◇ ◇ ◇
白い、ただひたすらに白い空間。
白い壁。
白い床。
白い天井。
ただひたすらに白いだけの回廊が、無数に枝分かれしながら広がる迷宮。その空間の広がりがどこまで続いているかも分からず、しかし通路は狭く、通る者には圧迫感しか残さない。
そんな空間の一点に、新たな色彩が加わった。
通路の一点、白一色の大理石で塗り潰したかのように曇りのない壁面が、蒼白く輝く結晶が覆われていく。ほとんど一瞬で壁の一面を覆い尽くし、そして────後背から放たれた強烈な打撃によって破砕され、無数の砕片が散弾と化して飛び散った。
通路の壁面を砕いて現れた『仮面ライダービルド・ゴリラモンドフォーム』は、通路それ自体には一切気を払わずに、再びその手を眼前に壁に伸ばし、結晶化させた壁を振り上げた拳で破砕する。
砕けた壁の向こう、ちょっとした広間ともいえる開けた空間には、無数の人影が並んでいる。全てメシア教会の制服や装備を身に着けており、その三割程度は飛び散った壁の残骸に巻き込まれて無惨な骸を晒しているが、残りは健在、全て揃って壁の向こうから現れた敵手へと構え、表情のない顔からも鋭い敵意が伝わってくる。
『【アナライズ】よし……データ照合完了だ。『メシアン ネオファイト』『メシアン テンプルナイト』に『メシアン ジェレーター』『メシアン ターミネイター』までちらほら混ざってるな────全部人間じゃない、悪魔種族としてのメシアンだ』
魚沼シェルターから遠隔でオペレートを行っている『北条悟志』からの管制通信。スピーカー越しの声音にどこか心が浮き立つような感覚を得て、聖園ミカは強気に唇を吊り上げる。
「ふぅん、ちょっとはマシな戦力揃えてるみたいじゃん。……全部、やっちゃって問題ないって事だよね、ダーリン」
『ああ。でも余力は残しておけよ』
「分かってるってば。────行くよ、皆」
短く、開戦を告げる。
そうして。
「先手は私」
頭一つ抜けた敏捷性に任せて真っ先に動いたのは小柄な少女────秤アツコ。手にしたサブマシンガンから牽制の銃弾を放ちつつ、逆手に握ったスモークグレネードを投擲。遮蔽となって拡散する煙塊にメシアンからの銃撃や魔法が降り注ぐが、煙が晴れて現れたのはゴリラモンドの力で形成された結晶の壁。
その上半分が崩れると共に、顔を出したのは槌永ヒヨリ。巨大な対物狙撃銃のバイポッドを結晶壁の上に乗せて固定し、その頭上に浮かぶペルソナ『隠者 シオツチオジ』────隠者のアルカナらしく老翁の姿で伝えられる神であり、深い見識と経験から迷える者に導きを与える存在。
「えへ、えへへ……貴方達全員、新しいペルソナの眼で見えてますよ」
ちょうど良いタイミングで魚沼市を訪れた“悪魔絵師”の異能者から購入した新しいペルソナは塩と潮を司る海の神────導きの神。濃密なスモークグレネードの煙の中でも千里眼の視界は問題なく敵を捉え、大物から順番にその頭を撃ち抜いていく。
ヒヨリの愛銃である狙撃銃の原型となったのはNTW-20、設計段階でヘリ搭載用の機関砲をベースとし、使用弾薬も航空機関砲のために製造された20×82㎜弾。現在装填しているのは焼夷徹甲弾であり、蒸留ノロイ酒をベースにした焼夷剤がジルコニウム粉と激しく反応し、撃ち抜かれたメシアンの脳天が内側から弾けるように火を噴いて、片っ端から破裂していく。
慌てて応戦しようと武器や魔法を構えるメシアンの集団だが、如何せんメシア教会の信徒によって編成された戦闘部隊にあらず、悪魔として湧いただけのメシアンには明確な指揮系統もなく、指揮官となり得る個体も次から次に撃ち抜かれているとなれば。
「反応も、そして対応……何もかもが稚拙で粗雑だな。湧いただけの木偶に期待するだけ、虚しい事ではあるが」
煙幕に紛れて動いているのはヒヨリだけではなく、ビルド・ラビットタンクフォームの右脚部『タンクローラーシューズ』に仕込まれたキャタピラを駆動させて壁から天井を垂直に駆け上がったサオリは、愛銃であるSIG516とビルドの専用武装『ドリルクラッシャー』の銃形態を二挺持ちして連射で敵の頭上を抑え。
マガジンに収められた弾薬を使い切ったヒヨリと入れ替わりで顔を出した戒野ミサキが、抱えたロケットランチャーを発射、急角度の放物線を描いて上空で爆ぜた砲弾が無数の子弾に分裂し、尾を引く炎が花火のような軌跡を描いて落下していく。
「そんな事を期待するだけ無駄だよ。意味なんて……まあ、今はいいか」
雨のように降り注ぐ焼夷炸裂弾に自前のペルソナ『刑死者 オルトロス』の【火炎プロレマ】を上乗せし、ミサキの砲撃は広間全体を炎の海に包んでいき。
『ミカ、討ち漏らしが一体。接近中だ』
「うん、そこだね」
スピーカー越しに伝わる声の誘導に任せ、ミカが無造作に拳を振るう。砲弾のような拳は、最後に一体だけ【食いしばり】で生き残っていたターミネイターの腹部に直撃。そのまま吹き飛んで壁に叩き付けられ、破裂したトマトを叩きつけたような染みと化し、弾け飛んだヒトガタの悪魔はマグネタイトに分解し気化して消滅する。
「これで終わりかー、案外大した事なかったね」
「連携も取れていないのに数だけ揃えられても、こんなものという事か。案外、苦労した経験というのは無駄にはならんらしいな」
仮面ライダービルドの頭部に仕込まれた複合センサーが周辺をサーチするが、これ以上周辺に潜んでいる敵の気配はなし。そもそも隠れられるような遮蔽物のある地形でもない。戦闘終了、と言い切ってしまっても問題ないだろう。
「じゃ、空間の確保お願いね」
『了解。それじゃ、ちゃっちゃとやってしまおうか』
遠隔でオペレートをしている北条悟志のペルソナ『剛毅 バララーマ』の持つ農耕神の権能が、通信によって接続したパスを通してミカやスクワッドのメンバーへと伝達され、五人が暴れ回って破壊した────耕した範囲を空間的に作り替えていく。
見る間に白一色だった空間の床が、耕された畑の土の色へと塗り替えられていく。本来この疑似メメントスを支配する異界の主、天使化した邪神アイホートの権能を押しのけ、“農地”として空間を固定する事で、これ以上の空間干渉を阻害する。
全体的なペルソナの扱いに関しては最初にオペレートを担当していた蝶野光爵に劣る悟志だが、農業型の異能者として開拓の権能を有するため、この一点に関してなら上回る。
『迷宮の構造、壁や通路の配置くらいならともかく、空間の接続や位置まで組み替えられたらどうしようもないからな。手間になるけど、ちゃんとやらないと』
「頼りにしてるよ、あなた」
デモニカやCOMPの画面に表示されているのは、エネミーソナーが捉えた邪神アイホートの空間座標。まだまだ距離は離れているが、しかし確実に近づいている。
後、少し。
◇ ◇ ◇
メシア教会過激派、拠点。
『連絡が遅れて、申し訳ありません。どうしても外せない用事が、いくつか』
「いえ、そちらにも都合というものがおありでしょうし、仕方ありませんわ。むしろ、これだけ多くの援助を頂いた上で文句など、つけられるわけがありません……よろしければ、理由を伺っても?」
『ええ、「BC事件」────あの事件で崩壊したシェルターからの避難民への援助物資の搬送現場に、少々手伝いなどを……いや、どうしても言い訳になってしまいますね。面目ない』
市民体育館を改修した大聖堂の司祭席に座り、腹心である修道士を傍らに置いたベアトリーチェは、デスクトップに繋がった大画面に映し出されたウィンドウに、通信越しに姿を現した男に向けて外交用の笑顔を浮かべていた。
もっとも、無数の翼と眼球が蠢く異形の顔面の上に浮かんでいるのは、形だけ口を三日月形に歪めた笑い顔。そんな凶相にどこまで意味があるのかは微妙なところだが。
「いえ、今回の作戦に関わる数々の御支援、心より感謝いたしますわ────メトフィエス大司教」
『気になさる必要はありません。我々は天使様方と教会の御名において兄弟のようなものではありませんか。必要な時に助け合うのは当然の事ですよ』
DDSを介した秘匿回線越しに慈愛と博愛を体現したかのような穏やかな笑みを浮かべるのは、人かどうかすら疑わしい程に秀麗な顔立ちの男────メシア教会穏健派にて多大な権力を握る大司教『メトフィエス』。
穏健派の成立時点から組織の運営に関わっていた大物で、穏健派の信者達からはその人格と博愛主義から深い信頼を受けている聖職者。
普段から穏やかな笑顔を絶やさず、信徒に対して、あるいはそうでない相手に対しても常に親身に接し、助けを求められれば必ず応えようとする人格者。
清貧に徹しているため、立場から持つ権限の大きさに比して私財は乏しく、資金を動かすような時には大抵はどこかしらに寄付を募るが、それとて強権的な押し付けではなく、心から賛同してくれる相手から、相手が困らない程度に。
それでいて現実を知らない理想論に固執するでもなく現場を重んじ、福祉や医療といった専門分野に関しては自ら現場に足を運び、時には一般の信者と並んでその仕事を手伝ったりしている姿も見られる。
まさしく絵に描いたような“理想の聖職者”。その正体を知れば誰もが驚き────あるいはガイア連合の黒札であれば誰もが納得するしかしない人物。
そんな相手から接触を受けた時には、ベアトリーチェも驚愕に目を見開き────異形の顔面に存在する全ての眼球を血走らせて驚愕したものだ。
「それを仰られれば返す言葉もありません。ですが物資、兵力、情報、その他あらゆる方面で多大な支援を頂いた身ですから、こうして最後に感謝の言葉を、と」
『私の微力が役に立ったのであれば何よりの喜びです。貴女の計画が上手くいくことを主に祈りましょう』
だからこそ、それこそがベアトリーチェにとっては最後の懸念だった。
だから、問う。
「────しかし、よろしかったのですか?」
『何をですか?』
「穏健派の大幹部である貴方の立場からすれば、これは組織にとって最大の同盟者であるガイア連合に対する裏切りでは?」
相手の真意が分からない。
己の計画に数多くの支援を与えた恩人ではあるが、しかしそれでも穏健派の大幹部という相手の立場から考えれば、支援など絶対にするはずのない人物だ。ガイア連合への攻撃という行動には、相手に対して一切の利得が存在しない。
