ファッション無惨様のごちゃサマライフ   作:頓西南北

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今回は沖縄の話。


終末が約束されてるとか知らんけどスローライフする01

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 南国の楽園。

 太陽の光溢れるリゾート地帯。

 九州以北の普通の日本とは微妙に異なる琉球文化に、輝く海とサンゴ礁。

 

 沖縄と言われて抱く大雑把なイメージといえば、まあこんなものだろう。それは多分、ガイア連合の黒札であっても同じ事だ。

 

 

 では現実はどうかというと…………────。

 

 

「盾、構えぇえええええええええイ────!!! 【炎門の守護者(テルモピュライ・エノモタイア)】ァ!! これが! スパルタだァっ!!!!」

 

 

 異界の中に響くのは指揮を担うシキガミの野太い号令、その指揮に従って総数300体にも及ぶスパルトイ型アガシオンが隊列を組み、どっしりと足を踏ん張って一斉に盾を構える。分厚い霊鉄製のタワーシールドが規則正しくずらりと並び、人力で構築された一枚の壁────その表面に無数の爆炎や銃火が着弾して火花を散らすも、陣形は崩れず壁は揺るがない。

 

 

 ここは沖縄────異界『銃火暴風怨嗟域』。沖縄本島と重なり合うように存在するここは、戦後のGP上昇に伴って活性化を始めた大規模異界の一つ……という話になっているが実際には………………うん、まあ。あれだよ、あれ。

 太平洋戦争時に出た数多くの犠牲者の怨念が集まって生み出された異界に、某カルト組織が御丁寧にも大量のイケニエをカミカゼ特攻させる事で大事に大事に育て上げた、太平洋戦争オカルトサイドにおける最大級の負の遺産だ。

 なお、やらかしたクソカルトは尻尾を撒いて真っ先に逃げ出した模様。いてくれても害しかないっていうのは、許す理由にはならないんだよなぁ。

 

 見上げた空には赤黒い臓腑のような暗雲が渦巻き、半ば朽ち果てた木造建築の廃墟が並ぶゴーストタウンの町並みの至る所に、錆び付いた戦車や銃火器の残骸が無造作に転がっている中を、狂ったような鬨の声を上げて米軍や旧日本軍の恰好をしたゾンビだの悪霊だのの群れが突き進んでくる。

 

「銃、構え!! 撃てぇえええええええええええええええイ!!!!!!」

 

 並んだ盾の合間から突き出すのは無数の銃口────相模原に存在するガイア連合実銃同好会の工場によって生産された量産品、AK-47カラシニコフ・ガイアモデル。極寒のツンドラから砂漠地帯まで、ありとあらゆる過酷な状況でも当たり前に作動する信頼性と、ろくに訓練を受けられない少年兵でも十全に扱える簡便性を兼ね備えた傑作銃のコピーモデル。

 その銃身下部に銃剣を取り付けた長銃身が一斉に吐き出すのは、魚沼支部で量産が始まった氷結属性の銃弾、通称“魚沼弾”だ。

 

 『銃火暴風怨嗟域』において有効な属性は限られる。異界特有の効果によって、出現する悪魔には例外なく物理・火炎・衝撃耐性が付与される上に、破魔と治癒の発動は制限されるし、そもそも出現悪魔は屍鬼と悪霊のオンパレードだから基本的に呪殺は効かず、精神系も微妙。

 よって核熱やら重力やらのレア属性を除けば、有効なのは氷結と電撃。その中でも最も安価かつ大量に量産されているのが魚沼製の氷結弾だ。総数300を数えるスパルトイ(スパルタ兵)が構えた銃口から絶え間なく吐き出される氷結弾の雨霰は局所的なブリザードすら引き起こし、一時的にとはいえこの異界の中に吹き荒れる熱気と暴風すら押し退けて凍える程の寒気を発生させる。

 

 雪嵐にも似た銃撃は押し寄せる敵を巻き込むだけでなくその足元さえ凍結させ、凍り付いた敵の足が止まると同時に、スパルトイ達の陣列の後ろで待機していた俺『六軸ジーク』は悪魔変身を発動する。一気に膨れ上がる体躯によって生まれる影が、スパルトイ達が組んだ城壁のごときファランクスの陣形を上から覆うように広がっていき、やがてはそこまで広くもない街路の中央で渋滞を起こしている悪霊やゾンビの群れの元にも届いていく。

 

 『邪龍カドモス』────古代ギリシャの都市国家テーバイの建国王たる英傑。あるいは、その成れの果てである邪龍。

 

 テーバイの建国に先んじて軍神アレスの眷属であった大蛇を打ち殺したカドモスは、アレスの怒りを買い、8年の間アレスの奴隷となる罰を受ける。その後、テーバイを建国したカドモスはその身内の多くが神々の怒りを買って次々と死んでいき、晩年になってアレスの怒りが未だ解けていない事を知ったカドモスは、これ以上己の呪いに身内を巻き込まないため、妻ハルモニアーと共にテーバイを去り────そして最後にはかつて倒したアレスの眷属のように自身もまた大蛇と化し、やがてゼウスの手によって英雄達の楽園エリュシオンに招かれたという。

 

 その逸話が関係あるのか知らないが俺が変じた邪龍カドモス、その姿は『風都探偵』に登場した『ブラキオサウルス・ドーパント』そのもの。黒いガスを人型に押し込めたように胡乱な、しかし分厚い筋肉に覆われた肉体を、褪せた白骨にも似た外骨格が覆っている。

