ファッション無惨様のごちゃサマライフ   作:頓西南北

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ようやっと修正案が降りてきたので、自分でもどうかと思っていた問題のシーンをざっくり削って修正して加筆して修正してまた修正。
シノア関係のシーンをざっくり入れ替え。ついでに、忘れてたシノア関係のデータを後書きに追加。

前のを読んでくれてた人はそこ以外読み飛ばしてしまってもいいかも。




援軍合流とちょっとした力試し

   ◆   ◆   ◆

 

 

 

 クソッタレな内通者のせいで、忌々しい事に昨日はベッドで寝れなかった。ホテルとか泊まれないしね。仕方ないので街外れにあった市民公園の駐車場に停めたクリス・ザ・カーの車内で一晩明かして、今は朝。コンビニで適当に弁当を買ってきて、すぐ隣の助手席に座るメディアと二人で朝食だ。

 

 公園の地面には仲魔の一体である妖樹イグドラジルが植わっており、それを起点に妖獣ブラックウィドウを使って蜘蛛の糸を張り巡らせて数種の結界を張ってあるから、敵に探知される可能性は低いし、仮に探知されたとしても数十分程度なら結界に立てこもって防戦も可能だ。その前にとっとと逃げ出す必要があるのだが。

 

 こういう時、どこにでもコンビニがある日本に住んでいて本当によかったと思える。カルト宗教の都市ゲリラに襲撃されても普通に朝食を楽しめる国とか、大したものだ。バリバリとビニール袋を開封して、安物のメンチカツパンを開封しながらそんな事を思う。

 

 もっとも、これだけでは体力とか魔力とか色々が回復しないので、ガイア連合謹製のカロリーバーも一緒だ。今の主流になっているレトルトカレー型の通称“ガイアカレー”と比べると味や回復量は落ちるのだが、携帯しやすく、調理の手間がないという意味ではこちらの方が上であり、こうして敵地のド真ん中といえる場所で活動する際には優秀な携行食だ。

 

「ごめんなさいマスター、本当はもう少しちゃんとした料理を作ってあげたかったのですけど」

「メディアの料理は本当においしいからな……まあ、でも今日は仕方ないだろ。さすがにこんな場所じゃどうしようもないし」

 

 肩を落とすメディアの頭をそっと撫でてやると、その口の端に小さく嬉しそうな笑みが浮かぶ。死ぬ気はないが、死ぬかもしれないので、こういう事はできる内にしておきたい。

 

「ふふ、気遣ってくださってありがとうございます。でも、私は平気ですから」

「……そうか。まあ、それならいいけど」

 

 少し気恥しくなった僕はメディアから視線を外して、スマホの液晶画面を確認した。そこに表示されているのは、メディアのペルソナ『ナコティック』がアナライズしたメディア自身と、妖魔アガシオン、そして同じく契約中の式神であるレオナルド・ダ・ヴィンチのデータだ。前回の【恐山】の一件で一つレベルアップしたばかりだから、今回成長するかどうかは割と微妙かな、と。

 

 

 

【ステータス】

メディア・リリィ《Lv.29》

ステータス:魔法型

耐性:魔法耐性、呪殺無効、精神状態異常無効

【スキル】

牙折り

ザン~ザンマ

ハンマ~マハンマオン

コウハ~マハコウガ

メギド

ディア~ディアラハン・メディラマ

アムリタ

ペンパトラ

リカーム

タルカジャ

ラクカジャ

リフトマ

ペルソナ《星・ナコティック》

(パッシブ)

破魔高揚

回復プロレマ

二分の活泉

二分の魔脈

食いしばり

チャクラウォーク

錬気の杖:手持ち武器として杖を生成できる

(汎用スキル):合気道、杖術、ウィッチクラフト、口寄せ、テレパス、プログラミング、高速演算、探知、交渉、家事、調理、食事、会話、調薬、植物学

 

◆ペルソナ《星・ナコティック》

耐性:なし

(スキル)

・ナイス・ショート:敵全体に万能属性小ダメージ+感電状態の敵を確定即死。または異界のダンジョンギミックを一つ停止させる。

・バッドカンパニー:召喚中の仲魔を再封印し、同時に三体まで新しく仲魔を召喚する。

・招来の舞踏:死亡中の仲魔を復活させ召喚する。

・ワイドエリアナビ:広範囲の高精度地形把握・索敵が可能。また捕捉した対象のステータスをリアルタイム表示可能。

・ステルスコープ:同行する味方全員をカバーする情報迷彩・気配遮断。対象が主人と仲魔のみの場合、隠蔽精度が向上。

・マハアナライズ:敵性体の物理・心理・霊基情報をスキャン、及び解析率に応じた超高精度行動予測が可能。

・イセカイハッキング:電子情報や異界構造に対して電子機器を介さず干渉が可能。

・アラヤバックドア:時空間的に隔離された異界に侵入口を形成する。レーダーで捕捉している味方を異界の外へと転移させる事も可能。

(パッシブ)

・ニカイアビジョン:自身と主人に危機が迫った場合に高精度の予知が可能。

・ダイレクトスキルサポート:レーダー越しに魔法スキルを発動可能。

・マヨナカサポート:レーダーで捕捉している味方全体に戦闘開始時、及び一定時間ごとにサポート効果発動。

・エルミンジャミング:レーダーで捕捉している敵全体に戦闘開始時、及び一定時間ごとに妨害効果発動。

・ゲッコウメンテ:封魔管やCOMPに待機中の仲魔のHP・MP・状態異常を時間経過で回復させる。

・イザスクブースト:サポート時にスクカジャ効果、妨害時にスクンダ効果を追加。

・イザラクブースト:サポート時にラクカジャ効果、妨害時にラクンダ効果を追加。

・ライトアップアシスト:サポート・非戦闘時にライトマ効果、サポート時に盲目状態解除、妨害時に敵全体に低確率で盲目状態を追加。

 

 

 

 