だからこそ、ベアトリーチェはメトフィエスを疑い続けていた。
だが。
『まさか。彼らとて、我等の教えが届けば自ら我々に合流して下さるはずです。“宣教”し、しっかりと“お救い”すれば必ず分かってくださいますよ。希望を失わない限り、我々は分かり合える────当然の事ではありませんか』
その慈愛溢れる穏やかな笑みに何一つの曇りもないままに。
正気の人間なら最底辺の下衆が蛮行に手を染める建前としてしか使わないであろう言葉を、迷いなく、そして嘘を表す揺らぎもなく言い切ったメトフィエスの言葉に、ベアトリーチェは息を呑んだ。
────この男は狂っている。
少なくとも、自分よりは。
少なくとも自分は、この男より正気に近い。
過激派メシアンの価値観は、ある意味では酷く現実的だ。
洗脳・教化の有無や程度の差はあれど、法による秩序や正義の実行を建前として掲げていながらその実、彼ら過激派が真に求める利益はといえば、異教徒を殺し、犯し、略奪して得られる直接的なもの。
衣食住。
権力。
財貨。
異性。
武力。
勝利。
あるいは正義の名の下に何の呵責もなく繰り広げられる略奪と暴行への陶酔といった、形のない何かしら。
そんな、どうしようもなく即物的な利益を欲して、それが教義と建前によって正当化される事によってどこまでも先鋭化して、その果てに辿り着いてしまったのが現在のメシア教会過激派という集団の実情であり。薄っぺらいと断じてしまえばそれまでだが、裏を返せばそれだけ現実的だという意味であり。
『理想郷の実現には、今や彼らの協力が必要不可欠です────いえ、違いますね。彼らが心から我々に協力してくれさえすれば、我々の望む千年王国は既に手の届く場所まで来ている。そう、今こそ理想実現の時────今こそが、救済の時なのです』
常と変わらず、人に安堵を覚えさせる穏やかなアルカイックスマイルを浮かべて福音を語るメトフィエスが欲するのは、その真逆。
善の遂行。
万人の幸福。
他者の魂の救済。
理想郷の完成。
そんな、ベアトリーチェが論ずるまでもなく無益と切り捨てた理想を実現するために、何の迷いもなく人々を蹂躙し、幸福を奪い去る蛮行へと手を掛ける。ベアトリーチェの目から見てすら矛盾しているとしか思えないその有り様に、背筋が寒くなるような不吉さを感じもするが。
しかし。
「なるほど、安心しました。貴方の理想を確かめる事ができて」
だからこそ、ベアトリーチェは安堵する。
この男は裏切らない。
狂っているからこそ、理想と目的の為であればどのような下劣な行為であれ、気高い善意と利他の理念で成し遂げてみせる。
少なくとも、この戦いの最中に裏切る事はないだろう。
「こうして胸の裡を語り明かせるというのも良いものですね────ですが、作戦まで既に時間が迫っておりますので」
『ええ。私も、貴女の胸中を聞く事ができてよかった。実に、有意義な時間でした』
片や、博愛と人類愛に満ちた穏やかな笑み。
片や、蹂躙への期待と欲望を滲ませた悪辣な笑み。
己の悪性を自覚した下劣なる悪女と、己の邪悪さを理解しない最もドス黒い邪悪は、互いの関係を確認し合い。
だからこそ。
「────そいつぁ何より。じゃ、もう思い残す事ぁ無ぇよなぁ!」
不意に轟いた銃声に、対処する事などできなかった。
◇ ◇ ◇
サイケデリックな黄と緑で彩られた空の下、画布に描かれた偽りの魚沼市の中を、特徴的な白と青の僧衣に身を包んだメシア教会の軍団が進んでいく。歩兵ばかりではなく装甲車や野戦砲まで備えた、過激派メシアンが敗軍に成り下がった終末後の時代とは思えない程に整った装備を揃えている。
住宅街を進む一隊の指揮官は、その隊列の中央を進む装甲車の後部座席にて重苦しい溜息を吐いた。
「……誘い込まれたな」
異界へと。
それも、おそらくはメシア教会過激派の軍勢を誘い込むためだけに作られた処刑場に。
こと、この期に及んでその事実に気づかない程に間抜けでもない。問題は、今さら気付いたところで何一つできない、という事だが。
「どうするのです? 我々には、この東北の地を浄化する崇高な使命があるのですよ」
弱気とも取れる指揮官の言葉に鋭い目を向けた天使の詰問に、内心の苛立ちを顔に出さず抑えて指揮官の男はどうにもならない現状を率直に返す。
「どうもこうも有りませんよ。一人でもいいから敵の兵員を捕えて、情報を引き出す必要があります。敵の現状、内情、迎撃の陣容と配置、この異界の性質、そして脱出方法。どうにかしてこの異界から出ない事には、使命も果たせませんのでね」
「ならば、その役割は私が引き受けましょう。異教徒を教化し、その身に贖罪を施すのは天意の体現であるこの私の使命ですので」
洗脳と強姦の何が使命だ、などと内心に浮かぶ至極真っ当な罵倒を呑み込み、にやけた天使の背中が離れていくのを見送って、男は引き攣りそうになる表情をどうにか鉄面皮に保ちながら、隊列の先を急がせる。
どうしてこうなった、と男は内心で頭を抱えた。
最善の選択をしたはずだった。
個人営業の傭兵だった彼は、世界各地で多くのオカルト勢力が見苦しい足の引っ張り合いを続けていた終末前から早々に多神連合に見切りをつけ、最大の勝ち馬であったメシア教会に入信した。その当時は、自分が間違いなく正しい選択をしたと思っていたのだ。
早期に立場を築いたからこその地位と権力。
豊富な戦力と装備。
教義のためか娯楽に類するものは少なかったが、薄っぺらな正義の名の下に異教徒相手であれば何をしても許されたから、一般人の集落を襲って奪うだけでも十分に満たされた。
何より、最大の報酬は“勝利”。
終末前のメシア教会過激派は、ガイア連合のバックアップを受けた多神連合や多方面の各勢力から抵抗を受けながらも、足並みの揃わない敵を蹴散らしながら着実に戦線を前に進めていた。最終的な勝利も時間の問題で、最終的に勝利すれば好き放題に奪い、支配することが許される天国が待っているはずだった。
だが、それも終末までの話だ。終末の日に、全ては覆った。
補給も滞り、勢力の統率も取れなくなった。
順調に積み重ねてきた勝利も、最後の仕上げを目前に崩れ去った。
そうして、残された最後の余裕をチップに振り込み、最後の賭けに出たのが、今だった。
そう。
賭けだ。
「ああ、そうさ。……勝てば全部チャラになるんだ。勝てば。そう、勝てば、な」
魚沼市の地図を広げ、地形情報を周辺の観測データと照らし合わせて確認する。終末前のデータにあった本物の魚沼市と比較して、地形に大きな変化はなし。この地勢であれば、抵抗勢力が布陣しているのはどの辺りになるか。
思案を続けていた男の頭上に、ふと影がよぎった。
「鳥か……いや、まさか」
こんな異界に尋常な鳥が存在しているはずもなく、天使以外の飛行物体など異界に湧いた野良の悪魔か、さもなければ────。
「ガイア連合の観測装置か! 総員、戦闘用意を────は?」
部隊の人員たちに戦闘状態への意向を告げようとマイクを掴んだその口から洩れたのは、怪訝を伝える間の抜けた一音だけだ。頭上を横切った鳥のような影から落下してくるのは────全裸の変態だ。
両手両足を広げて一直線に落下してくる影は、するりと脱ぎ捨てたパンツを頭上に放り上げつつ構えた両手を大きく掲げ、その手の中に柔らかくも激しい光熱が収束し、溢れていく。熱はあれど人を焼くような剣呑さとは掛け離れた柔らかい輝きが空から降り来たり。
「────お前らメシアンなんてやめてゼンラーになろうぜ! さあ、改宗の時間DA☆ZE!!」
「なっ……何だそりゃぁ!?」
ヒポグリフの騎上から一直線に飛び降りてくる底辺ニキが放った【ライトマ】の輝きが、頭上を振り仰いだメシアン達の目を焼いた。その光に付随しているのは『北風と太陽』の逸話に基づく“強制脱衣”の異能。その輝きに巻き込まれたメシアン達は銃を構えるよりも先に、自らボタンを外し、ベルトを緩めながら一枚一枚服を脱ぎ捨てていく。
「貴様ら、何をやっている! 敵だぞ! 銃を、銃を構えろ! 天使様、なぜ脱いでいるのですか!?」
「くっ、これは私の意志では……身体が勝手に!」
自ら上衣を引き裂いて胸毛を丸出しにした事と引き換えにハンドルを手放した運転手のせいで、装甲車がコントロールを失い、住宅街のゴミ置き場へとその鼻面を突っ込んだ。
悪態を吐いた指揮官の男は、勝手に動いてズボンとパンツを膝まで下ろした手を意志力でどうにか押さえ付ける。そうして取り落としたアサルトライフルを拾い上げると装甲車から飛び出して身構えるが、しかし半脱ぎのままだった自身のズボンに足を引っ掛けてすっ転んだ。
「おのれぇ……こんな頭の悪い攻撃を仕掛けてくるのはガイア連合の黒札に決まっている! おのれ、ガイア連合めぇ!!」
転んだ拍子に顔面を硬いアスファルトへと打ち付け、鼻血を垂らして悔しがる指揮官を余所に、華麗に着地を決めた底辺ニキはヒラヒラと落ちてくる自身のパンツを掴み取って頭に被り。
「フッ……アストルフォくんとの約束をしたんでね、俺はもうゼンラーを捨てた。そう、今の俺はゼンラーにあらず────ゼンラーを越えた、パンツァーだ!」
「おのれぇ! 意味の分からん事を言いやがって! 決めポーズキメてんじゃねぇぞ! お前ら、あの変態を殺せぇ~~!!」
指揮官の叫びに反応して、頭部を覆うアイマスク以外は全裸というあまりにも業の深い格好になった天使達が武器を構えて飛び出そうとするが、底辺ニキが振り向く方が一瞬早く。
「たった今ゼンラーの領域に踏み込んだばかりのお前らに、パンツァーへと進化した俺が捕まえられると思うなよ! 食らえ、ゼンラーフラッシュ!!」
「「「「「ぐぁあああああ~~!!」」」」」
モロ出しの股間からフラッシュバンのごとく迸った【ライトマ】の閃光に視界を焼かれ、追手達が怯んだ一瞬に底辺ニキはスタコラサッサとその場を走り去っている。目潰しを食らった天使達の視界が回復する頃には、ダッシュで逃げ出す変態の背中はいつの間にか信じられない程に遠い場所まで離れ去っており。
そして。