 ビルにも匹敵するその巨体の威容を目にしたゾンビや悪霊共だが、狂乱する彼らの姿には怯えて逃げる様子もなく、戦車砲や迫撃砲が邪龍の巨体へと着弾しては幾度も爆炎を散らしていく。

 

「……流石に痛いな。そう長くは当たっていてやれないか」

 

 大きく息を吸い込んでは吐き出す要領で、後頭部から伸びるブラキオサウルスの口腔から放たれるのは【放電ブレス】。電撃属性の範囲攻撃は本来であればそこまでの攻撃範囲を持たないものの、全長30メートルを越える巨体から放たれるブレスは体格相応の規模を持ち、押し寄せる屍鬼の群れの全てを巻き込んで余りある。

 

「敵の動きが止まったぞ!! 進め進め、スパルタ兵の意地を見せろォおおおおおおおお!!!!」

 

 感電によって敵の動きが止まると同時、レオニダスの号令を受けたスパルトイ達が重厚なファランクスの陣形を崩さないままに進撃する。盾の合間から突き出したカラシニコフの銃口から氷結弾を無駄なく正確に叩き込み、近付けば構えた盾の【パリィ】で受け止めながら、銃剣による【ブリッツリッター】での電撃属性が付与された切っ先で貫いて確実に敵を仕留めていく。

 

「うーん……どうにも、音がやかましいな」

 

 巨大過ぎて小回りの利かない悪魔変身を解除した俺は、ひっきりなしに鼓膜を震わせる騒音に思わず肩をすくめた。

 

「まあ、そういう異界なのだから仕方ありませんな!」

「そうとも言う……そういう君は、声がでかいけど」

「それこそ、そのように製造されたのだから仕方ありませんな!」

 

 大きく口を開けて豪快に笑うのは先程までスパルトイ達を指揮していた俺のシキガミ『レオニダス一世』、逆立った赤毛の髪をギリシャ式の兜に隠し、筋肉質な体躯を存分に曝してスパルトイ共を統率する。言語による意思疎通や術式構築を妨害する“方言札”による妨害は、搭載された【拡声】スキルによる相殺に加えて専用の対抗術式である反発歌呪符を装備している事で時間限定とはいえ防御でき、スパルトイの指揮にも問題はない。

 見た目オッサンなのは原作通り……スパルトイの指揮運用に特化したシキガミが欲しいと技術部のモルガンネキに相談したら、コイツが来た。まあ実際問題ファランクスを指揮するというならレオニダス以上のモチーフは存在しないって理解できるけどさ。

 

 うん、まあ。

 

 ともあれ。

 

「それより、掃除は終わりかな?」

 

 スパルトイ達が組み上げたファランクスの陣列の背後に鎮座しているのは、終末環境を見据えて製造されたガイア連合製のシキガミコア搭載車両『ジャパリバス』。ヒョウ柄の塗装が施された外装の上から分厚い増加装甲が施され、その下からネコミミ型の大型センサーが突き出した、車両としても随分と特徴的な形をしていた。

 機体後部には各種設備を搭載したトレーラーが接続されており、さらにその後方には大型の輸送用コンテナが連結されている。

 

「無論! 残敵の掃討も完了し、簡易シキガミからの航空偵察ですが、周辺に伏兵の類もなし。万全ですな!」

「分かった。じゃあカーゴ開放するから、周りのジャンクとか集めてきてくれ」

「承知いたしました!!」

 

 俺が声を掛けると、ジャパリバスの運転席に座したヌイグルミのような簡易シキガミが手元のコンソールを操作して、ジャパリバスの最後尾に連結された輸送用コンテナがゆっくりと展開する。レオニダスの指揮に従って忙しく動き回るスパルトイ達は、新たな敵の襲撃に警戒しながらも周辺に転がっていた兵器や武器のジャンクを拾い上げ、コンテナへと放り込んでいった。

 そしてコンテナが一杯になると、今度はトレーラー側面に設けられたカーゴスペースが展開し、その内側から多数のハンガーが展開する。レオニダスの号令に従って集合したスパルトイ達は順番にその身を折り畳み、ハンガーへとその身を固定、コンパクトに格納されたスパルトイで一杯になったハンガーはやがて、順次トレーラーへと格納されていった。

 沖縄支部でも何台か運用されている霊柩車モデルのベースになった代物だ。大量のスパルトイを収納して移動できる専用のキャリアーであり、異界化を利用した自動回復機能により収納されたスパルトイやその装備も軽い損傷なら修復でき、またそれも追いつかなくてもある程度は自動的に修復を行える簡易的な自動修理工房としても機能する。

 

 そして同時に。

 

「じゃ、さっさと帰ろうか。レオニダス、背後を頼むよ」

「承知いたしました、マスター!」

 

 俺とレオニダスが乗り込んだのを運転席の簡易シキガミが確認したのと同時、ジャパリバスに搭載された【トラエスト】が発動し、俺達は『銃火暴風怨嗟域』を抜けて本来の世界へと帰還した。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

【ステータス】

■六軸ジーク《Lv.32》

ステータス:魔・運重視型

耐性:破魔無効

[装備]:トニトルス、アトラス院制服、AK-47カラシニコフ・ガイアモデル、アセイミナイフ、携行型MAGバッテリー×3

(スキル)

