ファッション無惨様のごちゃサマライフ   作:頓西南北

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今回冒頭、名無しのレイ様『【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち』より『田舎ニキ、切れる。』も参照の事……。


アルカトラズ・レポート 後編-3

 

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 

 一旦、終末を越えて数年分の時を遡り、過去。

 

 

 半終末を幾ばくか過ぎた頃────囂々と、遠雷にも似た唸りを上げて渦巻く雪雲の下、一つの戦いが、終結の時を迎えていた。

 

 その場に集った過激派メシア教徒。

 そして彼らが召喚したのは魔王ミトラス。

 

 生贄の準備も十分、穏健派“シスターフッド”の抵抗に対する防備も万全。

 残す工程は触媒となる原子力発電所の核の力を確保して、魔王ミトラスの霊基を大天使メタトロンにまで昇華する、のみ。

 

 

 そこまで御膳立てが整った、この状況にて。

 

 

 彼らの前に立ち塞がる脅威は、一人の男の姿をしていた。ガイア連合魚沼支部のトップ────碧神凍矢その人である。

 

『────……あのさ、別に何を信仰してもいいけど、人様に迷惑かけるな、って教わらなかったの?』

 

 男が発したその言葉と共に、抑え切れない内心の憤怒が体外へと滲み出す冷気へと変わり、空へと立ち昇り、大気を侵食し、環境すらも塗り替えていく。

 分厚く垂れ込めた灰色の雪雲からはらはらと舞い散る粉雪が、折悪く吹き過ぎた寒風に乗って一瞬、大気が白く染まり、男が一歩を踏み出すごとに空間が、地形が氷雪の色に押し潰されていく。

 

 厳冬を通り越して既に氷河期に等しい氷雪の猛威を目前にしたメシア教徒と魔王ミトラスは、迫り来る白き死の具現に対して各々の力で対抗しようとするが。

 

『ふふふ、無論、黒札と戦うのに切り札はこれだけではありません。見よ! 邪教の技術を我が物にして主に捧げる力に浄化した我が力を!!』

 

 完全に、無意味。

 

 立ち並ぶ天使達、【復讐の氷拳】にて次々と薙ぎ払われていく。

 天使人間としての正体を現した信徒達、ただ一吹きの【マハブフダイン】にてまとめて消し飛んだ。

 魔王ミトラス、太陽神の権能で立ち向かうも、それごと冷却され、凍り付いたまま殴り壊された。

 最後に残った司祭、抵抗一つできないままゆっくりと氷漬けにされ、砕けて消えた。

 

 そうしてメシア教会過激派の陰謀は無事に阻止され、生贄の少女も救出、後に残ったミトラスの遺物である【有翼日輪の紋章】も無事ガイア連合に回収され、大いに役立てられる事になるのだが。

 

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 

 メシア教会過激派の戦力が蹂躙される中、物陰にて一体の天使が隠れ潜んでいた。天使の象徴である自慢の白翼も【マハブフダイン】の余波で片翼が凍てつき砕け、既に飛行の用を為さなくなった重傷の身で、しかし隠れていたため、ぎりぎりで命だけは助かった、そんな状況で。

 

(な、何だあの化け物は……あんなものが人間のはずがない! 人間があんな力を持っていていいはずがない……!)

 

 頭を抱え、できる限り身を縮めて、見つからないように。

 ミトラスの置き土産のように岩塊のごとき下半身から飛び散った破片をその手に握り締めながら。

 

(ひっ……!)

 

 近くの屋根から滑り落ちる雪の落下音に身を震わせて。

 周囲を歩き回るシスターフッドの兵の足音に身を縮め。

 

 道端のゴミ置き場に積まれていたゴミ袋の下に潜り込んで息を殺したその天使は、自身も雪を被っていたせいか白く凍てついた街の光景に紛れ、周囲を哨戒するメシア教会穏健派“シスターフッド”の捜索の手も逃れ、そうして。

 

(い、いや今はそんな事を考えている場合じゃない……逃げないと! このままじゃ死んでしまう! 死にたくない! ここは、生きて逃げ延びるんだ……!)

 

 数十分程、そうして身を縮めていた中で一瞬だけ、周囲を警戒するシスターフッドの手が緩む。偶然が重なり周囲に人がいなくなったその隙に、天使は駆け出していた。必死の形相を浮かべ、息を荒げて、役に立たなくなった翼を引きずるようにして離れた物陰へと走り込み、そこにあったマンホールの蓋を開けて地下、下水道の配管へと転がり込む。

 

 

 そうして潜伏する事数日、ガイア連合とシスターフッドの監視の目を奇跡的に逃れ、這う這うの体で魚沼市を脱出する事に成功した天使エンジェルは、しばしの間、放浪を続けた。

 

 ある時は静岡にて、黙示録の騎士が撒き散らす疫病に巻き込まれた上、何か知らんけど走ってきたバイクに轢かれて吹っ飛ばされ。

 またある時は岩手の方で空飛んでたら、何か向こうから飛んできた紫色の龍みたいなのに轢かれて吹っ飛ばされ。

 そしてまたある時は、長野の浦野牧にて、隠れ潜むため異界に潜入したら何故か横から馬の姿に化身した魔王ロキが走ってきて、そのまま轢かれて異界の外まで吹っ飛ばされ。

 

 そうして苦心惨憺続けながらもどうにか生き延びて。

 

 

 運が向いてきたのは、ちょうど終末の頃。

 

 やはり空を飛んでいる最中、宮城方面から飛んできた巨大ロボットに轢かれてまたしても吹っ飛ばされて、頭から地面に突き刺さり痛みに震えているところで、天使はある男に拾われた。

 

 天使を拾った男の名前こそ“天之河光輝”。かつてはそれなりに高位の────天使が知るメシア教会にもそうそういなかった程に強力な異能者だった痕跡を匂わせる、そんな彼であったが、今はその力も失われ、半ば一般人と変わらない程度の力しか残していなかった。

 そんな彼であっても、その身体に残留していた生体マグネタイトはかつてのレベル相応に豊富であり、また彼の身には喪われたペルソナの残滓である往古のヘブライの神秘が刻まれていた事もあって彼のマグネタイトは天使とも相性が良く、天使を回復させるには十分過ぎた。

 

 そうして彼と共に時を過ごすこと、数日。誰かの面影と重ねているのか時折、天使の事を“アリス”と呼ぼうとする事は気になったが、さりとて何か支障があるわけでもなく、しばらくそのままの生活を続けながら、幾ばくの時間が流れて。

 

 終末が到来し、天使をCOMPに隠したまま、男はシェルターへと入り込んだ。とある小学校の地下に置かれたガイア連合謹製のシェルターだった。

 

 そこではちょうど、共にシェルターへと逃げ込んだ避難民達が自分たちに与えられる嗜好品の配給を増やすべくデモを起こしており、見た目も良くカリスマ性もあった男はそのままあっさりとデモを起こす避難民のトップに収まって。

 そうしてデモを起こした避難民達が、シェルターの中枢にあった動力室を占拠した事で、シェルター内部の体制崩壊は決定的になった。

 

 天使がそこに辿り着いたのは、ある種、運命的なものだったのかもしれない。

 

 そこに置かれていた動力炉は偶然にも、かつてガイア連合ロボ部が建造していた“デモンベイン”動力炉の試作品の一つを転用したものだった。かつての戦いで魔王ミトラスが落とした有翼日輪の紋章、その複製品を触媒に、太陽神の権能を限定的に引き出す事で核反応を制御する試製核反応炉。

 

 天之河が天使に請われるままに炉を暴いた事で、シェルターは全ての機能を停止。シェルターをまとめていた女性もそれにより諦めがついたようで、彼女の後見である黒札に連れられて、生徒だった子供達やその家族と共に、安全な山梨へと避難した事で、シェルターはただの箱と化した。

 難民達はシェルターを捨て、彼らのまとめ役であったメシア教会の司祭に率いられて、それなりに長い放浪の旅路を経る事になる、が。

 

 天使は、既にかつての天使ではなかった。

 

 天使が、かつての戦いの中で掠め取ったミトラスの破片。

 試製反応炉に内蔵されていた有翼日輪の紋章、その複製。

 反応炉が有する核の力、それ自体。

 

 それらを揃えて自らに取り込む事で、天使の霊基は大天使メタトロンの物へと変異しつつあった。

 

 そうしてシェルターのあった町から月架手町を経由し、浦野牧を抜けて魚沼まで。天之河の精神に築かれたパレスへと潜んだ天使は、パレスの底から彼に囁き掛け、時を待った。幸いにも、メタトロンは出エジプト記において四十年の放浪を続けたイスラエルの民を導いた大天使だ、その権能があれば難民達の旅を助けるのも、そう難しい事ではなかった。

 

 避難民達に囁いて、デビルバスター達に縋るように促し。

 時にはメタトロンの権能で陰ながら避難民達を援護し。

 大陸側のメシア教会過激派の同胞と連絡を取る事に成功し。

 

 そんな事を続けながら放浪し、ついに難民達と共に佐渡に流れ着いて、今。

 

 砕けたパレスの残滓を食い漁る事により、ついに完全なる大天使へと変成し。

 

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 

 そうして時は戻り、終末後の現在。

 

 佐渡島金山異界、坑道。

 

 もう日も沈んだ。終末の前であればささやかな働き口であるコンビニバイトのシフトも終わり、とうの昔に自由を満喫していた時刻だが、明らかに安物と分かる電気照明に照らされた坑道の中で、相も変わらず三好と安藤はツルハシを振るっていた。