それとほぼ同時に周囲に立ち並ぶ住宅、それら全て二階の窓が一斉に開く。その中から姿を現したのは、一様に同じ顔をしたボブカットの少女達だ。その顔は男にとって明らかに見覚えのある者達で。
「っ、ミサカシリーズだと、裏切ったのか……いや、頭の中の蟲はどうした!? あんなもの摘出できるはずが……ッ!」
半裸のまま声を上げようとした指揮官の言葉を遮るように銃弾が撃ち込まれ、掠めた弾丸がその頬に一文字の血の筋を描く。カスタマイズしたブレン軽機関銃を西部のガンマンが握る拳銃よろしく軽々と片手で扱い、離れた標的を狙い撃ったのは、風車が回るアパートの屋上から顔を出した杏山カズサ。
その隣には既に放課後スイーツ部の面々が勢揃いしており。
「……そう。アンタ達は知っているのね。つまり、加害者側だと、そう理解していいわけだ」
「落とし前を付けろとは言わない」
「でも、この子達の人生にはこれ以上、貴方達を関わらせない!」
同じく放課後スイーツ部のメンバー、栗山アイリが発動した【マハブフーラ】によって生成される直径十メートルを越えるチョコミントアイスの塊が撃ち込まれ、逃げようとしたメシアン達の動きを拘束すると同時に。
「アンタらの因縁、ここで残さずありったけ潰してくよ! 用意はいい!?」
「問題ありません、とミサカは申告します」
「準備完了です、とミサカは申し上げます」
「今日のスイーツ代を稼ぐための資金源になってもらいます、とミサカは宣言します」
「その前に生活基盤を整える事が先決では、とミサカは疑問を呈します」
「ついでにどうでもいいけどオリジナルの恨みも晴らさせてもらう、とミサカは一応宣告しておきます」
「それはそれとしてパフェ食べたいです、とミサカはこっそり呟きます」
「そういう時はウドンが食べたいと申告するそうです、とミサカは提案します」
「ところでうどんの具といえば海老天とかき揚げのどちらを優先するべきでしょうか、とミサカは問題を提起します」
「当然両方盛るのが王道に決まっています、とミサカは主張します」
「そこに茄子天を追加するべきではないでしょうか、とミサカは提案を追加します」
半分以上が食べ物の話、どうにも緊張感に欠ける頭数二十人程度、当初予定された“製造数”からすれば足りないものの、十分以上に多数のミサカ達が構えている代物、ピッチングマシーンとバズーカと多連装ロケットランチャーの奇妙奇天烈なキメラとしか言いようのない鋼の塊が何なのか、メシアン側の兵士達はこれ以上ないくらいによく知っている。
それこそ親の顔より繰り返し目にした事があるそれは、ガイア連合KSJ研が支援物資として全世界にバラ撒いている代表的な商品であり、そしてメシアン過激派にとって戦場で最も身近に出会う死の象徴。
────蟲毒皿弾幕ピッチャー。
「ま、待て悪気はなかった────!」
「知った事じゃありません、とミサカは切り捨てます」
いささか気の抜けたやり取りに合わせて破魔属性の白い燐光に覆われた箱型砲身が一斉に開き、その内側から無数の弾体を投射する。頭上では気楽なやり取りが交わされていても、降り注ぐ弾体は蟲毒皿、広範囲に呪殺属性の即死を撒き散らす致死性の呪詛の渦、オーバーキル気味の弾体投射がメシアンに向かって降り注いだ。
◇ ◇ ◇
魚沼市は、その面積の大半を農地が占めている。それは、魚沼市の地勢をほぼ正確に引き写したこの絵画の中の魚沼市にあっても同じ事だ。
本来の魚沼市においてはそろそろ田植えシーズンが迫り、水を入れ始めた水田が一面に広がる地区。泥濘に覆われた足場では例外なく空を飛べる天使が一方的に有利に戦える地形になってしまう事から、この偽りの魚沼市においては水の涸れた農閑期の田として描かれ、そのためひたすら広い平野が広がる事になっていた。
その一画。
メシア教会側の大兵団が、魚沼シェルターに属する防衛側の戦力と対峙していた。
南側に陣を組むのはメシア教会側。特徴的な白と青の兵服を着た人間の大集団に、COMPによって維持される天使の兵団が随行する。信仰に基づく高い戦意を維持したままに、互いに戦列を組み、陣形を連ねる練度はむしろメシア教会側の方が高いくらいだ。
辺り一帯には水の涸れた田畑が一面に広がり、遮蔽物といえばその中にちらほらと混ざる民家くらいのものであり、狭隘な地形では使いづらい大型戦力も躊躇なく投入できる戦場。だからメシア教会側も破壊力に優れた大型の天使を何体も召喚し、戦列に並べていた。
その陣容に相対する防衛側、魚沼シェルターの戦力。メシア教会側程の纏まりはなく、しかし士気は高い。背後に守るべき故郷を控えているという事実に加え、敵が確定で弱いという事実────山梨の修行用異界下層でもなければ対面できない類のクソ異界ギミックにより、戦力に幾重にも枷を嵌められている事実が事前通達により広まっている為か、どこか気の抜けた雰囲気が漂っており。
「おいお前ら! いくら敵が弱ってるからってなぁ、気ぃ抜くんじゃねえぞ!」
と仲間に喝を入れるように叫ぶのは、魚沼シェルターの盟主の片腕である九重静の直属たる精鋭“黒騎士部隊”の一員である『城之内克也』。その精悍な顔立ちは、今は全身装甲型のデモニカ『ベルリン』の顔面装甲に覆い隠されて見る事はできないが。
逸る城之内を落ち着かせるように肩を叩くのは、彼の補佐役である『本田ヒロト』だ。城之内と同様に『ベルリン』を装着しているが、頭部を守る兜部分を外しており、ソフトモヒカン気味の髪型が兜の圧力と汗で崩れているのが見て取れる。
「おいおい城之内、そんなカリカリすんなよ。あんま肩肘張ってると、いざって時に身動きできなくなるぜ」
「そりゃ分かってるけどよ、スクワッドの嬢ちゃん達にまでレベルで抜かれちまうと、どうもな」
「あぁ、確かにな。気持ちは分かるぜ、俺だってそりゃキッツいからなぁ」
城之内は元々、魚沼周辺の霊能名家の一つ、新潟県内でも五指に入る神社の家系の出身者であり、ガイア連合魚沼支部が立ち上げられたばかりの初期から黒騎士部隊の一翼を担った古参の隊員。そして今や黒騎士部隊の一支隊を預かる小隊長という、魚沼シェルターにおいては紛れもないエリートの部類だ。
そんな彼が“低レベル者底上げイベント”と題された迎撃戦に参加しているのは、指揮系統の問題。悪辣な異界ギミックによって敵の戦力が激減しているとはいえ、低レベル者────とりわけ戦闘初心者だけで戦線を構築してしまえば、指揮系統まで初心者で構成された烏合の衆でメシアンと戦う事になりかねない。
だからこそ、最大の数が集まると予測されたこの地帯には精鋭、黒騎士部隊から抽出された精鋭が配置されており。
「姐さんにもらったこの『ベルリン』に恥じない程度には、手柄の一つも立てておかねえとな!」
「そりゃそうだ」
彼らが身に纏うデモニカ『ベルリン』は本来、九重静の為に製作された『バッシュ・ザ・ブラックナイト』をベースにした簡易量産試作型、それも半終末すら訪れていない時代の旧型だ。今となれば正式に量産ラインに乗っているG3シリーズなどの方が性能どころか生産性ですら上回っている。
だが黒騎士部隊という部隊名にあやかって黒く塗装された現在のベルリンは、長く使い込まれた故に上昇したレベルと、度重なる改修による強化によって最新鋭の機体にも匹敵するだけの性能を有していた。
「よし、お前ら気ぃ入れていくぞ! 緊張し過ぎない程度にな!」
背後に集まる仲間達を振り返り、城之内が檄を飛ばす。それに呼応したかのように、対峙していたメシア教会の陣列からも何らかの霊装らしき角笛が吹き鳴らされ、地鳴りのような足音を立てて進軍が開始された。
波濤のように迫り来る青白の威容に対し、魚沼シェルターの異能者達の間に怯えにも似た動揺が僅かに走る。それを掻き消すように、城之内はベルリンの腕に装着された半円形の盾に似た装備────デュエルディスクから勢いよく一枚のカードを抜き放った。
「俺のターン、ドロー!」
一般的なカードゲームとして流通している代物と見た目は変わらず、しかしガイア連合によって製造され、精霊化────簡易シキガミやアガシオンの技術により精霊を宿したカードによって、戦闘用に構築されたデッキ。異能者が扱えば、対悪魔としても通用する立派な武器だ。
「俺は『鉄の騎士 ギア・フリード』を召喚! さらに即効魔法発動【ライトマ】! このカードの強制脱衣効果で敵全体の防具を解除しつつ、『剣聖-ネイキッド・ギア・フリード』を特殊召喚! さらに『焔聖剣-ジョワユーズ』を装備して、ネイキッド・ギア・フリードの効果発動、敵モンスター一体を破壊。さらにネイキッド・ギア・フリードで────!!!」
大型天使の戦列を先頭に立ててメシア教会の陣列が突き進んでくる中、城之内の傍らに出現した騎士は、騎士ごと巻き込むようにして同時に発動された魔法の輝きを浴びて全身に纏う鎧を内側から粉砕し、中から現れた剣士が雄叫びを上げながら抜剣。振るった剣の軌跡が赤い閃光となって先頭にいた天使を真っ二つに破壊する。
そして城之内が続く次撃を発動しようとした、その刹那。
それより先んじて、戦闘に飛び出した機体が一機。脚部ホバーを全開にして前衛を飛び越え、メシア教会側の先陣を切る僧兵団の槍衾の前を横切りながら巨大な銃身を展開する。一見平坦な地形に見えて、しかし農地が広がるこの一帯は見た目以上に起伏が多く、しかしホバーによって地面から浮かんで走るその機体に一切の遅滞はなく、快速。
『ヌフ! ヌフフ! ヌヒャーッヒャッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! 見ていますか阿爛、金の力とはこのように使うものです! 然るべき時に、然るべき場所、然るべき状況で、しかし使う時には金を惜しまず全力で!!』
『あーハイハイ、分かってますから』
ガイア連合ロボ部によって開発された人型戦車・士魂号のカスタムモデル────『人型戦車重装フルアーマー士魂号ヘビーアームズカスタム (EW版)Ver.KA』。ベースとなった士魂号のシルエットを大きく崩す巨大な背部コンテナが特徴的だが、むしろ目を引くのは両腕から提げられた巨大な火砲。
