◆ ◆ ◆
割と珍しい事があった。
少し前【螺旋丸】を開発した幼女ネキが、我がダ・ヴィンチラボを訪れた。
僕と同じヌエのデビルシフターである彼女だが、変身後の体格変化が大きく、屋内などの狭所では戦いづらいという事で、人間としての姿のまま悪魔変身の力を使う手段はないものか、という事だった。
そういう時、僕の場合は部分変形に加えてヌエの“正体不明”の属性から引っ張り出した肉体変化と雷雲化を併用して戦うんだが、幼女ネキは変身悪魔を複数形態扱うタイプなせいか、ヌエ単体の練度はそこまででもないようで、肉体縮小とか雷雲化みたいな技は失敗した模様。
まあ実際的な問題として、彼女は複数の変身形態を使い分けて戦うタイプの悪魔変身能力者なのだから、形態一つだけの練度を上げるよりも複数使い分ける事を考えるべきだろう。
で、そこから複数持ってる悪魔変身の形態を併用するのはどうか、という発想に至ったわけだが、これも難しい、と。
複数ある変身形態を統合して過不足なく機能を発揮するとか、要は新しい変身形態を構築するようなものだからな。物理的にも霊的にも権能的にも余計な干渉を起こさず問題なく即興で新形態を構築するとか、相当の無理ゲーだ。
僕の場合、それをどうにかするためのオーズドライバーであるわけだが。
ともあれ。
結果としてデビルシフター能力の応用として、『ダンテの門』に登場する魔晶変化────悪魔変身能力と根を同じくする権能兵装の展開能力、幼女ネキ命名の『オーバーソウル』だった。藤村さんのキグルミ型悪魔変身とかに近いのかもしれん。
幼女ネキがヌエをオーバーソウルした時の形態は大型の虎柄ガントレットだったが、この辺、僕が発動した場合はオーズドライバーになった。機能にも変化なしで、コアメダルをセットした事で普通に能力を発動できたが、この辺、能力がどういう形で干渉しているのか気になるところだ。
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さて。
幼女ネキの人物評だが。
事前情報から制御不能の暴走特急というか、凶暴な猛獣のような人格……某オサレ系死神漫画の十一番隊隊長────あの眼帯付けてて一人だけ始解すらしてないのに最強クラスの人みたいなのをイメージしていたのだが、その性格は思ったよりも穏やかだった……穏やかな肉食獣、満腹な状態の熊かな?
最もその辺、今回の接触で危険なトリガーが引かれなかっただけ、という側面もあるのだが。
ともあれ、よほど非常識な真似をせず、人としての常識を弁えた付き合い方を心掛ければ問題なさそうではある。
その反面、一旦トリガーが引かれてしまえば死ぬか相手を殺すまで止まらない、というのは危うい話だ。この世界割とシビアで人が簡単に死ぬというのに、それで本気の殺し合いに発展せず今まで生きてこれたのは、単純に彼女が強いから、というだけでなく、彼女が周囲の人間や環境に恵まれていて、周囲が彼女の事を理解して気を遣ってくれているから……譲歩してくれていたから、という側面もあるのだろう。
生憎と彼女の周辺の人物関係については伝聞でしか知らないが、優しい人々が集まっているようで、その辺は良かったと思う一方で……最悪の場合、殺してでも彼女を止めてくれる人間はいるのだろうか、という懸念もある。
この世界、死んだ方がマシな事態など山のようにあるのだから。
ともあれ。
暴走特急というよりは、修羅勢のマインドを持つ運命愛され勢といった方が正確であろう。
何より、学ぶ姿勢ができているのが強い。負けず嫌いであり折れず曲がらず、たゆまぬ努力を続けていける一方で、自分より優れたところがある人間を素直に認めて敬意をもって接し、客観的に教えを受け入れて自分の中で昇華し、成長の糧としていく柔軟性をも併せ持つ。
……成長する事に特化した人格というのか。
あるいは、そうなる必要があったから、そのように成長したのか。そういう形に成長してしまった歪さの反動も、随所に出ているのが見て取れるのだが……現状、問題なくバランスを保っている様子でもあるし、周りのフォローもありそうだから、今すぐ致命的な問題にはならないか。
とりあえず、ウチのシキガミ達と仲良さそうに戯れている様子を見ても、そこまでの問題はなさそうだ。特にルビーが喜んでいる。末っ子扱いの彼女にとって、姉面できる相手ができたのが嬉しいのか、毎日のように世話を焼いている。その辺、彼女の姉であるヤンやブレイク、ワイスも微笑ましげに見守っている模様。
◆ ◆ ◆
そろそろ、幼女ネキのオーバーソウルも形になってきて、彼女自身も宮城に帰る頃合い。
そんなわけなので、一つ大きめの贈り物をしておこうと思う。
問題は、何を作るか、という事だが……デビルシフターである幼女ネキにとって生身用の装備は、あまり意味がない。ならば作るべきは……イカルガやトイボックスといったロボの装備────それも、必殺技として成り立つレベルの。
イカルガってゴテゴテしてるようで、機体構成としては割合シンプルだからな。腕が複数あって、ワイヤー式のびーるアームが搭載されてるだけで、他の武装は銃剣を複数本って具合だから、もう少し盛っても問題なかろう、って具合で。
何を作るか、は既に決まっている────テュポーンを本霊として持つ幼女ネキの事だから、アレが一番なはずだ。
と、いうわけでクラフト開始。
一番相性のいい素材はアダマス……死の属性に染まったアダマントス合金ではなく、素の状態のアダマスが一番相性が良いので、金払ってパピヨンニキから購入……結構値が張ったな。まあ仕方ない、主要素材で使うからな。
外殻含む基本素材は、エトナ火山に封じられた逸話からテュポーンと同一視される巨人、地霊エンケラドゥスのフォルマをアダマスと合わせて使用。
機関部には魔神ゼウスと魔神ヘパイストスの悪魔カードを中枢に組み込み、機体側から供給される霊力を神雷に変換して放射、それを圧縮鍛造する事で巨大な杭を構築する機構を搭載。