 6時50分から7時までの短い休み時間を終え、作業場の片隅に置かれた時計が示す時刻は午後8時を少し回った辺り。これで残り9時30分までひたすら労働時間だ。終業まで残り1時間半だが、そこまで過ぎても終わる気がしないのは、労働者達と共にツルハシを振るう屍鬼ワーカホリック共に何一つ時間を気にする気配がないからか。

 

「……こんな事して何の意味があるっていうんだ」

 

 隣で作業を続けていた男が、そんな言葉を漏らす。同意するしかないその呟きに内心同意しながらも、押し黙ったまま二人は視線をそらし、天之河という名を持つ彼が監督役のクローンヤクザに殴られているのを無視してツルハシを振るう。

 

 実際、ここよりもさらに深い階層で、専用に調整されたクローンヤクザ達がワーカホリックの大群を率い、最新型の機材で採鉱を行っているが。

 

 こうして収監された労働者達がブラック労働に従事させられているのは、それこそ彼らを無理にでも労働させるためであり、ひいてはそこから引き出される生体マグネタイトを絞り出すためだ。

 

 もっとも、“限りなく屍鬼に近い体質・霊質に調整された人間”を使役して“限りなく冥府に近い鉱脈”から掘り出した、という神話的な来歴を持つ鉱石にも、その魔術的な意味相応の価値があるのだが。

 

 だが、そんな裏事情は三好や安藤、あるいは天之河に対しては知らされる事もなく、ただただ無為な労働に従事させられている。

 

 今日、この日を除いては。

 

「アっ……あ、あっあっ……あひっ…………!」

 

 喘ぐような悲鳴を上げて、天之河が痙攣を起こす。手にしていたツルハシが鈍い音を立てて地面に落下する中、反射動作によるものか唐突に収縮した背筋に引き絞られて、脊椎が折れ曲がったかのようにその身体が大きく仰け反った。

 苦しげな呼吸を漏らしながら口の端からは泡が零れ落ち、両の眼球が眼窩の中で無秩序にグルグルと回転する。まるで操作に失敗したマリオネットのように手足が無秩序乱雑にばたつかせ、繰り返し背骨を屈曲させながらのたうち回る。およそ、人体が人間として機能するための統制を失って、全身のパーツ一つ一つがバタバタと勝手に跳ね回っているかのようだった。

 

「た、すけ……っ、助け、ッて…………っ!」

 

 アレはまずい。誰が見てもそんな風に直感し、危機感を抱く、そんな光景。

 

 その危機感に従ってどう行動するかは人それぞれで、思いやりのある人間なら駆け寄って介抱するかもしれず、トラブルに巻き込まれる事を嫌う人間ならひっそりとその場を離れるだろうし、場合によっては隙と見て暴力を振るい略奪に走る者もいたかもしれないが。

 三好達を始めとして、労働者達が取った行動は、ただ息を呑み、何もせずに遠巻きに見ているだけ、という単純でどうしようもないもので。

 

 しかしそんな間にも素早く動いて避難誘導を始めたクローンヤクザ達に従い、またまとめ役である大槻に促された事もあって労働者達はその場から去っていき、数分もすれば苦悶の声を上げる天之河を残して、その場には誰もいなくなっていた。

 

 そうして。

 

 やがて。

 

 

 びしり、びしり、音を立てて天之河の額に、まるでその皮膚が陶器やガラスであるかのように罅割れが走る。その亀裂はやがて額から一直線に股下へと走り、そこから大きく開いて異界へと繋がる出口が開き。

 

「あっ、アッアッアッ……ンアォオアァアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 絶頂するかのごとき苦悶の叫びを上げて、天之河が弾け飛び、亀裂から溢れる光の中からヒトを象った、しかし確実に人間ならぬ姿をした悪魔が現れる。全長数十メートル近い巨体の大天使が地響きを挙げて着地、そのまま翼を打ち振って上空へと舞い上がる。

 

『天之河光輝────感謝します、我が信徒よ。我が大望を果たさんがため、その身を犠牲にしてまで尽力してくれるとは。主もその献身を認めて下さるでしょう…………!』

 

 そんな感慨も数秒の事。わずかに瞑目すると、天使はかっと目を見開き、地上を睥睨する。炉から流れ落ちる灼熱の熔鉱にも似た輝きが、地上を舐め回すように視線を送る。

 

 そこにあるのは手つかずの大地────“ヒト”のいない新天地。信仰にて征服すべき土地。

 

 征服者の目で地上を見下ろし、今や大天使メタトロンそのものとなった天使は、地上に向けて宣告する。

 

 

『────いざ』

 

 

 いざ。

 

『我は来ませり────世に平和をもたらすために。虐げられし民草よ、歓喜せよ。これより浄化の炎がこの地へと降り注ぐ。浄化された汝等の灰の中から、祝福されし神の都は誕生する……この、私の手によって!! これは罪に染まりし汝等の魂を解き放つ、贖罪の祝福である』

 

 鋼の肉体を持つ大天使が、大いなる翼を広げて地上へと降り立った。

 

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 

 佐渡島北方、沖合。日本海上空。

 

 飛行機雲を曳きながら飛翔するのは佐渡島防空局の保有する航空機────F-2改を主力とする航空部隊だ。

 

 沙霧尚哉が搭乗するデモノイド・グランチャーは先頭を真っ先に飛び、その左右には急遽ロールアウトされた先行量産型ブレンパワード四機が随伴する。沙霧の同僚、旧自衛隊パイロットの生き残り達が搭乗する機体だ。

 

 その背後に随行するのは、ありったけの戦闘機。あるいは歪な形状の白い球体にしか見えない機体────ブレンパワードの簡易量産型デモノイド・スフィアソルジャー。その全てに、操縦士としての技能をインストールされたクローンヤクザのパイロットが搭乗しており。

 

「今回の敵は、大陸からのミサイルだ。中身は全て核弾頭、プラスして悪魔召喚プログラム。核爆発を起こして周囲に大被害を撒き散らし、挙句大型悪魔を召喚する凶悪な代物だ。一発でも落ちれば、民間人に大量の被害が出るのは確実……絶対に落とさせるな!」

 

 元より、佐渡島防空局────旧航空自衛隊・佐渡島分屯基地に所属していた自衛隊員達の役目は、大陸や半島、あるいはその北方にあるロシアから飛来する脅威に対するカウンターだ。それも半終末に入ってからは大陸が中華戦線と化した事により不審機やミサイルを飛ばすどころではなくなり、沈静化していたが。

 

 今回、また久しぶりのミサイル到来となる。

 

 つまり。

 

「俺達の本来の役目を果たす日がやってきたぞ! 全員、気を抜くなよ!」

『『『『『了解!』』』』ッコラー!』』』』

 

 唱和するパイロット達の声の中に余計なものが混じっているのは、クローンヤクザだから仕方なく、その事実を自嘲交じりの苦笑いで受け入れながらも。

 

「……一発たりとも落とさせん。行くぞ相棒」

 

 未知の部分が多過ぎる機体に対する不安感こそ未だ拭えないものの、それでも忠実に自分に従って飛ぶグランチャーに呼び掛ける。独特の反重力的な挙動には未だ慣れないものの、コツは掴めてきた。慣れてしまったら従来の戦闘機に戻れる気がしない、が。

 

 その言葉に返事は無く。

 されど駆動音は一際高く。

 

 気合を入れた沙霧に応え、同胞を引き連れ、グランチャーは飛翔する。

 

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 

 同じ頃。

 

 佐渡島南部、飯岡公民館。

 

 日本海に面した南の海岸から険しい山間を辿るように細長く伸びた人里の、そのどん詰まり。実際にはもう少し先にも集落に繋がる道があるものの、田畑で切り開かれた空間は左右から迫る森の木々に絞られて押し潰されたかのようにそこで終わっている、そんな場所。

 

 この佐渡島において最大の社格を誇る一宮、度津神社のすぐ隣にあるこの場所を駐車場ごと占拠して、ちょっとしたお祭り騒ぎが始まっていた。

 

 瀬戸組から派遣されたテキ屋などが焼きそばやたこ焼き、ヨーヨーやお面といった終末前からの定番の屋台を並べており、フリーマーケットには金屋子神配下の地霊たちが鍜治場で作ったちょっとした金属製品を並べていたりもする。

 

 騒ぎを起こしている張本人は、幼さを多分に残した少女の姿を持つ五十猛神。飯岡公民館のすぐ隣にある度津神社の祭神であり、終末を迎えた現在の佐渡島では、林業の神として専用に調節した異界を保有し、そこから産出される木材資源を元手に企業経営を行っている、ちょっとしたセレブだ。

 それを示すかのように、この場に集まっている人間の半分くらいが五十猛神の氏子を兼ねた製材所やパルプ工場の社員や関係者だったりするし、フリーマーケットには製材所で作られた木工品なども売られている。

 

 そんな祭り騒ぎの中心に置かれているのは、丸太から直接削り出したと思しき白木の材木を組み合わせた、大型の櫓だ。建築神としての権能も持ち合わせた五十猛神の力により、積み上げられた材木の山から十数分で組み上げられた代物である、が。

 高さは二十メートル程にも及ぶだろうか、足元に巡らされた紅白の幕と合わせてまるで盆踊りの太鼓台といった風情だが、そもそも盆踊り用の櫓が現在進行形で隣に置いてあり音楽を流しているせいで、どうしてもその巨大さが目に付く。

 

 そして形もあり得ない。強いて呼ぶなら巨大なクロスボウ────否、バリスタ。それも真っ当に携行できるような可愛らしい代物ではない、構造そのものは大して難しくもないが、翼長十数メートルにも及ぶ攻城用の大型弩だ。