【ステータス】

妖魔アガシオン『ナスビ』《Lv.23》

ステータス:体・魔型

耐性:電撃無効、氷結・呪殺弱点

【スキル】

パニックジオンガ:敵単体に電撃ダメージ+感電+混乱

バンカーボルト:敵単体に銃撃属性の中ダメージ近接攻撃。

ディアラマ

スクカジャ

風の壁

氷の壁

マッパー

(パッシブ)

全門耐性

呪殺無効

精神状態異常無効

二分の活泉

騎士の精神

勇者の精神

食いしばり

反撃

ラクカジャオート

可変式大型防盾『オルテナウス』/砲撃形態変形時に『マーキング』『ヤブサメショット』『銃撃ブースタ』使用可能。

(汎用スキル):盾術、銃撃、口寄せ、テレパス、安定浮遊、霊体化、高性能ステルス、千里眼、探知、省エネモード

 

 

 

【ステータス】

レオナルド・ダ・ヴィンチ《Lv.15》

ステータス:速重視

耐性:魔法耐性、呪殺無効、精神状態異常無効

【スキル】

突撃

ねらい撃ち

掃射

タスラムショット

スクカジャ

(パッシブ)

銃撃ブースタ

一分の魔脈

チャクラウォーク

特殊機器接続

(汎用スキル):黒魔術、ウィッチクラフト、錬金術、陰陽道、テレパス、プログラミング、調薬、医学、化学、機械工学、動物学、植物学、地質学、考古学、オカルト学、高速演算、探知、工芸、騎乗、会話、カウンセリング、ローラーブレード、省エネモード

 

 

 

 

「……ふむ」

 

 基本的に僕が召喚できるDARK属性の悪魔は、その大半が災いをもたらす悪性の怪異であるためか、治癒や破魔といった能力を持つものが少ない……というか、ほぼいない。そのため、それを補うためにメディアの能力は治癒・破魔を主体としたサポートに特化した性能になっており、その能力はイレギュラーに発現したサポート型ペルソナ能力と併せて非常に高いものだ。それでいて攻撃サポートやいざという時の近接戦闘を……とか色々と考えつつ強化改修を繰り返している内に、スキルがやたらと多くなってしまった。

 それ以外にも杖を用いた近接格闘や、補助的な魔術・調薬など割と多芸だったりするのも特徴だ。

 

 ダ・ヴィンチの場合は基本的に戦闘用のスキルをほとんど持たず、その一方で汎用スキルを多数詰め込んでおり、開発・製造関連で役に立つ非戦闘型の式神になっている。もっとも戦闘能力がないわけではなく、各種専用装備を装着する事で、一線級とまでは行かないまでも結構な戦闘能力を発揮する事ができる。戦闘スキルは銃撃に偏っているが、それはあくまでも余禄であって、戦闘時のメインは装備の方だからしてこのデータはほぼ当てにならない。

 

 妖魔アガシオンは、いざという時に僕やメディアを守れるように防御特化のビルドになっている。ステルス能力と、加えて長時間の召喚が必要になる時のための省エネモードも搭載しているため、悪魔の召喚が憚られる時など様々な状況でも護衛ができる優れモノだ。奇跡的に製造された全門耐性のスキルカードを使っただけの事はある。

 同時に、装備した盾を変形させる事でスナイパーとしての活躍もできる、そんな感じに仕上げている。それ以外にも浮遊能力やステルス能力を活かして偵察・監視や空中戦での足場など、色々と応用が利くようなスキル構成になっていたり。

 

 そんな具合に仲魔のステータスを一体ずつ確認していくと、そういえば大天使アークエンジェルを片付けていなかったな、と思い出し、封魔管から未だにゾンビ状態のアークエンジェルを開放する。ぶっちゃけ僕の基準からすれば弱いので、貴重な封魔管を使って仲魔枠を埋めておく必要もないし、そもそもDARK属性ならぬコイツを使役するためにはゾンビ状態にしてネクロマを使う必要があって、わざわざその辺を維持しておくのも面倒くさい。

 

「って、いうわけで……それっ、と」

 

 僕の背後に浮かんだペルソナ『ドウマン』が両手を伸ばし、アークエンジェルの胸板へと二本の手を突き込んだ。その手で霊基を弄られたアークエンジェルはマグネタイト体の結合を維持できなくなって崩壊し、やがてドウマンが手を離すと同時、マグネタイトの粒子と化して消滅していく。

 その中からキラキラとした光が分離して僕の掌の中に飛び込むと、そこには一枚のカードが残されていた。アークエンジェルの霊基を加工して作られたスキルカード、今回は一枚きりだ。

 

「ん-……スキルカード『会話』か。メディアに使っても意味ないけど、使いどころがないわけじゃない、か」

 

 とりあえず荷物に仕舞っておく。帰ったらガイア連合の受付で売っ払ってしまえばいいし、そうでなくとも何かしら使い道があるかもしれないので。

 

「ま、とにかくここはこれでよし、と。さて、そろそろ時間か」

「そうですね……あ、ちょうど皆さん来たみたいです」

 

 スマホの時刻表示を確認すると、そろそろ約束の時間。ガイア連合から派遣された援軍がこっちに来る時間だ。それを告げるようにメディアのペルソナが味方の来訪を告げ、同じく上空から警戒していた凶鳥アンズーが一つ声を上げて地上へと舞い降りてくる。

 さっさと食べ終えなけりゃならん。まだ残っていたカロリーバーとメンチカツパンを慌てて口の中に詰め込んで、ペットボトルの緑茶で喉の奥へと流し込む。

 

「マスター、あまり慌てて食べると喉に詰まってしまいます……」

「いや、大丈夫だって、ほら」

 

 とりあえず喉に詰まらせる事はなかったが。それよりも問題は援軍の方だ。誰が派遣されてくるか、だが……それを気にする必要はないようだ。普通車とは微妙に異なる重々しいトーンのエンジン音が響き、一台のマイクロバスが車体を左右に振るような乱暴な運転で駐車場に滑り込むようにして停車した。