コクピットに収まっているのはガイアミート工場長の武田観柳だ。追随するもう一機の士魂号に搭乗する弟子の阿爛にノリノリで講釈を垂れながら、戦場をフルスロットルで爆走する。
高笑いする身体を耐衝撃仕様のハーネスでシートに固定しつつ、パイロットスーツを介した神経接続により機体を操作。コクピットの左右から突き出た操縦桿はどちらかといえば体勢を安定させるためのグリップに近い。同時にタッチパネル式のサブモニターとキーボードの上を忙しく動き回る両手が、目に付いた戦術目標を片端からロックオンしていく。
当然のごとくその機体に向かって真っ先にメシアン、天使問わずの魔法による火箭が集中するが。
『ヌハハハハハハ無駄無駄無駄ァ! どうしようもなく! この上なく! 金の掛け所が間違っていますねェ! 効きませんよォこぉの機体にはぁ!!』
士魂号ヘビーアームズの両肩から伸びる補助腕が保持しているのは、宮城ロボ部から購入した可動式追加装甲。伸びた刃金の腕によって保持される大盾が、左右から打ち合わされるように巨大な遮蔽を形成。ヒヒイロカネ・マルエージング合金によって製造された超鋼の盾、その上に幾重にも貼られた魔法耐性コーティング、加えて盾裏の機構によって稼働する電磁バリアという三重の守りが物理・魔法等しく防ぎ止め。
そして。
『ガトリング!』
両腕にそれぞれ保持するのは巨大な武装────二連装ジャイアントガトリングガン、巨大なガトリング砲を二つ平行に並べ、一つの武器として強引に纏めた巨大な武器をそれぞれの手に一挺ずつ。合わせて四基の六連銃身が鋼の擦れ合う軋りを上げて空転し、それに数拍遅れて吐き出される実弾の奔流。
背部コンテナから出し惜しみなく給弾されるメタルリンク弾帯を喰って絶え間なく吐き出される銃弾の渦は、恐れず進軍してくるメシアンの隊列を横薙ぎに。
『ガトリング!』
自動発動する【銃撃ガードキル】によって危険な反射耐性を無効化しながら垂れ流される弾頭の豪雨。右のガトリングが大型天使を引き裂き、左のガトリングは装甲車を吹き飛ばし。湯水のように消費される膨大な弾丸による飽和攻撃により対空砲が吹っ飛び、COMPを構えたサマナーが粉微塵になっていく。
その威力、連射速度共に古式の手回し式ガトリングガンの比ではなく。
何より。
『ガトガトガトガトガトリング!』
弾幕が、尽きない。止まらない。
背中に搭載されたコンテナは大容量のフォルマ弾倉────生体マグネタイトを吸収して弾数を回復する特殊弾倉。その内部に組み込まれた五行器が士魂号のメインジェネレーターにも匹敵する大出力で大気中のマグネタイトを暴食し、弾丸を消費する傍から生産しては吐き出しの無限ループ。
機関部に搭載された自動追尾付与によって無駄弾はなく、機体に搭載された【銃撃ガードキル】が耐性による無効化を許さず、装備の力だけで敵陣を蹴散らしていく。
『ガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガト!!!』
『ガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガト!!!』
『ガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガト!!!』
『ガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガト!!!』
哄笑しながら戦場を爆走し、敵の大型兵器を次々にスクラップに変えていく観柳の士魂号────その背中を唖然としながら見送っていた城之内と本田は。
「「…………また黒札かよ!」」
気が付いたら驚くほどに遠ざかっている士魂号ヘビーアームズの背中に、二人揃ってツッコミを入れる。
「本田、このままじゃマズいぞ! 全部あのオッサンに持ってかれちまう!」
「だな! 姐さんに申し訳が立たねえし、全力で追い掛けるぞ! お前らもいい加減正気に戻れ! 飛行部隊は全員離陸だ!」
ベルリンの搭載COMPから召喚された妖獣バイコーンに飛び乗った二人は、そのままそれぞれの武器を手に愛馬を走らせ前進する。
城之内は大盾の陰に構えたデュエルディスクからカードをドローし、ネイキッド・ギア・フリードにも攻撃の指示を出して。
本田はベルリンの背部に搭載されたラックから数体のメダロットを射出しながら、展開型霊装である武装錬金『激戦』を本来の形態である十文字槍へと変形させて。
そんな二人に背中を叩かれるように、魚沼シェルターの守備隊も一気呵成に動き出す。
異能者は武器を構え、あるいは魔法を準備して、サマナーは悪魔を召喚し。
魚沼支部で生産された戦術甲冑・震電やG-3マイルドが前進し。
飛行戦力である天使に対抗するための飛行型悪魔や、飛行型シキガミ『フライングアーマー』に騎乗した異能者達。
大型天使とぶつかり合うのは人型戦車・士魂号や、パワーダイザー、カルディトーレなどの大型機体。
それらをまとめて引き連れて。
「ネイキッド・ギア・フリードでアタック、【利剣乱舞】! 男、城之内! 突貫するぜェえええええ────!!!!」
メシア教会の崩れた戦陣へと、城之内は一直線に突貫した。
◇ ◇ ◇
同じ戦場にて。
置いていかれないように、あるいは戦場で孤立しないように黒騎士部隊の動きに追随し、周囲に気を配りながら戦場を進む装甲トラックが一台。その荷台に取り付けられたガンポートにて、黒騎士部隊の後ろに着いて戦列に加わっていた巨漢の黒人『ダッチ』は、自ら先陣を切る黒騎士部隊の背中を見て思わず安堵の溜息を吐いていた。
「やれやれ、メシアンのクソ共と戦ってこいと言われた時には、ついに年貢の納め時が来たかとばっかり思ってたもんだがな……案外そうでもないらしいな」
「みてえだな。アタシはてっきり、肉盾にするためにガタイのいいダッチの旦那に声を掛けたもんだと思ってたんだが」
この偽りの魚沼市の戦線における戦力として召集された異能者は、魚沼シェルターの正式な住民ばかりというわけでもない。魚沼シェルターを取り巻く第一外壁、その外周から展開された新結界と、それを取り囲む現在建造中の第二外壁の内側に暮らす旧スラム街の住人達からも、戦力は集められていた。
その旧スラム街代表として参加させられたのがダッチだ。
旧スラム街側からすれば、メシア教会過激派との戦いに参加せよ、などという要請は、都合のいい肉盾として死んでこいという命令にしか聞こえなかったため、顔役の中でもかつてスラムが魚沼シェルターの行政区画の一部に加えられるにあたり先頭に立ってガイア連合魚沼支部との話し合いをまとめたダッチが、その責任を取らされて生贄に選ばれた。
ダッチが身に纏うのはもはや骨董品とすらいえる型落ちの戦術甲冑・震電────旧スラムを取り込んだ第二外壁の内側が魚沼シェルターの行政区分として扱われるようになってから供与された代物だが、この戦場における性能は十分。震電のサイズに合わせたガンポートの機関砲にて手負いの敵を確実に狙い撃ち、スラム街出身の異能者達を引き連れて黒騎士部隊が食い破った戦列の穴を喰い広げていく。
「それで、何で俺まで駆り出されてるかね……俺は非戦闘員だぞ!?」
「嘘つけ銀札! 普通に戦えるだろうが」
トラックのハンドルを握っているロックがぼやき声を上げているが、誰も聞いていない。彼にできるのはアクセルをベタ踏みしながらトラックを走らせる事くらいで。
スラムの一般住人と見せ掛けて内実は紐付き銀札、スラム内の動向をガイア連合魚沼支部に都合よく操作する役割を持つのがロックの正体だ。だからロックもある意味責任を取らされてこんな場所まで引っ張ってこられた……それを知っているのはダッチくらいのものだが。
「ロックの野郎が“魚沼シェルターのやり口は割と甘いから大丈夫だ”とか甘えた事言い出した時にはついつい反射的に殴りそうになっちまったが、いやぁ我慢してやって正解だったぜ」
「いやお嬢、オマエ普通に殴ってたからな」
「知らねえなぁ。そんな話は忘れた!」
ダッチ達が乗るのは市販の中型トラックに適当な鉄板と銃座を据え付けただけの装甲トラックだが、オカルト弾としては強度の甘い過激派メシアンのメシア弾ではその装甲を突き破るだけの威力は出せず、生き残るための性能に問題はなし。
その装甲の間に身を隠して大型のライフルで敵を狙い撃った女性が、普段からダッチの護衛を務めているレヴィだ。装甲トラックの荷台の上で、装甲による遮蔽の間を燕のように飛び回りながら、メシアンの絶え間ない攻撃の間を縫って的確に敵を狙い撃っている。
旧スラムが魚沼に恭順してそれなりに強力な武器の類が流通するようになって以来、妥協して使っていたナイフを二丁拳銃に持ち替えた彼女だが、この戦場に限って主武器はライフルだ。
「オラオラ、もっと気ぃ入れて掛かってこいやぁ!!」
並走しながら仕掛けてくるメシアンの装輪装甲車の銃撃から遮蔽で身を守りつつ反撃、防弾が不十分なタイヤを撃ち抜いてやれば、ドイツ製のLAPVエノク軽装甲車はコントロールを失ってその場で擱座して動かなくなり、同時に弾倉交換の隙を狙って襲い掛かってきた天使に対しては、ライフルを足元に放り出しつつ二丁拳銃をクイックドロウ、顔面に銃弾の雨を浴びせてやれば否応なしに沈黙してくれる。
「へっ、こんなもんかよ! ってか、本当に弱り過ぎじゃねえか? 何でこんなんで攻めてきたんだコイツら?」
「異界の効果って話だが……怖いもんだな。低レベル向けのボーナスイベントとかいう触れ込みだったが……コイツらをそんなイベントにしちまうガイア連合の方がヤバいだろ」
とりあえずガイア連合には逆らわないようにしよう。それが、スラム組の出した結論だった。
◇ ◇ ◇
偽りの魚沼市、郊外────住宅街と山林地帯が境を接する場所に作られた児童公園の脇を通る国道上を、メシア教会の一団が行軍していた。
機動力に秀でた軽戦車を中心に、兵員輸送用の装甲車が数両。
最後尾には主力戦車を置き、その周囲で飛行する下級天使達が周辺を哨戒する。
およそ教本通りの陣容だが、常とは異なる部分が一つ。
聖歌隊だ。