・理導/開通:手で触れた物体の組成を瞬間的に解析し、対象の霊力・魔力を変質・同調させる事で最適な破壊を行う。敵単体に万能属性小ダメージの魔法攻撃。

・変成鉄腕:錬金術の応用により、自身の腕を瞬間的に金属化させる。敵単体に打撃属性ダメージの物理攻撃、または格闘打撃スキル使用時、その威力を上昇させる。

・暴れまくり:敵全体にランダムに複数回物理小ダメージ。

・ファイアブレス:一定範囲の敵に火炎属性ダメージ+炎上の物理攻撃。焼却範囲に豊穣の追加効果あり。

・ジオ系:自力習得したスキル。電撃魔法。適性高。マハジオンガまで使用可能。

・ハマ系:修行で習得したスキル。破魔魔法。適性低。マハンマまで使用可能。ただし結界術は得意。

・ディア系:自力習得したスキル。治癒魔法。適性高。メディアラマまで使用可能で、さらに豊穣および概念修復の追加効果あり。またリカームや大半の状態異常回復が使用可能。

・アイテム作成:様々なアイテムを作成可能。特に竜種由来の素材を加工する技能に長ける。

・使い魔作成:アガシオンなどの使い魔を作成可能。特にスパルトイ型アガシオンの製作に長ける。シキガミパーツの取り扱いも可能。

・悪魔変身《邪龍カドモス》《邪龍ファフニール》《龍神ゲンブ》《龍神イチモクレン》《龍王グローツラング》《龍王ワイバーン》《邪龍ワーム》《龍王ノヅチ》

・素材変換(体):悪魔変身形態に由来する様々な素材を自己生成可能。

・植物改造:植物の生態を改造し、新種を生み出す事が可能。

(パッシブ)

・破魔無効:破魔相性の属性ダメージ・状態異常を無効化する。悪魔変身形態の該当相性も上書きする。

・一部の活泉:最大HPに補正小。

・二部の魔脈:最大MPに補正。

・食いしばり:HP0の際、HP1で1度だけ踏みとどまる。

・電撃ブースタ:電撃属性ダメージへの補正。

・感電ブースタ:感電の発生率に補正。

・ガルバニズム:生体電流と霊力・生体マグネタイトの自在な転換、および蓄積が可能。魔風、魔光など実体のない攻撃を瞬時に電気へ変換し、周囲に放電することで無効化する。また蓄電の量に応じて肉体が強化され、ダメージ修復も迅速に行われるようになる。

(権能):イツァムナー、カドモス、ファフニール、ゲンブ、グローツラング

(一般スキル):ルーン魔術、錬金術、ウィッチクラフト、ギリシャ魔術、エジプト呪術、道術、結界作成、オカルト農業、地脈制御、異界管理、イワナガ流・中伝

(仲魔リスト):シキガミ レオニダス一世、妖魔アガシオン(偵察型)×3、スパルトイ型アガシオン×300

 

◆悪魔変身・邪龍カドモス

ステータス:筋・体偏重物理型

耐性:物理全般無効、火炎・衝撃・呪殺吸収、破魔弱点

(スキル)

・突撃:敵単体または攻撃軌道の直線上に物理ダメージ。

・ギガンフィスト:敵単体の打撃属性の物理攻撃。

・メガトンプレス:一定範囲の敵に打撃属性大ダメージの物理攻撃。

・アイスブレス:一定範囲の敵に氷結属性ダメージ+凍結の物理攻撃。

・放電ブレス:一定範囲の敵に電撃属性ダメージ+感電の物理攻撃。

・スパルトイ召喚:一時的にスパルトイを召喚する。召喚数はレベルに応じて変動する。

(パッシブ)

・巨体:物理攻撃力と最大HP、受けるダメージに補正。単体物理が一定範囲への攻撃に変化し、範囲物理の攻撃範囲が拡大する。

・生得武器(骨塊の右腕):右腕が巨大なハンマーのような形状になっている。格闘物理の攻撃力と攻撃範囲を増大させる。

・三部の活泉:最大HPに補正大。

・不屈の闘志:HP0の際、HP全快で踏みとどまる。

 

■シキガミ レオニダス一世《Lv.31》

ステータス:近・体重視物理型

耐性:物理全般無効、火炎・衝撃・呪殺吸収、精神・神経無効

[装備]:スパルタンスピア、スパルタンシールド、アセイミナイフ、スパルタンメイル、スパルタンヘルム、ギリギリブーメラン

(スキル)

・炎門の守護者:味方全体の防御力を限界まで上昇させる。さらに1ターン後、味方全体にチャージ効果。

・二段突:単体の敵に物理属性ダメージの物理攻撃。

・ブリッツリッター:ファランクススキル。槍により敵単体に物理・電撃複合属性ダメージ+感電の物理攻撃。

・チェンジステップ:ファランクススキル。槍により敵単体に剣撃属性小ダメージの物理攻撃+他列に移動。

・ラインガード:ファランクススキル。味方一列の受ける物理被ダメージを軽減する。自分のいる列であれば効果が上昇する。

・挑発:ファランクススキル。敵の攻撃を自身に集中させる。

・ディバイドガード:ファランクススキル。味方1体への攻撃を全て引き受ける。

・マハタルカジャ:広範囲の味方全体にタルカジャ効果。

・マハラクカジャ:広範囲の味方全体にラクカジャ効果。

(パッシブ)

・三分の活泉:最大HPに補正大。

・不屈の闘志:戦闘中に1回だけHP全快で踏みとどまる。

・殿の矜持(A):防衛戦・撤退戦などの不利な状況下において毎ターンマハラクカジャ効果。

・戦闘続行(A):戦闘中に1回だけ、HP1で3ターンの間踏みとどまる。

・三百の奮闘(A+):スパルトイを兵団として指揮・運用可能。戦闘続行の効果を配下のスパルトイ全体に付与し、自身の習得しているファランクススキルが配下のスパルトイ全体で使用可能となる。

