◇ ◇ ◇
ガイア連合ロボ部、魚沼工場。戦術甲冑・震電や士魂号などといった対悪魔用機械兵器の生産ラインや、同じく機械系兵器開発のための大規模研究施設が配された巨大施設。
その開発スペースは現在、鋼がぶつかりあう騒音と、それに負けじと怒鳴り合う技術者たちの声とで、喧騒に溢れていた。
「腕部スクリュー、また爆発してるぞ!?」
「これで何回目だよ!?」
「都合8回目」
「水気を木気の雷に転換するダイナモの術式が、スクリューの金気から水気を生成する転換術式と干渉するんだろ? なら適当な権能と挟み込めば?」
「神経接続実験始めるぞ! カニタンクの固定、確認したか!?」
「マッチングクリアばっちり! ヘイローを通した情報接続加工も良好~! ついでに色々と確認したいからルルイエちゃん、ちょっと私と二人きり密室でしっぽりと~……」
「あ、先生ネキが暴走してるぞ、処せ処せ!」
「ガメラレーダーのシステムはそのまま流用できんからな! 北斎ネキとの相性が悪過ぎる!」
「レーダーに使われてる妙見菩薩はハスターの化身じゃけぇ、クトゥルー属性マシマシの北斎ネキとじゃぁな」
「分かってる! 女神マソの千里眼にホルスの眼を組み込んで代用してみる! ついでに目からビームの再現も完璧!」
「あれ、そういえば私、どれくらい寝てないんだっけ……」
「いかーん探求ネキが正気に戻りかけてるぞ! 早くエナドリ注入して引き戻すんだ!」
「元々、時間を自由にしやすい個人研究勢だからな……デスマとかブラック労働に耐性がなかったんだろ……」
「おーいウルトラボンド持ってきて!」
「すまん今錬成中!」
「ウルトラボンド追加注文入りました~!」
「探求ネキちょっと、神珍鉄合金樹素材について聞きたいんだけどー!」
「装甲の自己再生術式ですか、その辺はここをこう!」
「合金樹使うならさ、いっその事邪神ヴルトゥームのフォルマと合成しない?」
「気を付けろ! 今回のは人工筋肉だけでもお前らよりレベル高いんだからな! 下手に触ると喰われるぞ!」
「あっ、そこ、アホが一人食われてる!」
「気を付けろと言った矢先にこれかよ!」
「『組付けもやる』『掲示板にカキコもする』「両方」やらなくちゃいけないのが技術班のつらいところだな」
「こらそこ、喰われながら掲示板実況とかしてないでさっさと脱出せんかい!」
「肩部砲門速射型パシュパタストラ! 霊子加速砲の機構流用で何とか!」
「霊子加速砲と重力制御機関との同調実験、シミュレーションは!?」
「MBH砲弾の生成プロセスが安定してない! シラカワニキが戻ってきてからじゃないと」
「そのシラカワニキは……!?」
「動力炉の異界構築中!」
仮組みされた神珍鉄の骨格が巨大なメンテナンスベッドへと固定されており、その周囲には鉄骨を組み合わせて構築された足場。鋼で構築された巨大な檻を中心にして、レーダーユニットや魚雷発射管など無数のパーツが組み上げられては解体され、それについても喧々諤々と議論が交わされる。
そこに使用されている各種オカルト素材も、どれもこれもミカとサオリが見た事もない程の途方もない高位素材だ。それらを投げ売り感覚で消費しながら、巨大な構造体を組み上げている。最終的には人型になるのだろう、くらいは見れば分かるが、そうなれば何が起こるのか、想像もつかない。
「これは……凄まじいな。一体、こんなものを作ってどうするというんだ?」
「うーん、意外と単純に“作ってみたかったから!”なんて理由だったり?」
「いや、さすがにそれは……」
巨大な作業場の片隅に設けられた応接スペース、普段は使われていない様子のガラステーブルと安物のソファの周囲には申し訳程度の防音結界が張られていたが、それでも騒音が全く防ぎ切れていない。
そこに集まっているのはミカとサオリ、そして途中合流したアリウススクワッドの他メンバー。それ以外にもロボ部の研究者の中からちょうどよく手の空いた者の中から、事態を面白がって寄ってきた面々が集まっている。またサオリから報告を受けたガイア連合魚沼支部の重鎮である九重静に、ガイアミートの工場長である武田観柳や、魚沼支部に所属する黒札やその他異能者なども、リモート会議の体で電子回線越しに顔を出していた。
「すごい、ね、これ」
「ですねー、すごいですねー、色々な意味で」
「そうだね、これは少し……大変だ」
秤アツコは素直に感嘆の声を漏らし、槌永ヒヨリは周囲をキョロキョロと見渡しながら身を縮め、戒野ミサキは驚きを通り越して呆れたように肩をすくめた。抱く感想は三者三様だが、場の雰囲気に圧倒されているのは同じ。
そんな中、人数分の紙コップを乗せたトレーを運んできた青年『旋風寺舞人』────通称“列車ニキ”は、申し訳なさそうに頭を下げた。まるで一介の下働きのような風情だが、これでロボ部にトップクラスの出資をしている富豪系黒札で、重工業系大企業の経営者だというから驚きだ。
そんな彼が何でこんな場所でお茶汲みなどやっているのか、といえば、他にやってくれる人間がいないから、という割と切実な理由があったりする。皆、忙しいのだ。
「ごめんな、今ちょっと皆二十四時間デスマ三十八連勤とかキメてるせいで色々と余裕がなくって……」
「いえ、こちらこそ忙しい中に押し掛けてしまって申し訳ありません」
装甲列車の案件に、水中仕様の巨大特機の開発。連日のデスマがようやく終わると思っていた矢先に大型案件が二件まとめて追突事故を起こしているせいで、本当に余裕がなかったのだ。さらにそこに少女たちが持ち込んだミサカの件であるから、もう本当に申し訳ない。
頭を繰り返し下げに下げたサオリは気を取り直して、それで、と話を続ける。
「ああ、分かっているよ。あのミサカって子についてだよな。それなら、今パピヨンニキが診てくれているから」
「パピヨンニキ……佐渡支部の支部長でしたか。そんな人が?」
「ちょうど今日、精製した人工筋肉とか色々な部品を持ってきてくれたところだったんだ。それで────」
と、青年が説明を始めたところで、作業場の扉が開いた。白地に赤十字が掛かれたその扉は、緊急医療用の設備が備わった救護室。先刻、サオリとミカが連れてきたミサカを診療のため連れていった扉が押され、微妙にふらつくような揺らぎの混じった足音と共に内側から開かれた。
「あ、パピヨンニキさん! 診断の結果は出ましたか?」
「ああ、問題ない」
と呟くように答えた青年、やや痩せぎすの体躯、顔色もあまり血色がよいとは言えず、一見して人当たりが悪そうな印象を与える死んだ目付きが特徴的だ。疲労が色濃く刻まれているその顔は、彼が診療を始めた最初からのもので、忙しい時に申し訳ない、と、そんな事をサオリは思うが。
「それで、色々と大丈夫でしたか?」
「まず、あのイタチとかいう男だが、問題なく手術完了だ。あれは開発直後のアマゾンズドライバーを長らく使い続けてきた元人間、貴重なデータを寄越してくれた初期テストユーザーともなればな。それにどうせシキガミパーツ移植程度、そこまで難しい作業でもない。むしろセドナ神の支払い能力の方が気になるところだが……まああれでアメリカでは有数のシェルターの主だ、そうそう問題にはならんだろう」
「そうか、良かった……さすがにウチで投資したラインで生産した列車の乗客に犠牲者なんて笑えませんからね」
そんな事を一通り話して後、彼はサオリ達に向き直り、そして。
「結論から言おう────俺の専門分野だ。色々な意味でな」
青年は一言で言い切ると、手にしたエナジードリンクの缶を一息に呷り、部屋の隅のゴミ箱へと放り投げた。狙いが逸れて床に落下しそうになった空き缶の底に【アギ】を撃ち当てて無理矢理ゴミ箱へと軌道修正した青年、ガイア連合佐渡島支部・支部長である蝶野光爵────通称“パピヨンニキ”は、連日の徹夜でふらつく頭を押さえながら話を始めた。
「まず、あの少女────ミサカという名の娘だが、あの子の脳にはこんなものが埋め込まれていた」
と、彼は胸ポケットに収まっていた試験管を一本、卓の上に転がした。対面する二人の視線が、その中身へと集中する。ガラス製の応接テーブルの上を転がる試験管の中を満たしたどろりと濁った黒褐色の液体────キクリ米をベースに作られた“ノロイ酒”の中に浮かぶのは、一見すれば小石のように見えたが。
「うわぁ……これ、虫?」
「こんなものが、あの子の頭の中に?」
蟲、あるいはその化石。指先ほどのサイズのそれが、濃い色合いの液体の中に浮かんでいる。呪力を孕んだアルコールによって石化状態を維持しているのは、形としては蜘蛛に似ているが、生物学的に歪な奇形の蟲。頭胸部の上に並んだ単眼も、数や長さが左右で釣り合っていない節脚も、今は灰色に石化しており、ぴくりとも動かないが。
「間違って割ったりするなよ。石化の状態異常は外部からの解除抜きでそうそう解けるものじゃないが、下手に逃がして、今度はその辺の一般人にでも寄生されたら厄介だ」
「嘘……これ、まだ生きているの?」
「ああ。下手に殺して本体に感知されると面倒臭い」
人間の脳の中心に埋まっている異物を、柔らかい脳味噌どころか頭蓋にすら傷をつけずに摘出する。それができる人間は、山梨のガイア連合を探せば医療部や技術部にはいくらでもいる。魚沼にも幾人かはいるだろう。だが、それが生きた蟲ともなれば、どうか。
いざ摘出の段階となって、蟲が抵抗して暴れ出せば脳を傷つけ、脳という器官の繊細さを考えれば【ディア】で治癒できるとも限らない。
