ファッション無惨様のごちゃサマライフ   作:頓西南北

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今回は無惨様の話。ひたすら開発していくだけの話。


見た目無惨様の何か色々開発記 初期編

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 ガイア連合黎明期、恐山異界解放戦が始まるより二ヶ月ほど前の事。10月を過ぎ、秋の気配が深まって晩夏の暑気が軒並み払われ、夏向けのクールビズでは既に肌寒くなってきた頃、後にダ・ヴィンチラボと呼ばれる未だ研究所未満の建屋。

 

 元々は星霊神社の分社であり、地元の霊能組織(壊滅済み)が保有していた施設だ。戦後のメシア教による根切りや、終末が近づいた事によるGP上昇に伴って連絡途絶した各地の霊能組織に関しての調査活動を行っていた⑨ニキの廃村行脚に同行した報酬の一環として、研究所が欲しいとショタオジに交渉して拝領した場所だ。

 山梨県内、及び車があれば三十分以内で往来できる星霊神社の比較的近所に存在しており、多分この辺もしばらくすればガイア連合の勢力伸長に伴って、少しずつ発展していくんじゃないかな。今はまだ、普通に山の中だが。

 

 そんな中、僕とシキガミであるメディア、そして同じく当研究所(予定)に配備されたばかりの新人シキガミであるダ・ヴィンチは、ラボに二人の客を迎えていた。

 

 片や、やや癖のある短髪の青年シラカワニキ。髪も肌もやや色素が薄く、役者のように整った細面の美形だが、鋭い目つきと顔立ちには覇気があり弱弱しい印象は一切存在しない。

 片や、やはり癖の強い黒髪の青年オラシオニキ。そういう髪型というよりは単に手入れの手間を惜しんでいるように雑に伸びた前髪の間から覗く、切れ長で独特の熱を孕んだ強烈な目つきが特徴的だ。

 

「珍しい客だな。ロボ部とはそこまで交流なかったと思っていたんだが」

 

 重力制御のシラカワニキ。

 飛行ユニットが専門のオラシオニキ。

 

 二人とも揃って技術畑の人間であり、揃いの制服のように白衣を着込んでいる。ただ白衣一つとってもシラカワニキは「隅から隅まで手は抜きません!」とでも言うかのごとくファッションの一部にしか見えないパリッパリのイケメン白衣であるのに対して、オラシオニキの方は「白衣の手入れ? そんな事より研究だ!」と言わんばかりにファッション性皆無のヨレた白衣だったりして、細かい部分に個性が出ていて面白い。

 

「いえいえ、必要な技術があればどこにでも行きます。それが我々ガイア連合の技術者というものでしょう」

「そういう事。聞いていますよ、ここのところ無惨ニキが研究している例のブツについて」

 

 二人とも、ガイア連合ロボ部に所属する若き研究者だ。そんな彼らが目的とする“例のブツ”とは────。

 

「僕の研究対象は色々あるけれど……ふむ、まあ目的はアレだろう。探求ネキが作ったフロートパネル、その発展型に関する研究データ」

「ええ、無論。条件があるなら、出せるだけ聞きますよ」

 

 探求ネキ。僕と似たような個人研究勢だ。

 

 【生物改変】スキルを用いて様々な新生物を作り出す技術を使いまくって何か色々作ってる人。

 または仙道の研究者。

 技術部所属のモルガンネキがウィッチクラフトを始めとする西洋系カルトマジックの第一人者であるなら、その対となる東洋系の仙道分野における開拓者であるといえる。

 

 後は……まあ快楽の探究者? いや、そっちはミナミィネキの方か? ……まあ、彼女の事はともかくとして、問題はその作品の話であり。

 

 フロートパネル。

 

 機械制御による重力操作、という何気に凄い事をやっている代物なのだが、技術的にはまだまだ未熟であり、探求ネキが完成させた時点では地上から10㎝程浮遊させるのがせいぜいだった発展途上の技術だ。その実体はパネル内を流れる電力により生体マグネタイトによる重力子の疑似生成を行い浮遊する、というものであり、要は【グライ】に端を発する重力属性魔法スキルの稼働原理を機械的かつ魔術的に再現したシステムだといえる、が。

 

 逆にいえば、これから研究を重ねていくらでも洗練させて行ける可能性がある、はず。そんな風に見込んで、研究開発を始めてみたわけだ。

 

「ダ・ヴィンチ。40番から48番までのサンプルを持ってきてくれ」

「はーい! 今行くね!」

 

 とダ・ヴィンチが研究所の奥へ消えていく背中を見送ると、二人の方へと向き直り。

 

「まあ、基本的に機械部分に関してはダ・ヴィンチ任せではあるんだけどな」

 

 と、僕は肩をすくめてみせた。

 

 実際、ダ・ヴィンチは大したものだ。図面製作から実際の加工段階に至るまで、魔術の術式構成が専門である僕に不足している工学的な面での製作・製造系のスキルを綺麗に補ってくれる。御陰で彼女がここに来てから、何かを作るのに不自由した事がない。

 そして今回、二人に見せる改良型フロートパネルこそ、現在僕がそのダ・ヴィンチに最も頼りっ放しにしてしまっていた作品であった。

 

「そういうわけで、基本今回の仕事はシキガミ頼りなんだよ。だからまあ、もし出来栄えに関心したら、ダ・ヴィンチを褒めてあげてくれ」

 

 と、そんな事を言っている内にオリジナルのフロートパネルと一緒に、ガラス筒に収まったサンプルが並んだ大型のカートを押して、ダ・ヴィンチが部屋に戻ってくる。

 

「ほう、これは……」

「まずフロートパネル自体の内部構造を効率化して、性能を8割程度に保ったまま20分の1弱くらいまで薄型軽量にする事に成功したフロートパネル・バージョン2。値段もまあ8分の1くらいにはなってる」

 

 と、一つ目のサンプルを示す。ガラス筒に収まったサンプルは、隣で浮かぶオリジナルのフロートパネルと比すれば低い位置に留まっているものの、一枚の紙のように薄くなっていた。

 

「で、それをさらに圧縮して積層構造のプレートにしたのが、隣のサンプルな。オリジナルと比べて電力を食うようになったが、その分出力は上がっている」

 

 と、さらに隣に浮遊する集積回路で形作られたウェハースのような代物を指で指し示す。カートの表面から確かに三十センチほどの距離を置いて浮遊するサンプルを、二人は興奮したように身を乗り出して眺めている。

 

「まあこれだと少々強度が低いというか、素材の問題か、少々脆いのが問題だからな、特に問題は耐衝撃性。だからこっちがバージョン2の素材と加工手段を再検討して、フィルム状に柔らかくしたバージョン3。それをさらに積層構造にしたのがこっちのバージョン4な。大雑把なコンセプトは完成したから、とりあえず現状はこれをベースに開発を進めていく予定」

 

 同じ積層構造になっているバージョン2と比べると浮遊性能はわずかに落ちるものの、耐衝撃性においては軟質素材を用いたこちらが上だ。重力制御機関の用途から考えても、有用性はこちらに軍配が上がるはず。

 

「ふむ、……なるほど」

「ここはこうなって……おお、これはこれは」

 

 まあ、二人ともサンプルを弄るのに夢中で聞いてなさそうだが。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 そして二週間ほどの期間が経過して。

 

「クク、フフフフ……フハハハハハハハ!」

「ヒヒ……ウヒヒ、ヒャーハハハハハハハハハハァッ!」

「ふっ、ははっ、フハハハハハハハハハハハハハハ!」

「あははははははは!」

 

 と。

 

 そして僕とダ・ヴィンチ、そして二週間かけて研究所に泊まり込みで研究を続けていたシラカワニキとオラシオニキ、合わせて四人は、揃って背中をそらして高笑いしていた。メディアも穏やかに微笑みながら隣で拍手をしてくれている。

 

「完成したぞ!」

「しましたね!」

「しましたねェ!」

「完成したよ!」

 

 四人で代わる代わるハイタッチを繰り返し、メディアともハイタッチ。とりあえず今の時点ではこれで完成形と断言できるだけの性能を備えたフロートパネルが完成したのだ。

 それどころか、既に次の段階まで進んでいるのが現状。

 