・戦士の雄叫び(B):指揮下にある味方の士気を向上させ、指揮が通っている限り毎ターンマハタルカジャ・ペンパトラ効果。また言語伝達に対する妨害効果をある程度無効化する。

・ガーディアン:ファランクススキル。自身の物理攻撃耐性に補正大。

・槍マスタリー:ファランクススキル。槍の扱い方が本能的に理解でき、槍を装備可能。槍の攻撃力に補正小。他の各種槍スキルに派生する。銃剣にも有効。

・盾マスタリー:ファランクススキル。盾の扱い方が本能的に理解でき、盾を装備可能。盾の物理防御力に補正小。他の各種盾スキルに派生する。

・パリィ:ファランクススキル。一定確率で物理攻撃を無効化。

・マテリアルパリィ:ファランクススキル。一定確率で属性攻撃を無効化。

・警戒行進:ファランクススキル。周囲を警戒し、一定時間の間敵との遭遇率を低下させる。

(汎用スキル):槍術、盾術、格闘術、アナライズ、索敵、戦術、戦術指揮、連携、拡声、鼓舞、情報共有、霊体化

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 途端、世界が明るくなる。

 

 【トラエスト】による転移が終わった瞬間、まるで世界の方から押し寄せてくるようにして無数の色彩が眼前に溢れ出す。暗雲と炎に包まれた陰鬱な『銃火暴風怨嗟域』の中とは打って変わって、鮮明な陽光に照らし出された沖縄の海が、霊鉄の金網で補強されたジャパリバスの窓越しに広がっていた。

 

「……よし、今日も無事帰ってきたな」

「はっ、小破62、中破16、大破なし! 損耗は許容範囲でありますぞマスター!」

 

 侵入していたのは都合3時間程度……決して長い時間ではないが、しかしそれでも随分と長い間異界に潜っていた気がする。喉元から呪符を剥がし……異界ギミックの一つである方言札に対抗するための『反発歌呪符』も効果時間切れ間近で、半ば焼け焦げたように黒ずみ始めていた。

 地方史において方言札の施行と共に方言の使用がかえって盛んになったという歴史的事実を核に、異界内において言語機能を制限する方言札の効果を打ち消す代物ではあるが……いかんせん、作り手側のレベルが足りない。つまり、俺の事だが。

 

「ま、時間制限付きの消耗品でも使えるだけマシか」

 

 肩をすくめると、俺はジャパリバスの座席のシートへと背中を投げ出した。簡易シキガミが運転するジャパリバスは海岸から道路に出て、そのまま公道上を走っている。原型が猫耳付きサファリバス、しかも増加装甲に加えて連結したトレーラー部にはターレットに榴弾砲まで積んであるのだが、それが堂々と公道を走る事ができるのは車体そのものに【認識阻害】と【撮影妨害】を積んでいるからだ。

 

 

 そのまましばらくジャパリバスは道なりに走り、どこにでもあるような規模相応の田舎町の町並みを抜けて、郊外にある小さな板金工場へと辿り着く。門前に『六軸板金工業』の看板を掲げたここが、この沖縄における俺達の拠点────ガイア連合沖縄支部傘下、『ガイア連合大宜味村派出所』だった。

 

 併設された廃車置き場の駐車場へとバスを止めると、建屋の中から出てくるのは金髪の男性だ。少し太り気味な彼が、この工場の主であって────。

 

「ただいま、父さん」

「おおジーク、無事に帰ってきたようで何よりだな。飢餓属性の異界に潜ってきたなら腹も減っているだろう、ちょうど昼食にボンゴレ風味の海鮮スパゲッティが出来上がっているところだ。アツアツのベーコンとチーズを乗せたバゲットも用意してある。先に手洗いうがいを済ませたら、食事にしようじゃないか」

 

 俺の父であり、俺と同様の黒札である『六軸ゴルドルフ』だった。通称はゴッフニキ、ガイア連合内部では深夜の飯テロ配信でそこそこ有名になっているらしい、錬金術系の海外魔術師の家系出身という割と珍しい出自の日系ドイツ人(帰化済み)だ。

 そして同時に、この六軸板金工業の経営者であり、並びにガイア連合大宜味村派出所の運営者だ。

 

 そして、その隣に立っているのが。

 

「ただいま、ユウユウさん」

「お帰りなさい、ジークさん。いっその事、お母さんと呼んでくれても構いませんよ」

「……まあ、視野に入れておきます」

 

 父さんの嫁シキガミであるユウユウさんだ。基本的に父さんの護衛を主眼に置いた戦闘特化・魔法型のシキガミではあるのだが、火炎属性に特化しているため、『銃火暴風怨嗟域』の中ではあまり活躍できないのが痛い……父さんが『銃火暴風怨嗟域』の探索に参加しない、最大の理由である。

 

「ふふ、早めによろしくね」

「うむ、息子と嫁の仲が良いのは何よりだな。さて、それでは手早く作業を済ませてしまうとしよう。お前達!」

 

 父さんが軽く両手を叩くと、建屋の奥からぞろぞろと現れるのはピットクルータイプの作業用アガシオン達だ。十数体という結構な数だが、派出所の建物からのバックアップが効いているこの敷地内に限ってなら、大した消費もなしに比較的自由に運用する事ができる。

 動き回るアガシオン達はそれぞれが数体ずつ組になり、ある群れはジャパリバスの増加装甲を外して中の整備に取り掛かり、別の群れは壷中天式のコンテナを開けて、中に回収してきたジャンクの類を次々と運び出していく。

 