だから人間の脳髄に埋まっている蟲を、脳に一切の影響なく頭蓋越しにピンポイントで石化させて無力化し、その上で摘出する。それができる人間が、どれだけいるか。その意味を理解した魚沼在住の医療部銀札達が、反射的に顔を引き攣らせた。
「虫の形をした悪魔……種族は妖虫、か?」
「元の種族は、な。だが、今は天使だ。ガイア連合でも使っている悪魔召喚プログラムの原型、メシア教会製の天使召喚プログラムには、本来は異なる神話系統に属する悪魔を強引に天使種族として召喚し、無理矢理使役する、とかいう面倒な機能があってな。それを使ったらしい」
馬鹿馬鹿しい話だが、と蝶野は濁った眼を皮肉気に細め、肩をすくめた。
「……なるほど、な」
「『天使アイホート・チャイルド』がコイツの名だ」
アイホート・チャイルド────アイホートの雛。クトゥルフ神話における迷宮の邪神アイホートが生み出す眷属、蜘蛛に似た群体性の小蟲。人体に寄生し、時が来れば宿主の腹を食い破って孵化する異形。
「で、この蟲の役割だが」
「やはり、『宣教の羽根』と同じようなもの、か?」
メシア教会過激派が一般的に多用する洗脳手段。KSJ研によって提出されたレポートによれば『レベル30越えの高位メシア教徒が、レベルを代償に作成する』というものであるらしく、安定した量産が不可能であるため、要所要所でしか使われない、というものだが。
「いや、コレの機能はまた別────人造メメントスの作成だ。対ペルソナ事件を担当する君らなら知ってるだろう、メメントス、ほらアレだ」
「メメントス? 認知異界の大本の一つ……集合無意識が具現した超大型パレス、だったか。我々が関わる事はあまりない案件だが、聞いた事はあるな」
そして佐渡の金山異界の裏面、厄介市民を収監するために使用されている認知異界メメントス・ハレル。それとはまた異なるアプローチで作成されているのが、ミサカが接続されている疑似メメントスだ。
「ウチのメメントス・ハレルは、元々存在する異界にメメントス由来の素材を安置し、イザナミやニュクス、タナトスに近しい神格を管理者として配置する事で作り上げた通常異界ベースのものだ。だが、こっちのこれは微妙に違う。複数……多分、最低でも百かそこらはいるだろうが、まあそれくらいの数のペルソナ使いを用意して、その脳内にアイホート・チャイルドを寄生させる事で意識をリンクさせ、ゲシュタルトを基盤にした集合型認知異界────メメントスモドキを強引に作り上げたものだ。多分、神取グループあたりの技術が入っているな」
その技術にも、覚えがある。
サオリ達アリウススクワッドの出自に関わる、かつてのメシア教過激派が神取グループと協力して進行していた『アリウス計画』。その目的は第一にペルソナ使いの異能のデータ採取、第二に人工救世主の試作体としての試験。
また聖人や天使のペルソナを降魔するために、貴重な聖遺物から採取した聖人の血を使ったクローン体を作成する技術なども存在していた。
だが計画そのものは失敗────肝心のペルソナ使いのレベルが上がらなかったため。心の壁や心理的要因、特にメシア教会による魔術的な、あるいは心理的な洗脳が、ペルソナの成長を阻害していたのが原因……と、ガイア連合では結論付けているが。
おそらくは、その流れを汲む技術。
この天使アイホート・チャイルドは蟲よりもレベルの高い相手には寄生できないが、その問題もアリウス計画を“ペルソナ使いを低レベルに保ったまま量産する”技術と見做せば、それはむしろ利点となる。
「じゃあ、この子と同じような子がたくさんいるって事?」
「そうだ。疑似とはいえ曲がりなりにも集合無意識異界、構築には素体の数を揃える必要があるからな。幸いにも異界の構造をサーチすれば探査は可能だ。後は片っ端からそいつらを捕まえて、蟲を摘出してやれば片が付く」
その言葉にサオリ達が顔を明るくした直後に、蝶野は肩をすくめて余計な一言を付け加えた。
「ただし、問題が一つ────」
これをクリアできなければ、摘出はできない、と。
「メシアの疑似メメントスの原理とアイホート・チャイルドの性質上、まず間違いなくコアになる認知異界の大本になった被験者がおり、そしてその精神世界にはアイホート・チャイルドのコアとして天使化された邪神アイホートが巣食っているはずだ」
「つまり?」
「一体か二体ならともかく、一気にまとめて大量に手術しようものなら、まず間違いなくアイホートに感知されて妨害される」
当然の話では、ある。なら、どうすればいいかといえば。
「つまり、異界に突入してそのアイホートっていう悪魔を倒せばいいんだよね?」
「そういう事だ。話が早くて助かる。幸いにもこの魚沼はイザナミの黄泉平坂と縁が深い。俺のペルソナの一つ『バロン・サムディ』の力で黄泉平坂を経由して認知領域への入り口を作れるから、中に突っ込んでアイホートを倒す……最低限、手術の邪魔ができないように妨害してくれば十分だ」
その言葉を受けて、服の裾を軽く払ってサオリが立ち上がる。その後についてアリウススクワッドの面々も、そしてミカも。
「なるほど。ならばそれは我々の仕事だな」
「もちろん私も行くよ。放っておけないもの」
そうして振り返ったミカの視線が向く先は、リモートで会議に参加していた彼女の夫。
「ごめんね、ちょっと行ってくる。すぐ帰るけど、夕ご飯はそっちで用意してくれるかな」
『ああ、ミカの大好物を用意しておくから、頑張って』
「うん。……必ず帰ってくるから。じゃ、行ってきます」
そうして魚沼シェルターの戦いは、メシア教会過激派が密やかな行軍を始めるよりも数歩先んじた形で開始された。
◇ ◇ ◇
魚沼市郊外。
豊かな自然と広大な農地が広がる中、比較的中心部とのアクセスが良く、ジュネスとも近く生活しやすい一角に、一軒の賃貸アパートが建っていた。よく言えばノスタルジーを煽る、悪く言えば微妙にオンボロな外見とは裏腹に、実体は築10年程度と意外と新しい。
惜しげもなくオカルト工法を使い強力な結界を敷いており、要所には定点設置型のアガシオンや簡易シキガミ、番犬代わりのイヌガミまで利用したセキュリティも優秀。さらに建物自体が単体でシェルターとして機能するようにもなっている。
そんな状態のため、家賃の額面は意外と高い。地元名家のハニトラや高位悪魔の干渉に悩まされず、生活を守るための黒札専用物件だから仕方ない。
とはいえ、ガイア連合魚沼支部から出ている補助金により黒札割引が効く上に、そもそも黒札という特権階級の収入は高いため、気にする事もない。むしろサービスに比して格安だ。
屋号────『コスモス荘』。
その門前で、鼻唄を歌いながら楽しそうに箒を動かしている少女が一人。砂埃や落ち葉を掃いては一ヶ所に集め、それを繰り返していく。頭に生えた猫耳をピクピクと動かしながら日課の門前掃除をこなしていく和服少女の名前は『こま』────このコスモス荘のオーナーである黒札のシキガミである。
「~~~♪」
ガイアアニメーションから放映される予定の新作アニメの主題歌。先行公開されたそれの鼻唄を鳴らしながら穏やかな時間を満喫していると、アパートの一階前に並んだドアの向こうから個性的な声が聞こえてくる。
『ンアー! アストルフォ君!』
『マスター!』
ドア越しという事もあって微妙にくぐもった声を華麗にスルーして聞き流しつつ、こまが掃除を続行していると、ややあって問題の部屋のドアが開き、妙にツヤツヤとした顔に爽やかな笑みを浮かべた青年が部屋から歩み出てくる。
「やあ、こまさん。今日もいい天気だね」
「おや、これはこれは底辺ニキさん、おはようございますニャ」
何故か全裸だが。
まあどうせ普段通りなので気にする事もない、とこまが気にせず掃き掃除を続けていると、底辺ニキの背後で再びドアが開いて、半裸の少年型シキガミがその後を追い掛けてくる。
「マスター! もう、全裸で外に出ないって約束したじゃない! ほらパンツ持ってきたから!」
「ごめんよアストルフォ君! もうノーパンは卒業するって約束したからね!」
などと二人が騒いでいると、横合いから伸びた巨大な腕が二人の頭へと痛烈なチョップを撃ち下ろした。
「こらアンタら! こんな場所で裸になって騒ぐんじゃないよ! 外に出るならちゃんと服を着ておいで!」
常識的極まりないツッコミを叩きつけたのは、ずいぶんと体格の良い女性だった。身長二メートル半を越える巨体であり、アパートの庇に頭がつっかえて窮屈そうに身を屈めていた。肩幅もごつく、老齢であるにも関わらず歳に見合わない分厚い筋骨が服を内側から押し上げているのがはっきりと見て取れる。
身長二メートル五十センチの仁王像がエプロン掛けているような異様なビジュアルの彼女『出海馬場アキ子』────通称“ババアネキ”に対しても、こまはにこやかに頭を下げた。何せ彼女も同じコスモス荘の住人である。
「あ、ババアネキさん。おはようございますニャ」
「おはよう、こまちゃん。今日もお仕事かい、熱心だねぇ。そこのお馬鹿二人に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいだよ、全く」
出海馬場が肩をすくめると、全裸のまま首根っこを掴んで吊るされている底辺ニキは抗議するように声を上げる。
「別に不適切な服装はしてませんよ、俺」
「適切な服装をせんかい、お馬鹿」
当たり前だが問答無用。その頭に再びチョップが直撃する。二段になった頭のタンコブをさすりながら、分が悪くなった底辺ニキはその場からフェードアウトする。