そこに地霊ウルカヌスのフォルマで製造した撃鉄を撃ち込む事により、砲身最奥で火山の権能を撃発して初速を獲得。邪龍ヴリトラのフォルマを組み込む事で神雷の杭を加速誘導するレールを配置した砲身内部から、霊子加速砲の原理で加圧・高速射出する。
これがパイルバンカー“
杭の数は一本だが、この辺は原作でも一定していなかったので仕方なし。自己進化する武器……というか、自己進化機能を搭載したヒロインをサブパイロットとして機体に合一していた影響で、覚醒イベントの度に杭の本数とかコロコロ変わっていたので、そうもなる。杭一本の場合は初期形態と最終形態に準拠だ。
なお、原作での使い方からしてパイルバンカーというか、単なる超威力ビーム砲というのは突っ込まない約束だ。
イカルガの腕、片側三本を使用して保持し、使用する設計になっている。この設計なのは杭射出の反動で発生する衝撃を複数の腕に分散して受け止める必要があるからな。
そのためにイカルガの側にも、腕部用の補強パーツを導入した。エンケラドゥスと鬼神トールのフォルマを組み込み、トールの神宝ヤールングレイプルの機能を再現した腕部追加装甲3セット。
機構上、装備している間“執月の腕”は使えなくなるが、どうせ構造上、ギミックが仕込んでいる部分はどうしても脆くなってしまうからして、下手にワイヤードフィストなんて使えるような状態にしていたら手首から先が千切れ飛びかねないので仕方なし。固定するしかないのだ。
「ちなみに、トイボックスで使うとどうなるの?」
などと聞いてきたのは、興味深そうに円柱状の神砕雷を観察しているヤンだ。撃発機構を組み込んだガントレットの武器型シキガミである彼女の設計思想は、パイルバンカーである神砕雷ともある意味共通する部分があり、だからこそ興味を引かれるのかもしれないが。
「トイボックスで? それはもう、確実に腕が吹っ飛ぶ。もしくは半身。多分、手首、腕、肩、半身のどれか、その時々で一番強度が低かった部分から先が消し飛んで壊れる」
構造上、ではなくその時々なのは、異能者や悪魔の場合、躯体の内外を流動するマグネタイトの多寡や収束率なんかで時により同じ場所でも全然強度が違ったりするからだが。
「……それ、本当に大丈夫なの?」
「まあ、基本的には。イカルガで普通に使う分には、ちょっと反動と消費とインターバルが厳しいオーバードウェポンっていうだけの話だしな」
「いや、それ確実に大丈夫じゃないんじゃ……?」
むしろ、これでいいのだ。
「今使う為の武装じゃないからな」
杭は神雷。撃発機構は火山の権能。
それはいつか彼女が異能者として成長し、嵐と火山という二面性を持つテュポーンの権能を使えるようになった時の為のもの。二つの権能を自在に扱える領域にまで届いたなら、反動など意志一つで操れる程度のものになる。
そうなった時、神話の時代のテュポーンがゼウスから簒奪したという神雷を扱うための武器だ。
つまり来たるべき将来を見据えて、今後の成長に期待、という事。
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降霊術のレベルが上がったのと、呉からまた新しい技術が流れてきたので、それを組み合わせてコアメダルを増やそう、と。
呉の新技術の御陰で、霊基情報を記録する情報媒体の性能が一段階向上し、コアメダルが保有できる情報の容量が増えたのだ。この恩恵を受けたのはコアメダルだけじゃなく、例えば飛電インテリジェンスに託したプログライズキーなんかにも影響しているが。
ともあれ、この増えた分の容量を使いたいのだが……さて、どうしようか。
今までは獣としての性質を持つ高位悪魔の情報を組み込んで、それを合成獣としての側面を持つヌエの霊基に取り込む事でその力を振るう、というコンセプトだったわけだが、それだけでは原作再現し切れない特性があるわけで。
ここで一つ、生物としての要素をコアメダルに組み込む技術が欲しい。
そこで、ちょっと前に滞在していた幼女ネキから聞いたのだが、宮城で開発されたガイアメモリに生物のDNAと概念情報を記録し、それをシキガミに挿入する事で、状況に応じてシキガミに生物特有の能力を追加する機能を付与する技術を構想中、なんだとか。
その辺にオーズドライバーの技術を使いたいって事で、まあ快く技術提供したわけだが。
とりあえず、その辺で生物系ガイアメモリを作成してみる事にする。
────って事で、出来上がった試作品第一号が『バードメモリ』だ。
宮城支部から購入した『てらほくん』────ダ・ヴィンチ命名の個体名『助手くん』を実験台にして試したところ、見事、原作にもちらっと登場したモデルとほぼ変わらない感じの、大雑把に鳥っぽいM・O型テラフォーマーへと変化させる事に成功した。
飛行能力だけでなく、原作同様の遠視力と長距離投擲能力は十分に再現できたので、実験成功といってもいいだろう。
ゆえに今まで開発停止状態だったモチーフ……カマキリとか、その辺のメダルを開発する目途が立った。
具体的には、増えた分の容量に特定の生物の霊基情報を組み込み、それを繋ぎにして相性のいい高位悪魔の霊基を取り込めるようにしたのが第二世代コアメダルだ。この技術のお陰で、作れるメダルの幅が一気に増えた。最初に製作したのは、この二枚。
魔神バアルの霊基を組み込んだクワガタメダル。
龍王コウガサブロウの霊基を組み込んだカマキリメダル。
これで、オーズにガタキリバコンボが実装されたわけだ。めでたし、めでたし。
コウガサブロウの忍術を権能として引き出せば、原作でもガタキリバコンボ最大の能力であった分身も使えるって事で、自分としても相応に満足が行く出来になった。
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今日はテラフォーマー用の生物系ガイアメモリの新規開発を試してみる。