荷台周りに分厚い増加装甲を施したガントラックが三台。その荷台上に設けられた舞台に立ち、喇叭や竪琴を手にした天使達の指揮と演奏に合わせ、朗々と聖歌を合唱する信徒達。
およそメシアン以外の軍事組織では見られない兵科────と、いうわけでもない。要は軍楽隊だ。
現代においてはせいぜいパレードや式典などの演奏任務に、兵士の慰安や士気高揚を目的とした公演など、限られた用途にしか利用されない兵科だが、古代から近世にかけては戦場における情報伝達に用いられた伝統ある兵科。
翻って、当たり前のように戦場に異能が持ち込まれるようになった終末期の戦場においては、また違った役割を持つ。
聖歌による戦意高揚と共に、最前線から一段下がった後衛に立ち、強化や弱化といった支援魔法の効果を、歌を媒介に広範囲に拡散して振り撒く支援部隊として。そして同時に、聖歌を介して拡散される精神汚染を敵兵へと撒き散らす広域制圧兵器として。
戦術目標は、田園地帯で魚沼シェルターの防衛戦力と衝突している真っ最中の主力部隊との合流だ。聖歌隊とその護衛部隊であるこの支隊は、偽りの魚沼市に踏み込んだ位置が悪く────主力部隊との合流には相応の時間が掛かり、しかし合流を諦めるには近過ぎる、そんな微妙な位置に転移していたのだ。
結果として、主力部隊は聖歌隊との合流を待たずして戦闘へと突入しており、聖歌隊は合流を急いで、こうして道を急いでいたところだが。
そんな中。
不意の遭遇戦に備え、周辺への警戒と共に前方の索敵を担っていた下級天使が、その翼を広げて空中で足を止めた。
『どうしましたか、天使様?』
「何かが来ます。人でも、悪魔でもありません。あれは……機械ですね」
COMPを介して伝えられる自らの奉仕者にしてサマナーの誰何に、天使は手短に言葉を伝える。事実、近寄ってくるのは機械────シキガミやアガシオンのような人造悪魔ではなく、工場設備にて科学的に組み上げられた機械装置の群れだ。
AIやメインカメラを搭載した箱型の胴体を中心に、前後左右に展開する四基のプロペラユニットによって飛行するのは、市販のそれと大差ないドローンだ。
おそらくはガイア連合の用意した偵察手段だろう、と結論付けた天使の推測は、ほぼ正解。
「なるほど、あれなら聖歌の精神干渉も通じませんか。小癪な話ですが……撃ち落としてしまえば同じ事でしょう」
『では、我等が』
ガントラックの周辺を守る装甲車の屋上に設けられたガンポートから、軽機関銃の軽快な射撃音が響く。だがドローンの機体を構成するヒヒイロカネ・マルエージング合金が有する物理耐性により、ドローンの損傷は軽微。ならば魔法、と天使は自らの【マハザン】を放とうと構えるが。
それより一手早く、ドローンに搭載された高性能オーディオ機能が稼働する。それは霊装『ヤンマーニの腕輪』などに代表される、機械再生された音楽を通じてスキル効果を発動させる技術によるものであり、その曲は少し前、終末期における食料神への悪魔変化を期待して開発された“好きな総菜発表アガシオン”が歌う曲の原曲DVDの複製品だ。
《好きな惣菜を発表します。きりざい。納豆と刻み野菜を混ぜた魚沼地方の郷土料理。野沢菜漬けを入れるのは必須~♪》
途端、隊列を乱さず行軍を続けていた聖歌隊に強烈な動揺が走る。【子守唄】の眠気と共に、食べた事もない新潟県の伝統食の味わいや触感が、脳髄へと強制的に捻じ込まれてくる異様な感覚。呪歌によって歌われる料理の詳細を知らない人間に対して、その料理の詳細をテレパシーとミーム効果によって強制的に“理解させる”機能。
それを実現するために、ガイア連合における呪歌の第一人者、通称『人魚ネキ』に依頼して歌ってもらった【子守唄】────言わば『好きな惣菜発表人魚ネキ』をアガシオンに学習・模倣させる事により、『好きな総菜発表アガシオン』は完成したわけだが。
「っ、これは……!?」
ぐらり、と意識が揺らぐ。強い信仰により精神耐性を高め、さらに悪魔の誘惑への抵抗力を高める【精神耐性(微)】のアミュレットを標準装備としたメシアン達が、あろう事か次々に歌声の魔力に囚われていく。
飛行していた天使達はまだ良い、だが内部の運転手までが眠りに冒されてしまえば車両は安定して運行できず、結果、戦闘を走る軽戦車が急ブレーキを掛けたのを皮切りに、メシアン達の装甲車両は次々と停車を余儀なくされ、最後尾では玉突き衝突まで引き起こしている始末。
《いごねり。いご草を冷やし練り固めた佐渡伝統の海藻加工食品。ところてんみたいに細かく切って、醤油をかけて薬味と一緒に食べるのがマスト~♪》
「何だこれは……ッ! 聖歌隊は何をやっている!?」
質素と清貧を旨とする終末期の下級メシアンの生活では決して味わえない美食のイメージが集中を乱すのか、機械再生されたドローンの歌に押し負けて合唱の統率も取れず、メシアン達が誇る自慢の聖歌隊の歌声は押し負けていた。
機械音声による再生であるため、真の原曲である人魚ネキの歌唱には及ばないが、しかし足りない出力は複数のドローンに搭載されたスピーカーを介した多重演奏で補い、そして機械ゆえに疲労も息の乱れもなく延々と演奏を続ける事ができるため、こういった“歌合戦”という勝負形式においては滅法強く。
《鮭の焼漬け。焼いた鮭を醤油だれに漬け込んだやつ。冷めても固くならなくて、ふんわりしてて美味しい。なまぐさこうこ。大根をしょっからいわしで漬けたやつ~♪》
そして何より、食の豊かさという古代から終末期においても変わらない指標によって、どうしようもなく分かり易く生活水準の格差をダイレクトに頭に捻じ込まれるという事実。この終末期において、そんな豊かな食生活ができるのはガイア連合所属のシェルターくらいのもの、この終末世界においては比較的恵まれている部類のメシアンシェルターにとってもそれは同じ事だ。
無理矢理に理解させられていく“食”という生物として決して欠かせない業がメシアン達の心に色濃い敗北感を刻み込み、メシアン達の士気が、瞬く間に下がっていく。
「クソッ、ガイア連合はこんなのばっかりか……ッ!!!」
指揮官の男は、中央を走っていた装甲指揮者の座席の上で、悔しさに奥歯を噛み締めながらダッシュボードへと拳を叩きつける。その打撃音を掻き消すように指揮官の腹が空腹を訴えて、情けない腹の虫を盛大に鳴らすのだった。
◇ ◇ ◇
偽りの魚沼市、郊外。少し山間に入った立地に建てられた鳥煮亭総合学園も、この絵画によって作り上げられた偽りの魚沼市において再現がなされており────鳥煮亭総合学園生徒会を中心とする学生組は、その敷地を簡易的に要塞化して陣地へと仕立て上げていた。
元から用意されていた本物と変わらない地脈非依存の結界に、ある程度の持ち運びが可能になっている結界増幅装置を台車に乗せて要所に配置する事により補強。
加えて校庭の周囲に張り巡らされた樒の垣根を植物操作の術で急成長させ物理強度を引き上げた上で、さらに呪符により補強。
四方に設けられた校門には運び込んだヒヒイロカネ・マルエージング合金の装甲材を組み上げてバリケード化。
鳥煮亭総合学園に元から存在したものをそのまま引き写して実行された緊急災害対策マニュアルは、それなりの広さを持つ学校敷地をたった一時間程度で要塞化させていた。
それと同時並行する形で偵察用簡易シキガミを飛ばし、捕捉した敵部隊に向けてドローンを利用した『好きな総菜発表人魚ネキ』の【子守唄】により強襲を行ったのが、ちょうど今。戦果は上々といったところだが。
「────当然、これで終わりではありませんわ。皆様、次の兵器を用意してください!」
メシテロに悶え苦しむメシアンの醜態をタブレットの画面越しに観察しつつ、『安全第一』と書かれた黄色のヘルメットを被った桐藤ナギサが周囲で忙しく動き回る鳥煮亭総合学園の生徒達に指示を出せば、元気良く返事をした生徒達の手によって、新しい兵器が定位置へと運搬されていく。
見た目は大型のタイヤだ。量産のため直径3メートル越えのオリジナルからはかなり小型化が進んでおり、直径一メートルを少し上回る程度の市販のタイヤだ。強いて言えば通常のタイヤよりも大きく、ごつい……トラクター用のタイヤを流用している事くらいか。
それらが、およそ十数台。
搭載されていた大型トラックから降ろされ、鉄パイプで組み上げられたスタンドに嵌め込まれたまま、校門の内側へと横一列へと並べられていく。
「あの、ナギサ様……本当にこれ、大丈夫なんでしょうか……?」
「問題ありませんわ。引き取り料としてガイア連合宮城ロボ部から十分な量の巡航ミサイルを受け取っていますから、それだけでも殲滅には十分でしょう。あの兵器を先に使うのは、支援を頂いた宮城ロボ部への義理のようなものですから」
「でも、その……ほら、アレですよ! あの欠陥品で有名な……本当に大丈夫なんですか?」
「ミサイルの方がメインですから、まあ…………もういいでしょう、早く発射してしまってください」
半ばヤケクソ気味なナギサの号令に従って、担当の生徒が手にしていたタブレットをタップすると、タイヤ群は車軸の左右から一斉に小型のスラスターを展開、噴き出すアフターバーナーの反動によって鉄パイプの枠から飛び出し、加速し始める。
遠隔操作により自走する無人兵器、操作担当の生徒達がヘッドセットのゴーグルを装着し、COMPのUSB端子に接続した操縦用のコントロールパッド────市販されているゲーム機と同規格のコントローラーを握ってスタンバイ。
「校門開きなさい! 急いで!!」
「分かりました、ほら急げ急げ!」
物理型の異能に覚醒していた生徒が数名がかりで校門を開き、次いでその外側に築かれていたバリケードの門も解放され、そのほんの数秒後に、開いた鉄扉の間を車体もなくタイヤが駆け抜けていく。砂埃を巻き上げて路上を疾走する総計百二十台にも及ぶタイヤの群れは、獲物を求めて鳥煮亭総合学園の敷地を飛び出していった。
「……本当に、大丈夫なんでしょうか?」
少しずつ遠ざかっていくタイヤの群れの背中を見送った生徒達は、いまいち不安そうな目をしたまま、開いた校門を再び閉ざす作業に取り掛かるのだった。
◇ ◇ ◇