 あれが援軍を積んできた車……って事は、今回の援軍は結構な大所帯って事だ。

 

「ったく、あの物騒な運転はモードレットさんか。相変わらず乱暴な運転だけど……つまり霊視ニキも来てるって事だな」

「ですね、あの人とも久しぶりです。でも、それだけじゃないみたいですよ」

 

 メディアの言う通り、普段通りの白スーツの傷マッスルとその相棒の金髪少女以外にも、数人の人影が見える。停車したマイクロバスの側面のドアが開いて車を降りてくるのは、知っている顔と、知らない顔。その中から真っ先に飛び出してこっちに向かってきたのは、ある意味では最も意外な、僕のよく知る顔だった。

 

「マスター君、会いたかった!」

「って、ダ・ヴィンチ!? 何でここに!?」

 

 走ってきた勢いのままこちらに飛び込んでくるダ・ヴィンチの小さな体を受け止めると、意外な重量が腕に来る。背中のランドセルに格納されている彼女の専用装備『ウルティモマニピュレータ』のせいだ。というか、あんなバスなんぞでこっちに来たのは、彼女の専用装備を運ぶためか。

 最低限の戦闘能力こそ持っているとはいえ、基本的に非戦闘要員仕様の彼女がこんな前線に出張ってくるとか、どういう事なのか。

 

「いやいや、それだけじゃなくってね、実は……」

 

 僕の腕の中でダ・ヴィンチが悪戯っぽく微笑むと同時に、同じように僕の方に駆けてくる四つの影。

 

「あ、マスターいたいた!」

「ちょっとルビー、落ち着きなさい! ああもう、申し訳ありませんマスター! 全く、それだから貴方は」

「全く、あの二人は本当に騒がしいわね」

「ブレイクも、そうカリカリしないの。未熟なのは皆一緒でしょ」

 

 やいのやいの言い合いながらこっちに走り寄ってくる女の子達。ウチの研究所に最近入ってきた式神の四人『ルビー』『ワイス』『ブレイク』『ヤン』、略してチームRWBYだが……いやいや何でいるの? 警備用途も頭に入れたスキル構成になっているから戦闘ができないわけじゃないが、それはそれとして前線に出すにはどう考えてもレベルが足りてない気がする、とバスの方を見て、普通に知った顔を見つけ、説明を求める相手を見つけてようやく安堵の溜息を吐く。

 

「ショタオジが、【聖都天草】の攻略に必要になるから連れていけってな。いや、俺は反対したんだが……占術まで使って計算して、一番いい卦が出たのが、あの四人を使う事なんだと」

 

 と、溜息を吐くのはメシア教会相手に最も多大な戦果を挙げたガイア連合きっての大戦力、マッスルバーサーカー霊視ニキ。そしてその相棒である最初の式神モードレット。

 

「って、攻略する気なのか……まあでも、ショタオジがそこまで言うなら仕方ありませんか。霊視ニキもモードレットもよろしく頼みますよ……」

「おう、ガキ共のフォローもきっちりこなしてやるから安心しな」

 

 そして、その背後に続き転がり出るようにして車を降りてくるのは、見覚えのあるショートヘアの女性『藤村大河』。召喚していないのか、それともそもそも連れてきていないのか、そのパートナーとなる式神の姿は見当たらない。というか、そもそも僕は彼女の式神の姿を見た事がない。

 

「ぜはー! 死ぬかと思った! やっぱモードレットちゃんの運転舐めてたわー……やー、お姉さんびっくりびっくり」

「藤村さんじゃないか……またアンタですか。相変わらずテンション高いな。まあ言うて人間相手ですから人殺しできる人員出す必要があるし、今のガイア連合だと出せる面子は限られてきますか」

 

 モードレットの運転が相当にキツかったらしくオヤジ臭い仕草で額の汗を拭って深々と息を吐いた藤村さんが脇に退くと、その後ろからフラフラと覚束ない足取りで出てくるビジネススーツの男性『鈴木悟』が姿を現す。二人とも、割といつものメンバーであり僕の顔見知りだ。

 そしてついでに鈴木さんの肩を支えている長身の女性『アルベド』が、彼のパートナーである式神だ。

 

「鈴木さんも来たのか、意外ですね。確か技術部のプログラミング担当チームって今、悪魔召喚プログラムの研究中ですよね。抜けて大丈夫だったんですか?」

「無事爆死しましたよ。色々と試したんですが、どうしても上手く行きませんでした。やっぱり魔術関連の知識がないとダメなんですかね、ああいうのは。そういう事で一から勉強し直してみようと思ってショタオジのところに行ったら、今度の仕事を押し付けられましてね……」

 

 鈴木さんにはプログラミングだけでなくて、交渉の仕事もある。連合支部の開設交渉のために日本各地を飛び回りながら、同時進行で悪魔召喚プログラムの研究開発なんぞ、そりゃ苦労もするだろう。重度の乗り物酔いでフラフラするのをベンチに腰掛けた鈴木さんの背中を、アルベドが労わるように擦っている。たまにモードレットの方を睨んでいたりするのも含めて色々と言いたい事もありそうだが、残念ながらまだ会話スキルを実装していないらしい。

 

 ふむ……ここは、さっき入手したスキルカードが使えるかな?