「それじゃあ、報告は優雅なランチを食べながら聞くとしよう。要点を掴んで、簡潔にな」

「了解。それじゃ手洗ってくるよ」

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 と、いうわけで。

 

「やはり、氷結弾の消費が激しいか」

「だね。物理が通りづらい以上どうしても通常攻撃は銃、それも氷結弾メインになるし、そもそも連射式のアサルトライフルだし、いっつもフルオートで馬鹿撃ちしてるわけじゃないって言っても、敵が物量で来る以上は撃たなきゃならない時ってどうしても出てくるし」

 

 普段と大して変わらない報告の後、ボンゴレソースの中に沈んでいたホタテを口に放り込みながら、俺は今日の探索の所感を語る。

 

「一応、こっちでも壷中天で弾薬ドングリの生産には取り掛かってるんだよね」

「うむ。……とはいえ火栗を原種とする弾薬ドングリは、氷の概念とはあまり相性が良いとは言えんからな。加えて氷結弾の素材は植物の育たない“冬”の概念だ、生産性はどうしても落ちる。当分、仕入れは魚沼からの輸入に頼るしかないだろうな」

「うーん、まあ仕方ないか。弾薬費は嵩むけど、払えないって程じゃないし」

 

 それに、こっちからもそれなりに支払うものはある。『銃火暴風怨嗟域』から回収してきたジャンクは、その成り立ちからして爆炎と爆風、ついでに呪殺に対して、霊的な属性がこの上なくシンクロするのだ。これを素材にすれば、氷の属性を帯びた悪魔が出現しやすい魚沼で有効な火炎弾を比較的簡単に量産できる。

 

「氷結弾は安値で取引してもらってるけど、それって向こうの善意でやってくれてる事だからね」

「うむ。好意を受けられるのは良い事ではある、が、それに甘えるのは許されんからな」

 

 そうやって生産した火炎弾の大半は、氷結弾の対価として魚沼に送っている。対価として出せるものがあるっていうのは、幸いな事だったな。

 

「それにしても、やはり動力炉への負荷が大きいな。敵も多かったか」

「ああ。結構数が多かったからね。一回だけだけれど、そんなにキツかった?」

「うむ。ジャパリバスに搭載した『試製五行炉・理論実証機』は、まだまだ理論レベルの試作品だからな。探求ネキも今の段階ではまだまだ素材が足りないと言っていた事だし、二度三度と使っていけばそうもなるだろう」

 

 肩をすくめた父さんは、パスタの麺を丁寧にフォークに巻いて口に運ぶ。日本育ちの俺とは違い、メシア教会の迫害から逃げてきたとはいえ資産家の産まれである父さんの所作は行き届いている。その辺はテーブルマナーとかそういう細かい分野にもしっかりと現れていて、だから交渉事なんかは基本的に父さんの担当だったりする。

 

「そうか……危ないならスパルトイの数は減らした方がいいかな?」

「まあ確かに増やす事を推奨はできんが、さりとて現状そこまで追い詰められている訳でもない。懸念を忘れるのは良くないが、それに囚われて何もできなくなるのはもっと良くない。状況は考えて、しかし必要なら躊躇わず使いなさい」

「了解。ちゃんと帰ってくるよ」

 

 うん、まあ。

 

 いい関係じゃないか、と思うんだ。

 

 ともあれ。

 

 本題に入るとしよう。

 

「それで、だけど。今回の探索で観測データも揃ったから、“頭蓋骨”の位置も分かると思う」

「ふむ、となると……」

 

 頭蓋骨────太平洋戦争のオカルトサイドにおける最大規模の負の遺産である大規模異界『銃火暴風怨嗟域』におけるギミックの一つ。元は太平洋戦争の戦死者の遺骨の中でも、爆撃や再開発、米軍基地作成などに巻き込まれて二度と弔えなくなり掛けていたものを、異界を封印抑制している神格ニライカナイが異界に呼び込んだもの。

 方言札と共に異界内部に散らばったこれらを異界外に持ち出して弔う事により、内部に閉じ込められた人々の魂を開放し、異界の主である集合怨霊の弱体化が狙える、と。

 

 だが、大抵は『銃火暴風怨嗟域』の中に無造作に落ちている頭蓋骨が、この辺では一切見つからなかったのだった。おそらくは、どこかに隠されていると俺達は予測しており、異界内を動き回ってひたすら観測データを集めた結果が。

 

「ああ。間違いない、頭蓋骨の位置は根謝銘グスク跡だ」

「だろうな。まあ想像はしておったが」

 

 大宜味村の中でも、まあ一番有り得そうなスポット。大宜味村にも城跡はいくつかあるが、しかしその中でも一番規模が大きいのは根謝銘グスク。何となれば、集落の神祭を執り行うための祭祀場である神アサギや御嶽(うたき)の遺構まで残っているのだ。

 ここが違っていたら、まあ他はないだろう。それくらいには分かりやすい。

 

「じゃあ、これからはその辺の攻略を目指していくって事で」

「うむ。無理はしないように、確実に、慎重にな。……それで、攻略にあたって何か不足しているものはあるかね? 思い当たる事があるなら言ってみるといい」

「うーん……そうだね、そろそろ本格的に嫁シキガミが欲しいかなって具合だけど」

 

 俺に嫁シキガミはいない。

 

 まだ。

 

 その為に使うマッカは、レオニダスとジャパリバスが全部持ってったので。

 

 

 悲しい。

 

 

「黒札ならその辺の金は自分で貯めなさい。いいね」

「分かってるって、当たり前だろ」

 