 刀剣も弓矢も廃れた銃火器全盛期の現代戦における常識からは明らかに外れた、オーパーツとしか言いようがない、そんな代物。

 

「………………あの、これは一体?」

 

 足元に敷かれたレジャーシート。ガイアニ産のアニメキャラがプリントされている、その上に行儀よく正座した小手川唯は、その顔に困惑の表情を浮かべていた。その対面には少女の姿をした団三郎狸が、徳利と猪口を手にして胡坐をかき、眼下で行われている作業をのんびりと見物しており。

 

「何って、みさいるでぃふぇんす、というやつじゃよ。まあ今回からは氏子の力も使えるから、この通りじゃが」

 

 などと言って猪口に注がれた酒を一口呷った団三郎狸は、すぐそこの屋台で買ってきたばかりの焼き鳥をツマミに一口。

 

「ミサイル……ディフェンス? いやいや、どうするんですかこんなもの!? まさか、あれでミサイルを撃ち落とすなんて事は……?」

「そうじゃよ」

「そうじゃよって…………っ」

 

 絶句。

 

「そんな、今から竹槍でB29を撃ち落とします、みたいな事を言われても………………」

「できる奴はできるぞ」

「えぇ……?」

 

 やはりこの終末後の世界は、唯の理解を遠く突き放して向こう側に吹っ飛んでいるらしい。もはやツッコミを入れる気力すら失せた唯は、紙のドンブリに盛られたたぬきうどんを一口。可愛い狸が売り子をしていたからどんな味かと思いきや、本当に普通のうどんだった。

 そりゃ売り物にするんだから、きちんと売り物になる食べ物を売るだろう、と言われて、まあ納得するしかなかったが。

 

 悪魔の手によって発狂した村民に追い回されるという珍しい、しかしこれっぽっちも望まない体験をして目の前の団三郎狸に救助された唯は、その足でここまで連れて来られ、そうしてさっきまで団三郎狸と協力して手続きやら手回しやら宣伝やら、この祭りを開くための準備にあちらこちら駆けずり回っていたのだ。

 

 必要だからと言われたから何も分からずにやっていたが、しかし。

 

「そもそも五十猛神は流鏑馬神事の神じゃよ。そして弓矢の女神であるダイアナもおる。それでどうして、弓矢がミサイルに当たらんと思うんじゃ?」

「…………そう言われると、まあ」

 

 為朝殿の大弓でも五人張り“程度”で済んだところを、あの百人張りの強弓じゃ……などと、当然の事だと言わんばかりに言い切った団三郎狸の言葉に、どっと疲れが押し寄せてくるのを感じて、もういっそどうにでもなれとばかりに、唯はたぬきうどんを啜る事に没頭する。普通に美味しい。盆踊り用の櫓から聞こえてくる太鼓の音が、唯の耳を右から左に通り抜けていく。

 

 太鼓を叩いているのは、どうやら少女の姿の五十猛神であるようだ。そのリズムに合わせ、揃いの法被を羽織った製材所とパルプ工場の作業員といった氏子衆、それに孤児院の孤児達が力を合わせて綱を引っ張れば、巨大な攻城弩の絡繰り仕掛けが回転して弦が巻き上げられ、引き絞られていく。

 どうやら対ミサイル……らしきアレは発射体勢に入ったらしい。その操作は弩の上で狙いをつけているダイアナ神がやるらしいが。

 

「でも、どうしてわざわざこんな縁日なんて開く必要があったんですか?」

「この際、地域振興とかそういった政治家の理屈は……捨てるな、とは言わんが脇に置いておけ。縁日は祭り、そして祭りは神事じゃよ。ただ荒れ狂う災いとしてでなく、神々が振るう力を正しく人のために導こうとするのであれば、祭りは不可欠。今回でいえば……あの大弓を組み上げて稼働させ、発射するための生体マグネタイトを集めるための儀式といったところじゃよ」

 

 弩に番えられているのは尋常の矢ではない、五十猛神の権能を受けた霊木を切り倒して材木として加工した巨大な丸太だ。それがダイアナ神に制御された弩から一直線に撃ち出される。放たれた丸太は燃え立つように蒼白いマグネタイト光を放ちながら空の彼方に消えていく。

 

 命中したかどうかは人間の視力では分からないが、しかし。

 

『やったぁ、命中しましたよ!』

『おっし、やるじゃない! これで臨時収入一つゲットよ! これで皆のボーナスも増額できるわよ! 新型のCADも導入できる!』

『子供たちのベッドの布団も新調できますね!』

 

 ハイタッチして喜ぶ神格二柱の証言によれば、普通に命中したらしい。何でもミサイル一発落とすごとに臨時収入が入るとかいう話で、あのファンタジーな光景とは裏腹に、随分と現実的な話をしているようだ。

 

『さ、次もどんどん行くわよ!』

『了解! みんなー! 今日の晩ご飯にはケーキが付くから、頑張って引っ張って!』

 

 気を良くした五十猛神が太鼓を打ち鳴らして第二射の号令を出すと共に、氏子衆と孤児達が再び弦の巻き上げ作業に入る。そんな、あまりにも牧歌的なミサイルディフェンスを見守って、唯は深々と溜息を吐いた。

 

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 

 窓の外、空高くを閃光が飛び過ぎていく。単なる閃光としか見えない飛翔体を、しかし速度に秀でたシキガミ体の動体視力はその正体を丸太と容易く見切っていた。

 

「ふぅん……イプシロン考案のアレ、本当に使ってるんだ」

 

 佐渡市警察署の会議室に陣取ったゼータは、佐渡島の人里各所に派遣したハイデッカーやネメシスT型といった警察戦力と連絡を取り、彼らの指揮を執って一斉摘発を行っていた。危険な粗製召喚プログラムを所持する市民達の一斉逮捕……別に粛清したりはせず、その処分は実刑もない厳重注意程度に留まるが、しかしそれは魂まで絡め捕る契約魔術の存在あってこそのものだ。

 

 悪魔召喚プログラムを用いた自爆テロを防ぐため、必要なのは地味な指揮管制と事務処理だ。少なくとも現在のゼータの仕事はそれで、同様に部下の簡易シキガミやハイデッカー達が忙しく動き回っては、書類やPCを使って情報伝達を行っている。

 

「いいでしょう。あの弾丸は五十猛神が育てた丸太だから、弾薬費は五十猛神の持ち出し。でも確実に佐渡島の防衛の助けになるわ」

 

 と薄い胸を張って自己主張するロングツインテールの少女は、その対面で同じく仕事を進めているシキガミ“七陰”の一人イプシロンだ。彼女の仕事は祭祀────つまりは佐渡島各地や周辺の出島に点在する神社仏閣の神々や、あるいは佐渡島外の大和神や多神連合の神々との交渉だ。

 配下はやはりそれ用に調整したシキガミや、祭司仕様のカルトマジック汎用スキルを組み込んだ各種デモノイドであり、彼らの仕事はゼータから見れば専門外だが、やはり今は各地との戦力派遣に関する交渉に忙しい様子。

 

 そのどちらにも人間の入る隙間は、あまり、ない。

 自身の仕事を鑑みて、そんな事をゼータは思う。

 

 現場ではハイデッカーの集団が動き回っている。

 悪魔が現れた場合、対処するのはネメシスT型の部隊と吸血鬼殲滅隊ブラッドジャケット。

 それで対応できない大型悪魔は、同じく巨大戦力で対応する。

 

「その辺はアルファとデルタの仕事、と。本当に忙しいなぁ、もう……」

 

 他の支部でも、こうなのだろうか。そんな風に疑問に思うが、まあどこでも似たような問題は起きるだろうし、そうなれば似たような対処をするために、似たような苦労を強いられる誰かがいるのだろうな、程度には考えて。

 しかし、今はそんな余計な事を考えているような場合ではなく、ゼータとイプシロンは作業に没頭していた。

 

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 

 佐渡島金山異界。

 

 唐突に……少なくとも周囲の人間達にとっては何の前触れもなく出現した大天使はそのまま異界の外へと飛び出していった上、また避難も迅速であったために金山異界への被害は想定以上に少なく、先だって避難させられた労働者達は危険度の高さも理解できず、その表情に不満そうな色を浮かべている。

 逃亡防止にと監督役のクローンヤクザに囲まれた彼らの視線の届かない場所から、冷ややかな目で見降ろしながら、ガンマは配下からの報告を受け取っていた。

 

「避難は無事、完了しました。労働者達の犠牲は……一名。まあ予定通りといったところですね」

 

 と、報告したのは老神父の姿に擬態したサンタ・ムエルテと、そしてもう一人。

 

「いやあ、危ないところでしたよ……。でも来週には減った人員も補充できますからね、そこまで悲観する事はないでしょう」

 

 労働者達の中でまとめ役をしている大槻────あるいは班長と呼ばれている男だ。元々は労働者達と同じく、佐渡島金山異界────日本ブレイク鉱業の施設にて強制労働をさせられている元難民の一人……だが、佐渡島に運び込まれる前に関与したKSJ研の手によって魂魄を摘出され、中身をシキガミに入れ替えられた、言わば人間擬態型のシキガミだ。

 労働者達の中に混じって、さりげなくその意向や行動を誘導する……そんな役割を負い、現在は佐渡島支部麾下の企業体を統括するガンマの下で働いている。

 

「では、一時的に金山異界の出入り口を空間封鎖。天使やその配下の排除が終了するまで再侵入を防ぎます」

「「承知」」

 

 少なくとも今回はガンマが実際に戦う状況ではなく、しかし遊んでいる暇はない。被害を最小限に留めるために、他の者達も働いている。

 