 

「鈴木さん、この『会話』のスキルカード、余ってるんですけど、要ります?」

「え? 確かにちょうどアルベドとしっかり会話できたらいいなとか思ってたのは事実ですけど、いや、でも、いいんですか!?」

 

 アークエンジェルの成れの果てのカードを手渡すと、途端に元気を取り戻した鈴木さんが目を見開いて顔でこっちを見る。

 

「ウチのメディアはもう会話スキル覚えてますから。使わないなら持ってても仕方ないですしね、後は売るくらいですから」

「ええっと、じゃあ、代わりに……そうだな、あれがあった」

 

 と少し何か考えるような素振りを見せた鈴木さんは、思い出したように手元のスーツケースを漁り始める。ぶっちゃけタダ同然で手に入れたものだからタダであげても良かったのだが、まあスキルカードも相応の値が張る代物だし、本当にタダって訳には行かないか。

 

「どこに入れてたかな、ええっと……あ、ここだ、あったあった。この間手に入れたんですけど、これ。せっかくですし使ってください」

「これは……」

 

 鈴木さんが取り出したのは、一見ナイフか何かのように見える武器だった。短刀のような柄の上下に三本の鉤爪を備えた、いわゆる三鈷杵と呼ばれる代物だ。密教なんかで使われる法具の一種であるが、元は武器として使われていたものとかいう話であり、鈴木さんが出したこの三鈷杵はそれを裏付けるかのように、鉤爪部分がとりわけ大きく作られている。

 

「飛行三鈷杵、って言うそうですよ。この間交渉に出た『東北仏寺連盟』ってところからもらったんですけど、念を込めるとファンネルみたいに飛ばせるみたいです。本当は何かに使えるかと思って持ってきたんですけど、奇仏寺さんにならちょうどいいかと思って」

「あー……まあ確かに、僕の場合悪魔変身すると武器持てなくなりますからね。なるほど、確かにありがたいです」

 

 変身すると武器はほとんど使えない。四足歩行の形態とはいえ基本的な体形はゴリラみたいな類人猿に近いので物が持てない訳ではないが、鋭利な鉤爪が生え揃った腕で道具は扱いづらい。だからこそアガシオンを封じた指輪をメディアに装備させていたりするわけで。だから、手で持たなくていいこの手の武器は、僕にとって中々ありがたい。

 言われた通りに念を込めてみると、飛行三鈷杵がふわりと掌から浮かび上がった。同時に、柄の上下の鉤爪部分から電光が迸り、展開した魔力がビームサーベルのように輝く刃を形作った。両刃のライトセイバーはどこか特撮に登場する仮面戦士のそれに似ているようにも思える。

 

「おぉ……本当に飛んだ。これはすごい」

 

 空中に浮かぶ三鈷杵は、僕の意志に従ってくるくると空中で回転し、市民公園の敷地の中を一通り飛び回ってから僕の手元に戻ってくる。飛んできた飛行三鈷杵を掴み取ると上下の光刃が消失したのを確認し、僕は掌の中の三鈷杵をジャケットのポケットへと仕舞い込んだ。

 

「いや、本当にすごいですね。俺が試した時にはそんな風にならなかったのに。普通に浮かぶだけでしたよ」

「あー、よく分からないけど、多分陰陽師スキルの関係じゃないですかね。……飛行三鈷杵、ありがたく頂きます」

 

 何気に便利な武器が手に入った。武器専用の物理スキルとかが使える訳じゃないが、それでもサブウェポンとしては十分過ぎるほどの品だ。対価としてもらったものだが非常にありがたいので、今度鈴木さんには何かしら感謝の印のようなものを送ってもいいかもしれない。

 そんな風に新装備の余韻を味わっていると、横合いから声が掛けられる。そこに立っているのはどこかの学校の制服らしいブレザーを着ているが、こっちは知らない顔。

 

「男の子ってそういうの、好きですよねえ。まあ私も嫌いじゃないんですが」

 

 頭の後ろに着けている大きなリボンが特徴的な、可愛らしい少女だ。色素の薄い髪は光の加減と見方によっては灰色にも見える。ガイア連合に所属する転生者の標準装備ともいえる式神の姿が見えない辺り、現地人か、それともそれと見えない形で式神を連れているか。

 

「あれ、初めて見る顔だけど、君は?」

「大河先生に面倒を見てもらっています、柊シノアです。そしてこっちは私の式神『スペシネフ』、私共々よろしくお願いしますね」

 

 と彼女が手を上げると、その手の中にディープブルーにエメラルドグリーンの彩を加えた大型銃が出現する。身の丈を上回る長尺の狙撃銃か、外観からして多分にSF的で機械的、冷色の色合いのせいか比較的すっきりとしたデザインに見えるものの、変形機構を備えた長銃は見た目以上にゴツく、相当の重量があると思われる。

 最近式神製作のラインナップに出てきた武器型の式神というヤツであるようだが、なるほど霊体化のスキルを組み込んでおけばこういった大型の武器でも持ち運びの手間を取らず、銃刀法に引っ掛かって警察のお世話になる危険もない、と。案外合理的だ。

 

 ……しかし藤村さんの弟子一号という事は、コイツも藤村さん同様のイロモノなのか?

 

「…………今、何かとんでもなく失礼な事を考えませんでしたか?」

 

 心を読んだ……かどうかは定かではないが、不機嫌そうに顔を引き攣らせた柊さんが、こっちに銃口を向けてくる。思わず反射的に部分デビルシフトして、顔に血管のように黒い筋が浮かんでしまう。この状態だと銃撃反射スキル持ちの悪魔変身状態の相性が有効なので、撃たれても無傷で済ませる事ができる。

 

「ったく、人に銃口向けるとか危ないだろうに、何のつもりだ?」

 

 指の半ばから鉤爪に変化した手でその銃身を押さえて問い詰める。これが根源寺やメシア教会なら、相手が銃口を上げ切る前に何も考えずに先手必勝の反撃を叩き込んでいるところだ。どう考えても馬鹿の所業だが、元々ヤクザの娘さんである藤村さんが面倒見ているって事なら、危険性を理解させる意味でもその辺の教育は最低限やってるはずだ。自分が反撃する事まで含めて。

 

「いえいえ、実はスカウター破壊組の戦闘力にちょぉっと興味がありまして、こうしたらバトル展開に持ち込めないかなー、なんて。ちょっと付き合ってもらえます?」

「……ったく、しゃーない」

 

 ぐるり、と周囲を見渡すが、面白そうに笑みを浮かべた霊視ニキやモードレット、藤村さんと、止めてくれる人はいなさそうだ。鈴木さんなんかは、あれは揉め事の半分くらいはあえて数発殴り合わせてから止めに入るタイプなので、そこまで期待できるようなアレではなし。