 ベースは耐衝撃性に優れたフィルム型を多数重ねたシート状で、加工もしやすい。フィルム同士の合間に、後に⑨ニキに従ってガイアマテリアルを立ち上げる事になった素材研究班から流れてきた防護素材や耐衝撃材などを挟む事で、強度が飛躍的に上昇している。

 この辺の素材絡みは、ガイアマテリアルの研究が進む事で後々さらに発展していく事になるのだが、それはさておき。

 

 だが、それでいて十分な出力とコストパフォーマンスを備え、さらに積層構造にした事で呪符や各種フォルマ、スキルカードなどを組み込めるようになったのが非常に大きい。そして、それだからこそ僕達にもできる事があるわけであり。

 

「とりあえず地霊ノームと精霊アーシーズのフォルマを組み込んで強度確保と、さらには重力干渉への適性を上昇ゥ!」

「それに伴って相性がいいセラミック素材をフィルムの合間に貼り重ねるようにしたから、シートからプレートに戻ったけどね!」

「術式構造については、モルガンネキが差し入れしてくれた浮かぶ船“プリドウェン”の木片が大いに参考になったな!」

 

 普段から不健康そうなオラシオニキが二週間で肩口まで伸びた蓬髪を振り乱し、その傍らでは相変わらず汚れ一つない完璧な美少女っぷりを披露するダ・ヴィンチが両手でVサインを作り。

 

「さらにその中に各種スキルカードを封入し、性能を強化」

「単純な性能ではやはり【グライ】が再安定! だが瞬間的な出力を叩き出すにはパネル内の電圧を瞬間的に引き上げる【ジオ】! 長時間に渡って出力を維持するなら同じく電力干渉の【雷の壁】! どちらにも【電撃耐性】は必須ですけどね! ファハハハハハハハハッ!」

 

 一人だけ冷静にメディアが告げ、その後を受けて三日間徹夜して片手で研究を続けながらもう片方の手でスキルカード【グライ】を作り続けていたシラカワニキが、秀麗な顔立ちには似合わず目を血走らせた顔芸を披露する。

 

 そして。

 

「完成だ!」

「完成ですよォ!」

「最高です!」

「素晴らしい!」

「やったね!」

「おめでとうございます」

 

 と、その場にいた五人でハイタッチを繰り返し、終いには揃って肩を組んで飛び上がり。

 

 そうして。

 

 僕とシラカワニキ、オラシオニキの三人はそのまま徹夜疲れで意識を失い、揃ってその場に倒れ込んだ。

 

 ともあれ、その後はハイテンションのまま打ち上げをして三人での共同研究は終了し、僕達はそれぞれ研究成果を持ち帰り、それぞれの場所で技術を発展させていく事になった。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 その少し後。

 

 探求ネキが手掛けた作品はフロートパネルだけではない。

 

 もう一つ。

 

 ────五行器レプリカ。

 

 スパロボシリーズに登場する機体『龍虎王』『虎龍王』を始めとした中華系の妖異をモチーフとする機体群“超機人”に搭載されたエネルギー機関“五行器”をガイア連合の技術で再現したもの……らしい。こっちの世界における実体は、周辺空間に遍在する生体マグネタイトを取り込み、五行の循環に乗せて増幅し、内容量の上限を越えたエネルギーを外部に出力する、ある種の永久機関である。

 

「うーん……これなー」

 

 どうしたものか。

 

 探求ネキが機械系にはあまり興味無さそうな感じという事もあるのか、試作機だけあって試作機ゆえの粗も多く、やろうと思えば内部機構の最適化やら、各種素材の吟味やら、術式精度の向上やら、できる事は山ほどあるのは間違いないし、だからとりあえずそういった方向に色々と術式をこねくり回しているところではあるが。

 

「うーん……」

 

 それはそれとしてどういう目的に使うのかもはっきりしていないから、どういう方向性に炉を最適化していくべきかもはっきりしていない。そしてそれ以前にコレ、元の物が元だけに性能を追求していけば際限がなくなりそうなのだ。

 

「そもそもコイツの元になったであろうものは間違いなく仙人の宝貝とかいう代物、つまり、それこそ千年二千年とかいう次元を掛けて、天地自然の精気を凝結させて錬成させる神話クラスの代物だ。当然、上を求めたら発展する先はそういう次元になるわけで……どう考えても色々と手が届かない」

 

 うん、無理。

 

 少なくとも、今すぐには。

 

 いくらでも上に行けるから、逆に際限がなくなってどうしようもなくなる。何より、その辺は開発した探求ネキ当人が進めていくことになるだろうし、僕が介入しても大した意味はなさそうだ。

 

 ならば。

 

「……よし、ナーフしよう」

 

 上を見るのがヤバいなら、下を見るべし。単純な理屈だ。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 と、いうわけでナーフしてみた。

 

 

 結果がコレ────『蒸気併用霊子機関』。元ネタは『サクラ大戦』。

 

 

 五行器レプリカの機能を簡略化するために僕が目を付けたのが“蒸気機関”だった。

 

 蒸気機関に投入される石炭を“土”と見立てれば、それを燃やす“火”、熱されつつ機関内部を循環する“水”、沸騰させて噴き出す蒸気を“木”の属性である風として、さらに機関を構成する金属が“金”として五行を揃える事ができる。

 後は蒸気機関の駆動それ自体で五行相生の循環と構築すれば、それを利用して閉鎖系からエネルギーを生成する事ができる。

 

 この方法なら五行器レプリカよりも大幅に簡素な術式と安価な素材、かつそれ相応の効率でそれなりのエネルギーを生み出す事ができる。代わりに蒸気機関というシステムの前提として機関自体が大型化してしまうし、何より“永久機関じゃない”。

 GNドライブと疑似GNドライブくらいの大きな差……いや、効率に比して疑似GNドライブの方が微妙にマシか。

 

 ともあれ、これについてはレポートでも書いて、適当に技術部のデータバンクにでも投げておこう。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 異界・聖都天草攻略より少しだけ後の話。聖都天草にて捕獲した妖魔ビヤーキーが我が研究所の商品ラインナップに上がり、それ相応の売り上げを出せるようになってきた辺りで。

 

「ふむ……」

 

 大天使ヤズラエルのフォルマ。

 

 もっと正確にいえば、大天使として無理矢理顕現させられた邪神ヨグ=ソトースのフォルマ。

 

 ビー玉サイズの虹色の球体がいくつも連なって集合体となって浮遊しているそれを見て、溜息を一つ。

 

「これを扱うのは……今の僕のは少々厳しいか。もっとレベルと、それに技量と知識量も上げる必要があるな」

 

 いや、ショタオジに色々借りて無理すればどうにかなりそうな気もしないでもないんだが……切り札を作るという意味でもそれが有用なのは分かっているんだが、どうにもな。迷惑を掛けるのが申し訳ないというか。

 

「悩むんなら、他に今できる事を進めたらどうだい?」

「まあ、そうだな」

 

 そんなダ・ヴィンチの一言で思考を切り替えて次に進む。

 

 数日前、少々厄介な事件が起きた。小規模カルト団体によって誘拐された“俺ら”の一人が、改造手術を受けて体内にアバドン虫アポリオンの遺骸を埋め込まれ、それによって発現した悪魔変身が解除できずバッタ怪人のごとき姿となった状態で保護されたのだそうだ。

 なお問題の“俺ら”────仮称『アバドンニキ』は厄介な事に記憶を喪失しており、またバッタ怪人状態の彼は変身解除できないため顔や身体的特徴すら特定できず、挙句の果てにやらかし元のカルト団体にも彼の身元についての記録や所持品も一欠片も残っていなかった、というオチ。

 埋め込まれたアポリオンの遺骸も肉体と魂に嫌な具合に喰い込んでおり、無理矢理引き剥がせば心身双方に致命的なダメージが入るとかいう厄介な状態であり。しかも彼が死んだらそれを生贄にしてアバドン王が召喚されるとかいうクソ仕様である模様。

 

 そんなわけで、そんな状態の彼にショタオジから示された最も確実な解決策は、どうにかしてレベルを上げ悪魔変身能力を制御下に置き、変身解除する、という脳筋極まりないものだった。そして同時に、彼の魂と肉体を保護するための封印具の作成も同時に……というかむしろ先に行う必要がある。

 

 そんな封印具の製作に真っ先に名乗りを上げたのは────まさかのホビー部だった。

 