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 

 小佐渡山地の山間を切り開いて広がる田畑と、その合間に点在する民家で構成された集落。その片隅にある小さな公民館に、集落の住民が集められていた。

 

 元々、天使ホーリーゴーストに憑依された主婦を中心にした住民達は精神干渉を受けてその支配下に堕ちており、ミサイル投下に先立って佐渡島各所に散り、ネットからダウンロードした粗製天使召喚プログラムを使用して召喚テロを起こす────予定だった。

 運良く入手された物証からのサイコメトリー、偶然に迷い込んだ市議会議員からの通報など、その計画は様々な要因から察知され、こうして無事に鎮圧が完了。住民達に施された精神干渉も解除され、現在はこうして監視下に置かれている。

 

 似たような状況の集落は佐渡島各地にいくつか存在し、それらの大半が事前に計画を察知され、既に鎮圧に入っているものの。

 

「タイミング的には、とんでもなくシビアな状態だったんですよね。……洒落にならない」

 

 吸血鬼殲滅隊ブラッドジャケット、佐渡島分遣隊第二中隊を率いる愛染ノエルは、捕縛当初からは比べ物にならないほどに大人しくなった住民達を見て一つ溜息を吐くと、腕時計の時刻表示を確認する。残り十分もすれば、警察から派遣されたハイデッカーの部隊に現場を交代し、自分達は次の現場に急行する事になる。

 三隊が存在するブラッドジャケットの中隊が全て同様に、この狭いようで想像以上に広い佐渡島の各所を走り回っている。そしてそれでも足りず、ハイデッカーとネメシスT型の混成部隊までをも動員して島内全域の鎮圧に向かっているが。

 

「……いくつかの鎮圧は、失敗するでしょうね」

 

 とにかく人手が足りない。

 

 天変地異級とまでは行かないが、それでも何体か、小規模災害に等しい大型悪魔の召喚を許す羽目になるだろう。

 

「まあ、私達が気にする事でもない、か。私達は一介の兵士……銃弾の仕事は、銃口を向けて引鉄を引く手を信じて、無心に撃ち出される事だけだもの」

 

 彼女が呟くと共に、まるでそれに合わせたかのように遠くから重苦しい爆発音が響いてくる。振り仰げば山一つ隔てた向こうに、燃え上がる火災の影が見えた────その中で巨大な悪魔と戦う、白亜の巨人の姿も。

 

「あれは私の仕事じゃない。ここを私が離れれば、また別の場所にシワ寄せが行くのよね……」

 

 なら、後は自分の仕事を全うする、のみ。

 

 一人頷いたノエルの背後を、閃光が駆け抜けていく。

 

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 

 接敵まであと、数十秒。

 

 グランチャーを駆って飛翔する沙霧率いる佐渡島防空局の機体群を後ろから追い抜いて、蒼白い生体マグネタイトの光芒が走り抜けた。

 

 その弾頭が科学技術で製造されたミサイルの類どころか、魔法ですらない単なる丸太である事実を、生体型デモニカの動体視力のまま目で追った沙霧は、顎が外れるような驚愕と困惑に包まれた。

 

 空間それ自体を打ち据えるかのように何もない虚空へと着弾した丸太は、その表面に貼り付けられた牛尾神社の御朱印を媒介に解放された八将神の厄災を呼ぶ権能を解放、生み出された爆炎と斬撃の乱舞が虚空を薙ぎ払い、数発のミサイルをまとめて焼き払う。

 

「…………今のは?」

『佐渡島側からの砲撃です……────情報伝達、受け取りました。度津神社の五十猛神とダイアナ神からの支援砲撃である模様』

「砲撃……砲撃か。今のが。そうか」

 

 無線越しに聞こえるのは、デモノイド・イーリャンの淡々とした声。そこに全く動揺が見られない事実に、困惑する自分の方こそ間違っているのではないかと、むしろそちらの方に動揺する沙霧だが。

 

 ミサイルが撃破されたらしき爆炎が遠目に見えると共に、デモニカのバイザー内部に表示されるレーダーの上に映し出されていた敵ミサイルの表示が一つ消えたのを見て、とりあえず強引に納得する……より先に、後方から出現した無数の反応に再び目を見開く事になった。

 

『隊長、後方から接近反応多数……悪魔です!』

 

 部下から、悲鳴のような連絡。なるほどその通り、レーダー上に悪魔の存在を示すマグネタイト反応のマーカーが多数、だが。

 

 しかし。

 

 丸太ショックで神経が麻痺してでもいたのか、先程の驚愕ほどに、沙霧は驚かなかった。

 

「待て落ち着け、敵味方識別は味方だ」

『味方? ……一体何が!?』

 

 急速に接近してくる友軍らしき悪魔の集団は最初、鳥の群れに見えた。

 

 だが、違う。

 

 その姿は、鳥と呼ぶにはあまりにも人に近かった。背に二枚の翼を広げたヒトガタは、今現在世界の怨敵となっており今回の事件の主犯でもある天使共と共通しているが、しかし微妙に異なった者達。

 

 山伏の装束に、鴉の面。

 あるいは長鼻の突き出した赤ら顔。

 

 数十羽ほど、いるだろうか。その全てが、日本昔話からそのまま抜け出してきたかのごとき天狗の集団だ。

 

「…………天狗、だと?」

『応────然り!』

 

 思わず漏れたその言葉に、応える声があった。

 

 反射的に顔を上げた沙霧の視界に、それ自体が強烈に輝きながら飛翔する豪壮な影が映る。その姿は黄金の鳶、黒く濁った瘴気を立ち昇らせて揺らぐ怨念の業火を背負いながらも、なお燦然と輝く黄金色の煌めきがその羽毛に燃え立つような彩を添える。

 

「貴方は……!」

 

 蓬髪を振り乱し、身に纏う束帯は裾も破れ襤褸と化した、それこそ怨霊の風体でありながら黄金の鳥人は、天を舞う無数の天狗の中において正しく皇と呼ぶに相応しく荘厳な、そして高貴な威厳を放つ。

 

「大魔縁────讃岐院顕仁。それとも崇徳院と名乗った方が通りが良いか?」

 

 ただ絶大な祟りを振るったというそれだけで、金刀比羅神社において金毘羅権現=ユーミルと並び祀られる怨霊神。

 

「なっ……! 崇徳上皇猊下、でございますか?」

「うむ、だが礼はよい。今は左様な余裕もあるまい。目前に脅威が迫っているのだからな」

 

 黄金色の翼を打ち振って大勢の天狗を追い抜き、音速を越えた加速にて崇徳院は前に出る。貴き神霊として祀られながらも未だその身に深くこびり付いた怨念の瘴気をその翼から立ち昇らせながら、しかし。

 

「政争に敗れ、配流され、怨嗟の裡に死して尚、我は皇ぞ。怨霊となり、魔縁となれど、それは変わらぬ────なればこそ、この国を滅ぼさせはせん。眷属共よ、我に続け!」

 

 その翼を打ち振れば、猛り狂う怨念の業火が渦を巻き、荒れ狂う【マハラギダイン】となって撃ち出された。連射される灼熱の火炎弾が迫るミサイル群へと叩きつけられ、爆炎の華が咲き乱れる。その後を追って、無数の天狗が切り込んでいく。

 ある者は風雷を操り、ある者は刀槍で打ち掛かり、あるいは矢を射て、鬼火を撒き散らし。

 

 そうして、その後を追い掛けるように沙霧が率いる戦闘機隊も応戦を開始する。

 

「……御見事です」

「貴公もな!」

 

 迫るミサイルへと真っ向から突き進んだ沙霧のグランチャーは、ソードエクステンションを銃として構え、あらん限りのペースで【アギ】を連射していく。ほんのわずかな間、空域が敵味方入り乱れる戦場と化す。

 

 これで、どれだけ墜とせるか。

 

 否、全て墜とすのだ。

 

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 

 ほぼ同時刻。

 

 後方、旧航空自衛隊・佐渡島分屯基地、その滑走路上に、奇妙な機体が存在していた。

 

 巨大な、しかし明らかに未完成であろう隙間だらけの装甲で覆われた黄金色の砲身。そこに本来であれば作業用の旧式ナイトメアフレーム『グラスゴー』四機を強引に接続して脚に仕立て上げた、あからさまに突貫工事の産物でしか有り得ない機械────仮設機体『雷光』。

 

 その四つある操縦席の一つに座して、ベータは操縦席に設えられたコンソールを叩いていた。

 

「よしっ……と、終了。これでどうにかなるでしょう」

 

 システム・オールグリーン……と呼ぶには少々足りない。画面に表示されるステータスの三つに一つがコンディション・イエローを表示しており、完全体には程遠い。だが、それでも。

 

「砲撃には十分! 行けますね、雷光────いえ、“サウダーデ・オブ・サンデイ”!」

 

 アルファのダン・オブ・サーズデイと並ぶ……はずのベータの乗騎“サウダーデ・オブ・サンデイ”────ダンが巨大な剣の形態で出現したように“七陰”の機体七機はどれも、巨大な武器の形態から人型への変形機構を持つが、いまだ未完成のベータのサウダーデが変形する予定のそれは“銃剣”。

 その機関部と砲身、そして機体中枢だけで強引に組み上げた砲塔に、支持脚となるナイトメアフレームを繋いで作り上げた移動砲台がこの“雷光”の正体だった。

 

「マグネタイト充填率32%……33、34……39、40、……ええ、ここらが限界ですね。最大出力には全く届いていませんが、それでも十分です。行きますよ、サウダーデ」