 まあ実際、新人である彼女と組むにあたって最低限の実力は見ておく必要もあるし、それについては悪くない。

 

「んじゃ軽く模擬戦って事で、この後はカチコミ確定だからアイテムの消費と装備破壊は無し、制限時間3分間ってところだな。OK?」

 

 そんな僕の提案に、彼女はひゅぅ、と嬉しそうに口笛を吹いた。

 

「ええOKです。さすが太っ腹♪」

 

 がしゃり、と柊さんが握る機構長銃の銃身後端が、多数の部品が噛み合う音を立てて変形、大鎌の刃を展開する。近接武器へと変形を遂げた長物を、バトンを回すような動きで回転させ、その鎌刃が足元からすくい上げるように襲い掛かってくるのを、背をのけぞらせるように背後に一歩を踏んで回避して。

 

「んじゃ霊視ニキ、ジャッジ頼みます!」

「おう、任せとけ」

 

 そこに展開するのは柊さんのペルソナ『イリス』、両脚を覆う脚甲を象った武装型ペルソナ、出現すると同時に柊さんの姿が消えた。ものの数秒、最高速度へと加速して、襲い掛かる連続攻撃。右から、左から、頭上から、足下から、超速で襲い掛かるそれを、二発は鉤爪で弾き、懐から飛び出した飛行三鈷杵が弾き、最後の一発。

 

「おっと、危ない危ない、っと、アンズー!」

 

 飛来した凶鳥の鉤爪が僕の肩を掴んで高速離脱、連続攻撃のトリに入った最後の一撃は空振りに終わり、しかし。

 

「逃がした!? むぅ、思ったより速い────でも、私の方が速い! スペシネフ、モード”戦”!」

 

 事実、速い。速度以外はこちらが上だが、速度は向こうが上だ。真上から影、振り仰いだ瞬間には柊さんが頭上を取っている。スピードに特化した武装型ペルソナの加速を存分に乗せて頭上から振り落とされる一撃、大斧に変形した武装型式神による脳天唐竹割。

 

 なら、ちょっとした芸を見せてやろう。

 

「っ……消えた!?」

 

 地響きを上げて撃ち下ろされた大戦斧が、虚しく地面を穿つ。僕の姿は渦巻く黒煙に溶けて消え、そして柊さんの頭上で妖獣ヌエの姿を取って再出現。咆哮に乗せたバインドボイスからの毒ひっかき、かろうじて緊縛を振りほどいた柊さんの武装が再び大鎌に変形し、妖獣の鉤爪をかろうじて受け流す。

 

「今のは……?」

「権能ってヤツだよ。神話伝承に基づいて発現する、スキルによらない各悪魔の固有能力。雷を呼ぶ暗雲の化身、妖獣ヌエの場合はこんな風に雷雲に変化したりできるわけだ」

 

 今度はこちらが攻める番だ。相手の周囲に悪霊マカーブルともう一体の悪魔を展開して一気呵成に責め立てる。出現する悪魔は燃え上がるような真紅のマントを華麗に翻す髑髏顔の闘牛士────魔人マタドール。

 

「って、魔人まで!? 無茶苦茶物持ちいいですね!?」

「羨ましいかね、やらんぞ」

 

 攻撃の主軸はマタドール、柊さんに追い付けるだけのスピードと、遥かに上回る絶大な技量を誇る魔人の剣。見た目は華麗な連撃、しかし相手に反撃を許さず徹底的に初動を潰していく精密極まりない決闘技巧。それに合わせるようにしてマカーブルを動かし、相手にプレッシャーをかける事で柊さんの動きを牽制、じり貧に追い込んでいく。そうすれば、柊さんの取れる手段は一つしかなくなっていくわけで。

 

「────なら、こうするしかない!」

「だろうな、知ってた!」

 

 マタドールの振るうサーベルを受け止めたまま武器型式神スペシネフを長銃へと変形させ、連射。足元を穿ったエネルギー弾の炸裂が砂埃を巻き起こして即席の煙幕を作り出すと共に、柊さんは地面を蹴った。姿勢を低く、植え込みを盾にするようにしてマタドールを回り込み、一直線にこちらへと突っ込んでくる。

 想定通りの動きにマカーブルを送還し、同時に召喚しっぱなしだった妖樹イグドラジルの根を無数の槍に変えて地面から突き出させるジャベリンレイン、当てるよりも駆け抜ける敵手の軌道を制限して動きを読みやすくするのが目的、しかし。

 

「スペシネフ、EVLバインダー展開!」

 

 柊さんの一言と共に、大鎌を起点に翼のようなバインダーが展開する。それは事実上の翼なのだろう、展開した瞬間に柊さんの速度が一気に跳ね上がり、追い縋る妖樹の根を爆発的な加速で振り切って突っ込んでくる。一瞬後には僕の首筋を刈るべく大鎌の曲刃が振り下ろされ、そして。

 

「そこまで! ちょうど3分、時間だぞ」

 

 霊視ニキの声と共に、僕と柊さんは同時に動きを止める。僕の頸筋には柊さんの大鎌の刃が突き付けられ、柊さんの喉元には飛行三鈷杵の刃が突き立てられる瞬間で静止していた。

 

「…………引き分け、ですか。あと一歩でしたが。あと一歩でしたが!」

 

 悔しいのを誤魔化すように柊さんが大鎌の刃を仕舞い、スペシネフを霊体化させる。戦闘終了だが、この状況をどうしたものか。

 

「そうねえ。まあスカウター破壊組の無惨ニキ君にあれだけ善戦したんだから、割とよくやった方よね」

「だな。実力差ありの相手に、そこそこやった方じゃねえのか?」

「ふふん、これで私の実力、分かってくれました? 藤村先生も、これで私を見直してくれますよね?」

 