空中に浮かぶドローンから放送される『好きな総菜発表人魚ネキ』の【子守唄】を浴びせかけられたメシアン達は、その半数が既に眠りにつき、残る半分も押し寄せる眠気と氾濫する新潟県の伝統食品のイメージにより意識を失わないように耐え続けるのが精一杯、という状況だった。
“誘惑により堕落する”という属性を持つせいか真っ先に天使が全滅し、気力で耐えていられるのは兵士達のみ、というのが、天使を信奉するメシア教会の軍勢にとっては何よりの皮肉だ。
無論、それだけで戦闘が終わるはずもなく。
「耐えろ! 貴様等それでもメシアンか! この……くらい……信仰でどうにかしろ!!」
「そうは、言われても…………もう、これ以上は……っ!」
嘆くように叫んだ兵士は、そのままがっくりと顔を伏せた。その口から呻くように『笹団子……蒸かし茄子……けんさん焼き…………』と食べた事もない食品の名前が漏れ出すのを聞いて、聖歌隊を率いていた隊長は思わず舌打ちを漏らす。この兵士はもう駄目だ。
何より恐ろしいのは、聞いた事もない食べ物の名前が全て新潟県の郷土料理だとはっきりと分かる……分かってしまう事であり。
「クソッ、ガイア連合の相手はこれだから……!」
敬虔なメシア教徒である彼の好みとは掛け離れた俗欲に塗れた謎歌を垂れ流すドローンに向かって、隊長は手にしたアサルトライフルを連射する。本来は両手で保持すべき大型銃も、精度は落ちるとはいえ異能者の膂力であれば拳銃と変わらぬ片手持ちで扱える。
放たれた銃弾は空中に浮かぶドローンの数台へと着弾して火花を上げるが、しかし対悪魔へと特化したメシア弾では素で物理耐性を持つヒヒイロカネ・マルエージング合金で構成されたドローンを墜とすには至らない。
「中国の時といい今回といい、どれだけ我々の邪魔をすれば気が済むのだ、奴らは────っ!?」
攻めてきたのが自分達だという事実を棚に上げて怨嗟の声を上げた彼は、街路の向こう側から迫ってくる新たな敵影を見て息を呑んだ。かつて彼が見た悪夢の光景とどこか似通った面影を持ったそれは────。
「────パンジャンドラムだとォ……ッ!?」
思い返せば終末前。
その時期から末端とはいえ兵士としてアリウス計画に関わっていた彼が警備していた研究所を焼き払った悪夢の兵器────パンジャンドラム。今こうして彼の視界の中に迫り来る機体は直径一メートル程度に小型化され、趣味に走った奇妙奇天烈なギミックも搭載しておらず、見た目も規格統一された量産型ではあるが。
だからこそ、それは紛れもなくパンジャンドラムだと、見る者の視覚にダイレクトに訴えてくる。
互いに衝突せず進路を塞がないよう搭載された電霊AIの補助により適切な距離を保ちながら遠隔操作され走行する凶暴な量産型パンジャンドラムの群れは、メシアンの兵団へと容赦なく喰らい付く。防弾式の強化ゴムタイヤに内蔵されたナパーム燃料を引火させ、炸薬と共に弾き出されるのは法儀礼済みのボールベアリング散弾。
一瞬で辺りは地獄の業火が燃え盛る火の海と化し、その爆炎の中から飛び出してくるのは、量産型パンジャンドラムの各機体に一枚だけ搭載された回転式の対装甲バズソーだ。タイヤの回転力をそのまま切断力へと転化して射出される回転鋸は、メシアンの戦闘車両へと突き刺さって深い傷を残していく。
◇ ◇ ◇
「目標アルファからゼータ、全部沈黙しました! イータとシータのみ散発的に抵抗が続いているみたいです!」
「なるほど……さすがは主力戦車、やはり硬いですね。ですがこの様子では、大した抵抗もできないでしょう」
偽りの魚沼市、鳥煮亭総合学園敷地内にて。
ドローンを管制していた女生徒から報告を受け、ナギサは頷きを一つ。
ドローンによる『好きな総菜発表人魚ネキ』による奇襲攻撃と、その後に続くパンジャンドラムによる追撃はおおむね成功。ドローンはともかくとして、パンジャンドラムが想像以上の戦果を挙げているのはナギサ自身も驚きだが、それはそれとして。
「どの道、聖歌隊が本体と合流できなくなった時点で戦果としては十分……ひとまず、想定外の戦果である事は事実です。パンジャンドラムを操作していた子達には報酬を多めにカウントして差し上げてください」
「分かりました、直ちに!」
パンジャンドラムによる遠隔攻撃が終了し、パンジャンドラムを遠隔操作していた生徒達がヘッドセットを外して作業終了の報告と共に各々が休憩に入り始めている。ガイア連合やナギサからの直接の指示が出るまで、しばらく彼らの出番はない。
それに決して操作性が良いとはいえないパンジャンドラムの遠隔操縦は想像以上に神経を使う作業である事だし、もう少しだけ休ませてやってもいいだろうか。
「どちらにせよ大勢は決しました。既にパンジャンドラムの後からデモニカ隊が追撃に出ています。すぐに片が付くでしょう────」
淡々と判断を下すナギサだが、それとほぼ同時に響いた爆発音。剣呑な気配に反射的に身を翻して校門の方を振り仰ぐと、そこには爆発物を撃ち込まれたと思しき黒煙が上がっている。
「状況は? すぐに報告を!!」
ナギサが張り上げた声に反応してか、その姿を見つけた別の生徒が走ってくる。荒く息を吐いた男子生徒は、慌てた様子で状況を告げた。
「大変です! この学園、じゃない陣地にメシアンが襲撃を……! 校門付近でもう戦闘が始まって……っ!」
「落ち着いて。襲撃が発生する事は最初から織り込み済みですし、その為の陣地です。慌てず騒がず、マニュアル通りに応戦を始めてください!」
聖歌隊の方は既に出撃したデモニカ隊に任せれば問題なし。そして校門近くに積み上げられたバリケードの外側で、既に戦闘が始まっている。普段であれば学校周辺の警備を行っているイヌガミやアガシオンが、メシアンの部隊と交戦中であるようだ。
素早く状況を把握したナギサは、自分の取るべき行動に移る。
「予備の戦力は……問題ありませんね。緊急招集、警備の士魂号に出てもらいます! 格納庫、開いてください!!」
鉄骨とトタンで作られた急造の格納庫から姿を現してくる機械仕掛けの巨人の背を見送りながら、矢継ぎ早に指示を出していく。結界機能の出力を引き上げ、バリケードの銃座に着く生徒達には不用意な乱射を控えるよう厳に指示を出し、予備戦力として実戦経験のある生徒達には待機命令を出す。
敵の弱体化は間違いなく、この分であれば勝利も揺るがない。
しかし油断も手抜きも不要だ、確実に勝つ。
つまり。
「遠足は帰るまでが遠足────当然の話ですわね」
つまり、一人も死なせず、無事に帰る。そういう話だ。
◇ ◇ ◇
通信画面越しに、ベアトリーチェが倒れ伏している。
その躰の下から、赤黒い血がゆっくりと広がっていくのを見て、大司教メトフィエスはわずかに目を見開いた。その秀麗な顔に普段から浮かんでいる穏やかな笑みがわずかにでも崩れるのは、メトフィエスにしてみれば随分と珍しい事だった。
「────……何者ですか、貴方は」
『戦争屋です。戦争が好きで好きで堪らない……人間のプリミティブな衝動に殉じて生きる、最低最悪な人間ですよ』
忠実な従僕の装いでベアトリーチェの脇に立っていた修道服の男は、ベアトリーチェの脳天を撃ち抜いた拳銃の銃口から薄っすらと硝煙を立ち昇らせたままに。
「そうですか、ええ……実に、実に残念です。貴方のような有能な方をこのまま見逃すしかない、などと……本当なら、私自身の手で教化して差し上げたかったところなのですが」
ただただ悲しげに目を伏せるメトフィエスに対して『ゲイリー・ビアッジ』と名乗っていた傭兵は、ほんの一瞬前までの有能な従者の仮面の名残を投げ捨てて、その口を三日月形に歪めた。歪んだ博愛を形にしたメトフィエスのそれとは違う、嘲弄と欲望を滲ませたベアトリーチェのそれとも異なる、大好物の肉を貪り喰らう獣のような狂猛な笑顔。
『生憎とカミ様は間に合っているんでね、宗教絡みの勧誘は御断りだぜ』
「そうでしょうか。穏健派と過激派が手を取り合い、そこにガイア連合が加われば────この終末期の世界が我等メシア教会の理想郷となるのも時間の問題です。早いか遅いかの違いに過ぎませんよ」
傭兵の男は、そんなメトフィエスの言葉にいっそ憐れみの表情を見せる。
『夢物語も程々にしといた方がいいぜぇ、ハンサムさんよ。オレの目にはさっきから、アンタの背中越しに死神が立ってんのが見えてるんだがね。死神の姉ちゃんは面食いだ、戦場じゃアンタみたいなイケメンから死んでいくって相場は決まってるんだよ』
「何……?」
メトフィエスが眉をひそめた、刹那────数瞬前のそれと同様に、銃声が響く。ただ先程との違いは、その銃声が通信越しのものであるか、どうか。
『ひゅぅ、呪鉄製のホローポイントとは、殺意高ぇ弾使ってんじゃないの』
その光景を見て、傭兵の男は通信越しに口笛を吹いた。
「こ、れは……ッ!?」
抉り抜かれたように内側から大きく弾け飛んだ腹腔の傷口を押さえ、メトフィエスは呻く。メシア教会の高位異能者として【ディアラマ】程度は心得ているが、そんなものでは塞げない程に傷は大きく、深く、そして弾頭には死の呪詛までが刻まれていた。
メトフィエスに撃ち込まれた弾頭、ホローポイント弾。先端を擂鉢状に潰した特殊形状の弾頭は、着弾の衝撃で風船ガムのように膨張する事により、生物の肉体を内側から引き裂くように破壊する。軟鉄製の弾頭も素材の段階で呪殺属性を帯び、低位とはいえオカルト素材。呪殺に弱い天使を殺すための弾丸だが、当然、人間でも当たれば普通に死ぬ。
「……どうにも、ダメですね。銃という武器は、ボクの手には馴染まないみたいで」
後ろを振り返ったメトフィエスが、呆然と目を見開いた。拳銃を構えた若い女────未だに少女らしさが抜けない顔立ちのまま、小さな手に収まり切らない不釣り合いな大きさの拳銃を構えている。
二メートルも離れていない距離から撃ったにもかかわらず、頭を狙って腹に当たる時点で、才能がないと言われればその通り。銃も銃で粗悪品というわけではないが、サイズが大き過ぎ、小さな手では保持し切れていない。
「馬、鹿な…………貴方は、何故……貴方が────『輿水幸子』!!」
メシア教会穏健派という組織において名実共にトップである彼女は、銃口を下ろすと冷めた目でメトフィエスを見下ろした。
