪神バフォメットに加え、大鎌を携えた細身の人型悪魔『悪霊マカーブル』だ。同時に杖を構えたメディアが、頭上に浮かんだ円盤型のペルソナで敵集団を素早くアナライズする。
「妖獣バイコーン、妖樹マンドレイク、妖精ケットシーです。どれも危険な耐性はありません」
「オッケ、じゃあ早速だが実験開始と行こうか。やる夫さん、準備はいいか?」
「……あ、ちょっと待って今出すお!」
気合を入れたところで先走り。ガックリと気が抜けるが、まあ仕方ない。頭上に不定形の粘体型ペルソナを浮かべたやる夫さんが、足元に置かれた大型のボストンバッグを漁って、中から布の塊のようなものを引っ張り出す。
認知型異界で稼働する式神、を目指して作成した試作型式神ボディだ。未契約のために未だ実体を持たない式神は、即席で契約を済ませたやる夫さんの手によってマグネタイトを注がれ、カラッポの風船に空気を吹き込んだかのように実体を作り出していく。
完成したのは一体の式神『プロトアイギスNo.16』────何かカッコいい名前に反して、白いペラペラのロール紙に顔代わりのへのへのもへじと『あいぎす?』という謎文字列を描き、ひょろりとした紙っぺらの手から丸めた新聞紙みたいな紙製の棒を持っているだけの紙製一反木綿。
「これがやる夫の、初めての式神……………………美少女にしろとか言わないから、せめてもっとマトモなデザインにできなかったのかお?」
「いや、あくまでこれは動くかどうかも分からない試作体だし、そんなものにそうそう労力注ぎ込むわけにはいかんでしょ。だから基本、手抜き。動くかどうかの検証用だからね」
素材の霊紙や霊墨にメメントス由来の素材を使っただけの粗製式神、レベルは1だ。スキルもなく、戦力としてはレベル0の非覚醒者よりはマシ、という程度。そんなプロトアイギスは手にした紙棒を振り上げ、迫るシャドウの群れを威嚇する。……あまり通じているようには見えないが。
ペルソナの能力で悪魔召喚を行う僕が使えば、どんな式神であれ普通に動く。だが、それでは実験にならんので、僕に同行して実験に付き合ってくれる他のペルソナ使い、つまりは今回のやる夫さんの手が欲しかったわけであるが。
「とにかくやる夫さん、プロトアイギスに何か命令して。ぶっ壊される前に動くかどうかだけでも確かめて」
「あーもう、しょうがないお! 十万ボルトだお、プロトアイギス!」
やる夫さんの適当な号令に従って、プロトアイギスは動こうとした、らしい。カタツムリが這うような動きでじわじわと紙製の棒を持ち上げるが、応戦するような余裕もなく簡易式神はケットシーの剣で穴だらけにされ、マンドレイクに引き裂かれ、トドメにバイコーンの蹄で踏みにじられて消滅する。
やはり、まだ戦闘は無理、か。というか、どう見ても戦闘以外は無理。実戦テストというからにはまずは戦闘、と意気込んだはいいが、無茶ぶりもいいところだったようだ。リカームを使えば一発で治せるからいいが、今度はちゃんとしっかりマトモな動作確認から始めるとしよう。
「プロトアイギスぅうううううううッ!!」
仮とはいえ自身の式神を喪ったやる夫さんの悲痛な叫びがメメントスの地下通路に木霊する。そんなやる夫さんの様子を他所に、僕は使役する悪魔たちに命令を下した。マカーブルが大鎌を振るい、ウェンディゴが鉤爪を振り上げて飛び掛かり、その背後からバフォメットが怪しげな呪言を口ずさむ。
その様は先程の焼き直しのようで、しかし蹂躙される側は全くの逆。ケットシーの首が斬り落とされ、バイコーンの首が乱暴にへし折られ、マンドレイクが木っ端微塵に弾けて散った。元々コイツらはシャドウとしては弱小もいいところ、戦力差は圧倒的にこっちの方が上だからして、戦えばこっちが蹂躙する側なのは当然だ。でなければ実験などやらない。
「プロトアイギス……せめて安らかに眠ってくれお……」
「メディア、リカーム」
「はい、任せてください」