 別にホモというわけでもないからして、父さんとユウユウさんの仲を見ていると割と本気で羨ましくなってくるわけで。だからまあ、しばらくはそのために頑張ろう。幸いにもスパルトイ型アガシオンの生産やら何やらで資金調達の手段はある。

 この御時世、今の日本でスパルトイ型アガシオンの需要なんていくらでもあるのだから。

 

 …………まあ、他に必要なものが湧いて出てそっちを買わなきゃならない可能性もあるのだが。

 

 そんな具合に頭を悩ませていると、正式シキガミではあるが嫁ではないレオニダスが手を挙げた。

 

「私からもよろしいでしょうか?」

「うむ、前線指揮官からの進言は貴重だ。構わないから言ってみなさい」

「では失礼して。……騎兵隊、あるいは軽歩兵の役割の担い手が、必要かと」

 

 ファランクス戦術における重装歩兵の隊列は強力だが、同時に緻密な列を揃えて密集隊形を組むため動きは鈍く、側面や背面を衝かれると脆く、騎兵や軽歩兵、補助兵との連携を必要としていた。

 レオニダスはこの弱点を【警戒進軍】スキルを利用したり異界内の街路や建物を頼ったりして巧みにカバーしているし、時にはジャパリバスのターレットからの援護射撃や、俺自身が前に出る事でフォローもできるが、それだけでは間に合わない事もあるわけで。

 

「ふーむ……やっぱり、ここはシキガミが欲しいところだけれど」

「それより先にイヌガミやクダを考えるべきだろうな。そしてそれ以前に、アガシオンを作るのが一番堅実だろうがな」

「ですよねー」

 

 結局、そういう話になってしまうのであるが。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 食後。

 

 台所の片付けをユウユウさんに任せ、父さんは工場の作業場内でジャパリバスの整備に取り掛かる一反木綿型シキガミ達を監督していた。

 

 整備中のジャパリバスからは後部に接続されていたカーゴやトレーラー部分が切り離されており、外付けされていた装甲板やその下にある本来の外装まで取り外されて、内部構造を露わにしていた。

 トレーラーの内部に収納されていたハンガーも残らず解放されており、最大限にコンパクトに折り畳まれた姿勢でぶら下がるようにラックに接続されていたスパルトイ型アガシオン達が一体ずつ切り離されては整列し、整備場の脇に設けられたシャワールームへとレオニダスの誘導に従って順序良く入っては、『銃火暴風怨嗟域』内部での戦闘や探索で浴びた穢れを霊水のシャワーで洗い流していく。

 

 後は、シャワーから出てきたアガシオン達を乾燥させたら一体一体に軽く【ディア】を掛けて修復していく。深刻な損傷を受けた個体もいないから、今回はこれで十分、作業終了だ。一仕事終えた俺は、大きく背伸びをして息を整えると、未だ仕事中の父さんの様子を見やる。

 

 父さんはトレーラーから取り外された『試製五行炉・理論実証機』の整備と調整に掛かり切りになっている。300体にも及ぶ多数のスパルトイ型を運用するためのマグネタイト動力炉ではあるのだが、あれは元々、技術部のデータベースに探求ネキがアップロードした“こうすればオカルト的な理論で動力炉が作れるんじゃね?”的な論文を元に、今ある技術でどうにかこうにかでっち上げた代物だ。

 吸気口に【火炎吸収】【衝撃吸収】のスキルカードを組み込み、『銃火暴風怨嗟域』の異界内に吹き荒れる業火と暴風を吸収した上で、そのエネルギーを内部で五行理論に基づいて循環させる事で増幅し、動力マグネタイトに変換する大型炉であって……物理的にも術式的にもかなり無理の多い構造をしているからすぐに負荷が溜まるし、整備も大変だ。

 今頃、その探求ネキ本人が正式な五行炉の開発に取り掛かっているらしく、俺達が使っているあの試製五行炉の稼働データも探求ネキのところへと送られているから、何かしら参考になってくれればいいのだが。

 

「……あの様子だと、午後一杯は掛かるかな」

 

 父さんが指揮するシキガミ達は、見た目は簡素な白い一反木綿……いわゆるフンドシ型ではあるものの、あれらは簡易シキガミではあるが標準的に【メカニック】スキルが組み込まれており、休まず文句も言わず熟練工並みの働きができる労働者だ。

 俺一人が割って入ってもあまり役には立たないし、むしろ邪魔になる……まあ、俺は俺の仕事を、着実にこなしていこう。

 

 

 

   ◆    ◆    ◆

 

 

 

 作業場から離れ、場を移した俺が移動したのはどこか学校の理科室にも似た雰囲気の小工房。

 

「んじゃ、作業始めるとしますかね」

 

 早速クラフトの時間、まずは素材の用意から。

 

 ぐっと軽く手に力を籠めると、掌の皮膚には薄氷のように薄い鱗が浮かび上がり、手を広げると共にぱりぱりと剥がれて、卓上の薬包紙が敷かれたペトリ皿へと落ちていく。続いて同じ要領で口の中をもごもごと数度動かしてやれば、何かが外れた感触と共に、ごろりと掌の上に転がるのは鋭く尖った竜の牙だ。

 限定的な悪魔変身を応用した素材調達法……まあ、そこまで珍しい技でもない。吐き出した竜の牙の表面をハンカチで軽く拭いて、これもペトリ皿へと落とす。

 

 とりあえず、基本的な材料となる肉体素材の採取はこれでOK。

 