 

 自らの半身たるシキガミの呼び掛けに答えるように、真の名を呼ばれた雷光が嬉しげに駆動音を轟かせる。長大なケーブルで基地の動力炉に有線直結された雷光の動力炉が唸りを上げ、本来の出力には届かずとも大量の生体マグネタイトが霊子加速砲の砲身へと充填されていく。

 そうして、ベータはトリガーを引けば、その砲口から放たれるのは超高密度に収束した熱光線だ。一直線に空を引き裂いて奔る灼熱の閃光は、妙見山のガメラレーダーと連動した火器管制システムのサポートの下、数発分のミサイルを正確に撃ち抜き、爆散させる。

 

「……っよし」

 

 小さく快哉の声を上げたベータは、再びコンソールを叩いてエネルギーの収束を開始する。それは本来のサウダーデ・オブ・サンデイとは比べ物にならない程度の弱々しい光ではあったが、しかし今はそれで十分。

 

「頑張ってください、サウダーデ。この島は、必ず持ち堪えますから」

 

 本来の運用とは掛け離れた狙撃兵としての役割に徹しながら、淡々と、しかし祈るように。

 

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 

 蛮刀の刀身を球状のコクピットの中心に突き立てる事により、突き立てた刃は変形し、アルファと機体を繋ぐ操縦桿となる。その先端を細い指で握り締め、そして。

 

「────ウェイクアップ・ダン」

 

 その巨体の隅々までも張り巡らされた神経系の末端までもアルファの意識が行き渡り、全長二十メートル超過、アダマスの骨格と人工筋肉によって編み上げられた刃金の巨人が、その手足の延長線上にあるかのようにアルファの身体となる。

 白亜の色に塗装されたヒヒイロカネ・ジェラルミンの装甲の合間を流動するマグネタイト光の内側から、赤々と燃える光学素子の輝きが敵を睨み据え、アルファという魂を得た巨人────ダン・オブ・サーズデイは力強く大地を踏み締めて立ち上がった。

 

 対する敵は天使────大天使ザガン・ハレル、レベル38。黄金色の牛角を頭に頂き、逞しい体躯を見せつける敵は前回現れた天使よりも弱いが、それでも十分以上に凶悪な敵だ。

 

 視線を巡らせて周囲の環境を把握。山林地帯の合間を切り開いて作られた田畑の中央、周辺にもいくらか民家はあるが、その被害に構っている余裕はない。倒壊した家屋や施設の被害とその後処理には少しだけ気が重くなるものの、今は戦う時だ。

 一直線に踏み込み、カウンター狙いの拳を前転気味の跳躍で回避しつつ背後に回り、手にした長刀を背中越しに一閃。ちょうど腹の部分で両断された天使は、そのまま前後に崩れ落ちるとマグネタイト光に分解されて消滅する。

 

「ここは片付いたわね……」

 

 不完全な機体で初陣を飾るデルタの事は心配だが、別行動中であり、出来る事もなく。

 ひとまず周囲を固めるハイデッカーに情報共有機能で住民の避難を促し、次の現場へと向かう。

 

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 

 戦闘機部隊とミサイル群の接敵は一瞬の事────超音速で擦れ違う機体と弾道弾が交差する中、こちら側からの攻撃を加えるチャンスは一瞬のものでしかない。

 

 その一瞬に賭けて可能な限りの弾薬を放出しながら、クローンヤクザが搭乗する戦闘機達は必死に機体を反転させるが、常人の肉体的限界を無視した強引な機体制御でも再攻撃ができる角度にまで機体を持っていくのにはそれなりの……刹那の交錯に賭けるにはあまりにも長過ぎる時間が掛かり、それで墜とせたICBMは……せいぜいが半数程度。

 天狗達や、その後を追い掛けるようにしてボーナス目当てで日本各地から姿を現してきた現地神達の迎撃でも、全ては墜とし切れない。

 

 だが、まだ終わっていない。グランチャーと試作量産型ブレンパワードは、通常の戦闘機や簡易型のスフィアソルジャーとは話が別だ。慣性を無視した挙動でヘアピンのような鋭角の軌道を描き機体を反転、即座にミサイルの追撃を開始。大気の壁を獰猛に引き裂きながら音速を越え飛翔する空戦型デモノイドは、追撃を引き剥がすべく加速するICBM群へと追い縋る。

 反転により不十分な加速のせいで相対距離はじりじりと開いていくが、それでもソードエクステンションから光弾を連射し、ポッドに残る対空ミサイルを余さず解き放って、佐渡へと迫る悪意の弾頭を一つ一つ撃ち落としていく。

 それは神々や天狗の群れも同じ事であり、後背から放たれる魔法攻撃や支援が沙霧達を追い抜いてミサイル群へと牙を剥く。海面からは普段は防海に当たっている艦娘型シキガミが体格に見合わない大型の高射砲を打ち上げ、遠く佐渡からも全力で連射される丸太の砲撃やサウダーデ・オブ・サンデイの熱光線が群魚のように膨大な弾道弾の群れを破壊していくが。

 

 それでも前へと、迎撃不可能域へと抜けようとする弾頭が、五発。音速を越え、大気を裂く風切り音を鳴らしながら、搭載された核弾頭を解き放つべく。

 

「いや、いや! まだだ! やらせん、この国は焼かせんぞ! お前とてその為に作られたのだろう、だったら応えてみせろグランチャー────!!」

 

 吠える沙霧の声に、機体が応えた。

 

 マグネタイトの供給量を一気に増やし、機体の耐久限界すら越えてその全身を赤熱させながら更なる加速を。

 

 魔力供給を使い切り弾切れとなったソードエクステンションを投擲して一発墜とし、それでも足りぬと加速し、両腕を広げて二発を捕捉、加速のままラリアットのように叩き付け、そのまま海面へと引きずり落とさんと突貫する。

 その途上でキャノピーを解放し、操縦者を機体へと固定するシートベルトを解除して。

 

 シートを踏み、操縦席の縁を蹴って、そして。

 

「行くぞ!」

 

 そのまま空へと跳躍した。

 

 ミサイル二発分の爆発に巻き込まれたグランチャーの悲鳴を背後に浴び、デモニカを形作る生体装甲越しに荒れ狂う風を感じ取りながら、デモニカ『アマゾンオメガ』の中枢たるベルトバックルから突き出したグリップハンドルを引き抜けば、それは一瞬で凝結して金属質の投槍へと変容し。

 

「そして、これで!」

 

《Violent Break.》

 

 ドライバーに残った逆側のグリップハンドルを捻り、それに反応して供給される大出力により瞬間的に跳ね上がった身体強度にて槍を投擲。ミサイル尾部末端のブースターへと直撃した投槍は、そのまま一直線に弾頭部分を貫通し、四発目を撃破。

 

 そして。

 

 空へと投げ出される沙霧の、次の一手が続かない。

 

 足場がない、飛び道具がない。今こそ逃げ切ろうとする最後の一発に攻撃を届かせる最後の一手が、ない。

 

「まだだ、まだだ……!」

 

 決まり切った結果を否定するように、空中で手足をばたつかせるように動かして、しかし。

 

 沙霧一人の力では結果を覆すには至らず。

 

 つまり。

 

 結果は。

 

 

 そう、その結果は────沙霧の背後から響く轟音が覆した。身を挺しての撃墜からそのまま【食いしばり】で生き残ったグランチャーが、主の元へと馳せ参じた。足元へと伸ばされた巨大な掌へと着地した沙霧は、その掌を力強く踏み締めて。

 

 

「……グランチャー、お前は最高の相棒だ!!」

 

 主の意を受けたグランチャーは、全身の筋肉を引き絞るように身構えた沙霧を乗せたその掌を大きく振りかぶり。

 

 投擲。

 

 限界まで溜め込んだ力が爆ぜるかのような強烈な踏み込みに合わせ、同時、大きく振りかぶったその腕から、新緑のデモニカが弾丸のように射出された。敗北の因果を覆した豪速球が、閃光となって空を駆け抜け。

 

「これを使え、防人よ!!」

 

 刹那、黄金色の閃光のように投げ込まれるのは、追走する大天狗の佩刀だ。それを掴み取った沙霧の背中に、最後のミサイルへと追い縋っていた多神連合の神々から無数の支援魔法が集中し、雨霰と降り注ぐ援護の雨の中、流麗なまでの居合にて抜刀。そのまま再びベルトのグリップハンドルを捻り、必殺の一撃を起動して。

 

《Violent Break────!》

 

 背後からミサイルを追い越しつつ、擦れ違いざまの一刀を見舞う。噴射炎を引いて音速で飛翔していた円筒形の弾道弾は、そのままの勢いで上下に立ち割られ、盛大な爆炎を上げて爆散する。その爆炎を突き破り、沙霧は海面へと落下して。

 

「おっとと、危なっかしいなぁ。でも見とったよ、よくやったね」

 

 海面を裂いて現れた海坊主────海上迷彩のアッガイと、その頭上に乗った少女によって受け止められた。

 

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 

 撃墜確認。

 

 モニタに映し出されたレーダーの表示からミサイルの存在を示す最後の光点が消えたのを見て、ベータはようやく気を抜いた。部品として組み込まれたグラスゴーのそれをそのまま流用した雷光のコクピットシートへと、背中を投げ出すように力を抜く。

 

「……ようやく終わりですか。ハラハラしましたが……どうやら、最後の一発は必要なかったようですね」

 

 横目でサイドモニターの表示を確認すれば、そこに表示されているのは霊子加速砲の充填率。最低限、最後の一発を撃てる程度にはチャージが済んでいる、が。

 