「ほらアンタも、御主人様にちゃんと服を着せてきな!」
「はい、本当にごめんなさいババアネキさん! あ、待ってよマスター!」
アストルフォも頭を下げながら底辺ニキの後を追って去っていった。二人がその場から撤収すると、何やら色々と騒がしかったその場が急に静かになる。その静けさに耐えかねたように、こまはまた新しい話題を口に出した。
「そういえばウチの旦那様、今日は大型依頼だと気合い入れてましたが、ババアネキさんも参加するんですかニャ?」
「アタシゃ不参加だよ。いくら終末後だからって、店を開けないわけにはいかないからね。まあでも、底辺ニキの阿呆は参加するって言ってたよ。アンタんとこの大家ニキとは違って裏方らしいけど、前線に出るのもいいか、なんてどっちつかずな事を言ってたよ」
「なるほど……頑張って欲しいものですニャ!」
そんな事を話していたこまは、駐車場の方から聞こえてきたエンジン音に反応して頭の猫耳を震わせた。その音源が彼女の主人である“大家ニキ”こと『桜咲鈴雄』の乗る軽トラだと気が付いて、こまは駐車場の方へと声を掛ける。
「旦那様、今日は私も行きますからニャ! ちゃんと待っててくださいニャ!」
「はいよ了解~!」
そんな何でもない言葉に少しだけ気分を浮つかせて、こまは手早く掃除を終えると、今日の家事へと取り掛かった。
◇ ◇ ◇
魚沼市郊外、鳥煮亭総合学園。
元は山林に潜んで市民を襲い殺していた人喰いの妖怪がガイア連合に退治された際、周辺に住む土着の妖怪と交渉し、その山林を切り開いて作られた立地だ。住宅地から少しばかり離れた高台に位置しており、校舎の屋上から見下ろせば、魚沼市の中心部を一望する事もできる。
そんな屋上から視点をずらせば、グラウンドを中心に一部の生徒達が忙しく動き回っているのを見る事ができただろう。まるで何かのイベントを始めるようにテントを設営し、グラウンドの奥には物々しくL118榴弾砲までが倉庫から引っ張り出されて置いてあり、その様はちょっとした砲撃陣地だ。
その中心で忙しく動き回りながら指示出しを行っているのが、学園生徒会、通称“ティーパーティー”を治める生徒会長の一人である『桐藤ナギサ』だ。終末時の混乱で経営を続けていく事が困難になった複数の学校を統合して設立されたこの学校では、元になった各学校の生徒会を統合する形で構成された複数の生徒会が生徒内自治を行っており、その中で最も強い発言力を持っているのが聖園ミカであり、そしてナギサであり、そして。
「ひとまず順調、かな。この調子なら、敵の侵攻開始までに十分な準備ができそうだ」
同じく生徒会長の一人だった『百合園セイア』は、校舎内の生徒会室からその様子を見下ろして、ほっと溜息を吐いた。タロットカードやルーン石、水晶玉といった占術用具が散乱し、パズルじみた様相を呈したデスクの中心には広げられたままの一冊のノート。
卓上の皿に盛られていたルーン石を掻き回し、算定された結果をノートへと書き写したセイアは、その結果をガイア連合魚沼支部のデータベースに書き込むと、今度は散らばっていた筮竹を掴んで再び八卦図の上に撒き、その結果を占術書と照らし合わせて結果を算定、その結果からの考察も含めデータベースに書き込んで再び更新。
「基本的に順調、されど未だ予断は許されず、っと……忙しいな」
普段は手を見せないように指先までを覆っている袖を肘まで捲り上げて止め、忙しく手を動かしている。異能者の耐久力でも腱鞘炎になりそうな忙しさに悲鳴を上げそうになるが、それ以前にタスクが多過ぎて混乱しそうだ。
卓上に置かれたCOMPが無機質なアラームを鳴らし、計算終了を告げる。開かれていたアプリは予知能力系異能者専用にプログラミングされた、COMPの演算機能を用いて占術行使の自動・高速化を行うもの。鳥煮亭総合学園の生徒名簿から全校生徒の氏名・生年月日など各種データを自動入力し、生徒全員分の二十四時間以内の運勢を算出、データとして統計を取る事で魚沼市全体の運命の推移を俯瞰的に観測する。
このためにセイアのCOMPは増設CPUとして複数台のワークステーションと有線直結し、さらに大型の冷却装置まで導入しているが、生徒会室の半ばを占領する大型機器の発する熱量は非常に暑苦しく、初春とはいえ雪国の魚沼市の気候ですら空調を冷房に転じる必要があるほどだ。
「体調崩しそう……」
暑さと疲労でそろそろ頭痛が起きそうな額に冷却ジェルシートを貼り付け、温くなったスポーツドリンクを口に流し込んで作業に戻る。栄養補給はカロリーバーでさっき済ませた。後は、と再びタロットを捌いて卓の上に並べ直し、その結果を再びデータベースに打ち込んで再計算。
量子力学を組み込んだ占術は、運命の変動を起こさずに未来を観測できる。そこで大雑把に望ましい未来へ繋がるルートへと当たりを付けたら、その時間線に向かって通常の占術を用いた未来観測を行い、そちらへと可能性を収束させる。
未来観測による情報収集と確率変動を同時進行で行いつつ、再計算を繰り返す。確定していない未来は基本的に水物、運命と運勢の風向きと、そして何より現在を生きる人間の努力次第で、可能性の範囲内であればいくらでも傾き得る。良い方向にも、悪い方向にも。
幸い、敵方にはセイアと似たような予知能力者はいないらしく、こちらの未来視に対抗されるような気配はない。いたら可能性の奪い合いになっているし、何なら最悪、因果の縁を辿った逆干渉で遠隔呪殺を喰らいかねない。
この生徒会室に置かれたCOMP用豪華外付け装備も、半分くらいはそれを防ぐためのリミッターに使用されている。
「さて……」
膨大なタコ足配線を引きずったCOMPの画面と、何度も繰り返す占術の結果を照らし合わせながら、それをレポートに纏めてデータベースにアップロードして再計算。同時にそれをプリントアウトして、机の脇に積み上げ。
そうして彼女にしかできない仕事を続けていると、部屋の外からノックの音が響く。
「どうぞ」
「失礼します」
入ってきたのは、生徒会に所属する学生の一人である『星野』という名の女生徒だ。まだ小等部に所属している幼い生徒だが、何やら元は電霊の転生体だとかでプログラミングや電子情報管理にやたらと強く、便利なので重宝され、実質的にセイアの補佐役を務めている。
「ここ、最近一時間以内の未来予測は全部記録してあるから、ナギサのところに持っていって。少なくとも事前準備に関してはナギサに任せておけば問題ないから」
「はい、お任せください。きっちり届けておきます。DDSでの送信は?」
「もうやってある。でも、ナギサはこんな感じのアナログな紙面を重視するからね。こっちの方が見やすいんだとか」
電子情報でのやり取りの方が早くて正確、さらに妨害も受けづらい。中途でクラッキングなどを受ければ話は別だが、この終末環境下で気軽にハッキングのような真似ができる電子情報に強い技能の持ち主が、そうそういるはずもなし。
「ああ、そういえば幼馴染の彼の件は?」
「はい、無事片付きました。彼の実家のラーメン屋も無事ですよ」
「それは何より。魚沼市内に過激派天使が侵入する事を許すわけにはいかないからね」
息抜きに軽い雑談を挟みつつも、占術の手は止めず。星野が入れてくれたインスタントコーヒーにシュガースティックの中身を流し込みながらも、作業を進めていく。
「砂糖、入れ過ぎじゃないですか? 何本入れてるんですか?」
「8本。脳が糖分を求めているのさ」
溶け切らない砂糖でジャリジャリするコーヒーを喉に流し込みながら、そういえばコーヒー占いなんてのもあったな、と回らない頭で思考する。
「こんな事にまで仕事を持ち込んでいたら、頭が沸騰しますよ。機械じゃないんですから、効率ばかり考えても仕方ありません。そもそも糖分取りたいなら適当にスイーツでも食べればいいじゃないですか」
「うーん、分かってはいるんだけどね。……迂闊にそれを言ってナギサに聞かれようものなら、口にロールケーキ突っ込まれそうだし。私はミカと違って、口に丸太みたいなケーキを突っ込まれても一口で呑み込めるようなゴリラじゃないのだよ」
「そのミカ会長はどちらへ? こういう時には真っ先に出張っているはずなのに」
さりげなく友人をディスりながら甘過ぎるコーヒーを飲むセイアの世話を焼きながら、星野は首を傾げた。
普段こういう時に真っ先に表に出てくるはずのピンクがいない。生徒会長であるのと同時に、鳥煮亭総合学園に所属する異能者の中でも単純な戦闘力ならトップランクのミカは、学園における分かり易い精神的支柱だ。彼女が表に出てこない、という時点で、既に生徒達の間には薄っすらと動揺が広がっている。
「ああ、彼女なら敵の本拠地に突っ込んでるよ」
「それは……いいのですか? 学園も大事な防衛拠点の一つでは?」
彼女がいるのといないのでは、学園に所属する異能者達の士気が大きく異なる。確かに、現状の迎撃プランでは一般生徒に被害が出る事はない、という通達は出ているが、しかしそれでも彼女がいない、というのは不安材料だ。
もっとも。
「心配はいらないよ。今回の迎撃戦は可能な限り御膳立てされた安全な戦場で行われる、単なる“レベル上げ”イベントだ。ミカがいても仕方ないし、そもそも彼女みたいな高位異能者には出番がない。それにね────ミカが行かなかったら、そもそも詰んでたよ」
「詰んでいた、ですか?」
言ってセイアは肩をすくめる。
「そう。彼女みたいなゴリ……脳筋にも適材適所というものがあるのだよ」
「それ、誤魔化せていませんよ」
◇ ◇ ◇