その両眼の奥に燃える凍り付いたように冷え切った輝きは、もはやメトフィエスの立場がどうしようもなく“詰んで”いる事を伝えるものであり。
「なぜ、なんて……そんなの、聞きたいのはこっちの方ですよ。何故も何も、当然じゃないですか。さっき過激派の幹部に言われてたでしょう、貴女のやってる事はガイア連合に対する裏切りじゃないか、って。自省も理解力も向こうの方が上だったようですね。────本当に残念ですよ、メトフィエス大司教」
幼い容姿から侮られがちな身でもあるし、何ならまだ過激派との決別が済んでいなかった時代には、それを利用して謀略を巡らせ、過激派の天使を謀殺した経験もある。
メトフィエスがメシアン穏健派に合流したのは半終末前、過激派に追われてきたアメリカからの難民に便乗しての話であり、幸子や日本の穏健派による政治工作が猛威を振るっていた全盛期が過ぎた後であるから、幸子の本性を直に知らなかった、という事もあるが。
輿水幸子は、決して無能な女ではない。
「帳簿を再計算してみたら計算が合わない部分が多々ありまして、それを個人的に再計算したらまあ、大量の使途不明金が出てくる事……その大半の出所が貴方だ、というのは正直驚きましたけど…………いずれ、やらかすのでは、なんて思いながら監視を怠ったボクにも責がありますけれど、ええ……責任、取ってもらいますよ」
教会施設に響いた時ならぬ銃声に、人が集まり始め、そうして騒ぎが起きる。それは施設で生活する信者達の誰もが慕うメトフィエスが重傷を負っている事であり、そして目撃者たちの目に映る状況証拠からしてその下手人が他ならぬ幸子である事で。
しかし幸子とメトフィエスの間に漂う空気は、静かに冷え切っていた。傷口を押さえたメトフィエスを助け起こそうと集まってくる信者達を蚊帳の外に置き、二人は淡々と会話を続け。
「私を、どうする御積りですか?」
「ボクの────“私”の方は、どうとも。もう既に、ボクがそれをどうのこうの言うような段階は、とうの昔に過ぎているんですから」
だが、しかし。
幸子がその言葉に込めた言外の意味を、メトフィエスが理解する事もなく。
「残念です。貴女には、私の目的に賛同頂けると思っていたのですが────貴方達、彼女に拘束を」
メトフィエスの号令に従って、銃を手にした幸子を捕縛してよいものか逡巡していた信者達は我を取り戻して幸子を取り囲んだ。
唯一神から幸子に与えられた権能は、単に法と秩序の属性を持つ魔法や、天使からの攻撃を防ぐという、ただそれだけのものに過ぎない。端的に言ってしまえば、法も秩序も関係ない人間からの純粋な暴力に対しては何の意味もない。異能者である分、一般人と比べれば耐久力はあるが、その程度。
後は監禁するなり、殺すなり、コンクリートに詰めて海底に投棄してしまうなり────教化という名の洗脳なり。
そんな思惑を顔に浮かべた信者達を見回して、しかし幸子はつまらなそうに小さく嘆息を一つ。動揺の一欠片もなく。
「残念なのはこっちの方ですよ。そもそも────ボクが一人で来ただなんて、一言も言っていませんけど」
「何を……ッ!?」
轟、と突風のような圧力がその場を吹き抜ける。衝撃波のような実体を持たぬ不可視の重圧は物理的な強制力を持たず、しかしそれ以上の畏れと怯えを伴って強圧的にメシア教徒達を押さえ付ける。
覇気。
殺気。
威圧。
威風。
その圧の正体を言い表すなら呼び方は数あれど性質が変わるはずもなく、下らない言葉遊びなど意味もないと言わんばかりに、脳天を鷲掴みにそのまま地面に向かって土下座の形に叩き付けられるかのような狂気的な圧力が、メシア教徒達に身動ぎ一つ許さない。
それは“彼”を呼び出した輿水幸子自身も例外ではなく、背後から溢れる憤怒の暴圧に呼吸すら忘れたように身を固くしている。
そして、ただ一人。そちらに視線を向けていた事で唯一その姿を目にする事を許されたメトフィエスが、引き攣った声を上げた。
「なぜ貴方がここにいる────『宝条命樹』!?」
整った顔立ちとは裏腹に、束ねた鋼線を絞り上げたかのごとく極限まで鍛え上げられた体躯。
腰まで届く長髪は鈍鉄のごとき暗銀色。
要所に装甲を打っただけのロングコートが、まるで巨大な城塞のような威圧感を伴って。
真白いリノリウムの床を踏み砕くかのように、アーミーブーツの分厚い靴底が教団施設の廊下を進むたびに殴打のような足音が響き。
さながら地獄の業火で鍛造した玉鋼のごとき憤怒を双眸に滾らせて。
穏健派メシアンにとって、過激派より、悪魔より、恐ろしい男が、そこに立っていた。
宝条命樹────かつてメシア教会の英雄と謳われた男。
終末期において最悪の事件の一つに数えられる『家庭板案件』を引き起こした張本人。
メシア教会穏健派の組織内に蔓延していた腐敗を大々的に暴き、それに加担していた人員を悉く殺害した者。
組織の陰で行われた悍ましい研究の片棒を担ぎ、未だ生まれぬ我が子すら差し出した己が妻────それを粛清した男。
「カトリックのように無心に信仰を捧げるでもなく」
「ルター派のように主の遺した言葉を総身に刻むでなく」
「カルヴァン派のように凡庸なる人生の全てを噛み締めるように生きる事こそを誇り高く信仰と掲げるでもなく」
「英国国教会のように儘ならぬ現実をどうにかして信仰と摺り合わせる葛藤を踏み締めて生きる事もなく」
なぜ、そんなにも彼が恐ろしいのか。
対メシアンに特化した絶大な暴力ゆえか、大天使に由来する裁きの権能ゆえか。
否、である。
全てを白日の下に晒してしまうからだ。
メシアンが恥知らずにも信仰の名を振りかざして行う不徳の数々を、正しく罪として。
「せめて主そのものでないにせよ、神の力にでも仕えて、妄執を満たす乱行の傍らに多少なりとて救われる人間を出す程度ができるならまだしも、天使という名の悪魔の誘惑に乗って人間性すらかなぐり捨てた貴様等には────地獄に堕ちる資格すらないと知れ」
ゆったりと優美ですらある動きで、長尺の日本刀の鞘が払われた。複雑な刃紋を描く灰鋼色の刀身が峰で鯉口と擦れて静かに軋りを上げ、質素な蛍光灯の光を反射して断頭台の刃さながらに冷酷な輝きを放つ。その輝きに息を呑みつつもメトフィエスは────対話による説得を選択する。
「確かに、他から見れば貴方の奥方のなさった事は不貞のように見えるかもしれません。ですが────」
慎重に言葉を選び、可能な限り相手の心情を慮りながら誠意を尽くし、そうして。
「火に油どころかニトログリセリン注いでどうするんですか……」
傍から聞いていた幸子が、呆れたように小さく溜息を吐き、肩をすくめた。ガイア連合に指名依頼を出して彼を呼び出したのは幸子自身だが、その幸子本人にとっても、正直恐ろしい相手だ。
裁きの大天使を魂に宿す人間が憤怒と恩讐を背負い込んだ────そんな人間が、安い同情の言葉などで止まるはずもなく。
彼を連れてきた時点で、既に結末は揺らがない。
無造作な一振りで刈り取られたメトフィエスの首は、正面に差し出した幸子の両手の中に落下して。
「いりませんね、これ」
どうでも良さそうに、幸子はそれを足元へと放り捨てた。
「ああ、もう。どうしましょうかね、この事態……どうやって始末を付ければいいんでしょうか、もう何もかも投げ出したくなってきましたよ……いつもの事ですが」
深々と溜息を吐いて頭を抱える幸子の苦労が、報われる日は来るのかどうか。
どうにか完成……まだ前半戦っていう。
田舎ニキの不在を狙って攻撃を仕掛けたメシアン……田舎ニキがいないとはいえ、何気にちょうどシラカワニキ探求ネキ北斎ネキの三人が滞在中なんよな……絵の世界に誘い込まれなくても無理ゲーっていうね、もうね。
~割とどうでもいい設定集~
・隠者 シオツチオジ
槌永ヒヨリの新しいペルソナ。
塩土老翁。潮と塩の神。すなわち潮流を司る導きの神であり、漁業や製塩の神。
悪魔絵師の技能を持つ北斎ネキに作成依頼したもの。
ステータス・スキル的には魔法寄り、千里眼も透視も思いのままな千眼通を持つナビゲート型だが、スナイパーであるヒヨリの場合は索敵と後方支援を同時にこなしながら持ち前の狙撃技能で敵を狙い撃っていける。
・メトフィエス大司教
元ネタはアニメ版『GODZILLA 怪獣惑星』シリーズ。対立するビルサルドが人類とは理解し合えない異質さを露わにしながらも最後まで味方として命を散らしていったのとは対照的に、後方味方面していて結局最初から敵だったエクシフのトップ。
メシアン穏健派の大幹部である大司教。元はトールマンあたりと一緒にアメリカから合流した組。
表向きには人類愛と博愛精神の塊みたいな人間。誰に対しても親身に接するし、助けを求められれば全力で応じる、絵に描いたような理想の聖職者。
裏向きにも、まあ字面だけはその通りなナマモノ。地獄への道を善意で舗装する狂人。多少底が浅くなった某黎明卿。
裏から過激派を支援していた張本人。黒幕の黒幕。
・蟲毒皿弾幕ピッチャー
アビャゲイル様『【R-18】アビャゲイルの投下所【カオス転生ごちゃまぜサマナーN次創作】』より。
KSJ研で多分蟲毒皿の次くらいに量産されている世界的ヒット商品。量産された蟲毒皿を発射するためのランチャー。
近接戦対策+蟲毒皿の安全な取り扱いの為に砲身にも破魔属性が付与されており、破魔属性の鈍器としても扱える。
支援物資として蟲毒皿とセットで世界各国の戦地に送り込まれており、おそらく世界のどこでも見る事ができる。ガイア製の霊装として世界で一番メジャーな商品。下手をすればG-3シリーズよりメジャー。
なお、蟲毒皿と並んで、メシアンの“機転”によってその辺にポイ捨てされる事が最も多い商品でもある。
メシアンが勝手に投棄したピッチャーを偶然拾った一般難民が、ピッチャーを手に英雄に成り上がる展開とか……あると思います。
・城之内克也 & 本田ヒロト
元ネタは『遊戯王』。
ガイア連合魚沼支部の実務担当である九重静が率いる実働部隊『黒騎士部隊』の古参隊員であり、一支隊を率いる小隊長とその補佐。
黒騎士部隊の標準装備であるデモニカ『ベルリン』を黒く塗装してメイン装備にしているが、それぞれ装備が異なる。