「必要ないのであれば、他の目標に撃ち込むまでです。もったいないですからね」

 

 コンソールを叩いて現在の戦術情報を確認。今回の敵の首魁である大天使が未だ健在である事を確認し、偵察用の簡易シキガミの視界越しに隙を伺いながら、ベータは次の弾道計算を始めた。

 

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 

「あはっ」

 

 楽しげに、笑みが零れる。笑っている場合じゃない事は知っているが、それはそれとして楽しい。

 

 デルタの搭乗する機体『ディアブロ・オブ・マンデイ』がその重量級の巨体で山肌を疾駆する中、その疾走感に酔うようにしてデルタは笑みに顔を歪めていた。ディアブロの握る大戦斧を風車のように回転させ、手首のしなりを威力に変えて放つのは【デスバウンド】。

 蹴り飛ばした大天使サブナク・ハレルが、飛んできたその身体を受け止めるべく手を広げた大天使アイニ・ハレルと衝突、受け止めきれずたたらを踏んで後退する彼らをまとめて切り裂くよう、一直線の斬撃にて両断。叩き斬られた大天使二体は速やかに絶命し、生体マグネタイトの粒子と化して消滅する。

 

「あと一匹……ちょっと消化不良なのです……」

 

 ぐるり、ディアブロの頭部を巡らせて、背後からこちらへ聖弓で狙いをつけていた大天使レラージェ・ハレルを睨むと、レラージェ・ハレルはその身体を怯えたように硬直させた。その隙をデルタが見逃すはずもなく、一瞬で距離を詰めたデルタのディアブロが振るった戦斧が、その首をあっさりと刈り取った。

 

 想像以上に、ディアブロの動きは悪くない。本来の仕様と比べて機体各部のスラスターその他が装着されていないものの、デルタの運動能力をそのまま拡大したかのような身のこなしにて、最速で敵を殲滅していた。

 

「イータ……モヤシの癖に悪くない仕事なのです」

 

 思わず呟き、そうしてベータが思うのは。

 

「それはそれとして、早く次の敵を寄越すのです……えぇ!? もう終わりなのですか!?」

 

 見回しても敵がいない。戦術データリンクにて表示されるマップ上にも敵の存在を示すアイコンは浮かんでおらず。楽しい時間も、もう御終いらしい。がっくりと肩を落としたデルタだが、ふと、まだ一匹死んでいない獲物がいるはずだ、ということに気付き、その頭の獣耳を震わせた。

 

「まだまだ大物は残っているはずですし、ブッ殺せばボスも喜んでくれるはずなのです!」

 

 そんな皮算用を巡らせながら、デルタは機体を新たな戦場へと走らせた。

 

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 

 海へと落下して力尽きた沙霧を拾った瀬戸燦は、気絶して力の抜けた沙霧の身体を抱え上げると、海面に浮かぶアッガイの頭上へとその身体を引っ張り上げる。ぐったりと力が入っていない分その身は重く感じるが、十分にレベルを上げた覚醒者の体力であれば十分だ。

 

「ふぅ……政さん、この人、介抱お願いね」

「ええ、お任せくだせぇ、お嬢」

 

 隣にいたパンチパーマの男性に沙霧の介抱を任せ、強殖細胞とグランチャーがベルトバックルの内蔵COMPへと帰還した事でデモニカの装着が解けた生身の沙霧を政が抱え上げたのとほぼ同時。

 金属的な黄金色の羽根が舞い散り、頭上から翼を打ち振る音を立てて黄金色の翼持つ大鳶が舞い降りてくる。

 

「あ、お爺ちゃ……じゃなかった、陛下。お久しぶりです」

「ああ、良い良い。いつも通りお爺ちゃんと呼んでくれて構わんよ、燦や」

 

 崇徳院はその猛禽の顔でもはっきりと分かる好々爺の笑みを浮かべていた。金毘羅権現=ユーミルと並んで金刀比羅神宮の祭神である崇徳院と、当然だが燦はそれなりの付き合いがある……可愛がられている。

 

「防人の男は、生きておるかね?」

「うん、無事みたいよ。今、政さんが介抱してくれてるけど、大丈夫そう」

 

 沙霧に対して最後に自身の太刀を貸し与えたのは、崇徳院自身だ。当然ながら、心配なのかな、と首を傾げた燦は一つ頷いて、遠景に見える佐渡島を振り仰いだ。

 

「私達は役割を果たした。だから次は貴方の番だよ、蝶野さん。後をお願い、ね」

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 そうして。

 

 佐渡島上空にて。

 

『なぜだ!? なぜミサイルが来ない! 大陸の同胞達は何をやっているのだ!?』

 

 神々しい光を振りまきながら、その輝きとは裏腹に見苦しくキレ散らかす大天使が一羽。さっきから直接的な表現を避けて裁きの光だの何だの持って回った宗教的表現を使っていたが、ついに自分でもミサイルと言ってしまった様子。

 

「そりゃ来ないさ。さっき、全機撃墜したそうだからな」

『馬鹿な、人間や異教の蛮神がそんな事を……有り得ぬ! ここまでの力を持つなど、魚沼のあの男でなくては有り得んはずだ……! 貴様、一体何のインチキを……!? っ!?』

 

 怒りの形相で振り返った大天使が、唐突にその身を硬直させる。ああ、今更気付いたのか……その全身に石化が広がっている事実に。

 

 俺のペルソナの一つ『審判・ミトラ』のスキル【死の契約】だ。わざわざ戦う前に奇襲も仕掛けずのんびり会話したのも、それを狙っての事。

 

「おのれ卑劣な……っ! ならば配下に任せるだけの話よ! 我が下僕よ、来るがいい!」

 

 石化したまま身を震わせたメタトロンの左右に魔法陣が展開し、飛び出してくるのは馬鹿の一つ覚えのように巨大天使、合計四体。天使ヴァーチャー、レベルは51、といったところだ。現れた天使は、それぞれが手にした長槍をこちらに向け、一斉に進撃してくるが。

 

「おいおい、話しを急ぎ過ぎだろうに。俺のバトルフェイズは、まだ終了していないぞ?」

 

 抜き出したカードは、今まで使っていたラウズカードとは異なる特別製の一枚。ラウズメタジャリバーのリーダーに読み込ませれば。

 

《────SUMMON DEATHSAURER》

 

「準備は、イータがきっちり済ませてくれただろう? さあ……ダンスの時間だ、エセルドレーダ!」

 

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 

「イエス・マスター!」

 

 エセルドレーダが声を上げると共に、メメントス・ハレル最深層にて緊急警報のサイレンが鳴り響き、洞穴全体を溢れる鋼の唸りと震動が席巻する。

 

 深緑のマグネタイト光に輝く培養液が、地底湖の中心へと座していた巨大な機影へと吸い上げられ、秒を数えるごとにその水位を一気に減らしていく。やがて貯蓄されていた膨大なマグネタイトは数秒で涸れ果て、代わりにエセルドレーダが搭乗するその機体が、赤と黒に塗装された分厚い総アダマス製の重装甲の合間から、濃密なマグネタイト光を溢れ出させ始める。

 

「五行機関、起動。竜血炉、点火────稼働良好。機体中枢機関・第二心臓フォマルハウト・エンジンへのバイパスを解放、フォマルハウト・エンジン予備起動を開始します」

 

 ヒトのそれとは全く掛け離れた体型をした鋼の巨獣がその全身に満ち溢れる生体マグネタイトを解放すれば、露出した湖底に刻まれていた巨大な転移魔法陣が稼働開始、そしてその魔法陣以上に巨大な怪物じみた機体を、溢れ出す転移術式が包み込んでいく。

 

「虚数展開カタパルト作動────機神召喚!」

 

 携帯型のPDAを片手に、システムの不具合を逐一修正しながら対応していたイータが見送る中、魔法陣の出力が臨界を越え、転移術式が起動。巨大な鋼の機体は、空間を越えて主の元へと転移する。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 そうして空間を越えて出現した刃金の機体は、およそヒトの形をしていなかった。重力制御によって魔法陣から斜め方向へと一直線に落下し、そのまま二本の足で着地すると同時に足裏の巨大な鉤爪で地面を削って盛大に土煙を巻き上げながら山肌を滑り、制御された重力と落下の加速度だけで滑りながらこちらへと向かってくる。

 

 一言で表現するなら、鋼で形作られた怪獣だ。

 

 重厚な下半身には太く長大な尾がうねり、二本の足で地面を踏み締め、巨体な鉤爪を有する両腕から肩へと続き、そして巨大な牙の生え揃った口腔を開き、高らかに放たれる咆哮が佐渡島の大気を揺るがした。黒と赤、禍々しいツートンカラーで全身を覆った機械仕掛けの巨獣は、起伏の多い山肌をその鋼の質量だけで蹂躙しながら進撃する。

 

 機体名『デスザウラー』。

 

 運動性能に優れいっそ優美ですらあるアルファのダンとは打って変わって、ただひたすらに巨大にして凶暴な、俺の機体。その頭部装甲が展開し、開いたコクピットの入り口に飛び込むように搭乗する。

 

「マスターの搭乗並びにシステム接続を確認。神経接続良好、システム・オールグリーン。第二心臓フォマルハウト・エンジンの稼働率72%に上昇。デスザウラー、完全起動します────!」

 

 ハッチが閉鎖されると同時、巨大なシートに拘束されるようにして機体に接続したエセルドレーダが上段から俺を出迎えた。彼女に導かれるようにして、その床へとラウズメタジャリバーを突き立てて操縦桿とし、握り締める。