魚沼シェルター内の、自営業の小売店が立ち並ぶ区域。
路地裏から少し奥へと踏み込み、住宅街との境界近くにある小さな店────駄菓子喫茶『カラフル』。一つ通りを隔てた場所に一戸建てが立ち並ぶ住宅街がある事もあり、既に周りの一戸建ての間に埋没しているような外観だが、中へと踏み込めば明らかに普通の家とは異なると理解できる。
内装はレトロでノスタルジックな昭和の駄菓子屋そのものだが、店内には厨房に繋がるカウンター席や、鉄板焼き用の机を備えたお座敷なども置かれており、やはり普通の駄菓子屋とは少し趣が異なっているようだ。
そんな懐古趣味の店の一角にあるテーブル席にて、女子高生の一グループが集まっていた。学校帰りにそのまま立ち寄ったらしき制服の少女達の一団は、しかし制服のデザインはまちまちで、それは複数の学校を取り込んで成立したその経緯から生徒達の制服が一定しない鳥煮亭総合学園の特徴だった。
「我ら『放課後スイーツ部』本日の依頼達成を祝して……乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
四人揃った少女達の声と共に、グラスを打ち合わせる小さな音が響く。
仲良さげな少女達『放課後スイーツ部』は鳥煮亭総合学園に所属する一部活であるが、同時にガイア連合に所属する異能者の集団だ。今日も一つ依頼を────何やら前世の縁がどうとか言って近場のラーメン屋の息子を狙って現れた天使を排除して欲しいと、その少年の幼馴染である少女からの依頼を受け、過激派天使を一体片付けた。
その達成報告も済ませ、今は打ち上げの時間。
魚沼シェルターは特に異能者だからといってガイア連合に所属して戦う事を強いられる程に極まった場所ではないのだが、そんな彼女達が魚沼シェルターの中でもそれなりの戦闘集団として活動している理由はといえば────『スイーツは金が掛かる』、その一点に尽きる。
特にこの終末後の世界では。
銀・銅札の現地民の目からすれば目が飛び出るような大金を簡単に稼ぐ手段がいくらでもある黒札異能者達ならともかく、過酷な環境変動を受け流通や生産に多大な支障が出るようになった終末後の世界の一般人が金を稼ぐなら、それなりの手段が必要になる。
いくら優秀な異能者だからといってスイーツを食べるなどという贅沢を味わえるのは、やはりこの魚沼市が終末後の水準でも恵まれている場所だ、という事なのだろう。
「おばちゃん! カラフルパフェ人数分、お願い!」
「はいよ、四人前だね。ほら、ステイシー!」
カウンターに立つ店主の出海馬場アキ子に呼ばれて、彼女のシキガミである青年『ステイシー』が人数分のパフェをトレイに乗せて運んでくる。それを受け取った部員の一人『栗村アイリ』は、テーブルに集まった放課後スイーツ部のメンバー達へとパフェを配っていく。
アキ子は、そんな様子をカウンターの向こう側から目を細めて眺めていた。
「全く、終末が来た時にはどうしたもんかと思ったけど、案外何とかなるもんだねえ」
「そうだねアキ子。あの頃は正直、山梨に籠っていた方が良かったんじゃないかって何度も思ったけど、それも今思えば懐かしい」
終末において、魚沼市が直接的な危機に晒される事はなかった。クズリュウ事変も田舎ニキが水際で食い止めたし、しっかりと事前準備がされており魔界化に伴う物理法則の激変にも即座に結界が機能して、普通にどうにかなってしまった。
だが、だからといって簡単に済んだというわけでもなかった。
『カラフル』は駄菓子屋兼カフェとして店舗を経営する以外にも、魚沼シェルター各地に点在している様々なオフィスに対する置き菓子サービスなども引き受けているが、その辺が商売として成り立つのは、菓子という生活上必ずしも必要ではない娯楽分野に手を伸ばすだけの社会的な余裕があるからだ。商品の仕入れ先だけでなく、売り先がなければ商売にならない。
だからこそ、魚沼シェルターが稼働し始めた頃は本当に大変だった。異能者としての悪魔退治に力を入れるのはもちろん、それ以外にも色々と奔走した。
山梨から知り合いの黒札に片っ端から声を掛け、各地を巡ってはシェルターからあぶれた異能者の中から素行が良好な連中を強弱問わず選んで勧誘し、役に立ちそうな悪魔を拳で説得しては魚沼シェルター傘下に引き入れ、生活圏を形成するのに必要そうな分野の企業に出資して誘致し、時には他支部の黒札に土下座して援助を乞い、魚沼市内に入り込んできた犯罪組織に対しては容赦なく異能者としての暴力を振るって片付けた。
全てトップである田舎ニキが動くには些少過ぎる案件ばかりだったが、さりとて無視できる事柄ばかりでもなし。駄菓子屋経営よりも異能者としての悪魔退治を優先していたせいで、ステイシー共々レベルが10以上も上がってしまったのも今となってはいい思い出だが。
「ま、お陰で今は安定してやっていけてる。うん、いい事だよ」
テーブル席から飛んできた新たな注文を受けたステイシーが調理に取り掛かっている。祖母と孫のような関係性のこのシキガミも、こうして本来の立場である駄菓子喫茶のパティシエとしての役割に専念させてやれている。それを素直に良かったと思いながら、アキ子は巌のような顔に笑みを浮かべて、そして。
「あれ……?」
外から店内をじっと見つめる少女が一人。淡い茶色の髪をショートボブにした、軍服のような白いコート姿の少女。
感情の宿らないガラス玉のようなその瞳が、アキ子の目にはどこか途方に暮れているように見えて、放っておくのもきまりが悪く、どうにも放っておけなくなったアキ子はついついその少女へと声を掛けていた。
「どうなされた、旅のお人……うん、普通に話すかね。どうしたの、お嬢ちゃん。ウチに何か用かい?」
手を引かれるままに店内に入ってきた少女は、駄菓子喫茶の店名通りカラフルな内装に目を奪われていた。ノスタルジックな昭和風の内装だが、壁には色とりどりの駄菓子が置かれた商品棚が並び、その色合いは目に鮮やかだ。
「あの……ここはどのような場所なのですか、とミサカは問い掛けます」
「駄菓子喫茶。看板に書いてあっただろう。まあ駄菓子屋と喫茶店の相の子みたいなものさ」
などと問答していると、テーブル席にいた放課後スイーツ部の『柚鳥ナツ』が口を挟んでくる。マイペースかつ哲学者的でロマンチストな彼女は、時にスイーツにまつわる妙な持論を展開して謎の空間を作り上げる。ちょうど今のように。
「駄菓子。それは哲学」
「哲学とは、とミサカは抑えきれない興味を隠しながらも問い返します」
「一見似た形のうまい棒とチョコバットのわずかなサイズ差にも、アポロチョコの形にも、ラムネの甘さにも一つ一つ違った意味がある。それで────」
「ほほう、もっと聞かせて欲しいです」
ミサカと名乗ったこの少女も似たような性格のようで、不思議キャラ同士で何やら共感が産まれたようだが。
「うん、そういうのは食べてみた方が早いよ。ほら」
と、肩をすくめた同じくスイーツ部の『杏山カズサ』が、人外の血が混ざっているらしく頭に生えた猫耳を小さく震わせながら、封を開いたチョコバーをミサカの口へと突っ込んだ。
「おばちゃん、このチョコバーの代金は私の方にツケといてね」
「それくらいはサービスしとくよ。いつものパフェも含めてね」
何も言わずにトレイを運んできたステイシーが、ミサカの前へとパフェを置く。それをじっと眺めたミサカは、アキ子の方へと視線を向けた。
「おばちゃん様、これは何でしょうか、とミサカは期待を抑え切れずに質問します」
「『カラフル』特製、カラフルパフェだよ。初見のお客さんにはサービスする事にしてるのさ」
ミサカは恐る恐るといった様子でパフェを口へと運ぶと、ぽつり、と小さく「おいしい」と口に出した。
「あの、おばちゃん様……これ。できれば他の姉妹達にも食べさせてあげたいのですが、とミサカは請い願います」
「そりゃウチに来れば、普通に食べさせてあげるよ。お客さんの顔は全部覚えてるからね」
そんなアキ子の答えを聞いて、ミサカは表情の薄い顔に薄っすらと笑みを浮かべた。もっとも、アキ子達はミサカ達姉妹に相互情報供給機能が備わっている事に気付いておらず、そして何より想像の数十倍ほど数が多かったミサカの“姉妹”が町中から一斉に押し掛けた事でアキ子とステイシーが悲鳴を上げるのに、それほどの時間は掛からなかった。
◇ ◇ ◇
蝶野光爵が開いたゲートを抜けた先に広がっていたのは、ひたすら白い壁と床と天井が複雑に入り組んだ迷宮だった。
白と、白と、そして白い色彩の濃淡だけが織り成す単色の迷宮は、細かい直線が無数に噛み合い絡み合って目が痛くなってくる。狭い通路が無数に入り組んで連なり、幸いにも上下への広がりは存在しない平面の迷宮であるようだが、奥など見通せず、そもそもどちらが奥なのかすら判別できない。
「……これは、どっちに行けばいいんですかね?」
真っ先に途方に暮れて声を上げたのはヒヨリだった。スクワッドの狙撃手であるヒヨリにとっては、こうした視界の通らない地形は苦手分野以外の何物でもない。その言葉を否定できず、ミカは苛立ち混じりに奥歯を軋らせた。
どうしたものかと顔を見合わせるのはチームの先導役であるサオリとアツコだが、そんな折に通信が入る。
『こちら蝶野だ。現在、遠隔でそっちの異界の構造解析中……少し待て』
わずかに混じったノイズで掠れた声が、耳元に繋いだ通信端末のスピーカー越しに聞こえてくる。
「こちらスクワッド1。異界の侵入には成功した。だがどちらへ向かえばいいか判別が付かない」