仮初とはいえ自身の式神の死を悼んでいるやる夫さんを他所にメディアが蘇生魔法を放ち、プロトアイギスを復活させる。先程と大差ない状態まで復旧したプロトアイギスは、フヨフヨと地下通路の中空を漂い始める。そこに自分の意志があるのかどうか、知らんけど。
復活したプロトアイギスに抱き着いてその生還を喜んでいるやる夫さんを他所に、とりあえず僕とメディアは今回の実験を総括する。
プロトアイギスはとりあえず、動いた。だが不完全だ。鈍重どころではないスローモーションのような動きしかできない。これは単純にレベルを上げれば解決するのか、それとも何か別の手段を取る必要があるのか。それすら未だに分からないが、とりあえずフォルマを使えば式神の稼働はギリで可能。それが分かっただけでも十分、か。
◆ ◆ ◆
メメントスのこの辺で出てくるシャドウは、割と弱い。ぶっちゃけ最底辺レベルだ。それはプロトアイギスの運用実験のためでもあり、そして同時に未だ戦闘力に大した向上が見られないやる夫さんに配慮しているためでもあるのだが。
「これは……どうも複雑な気分だお」
「ですか? まあ、確かにリアルパワーレベリングって割とやるせないかもしれないですね。やられてる側にとっては、割と」
実験もとりあえず終了という事で、ここに来たもう一つの目的であるやる夫さんのパワーレベリングに取り掛かったのだが。戦力差もあって周りのシャドウをハイペースで駆逐していく僕の仲魔達の背中をぼんやりと眺めるやる夫さんは、浮かない顔をしていた。
「やる事が何もないお。いつもなら後ろからアイテム投げるくらいはできるけど、今日はその必要もなさそうだし」
「暇ですか?」
「うん、まあ……」
本当は、暇という以上にコンプレックスやら何やらで悔しくもどかしいのだろうが、それを僕が言っても嫌味にしかならないというのが、こちらとしてももどかしい……などと思っていると。
「なるほど。これが負け犬というものですね! マスターの漫画で学習しました!」
「ちょっ、メディア! ストップストップ、それを口に出すのはアウト!」
対人関連が色々と未熟な式神による爆弾発言に胸を抉られて、やる夫さんはその場でガックリと膝を突いた。背中にどんよりと暗雲のようなオーラが澱んでいるのが、目には見えなくとも心で感じ取れる。それくらい落ち込んでいるのが目に見えて分かる。
「…………何も言わなくていいお。本当は、やる夫だって分かってるお。やる夫のペルソナはスライムだし、どこまで行っても最弱だお。同じ転生者でも他の皆は強いし、才能あるし。ならやる夫も、とか思って努力してみても、結局はこれだし。結局、やる夫には才能なんてないんだお……」
何と言っていいか、何と言えばいいのか……こういう時、どういう表情をすればいいのやら、アレだが。
ただ、いくらか気になる事があるのだ。
「……才能がない、ってのも気になりますけどね。本当に才能ないんですかね、やる夫さん」
「慰めならいらんお。今までいろいろ試してみたけどダメだったし、いい加減やる夫も身の程を理解する頃合いだお」
「いえ、そういう意味じゃなく、単純に疑問としての話です」
まあ確かに転生者の中には戦闘が伴うレベル上げをリタイアして事務方や技術屋に転職する連中も多いわけだが、それは決して才能に限界が来たとかそういうのではなく、単純に性格や能力が戦闘に向いておらず精神的に参ってしまったり、あるいは他に興味がある事を見つけてしまったり、とかそういう理由によるものだ。
魔法スキルを習得した異能者の中には初期スキルが超高消費の『アンティクトン』だったためにMP不足で撃てないとかいうハンデを抱えていた例もあったが、それとてレベルが上がればMPも増えて、今では数発程度ならアンティクトンを撃てるようになったと聞いている。
その中で、やる夫さんだけが例外的に才能がない、などという事があるのだろうか?