 後は霧吹きで水を二、三回吹いて軽く祝詞を唱え、その辺のペン立てに立てておいた裁ちバサミを皿の上でジャキンジャキン数回開閉して鳴らし、また祝詞を唱え。可能な限り簡略化した悪縁流しと縁切りの儀式……このレベルの儀式でも、ガイア連合基準で問題ないレベルの縁切りができるのは、単純に道具が優秀だから。

 霧吹きはショタオジ謹製だし、ハサミは製造班古参の刀鍛冶系俺らである晴彦ニキが打った短刀を鍛え直したものだからな。

 

 で、このプロセスを繰り返す都度、ざっと20回。俺の肉体素材でもある竜の牙と鱗を盛り合わせにした、都合20皿のペトリ皿が作業机の上に並んでいる。

 

「で、後は……と」

 

 戸棚に仕舞ってある桐箱を取り出し、その中に納められた位牌を脇の卓に置き、その前に置いた線香に火をつけて軽く経文を唱え、ブランクのスキルカードの束から一枚、白紙のカードを抜いて位牌へと翳せば…………数分ほどかけて、位牌に籠った残留思念から読み出した記憶────汎用スキル【機動隊員技術セット】がカードに転写されていく。

 元々、警察で機動隊員として働いていた老人の魂を祀った位牌だ。降霊術を使えば、その位牌から記憶を読み出し、スキルカードとして転写する事ができる。

 現代日本において盾という武器に秀でた戦闘員の技能を組み込んだこれは前衛物理の耐久要員としてのスパルトイ型とも相性が良く、通常のスパルトイ型に搭載される【戦士基本セット】への追加MODだ。

 

 そんな代物が何でこんなところに置かれているかといえば、ぶっちゃけ警察関係“俺ら”とか、後は警察絡みの裏ルートと繋がりが深い名家からの横流しだったりする。とはいえ警察系俺らが持ち込んだ分に関しては、生前の本人にしっかり事情を話して承諾を取ってあるから問題ない……名家の方は知らん。

 他にもヤクザ、自衛隊員、旧日本軍の軍人さん、またレアなものなら戦国時代の侍や幕末の人斬りなんかのバリエーションもあるが……他はともかくとして、旧日本兵のスキルカードを今の沖縄に持ち込むのはちょっとリスキーだから、その辺は厳重注意だ。

 

 んで、後は【戦士基本セット】に加えて安価で売られている【突撃】に、俺自身から転写した耐性スキルを劣化・軽量化させた【火炎耐性】【衝撃耐性】【呪殺耐性】も用意して、これも各20枚セット。

 

 ともあれ、これでスキルカードも揃ったからして。

 

 三脚の上に置かれたビーカーに溶媒となる霊水を注ぎ、その中にペトリ皿の竜素材を沈めてから、アルコールランプに着火して加熱スタート。さらに外から【ディア】を掛けて概念を補完しつつ、スキルカードを溶かし込んで掻き混ぜ、しばらく加熱を続け。

 これを20セット分、ビーカーを並べて同時進行で加熱し続ける事、およそ1時間ほど。ただ加熱するだけでなく、20個のビーカーの内側に渦巻く概念に干渉して方向性を操作しながら、カタチを作り上げていく。

 

 そうして、中に構築されていく霊基がスパルトイのそれをベースとしたアガシオンとして完成したら、どろりと濁った溶液ごと呪鉄製の小壺へと流し込んで、と。実際に外に出して一通りの動作確認を行って瑕疵がない事を確認したら封魔管に収納、改めて呪符で封をして終了だ。

 出来上がったアガシオンはガイア連合沖縄支部へと出荷され、沖縄支部の戦力となったり、あるいは日本全国のガイア連合に所属する構成員へとそこそこの値段で売り捌かれたりする。

 

 大体これを一日20セット…………これがこの大宜味村派出所の資金源であり、そしてその六割ほどが俺の財産になるわけだ。残りは派出所の資産とか積立金とか、その辺。

 

 まあ結構な金にはなるんだが、2体目のシキガミを買うにはまだまだ足りない。

 

「通常型のアガシオンも作り足しておくか…………嫁シキガミ、早く欲しいな」

 

 焦っても仕方ないって、分かってるんだけどな。

 

 




 隊列を組んで行進するスパルトイ軍団と、その後ろから歩いてくる巨大邪龍……ラスボス戦かな?


 ジーク君のコテハン『ブラキオニキ』を出す隙がなかった件。


 ジャパリバスに格納されるスパルトイ軍団のイメージは、スターウォーズのエピソード1に登場した通商連合のバトル・ドロイドと装甲車のイメージ。


 シキガミが男性型のためジーク君にホモ疑惑が持ち上がったと聞いたモルガンネキは、ちょっと後悔してシキガミの性能をサービスしてあげたとか何とか。




~割とどうでもいい設定集~



・六軸ジーク
 今回の主人公。
 見た目は『Fate/Apocrypha』よりジーク。
 製造班に所属する黒札で、アガシオンの製造、特にスパルトイ型アガシオンの製造を得意としている。通称は『ブラキオニキ』。
 本霊はイツァムナー。
 複数形態に変身可能なデビルシフターでもあるのだが、変身先がほぼ例外なく全長数十メートルもある巨大な龍神・龍王・邪龍ばかりにしか適性がなく、基本ランダムダンジョンである修行用異界で屋内型や洞窟型を引くと、ほとんど何もできなくなってしまう。
 このため、山梨から広大な内部空間を持つ大規模異界を抱える沖縄へと引っ越してきた。