 情報接続加工技術により強殖生物の装甲を通して全身の神経系がデスザウラーの全身へと拡張。その中枢たるフォマルハウト・エンジン────邪神クトゥグァの神核を宿した巨大炉心はペルソナ・プロメテウスの“禁忌の炎を操る権能”によって掌握され、溢れ出す膨大な熱量が全身の末端にまで供給されていく。

 

「お待ちしておりました、マスター。私も、この子も」

「ああ、よく待っていてくれた。……さあ、行くぞエセルドレーダ」

「イエス・マスター。行きましょう、どこまでも、彼方までも」

 

 刺々しい牙の生え揃った口腔を大きく広げたデスザウラーが上げる歓喜の咆哮が衝撃波のように拡散し、佐渡島の空を大きく揺るがした。

 

 それにも怯まずに天使共はこちらへと向かってくるが。

 

「エセルドレーダ、スラッシュハーケン射出!」

「イエス・マスター!」

 

 ナイトメアフレームのそれを更に大型化したロケットアンカーが高速で射出され、運悪く先頭にいた天使の一体へと突き刺さり、そのまま巻き取られるワイヤーによってこちらへと引きずり寄せる。天使も反撃しようと槍を振り上げたが一手遅く。

 デスザウラーが振るう巨大な鉤爪によって引き裂かれ、そのまま全身ごと回転させるようにして放たれた巨大な尾────加重力衝撃テールを胸元へと叩き込まれて吹き飛んで、それが後続の天使へと衝突し、敵の進撃の勢いを大きく削いだ。

 

 同時にこちらは機体を真っすぐ前へと走らせ、跳躍。重力制御による挙動は見た目だけは軽やかに、しかし重力を軽減させるでもなく向きだけ変えた重力に引かれ、自ら進行方向へと“落ちる”事による疑似軽身功はそんな生易しいものではなくデスザウラー本来の重量のまま、重量全開のぶちかましが轟音を立てて天使へと衝突し。

 

「よし、次だ!」

 

 総アダマス製の機体による超重量のフライングボディープレスで二体を叩き潰すのに合わせ、残りの敵には尾部の十六連ミサイルランチャーから放たれた氷結属性弾により牽制。足が止まったところに尻尾を大きく振るった反動で跳ね起きて口腔を開き、その奥にある砲門へと光が溢れ。

 

 ────荷電粒子砲。

 

 名前だけは荷電粒子と振られたその兵器、実体は核熱属性の霊子加速砲だ。フォマルハウト・エンジンに直結したその威力は核兵器のそれに等しく、それを一点収束させる事で余分な熱量で外界を焼かず、余すところなく敵を焼却する。

 当然その一撃に耐えられるはずもなく、直撃を食らった天使は一瞬で蒸発。そのまま横に振られた光線に巻き込まれ、残る二体目も綺麗さっぱり消滅し。

 

 そうして。

 

 最後に残っていた大天使メタトロンはといえば。

 

 ようやく【死の契約】による拘束が解けたようで。

 

『忌まわしいものを作り上げおって! おのれガイア連合、不信仰の異教徒共め、許さんぞ!』

「お前に許可をもらう必要はない。好き勝手やるのが“俺ら”だよ」

 

 好き勝手やる────しながら、しかし助け合う。そうして好き放題やらかした成果を出し合い、重ね合わせて、共有して、一つ一つ積み上げるようにして、それら積み重ねた皆の“好き”が、“俺ら”の力となっていった。

 それをコイツらが理解する日は、きっと来ないのだろうけど。

 

 しかし、そんな事には何の意味もなく。

 

『貴様は、危険だ。私が、この場で、この世から跡形も残さず消し去ってくれる!』

「消えるのはオマエだ。跡形も残さない」

 

 大天使が武器を構える。

 デスザウラーがその爪牙を見せつけるように。

 

 そうして。

 

「エセルドレーダ、準備はいいな? アレを試す」

「イエス・マスター。全力稼働に合わせ、出力調整スタート────第二心臓フォマルハウト・エンジン全拘束を解除、並びに出力100%に上昇。第一心臓アザトース炉心へのバイパスを解放します!」

 

 そう、ダン・オブ・サーズデイに代表される“オリジナルセブン”────七陰の機体が人工筋肉技術の広告塔であるのと同様に、このデスザウラーは、といえば。

 

「じゃあ、いいものを見せてやろう。そうして驚け」

 

 取り出したるは新たなカード、二枚。トランプで言えばクイーンに相当する地母神ペレと、そしてキングのスートを割り当てられた────魔王ベリアル。

 

 それをラウズマカジャリバーに読み込ませ、無機質な電子音声と共にデスザウラーの中枢炉心が全力機動を開始。

 

《Absorb QUEEN.》

《Evolution KING.》

 

 ラウズマカジャリバーの無機質な電子音声と共に、デスザウラーに搭載されたストレージCOMPが起動する。

 それは本来であれば武器シキガミなどを搭載する武装用のストレージであるが。

 そこに収まっているのは、とにかく膨大な量の強殖生物だ。

 

 溢れる肉塊がデスザウラーの全身を覆っていくと共に、コクピット内から十三枚のラウズカードが解放され、内包されていた霊基が完成する強殖装甲へと融合されていく。

 

「第一・第二心臓同期開始、出力100%にて安定を確認。神経接続、良好。全兵装、再構築並びに接続完了。システム・オールグリーン────」

 

 そうやって完成するそのカタチこそ、デスザウラーの真の姿。

 ガイア連合佐渡島支部が保有する技術の集大成。

 

 ソレを以って宣告する。

 

 

「さあ、オマエ達の旅の終わりを告げるラスボスを紹介しよう。死と破壊の王────『デストルドス』だ」

 

 

 

   △    △    △

 

 

 

【スーパー系】技術開発班ロボ部【最強説】Part.242

 

783:名無しの転生者

せつこ、それデスザウラーやないwwww

デストルドスやww

 

784:名無しの転生者

いやいや、そこはウルトロイドゼロじゃないのかよ・・・wwwwwwwwww

 

785:名無しの転生者

まあ強殖装甲でデストルドスを再現するのはある意味正しいけどね。

 

786:AKANE

デスザウラーも超絶カッコイイけど、やっぱり生の怪獣は最高だよね!

中でもデストルドスはあの生々しい醜さが至高

ヒーローを模倣したウルトロイドゼロの顔の名残が頭に中途半端に残ってるのも尊厳破壊みたいでゾクゾクするし

爛れたような表皮の造形とかもいいよね

肩から生やしてるレッドキングの首なんかもこう、異形感を増していていい感じだし!

本当にもう、怪獣デザインを手伝った甲斐があったよ!

 

787:名無しの転生者

あー、あれデザインしたのこの人か……

 

788:名無しの転生者

知ってるのか雷電……いや、本当に>>786誰?

 

789:名無しの転生者

Lv74の女神スカディに尊厳破壊プレイかましてLv3オバタリアンに零落させたヤツ。

 

790:名無しの転生者

 

 

791:名無しの転生者

 

 

792:名無しの転生者

 

 

793:名無しの転生者

 

 

794:名無しの転生者

ヒェッ!

 

795:名無しの転生者

ガチでヤバいヤツやん

 

796:名無しの転生者

それにしても、ちょっと遅レスだけど、あのデスザウラーやたらと動き良かったのに突っ込んでいい?

 

797:AKANE

確かに、ウルトラギャラクシー大怪獣バトルのゴモラ並によく動いてたよねー

あの作品は怪獣同士のプロレスバトルが見どころなんだけど、今回のは敵の動きが悪いのが気になったかな

曲がりなりにもデスザウラーを相手にするなら、もう少しいい感じに動いて欲しかったな

 

798:名無しの転生者

曲がりなりにも高レベルだからってのもあるし、それ以外にも重力魔術発生装置を全身に仕込んでるはず。

半終末の頃から完成していたテクノロジーだからな。

 

799:名無しの転生者

それにプラスして今は強殖装甲で強化してるのか・・・

 

800:名無しの転生者

ところで、デストルドスって事はまさか、例のあの禁断の兵器が組み込まれているって事・・・?

 

801:AKANE

イエース!

当然!

まああの程度の敵に使う価値があるかどうかは微妙だけど、そりゃ積んでるってば

 

802:名無しの転生者

そういえば空間歪曲システムとか、もう完成してたよな……

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 あまりにも歪、異様。

 

 左右非対称の歪なシルエット。

 鈍色の全身に全身に生えた不揃いな棘と、その先端を穢す血汚れのような暗い赤。

 被膜の翼と一体化した両腕から生える鎌のような鉤爪。

 胸郭を飾る機械じみた蟲の顔。

 

 まるで無数の生物を、生物学的な均衡も美も何もかも投げ捨てて出鱈目に捏ね合わせ出来上がったような、そんな異形の大怪獣。

 デスザウラーを“芯”として、強殖装甲技術にてその全身を強化、そこに十三枚のラウズカードをまとめて吸収する事で完成する最強形態“キングフォーム”。

 

 

 ────殲滅機甲獣デストルドス。

 

 

 足元に“地面の概念を貼り付ける”事で何もない空中を踏み締め地響きを立てて歩きながら、ちょうどいい距離にまで、余裕を持って間合いを詰めていく。

 

「お前の間違いは……まあ山ほどあるが、一番はアレだな。俺と二回も会話を────悪魔会話をした事……いや、本当に。会話すれば石化されるって最初の一回目で分かってただろうに、学習能力ないのかよ……」

『貴様ッ…………貴様ぁああああああッ!』

 