 滅びの化身であるアポリオンに対して、正義のヒーローとしての概念を付与する事により性質を相殺、欲を言えば力の方向をより望ましい向きへと転換する。つまり────そう、ライダーベルトの作成である。

 

 そんなビッグウェーブに、僕も乗ってみようと思ったわけだ。

 

 ライダー、格好いいからね。

 

 それに、今回の一件に関して探求ネキが放出した情報接続加工技術を試してみたいってのもある。

 

 ともあれ、この事件を皮切りにガイア連合ホビー部、その中でもライダー部が急速に規模を拡大し、各種ライダー霊装などがガイア連合内に幅広く出回っていく事になるのだが、ともあれ。

 

「今回のコレは、コンペには出せないねえ」

 

 そもそも最初のレギュレーションからして、他悪魔の力を取り込んでどうこう、という形式ではアバドンニキの心身に対する負担が大きく、アバドンニキの成長が追い付いていないためショタオジから禁止されていたわけで。

 

「残念だけどね、仕方ないね」

「ですねぇ」

 

 などとショタオジにもありがたいコメントを頂いてしまった。

 

 うん。

 

 まあ。

 

「うんうん、発想としては悪くないと思うよ。よくできている」

 

 邪神パズスの霊基を “飛蝗”“獅子”“猛禽”“毒蝎”という構成要素ごとに分解して、イナゴの要素を抽出。そして悪霊の王であるパズスが持つ『悪霊の王の権威で悪霊を鎮め祓う』という性質を利用し、同じイナゴ属性という要素を利用してアポリオンを括り、その性質を“邪悪を討つ正義のヒーロー”へと傾ける。

 それはまさしく、ショッカーがもたらした改造人間という力で、ショッカーに属する改造人間と戦う昭和仮面ライダーに最も近しい力となるだろう。

 

 その姿が令和の仮面ライダーというのも、不思議な話であるのだが、ともあれ。

 

 そうやって開発したのが今回の『サイクロンライザー』と『ロッキングホッパープログライズキー』だ。

 

「まあとにかくデビルシフター用の強化兵装……霊基の上から別の霊基を着装して悪魔変身形態をより戦闘用に洗練されたカタチへと近付ける技術……一通り完成したと自負してますよ」

 

 ちなみにこのサイクロンライザー関連の技術はこの後もしばらく開発を続け、デモニカと同等の装着者補助システムを搭載した直接的な発展型である『滅亡迅雷フォースライザー』と追加のプログライズキーをいくつか開発した後に、ガイア連合傘下の企業の一つである『飛電インテリジェンス』へと技術を委託する事になる。

 この辺は後に、デビルシフターの変身形態矯正・補強霊装として発展していくことになるのだが、それはさておき。

 

 

 

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 天使召喚プログラムを利用した異界式無限マッカシステムを開発してみたのだが、ショタオジによって機密指定されてしまった。まあその辺は当初から予想済みなのでそこまで問題はないのだが。

 

 ともあれ気を取り直して、今回は疾風属性魔法を利用した旧来のオラシオ式スラスターを改良というかバリエーション化していく事にする。

 

 まず水撃系魔法を利用した水中用ハイドロジェットスラスター……水流を噴射して反動で加速する水中用のスラスターだ。これの弱点としては、水撃系魔法自体がレアなのでスキルカードや素材の調達が難しく、結果として値段が高騰化してしまう事か。

 水撃系魔法を得意とする高位異能者なんかがその辺から生えてくればコストダウンも可能だろうが、まあ、それは期待しても仕方ないか。

 

 次。疾風属性魔法を【ザン】とかの衝撃系に置き換えた衝撃魔法系スラスター。【ガル】系統の疾風系よりもメジャーな衝撃系魔法をメインに据える事で、ある程度のコストダウンに成功。逆に制御難易度が少しばかり上昇してしまったが、衝撃系魔法を得意とする異能者は多いので、そういう異能者をパイロットに据えればトントンで行ける、はず。

 

 後は、氷結系魔法を利用した低温型スラスター……これ需要あるの? 作ってみたはいいけど、ぶっちゃけ用途があるのか、というか従来型の疾風属性スラスターと比べて何かしらのメリットがあるとは思えない……いやまあ、メジャーな【ブフ】系統の素材を使えるからコストは多少下がっているけど、気休め程度だし。

 まあ氷結魔法系の適性者が使うロボやライダーシステムに搭載するなら、従来型のスラスターよりこっちの方が使いやすいか。オーダーメイド用のパーツとして考えれば、まあそれなりかな。

 

 

 

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 それより少し後、現地人霊能組織が少しずつガイア連合傘下に入ってくる頃。

 

 

 僕の方でも少しだけ変化があった。聖都天草攻略戦の時から少しばかり考えていた事……僕自身の基礎戦闘能力の向上を目的に、ショタオジとその式神であるネコマタ女史に修行を着けてもらったのだ。まあ大変だったのは間違いない……が、生身状態、及びヌエ変身形態双方における格闘技能に結構な向上を得た。

 

 特にネコマタ女史には、生身の格闘だけでなく、変身状態でも使える格闘技法を教わった。修験道や仙術のような自然と一体化する修養法……もしくは、北欧のベルセルクにも近しい、存在領域を獣の側に踏み込むシャーマニックな身体・霊魂操作と一体になった独自の近接格闘術だ。

 半ば拷問じみた修行ではあったが、御陰で身体運用は大幅に向上したし、陰陽道の域を一歩外れた仙術という領域への取っ掛かりも掴めた。

 

 で、その獣格闘の集大成となる大技として最終的に獲得したのがスキル【鳶穿】だ。獣の鉤爪でも使える格闘スキルであり、敵の眼球や内臓を毟り取る殺人技法で、その性質上、何気に対悪魔で使うとフォルマ回収に役立つ技だが、それ以外にも多分コレ、擦れ違い様に敵の持ち物を盗み取る簒奪術にも使えると思う。

 スキルとして権能の領域まで到達すれば、少し離れた場所にいる敵の眼球とか臓物なんかを抉り取るように手元に転送したり、なんていう怖い真似もできそうだ。

 

 で、それ以外にも修行の一環として、星霊神社の書庫に置かれていた探求ネキの書いた魔導書『建体飽食技典』を写本する事になった。そうやって写本で得た知識と修行のお陰で、書の主題となっている【魂魄精錬法】【食没】と、その取得の前提となる【小周天】の習得にも成功。

 身体・気脈の把握・操作という基礎領域の向上は、これまではペルソナから権能として引き出した技術頼りだった異能と魔術の基盤をより確かなものにでき、実りも非常に多いものとなった。

 

 なお十数冊ほど写本した『建体飽食技典』は一冊をこちらの手元に残してガイア連合からの買取りになり、報酬が出た。買い上げられた写本は一部が書庫に収蔵された他、ガチャ景品にも回されることになったらしい。

 

 

 まあ、それで────そんな感じで修行を終えた後、ダ・ヴィンチラボに珍しい人物がやってきた。

 

 

 社長系“俺ら”の一人である通称『列車ニキ』こと『旋風寺舞人』君だ。何やらまだ高校生だというのに結構大きめの企業で社長をやっているのだとか。大したものだ。

 

 彼が率いている旋風寺重工は主に列車関係の製造元であるらしく、他にも線路のレールとかその他色々そっち関係のシステムを作っている会社だそうだが、今回彼が持ってきた依頼は……まあ普通に霊装の作成だ。彼のシキガミである『無名』の使う武装を注文されたのだが。

 

 原作再現コスプレ霊装の一環で、『甲鉄城のカバネリ』に登場する『蒸気銃』が欲しいのだそうだ。で、いつぞや蒸気併用霊子機関を作成したウチに目を付けた、と。

 

 じゃ、作りましょうかね。

 

 蒸気銃は基本的に、背中というか腰の後ろに装着する携帯式の大圧力ボイラーと、そこから有線直結されたガス圧式エアガンによって構成されるので……まずはボイラー部分として蒸気併用霊子機関を小型化して携帯できるようにするところから、か。

 小型化と最適化から、だな。とはいえコレ、石炭を燃料にする必要があるんだが、その辺大丈夫……ふむ、大丈夫らしいな。まあ、その辺は社長だから割と何とかなるんだろう。

 

 銃部分は……霊子加速砲でいいか。短銃サイズに小型化するのが大変だが、そこはまあ、呉のガイアマテリアルから流れてきた素材データを使えば何とかなるだろう。

 