 と評定を下すのは藤村さんにモードレットだ。それを聞いて得意そうな表情を浮かべる柊さんだが、さて彼女は、“引き分け”にしては二人の評価が実に微妙な事に気付いているのやら。それを柊さんに示すかのように、藤村さんが柊さんの背後を指さした。

 

「そうねえ、無惨ニキ君がコッソリ後ろに置いてた悪魔に気付いてたら、ちゃんと見直してたと思うけど」

「っ……まさか!?」

 

 慌てて振り向いた柊さんの背後には、本来の得物とは異なる赤黒の機械型大鎌を手にした悪霊マカーブル。柊さんの首元へと突き付けられていた禍々しい色合いの三日月形の刃をマカーブルが手放すと、赤黒の大鎌は複雑に変形しながら畳み込まれて一丁の大型銃に変形し、次いでそこから溢れたマグネタイトがヒトガタを構築、少女としての姿を取り戻した式神のルビーが大型銃型の“本体”を腰の大型ホルスターへと格納する。本来の形態は武器型、そこに変化とは微妙に異なる《人型躯体》のスキルで肉体を形成する事で本体である武器を振るって自身も戦闘に参加できるタイプの式神、それがルビーたち四姉妹だ。

 

「そんな、いつの間に!? 気配も何もなかったのに!? 汎用スキルのステルスくらいなら普通に気付けるのに!」

「さっき。っていうか、わざわざ遠隔で動かすんじゃなきゃ汎用スキルのステルス積む必要もないでしょ、普通に体表から出てる呪力とマグネタイトの発散を抑えればいいんだから」

「……無惨ニキ君の言ってる事は相変わらず分からないにゃー。普通はどう考えてもそんな真似ムリムリだし、私でも目の前でコレやられたら気付かずスパッと一発食らってるところ。これだからスカウター破壊組は、全く」

 

 トドメに、僕自身は“柊さんの背後に立っている”。恐る恐る正面へと視線を戻した柊さんの視線の先で、そこに立っていた“僕”の姿が本来の姿である揺らめく影の形へと戻り、マグネタイトの塵へと還元されながら僕の手元にある封魔管へと吸い込まれていく。

 

「外道ドッペルゲンガー、安定と信頼の物理反射持ちだ」

 

 手品の種は簡単至極、黒雲化して攻撃を回避した瞬間に擬態能力持ちの悪魔と入れ替わっていた、ってだけの話。

 

「ってことは、あのまま攻撃してたら…………」

「物理反射であの世行きだね。まあその前にリカームして蘇生できるけど」

 

 肩をすくめた僕は妖獣ブラックウィドウが伸ばしていた蜘蛛糸を柊さんの全身から解除させる。もしドッペルゲンガーに柊さんの攻撃が直撃するようなら、蜘蛛の妖獣が伸ばした糸で柊さんを拘束、攻撃を停止させるつもりだった。まあその前に時間切れってオチだったわけだが。

 

「……これがスカウター破壊組の実力ってわけですか。なるほど、勉強になりました」

「ま、気にするな。君のセンスなら次はもっといい線いけるだろ」

 

 生身のまま当たり前に音速を叩き出せるのがこの世界のペルソナ使いだが、柊さんのペルソナはその中でも速度に特化している。レベルが上がれば、そのスピードにはさらに磨きが掛かり、最終的には誰の追随も許さない圧倒的な域にまで到達するだろう。

 代償として攻撃力や防御力といったパラメータはおざなりで、だからこそそれを補うための武装型の式神なのだろうけど。

 

「はい、それじゃ今度はお説教タイムね」

「え……?」

 

 と藤村さんが柊さんの肩を掴んだ。ギリギリと少しずつ力が入っていく様がこちらから見ていても分かるが、あれは相当怒っている。明らかに半分デビルシフトが発動しているっぽい。

 

「え、じゃありません! 敵でもない相手に銃口向けるとか、それどころかいきなりケンカ売るとか何考えてるのって話。人として当たり前の話です。さ、覚悟しなさいヤングガール、とりあえず泣くまでゲンコツ、それから尻叩きだから」

「そ、そんなあ!」

 

 柊さんがこちらに助けを求める視線を送ってくるが、僕は首を左右に振る事でそれに答える。ぶっちゃけ、巻き込まれたくない。鈴木さんも残当だと首を振っているが、まあ仕方ないだろう。

 

「んじゃまず先に尻叩きね! 容赦なく行くわよ!」

「ちょっ、順番が違……っ、待ってくださ、きゃぁああああ! 見ないでください!」

 

 涙目で叫びを上げる柊さんが藤村さんに取り押さえられる。藤村さんの手が柊さんのスカートを無造作にめくり上げ、その下着に手を掛けたところで、僕達は溜息を吐いて二人に背中を向けた。……容赦ない。これからは藤村さんを怒らせないように気を付けよう。

 そんなこんなで、溜息を吐いて。

 

 そういえば、この場にはもう一人見ない顔がいた。よく言えば優しそうな、悪く言えば甘そうな、あるいは無害そうな、どこか緩くて人が良さそうな顔立ちをした彼。

 

「そういえば、アンタは?」

「あ、申し遅れました。拙僧、根源寺から新たに派遣されました『御成』と申します。今回は微力ながら人々を守るべく、皆様のサポートをさせていただく次第でありますので、どうかよろしくお願いいたします」

 

 という事で、この年若い坊さんはそういう立場であるらしい。そこまで有能には見えないが、少なくとも仁良さんよりは信用できそうな顔をしている、ように見える。まあ言うてコミュ障の人物眼なんて当てになるわけもないのだが。

 

 

 

   ◆   ◆   ◆

 

 

 

 で、今の現状に関して。分身ヌエで偵察しているので、ある程度の人の動きは読めている。

 

 

「天使異界、メシア拠点、共に動きなし。というか拠点自体、市内中央の一番デカい教会を除いて人間の気配なし、後は大体出払ってるみたいです。念のため小異界の一つにリモート妖獣を突っ込ませて偵察させたところ、天使共まで最低限の守備を残して姿を消してました。どう考えても、どっか別の場所に集まってますね」