とりあえず大雑把に、原作を参考に良さげなヤツを片っ端から試してみようって事で。
『ホッパーメモリ』でサバクトビバッタ型テラフォーマーに。
『スタッグメモリ』でスマトラヒラタクワガタ型テラフォーマーに。
『レインボースタッグメモリ』でニジイロクワガタ型テラフォーマーに。
『ウィーヴィルメモリ』でクロカタゾウムシ型テラフォーマーに。
『アントメモリ』でパラポネラ型テラフォーマーに。
『ゲンゴロウメモリ』でゲンゴロウ型テラフォーマーに。
『モールクリケットメモリ』でオケラ型テラフォーマーに。
『アーチャーフィッシュメモリ』でテッポウウオ型テラフォーマーに。
『シガレットスネイルメモリ』でアンボイナガイ型テラフォーマーに。
『スキッドメモリ』でミナミハナイカ型テラフォーマーに。
『アルマジロメモリ』でアルマジロ型テラフォーマーに。
うん、結構増えたな。
シュラウドマグナムともリンクして、アーチャーフィッシュメモリなら放水銃になるから水撃属性の攻撃というだけでなく消火なんかにも使えるし、スタッグメモリならハサミ型のエネルギー弾が敵を切断する剣撃属性の物理攻撃になる。モールクリケットメモリで発射したオケラの腕型エネルギー弾は掘削機代わりに使えるっぽくて便利。
何ならアントメモリで発射したアリ型のエネルギー弾が相手に組みついてそのまま自爆した時には、絵面が少しばかり怖い事になったな。アリだけあって連射速度も高い上に至近距離で爆発するから、ぶっちゃけかなり殺傷力が高くて凶悪だ。
何か面白い使い方ができればいいんだが……と思って、一つ思いついたので、佐渡で開発されたアマゾンズドライバーを助手くんに装備させ、『ホッパーメモリ』を使わせた上で変身させてみると、見事にサバクトビバッタの形質を発現したアマゾンシグマに変身してくれた。
元々、アマゾンズドライバーは変身者が体内に仕込んだ生物系シキガミパーツの特性を増幅強調して発現する性質がある。そして生物寄りのシキガミであるてらほくん共は、それ即ち全身バイオ系シキガミパーツの塊と言っていい。
なら生物系ガイアメモリと併用すれば、こうなるわけだ。
それはそれとして、アリタケ型の『トードスツールメモリ』は特級呪物扱いで封印としよう。これを何も考えずに流通させるのは危険過ぎる。
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宮城から流れてきた技術は、ガイアメモリだけではない。
トリガー、というものがある。ワールドトリガーを元ネタとする原作再現技術であるが。
せっかくトリガーがあるので、その最大の利点であるベイルアウト機能を開発してみようかと思う。
ベースは【トラポート】として、限界まで高速化したこのスキルを条件付けし、【食いしばり】や【不屈の闘志】などの踏みとどまり系スキルを使い切った状態で致命傷に至るダメージを負った場合に自律発動するようセットしておく、と。動力となるMAGは緊急用のリソースとして、トリガーホルダーに内蔵した小型バッテリーに別途蓄積する形で。
死ぬようなダメージを負った際、あらかじめ設定しておいた拠点に自動的に瞬間移動する、という最後の保険といった感じになる。……まあ基本的に致命傷を負った状態での転移になるので、拠点に戻された段階でも結構な確率で既に死んでいる可能性は高いのだが……この世界蘇生魔法もあるからな、ガイア連合の技術力とリソースであれば、死んでも生き返らせてもらえるので問題ない。その代償は大抵の場合は借金という形になるだろうが、まあ死ななきゃ安い。
そうでなくとも、対メシアンを考慮に入れた場合、現地に残ってしまった死体や魂を敵に回収・利用されないという利点は大きい。
緊急用の備えとしては、KSJ研の方でテラゲート計画なるものが進行しているらしいが、こっちは既存の技術で対応し、かつテラゲートが割と黒札専用になりそうな様子なので、こちらはアイテムを持たせるだけで現地民にも使わせられる、というのが売りになるか。
「うーん……トリガーホルダーに内蔵すると、【トラポート】分だけホルダーの単価が高くなるのがネックか。とはいえ……命にプラスして魂の尊厳の値段だしな、高いとは決して言い切れない、かな?」
難しいところである。
ともあれ、トリガーの華といえば、トリガーチップである。
と、いうわけで、ひとまず『ロックマン』系の特殊武器をトリガー用のオプションとして開発してみる。アステロイドやメテオラのような射手用トリガーや、銃型トリガーを使用して撃てる特殊弾だ。追尾弾や誘導弾、炸裂弾などと組み合わせて使う事もできるので、原作とはまた使い勝手が随分と異なるはずだ。
とりあえず元ネタは『ロックマン2』……これに関しては、ロックマンといえば名曲『エアーマンが倒せない』を思い出すから、という極々個人的な理由だったりするが、ともかく。
射出する弾体を回転ノコギリに変化させる『メタルブレード』。切断力があり、属性もガン・銃撃ではなく剣撃タイプの物理属性になっている。単純な属性変化型のオプションだが、切断作業にも使えるし役に立つ状況は多いはずだ。
渦巻く風の砲弾を射出する『エアーシューター』。『エアーマンが倒せない』で有名なエアーマンが落とす武器が元ネタだな。これは疾風属性の攻撃だが、まあ普通の属性変化だな。地味。
泡型の弾丸を射出する『バブルリード』……これに関しては、射出した泡弾が周囲の地面や壁面を這うようにして移動するので、扱い方に関しては注意する必要があるだろうな。飛んでいる相手に当たらないというのは痛いが、反面、普通の飛び道具での迎撃は少々難しいかもしれない。
『クイックブレード』……これもメタルブレード同様に剣撃物理属性のブーメランを発射するものだが、メタルブレードよりも消費が軽く、連射能力が高いのが特徴。