 霊子加速砲はガイア連合技術部において比較的初期に開発された代物だ。属性弾や攻撃用アイテムを作成する技術の流用により、スキルを弾体として形成し機関部に装填、霊子加速を行いつつ砲身から高速で射出する……霊子加速効果によりブースタ・プロレマ系の自動効果スキルと同等の威力上昇が見込める上に、純粋な弾速や射程も大幅に向上する。

 まだまだ理論に技術が追い付いていない代物で、構造や製造技術の洗練とか、素材関連の強度とか色々が足りていないのだが、その一方で理論そのものは単純で応用がしやすく、まだまだいくらでも発展が見込める分野だな。

 今回は機関部に【ザン】を装填してある。霊子機関との直結だから、見た目は小型の銃でも結構な威力になる。元作品で登場したカバネでも、その辺のモブカバネ程度が相手なら三体くらいまとめて貫通できるくらいの威力にはなっているんじゃないか。

 

 まあ弱点として、どうしても背中のボイラーが結構大きめになるから、その辺かさばるのが難点だな。しかも石炭の補給は必須。まあ、その辺はコスプレ装備だから仕方ないと割り切るしかないかね。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 ちょっと前、とある黒札がガイア連合に合流した。それ自体は割といつも通りなんだが、問題は彼女が地元霊能家系から継承していた“樒を霊木化する技術”────これだけ聞くとそこまで大したものじゃないように思えるし、実際に元の霊能組織でもせいぜい栽培した樒を寺社に納めるくらいだったらしいのだが…………これがガイア連合に入ってきた時点で、結構な技術革新になった。

 

 霊木・霊草化できるのが、樒だけじゃなかった────この一言に尽きる。何なら、元から霊木・霊草になっている植物、たとえば探求ネキ製のトリコ原作再現シリーズ不可思議植物なんかも、特に厄介な副作用などもなく、ほぼノーリスクでその効力を強める事が出来た。

 

 これ一番喜んだのが農業部と、そして料理部である。

 

 そりゃそうだ。

 

 コレのお陰で、ニンジン、ダイコン、ジャガイモ、その他様々な一般的な野菜や穀物を霊草化させてオカルト料理の素材に使う事ができるようになった。これのおかげで、彼らの作るオカルト料理のレパートリーが一気に増えて、山梨第一支部の食堂で供されるメニューも一気に増えた……何なら今も増え続けている。

 それだけでなく、ガイアカレーの値段が大幅に下がって生産量も増え、逆に味は一足飛びに向上した。ガイアカレーの決定版が完成したのも、霊木化技術のお陰だ。

 

 そして、その恩恵は食品関連だけじゃあない。製糸に使われる麻や、和紙の素材になるコウゾ、養蚕の餌になる桑、木材となる杉などなど、様々な素材の霊木化が試みられている。高価な素材はより効力を高めて高位の霊装が強化され、安価な素材も増えてさらにリーズナブルになり、低レベル向けの霊装も簡単に揃えられるようになっていく。

 

 

 これだけでも、結構な変化だ。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 レーダーを作ろう。

 

 悪魔を察知するエネミーサーチとはちょっと違った代物……異界の出現や霊脈への異変を感知する広域監視レーダー的な代物だ。

 

 陰陽道と風水術を基盤に、まあ色々と何やかや。

 

 でっかい八卦盤の中央に直径数メートルの水の球体を【アクア】系の術式で固定し、マグネットで自律駆動する筮竹とかそんな占術ギミックを配置し、そこに仕込んだ同じく【アクア】系術式に反応して、地脈や星辰の揺らぎに連動して水球に反応が出るような感じで構築しつつ、さらにそれを機械的なセンサーで感知するように……とかやって一通り完成。

 後はセンサーをPCと連動させ、異界の存在を捕捉すればマップ上に空間座標が表示される感じで。

 

 とりあえず今は試作品だからそんなものだが、本格的なものを作るならシキガミ技術とか諸々の色々と連動させていく形になるだろうな。

 ハイテク化も進んでいくだろう。

 

 術式方面は僕が担当。

 機械系はダ・ヴィンチが担当。

 

 そんな感じ、普段通りの役割分担で完成。

 

 

 名付けて【感知水球】。

 

 

 現在は山梨県周辺のマップが映し出されているが、星霊神社からの地脈制御が効いているせいか、見た感じ不意に出現する異界はあまりなさそう……たまに小規模なヤツが出てくる程度だ。

 

 まあその辺、人がやった方が詳しく、しかも精密に感知できるのだが……しかし面倒臭い儀式を脇に置いて二十四時間ぶっ通しで稼働し続けられるのは大きい。

 

 とりあえずその辺をショタオジに見せると、何かこれで結構負担が減るらしく大喜びで、星霊神社に大型の感知水球2号機を設置するのと引き換えに、大量の報酬を気前よく渡してくれた。

 

 やったぜ。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 最近、自衛隊との協力が締結されたりして技術開発が進んでいるが、その最たるものがデモニカスーツ、特に霊山同盟支部で量産の準備が着々と進んでいるG3シリーズだ。

 なので、それに便乗して便利なカスタムパーツを売り捌き、利益の一つも獲得してやろうという腹だ。

 

 その辺、似たような事を考えているのは僕だけではないらしく、当初の基本装備は専用のサブマシンガン『GM-01 スコーピオン』のみだったのが、以前ニヒトニキなる“俺ら”の一人が設計した高周波ブレードの設計図を基に近接戦闘装備『GS-03デストロイヤー』なんかもロールアウトしているらしい。

 

 まあそういった装備の量産なんかの問題は、生産ラインを持ってる社長系俺らの誰かとコンタクトを取るべきだろうが、まあその辺はこの間の旋風寺重工や、飛電インテリジェンスにでも投げよう。もしくはG3の開発元である兎山シノ博士に、か。

 

「そんなわけで、需要がありそうで便利そうな追加装備の腹案になるわけだが────」

 

 とまあ、そんな具合でG3強化装備の開発が始まったわけである、が────どうにも、開発は微妙に難航していた。

 

 

「うーん……どうにもな」

 

 

 『機動戦士ガンダムSEED』を元ネタに、シリーズものの追加装備『ストライカーパック』をプロデュース。

 基本的には追加装備と追加バッテリーと推進器を兼ねたバックパックをG3の背部に装着する形になる。開発中のパックは原典に倣い三種類、つまりバランス型にして高機動型『エールストライカー』、近接戦闘特化型『ソードストライカー』、火力支援型『ランチャーストライカー』の三種だ。

 

 重量そのものは増加するが、バッテリーから通電していればフロートパネルが稼働するので、稼働中はそこまで気にする必要がないという。

 

 なお、原典よりも武装とかその辺は簡略化されている。コストや重量の削減とかそういった理由もあるが、それ以上に単純に、G3には割と優秀な基本装備が多いので、むしろ装備部位を減らす事でアセンブルの自由度を引き上げる方向性にした方が強いと判断したからでもある。

 どうしても必要なら別パーツとして売り出すから、それで何とかして欲しい。

 

 

 さて、その三者の内訳だが。

 

 

 

 まず、高機動型のエールストライカー。

 

「以前オラシオニキが持ち込んだ疾風系魔法を利用した推進器を主体に、と」

 

 三種の中でもとりわけ高推力のスラスターを四基搭載しており、機動力は最も高い。できれば飛行可能な域にまで持っていきたいが今はちょっと無理だ。スラスターの推力が絶対に足りていない。だから、人型という流体力学的にどうしようもなく空を飛ぶのに向いていない形をしていて、それでいてクソ重い鋼鉄の鎧を着た肉の塊を離陸させるには少々力不足だ。

 

 だったら、他で補うしかない。まあその辺も腹案がある。ウイングの内側に積層型フロートパネルを内蔵して重量軽減を図り、さらにウイング表面に疾風系魔法を基盤とした術式を刻んで揚力を発生しつつ空気抵抗を軽減。さらに妖鳥系統のフォルマを組み込む事で飛行概念を強化して、と。

 

「うーん、まあ高所からの滑空や空挺降下ができれば十分じゃないかな、今は……とは思うんだが」

 

 やはり推力というか、何か一つパンチが足りないというか、何かしら必要不可欠な歯車が欠けているというか、どうにも安定した飛行ができないというか。妖鳥・凶鳥系のフォルマは速度を出すには向いているが、安定して浮揚させるには微妙に向いてないというか。