城之内はデュエルディスクを装備してカードで戦うデュエリスト。物理もそれなりにイケる口。
本田は十文字槍の武装錬金『激戦』で戦う物理ファイター。
なお城之内に『新潟県内でも五指に入る神社の家系の出身者』なんて設定が入っているのは、塵塚怪翁様『【カオ転三次】『俺たち』閑話集』より『とある地方霊能名家の終わりの顛末』で主人公の妹『各務原聡美』に九重静が紹介して、相手側のやらかしで結局破談になった縁談の相手、として書いていたから。
実力あり、家柄良し、性格もオラオラ系入ってるけど悪くなく、魚沼支部ナンバーツーの直属とかいう紛れもないエリート部隊の小隊長ともなれば、中間管理職とはいえ紛れもなくエリート中のエリートなので、紛れもない良縁。
城之内にとっても黒札の妹となれば十分に玉の輿といえるので、誰に対してもWin-Winな縁談になるはずだった。
・ベルリン
名無しのレイ様『【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち』より。
黒騎士部隊の標準装備。『バッシュ・ザ・ブラックナイト』と並んで黒騎士部隊の象徴ともいえる機体。
黒騎士部隊の名にちなんで黒く塗装されている。
元々は『バッシュ・ザ・ブラックナイト』をベースにした簡易量産試作型で、デモニカ黎明期に作られた本当に初期の機体なのだが、長年の運用によるレベルアップと、度重なる近代改修によって、現存する個体全てが最新鋭機にも匹敵する性能を持つ。
多分、内部部品の大半は既に実質G-3Xになってる。
・武装錬金
タマヤ与太郎様『【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策』より。
展開型デモニカの技術を応用した展開型霊装。
原作とは異なり、発動する核鉄ごとに中身となる武器形態は決まっている。
ポケットサイズから展開する武器とか、ぶっちゃけ初期の頃に欲しかった性能。
本田が扱う十文字槍の武装錬金『激戦』は、毎ターン【ディアラマ】を自律起動する自己治癒特化の武器。原作程に理不尽な再生能力は持っていない。
・人型戦車重装フルアーマー士魂号ヘビーアームズカスタム (EW版)Ver.KA
魚沼ロボ部で製作された士魂号のカスタムモデル。一応、モデルは『ガンダムヘビーアームズカスタム(EW版)』と『アルディラッドカンバー』。
武田観柳専用機。
金に飽かせた最強装備。
両手に装備した二連装ジャイアントガトリングガンが特徴的だが、むしろ重要なのは背中に背負ったコンテナ型のフォルマ弾倉。これに五行器を組み込む事により弾薬の回復速度を限界まで引き上げ、絶え間ない連射を可能としている。
銃そのものにも【銃撃ガードキル】を組み込む事で厄介な耐性への対策を施している。
両肩に搭載しているのは宮城ロボ部から購入したシルエットナイト用の可動式追加装甲。原作でアルディラッドカンバーが使用していたもの。素材段階で物理耐性を持つヒヒイロカネ・マルエージング合金の装甲版に魔法耐性コーティングを施し、さらに盾裏に仕込まれた電磁バリアによってダメージも減衰する三重防壁。
なお、これ以外にも近接迎撃用の頭部バルカンや、魚沼らしい氷結属性ミサイル、可動式の機銃など、結構色々と武器を搭載している。
脚部はホバーなので地形に左右されず結構速い。
・ダッチ & レヴィ & ロック
名無しのレイ様『【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち』より。
ダッチは魚沼シェルター近郊のスラム街における顔役の一人。
レヴィはその護衛。二挺ナイフ使い。
ロックはブレイン役。銀札で、裏ではガイア連合魚沼支部と繋がっている。銀札なのでおそらく原作とは異なり、普通に戦える。
・戦術甲冑・震電
名無しのレイ様『【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち』より。
終末どころか半終末前のデモニカ黎明期に開発された機体。本当に初期の頃の機体なので、終末期においては既に骨董品の部類。
多分、旧スラムが魚沼シェルターに組み込まれた辺りでスラム内に出回り始めた。
ダッチが使っている機体はガイア連合魚沼支部からこっそり供与されたもの。その辺で出回っているジャンク品よりも数倍良質なパーツが使われており、性能が段違いで良い。
・好きな総菜発表アガシオン
れべっか様『【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話』より。
駅弁『峠の釜めし』の容器に入ったアガシオン。容器の中身はゆるキャラ風デフォルメドラゴン。
容器から解放するとひたすら総菜を発表して飯テロる。発表された総菜を知らない相手に対してはテレパシーで味や食感などを体感させてくるため、豊かな食生活ができない終末後の欠食児童に対しては拷問のようなものだとか。
元はレベルアップによる悪魔変化によって食物神への変化を狙った製作されたものらしいが、ベヒモスのような暴食悪魔やヒダル神のような飢餓神に変化するリスクがありそうで怖い一品。
・人魚ネキ
黒焦げ様『【カオ転三次】 終末に向けての準備するとある転生者の話』より。
歌特化・修羅勢担当のデビルシフター系黒札。
単純な戦闘能力も高いのだが、それ以上に歌を介した殲滅ならぬ広域“制圧”ができる、割と珍しい種類の戦闘系黒札。
ここでは『好きな総菜発表アガシオン』製作に関わった人物の一人として登場。
・ヤンマーニの腕輪
塵塚怪翁様『【カオ転三次】『俺たち』閑話集』『とある『女性』転生者のその後の顛末』より。
BGMを鳴らす事で実際にスキル効果を発動させる霊装。
これと同じ技術が、桐藤ナギサが運用したドローンに使用されている。
・好きな総菜発表人魚ネキ
悪魔の音楽。
『好きな総菜発表アガシオン』の製造過程における副産物。
“聞いた者に総菜の味や食感を強制インストールする【子守唄】”を人魚ネキに歌ってもらい、それをアガシオンに学習させる事で『好きな総菜発表アガシオン』第一世代を作成した。
製作のため、人魚ネキにはまず最初に日本各地の様々な総菜を実食してもらった。このため料理部なども製作に関わっている。
その原曲DVDの郷土料理・新潟編を焼き増しして、ドローンに搭載している。
【子守唄】としても普通に効果がある。追加効果として、終末期の一般人にはほとんど手が届かないような美食の数々のイメージを直に脳内インストールされるため、集中力への負荷と精神ダメージが半端ない。
・パンジャンドラム
パンジャンドラム。自走する自爆兵器。旧イギリス軍が開発した英国精神の結晶。
タマヤ与太郎様『【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策』にて、幼女ネキとガイア連合宮城支部が中国で大々的に使用した。
今回使われたのは宮城支部が製造したもの。かつて中国で使われた数々の機体のデータをフィードバックして製造された量産型。
見た目は普通にトラクターのタイヤだが、車軸部分に搭載されたスラスターによる加速と姿勢制御により安定性も高く、AI制御により接触事故も起こさない。
ホイール内部にはナパーム燃料と法儀礼済みボールベアリングを内蔵して火炎・銃撃二属性による攻撃で安定性を稼ぎ、さらに高い防御性能や物理耐性を持つ相手に対しては内蔵された対装甲バズソーを射出して装甲破壊を狙う。
遠隔操作の為にはCOMPに専用のアプリをインストールした上で、USBにゲーム用のコントロールパッドを繋いで操作できる。ヘッドマウントディスプレイを利用すればさらに操作性が向上する。
一見優秀な兵器に見えるが、性能通りの素材と製作費用が掛かっているため、量産しても絶対に元が取れない高コスト欠陥兵器。そんなものを120台も製造したため、製作者は見つかった後で大目玉を食らった。
・桐藤ナギサ
元ネタは『ブルーアーカイブ』。
鳥煮亭総合学園に三人いる生徒会長の中では実務・後処理・苦労担当。三人の中では一番の常識人。
異能者としては治癒系が得意。他二人と違って特に特異な性質を持たない普通の異能者。
異能者としての純粋な戦闘力よりも実務・交渉能力が本体の人。今回の戦闘が始まる前にあらかじめ【子守唄】ドローンや大量のパンジャンドラムにミサイルなど色々と仕入れてきている辺り、結構な辣腕。
終末が来て背中に羽根が生えたが、ミカなどと異なり天使ではなく霊鳥系の血統。とりあえず飛べるので便利ではあるが、根本的な戦闘力がないので空中戦などは無理。
・輿水幸子
本家どくいも様『カオス転生ごちゃまぜサマナー』のキャラ。
メシアン穏健派のトップ。当たり前だが今回のメトフィエス大司教のやらかしに関しては一切関わっていない。
帳簿関係から何か不穏な事をやらかしているのに気付き、セフィロスニキに指名依頼を出して内部調査を決行。色々なところからアシストを受け、結果的にメトフィエスの背任へと辿り着いた。
早いか遅いかと問われれば、まあこの状態で最低限手遅れになっていない時点で有能な部類だと思われ。
一見馬鹿っぽく見えるが、そもそも日本に残っていた過激派のメシアンや天使を謀略で嵌めて外国に送り出し、残りは謀殺しただけあって正直侮れない。
多分、本家キャラの中でも最も不明点の多いキャラ。そもそも最終的にどこを目指しているのか、それがメシア教会や四文字の目指すところと一致しているのかすら不明。
一応、自分なりの解釈ならある。
どこかの感想で『サタンかルシファーの転生者では?』という意見があったが、そのどっちかなら多分サタン。
・宝条命樹
アビャゲイル様『【R-18】アビャゲイルの投下所【カオス転生ごちゃまぜサマナーN次創作】』より。
セフィロスニキ。
家庭板案件。
メシア教会絶対ブッ殺すマン。
メシアン穏健派にとって最も恐ろしい男。穏健派にとっておそらく直接的に敵対しているメシアン過激派よりも怖い相手で、またおそらく過激派メシアンよりも穏健派メシアンから恐れられている。