 相手の天使はその身を再び石化させ、大天使の状態を維持するのが精一杯なのだろう、もはや何をするでもなく、ただ叫ぶだけだ。そんな相手に憐れみすら感じながら、俺はコクピット内部の空中に投影された仮想コンソールを操作して、照準を定め、デストルドスに搭載された最大の殲滅機構へと膨大な生体マグネタイトを流し込んでいく。

 

『ま、待て! やめろ、来るな! そ、そうだ話し合おうじゃないか、そうすれば我々は分かり合えるはずだ! な、だから武器を捨てて……待て! 待て待て待て! やめてくれ、やめろ! やめろやめろ、来るんじゃない! 私は天使だぞ! 主から選ばれ力を与えられた偉大なる……聞いているのか! 聞けよ! 私が話しているんだぞ!』

 

 泣き叫ぶ天使は、それでもどうにか藻掻きつつ、部分的にでも石化の拘束を解こうとでもしているのか体内のマグネタイトを激しく流動させているのが、デスザウラー────デストルドスの計器に表示される、が。

 

「鬱陶しい。ベータ、デルタ、やれ」

『お任せください!』

『はいなのです!』

 

 サウダーデ・オブ・サンデイ、空中を走り抜ける閃光にて、左右の翼が撃ち抜かれ。

 ディアブロ・オブ・マンデイ、嵐のように振り回された戦斧が、四肢を断ち割った。

 

 石化した天使の残骸が無価値な瓦礫のようにバラバラと地面に落下して、そのままマグネタイト光の粒子へと分解し、消滅していく。

 

 敵は、逃げられない。

 

『助け、助けて! 主よお願いします! 待って、何でもしますから、犬になります! 信仰だって捨てます! だからやめて、やめて、死にたくない!』

 

「ああ、はいはい……どうでもいい。エセルドレーダ、デストルドD4レイ、発射準備」

「デストルドD4レイ発射準備、開始します。第一・第二心臓同期スタート、臨界出力まで上昇。チャンバーへの経路を展開、D4レイ機関部へのエネルギー充填良し。電脳異界型砲身、概念ライフリング形成。仮想砲門、展開」

 

 フォマルハウト・エンジンの中心で滾る邪神クトゥグァ、そしてラウズカードとして強殖装甲に取り込んだ十三体の高位悪魔、それらの力を引き出してプロメテウスの権能を補強。

 それによって強化された“禁忌の炎を司る権能”が極限まで引き出され、もう一つの炉心に眠る邪神アザトースの力を掌握し、そこから引き出すのは何より禁断の“世界を滅ぼす権能”。

 

 胸郭を覆う蟲の顔、その上で血色に明滅する三眼を中心に、赤黒いマグネタイト光に燃えるオーロラが収束していく。燃え立つような赤紫色の妖光は秒刻みでその明度を増していき。

 

「D4レイ、発射」

「イエス・マスター。D4レイ、発射」

 

 胸上に浮かぶ仮想砲門が一瞬だけ拡大し、そこから濁流のように溢れ出した眩い輝きが無数の赤雷を伴って奔流と化し、直撃。回避するまでもなく大天使は呑み込まれ。

 

『や、やめろぉおおおおおおおおおおおおおッ!!!!』

 

 泣き叫ぶ大天使を無数の罅割れが覆い尽くし、時間が凍り付いたようにその動きを止め、瞬間。

 

「終わりだ」

 

 邪神アザトースの“世界を滅ぼす権能”によって空間ごと破砕され、大天使は完全に消滅し。

 

 そうして、佐渡島における大天使降臨は、比較的どうしようもない大天使の醜態と共に幕を閉じた。

 

 

 

 




 どうにか書き上がった……これで後はエピローグを書くだけ……!

 ようやく終わりが見えた今回。
 一話二話かそこらで終わるはずだったのに、びっくりするほど伸びた。






~割とどうでもいい設定集~

・大天使メタトロン
 元は魚沼でのメタトロン降臨未遂事件の際に魔王ミトラスのフォルマの断片を持ち逃げした雑魚天使の一体。
 それが、どうしようもなく巡り合わせのいい(悪い)アホを捕まえるのに成功した挙句、ミトラスのフォルマと有翼日輪の紋章(複製)、核の力と三つ揃えて取り込み、トドメにヘブライ系の神秘と相性のいいパレスの残骸をMAGとして吸収する事で完全体メタトロンになった。

・試製核反応炉
 ロボ部製、デモンベインの動力炉……の試作品の一つ。内部に有翼日輪の紋章のレプリカを組み込んでおり、限定的に引き出した太陽神の権能にて核反応を制御する核反応炉。
 試作品としての役割が終わった後は、とあるシェルターに安く払い下げられ、民生用の動力炉として扱われていた。
 馬鹿が勝手に分解して天使に食わせた。試作品らしくメンテや改造がしやすい単純な構造になっていたのが仇になった。

・先行量産型ブレンパワード
 元ネタは『ブレンパワード』。
 試作型としてのグランチャーのデータが反映された、量産に移すための試作品。
 今回の事件に合わせ、突貫工事で配備されたもの。

・スフィアソルジャー
 元ネタは『ウルトラマン』シリーズ。
 ブレンパワードの簡易量産型といえる空戦型のデモノイド。元ネタと違い操縦者を必要とする他、武装その他がほとんど搭載できず、機体そのものに組み込まれたスキルしか使えない。
 宇宙世紀ガンダムにおけるボールみたいな代物なのではっきり言って弱いのだが、それでも空が飛べる上に量産が容易いのが利点。

・崇徳院
 金毘羅権現と並ぶ、金刀比羅神宮のもう一柱の祭神。
 言わずと知れた日本最強の怨霊、崇徳上皇。彼がいるため、金刀比羅神宮は佐渡天狗に対して非常に強い権威を持つ。

・縁日式ミサイルディフェンス
 度津神社で縁日=祭事を行って生体マグネタイトを集め、そこに五十猛神が組み上げた巨大攻城弩を設置して神木の丸太を装填、氏子一同が総出で弓を引き絞り、ダイアナ神が狙いをつけて発射するコンビネーション。
 威力の底上げのため、牛尾神社まで屋台を出して取りに行った御朱印を貼り付ける事で弾頭に厄災神の権能を上乗せして撃ち込んでいる。
 縁日のメルヘンさ加減とは裏腹に、威力は比較的強烈。

・雷光
 元ネタは『コードギアス』。
 未完成のサウダーデ・オブ・サンデイ銃剣形態の機関部・砲身を、呉製のナイトメアフレーム・グラスゴー四機に接続して無理矢理撃てるようにでっち上げた仮設兵器。
 操縦者はベータ。
 本来の仕様のサウダーデであれば高速で空を飛び回り、霊子加速砲を連射して単騎でミサイル群を撃ち落とす事ができたとか何とか。

・大槻
 元ネタは福本作品。
 人間から魂ごと信仰排泄して、そこにシキガミコアを突っ込んだKSJ研製の人間擬態型シキガミ。メシア教会KSJ派にて多用されているモデル。
 ガンマの部下。
 魚沼から佐渡へと強制渡航された辺りで難民の一人=本物の大槻と入れ替わり、労働者達の内部監視と扇動を任務としている。

・ディアブロ・オブ・マンデイ
 元ネタは『ガン×ソード』。
 ロボ。
 オリジナルセブンの第二号。操縦者はデルタ。
 基本的にはアルファが搭乗するダン・オブ・サーズデイとほぼ変わらず、アダマスの骨格にヒヒイロカネの装甲を纏うオーソドックスな機体。
 まだ未完成だったのを突貫工事で仕上げ、スラスターなどが組み込まれていない仮設状態での実戦投入と相成った。

・デスザウラー
 元ネタは『ゾイド』シリーズ。アニメ版デスザウラーが元であるため、玩具版公式設定の倍以上の巨体を持つ。
 ロボ。ガイア連合佐渡島支部における特記戦力。
 怪獣型としか言いようがない非人型。
 骨格のみならず装甲すら超重量のアダマスで構成されており、途方もないパワーと耐久性で敵を蹂躙する質量プロレス。単純な質量と重量だけでも恐ろしいまでの破壊力を持つ上に、高火力の重火器も搭載している。
 基本的にダンなどと比べてもデカくて重いのだが、それを筋力でカバーしている上、ロボ部で研究されていた重力魔法発生装置にて加速するため、見た目以上に速い。
 二基の動力炉の内、片方はロボ部で研究され失敗に終わった、邪神クトゥグァを動力源とする炉心『フォマルハウト・エンジン』であり、もう一つは同じくクトゥルフ系神話生物であるシャッガイからの昆虫より獲得した技術『アザトース炉心』。これらをペルソナ『プロメテウス』の禁忌の炎を司る権能にて制御するため、この機体はパピヨン専用機となっている。

・デストルドス
 元ネタは『ウルトラマンZ』。言わずと知れたラスボス怪獣。
 デスザウラーを芯にして展開する強殖装甲にして、魔王ベリアルを中心とした十三体の高位悪魔の霊基を吸収して完成するキングフォーム。
 単純に強くなっている上に、蝶野が身に纏うガイバー・アプトム・フルブラストと同調してその機能をも使用できる。
 何より特徴的なのは空間断裂兵器『D4レイ』。空間歪曲そのものはこの時点で既にガイア連合ロボ部でもある程度の実用化を見ており、そこにベリアルとクトゥグァを始めとする十四体の火炎系高位悪魔の権能によりプロメテウスの能力を補強し、禁忌の炎を操る権能にて炉心のアザトースを掌握、世界を終わらせる権能を叩きつける事で空間崩壊を引き起こす必殺兵器。
 当然ながら多用していいものではない。

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