「メガテンの中でも色んな作品があって、色んな悪魔が出てきますけど、作品ごとにスキルや耐性が違う悪魔なんて割とよくあります。例えばミトラなんて種族まで変わりますし。やる夫さんのスライムはどんな感じなんですか?」
「間違いなく、どれでもないお」
「でしょうね」
やる夫さんの持つペルソナ『愚者・スライム』はそもそも耐性がおかしい。呪殺無効、火炎・氷結・電撃・衝撃・破魔弱点とかいう、明らかに原作のスライムより冷遇された耐性。
僕の記憶ではどのメガテンのスライムも最低限物理耐性は持ってたし、それ以前に四大属性に対しても弱点は火炎だけだった気がするが。
「やる夫さん、メガテンのスライムの設定って知ってますか?」
「スライム、かお? やる夫はペルソナしか知らなかったけど、何かドロドロした粘液生物じゃないのかお?」
「いえ、違います。あれだけ、悪魔としては少し特別なんです」
女神転生における外道スライムとは、数ある悪魔の中では例外的に何らかの伝説・神話伝承に基づくものではなく、生体マグネタイトが欠乏して実体化に失敗した悪魔の成れの果てなのだ。だから女神転生シリーズの華ともいえる悪魔合体において時折発生する合体事故で生み出されたりする事もあり。
「だったら、やる夫さんのスライムもまた、何か強力なペルソナの“不完全体”って可能性もあると思います」
「この、役立たずのやる夫のスライムが……?」
「ええ。あくまで可能性として、ですが。その場合、考えられる原因としてはまず一つ、単純にやる夫さんのレベルが足りない可能性。あるいは、ペルソナ能力が開花した時の覚醒が不完全で、いまだ“半覚醒”とでもいうような状態にある可能性ですが」
と、ようやくネガティブ思考の堂々巡りをやめて顔を上げたやる夫さんに考察を解説していく。解決策は、原因が前者であれば単純なレベル上げ。後者なら、それこそショタオジのところに行ってもう一度覚醒修行を受け直すしかないだろう。
「や、やる夫にそんな可能性があったなんて……これは死ぬ気で修行するしかないお……! やるしか……やるしかない……! いつやるの、今でしょ!!」
「ま、どっちもすぐに上手く行くようになるような話じゃありませんけどね」
と、僕は肩をすくめて話を締め括る。いつの間にか、やる夫さんもすっかりやる気を取り戻していた。だがまあ、とりあえずの解決策としては、だ。
「そういえばやる夫さん、この間の宴会の時、隠し芸で割と器用にスライム動かしてましたよね」
「ああ、イタコ連盟の時かお。本当は何か武器にならないかって特訓した成果だお。まあ結局、アレくらいにしか使えなかったんだけど」
と、やる夫さんの頭上に出現した粘体のペルソナは器用に形を変えて、富士山や日本地図、ジュネスのロゴ、ジャックフロストの姿、と多種多様に形を変えてみせる。その形は驚くほどに精密で、単なる芸だとしても相当なレベルに達している事は間違いない。
「そのスライム、全身に纏ってパワードスーツみたいに動かせないんですか?」
「……何と!? なるほど、確かにその可能性はあるかお。……じゃ、ちょっとやってみるお」
やる夫さんのペルソナである不気味な緑色のネバネバがウネウネと形を変えて、やる夫さんの身体へとまとわりついていく。数秒かけて、やる夫さんの身体は首から上だけを残して全身をペルソナスライムに取り込まれていた。
「どこからどう見ても捕食シーン……」
「うるせー。とにかく動いてみるお!」
と、やる夫さんは最初はゆっくりと、途中から段階的にスピードを上げて軽くパンチやキックを繰り出してみせる。その動きはまだまだスライムに振り回されているようでぎこちないものだが、それでも最初だというのにある程度形になっている事が驚きだ。
「ふん! ぬ! はっ! …………なるほど、これ滅茶苦茶大変だお! 集中力がキツイ!」
「そりゃそうだ……そうだ、近接戦するならこれ使うといいですよ」
と、僕は一応の手持ち武器として持ってきていた代物をやる夫さんへと投げ渡す。ヌエの姿に変身したらどうせ使えなくなるので、やる夫さんが使うのがいいだろうし。
「これは?」
「技術部が制作した新型の量産型霊装の試作品、聖剣サトシカリバーです。現在試験モニター募集中だとかでもらってきたんですけど。試しに使ってみてください」