 

 聖鉄鎖騎士団のアークエンジェルから抜いた情報は、せいぜい作戦目的がこっちの足止めだっていう程度だから、その辺の目的は分からん。まあ仁良さんと雑魚天使一匹程度には大した情報を知らされるわけもなし、か。わざわざアメリカから連れてきた部隊にロクな情報も与えずに使い潰した意図は分からんが、さて。

 

 ……ちなみに、根願寺の拠点は焼け跡になってた。だから何、ってレベルの話ではあるが。

 

「探査してみたところ、地脈のエネルギーは大半が【聖都天草】に流れてるみたいです。八卦で確認してみましたが、鬼門を遥かに上回る規模の厄を集めています。明らかに何か起きてるのは確かですけど、何が起きているのかは不明。ただし占術の結果、最悪の事態が起きるまで猶予は三日程度」

「おいおい、余裕あるっちゃあるが、結構ギリギリの状況じゃねぇかよ。……本丸の状況は?」

 

 頭痛そうに顔をしかめるモードレットは、元ネタのキャラであるFateシリーズのモードレッドの通りに割と頭がキレる部類の式神で、戦術的判断は的確だ。実際、霊視ニキ自身もたまに相談してるくらいで、こういう部分では結構頼りになる。……元ネタのキャラ本人がたまにアホの子と化している事実には突っ込むべきじゃないだろうな。

 と、まあそんな感じで、ショタオジ謹製の隠密術式を仕込んだマイクロバスの中に集まって、僕達は作戦会議中だ。メディアや式神たちが飯盒炊飯で作ったカレーが配られていたりするので、さっき簡易に朝食を食べたのが残念でならない。

 

「ネクロマだと見た目からしてバレバレなんで、昨日の内に捕獲した天使一体の腹に邪龍ワームを腹中虫として仕込んでから【聖都天草】に潜入させました。明らかに大量の天使が集まってましたが、何やってるかは分かりません。よく分からんけど、何か発電機まで持ち込んで馬鹿でかい機械? そんな感じの弄ってるみたいで……まあ言うて僕の知識じゃよく分かりませんが、パソコンのモニター繋いでるみたいですから、電子機器でしょうねコレ。ウチの研究所にも似たような感じの置いてありましたし」

「その通りだよマスター君、これワークステーションだ。難しい事は置いといて解説すると、まあ高性能な業務用パソコンみたいなやつ。しかも一月前に飛電インテリジェンスから発売された最新型! いいなあ……私も高性能の端末、欲しいなあ」

 

 僕がタブレットに画像を表示すると、そちらに一同の視線が集中する。呪詛で支配下に置いた天使の視覚を、腹中虫を介してメディアのペルソナから電子機器に転送、画像ファイルにしたものだ。こういう時にメディアがいるととんでもなく便利だな。

 にしても飛電って、ガイア連合の参入企業の一つじゃないか……まさかのウチ製とか、本当にもう…………。

 

「わざわざ異界に大型のコンピューター、かぁ……確か内通者が電話してたのって、メシア教会のナイ神父よね」

「藤村さん、知ってるんですか?」

「名前だけね。この間ファントムのアジトの一つにカチコミした時、ガサ入れした資料の中から取引相手として名前が出てきたのよ。傭兵として、何人かプログラミング方面の技術者を雇い入れているみたい」

 

 普段はファントム絡みの案件を担当する事が多い藤村さんが派遣されてきたのは、そういう事か。しかしメガテン世界で、わざわざ異界に電子機器なんてものを持ち込む仕事。どう考えても嫌な予感しかしない話だが。メガテン的に考えて。

 

「メシア教会とファントムソサエティ、奇跡のコラボレーションってヤツか。しかも悪魔召喚プログラムとかいう厄ネタ関連。……もし仮に問題のブツが本当に悪魔召喚プログラムだと仮定して、何をどこまでできると思います?」

 

 どう考えてもカレー食べながら半ばキャンプ気分でするような話ではないが、それはそれとしてつまり、最悪の事態を想定して何をどうする、という話であるわけで。

 

「元々からしてBASIC言語で10MBとかいうスペックで魔王だの邪神だの召喚できるようなチートプログラムだからな。制御できるかどうかは別とはいえ……」

「────メシア連中が大天使を召喚するなら、制御の可能不可能なんざ関係ねえ、ってか」

 

 タブレット片手に【聖都天草】の資料を斜め読みしていた鈴木さんの言い澱んだ言葉を引き取るように、モードレットが結論付けるが。

 

「しかし、それならそれで大天使の武力を使ってこちらに聖戦を仕掛けてこない、というのもおかしな話じゃあないですか? メシアンならそれくらいはやりかねませんよ」

「確かにな。あるいは、まだ霊地から動けないとかそういう制限があるのかもしれんが……問題の一つでも起きてるのかもしれんな」

 

 タブレットに夢中で手を付けていない鈴木さんの分のカレーを横取りしてムシャムシャしている柊さんの指摘は、確かにもっともだ。少なくとも霊視ニキが首を傾げるくらいには。だがメシア教会が動けなくなるような問題っていうと、何だろうか。

 

「召喚した悪魔が暴走でも起こしたか。それこそ、カマ掘られた復讐のために邪神召喚したどっかの馬鹿みたいに」

「大天使か何かの召喚だとするなら、暴走してもトップがソイツに代わるだけの話じゃないですか? 組織として一枚岩のままってのは変わらないと思いますよ」

 

 メシアの強さというのは、結局のところ真社会性動物じみた物量と団結力だ。上位個体が出てくれば、たとえ制御されていなかろうがそっちの支配下に入るに決まっている。そういう事で、悪魔召喚プログラムを使う事でメシア教会が得るデメリットというものが想像も付かないわけで。

 そうこうして首を捻っていると、自分の皿のカレーを食べ終えたモードレットがテーブルを叩いた。

 