『タイムストッパー』は普通に【獣の眼光】。とりあえず時間停止タイプのヤツだが、これだけ割と直球というか捻りがないというか。むしろ術式に縛りを入れる事でコストというか容量を削減するのが大変だった。
『アトミックファイヤー』……火炎属性の砲弾を発射する。チャージも可能で、結構な高威力を出せたりする。
『リーフシールド』……木の葉を生成して物理的なバリアを作り出すもの。さらにバリアを形成する木の葉を弾丸として射出できたりするが、撃つとバリアが解除される弱点もある。プラスして火炎属性に弱いのも気になるところだ。その分エアバッグ能力は高く、打撃や衝撃に対しては通常のバリアより強いから善し悪しだな。頼り過ぎるのも危険だが
とりあえず、こんな感じか。
◆ ◆ ◆
さて、それはそれとして。
近接戦用のトリガーは概ね完成しているようだが、銃型のトリガーは未完成であるとの事。まあ幼女ネキだとそうだろうな……というのは、別に幼女ネキをディスっているわけではない。
ぶっちゃけ、幼女ネキって銃の類との相性があまりよろしくない、はず。
彼女自身が銃や射撃武器を扱うような系統の異能者ではない、というのもあるが、それ以上に“手が小さい”。銃そのものの重量や発射に伴う反動なんかは異能者の体力で無視できるが、これだけは本当にどうにもならない。
デビルシフターであり優れた異能者であるとはいえ、当人の肉体そのものはあくまでも幼女である事には変わりないので、市場に出回っている銃は基本的に成人用、それも大抵の場合は日本人よりも体格のデカいガチムチの白人男性を基準にしている以上、例えば大型拳銃とか銃のサイズに手が合わないし、場合によってはグリップに指が回り切らない事もありえる。
拳銃とかね、特にオートマチックは大半がグリップの中に弾倉を収納する設計になっているからして、どれだけ頑張っても普通のやり方だと、弾薬の長さよりグリップの幅を縮めることができない。その辺の兼ね合いを考えれば何をどうカスタマイズしても幼女の手の中に収まるようなサイズにまで小さくするとか、ちょっと難易度が高いわけで。
将来的に身体が成長してくれば、また変わってくるんだろうけどな……まあ何年経っても成長する気配がないショタオジや呉の⑨ニキみたいな例もあるから、普通に成長するかどうかは分からん。こればっかりは一度、医療部とかその辺とも相談してみるべきやもしれん。
まあ彼女の場合デビルシフターであるからして、銃が持てるサイズに体格そのものを変形させるとかそういう選択肢も視野に入るが、それはそれで踏むべき手順を一つ二つ増やしている事には変わりないからな、その程度なら適当に魔法でも撃つか近付いて殴った方が効率的ではある。
そもそも弾丸より速く動ける生物が銃を装備する意味がどれだけあるのかっていう話でもあるか。銃系異能者だと弾速も上がるし、あるいは高レベル帯なら“遅いはずの弾丸を躱せない”とかいう因果が矛盾した事態すら発生するが。
ついでに、銃そのものの構造が刃物などに比べて遥かに複雑で、どこぞの投影魔術みたいにその場の即興で術式を編纂して武器生成するには向かない、というのもあるかもしれない。
ともあれ、銃型トリガーである。開発するメリットは当然存在する。トリガーチップに仕込んでおいて必要な時に具現化する事ができれば、まだ高度消費社会が機能していて日本国法、とりわけ銃刀法が機能している半終末期の現代日本においては、銃使い系の異能者が活動するためのハードルは大きく下がる。
そんなわけで、とりあえず試しに作ってみようと思う。既に、頭の中で雛形は出来上がっているので。
ベースになるのは【射撃武器装備】のスキルだ。一部の悪魔が持っている系統のスキルであり、このスキルを持っていれば悪魔としての形態の一部として武器を持つ事ができ、また通常の銃火器もスキルに対応した武器として装備し、取り扱う事ができる……名前そのままだな。
なお悪魔が体の一部として所有する武器の威力は、割と個体差や例外こそあるものの大抵はスキル所有者のレベルや能力値に依存する事が多いようだ。
このスキルの持ち主として、一番分かりやすくて有名なのが屍鬼ゾンビコップや屍鬼ゾンビアーミーなどの、ゾンビのバリエーション共だな。飛び道具がある分、通常のゾンビと比べて危険度が跳ね上がるらしく、低レベル異能者の死亡原因としても結構メジャーな部類なんだとか。
この辺、日本でも時折見掛けるし、アメリカならもっと大量に湧いて出てくる。何なら、ゾンビコップやゾンビアーミーだらけの異界なんてのもあるくらいだ。
ま、基本はゾンビコップだな。低レベル悪魔だから安価かつ比較的だが安定して入手できるし、加工も容易い。
外道やくざや外道ちんぴらなんかもいるが、ここら辺が装備している銃は基本的に質が低く……しかも【射撃武器装備】スキルそのものに“粗悪品”の概念が組み込まれてしまっている事が多いので、品質に不安が残るのでやめておく。
で、このゾンビコップのフォルマから概念を抽出して【射撃武器装備】のスキルを抽出。トリガーのチップに封じて……よし、と。
それから術式を弄って、既に開発されている弾系トリガーとの連動を、と。
後は実際にトリガーを発動させてみて……うん、銃が出たな。日本産ゾンビコップのフォルマがベースになった銃だからか、見た目はサクラM360J ────警察で一般的に制式採用されてるS&W製のリボルバーだ。多分、サブカルが絡まなければ一般的な日本人が一番目にする機会が多い拳銃じゃないだろうか。
装弾数は普通のサクラと同じく5発、それだけ撃ったら、霊力を消費して弾丸を再構築する必要がある。
銃弾の威力は使用者のレベルと霊力に依存する。
とりあえずこれで、試作品は形になった。
まあ、簡単ではある。
後は、同じ工程で複数個の試作品を作成…………ふむ。少し意外な結果になった……いや、それほど驚く事でもない、か?