サトシカリバーを受け取ったやる夫さんは、いかにも疑わしそうな顔でサトシカリバーを確認する。まあ、そりゃ疑いたくなるような外見だ。どこからどう見ても見た目は普通の金属バット、強いて言うなら側面に“悟史”と書かれているくらいで、どこぞの野球少年の落とし物だと言われた方がまだ信じられる外見だ。
「見た目はアレですが、単純に銃刀法対策です。普通に鈍器ですから、武器としては十分実用範囲ですよ。グリップの内側に仕込み芯があってそれを換装する事で武器属性を変更できる仕組みなんですけど、今実用化してるのは氷結と呪殺タイプだけだそうです」
単純に、制作に協力させられていたブスジマ君の得意属性というだけだが。ちなみに今は呪殺属性なので、問題の金属バットからはモヤモヤと禍々しい黒のオーラが立ち昇っているのが分かる。聖剣とは一体何だったのか。
「これなら多分行けるお! よし、一番やる夫、行きまぁすっ!!!!」
「ちょっ、やる夫さん一人で突進しないで……ああもう、仕方ないアンズー!」
仲魔を呼び出してやる夫さんのフォローをさせる。囲まれそうになってたらザンマを連射して適度に敵を追い散らし、背後を取られそうになればジオンガを落として妨害する。加えてスクカジャを飛ばしてやる夫さんを背後から支援。
それに合わせてバットを振り回し、次から次へと敵を殴り倒していくやる夫さん。動きはぎこちなく、素人臭さが抜けない芋臭いものだが、それでも行動に遅滞はなく危なげなく敵を狩っていくのは、やはり実戦経験の有無が物を言うのだろうが。
「行ける! これなら行ける! やる夫の時代がやって来たんだお!」
「ああ、もう。危なっかしいな……」
頭を残して緑色のネバネバで全身を覆い、呪いのオーラを立ち昇らせる金属バットで襲い掛かる男。どう見ても地獄絵図だ。やる夫さんは手にした金属バットで片っ端から悪魔を殴りつけて追い散らしていく。ジャックランタンの頭をカチ割り、ピクシーを虫のように叩き潰し、バイコーンの頭の角をへし折って、逃げるインキュバスには腕のスライムを触手のように伸ばす自称ズームパンチで捕獲してそのまま手元に手繰り寄せて握り潰す。その内に慣れてきたのか、直接的な物理攻撃だけでなくスライムの偽足を鞭のように伸ばしてオールレンジ攻撃のごとき奇襲技まで使い出していた。
まさしく獅子奮迅、実際に今のやる夫さんの動きは相当なものだ。武器の振り方は素人同然、自分の手で武器を振り回すような物理スキルも何もないから爆発力にも欠けているが、それを補って余りある程に、レベルに比して不相応な程ただ単純にステータスが高い。
スライムペルソナのスペックがそのまま彼自身の身体能力へと上乗せされているのだろう。不定形という比較的珍しい性質を持つやる夫さんのペルソナは、今ここに至ってわずかな例が報告されている武装型のペルソナと同じような性質を発現させていた。
加えて戦術判断も実に的確だ。回復役、指揮官、アタッカーと脅威になる順番を的確に把握して一気に間合いを詰め、重要度の順に確実に叩き潰していく。
「おお、すごいすごい。まさか、あんな適当なアドバイスであんなにも変わるとは……」
「適当だったんですか、マスター?」
「まあね」
うん、まあ。超適当。ぶっちゃけ漫画かラノベでちょっと読んだだけのネタだし、実戦レベルで使えるようになるとは思ってなかった。だがそれにしても随分な動きだ。今もケットシーの首をへし折り、背中から殴り掛かってきたインキュバスに向かってスライム鎧から伸びたスライムの先端が絡みついて吸血、それに合わせて振り向いたやる夫さんが振ったバットが、干からびたインキュバスの頭を弾けたザクロのように粉砕した。残されたシャドウは既に一体。
バットを構えたやる夫さんは、翼を広げて槍を振り上げ構えるコッパテングに向かって一直線に駆け出していた。そして。
「後はお前だけだお! これで、終わりだおぉおおおおおおおおおおッ! ────痛ぁっ!?」
ぐきり、と、嫌な音がした。構えたバットがコッパテングに届く前に足を踏み外したやる夫さんが盛大に転倒し、そのまま顔面でコンクリートの床を削るようにして倒れ伏した。先程までは鎧のように全身を覆っていたスライムも、今は力を失ったように萎れ、やる夫さんの身体の下で緑色の粘液で水たまりを広げている。