 うーん……しかし何かしら追加してみるにせよ、量産を前提にしている以上そこまで価値や希少性の高い素材を使うべきではないのだが。

 

 …………いや、空を飛ぶのは妖鳥や凶鳥ばかりとは限らなかったな。むしろガイア連合の主敵といえる、それこそ一匹見掛けたら最低でも三十匹はいると仮定しておかなければならないアイツラこそ、空を飛んでいるはずだ。

 

 そう────天使共。

 

 ……微妙にイラっと来る話だが、にっくき天使共のフォルマを翼に組み込むと、途端に浮揚性能が向上した。まあ鳥系悪魔と比べると推進力はいささか落ちるのだが、そこはそれ、ウイングではなくスラスターの方にこそ鳥系のフォルマを組み込む事でそこら辺の懸念も解決。

 まあ、あれ……天使自体が“翼で空を飛ぶヒトガタ”という概念を帯びているからね。魔術的に考えて人間のカタチをした物体を空に浮かべるために、これ以上相応しい概念はない、と。

 ひとまずグライダーやパラシュートのように滑空は普通にできるし、そうでなくても数百メートル程度の短距離なら飛行できるくらいには強化された。ひとまずはこれで。

 

 

 

 近接戦闘特化型のソードストライカー。バックパック脇のマウント用ハードポイントには大剣『シュベルトゲベール』を装備。瞬間的な出力に秀でたスラスターを複数搭載しており、回避性能を強化。

 刃物を振り回してのチャンバラに重きを置いた機体など、銃撃戦を主体とする現代戦のドクトリンにおいては一種のギャグみたいなものだろうが、異能者の戦闘においては話が別だから問題ない。近接戦に優れた異能者なら銃弾を見てから回避したり、剣で銃弾を弾いたり、銃弾よりも速く動いたり、斬撃を銃弾より遠く飛ばしたり、と割とあっさりやってのける。

 

 だからこういうコンセプトの機体も割とアリなのだ。

 

 だがまあ、コイツの問題点は非常に単純だ。

 

「剣がねー、重過ぎるんだよねー……」

 

 対大型悪魔用に設計した大型剣だ。でかいからして、取り回しが悪い。だが曲がりなりにも大型近接武器なので、相応のサイズと質量は絶対に必要になるし、その辺は何があろうが減らせない。

 だから代わりとして刀身自体にフロートパネルを組み込んで、重力制御により必要に応じた軽量化を行い、攻撃時には逆に瞬間的に重量を増して破壊力を引き上げる事すらできるようになっている……のだが、そのせいで逆に刀身をいちいち振り回す度に思考操作で重力制御をやる羽目になり、使用者に求められるタスクが増えて面倒な事になっている。

 その辺は将来的にAI制御に任せる方向性で一般化できるようになればいいな、と思っているが、今はデータが少な過ぎて無理。とりあえず今は上級者向けって事で、学習型AIを積んでデータを収集するのがいいだろうな。試したい人がいれば提供する予定。

 

 

 

 火力支援型のランチャーストライカー。バックパックのハードポイントに直に接続された大型霊子加速砲『アグニ』を搭載して火力を充実。その一方でスラスターはコストパフォーマンスを重視したものであり、三者の中では一番推力が低い。

 

 霊子加速砲……列車ニキの注文してきた蒸気銃で使った技術だな。まあ、今回は大威力の砲が欲しいのであれほど小型化はせず、バズーカ一歩手前のサイズ感となった。

 今回の『アグニ』の場合は基本的に【マハラギ】のスキルカードを搭載しており、マグバッテリーに蓄積されたマグネタイトが尽きるまで誰でもブースタ・プロレマ付きの高出力【マハラギ】を撃てるという優れものだ。【マハラギ】を選んだのは基本的に単価が安いからだが、時と場合によっては別売りのカートリッジの差し替えによって【アギラオ】や【ファイアブレス】、あるいは属性違いの【ブフ】【ジオ】などを装填して撃つ事も可能になっている。

 代わりに、例えば魔法攻撃の軌道を曲げたり、離れた相手の顔面に直接【アギ】で発火させて炙ったりといった魔法の操作はほぼ不可能になっており、そのため命中性能や応用性が落ちるという弱点もあるが、その辺、命中精度の方はデモニカの火器管制システムとリンクする事で補う方向性。優秀なシステムの開発が進めば、それだけで一回り化ける可能性がある、将来性のあるパックになっている。

 

 なお、こちらの『アグニ』も砲身の強度や安定性を引き上げるためという理由もあり、非常に重くなっている。そのためこちらも砲身にフロートパネルを仕込んでいるから、通電している間はそこまで重くないのだが、その代わりに砲身そのものの大型化にも拍車が掛かってしまった。

 

 

「ねえねえマスター、一つ聞きたいんだけど」

「何だルビー?」

「『シュベルトゲベール』にせよ『アグニ』にせよ、どっちも極端に大きくて重い武器になってるけど、どうして?」

「単純に、軽くて取り回しがいい武器が欲しければG3に最初から搭載されている標準装備を使えばいい、ってだけの話だからな。たとえば基本武装のスコーピオンを二挺持ちするとか」

 

 容量の大きな大型マグネタイトバッテリーを搭載する以上、大型の装備を搭載しなきゃ収支計算が合わない、とかそういう側面もあるが、ともあれ。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 自衛隊と協力し、日本神の解放が進んでいる。メシア教会の連中の手による封印なので、その主敵は天使である事が多く、呪殺系を得意とする僕にも当然お呼びが掛かるわけで。

 

 まあ断る理由なんてあるわけもなく、僕も当然参加だ。

 最近量産されてきたG-3ユニットを装備した自衛隊なんかを引き連れて、まあ色々と日本全国を走り回る事に。

 

 なんだが、奈良の生駒市にあった異界『磐船大墳墓』が存外に厄介だった。飛行能力を持っている天使がデフォのメシアンならではの発想という事か、異界そのものが上空8000mとかいうアホな高度に浮かんでいたせいで、異界に入るまでが中々大変だったのだ。

 

 まあ僕自身もヌエに変身すれば空中歩行はお手の物だし、何より今回は同伴した自衛隊がヘリを出してくれたので割とあっさり解決したが、まああんな高さにあったんじゃ、いくら東京・京都に次ぐ日本の霊的要地とはいえ、地元の霊能組織じゃ攻略どころか侵入すら不可能だな。

 

 ともあれ。

 

 この異界であれば誰も封印を解きに来られないだろうと高を括っていたのか、左右に美女っぽい天使を侍らせて酒池肉林に勤しんでいた様子のボス天使は、まあよりにもよって呪殺弱点に対策していなかったらしく、割とあっさりと死亡。

 その中に封じられていた幻魔ニギハヤヒの解放にも無事成功……したのだが、ニギハヤヒがウチのメディアとダ・ヴィンチを見て目を丸くしていたのはちょっと気になった……本霊の気配が分かったのだろう。

 

 ともあれニギハヤヒからは封印解放の褒美として、十種神宝を授かった。歴史上で使われた代物ではない、あくまでもレプリカなんだが、レプリカとはいえ力は本物に近い代物だし、何かしらの素材に使えればいいのだが。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 ストライカーパックはそれなりに売れているっぽい。背負い物一つ乗せるだけで簡単に性能に変化を出せる、というのがウケたっぽいが、まあ、そこはそれ。

 

 それ以外にも調子に乗って多少の強化パーツを設計してみたが、その辺はそこそこだ。高速移動用にジャンプ用のスプリングユニットとか、増設用のセンサーユニットとか、ネタ系でもそれなりに役に立ちそうな装備としては、例えばホビー部製の戦闘用簡易シキガミであるメダロットを複数搭載できるラックとか。

 

 そんな具合でしばらく続けているとその内に飽きが来るので、他に移る事にする。

 

 ライダー繋がりで以前一通り完成を見たプログライズキーとフォースライザーだが、今度はその技術発展と応用を主眼に入れて、僕の専用ライダーシステムの開発を進めたいと思う。基本は最近流行りのデモニカではなく、以前フォースライザーで完成させたデビルシフターへの霊基装着による性質転換霊装として構築する。

 

 我が悪魔変身形態である妖獣ヌエは『正体不明瞭』にして『多数の獣の因子を併せ持つ獣』である。その性質を利用すれば……うん行ける行ける、多分ね。

 