出来上がった銃はサクラじゃなかった。
10個作成した内、サクラだったのは2挺までで、残りはM60ニューナンブが3挺、M37エアーウェイトが1挺、SIG SAUER P230Jが1挺……この辺は、どれも過去に、または現行で、という違いはあるが、日本の警察で制式採用されていた拳銃だな。
残り3挺はグロック22が2挺、コルト・パイソンが1挺……この辺は、アメリカ産のゾンビコップが元だからそういうものか。
どうやら、産地というか元のゾンビに影響されるらしい。
「うーん……ちょっと難しいな」
重量やサイズ、装弾数がバラバラなのは少し困るので……どうしたものかと少し考えて……天子の“要石”で使った技術を使う事にする。
まず錬金釜にスキルカードを放り込み、【射撃武器装備】から拳銃個別の概念情報を抽出して分離。“拳銃”という剥き出しの概念だけの状態に。
それから続いて、別個に用意した適当な拳銃の設計情報をインストールすると、よし、成功。
想定通り、H&K P2000モデルの生成に成功した。
この方法なら、設計データさえ用意できればあらゆる種類の拳銃をノーマルトリガーとして形成、使用できるな。とりあえずメジャーな銃を一通り用意し、セットで作ってみるとして、これで完成って事でいいだろう。
◆ ◆ ◆
ので、次だ。
ゾンビアーミーのフォルマから同じ工程でもって【射撃武器装備】を抽出。これもトリガーチップに組み込んでみたのだが。
「うーむ…………あかん」
サンプル10個作った内、半数がアサルトライフル、残り半分はショットガンだったりサブマシンガンだったりグレポンだったりライフルだったり…………全然安定してない。これはいけない。
「どうにも、ね」
仕方なし。ベースにしたゾンビアーミー自体、持ってる銃が割とバラバラだったりするし。
まあ、この辺は拳銃の時と同じく、銃の設計情報をインストールする形で……む、これ微妙に技術レベルが要求されるな。もう一段階の抽出が必要だ。
【射撃武器装備】をベースにするのは変わらず、さらにその上で拳銃型の時からさらに一段階進み、内包概念を“銃”のみというところまで概念剥離を行って、そこにさらに“アサルトライフル”“ショットガン”“ガトリングガン”“グレネードランチャー”という個別種類の概念情報を付与。
そこまでやった上で、実銃愛好部から購入した銃の設計図を突っ込みの、……錬金釜でじっくりコトコト煮込んで…………これでよし。
とりあえず拳銃型以外……『突撃銃型』『散弾銃型』『機関砲型』『擲弾砲型』の四種も完成って事でいいだろう。
なお、単発での威力は 拳銃型 ≧ 散弾銃型・擲弾砲型 > 突撃銃型・機関砲型 となっており、見た目に反して拳銃が一番高い。射程や連射性能にリソースを振っていないからな。
また擲弾砲型・機関砲型に関しては銃の形成に喰われる霊力が大きめになっている。
後は……スナイパー型か。これ、結構面倒臭そうな……いやいや。うん、まあ。
原作に登場した狙撃手用のトリガーは3種。
射程距離重視、万能型の『イーグレット』。
威力重視、ドッカン型の『アイビス』。
弾速重視、チクチク型の『ライトニング』。
既存の銃器カテゴリに当て嵌めて作るのは……少し難しそうかな。特にライトニング、実銃の形をしてないからな。術式で一から組み上げるしかない、か。
◆ ◆ ◆
まあ、その辺も何とかなったな。一週間ほど頑張ってイーグレット、アイビスも完成。それからプラス二週間でライトニングも完成。
狙撃型トリガー三種、これで開発終了って事で十分だろう。
マザーマシン形式でオートメーション化のプランも構築したから、後は機材さえ用意してラインを作れば一通り量産もできる。
オマケで、COMPをトリガーホルダーに接続する事で、トリガーチップに搭載した銃型トリガーのデザインを変更するためのCOMPアプリ『ガンスミス』も開発した。カラーリングや装飾の変更だけでなく、有料コンテンツとして本部のメインサーバーから設計データをダウンロードするだけでスコープや銃剣などのオプションパーツも装着できるようなカスタマイズもできる。
これで、例えばブルーアーカイブなんかに登場するデコ盛りカスタムガンを使う事だってできるわけだ。
「それより先に開発しておくべきものが色々とある気がするけど……まあ、いい取っ掛かりになったからヨシとしよう」
一番先に開発しておくべきもの……レーダーくらいは、宮城の先生ネキがとっくに開発していてもおかしくない。
そもそも、さほど難しい作業ではなく、COMPやデモニカに採用されているエネミーソナーの術式をシステムに落とし込むだけで十分。トリガーホルダーに収めるための小型化とかもあるけど、それだって展開型デモニカと大した差はないのだし。