「あー…………こういうオチが付いたか。はぁ、しゃーない。スケさんカクさん、ブチ殺してしまいなさい」
僕の命令に応えて、マカーブルとバフォメットが前に出る。バフォメットが伸ばした指先に灯った血色の炎が膨れ上がって蛇のように伸び、マカーブルが振るう大鎌へと絡み付く。魔法の業火を纏った大鎌を一閃し、マカーブルがコッパテングを一撃で両断した。
後はやる夫さんを治療するだけ、なのだが、何か割とヤバそうだ。コケた事よりも何よりも、足があらぬ方向へと曲がっている。
「……メディア。あれ、何とかなるか?」
「ええ、はい。じゃあ、やってみますね」
歩み寄ったメディアはやる夫さんを無造作に引っ張り起こすと、その足を掴んで無理矢理押し込んだ。ごきん、と再び似たような音がして、驚いた事にやる夫さんの足が元に戻る。どうやら本格的な骨折ではなく、単なる脱臼だったようだ。
関節を嵌め直したメディアはその上から軽く治癒魔法を掛けて処置を終えると、そのままやる夫さんを放置して戻ってくる。やる夫さんはさっきまで外れていた膝を押さえて呻きながら、どうにか自力で立ち上がった。肩を貸そうとした僕の行動は空振りに終わったが、まあそれはそれでいいのだろう。
「痛たたたたたた……一体、どうなったお?」
「関節が外れたみたいです。今、メディアに治してもらいましたけど」
「一度関節が外れるとまた外れやすくなってしまうそうですけど、その上に治癒魔法を掛けるとそれを防ぐ事ができるそうです。マスターが脱臼する前に実地で試せて良かったですね」
にこやかにそんな事を言うメディアから、僕はそっと視線を逸らした。そして、ついでに話題も逸らす事にして。
「……にしても脱臼とは。一体、何がどうしてそうなった?」
「多分ですけど、関節が間違った方向に力が加わったのかと。ほら、人形の腕なんかを曲がらない方向に無理矢理曲げようとしたような、そんな感じです」
「あー…………そういう。つまりはパワードスーツの操作ミスか!?」
なるほど。あのスライムパワードスーツ、要はスライムを適当に動かしているだけだから、慣れないと普通にこういう事が起こり得るのか。うっかり間違って手足を間違った方向に曲げようとしたり、と。これが首だったら、悲惨な事になっていたな。
「まあ、でも良かったお。これでやる夫も立派な戦力! もうこれからは最底辺のスライムペルソナの雑魚だなんて言わせないお!」
「でもやる夫さん、回復魔法持ちがいない場所で練習しようとしたら駄目ですからね」
「………………何のことかお?」
いや、当たり前だろう。ちょっとしたうっかりで骨折が起こりかねない技の練習をするなら、回復要員を待機させておくのは当然の事だ。下手をすると、誰にも見えない場所で勝手に首を折って、そのまま御臨終なんて事も起こり得るのだし。
絶対やる気だったな、と予測しつつ、駄目ですからね、と僕はさらなる駄目押しをした。
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まあ、大変だった。
でも、今日も楽しかった。それだけ。
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山梨県のそこそこ大きな地方都市の端の方、某団体の山梨支部からのアクセスもそれなり程度にはいい、そんな場所。割と山沿い、山からはみ出した森の木立に半ば埋もれるようにして小さな神社が建っていた。落ちた夕日が地平線の向こうへ消えていこうとする残照が、青紫の闇に淡い色合いを交える中、その神社は静かに薄闇の中に埋もれていた。
その神社の傍らにある小さな駐車場へとクリス・ザ・カーを停車させた僕は、メディアを伴って車を降りると、クリス・ザ・カーを封魔管へと再封印する。黒いスモークガラスの不審者仕様ハイエースがマグネタイトの塵に融けて封魔管の先端へと吸い込まれていく。いわゆるモンスターボールだのポイポイカプセルだのといったそっち系技術だが、本当に便利なものだ。