 

 つまり────『オーズドライバー』の製作である。

 

 

 と、いうつもりで始まったライダーシステム開発。

 

 メダル一枚一枚に封じた霊基をヌエの我が身に取り込む事で、複数の高位悪魔のスキルと権能を振るう事ができる、というコンセプト。メダルと言ってもそれは見た目だけで、その実体はプログライズキーと同じ霊基情報記述用の情報媒体……要はメモリだ。ただしプログライズキーよりも大幅に小型化されている。

 

「ふむ」

 

 どうにも、システムの作成が進まない。だが、そうなると当然メダルには高位悪魔の霊基を封じる事が前提になる。

 

 つまり高位悪魔の素材が欲しいわけだ。

 

 最初に完成したメダルは、以前滅亡迅雷フォースライザーを製作した時に余った邪神パズスの素材を利用したバッタメダル。

 二枚目はデビルシフターの藤村さんから霊基情報を取らせてもらった魔王テペヨロトルの力を宿すトラメダル。

 

 今は二枚だけ。頭用のメダルがないので、まだ変身できない。

 

「うーん……うん。降霊術の勉強でもするかね」

 

 ショタオジに頼んで修行着けてもらおう。

 

 それからレベル上げも必要だな。

 

 ドライバーに装填した三枚のメダルから高位悪魔の霊基情報を吸い上げ、それらを同時に一つの肉体に矛盾なく顕現させる。当然、ヌエ自体に高位悪魔三体分の容量が必要になってくるわけだ。まあヌエ自体元々の性質からして複数の獣の特性を許容する事ができるから割と容量は多い方なのだが、それでも結構パンパンなので。

 

 もう少しレベルを上げて、容量を増やす必要がある。

 

 うーん……仕方ない。レベル上げ、頑張りますか。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 エジプトにて、海外の神々が大同団結して決起した多神連合がメシア教会と一大決戦を行ったとか。まあ、多神連合がボロ負けして潰れたわけだが。

 

 その時にエジプト神話がやらかしたらしい。何やら、味方側の他神話が派遣した異能者達を生贄にして魂とか色々を持ち逃げして冥界にトンズラしたのだとか。御陰で大事な氏子の魂を持ち逃げされた他神話の神々からは非難轟々で国際関係が悲惨な事になっているらしいのだが。

 

 割と対メシアンに駆り出される事の多い僕としてはその辺、天使共のやり口もそれなりに知っているので、犠牲になった異能者の人々に対しては『おかげで少なくともクソッタレ天使共に魂を持っていかれて死後の尊厳まで穢される羽目にならなくて済んだ』とかいう見方もできるし、だからその辺、回収した他宗教の異能者の魂を後で出身地の神格に引き渡すとかすれば、あっちゃこっちゃでのパッシングも静かになったと思うのだが。

 

 ともあれ、ガイア連合としてはそんなエジプト神話の残存戦力を皮切りに、敗退した各神話の残党を受け入れていく方針になったらしく、日本列島周辺の海上に地脈や気候をそれ用に調整した異界“出島”を多数形成して浮かべているらしい。

 

 

 そんな風に世界が動いている間も、僕は淡々と割と普段通りの毎日を送っていた。山梨に引き篭もっていたら、本当に色々と気にならない。いや、今もシキガミコア製作に海外勢力交渉にその他諸々と忙しいショタオジに対しては申し訳ないのだが。

 

 そんな具合で開発を続けている内に、コアメダルの数もそれなりに増えた。

 

 堕天使アドラメレクを素材にしたクジャクメダル。

 魔獣ベヒモスを素材にしたサイメダル。

 地霊ダイダラボッチを素材にしたゴリラメダル。

 邪神カナロアを素材にしたタコメダル。

 邪龍タラスクを素材にしたカメメダル。

 

 素材はシキガミ降霊と同じく降霊術でどうにか。儀式で降霊される事が前提になった堕天使とか、特定神話のバックが存在していない魔獣系は割と気軽に呼び出しやすいから、素材取りも楽だ。

 逆に神話体系に所属して相応の地位を持っている神性は、何かしら面倒臭い交渉をするか、さもなければ何かしら面倒臭い事件を起こした馬鹿を〆て倒すかしなければ、ゲットするのは難しい。

 

 だが、ともあれ転機だ。

 

 世界的にも有数の規模を持つエジプト神話の主要神格達が、向こう側のやらかしにより、ひたすら足元見放題の交渉が可能な状態にまで追い込まれている。

 

 やらかした連中は残してきた氏子たちからもそっぽを向かれて今一番辛い時期という具合だからして、足元を見た交渉をするなら今が一番……いや、もうちょっと時間を置いて様子を見た方がいいかもしれないが、これからどんな風に状況が変わるかも分からんから早い内から話を進めるべき、かな? こんなビッグウェーブを逃す理由なんて存在しない。

 

 だからエジプト神話の、氏子に三行半を突き付けられたエジプト神たちに交渉を吹っ掛けていく事にする。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 と、いうわけで一週間に及ぶ交渉が終了。

 

 まず、日本に逃れてきたエジプト勢力と、旧エジプト神達の話し合いを仲介した。なおエジプト神とエジプト氏子達の対談は、エジプト神達の態度がデカ過ぎて開始10分で決裂した模様だが、その辺は僕の責任ではないし、僕自身エジプト氏子達に責任を追及する気もない。

 その辺、最初に根回ししておいて良かったな。

 ともあれ、交渉と引き換えに、コアメダルの素材となる霊基を渡してもらったので問題なし。前払いだったからね、交渉が決裂しても、知らん。

 

 とにかく入手した霊基を基にメダルの作成を開始。

 そうして出来上がったメダルはといえば。

 

 タカメダル、魔神ホルス。

 ライオンメダル、神獣セクメト。

 コブラメダル、聖獣ウアジェト。

 ワニメダル、神獣セベク。

 サソリメダル、神獣セルケト。

 

 結構増えた。というか、確保できているコアメダルの枚数が倍になった。とりあえずタカ、トラ、バッタと基本フォーム用が一揃い揃ったので、変身用としてはこれで十分か。

 

 これでタトバコンボに変身できる。

 

 実際に変身してみると想像以上に生物的なデザインになった。デモニカではなく悪魔変身の強化形態だからある意味当然と言えば当然……なのだが。そういえばこれS.I.C.版のオーズだな、と気付いたのは、タトバコンボに変身した後の話。

 

 魔神ホルスの眼力と、魔王テペヨロトルの鉤爪と、邪神パズスの俊敏性を兼ね備えた妖獣ヌエ、という、言葉にしてみると割と不思議な存在だが。オーズに変身していても依然としてヌエの力を振るうことができるのは嬉しい話だ。性能も上がって、実質的な上位互換だな。

 個人的には以前習得した【鳶穿】とも相性がいいのが嬉しいところだ。

 

 ついでにコブラ、カメ、ワニの三種も揃ったのでブラカワニコンボにも変身できるな。いい事だ。

 

 後はまあ、ちょっとずつ開発を進めてメダルを増やしていく事にしよう。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 呉支部からいくつか技術が流れてきた。その内の一つがフォルマ弾倉────生体マグネタイトを消費する事により、弾数を回復する事ができる魔法の弾倉だ。これを上手く利用する手はないだろうか、と考える。

 

 例えば、と考えて以前に作成したストライカーパックのテンプレートから、大型の実弾砲と給電ユニットを備えた『ドッペルホルン無反動砲』を製作してみたが、あまり面白い出来ではなかったな。まあそれなりに実用的な出来にはなったし、まあいいか。

 

 そこで、とりあえず以前に作成した蒸気併用霊子機関へと、このフォルマ弾倉の技術を搭載してみる事にする。燃料として消費した石炭を、機関の稼働に合わせてそのまま回復して無限動力にできないか、と考えたのだが……うん、駄目だった。

 消費した石炭で生成したマグネタイトが、そのまま石炭の再生成で全消費されてしまうので、そこから余剰エネルギーを抽出するのがほぼ無理なのだ。

 

 まあ、これはどうしようもない。

 

 とりあえずこの技術はお蔵入りかな……とは思ったのだが。

 