とりあえずジャンプ台の『グラスホッパー』でも開発してみますかね……完成した。まあ、元々そこまで難しいシステムじゃないからな。それこそ今頃先生ネキあたりが別バージョンを開発してる真っ最中だったりしてな。
「うーん……どうもね、これだけだとね、どうにもね」
……ちょっとパンチが足りないというか。
さて、どうしたものか。
トリガー……トリガー……トリガーと言ったらウルトラマン…………はあまり関係ないので脇に置いておくとして。トリガーのフォーマットを使って、何かそれっぽい別のやつを作ってみよう。将来的には、トリガーチップとしてトリガーホルダーにセットできるような感じで。
「そうなると、モチーフとしては………………ふむ。そうだな、あれがあった」
長考する事、数秒。
今回は、アレを作ってみよう────『仮面ライダーフォーゼ』のアストロスイッチ。
銃型トリガーを作った段階で、製作に必要な技術は既に揃っている。あれの応用で、スイッチに格納した霊装の設計図を鋳型にマグネタイトを流し込み、起動と同時にマグネタイトを流し込んで適宜霊装を構築する方針で行けるはずだ。
後は設計して、そして作っていくだけの事。
そんなわけで、最初に取り掛かったのはアストロスイッチの中でももっとも代表的な『ロケットスイッチ』だった。
地上に落下した宇宙ロケットの部品から抽出した概念をスキルの形に組み上げ、そこにマギジェットスラスタの術式を組み込みつつ、腕部装備としての体裁を整えて、っと……これで良し、完成だ。
出力の大半を推力に割り振っているせいか、飛行用霊装としては結構クセが強いな、これ。
ともあれ、ロケットスイッチを皮切りに、他のスイッチも一つ一つ作り上げていく。
ロケットに続き『ランチャー』『ドリル』『レーダー』『マジックハンド』『カメラ』『パラシュート』と順番に作成していく。フォームチェンジ用のスイッチを除く全ての基本スイッチを完成させて…………思ったのだが。
「片足しか乗らない『ホッピング』に『ホイール』、足に装備する『ドリル』『ペン』『チェーンソー』『ネット』…………これ、使うヤツいるのか? というか、需要、ある?」
いや、そこはそれ、発想を変えて……ガチャの景品にでも突っ込んでおけば、入手する、してしまう者は出てくるだろう。
誰も欲しがらない商品を客の懐に突っ込めるのは、ガチャという悪い文明の数少ない美点であり………………やめよう。自分で言ってて悲しくなってきた。
とりあえず仮面ライダーフォーゼの原作再現として、一部のスイッチをトリガーホルダーにセットしておけば、対応する簡易シキガミ『フードロイド』を召喚できるようにした。
それぞれ『カメラ』が偵察・情報収集用ハンバーガー型『バガミール』に、『シザース』が切断工作用フライドポテト型『ポテチョキン』に、『フラッシュ』が発光攪乱用シェイク型『フラシェキー』に、『スコップ』が掘削作業用ホットドッグ型『ホルワンコフ』に、『フリーズ』が冷却・送風用ソフトクリーム型『ソフトーニャ』に、『ジャイロ』が多目的母艦式チキンナゲット型『ナゲジャロイカ』に対応する感じ。
◆ ◆ ◆
さて。
ステイツチェンジに関わるため後回しにしておいた未開発のスイッチは四種類。
『エレキ』。
『ファイヤー』。
『マグネット』。
『コズミック』。
この辺を作る前に、習作として通常型ガイアメモリを作成していこうと思う。今回挑戦するのは……属性系だ。
それほど難しい事をするわけじゃない。要は普段のコアメダル製作と一緒だ。高位悪魔を降霊し、霊基から権能を抽出、保存媒体となるメモリに格納して使える状態に持っていく。
そんなこんなでクラフト開始。今回は、ちょっと前の仕事で交流を持ったインド縛りだ。
魔神ヴァーユの風の権能で『サイクロンメモリ』。
破壊神アグニの火の権能を『ヒートメモリ』。
魔神インドラの雷の権能を『エナジーメモリ』。
破壊神ルドラの嵐の権能を『ウェザーメモリ』。
宮城の方で市場に乗っているシュラウドマグナムにセットする事もできる。サイクロンは疾風属性の高速連射弾、ヒートは単発高威力の熱弾と、この辺は原作再現。エナジーだとレールガンになる。
なおウェザー────未熟な人間が使った場合、何が出るかは保証できない。風が出るか、雨が出るか、雷が落ちるか、吹雪が荒れるか、太陽光が焼き払うか……制御できるようになるのは30レベルから、と。販売するならレベル制限必須かな。
まあシルバーメモリなので仕方なし。
ともあれ、属性関連の練習も終わったのでスイッチ作り、ステイツチェンジ用だ。
まずはエレキスイッチ。ノーマルトリガーの弧月なんかと同じような武装展開型で、専用武器『ビリーザロッド』を展開する。
ビリーザロッド自体は比較的取り回しの良いサイズのスタンロッド。電撃属性で感電付与というオーソドックスな武器であり、感電の付与率をかなり高めに設計しているので、電撃耐性のない相手への近接戦闘には無類の強さを発揮する、はず。