この神社を取り巻く小さな森は、ショタオジが管理する『星霊神社』から遠隔で一括管理されている小霊地の一つであるが、そこが現在の僕の拠点だった。石段を上がって鳥居をくぐり、神社の前で割と適当に二拍一礼、作法なんかは結構いい加減ながら一通りの礼を済ませると、社の裏手へ回る。
そこに建っていたのは、割と寂れた神社の規模からすると不釣り合いに大きな社務所の建物だ。二棟に別れた社務所の北棟に回り、神社という宗教施設には不釣り合いなカードキーでの認証を済ませてドアを開けるとその中は、直径数メートルの大型鏡と榊を組み合わせて作られた神籬を中心にして、その周囲に最先端のものを含む大学顔負けの実験機器が配置された、宗教施設と研究施設の合いの子のような空間だった。
その片隅に肩身が狭そうにソファと小テーブルで配置された応接スペースに、小さな人影がある。セーラー服の上からサイズの合わない白衣を羽織った、亜麻色の髪の幼い少女『レオナルド・ダ・ヴィンチ』。この研究所専属の式神でもある彼女は、僕とメディアの姿を認めると嬉しそうに顔をほころばせた。
「おや、お帰りマスター君。実は、またマスター君の仕事ができたところでね。さすがにこの時間に仕事を始めてくれとは言わないけど、とりあえず報告だけはしておこうと、こうして待ってたんだ」
初期のガイア連合内部では珍しく割と本格的な術が使える陰陽師でもあった僕は、しかし同時に“メメントス攻略可能”“対メシアキラー”という特性を持つために、三種類もの重要案件を同時進行させるため、他のメンバーと一緒に作業するのが難しく、結果としてここに独立した工房を与えられ、メメントスと工房をのんびりと往復しながら、時折ショタオジからの呼び出しで対メシア戦にスクランブルするという感じの、割と悠々自適な生活を送っていた。
そんな僕をサポートするための工房専属式神がダ・ヴィンチであり、単体での戦闘能力がほとんど存在しない代わりに製作・科学・魔術・芸術関連の汎用スキルを詰め込まれ、研究や制作関連で大活躍してくれる。というか中級クラスの式神なら彼女一人でも割と何とかなる。
ちなみに一番助かるのが、式神ボディのガワの制作だ。僕にその辺の芸術スキルなんてあるわきゃないので。
「ショタオジが? っていうか、この研究スペースまた物増えてないか? っていうか、アレか! 最近開発されたとかいう、式神用の生体パーツ!」
応接スペースを圧迫しないギリギリの配置で隣に置かれた、ちょうど人間の身体がすっぽり収まりそうなサイズの大型ガラス筒が四つ。エメラルドグリーンのマグネタイト光を帯びた培養液で満たされたその中にはそれぞれ一つずつ、穏やかな表情を浮かべて目を閉じ浮かんでいる幼い少女の姿があった。
ショタオジ同様に陰陽師としての能力を持つ僕に回されてくる仕事には、式神製作なんてのもある。だからそっち系の仕事だと思ったのだが。
「ガワはもう出来ているのか。じゃあスライムコアの降霊と術式の固着をすればいいのかな」
「いや、それももう神主さんが済ませてる。マスター君は、この子たちの起動をして欲しいんだよ。この研究施設の専属式神にするために作られた子達だからね、登録上はこの施設の式神って事になるけど、その辺は私と一緒で、契約者は所長であるマスター君って事になる」
ダ・ヴィンチが自分で解析した術式の構成表を見せてくるが、上手く読み取れない。ショタオジの術式が高度過ぎるせいで、天才キャラのガワを模してはいても一介の式神でしかないダ・ヴィンチには解析し切れず、また陰陽師としては駆け出しでもヘッポコでもないにせよショタオジほどのレベルに達しているわけではない僕には理解し切れない、という事。
だが、この四体の式神が、ガイア連合に所属する一般的な転生者に与えられる通常型の式神とは随分と異なっている、というのは理解できる。
「これは……スライムコアのベース悪魔の性質を束縛封印するだけじゃなく、さらにその性質を引き出すような? 性質っていうか、能力? 権能? でも実際問題そんな事できんの? いや確かにアホみたいに高度な術式なのはまあ理解できるけど……この神社の結界と連動して機能する仕組みになってる……むしろ独立稼働して結界と同等の機能を実現? そういえばメディアとダ・ヴィンチの二人にも似たような術式が組み込まれたような気がするけど、それとも微妙に違うな。あー駄目だ、さっぱり分からん! ……ダ・ヴィンチ、この子たちの仕事は?」