 ふと思いつきでオリジナルの五行器レプリカをここに組み込んでみると、途端にエネルギー効率が跳ね上がった。

 考えてみれば当然である。五行器レプリカの要諦となっているのは五行の循環によるエネルギー増幅だが、その五行を物理的に用意して稼働するのが蒸気併用霊子機関だ。組み合わせれば五行器レプリカの性能が引き上げられるのは当然の話だ。

 まあ蒸気機関の性質と、二つの機関を割と強引に合成したせいで大型化は避けられなかったのだが。

 

 なるほど、これなら何かしらいい感じの使い道があるかもしれん。

 

 設計ももう少し効率化できる気がするが、その辺はまあ、追い追い。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 以前、蒸気銃の作成を依頼された列車ニキから、依頼が飛んできた。

 

 最近のデモニカブームにあやかって、自分も専用デモニカが欲しいのだとか。で、ベースを何にする、と聞いたらFGOのチャールズ・バベッジだとか。列車ニキのスタイルとあまり合ってない気はするのだが、まあ趣味は人それぞれって事で。

 

 なるほど機関車繋がりって事で、蒸気併用霊子機関を搭載する事前提であるらしい。なるほど蒸気併用霊子機関は大型化するのが前提だが、見た目結構太めのバベッジアーマーであれば搭載する事はできるか。さらに五行器レプリカも一緒に搭載して問題あるまい。

 

「よしよし」

 

 やってみよう。デザインに関しては技術部のモルガンネキあたりから話を聞いてみた方がいいかな。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 探求ネキが新たに開発した幻想植物────合金樹というらしい。

 

 成長するにつれ金属の性質を獲得し、育てば金属資源として扱える植物という、実に直球な資源生産植物である。探求ネキはこれを金属資源の生成源として扱うつもりらしく、実際問題、既存の鉄や銅といった通常の金属だけでなく、オリハルコンや神珍鉄といった伝説上の金属や、あるいは探求ネキ自身が独自開発した幻想金属などにも対応し、鉱脈などの地下資源に依存せず金属資源を増やす事ができる。

 

 そんなわけで今現在、農業部の農業ニキを中心にしたチームが合金樹に霊木化技術を使い、合金樹の性能強化を試しているのだが……これが面白いくらいに嵌まっている。

 

 単純に、生成されるオカルト金属の性能がアップするというのもそうなんだが、普通の鉄や銅なんかの合金樹を使った低グレード合金樹由来金属……こっちの方が重要かもしれない。

 普通の鉄や銅がオカルト金属化するからね、育成から製造まで扱いも割と簡単だし、単純な霊的素材化鉄を使った鉄パイプや鉄板でも最低レベルの霊装として十分に機能する。そのおかげで、ガイア連合に入ってきた低レベルの現地民異能者の戦力化も割と進んでいる、と前に地方防衛スレにカキコがあった。

 

 便利だ。

 

 便利だが。

 

 ふと思った。

 

 

 これ、ひょっとして…………“生体金属”とか“金属生命体”というヤツでは?

 

 こう、ARMSとか、ゾイドとか、ELSとか、ロイミュードとか……ロマンが広がるよね! だがDG細胞、テメーは駄目だ。

 

「うぅむ……」

 

 そう考えてみると、合金樹の可能性は単なる金属資源というだけに留まらない。だが、金属生命体……その性質を一体どういった具合に応用するか。

 

 ナノマシンとか現状、技術的なハードルが高過ぎるし、そもそもナノマシンに仕立て上げる必要があるのやら。

 一応【ディア】系の治癒術で再生させる事ができるから、装甲やフレームなど自己再生素材としての価値はあるだろうし、あるいは刃物系の武器なんかの刃こぼれが自己修復するだけでもそれなりの価値はあるだろうけれど……ふむ。

 

 

 閃いた。

 

 

 あれだ────『人魚の子守唄』。コイツを改良しよう。

 

 

 この『人魚の子守唄』が一体どういったものかといえば。

 

 再生用のCDプレイヤーと付属のヘッドホン。そして消耗品のCD5枚をセットにして使用される霊装だ。CDは消耗品であり、記録されている音声系スキル────例えば【子守唄】などの効果を再現する事ができるが、既定の回数……標準規格のディスクであれば再生回数5回を使い切ればそれで終わりの使い捨て。

 

 元々は、人魚ネキという準修羅勢の人が修練場の近くで個人的に歌の練習をしていたところ、遠くから聞こえてきていた【子守歌】が修練場の人間の回復に大きく影響を与えていたことが判明し、いつの間にか欠かせないインフラになってしまっていたとかいう話。

 本人的にはもっと他の修行とかレベル上げとか色々したいし、もういい加減やめてもいいかと思っている一方で、修練場というかガイア連合側はもう少し……というかもっとずっと永続的に歌を続けて欲しいという事で、微妙にギスっている感じ。

 

 で、そんな人魚ネキの【子守歌】の代替案として開発されたのが、この『人魚の子守唄』だ。

 今回は、合金樹の素材を利用して、これの改良版を試作してみようと思う。

 

 

 合金樹の特性は『生命を持ち、再生可能な金属』だ。それを上手く利用すれば、『人魚の子守唄』の再生回数を飛躍的に伸ばす事ができるはず。

 

 

 まず僕がやったのは『人魚の子守唄』をCDではなく、さらにローテクのレコード盤に変更する事。記録されている音声スキルの効果を引き出す機能は……まあ蓄音機の針部分に妖鳥セイレーンの爪でも使って、と。

 

 で、レーザー光を当ててその反射から記録情報を読み出すCDとは異なり、レコード盤は盤面に直接針を当て、盤と針が擦れ合う震動を物理的に音に変換する。【ディア】系でディスクの物理的な再生さえできれば音の読み出しが可能になるから、技術的なハードルは低くなる。

 問題は、音声系スキルの効果ごと封じた音楽の概念情報ごと再生させる必要があるため、【ディア】系でも少し捻った形での発動になる、と。この辺で作成に必要な技術力のハードルが高くなりそうだな。

 

 これ、ちょっと面倒臭いというか、微妙に分かりづらい話なんだが、この技術の本体ってプレイヤーじゃなくてディスクの側なんよね。

 こう……記録媒体であるディスクという楽譜をプレイヤーが読み取って楽譜通りに演奏するのが、通常のプレイヤー。でも『人魚の子守唄』はそうじゃなくて、歌声を記録したディスクの方が本体で、それが内蔵した記録を元に、プレイヤーという楽器を演奏して音を奏でている。

 

 だからこそ本来の【子守歌】のスキル効果とは異なる人魚ネキ特有の個人技能の域に属する“良い夢を見せて安眠させる”みたいな効果が、そのまま再生した曲に乗るわけだ。

 逆にいえば、ディスク側さえどうにかできれば、演奏そのものは割とどうにでもなる。

 

「まあ、こんなものかな……?」

 

 概念レベルで継続的に効果を発揮する【再生】スキルを有した、生体金属によって作成されたレコード盤。

 最初は合金樹から生成した金属を使うのではなく、金属として精製していない合金樹木板を素材として使用……していたのだが、途中からは路線変更。合金樹材の材木チップを破砕した削片を、同じく合金樹の葉を素材にした接着剤ペーストと混合して熱圧成形したパーティクルボードを素材として用いる事でコストダウンが図られる事になった。

 パーティクルボードは本来オカルト無関係の一般的に使われている技術だが、便利だから採用。

 

 ここで大事なのは、木質を殺さない事────単なる金属素材としてではなく、あくまでも金属成分を宿した木質素材として扱う事だ。じゃなきゃ単なる金属だからね。

 

 ってなわけで、試作品である『人魚の子守唄』レコード型、第一号が完成だ。再生可能回数はたったの3回と、オリジナルの『人魚の子守唄』と比べると容量は減ってすらいる、が……これ、残り回数が再生するのだ。回数を完全に使い切ってしまえばレコード盤が“死んで”しまうので再生はできないが、残り1回分でも回数が残っていれば、そこから最大数まで時間をかけて再生していく。

 再生速度は周囲環境によって変化し、通常の空間であれば1日に1回ずつしか回復しないが、日本最大の霊地である星霊神社の敷地内であればその辺に半日も置いておくだけでも回数がフルに回復する。むしろ回復がオーバーフローしているまである。

 

 当然摩耗するし、いくら再生するといっても再生能力の限界は来るものだが、それでもこれまでのものと比べれば“再生する”というただ一点だけで革命的ですらある。

 