また【猛電撃】による電撃属性の光弾に加え、電磁ネットの射出なんて機能も搭載。ここらへんは設定だけは存在していた原作再現なのだが、原作でその設定が生かされていた記憶がない……。
プラスして、電力のオーバーフロー対策に展開と同時に【電撃無効】も付与される他、オマケ機能として、デモニカと合わせて装備した場合、そのカラーリングを一時的にフォーゼのエレキステイツっぽく黄色と金色のツートンへと変化させる機能を搭載した。
ファイヤースイッチ。同じく武装展開型で、専用武器『ヒーハックガン』を装備する。
何で消防士モチーフな形態の武器に火炎放射器としての機能が付いているのか自分でも甚だ疑問ではあるが、ともあれ【猛炎撃】【猛炎乱撃】で火炎弾を撃ち出す銃である。モード切替で消火弾も発射できるからして、消防士モチーフとしての面目も一応は保っているか。
【火炎吸収】も付与されるので、大火災の中にも遠慮なく突入する事ができるだろう。
なおカラーリング変更機能も搭載したし、色は当然赤だ。
NSマグネットスイッチ。トリガーホルダーにセットする時には、メインとサブ各1個ずつ、計2個のスロットを消費するが概ね原作通り。
専用武器というか、上半身を覆うようにマグネットステイツの装甲が装着され、両肩から『Nマグネットキャノン』『Sマグネットキャノン』を展開する重装備。さらに霊力の消費は重くなるが、両肩のキャノンを合体させ、磁場操作のできる浮遊砲台『NSマグネットキャノン』として自在に操る事もできる。
……これでも、それなりに合理的なのだ。反動の強い高火力の武器を重量級のボディに固定する事で高精度の砲撃ができ、大技や緊急対応の時には出力のリミッターが外れた高出力と自在な射角で砲撃ができる、と状況に応じての対応ができるので。
耐性? うん【物理耐性】でいいだろ、これ。
こっちにも一応デモニカのカラーリング変更機能は付いてるけど、追加装甲が乗るから、あまり意味ないな。
なお、コズミックステイツの再現は現状不可能……トリガーホルダーだとね。というか40個のアストロスイッチの力を同時に発揮するとか、どう考えてもトリガーホルダーじゃ容量足りないんよ。それこそ専用のドライバーでも作らんと無理。
◆ ◆ ◆
【螺旋丸】の兵器化について。
【螺旋丸】の原理って、加速と圧縮を繰り返すそのやり方からして、実は霊子加速砲のそれと比較的似通っているのだ。よって、これを上手いこと応用して────霊子加速砲の性能を大幅に上げる事ができる……はず。
まず属性は電撃属性だな。僕の得意属性の一つという事もあるが、それ以上に純粋に“回転と相性がいい”。砲身内部のライフリングに沿って術式による仮想ダイナモを展開して、マグネタイトの圧縮回転と同時に発電を行い、加速を繰り返していく事により幾何級数的に出力を増大させ……………………最終的に砲身が破裂した。
まあ、こうなるかもなー……くらいには予想していた展開だから仕方ない。幸いな事に、試作砲の周囲に展開していた結界は壊れなかったので周辺被害はゼロだ。だが、それはそれとして出力を抑える……と高出力砲としての意味がないからな。
できるなら最大出力とはいかないまでも、相応の出力に耐え切れるだけの砲身強度を稼ぎたいものだ。
「うーむ……そうだな。セツニキ製【自己鍛造術式】なんてのがあったな。あれは確か術スレの過去ログ……あったあった、コイツだ。どれどれ……」
と、いうわけで出力に連動して砲身強度を上げていく仕組みを開発。これで砲身が砕ける事もなく高出力の砲撃ができるだろう。ただ一つ、急激に出力を上げ過ぎると砲身の自己鍛造が追い付かずに砲身が吹っ飛ぶ可能性があるからね、それだけは気を付ける必要があるな。
でもまあ、それはいいんだよ。
人魚ネキの件で、少々問題が発生しているらしい。
人魚ネキがいなくなると、寮周辺でいつも人魚ネキが歌っていた夢鎮めの歌がストップするため、寮で修行している連中の精神保護がマッハでヤバいのだとか。……まぁ、その気持ちは分からんでもないが、それはそれとしてその辺を決めるのは人魚ネキ当人だからな。
その辺は、人魚ネキが何も言わない限り、周囲がゴチャゴチャ騒いでも仕方ないだろう。事務課やガイア連合の各部署含め……そしてあるいは、人魚ネキに味方する側の意見も含めて、だ。
でもまあ、何もしないというのもよろしくない……今回みたいに、自分に出来そうな事を思いついてしまったら、特にだ。
と、いうわけで、自由が利く個人経営の技術者らしく、自分にできる事を一つずつやっていこうかね。
人魚ネキの件で一番問題になっているのは、そもそも人魚ネキの歌が現状、人魚ネキ当人にしか再現できず、真似事ができる者ですら限られているという一点に尽きる……なら、それができる者を増やしてしまえばいいのだ。
そんな事が簡単にできるのか、って?