「施設の保全要員だって。神社の結界の整備とか、料理とか掃除とか、その辺の雑用をやってくれる子らしいよ」
……雑用、ね。いまいち微妙な説明に、僕は未だ培養液の中で眠る四人の少女に視線を送る。危険なものは感じない、むしろ僕の心の中に住まうペルソナの方がよほどに危険なくらいだ。だが、どうにも理解できないのはその目的。
「施設管理なんて、それこそ簡易型の一反木綿型式神で十分な仕事なのに、どうしてまたわざわざオーダーメイド仕様の高級……っていうには設計ベースは試作量産型のヤツみたいだけど、ともあれ式神を送り込んでくる? つか、メディアとダ・ヴィンチに加えてこの子らで合計六人? 式神多過ぎじゃね?」
ただでさえ注文が殺到しまくりで競争率が死ぬほど高いオーダーメイド式神を、合計六体。その内の五体は施設に所属する、といっても、そもそもその施設自体が僕のために存在しているようなものであるからして、実質的に六体全て僕の式神という体になる。
「……うーん、これ、分かんないね」
つか、考えようにも頭が上手く回らない。疲れてるんだろう。
「まあ、仕方ないさ。疲れた頭で考え込んでいても頭が痛くなるだけだし、今日はお茶でも飲んで、晩御飯食べて、風呂に入って、ゆっくり休んでおくれ。晩御飯はいつものガイアカレーが冷蔵庫にあるから、メディアに暖めてもらうといい」
「そうする。じゃあ、後を頼んだ」
なるほど、それが一番の道理だろう。馬鹿の考え休むに似たり、疲れ切った頭の働きはそれこそ馬鹿にも劣るだろう。とりあえずメディアが夕食を用意してくれるらしいので、出来上がるまでの数分間、軽く仮眠を取るとしよう。
「ふふ、じゃあ私が膝枕してあげよう。ああ、マスター君は本当にかわいいなあ……」
耳に心地いいダ・ヴィンチの声を聴きながら、僕の意識はそのままゆっくりと睡魔に呑まれていった。
スライムニキの関連で外道スライムについて調べてみたら、作品によってはメギドラオンを覚えるスライムがいて爆笑。
~割とどうでもいい設定~
・プロトアイギス
アイギスとは名ばかりのデフォ簡易式神な一反木綿。顔はへのへのもへじ。一応の特徴として、胴体に『あいぎす?』と書かれており、額には通し番号が打ってある。
主兵装は手に持った紙の棒。丸めた新聞紙の束みたいなやつ。ぶっちゃけ単なる棒。当たり前だがペルソナは未搭載。その辺の技術は完成していない。
素材である霊紙や霊墨にタルタロスやメメントス由来の品を使用する事により、どうにかこうにか認知異界の内部でもギリ動けるくらいになった。
ただしその動きの鈍さはカタツムリ以下であり、とてもではないが戦闘には耐えられない。というか、戦闘以外にも耐えられない。
後にここら辺の技術が、本格発売したアイギス系式神ボディに生かされてくる感じの設定。
・聖剣サトシカリバー
ガイア連合謹製、先行量産試験型次世代霊装。そのテスト運用のための試作品、というかモニター試験品。
とかいって、ぶっちゃけ見た感じは側面に「悟史」と書かれているだけの金属バット。だからこそ銃刀法には引っ掛からず、不審者として警察の職質に引っ掛かっても大丈夫。
グリップ部分に内蔵された芯をアタッチメント交換する事で属性を変化させる事ができるが、現在実用化されているのは呪殺と氷結だけ。はっきり言って聖剣でも何でもない。
バット自体は異能者による戦闘に耐えるだけの強度を持つが、霊装としての本体が芯であるため、曲がっても擦り減っても問題なく使う事ができ、割と乱暴に扱っても大丈夫。
また、鈍器であるため刃筋を立てる必要がなく素人にも比較的扱いやすいとかいう利点がある。そこまで重くないのもポイント。
・スライム式パワードスーツ
スライム型ペルソナを全身にまとう事により強化筋肉として運用する。ペルソナというよりはスタンドか念能力に近い芸当。
実は結構危険性が高く、操作にかなりの集中力を要求される上、少し操作を間違えると腕や足が割と簡単にポッキリ逝ってしまう。というか下手すると首までポッキリするので危険。練習する時は最低限ディアラマとリカームができる人に見ていてもらいましょう。