「あーもう、それはそれでこんな場所でウダウダしてても分かるわけないだろ。早いとこ敵の本拠に突っ込んでくのが先だろうが。メシアンが何やらかそうとしてるか知らないが、取り返しがつかない事だったら洒落にならねえぞ!」

「……確かに」

 

 結局のところ、そういう話になってしまう。少なくとも、ここで思考の堂々巡りを続けていても無意味。ぐうの音も出ない程の正論だ。

 

「ま、結局そういう事になるよねえ……それならとりあえず、最低限の情報を手に入れに行くべきかな?」

「へえ……当てはあんのかよ?」

「当然」

 

 僕の言葉に、モードレットがにやりと口元を吊り上げる。もっとも、格好いいポーズを取っていても皿に新しいカレーを盛り付けながらでは格好など付くわけもないのだが、ともあれ。

 

「考えても分からないなら、知ってる人に聞くのが基本。だからまあ、聞きにいきましょう」

「具体的には?」

「教会にカチコミ。ここの面子全員で」

 

 結局のところ、そういう話になるわけで。僕達ガイア連合対メシア教会、本格的に戦争勃発だ。

 

 

 

 




ステータスを書こうとすると、どうしてもデータが増えていく病。今一データがすっきりしない。別名中二病、というかどうかは分からん。


~割とどうでもいい設定集~

・ガイア連合謹製カロリーバー
 本家様で御馴染みガイアカレーと似たような感じの回復アイテム。見た目は普通にカロリーメイトかその辺の類似品、味もやっぱり類似品。その割にカロリーメイトよりも大幅に割高。
 回復効率はガイアカレーよりも落ちるものの、携帯性と手軽さで上回る携行食であり、ガイアカレーとは微妙に違った需要があり、生産が続いている。手軽故に余裕がない状況での中間補給などに向く。

・藤村大河
 タイガー。元ネタは『Fate/Stay night.』及び『Fate/Grand Order』その他Fateシリーズ。
 ガイア連合に所属する転生者の一人。ブチ殺しヒャッハー勢の一人であり、主にファントムソサエティの壊滅に関与している”虎柄の悪夢”。スカウター破壊組予備軍くらいの戦闘能力。
 妖鬼ジャガーマンに変身するデビルシフター、なのだが、変身した時の姿は何故か虎のキグルミ。ふざけた姿の割に結構な戦闘力を持ち合わせている。
 その言動はカオスそのものだが、時折シリアスな地金を覗かせる辺り、本性はヤクザ。
 元々ヤクザの娘さんであるため荒事慣れしており、また犯罪社会に対してヤクザ特有の嗅覚を持っているため、ファントムソサエティ方面での戦闘アリの捜査を担当中。
 ガイア連合の仕事が絡まなければ普段は自宅警備員な割に、何気に小・中・高の教員免許を持っているインテリ。

・鈴木悟
 元ネタは『オーバーロード』。分かりにくいけど主人公アインズ・ウール・ゴウンの”中の人”。
 ガイア連合に所属する転生者の一人。式神ガチ勢にして異界探索ガチ勢であり、加えてムド系の術を得意とするため対メシア教会でも活躍する。スカウター破壊組予備軍。元はプログラマーという出自から、悪魔召喚プログラム関連にも手を出していたが成果は出なかった。
 戦闘以外にも交渉とチームの取りまとめが得意であり、日本各地の霊能組織との直接交渉の他、面倒見がいいので実戦でチームを組む際に問題児が多い場合のフォロー役として仕事を任される事も多い。
 『幽鬼リッチ』のデビルシフター。つまり変身するとアインズ様になる。ムド系のスキルが一番得意だが、それ以外にもネクロマを使った召喚の他、炎氷電衝四属性を満遍なく過不足なく扱えるため、敵が何であれ安定して強い。
 式神はアルベド。防御力に優れた肉壁担当。

・柊シノア
 元ネタは『終わりのセラフ』。
 ガイア連合に所属する転生者の一人。藤村大河の助手を務めつつ対ファントムソサエティの前線を張っている。
ペルソナ使いであり、ペルソナは脚甲を象ったペルソナ『星・イリス』。要は某ダグザニキのところで頻出した武装型ペルソナ。ペルソナのスペックを速度に全振りしているスピード狂型ステータスの持ち主。その分、攻撃力や防御力は貧弱であり、それを補うために多機能な武装型式神を必要とした。
 式神はスペシネフ。貧弱な火力を補うための武装型式神。基本形態は長銃から変形する大鎌のモード“罪”。他に大斧に変形するモード“戦”など複数形態に変形する。また切り札として “EVLバインダー”なる機構を翼状に展開してさらなる加速を得る事が可能。

・御成
 元ネタは『仮面ライダーゴースト』。
 現地人。根源寺に所属する僧侶。レベル2であり、レベルの割にスキルが多い癖に大半が会話スキルで、戦闘で使える術もディアくらいで、ほとんど戦闘の役には立たない。
 前回の裏切り者の代わりとして派遣されてきた。
 馬鹿に見えるが割と有能。というか、根本的に見た目通りのお人よしであり腹芸も苦手なので相手の裏を掻くような交渉には向かないが、その分信頼関係を構築する事に関しては本人無自覚ながら非常に優秀。
 神に仕えるのではなく、人に寄り添う事を真価とするタイプの聖職者。宗教的権威を武器に悩める人を救うカウンセラータイプ。

・ルビー、ワイス、ブレイク、ヤン
 元ネタは『RWBY』。
 ダ・ヴィンチと同様に研究所所属の式神。研究所の警備・施設維持担当、という事で送り込まれてきた従業員的なサムシング。
 武器型式神がベースであり、武器として異能者や式神の補強が可能。また汎用スキル《人型躯体》により人間型のボディを展開し、自身も武器である本体を振るって戦闘に参加できる。普段の人型の姿はこっち。
 また、それ以外にも色々と仕込まれている模様。
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