『それはまた……蟲とのリンクを逆探知して観測できたコア座標のデータを送るから、そこまでの経路はどうにかそっちでマッピングして探してくれ』
「了解、感謝する」
送信されてきた圧縮データを手元の端末で解凍すると、複雑な通路で描かれた狭苦しい領域の向こう、遥か離れて1kmほどの距離を置き、コアが存在すると思しき空間座標が表示されている。狭苦しい迷宮の通路は複雑に入り組んだまま索敵領域の外まで広がっており、どの道が正解のルートかは判然としないが、しかし一筋、ほんのわずかながら光明が見えた。
『そろそろ、患者の第一陣が到着した。ナビを農業ニキに引き継ぐが、問題ないな?』
「承知した。ここまでの協力、心から感謝する」
この距離、この複雑に入り組んだ迷宮の中で。
悪魔さえ出現する中で。
タイムリミットの存在すらあやふやな中で。
だが。
「どうにかして正解の道を探すしかないか。ヒヨリ、ミサキ、索敵を厳に……」
「必要ないよ」
サオリの言葉を制するように、ミカは一歩前に出る。彼女がその手に握るのは愛用のランチェスター短機関銃、そして逆の手には、異界に突入する前にロボ部の職員に渡されたジェラルミンケース。
「探索とか、マッピングとか必要ない。位置は分かっているんだから、後はさ────」
ジェラルミンケースを開き、中に収められていたベルトバックルを腰に押し当てれば、バックルから伸びたベルトが細いウェストを一周し、バックルを体に固定する。
「仕方ないな。おそらくそれが最善だし、私も付き合おう」
軽く嘆息したサオリも、同じように自身の分、同型のバックルを取り出して腰に装着した。そうしてベルト側面のハードポイントに固定されていた小瓶型のデバイスを引き抜くと、軽く振ってバックル中央のコネクタへと装着する。
「分かってるじゃん」
「当然だ」
にやりと笑ったミカも同じように自身のベルトにサオリのとは色違いの小瓶を装填し。
〔RABBIT! TANK! ────BESTMATCH!!〕
〔GORILLA! DIAMOND! ────BESTMATCH!!〕
二人のベルト『ビルドドライバー』から前後へと伸びるランナーが複雑に絡み合いながら圧縮マグネタイトを伝導し、空中に描き出した術式に従って外部装甲を構成。閉じるようにその身体をランナーが挟み込むと共に、二色にて左右非対称の強化外骨格を構築する。
ガイア連合ロボ部製、展開型デモニカ『ビルドドライバー』────魚沼シェルターの盟主である碧神凍矢こと“田舎ニキ”が所有する『グリスブリザード』の量産型として開発された機体。専属装着者の適性と、そして純粋な性能を主眼において開発されたグリスブリザードとは異なり、左右半身ごとに複数種が用意された専用デバイス『フルボトル』二本を装填する事でボトルに合わせた特殊装甲を構築し、多種多様な組み合わせにて多彩な戦況・戦術に対応する。
サオリが変身したのは『仮面ライダービルド・ラビットタンクフォーム』。戦車とウサギ、二種の霊基情報によって構成され、機動性・格闘能力・射撃能力・装甲、あらゆる面において不測のないポテンシャルを持つ最も安定した形態。
ミカが変身したのは『仮面ライダービルド・ゴリラモンドフォーム』。ゴリラとダイヤモンドの霊基情報を交錯させ、機動力こそ劣るものの、高い防御性能と絶大な破壊力を併せ持つ強力なフォーム。
……なお他のフルボトルは現在、鋭意開発中である。
「それじゃ行くよ。最短距離を突っ走ろうか」
ゴリラモンドに変身したミカが眼前の壁に向かって透き通った水色の左手を押し当てれば、そこを起点に壁が透明な結晶と化し、そしてそこから波紋を描くようにして同心円状に結晶化が広がっていく。その中心にゴリラモンド最大の武装である右腕『サドンデストロイヤー』に内蔵された炸裂パワーユニットが撃発し、伝導した衝撃が結晶化した壁を粉微塵に粉砕する。
「ほら、これで最短距離だ。壁なんて関係ない。全部壊していけば早いんだって」
「……釈然としないが、まあ仕方ない。ミカ、任せたぞ!」
そうして。
しばし、迷宮に連続して破壊音が響き渡った。
◇ ◇ ◇
臨時のテント村と化しつつある鳥煮亭総合学園のグラウンドに、一台の軽トラが入ってくる。白く塗装された軽トラは校門から少し入ったところで校舎前の駐車場に停車すると、ビニールの幌に覆われた荷台から軍服に似た白い制服姿の少女達が次々と降りてくる。
その全員が判で押したかのように同じ顔をしているのは異様な光景で、バイト扱いで作業をしている鳥煮亭総合学園の生徒達や、その場に集まって装備を点検している魚沼シェルター所属の異能者達の視線が一斉に集中するが、少女達は気にする事もなく連れ立ってグラウンドを歩いていく。
「こちらです皆さん。降りたらまずはグラウンド隅のテントまで行って、そこで並んで順番に検診を受けてください、とミサカは皆さんを誘導します」
「「「「了解しました、とミサカは了承の意志を示します」」」」
同じ顔の集団の中心で一人だけ、先頭に立って赤く光る誘導棒を振っている少女が声を上げると、それに誘導されて歩いていた少女達は異口同音に声を揃えて返事を返す。その行く先、赤十字の染め抜かれた白に彩られた医療用の無菌テントへと入っていく少女達の姿を眺めて、大鍋を掻き回していた白魔女────通称“わたし”は一つ首を傾げた。
「あのー……あれ、ちょっと数、多過ぎません?」
魚沼市内に散り散りに潜入させられたメシア製クローンの少女たちの話は、白魔女達にも伝わっている。しかし一度に連れてくるのは数人ずつと聞いていたのだが、あれはどう見ても十数人以上をまとめて移送している。
「そういやそうだな。何か妙なアクシデントでも起きたのか? 変な吸血鬼が暴走したとか、月から宇宙人の軍団が攻めてきたとか、宴会が終わらないとか」
などと不吉な事を言ったのは、「わたし」と同じように鍋を掻き回す作業に集中している白魔女の一人である『霧雨魔理沙』だ。珍しい事に「わたし」のように海外から逃げてきた難民の出ではなく、「わたし」達白魔女が魚沼市内に生活圏を作り上げてからコミュニティに入り、その術を学び始めた魚沼市出身の新人だ。
銅札とはいえその実力、とりわけ戦闘力に関しては既に白魔女達の中でも頭一つ抜けた域にまで成長しつつあるのだが。
「縁起でもない事言わないで下さいよ。そんな事起きたら最後、わたし達みたいに戦闘能力マイナスの貧弱な白魔女なんてあっという間に吹っ飛んで消えてしまいますってば」
「ま、私は戦えるけどな」
「わたし」や魔理沙を始めとして、白魔女達は骨組みの上にビニールの幌の屋根を乗せた校庭の簡易テントの下で、変わらず忙しく立ち働いている。
切り出されてきた松の木材から樹液を抽出する者。
様々な霊草、香草を微塵に刻んでいく者。
単純構造の蒸留器にノロイ酒を流し込み、さらに魔力とマグネタイトを込めて呪力を高めている者。
そんな中で、出来上がった材料を投入した鍋をひたすら掻き回し続けるのが彼女達の仕事。単純作業のようでいて、これが中々神経を使う作業だ。吹きこぼれないように注意するのはもちろんの事、浮かんできた灰汁を捨てたり、こまめに様々な素材を追加投入したり、何より鍋の温度を一定に保つ事を第一に作業を進める必要がある。
「────それがさ、あの子達どういうわけか『カラフル』に皆集まっていたみたいでね、今はそれをピストン輸送してるとこ」
と声を掛けてくるのは、魔理沙と付き合いのある黒札の青年『桜咲鈴雄』だ。トラックの運転手を他の異能者に交代してきたばかりの彼は、コスモス荘のオーナーでもある。
「おっ、鈴雄兄ちゃんじゃん。それで『カラフル』にってどういう事なんだ? 確かにあそこのおばちゃんの筋肉はいい見世物だと思うけどさ、そんな人集まるようなイベントなんてあったっけ? ゼンラー共が裸体ショーでも始めたのか?」
「いやいや、あそこの初見さんサービスのカラフルパフェが目当てだったみたい。だからババアネキとシキガミのステイシー共々、今二百人ちょっと分のパフェを必死になって作っているところ」
「おおぅ、そりゃ大変だな」
普段は常時静かな『カラフル』の店内を思い出し、それが二百人ばかりの少女達で寿司詰めになっている様子を想像して、白魔女二人はその顔に同情の苦笑いを浮かべてしまう。
「あ、そうだ兄ちゃん、出来上がった魔法薬運んでくれよ。アタシらより力あるだろ。代わりに今度デートしてやるからさー」
「魔理沙、それあなたがデートして欲しいだけでは……?」
わずかに赤く染まった頬を「わたし」に引っ張られて思わず顔を引き攣らせた魔理沙は、その手を振り払うと鈴雄へと迫る。
「うっさい! で、どうなのさ兄ちゃん」
「いやまあ、それくらいならいいけどね。デートじゃなくて、荷物運びの方だよ」
「……ヘタレ」
◇ ◇ ◇
「失礼します、と遠慮している場合ではないので実は一欠片の遠慮もなくミサカはテントに侵入します」
テントの中に入ると、精神統一でもしていたらしくその中央の丸椅子の上で座禅を組んでいた蝶野光爵は足を戻し、手元の治療器具に不備がないか数秒ほどで素早く視線を動かして確認。ざっくり一通りを確かめると、入ってきたミサカへと向き直った。
「……失礼するなら帰……らなくていい。で、患者の第一陣が到着か。敵側もスクワッドの侵入に気付いたらしく、対応に手を取られているようだ。ちょうどいいタイミングだが、早く治療を済ませないと危険だから、さっさと連れてこい」
「了解しました、すぐ連れてきます、とミサカは急いで皆のところに戻ります」