もちろん、簡単ではない。
でも、不可能ではない……可能性だけなら。
と、いうわけで、人魚ネキの歌を再現できるシキガミを……それも可能な限り低コストで、作ってみようという話。
「ってなわけで、まずは材料作りからだ」
まずは、地霊コダマが湧く異界を用意します。無限マッカ製造異界を作った時の経験を生かして、電脳異界にするのが一番やりやすい。
これ自体は、別に難しい事じゃない。コダマそのものはメガテンでも一番序盤にしか出てこないような最底辺の悪魔だ。レベルも作品ごとに異なるとはいえ、どれだけ頑張っても10にも満たない。
なので上げましょうね~現状じゃ低過ぎるんじゃ。
メディアとヤンに手伝ってもらって異界の構造を苦労して調整、どうにかこうにかレベル32とかいう超高レベルなコダマが湧く電脳異界を作成しました、と。後は、湧いたコダマが即死して自動的にフォルマに変わる感じのギミックを作れば完成だ。
こうして、レベル32のコダマのフォルマがオートメーションで落ちてくる異界が完成。落成式には餅投げもやった。
後は、そこから採取した高レベルコダマ素材に加えて、妖鳥セイレーンのフォルマと、さらにそろそろ型落ちになりつつある『天使の子守唄』用のプレイヤーとレコード10枚をセットで突っ込んで……確か、人魚ネキの【子守歌】の再現には“歌”に加えて“夢”の権能が必要なんだったか。
じゃあ、これだけじゃ不安だな。ではコダマの時と同じ要領で、レベル30の夜魔ザントマンが湧く異界を作成。そうやって完成したフォルマを突っ込んでこれでようやく────シキガミ作成。コアにはショタオジ製の純正品を使ったから、成長性はそれなりに期待できるはず。
単純な音響操作や音楽能力に特化せずコダマ素材にこだわったのは、木霊という“音の再現”能力が欲しかったからだ。これで人魚ネキの歌声を模倣する事ができれば、人魚ネキの歌声を再現可能なシキガミの作成方法が技術として確立された事になる。
スキルカードには【子守歌】と一応【永眠の誘い】【睡眠ブースタ】【睡眠ハイブースタ】【歌唱】【音楽】【絶対音感】を突っ込んで音楽能力も相応に盛っておく事を忘れない。
さらにペルソナ能力を追加してペルソナカード『死神・サリエリ』を与えて、と……これに関しては音楽能力の補強というのに加え、モデルになったアントニオ・サリエリが史実において多くの弟子を育て大成させた優れた教育者であったのを勘案しての事。
権能として“音楽教師”という能力を持たせて、後進の音楽シキガミ達に対する教導役を担わせられればいいな、という期待。
ペルソナの形態がそのまんまFGOのサリエリ(第一再臨)である事、そして幼女ネキの残していったデータを基にオーバーソウルを習得させてみたところ、全身を覆う鎧のような形態となり、その姿がやはりそのまんまサリエリ(第三再臨)だったりしたのは置いとくとして。
よし。
これで声楽再現能力特化型シキガミType“山彦”、『幽谷響子』が完成。
素材にした『天使の子守唄』に記録されていた歌は効果も含めて一通り歌える事が確認されたのでヨシ。
後は、この子を人魚ネキのところに研修に出して、成果を出せればヨシ、なのだが。
…………人魚ネキの負担を逆に増やしてしまっている気がするが、とりあえず響子の歌が人魚ネキのそれを再現する事に成功すれば、人魚ネキにしか使えない独自技能のまま夢鎮めの歌声がインフラ化してしまい、人魚ネキの行動に枷を嵌めてしまっているこの現状も万事解決……する、はず。
なお。
「じゃあとりあえずレベル上げして能力向上目指そうか」みたいなノリで、修羅勢のペースでのレベリングに悲鳴を上げる響子が助けを求めて連絡してくるのをなだめるのに苦労する事になったのは、少々予想外だった。
~割とどうでもいい設定集~
・オーバーソウル
タマヤ与太郎様『【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策』より。
幼女ネキが開発した技術。
悪魔変身能力者やペルソナ使いが習得可能な“第二の選択肢”。
ペルソナの降魔や悪魔変身を行わず、精神の裡に宿したペルソナや未変身の悪魔変身先を兵装として具現化し、使役する。
・神砕雷
元ネタは『終わりのクロニクル』。
ゼウスの神雷を収束して圧縮鍛造、それを火山の権能で撃発して投射する超威力パイルバンカー。巨大ロボ用の特殊装備、というかぶっちゃけオーバードウェポン。
イカルガ用に設計されており、補助腕含めたイカルガの腕6本の内、片側3本を使用して保持する形で設計されており、専用の腕部追加装甲兼固定具が導入されている。
素の状態では反動だけでロボの半身が押し潰される危険物だが、雷と火山それぞれの権能がハイレベルに使えるなら制御は可能、といった代物。
・ガイアメモリ
タマヤ与太郎様『【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策』より。
宮城製の原作再現霊装。
現状、孔雀明王の浄化の権能を封じ込めたピーコックメモリに代表される特定の権能・能力を再現するためのメモリと、簡易シキガミてらほくんにバグズ型やM・O型テラフォーマーの能力を再現させるための生物型メモリの二種類が存在する。
・助手くん
てらほくんの一体。宮城支部から購入した力仕事用・試験用の個体であり、現在は無惨ニキのシキガミの一体であるダ・ヴィンチの護衛兼助手として活動している。
・トリガーホルダー
タマヤ与太郎様『【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策』より。
宮城支部で開発された原作再現霊装。
術式を組み込んだチップをメイン4、サブ4のスロットにセットする事により、術式を発動可能な戦闘補助霊装。
無惨ニキにより銃型、狙撃型、ロックマン特殊武器型、アストロスイッチが開発された。
銃型は拳銃型、突撃銃型、散弾銃型、擲弾砲型、機関砲型。
狙撃型はイーグレット、アイビス、ライトニングの3タイプ。
アストロスイッチは武装型と、基本のステイツチェンジに使う分を一揃い開発完了。ステイツチェンジは武装を展開するだけでなく、デモニカや悪魔変身形態のカラーリングも変更される。コズミックとかはトリガーホルダーの規格だとどうやっても無理なので未開発。
・幽谷響子
元ネタは『東方』シリーズ。
声楽再現能力特化型シキガミType“山彦”。単純に歌うためではなく、人魚ネキの歌を再現する事に特化したシキガミ。夢と歌の権能を組み込まれている。
また量産を視野に入れて、無理せず調達可能な素材だけを使って製造された先行量産試験型。ただしペルソナ『死神・サリエリ』だけは話が別で、これに関しては後続で生産される歌唱再現型シキガミ達の教導を行うために組み込まれた能力。
これにより、替えの利かない能力がインフラ化してしまった事により立場が束縛され掛けている人魚ネキの抱える諸問題を解決する事が目的。
現在は人魚ネキの下に研修に出されている。