 これで基礎技術は完成したし、ブラッシュアップしていけば容量も大きくなっていくはず。何なら将来的に技術力が上がれば、CDやDVD、Blue-Rayでも同じものが作れるようになっていくだろう。

 

 

 

 

 

 




 もうね、こいつの話出すの何年振りかっていう。



~割とどうでもいい設定集~



・フロートパネル
 緋咲虚徹様『【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく』より。
 電力を消費して重力操作を行う素子。

 無惨ニキはこれを改良し、フィルム状に変化させた上で積層化し、素材として扱いやすくする方向性で強化した。

・五行器レプリカ
 緋咲虚徹様『【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく』より。
 五行の循環を基に、周辺空間から生体マグネタイトを収集する事によってエネルギーを生み出す動力機関。実質的な永久機関に近い代物で、探求ネキが扱うロボ系技術の中でも基幹技術に位置付けられる。
 少なくとも半終末期後期までに何度かのバージョンアップが繰り返されている。

・蒸気併用霊子機関
 元ネタはサクラ大戦。
 探求ネキが開発した五行器をナーフして、蒸気機関と融合させたような形で発展させたもの。
 蒸気機関を構成する各要素を五行に見立て、それを基に五行の循環を構築する事によりエネルギーを生成する。
 マグネタイトの供給を周辺空間に依存しない代わりに、外部から石炭を補給する必要がある内燃機関。
 五行器よりも術式難度が低く、また素材も安価で済むが、その一方でそれなりの効率でエネルギーを生成できる。代わりに機関が大型化するし、エネルギー効率も五行器と比べれば劣る。

・アバドンニキ
 えくり屋様『【カオ転三次】がんばれシフター ギラギラ転生記 ~僕がライダーになった理由~(仮)』より。
 メシア教会に潰されたカルトの残党に誘拐されて人体改造され、悪魔形態から戻れなくなってしまったところをガイア連合に保護されたニキ。
 大正時代にライドウが倒したアポリオンの遺骸を移植されたせいで怪人バッタ男みたいになってる。
 変身解除不可なので外見的特徴も分からず、本人の記憶も消されており、さらにカルトは壊滅した上で記録も残っておらずで、完全な身元不明。
 発見当時、仮面ライダーを作りたいホビー部のニキネキが狂喜乱舞した。

・サイクロンライザー&ロッキングホッパープログライズキー
 元ネタは『仮面ライダーゼロワン』。
 デビルシフター用の強化・霊基補強兵装。デビルシフターの変身先の霊基に別の霊基の性質を接合し、より戦闘に適した別形態へと変化させるもの。
 これにより、やたら巨大で小回りが利かなかったり、そもそも非戦闘用だったりするシフターの変身先を外部制御で変化させる事ができる。
 邪神パズズから抽出した“蝗”の要素を封入し、さらにパズズの持つ“魔を祓う”性質から“邪悪を討つ正義のヒーロー”の性質を強めている。

 後にガイア系列企業の一つである飛電インテリジェンスに委託され、デモニカと同等の装着者支援システムを搭載した『滅亡迅雷フォースライザー』として売り出される。

・マギジェットスラスタ
 タマヤ与太郎『【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策』より。
 おそらくトイボックスで初めて実用化されたと思われる魔法応用スラスター技術。
 無惨ニキは水中用の水流噴出スラスターなどのバリエーションを設計した。その中の一つである氷結属性スラスターが、多分後々のグリスブリザードとかに利用されている、かもしれない。

・鳶穿
 元ネタは『緋弾のアリアAA』。
 獣格闘。獣の領域へと踏み込む身体・霊魂操作と一体になった独自の近接格闘……つまり四脚の獣でも扱えるオカルト格闘技。
 ネコマタ直伝。
 高速で踏み込んで敵の眼球や内臓を毟り取る一撃必殺の殺人技。鉤爪系スキルとも相性が良い。

・蒸気銃
 元ネタは『甲鉄城のカバネリ』。
 背中に装着した蒸気併用霊子機関から有線で供給されるマグネタイトを消費して【ザン】を撃ち出す霊子加速砲。

・樒を霊木化する技術
 塵塚怪翁様『【カオ転三次】『俺たち』閑話集』から『とある転生者と『真実の愛』の顛末』より。
 とある零細地方霊能組織から持ち込まれた、一般的な樒を霊木へと変成させる技術。

 樒以外も霊木化できる事が知れた瞬間、夢の技術と化した。
 普通の野菜を霊草化できるようになったため、料理部が使えるレシピのレパートリーが爆発的に拡大した。
 大半のスパイスも植物由来だからガイアカレーの単価も爆下がりして、ようやく供給が需要に追いつくようになった。味も良くなった。
 探求ネキ製のオカルト不思議植物各種も強化できるため、特に合金樹の強化・オカルト金属化が大きく、金属素材すら強化対象に入る。
 他にも製糸、製紙、林業など様々な分野に応用されるようになり、高レベルから低レベルに掛けて霊装の性能が全体的に向上し、また低レベル霊装の量産難易度が下がったため戦力も整いやすくなってきた。

・感知水球
 元ネタは『NARUTO』。
 広範囲の霊的異常を走査する大型レーダー的な代物。探知術式というか、感知術式や戦術をオートで動かしてくれる大型の自律索敵デバイスの雛型。

・ストライカーパック
 元ネタは『ガンダムSEED』。
 G3を始めとするデモニカの背負い物系強化ユニット。
 大型のマグネタイトバッテリーと武装を一体化させたバックパックを背負わせるだけで性能をある程度補強できる。重量はフロートパネルの組み込みによって補えるため、運動性にもそこまで影響は出ない。
 装備は原作からある程度簡略化されている。
 高機動・飛行型の『エールストライカー』、近接型の『ソードストライカー』、砲撃型の『ランチャーストライカー』の三種の他、とりあえず実弾砲撃武器の『ドッペルホルン無反動砲』も実装されている。

・幻魔ニギハヤヒ
 邇芸速日命。日本神話において、神武天皇の東征に先立って天照大神から十種神宝を授かり、天磐船に乗って河内国に降り立ち、後に大和国へと移動したとされる。
 物部氏の祖神であり、また天火明命と同一視される。

・オーズドライバー
 元ネタは『仮面ライダーOOO』。
 フォースライザー系から発展したデビルシフター専用装備。
 妖獣ヌエの『不明瞭』『合成獣』という性質を基に、ヌエの霊基にドライバーに装填したコアメダルの霊基情報を取り込ませ、高位悪魔3体分のステータス・スキルや権能を扱う事を可能とする。
 ヌエのデビルシフター専用とかいう、使い手を割と選ぶ装備。

・人魚の子守唄
 黒焦げ様『【カオ転三次】 終末に向けての準備するとある転生者の話』より。
 覚醒者用安眠装置。
 再生用のCDプレイヤーとヘッドホン、消耗品のCD5枚がセットとなった安眠霊装。起動する事でCDに封入された【子守歌】スキルが発動し、使用者を『安眠』させる。
 原曲である人魚ネキの【子守歌】に使われている個人技能ごとコピーされており、使用者は通常の【子守歌】とは異なり、トラウマとかその辺があっても関係なく悪夢を見ず、安眠できる。

 無惨ニキ版の場合、CDではなくローテクのレコード盤をベースとし、合金樹素材から製作した“生きた金属”に【再生】スキルを組み込む事で、自己再生するレコード盤を作り出した。
 これにより、消耗品だった『人魚の子守唄』が残り回数を再生させる事ができるようになった。
 レコード盤にしたのは、加工難度とかその辺との兼ね合い。

・パーティクルボード
 現実にも存在している技術。
 大量の木材チップを接着剤と混ぜ合わせて熱圧整形した木質材料。
 主に建材として使用される。
 廃材を素材にできるためエコかつ安価。また塑性成形みたいなものだからして材質が均質であるため反り、割れ、狂いが少なく、厚さや大きさを好きに決められる加工難度の低さなども利点。また遮音・断熱性も高い。
 逆に、オカルト関係ない素材であれば水や湿気に弱く、通常の木材と比べて強度も落ちるため、釘や螺子もあまり効かない。長期荷重でたわみもはっせいする。……オカルトが嚙まなければ、だが。

 無惨ニキはこれを合金樹材に応用する事により、合金樹を単なる金属材の供給源としてでなく“生きた金属”素材として扱った。



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