仲間のところへと戻っていく少女の表情は薄いが、頭の中の蟲を摘出する前とは異なり、その表情は心なしか柔らかく、わずかながら感情の動きが見て取れる。言葉も人間らしい血の気が宿ったものになっていた。
その背中を見送って、蝶野の隣にいたシスター服の女性『歌住桜子』は深々と頭を下げた。メシアン穏健派から半ば分離した集団『シスターフッド』のリーダーである彼女は、配下を引き連れて今回の作戦補助の一翼を担っている。
「大丈夫でしょうか? 道具や状況に問題があれば、いつでもおっしゃってください。必要なものがあれば、すぐに手配します……私達にできる事も、それほどはありませんが」
「ああ、その時は遠慮はしない」
ガイア連合魚沼支部が選んだ選択肢────蝶野光爵を酷使する。彼自身のホームグラウンドである佐渡島では複数のシキガミを配して自身に負担が掛からない体制を構築している蝶野だが、必要とあらば自分が動く事を躊躇う性格ではない。
そして今、必要な能力を持っているのが彼自身である以上、躊躇う事はなかった。きっちり報酬が支払われるのなら尚更だ。
中に入ってきた患者、同じ顔をした少女達は一体どういう教育をされていたのか、自我が希薄な指示待ち人間の集団だったのも良い方向に働いた。その頭蓋の内側に巣食う蟲を石化させ、的確に摘出していく。繰り返しの精密作業の要点は要領の良さだ、素早い動きを寸分違わず繰り返しながらルーチンワークを確立させるのが肝要となるが、蝶野の動きは乱れない。
蟲を摘出されて意識を失った少女は、その場にいる医療スタッフが担架に乗せて素早くテントから運び出し、寝台を並べた別のテントへと運んでいく。
そうして作業を繰り返していくと、石化した蟲を放り込んでいる洗面器が一杯になってくる。洗面器の正体は魔法薬の醸成のために時間加速機能に重きを置いた【壷中天】────反面、空間の拡張率は見た目の数倍程度だが、重量軽減の度合いもたかが知れている。
桜子が部下を呼び出すと、入ってきた二人組の修道女『ルチア』と『アンジェレネ』は、洗面器を二人がかりで持ち上げた。この状態の洗面器型壷中天は、ちょっとした給水タンク並みの重量にもなる。中身の危険性を考えても、異能者が持つのが適当だろう。
「中身は曲がりなりにも危険物……運ぶにも細心の注意を払いなさい。最悪、パンデミックも起こり得ますから」
「しょっ、承知しました!」
「全力で注意を払います!」
洗面器を抱え上げたルチアとアンジェレネは、霊的結界の基点を兼ねた樒の生け垣が植わったグラウンドの隅を歩き、体育館へと向かい、足元に注意しながら歩いていく。
この樒の生け垣も地味にガイア連合のオカルト技術による賜物であるが……毒性があるので扱いが厄介な代物だ。オカルト無関係なノーマルの樒でさえ毒物及び劇物取締法にて劇物指定される程の毒物だ。低年齢の子供も通っている学校の生け垣として巡らせるには、いささか剣呑な代物だったが、霊的な防御を欠かす事はできず、背に腹は代えられない。
洗面器の中を満たす溶液は、蒸留ノロイ酒を浸透させた松脂に石化蟲を漬け込んだオカルト封印液────白魔女達が丹精込めて作っていた代物。【壷中天】の蓋が閉じられ時間加速が始まれば加速時間の中で松脂が急速に固化し、蟲を閉じ込めた琥珀と化す。蟲を封じるには概念的にも実に都合のいい素材だ。
つまりは、今回の作戦に使われる資材の一つ。
◇ ◇ ◇
新潟県、県境付近。旧ラフムシェルターから程近く、メシア教会過激派の拠点、大聖堂。
「────そろそろ、時間ですね」
その司祭席に座り、腕時計の指し示す時刻を確認して、顔の半ばを眼球の並ぶ無数の小翼で覆った異形の女『ベアトリーチェ』が呟く。
「……!」
祭壇の上に拘束された少女が身を震わせ、ベアトリーチェを睨みつけた。憎悪と悲嘆に色があるなら、弧を描く稲妻が鮮やかに見えただろう、刺すように鋭く濃密な敵意の視線。
当然だ────元はメシアン穏健派のものであったこのシェルターを守護していた異能者の一人。メシアンではなく、避難民を引き連れてメシアン穏健派と合流した一般人出身のペルソナ使い。避難民を人質にされた事で降伏し……その末路は御察しというべきか。
そんな彼女が守っていた人々を無慈悲に殺戮し、手駒やその餌へと変えていったのがベアトリーチェの率いる過激派メシアン達だ。
つまりは、明確な敵。そんな少女に対し、異形の女は冷酷なせせら笑いで応じた。
「どうやら、我等のメメントスへと鼠が踏み込んだようです。その様子だと、気付いているのでしょう……気付いた上で、隠していましたね?」
「っ…………!」
息を呑んだ少女も大概、異形の姿だ。クローンの生成素材として切り落とされた両腕両脚の跡に強引に天使の翼を移植し、少女の異能を外部から強制操作するための制御装置とされている。その四肢の代わりに植え付けられた天使の顔が、ベアトリーチェの持つ権能を介した操作に反応し、恍惚とした表情を浮かべ、大きく口を開いて朗々と聖歌を歌い始める。
「っ、ぁっ、ぅぐッ…………!」
「まだそのような反抗ができるとは大したものですが、貴方は本来私に感謝するべき立場なのですよ。この地に正しき信仰の教えを広める一助となれるのですから」
少女が身を震わせ、目を見開くと同時にその身体から紫電が弾け、額の辺りへと収束したスパークが球電を形成し、それと共に強引に引きずり出されたペルソナが、精神世界の内側へと潜む悪魔による強制操作によって、本来持たないはずの異能を強引に起動させられる。
空中に黄金色に燃える電光の輪が浮かび、それをゲートにして展開するのはメシアン過激派が作り上げた疑似メメントスへと通じる異界門。
「どの道、無意味な抵抗です。鼠は所詮、鼠。結局のところ我がメメントスは私の腹の中……消化器官に等しいのですから、虫けらごときが何をしでかそうと意味はありませんよ。主の祝福を持つ者が勝利する────聖書にて伝えられる古の故事と何一つ変わりはありません」
生きたまま全身の神経を内部から焼かれる苦痛に悶える少女を嘲笑い、ベアトリーチェの口元が三日月型の弧を描いて悪意に満ちた笑みの形を刻んで、背後に控えていた忠実な部下に向かって指示を出す。
「ゲイリー、我が軍をメメントスへと進めなさい! 一気に魚沼市へと侵攻し、最大の脅威である支部長がいない隙に、魚沼市を実効支配するのです!」
「畏まりました。直ちに」
敬虔に一礼した修道服の男は、ベアトリーチェの命令へと忠実に、配下達へと号令を出した。途端、大聖堂から無数に声が上がり、メシアン達は歓喜や期待の感情を露にして全身を開始した。歪んだ欲望を満たす殺戮と略奪への期待に顔を歪ませながらも、そこだけは秩序を代表するメシア教会らしく規則正しい軍靴の足音を立て、過激派メシアンと天使達は指示に従い進軍していく。
◇ ◇ ◇
鳥煮亭総合学園、体育館。
いささか騒がしいグラウンドとは裏腹に、余人の入らぬこの場所は静かだ。体育館の壁越しに薄っすらと聞こえてくるグラウンドのざわつきが、その静けさを殊更に強調している。
体育館の隅に置かれていたパイプ椅子を軋ませて立ち上がった『秋葉ほむら』は、屋内と外界を隔てる鉄扉を引き開ける。その向こうに立っていたルチアとアンジェレネは、自動ドアのようなタイミングで入り口が開いた事に驚いたのか、少しばかり目を丸くしていた。
「それ、受け取るわよ」
「あ、ありがとうございます……」
大量の蟲入り洗面器を修道女二人から受け取り、抱えて運んでいく。ほむらのその足取りに、二人も追随する。体育館の壁際に立っているのは、体育館の一面そのものを覆い隠すかのような大型のキャンバスに掲げられた、巨大な一枚絵だった。
まだ、未完成だ。
上空からの俯瞰視点で魚沼シェルターの全景を描く予定の一枚絵は、いまだ本格的な製作に取り掛かっていない鋭意製作中の段階だ。描くものの大きさと配置を大まかに決めて、建物や木々の輪郭だけを鉛筆で大雑把に描き込んだだけで、まだまだ余白も目立つ。
その下絵の中にもラテン語の呪文やサンスクリット語の梵字らしき書き込み────明らかに魔術的な代物が複雑に描き込まれているのは気になるところだ。中心に書き込まれた梵字からして水天の────嵐を引き起こす天候操作の術式だろうか。
「絵画を媒介にした空間作成術による構築空間。そこにペルソナ『クトゥルー』の持つ悪夢の権能を利用して、メシアン過激派が生み出した進軍通廊である疑似メメントスへと干渉。その行き先を繋ぎ変え、“絵の中の世界”へと敵軍を引き込む事で、魚沼シェルターに被害を出さず迎撃戦ができる────」
空中に描いた足場の上に立つ絵師は、無数の鉛筆を周囲の空間に滞空させ、同時進行で操作しながら集中状態で絵を描き続けている。その背中に向かって、ほむらは声を投げ掛ける。
「葛城さん、画材…………画材? まあ、画材が届いたわよ!」
「おっ、待ってました! っと、よいしょっと」
両袖を肘までまくり上げた和服姿の絵師は、ほむらの言葉に反応して振り返ると、高さ数メートルの足場の上からふわりと飛び降りた。着地音がほとんど立っていない事実で地味に体術レベルの高さを見せつけた絵師は、ほむらが抱えた洗面器を受け取るや、おぞましい内容物を目にして、嬉しそうに表情を綻ばせた。
逆さにした洗面器から落ちてくるのは琥珀の塊、白魔女達が用意した松脂の霊薬が凝固した代物だ。それらが全て金属製のボールの上にブチ撒けられる。
洗面器の形をした琥珀は、まるで型から飛び出してきたコーヒーゼリーか何かのように見えるが、その実はクトゥルフ神話産の蟲が詰まった琥珀という特級……とまでは行かないが割と極悪な呪物だ。そんな代物を有難がる時点で絵師の人間性に問題があるのは明らかだが、ほむらにとってはそんなものは御察しというべき程度の話でもある。
「うっし、注文通り新鮮なアイホートの落とし子だ。これで本格的な製作に取り掛かれるなー」
石化したアイホートの落とし子と蒸留ノロイ酒の混合物を琥珀ごと拳で粉砕、そこに乾性油を突っ込んで、【螺旋丸】で磨り潰しながら撹拌。小分けして、そこに顔料を加えて絵具へと仕立て上げていくと共に、自身の霊能の根幹である邪神クトゥルーの権能を引き出し、アイホートの落とし子の制御を乗っ取っていく。
顔料の種類は色々……辰砂の赤、ラピスラズリの青、黄土、あるいは貝紫、孔雀石、炭、石膏などなど、値段も様々だが絵画そのものを魔術として機能させるため、全てオカルト素材。
「琥珀色、といえば透明感のある黄褐色、黄金色、黄色寄りのオレンジとか、そっち系の色合いを指すけど……近代フランスの画家アンリ・マティスは、初期前衛芸術の柱とされる名作『生きる喜び』を描くにあたって、キャンバスの大半を黄色で埋め尽くす大胆な色使いでこれを表現した。まあ絵具のアンバーは土壌由来の『アンバー』顔料からくる茶色系の色合いだから英単語としても別物なんだけどねー」
一見無造作に扱っているように見えて、手指の動きは限りなく繊細で緻密。手指の先から筋繊維の一本一本までが生体マグネタイトの流動と連動し、恐ろしい程に精確な動作を生み出している。それが理解できるようになっただけ、自分も異能者として成長しているのだろう。
その工程を覗き込んだほむらは、しかし即座に吐き気を抑えて視線をそらした。“溶けた蟲”が絵具の中から単眼を覗かせ脚を蠢かせる様は、視界に入れているだけでも地味に正気度を削ってくる。曲がりなりにもクトゥルフ神話の産物、軽々しく直視していいような代物ではない。
頭痛をこらえて溜息を吐いたほむらは、引きずってきたパイプ椅子に座り込み、背もたれに体重を預けて深々と溜息を吐いた。体重を支えるパイプ椅子の関節が上げる悲鳴にも似た軋みに、まるで自分の不摂生を糾弾されているような心持になる。
「よっし出来上がり! いい具合に溶けて……んーこっちの色合いがー……いや、もうちょっと顔料を濃くした方がいいかねー? せっかく糸魚川製の翡翠が使い放題なんだ、使わなきゃ損々……ってもあんまし使い過ぎても無駄に濃くなるだけだしなー」
ラブ&ピースを訴えかけるアニメ主題歌で鼻唄を歌いながら楽しそうに絵具を混ぜ、納得のいく色合いに仕上がったのだろう、実に嬉しそうに快哉を上げる絵師がいささか恨めしいが、まあ仕方ない。
本日のほむらは、ほぼ暇だ。今回の迎撃戦は可能な限り安全が担保された戦場で行う低レベル向けのイベントであり、余程のアクシデントが起こらない限り、ほむらの出番は最後の仕上げだけ。退屈だが、それでもそこにいなければならないのは、彼女が責任者だという以上に、その仕上げの仕事があるからだ。
その問題の仕上げ部分……刻限までは未だ遠く、しかしそれと並ぶ程に重要な役割を、ほむらは負っていた。要するに眼前で絵具作りに精を出している彼女のお目付け役なのだが、戦って勝てない相手の監視など存在意義が明後日の仕事をやらされてもどうするのやら。
楽しそうに描き始めた絵師の姿は一見隙だらけに見えるが、それを素直に隙と認めて狙う気にもならない。思えば以前の模擬戦では、彼女の操る物理とも魔法とも異なる絵画術を封じるための一手として、筆を操る腕を拘束する、という手段を試みたが────ちょうど今、念動で大量の絵筆をファンネルよろしく操っている上に、何なら彼女の背後に浮かぶ多触手神のペルソナも、その触手の先端に絵筆を構えて描画作業に加わっている。模擬戦中にあれを使われれば手足の拘束など意味を持たないのは明白だ。
何ならほむらの同僚である法龍院シンジが最初に戦った時には、長柄の筆による空間描画を回避するために懐に踏み込んだら、口に含んだ墨を噴き出して描く、などというニンジャじみた真似をされた────そんな話を後から聞いた。それを聞いた時には、知っていたなら最初から言っておけと思わず顔面火の玉ストレートを突き込んでしまったが。
「……本当に、どれだけ手加減されていたのやら」
はぁ、ともう一つ溜息を吐いたほむらは、半ば浮かれながら絵を描いている絵師の背中に向かって声を掛けた。
「そういえば、わざわざキャンバスに絵を描くのは何故ですか?」
などと聞くのは、画材も何もなくとも空間そのものを画布にして世界そのものを塗り替える、などという意味不明な真似ができる相手だから。それこそ即興で描いても問題あるまい、とすら思うのだが。
「そりゃ当然、普通に絵を描く時は普通に描くさ。何事も、準備時間があるなら手間暇かけた方が確実だし、いいもの描けるからね」
「はぁ、そういうものですか……」
意外にも常識的な答えが返ってきた事に、かえって面食らう。戦闘力以上に話の通じる相手ではないか、とは思ったものだが。
「それに、後始末の事もあるからね。後から壊す必要があるなら、形があった方がいい」
「……そういうものですか」
戦闘利用しているとはいえ、その根幹は権能の域まで錬磨された絵画技術だ、単純に戦闘や破壊に使う異能とは価値基準が異なっているのだろう……ほむらが知る真っ当な異能と比べて明らかに感覚的で曖昧な部分が多く、色々と理解しづらい部分もあるが、とりあえずそれは“そう”いうものだろうと彼女は半ば強引に結論付けて、ほむらは描き上げられつつある巨大な一枚絵を見上げた。
その見た目は黄色と緑を多用するサイケデリックな色使いを除けば、ほむらが見慣れた魚沼市の町並みを引き写したものに見えるが、しかし明らかに奇妙な意匠が存在していた。建物のように巨大なものから、子供が手に持って遊ぶような小さなものまで、町並みの中に無数の風車が描かれている。
最初は単なる模様のようにも見えたが、細緻に描き込まれたそれらは明らかに何かしらの意味があるものだった。
「この風車、何ですか?」
「ああ、マニ車だよ……知らない、マニ車? 機械工学製のギミックに魔術を組み込む時に、真っ先に多用される仕組みだよ。マンガとかの設定でもよく出てくる感じのアレなんだけど」
「まあ、聞いた事くらいなら……」
曲がりなりにも、ガイア連合魚沼支部の幹部の一人だ。魚沼支部がロボ部と深い関りを持つ以上、それ相応に知っている。役割も、異能者としての性質も戦闘に偏ったほむらにとっては、本当に知識だけのものではあるが。
これが同僚の法龍院シンジであれば、彼自身は何も知らなくとも、その相棒である邪龍が懇切丁寧に教えてくれるのだろうが、ともあれ。
「元はチベットあたりの文化なんだけど、こう、ありがたいお経を入れたローラーをがらがら~って感じに回すと、それだけで長いお経を唱えた感じの功徳が貰えるとか何とか。まあ回すだけでいいから時短だし楽で便利、しかも機械工学のギミックとも相性がいい、っていう便利な技術なんだけどね、それを風車に組み込んでる」
「……なるほど」
驚くほどに雑な説明だが、最低限の要点は抑えている。むしろ要点しか説明していないせいで、聞くべき部分が少なくて済み、最低限を理解するだけなら逆にやりやすい。
「で、今回この風車にはお経の代わりに、伝統的なサバトと黒ミサの儀式手順を突っ込んでいてね。後は絵の中に仕込んである動体検知と連動した気象操作の権能を組み込めば、中で天使とかメシアンが動き回るたびに風が起きて風車が回って、自動的に黒ミサやサバトに参加した事になるって寸法さ」
古代ギリシャやヘブライでは、霊魂は神の息吹────風や大気と同一視された。それを利用し、魂の移動を“風”と捉えて反応し、風車を回転させる検知術式。これに加えて『信徒にあらねば人に非ず』『人でないなら魂を持たない』という宗教概念を追加する事により、メシアンの動きにのみ反応する風車が出来上がる。
「……つまり?」
「動き回るだけで黒ミサ実行の罪を犯して、天使やメシアンの霊格が削れていく全自動レベルダウントラップだよ。あ、ついでに割とどうでもいいけど、メシア教のレギュレーション的には死んだら全自動で地獄行き確定も追加かな」
メシアン系の宗教者であれば問答無用で反応するため、例えばメシアン穏健派……魚沼シェルターの防衛にも関わっているシスターフッドの構成員なども対象であり、そのため彼女達は今回の戦いに参加できなかったわけだが。
けらけらと笑う絵師を見て、ほむらは肩をすくめた。何やら想像以上に高度かつ悪辣な仕込みがされているらしいが、どうにも見た目からは判別できない。考えるだけ無駄だろう、と、ほむらは何も考えずに絵画の完成を待つ事にした。
どの道、数分もしない内に出来上がるはずだ。
◇ ◇ ◇
宮城県から福島県を通り、群馬県を抜けて太平洋側を南下。そこから一路西へと舵を切り、向かう先は新潟県。魚沼に向かって通じる霊道の上を、一台の車が走っていた。
単純に見て、奇妙な車だ。
何せ近代的な金属製の車両は後ろ半分だけ、残り前半分で車体を牽引しているのは、どこからどう見ても生物────端的に言って、ダチョウだった。
ダチョウ。
駝鳥。
鳥綱ダチョウ目ダチョウ科ダチョウ属に属し、体長二メートル超過、体重は百キロを越える、世界最大の(普通の)鳥である。
しかも三羽。
そんなナマモノに車を曳かせる馬車────というかダチョウ車が、三羽のダチョウを横並びに連ね、堂々と公道を走っていた。速度も相当なもので、終末前の基準でいえば高速道路における一般的な自動車の法定速度を当たり前のように上回っていた。こんなのが国道を爆走できるのも、道路交通法が事実上崩壊した終末環境だからなのは間違いない。
その御者台に乗っていた金髪ポニテの青年は、霊道の横に立っている標識の表示を確認し、手にしたアナログの地図を御者台に設置された終末後対応のカーナビと照らし合わせ、ルートに間違いがない事を確認すると頷きを一つ、御者台の背後へと声を掛けた。
「イズナ殿、アズサ殿、あと一時間くらいで到着できる見込みですぞ!」
「ダウトなのです! 宮城を出立してから元康殿が同じ事を言うの、これで三度目であります!」
ダチョウ車はその車体の半分をカーゴ、残り半分をバスに似た形式の客席にしており、その客席から返ってきた容赦のないツッコミに思わず顔をのけ反らせた。
「おおうイズナ殿、キツいツッコミですな! でも時間がズレているのは俺のせいではありませんぞ! 終末ゆえの物理法則の歪みというやつですぞ!」
「うぅ~! 元康殿が面倒臭いのであります……」
しばらく軽い言い合いをして、共に時代がかった口調の二人はちらりと客席に視線を送る。そこには、手にしたスマホに表示された写真画像をじっと見つめているもう一人の少女の姿があった。緊張という言葉を全身で表現するかのようにスカートの裾をぎゅっと握り締め、綺麗に伸びたロングストレートの銀髪もぷるぷると震えているように見える。
「やっぱり、緊張する……ミカ姉様……どんな人だろう? 拒絶されたりしないだろうか……」
ダチョウ車の座席の上で身を縮めていた少女は、ぽつり、呟くようにその唇の端に言葉を乗せた。
「自信持ってください! アズサなら大丈夫なのですよ!」
「農業ニキとは飼料関係で多少の交流がありますからな、多少は知っております! 彼の奥方という事なら、そう無体な事はなさらんでござろうし、多分大丈夫ですぞ」
「うん、そうだね。きっと大丈夫……やっぱり緊張してきた。どうしよう」
プルプルと震える少女の様子を見て、青年はもう一人の少女と視線を交わす。中々、難しいようだ。
「うーむ、やはりぶ……女性は難しいですな」
「あ、今絶対ブタって言おうとしたのです。……アズサアズサ、緊張する時は手の平に「ヒット」と三回書き込んでから射撃すると攻撃に必中効果が付くらしいですよ!」
「そ、そうなのか? うん、試してみる」
「何か違ってる気がしますぞ?」
賑やかに騒ぎながら、ダチョウ車は一路、魚沼へ。ちょうどそこで一つの決戦が控えている事も、彼らは未だ知らないが。
次回、メシア教会死す! デュエルスタンバイ!
~割とどうでもいい設定集~
・旋風寺舞人/列車ニキ
元ネタは『勇者特急マイトガイン』。
富豪系俺らの黒札。終末前から列車などを作っている重工業系の会社を経営しており、ロボ部に多額の投資をしていた。
異能者としては操縦系特化。等身大戦闘でも格闘はそれなりのレベルでこなすが、単体ではそこまで強くない。単体では。
・コスモス荘
黒札専用物件。黒札やその家族のみ
見た目は割と普通のアパートだが、建物単体でもシェルターとして機能するだけでなく、周辺地域一帯を丸ごと不可視の結界で覆っており、自宅凸系メシアンや全裸土下座などの厄介要素を締め出している。
オーナーは黒札である『桜咲鈴雄』、管理人はその式神である『こま』。
・出海馬場アキ子/ババアネキ
ビジュアルは『北斗の拳』。でかいババア。
黒札。通称ババアネキ、ただしババアと呼ぶとキレる。
異能者としてのスタイルは筋力と耐久でゴリ押しの近接パワー型。戦闘力は仲魔ありならシキオウジロボをギリギリ倒せるくらい。
シキガミは『ステイシー』。だいたい祖母と孫くらいの関係。
駄菓子喫茶『カラフル』の店主。
黒札の中ではトップクラスの高齢者の一人。また身長二メートル五十センチ越えで、黒札の中ではトップクラスのガタイを誇るが、こんな見た目でも女性である。
終末直後、稼働を始めたばかりの魚沼シェルターの生活レベルを上げるために奔走した人物。田舎ニキが出るまでもない雑事を大量にこなしていた。
多分ガイア連合魚沼支部の面々とはかなり仲がいい。
・百合園セイア
元ネタは『ブルーアーカイブ』。アニメ版OPからハブられた子。
鳥煮亭総合学園に三人いる生徒会長の一人。予知によるトラブル対応の事前準備を担当する。
珍しい予知能力者という事もあって金札持ち。予知・占術特化という事もあってほぼ非戦闘員。
・星野という名の女生徒
本家どくいも様やる夫スレ『カオス転生ごちゃまぜサマナー 21話 小話 とある大悪魔の半終末 その5』『カオス転生ごちゃまぜサマナー おまけ サヤカちゃんネタ』参照。
『(次の生では無理にでも私の許嫁とか幼馴染に……)』などと発言していた子。
前世電霊の現地民。
その出自からプログラミングや電子戦にやたら強い希少技能持ち現地民。生徒会の一員としてセイアの補佐役をしている。
・放課後スイーツ部
元ネタは『ブルーアーカイブ』。
現地民の異能者集団。スイーツ食べ歩きの軍資金稼ぎのために悪魔退治を行っている女子高生ズ。
メンバーは『伊原木ヨシミ』『柚鳥ナツ』『栗村アイリ』『杏山カズサ』の四名。カズサのみ銀札、他は銅札といった具合で、そこまで強くはない。
カズサが同じ新潟県の新潟市『命蓮寺』の出身というくらいで、とりあえず特にこれといった特別な背景はない。
・仮面ライダービルド
元ネタは『仮面ライダービルド』。
グリスブリザードをベースに設計・製造された展開型デモニカ。魚沼産。
特にベルト部分『ビルドドライバー』はグリスブリザードのそれと完全に同一設計。バリエーション豊富なフルボトル二本をセットする事で多種多様なアーマーを形成し、使用者の能力や状況に合わせて性能を変化させる事ができる……予定だが、フルボトルはサオリのラビットタンクセット、ミカのゴリラモンドセット以外ほぼ未完成。
ボトルはガワを除けば宮城製のガイアメモリと同一だが、ビルドドライバー用に調整されたもの。調整抜きの場合、アーマーを形成できず高確率でエラーが発生する。
・わたし
名無しのレイ様『【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち』より。
半終末に際してヨーロッパから亡命してきた白魔女一派の統率者。ケルヌンノスの庇護を受けている。
基本的に生産職。
・霧雨魔理沙
元ネタは『東方』シリーズ。
白魔女集団に所属する「わたし」と同じ白魔女。魚沼市内に存在する『霧雨道具店』の娘さん。
まだまだ未熟ながら、現時点でも白魔女の中では戦闘力だけなら群を抜いて強い。それ以外も基本的に及第点。
・桜咲鈴雄/大家ニキ
元ネタは『住めば都のコスモス荘』。
コスモス荘のオーナー。保父志望の大学生。
黒札。通称は大家ニキ。
デモニカ使いの変身ヒーロー。基本的には物理戦闘系の異能者で、格闘メインだが武器もそれなりに使う。シキガミは『こま』。
黒札基準だとそこまで強くない部類だが、程々で割と楽しくやっている。
終末直前にババアネキに呼ばれて魚沼に移り住んだ。
・歌住桜子
名無しのレイ様『【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち』より。
シスターフッドのトップとして、魚沼シェルター防衛に協力している。
今回はメシア教会系は迎撃戦に参加できない特殊レギュレーションのため、裏方としての補助や、市内の警備を担当している。
・ルチア&アンジェレネ
元ネタは『とある魔術の禁書目録』。
シスターフッドの平構成員。
異能者としては一神教伝来の霊装を使って戦闘するが、そこまで強くない。黒札が出張るような戦場では基本的に雑用担当だったりする。
・樒
塵塚怪翁様『【カオ転三次】『俺たち』閑話集』から『とある転生者と『真実の愛』の顛末』より。
霊木化させた樒の木。技術の進歩により、結界で気密状態にしておく必要がなくなっており、むしろ樒の木それ自体を基点に結界を形成できるようになっている。
・北村元康/ダチョウニキ
元ネタは『盾の勇者の成り上がり』シリーズ。かませ犬の道化からギャグキャラ、果てはスピンオフ主人公へと転身を遂げたアレな人。
黒札。通称ダチョウニキ。
ダチョウライダーでダチョウテイマー。異能者としては物理戦闘系で、メインウェポンは槍。
宮城在住でダチョウ牧場を経営している。ダチョウ食肉業は業種が競合する一歩手前だったガイアミートへと委託し、現在はダチョウ車を使った高速移動チャーター便を営業している。
ターミナル以外で現地民がシェルター間を安全に移動できる数少ない手段。ターミナル便よりも多少安い。
原作通り女性が豚にしか見えない重度の精神汚染を患っているが、これはショタオジの修行の後遺症。ほぼデメリットだが、女性型悪魔の魅了を完全にシャットアウトするなど、一部メリットがなくもない。
・鵺原イズナ&アズサ
タマヤ与太郎様『【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策』より。
幼女ネキの愛娘とそのパートナー。
アズサの方が何気にアリウス関係者。ミカの方がプロトタイプに当たるのだが、顔を合わせるのは初……になる予定。まだ会えていない模様。
今回はお小遣いでダチョウ便をチャーターし、別居中の家族に会いに来た模様。