・邪龍カドモス
 ジークの変身先の一つ。
 見た目完全にブラキオサウルス・ドーパントで、全長三十メートルという巨体でビルよりデカい。
 古代ギリシャの都市国家テーバイの建国王。軍神アレスの眷属であった竜蛇を打ち倒した事でアレスの怒りを買い、呪われて、最後には自身も竜蛇となって姿を消した。
 アレスの竜蛇を倒した際に、その牙を地に撒いてスパルトイを最初に生み出した人間でもあり、このため生体素材がスパルトイ型の材料として最高の相性を持つ。また元ネタのように自身でスパルトイを生み出す能力も持ち合わせている。

・レオニダス一世
 元ネタは『Fate』シリーズ。
 ジークのシキガミ。
 モルガンネキ謹製の英傑シキガミ、その最初期の個体。
 スパルトイ型アガシオンの指揮統制に特化した機能を搭載されている。
 スパルトイの指揮ユニットが欲しいとモルガンネキに相談したところ、スパルトイ→スパルタ→レオニダスという連想ゲームからコイツが製造された。
 製造の際に誰かが原作再現した世界樹の迷宮の『槍マスタリー』『盾マスタリー』のスキルを組み込まれており、これが成長する事でファランクスのスキルを獲得している。さらにファランクスのスキルを配下のスパルトイに使わせる事ができるため、それをスパルタ名物ファランクス戦術と組み合わせる事で、軍団全体でバフを重ねる事により法外な集団戦闘能力を発揮する。

・ジャパリバス
 塵塚怪翁様『【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法』で紹介されたデモニカ車両。
 『けものフレンズ』のジャパリバスだが、『銃火暴風怨嗟域』での運用を前提として、増加装甲を施し、後部トレーラーを換装し、試製五行炉・理論実証機を搭載し、またスパルトイ型アガシオンを収納するハンガーを多数搭載し、スパルトイを運用するための母艦として改装されている。
 このため、ネコミミ以外の原型がほとんど残っていない。
 『銃火暴風怨嗟域』への出入りのため【トラエスト】、公道を走るために【認識阻害】と【撮影妨害】のスキルが搭載されている。

・六軸ゴルドルフ
 元ネタは『Fate』シリーズ。新所長、または聖杯戦争に脱落してからが本番の人。
 ガイア連合に所属する黒札であり、ジークの父親。ガイア連合大宜味村派出所の所長で経営・交渉担当。通称は『ゴッフニキ』。
 日系ドイツ人のハーフで、錬金術系の海外魔術師の系譜という珍しい出自の持ち主であり、元は製造班の所属。ガイア連合に錬金術のノウハウを持ち込んだ内の一人。
 メシア教会の迫害から逃れて日本に引っ越してきたドイツ系錬金術師と、引っ越し先の現地女性の間に産まれたハーフ。なお沖縄は地元。
 メカニックとしての技能も持ち、普段から試製五行炉やジャパリバスの整備なども担当している。また料理やら運転やらアウトドアやら色々と多様な技能を持ち合わせている。

・ユウユウ
 元ネタは『Fate』。楊貴妃。
 ゴッフニキの嫁シキガミ。
 護衛を主眼に置いた戦闘タイプ。基本的に元ネタ通り火炎属性魔法に特化、サブとして精神・呪殺をプラスした魔法型なので、『銃火暴風怨嗟域』ではあまり役に立たない。
 『銃火暴風怨嗟域』でも使えるスキルの獲得を目指して、現在ゴッフニキが金策中。

・試製五行炉・理論実証機
 ジャパリバスに搭載された炉心。大量のアガシオンを召喚するための動力源として機能する。
 探求ネキがまだ五行炉を開発していなかった時代に、探求ネキが技術部のデータベースにアップしたまだ理論レベルだった五行炉についての論文を元に作成された炉心。
 将来的に形になる五行炉と比べ、理論的にはまだまだ粗が多く、構造も洗練されていない。また本来の五行炉と異なり、【火炎吸収】【衝撃吸収】を組み込む事で無理矢理作動させているため、構造的にもかなり無理が多いし、そもそも『銃火暴風怨嗟域』の中でしか稼働しないという代物。
 稼働データは逐一探求ネキの元に送られており、完全版の五行器が完成した暁にはそちらと差し替えになる予定。

・ガイア連合・大宜味村派出所
 沖縄の片隅、大宜味村に存在する小さな派出所。小さな、と言いつつ敷地面積に関しては派出所としては結構広く、また黒札も二人所属している。
 表向きは六軸板金工業という自動車修理工場。
 主な役割は後方における生産拠点で、主産業はスパルトイ型をメインとするアガシオン生産。またオーダーメイドすればデモニカやデモニカ車両なども製造してくれる。
 他にも霊的農業や漁業にも手を出しており、海に面した立地から地味に幾つかの出島も抱えている。

・銃火暴風怨嗟域
 血涙鬼・彼岸様『凡庸でありふれた転生者達の小話』より。
 沖縄に存在する、最も新しい大規模異界。太平洋戦争時の犠牲者たちの膨大な怨念や負の思念によって生み出された。
 太平洋戦争当時の沖縄が再現された内部では爆炎と爆風が常時吹き荒れ、銃弾が飛び交う中で大量のゾンビや悪霊が殺し合うリアル地獄絵図。
 異界特性により出現悪魔に対しては物理・火炎・衝撃耐性が付与、さらに破魔・治癒が無効化され、方言札により言語による意思疎通や術式構築が制限、飢餓特性により食物は朽ち果てる、と、とにかく侵入者の選択肢を潰していくギミックが特徴的。

 本来は規模も危険性もそこまで大きなものではなかったのだが、地元霊能者集団への根切りのついでとばかりに某カルト集団が無策かつ無思慮に突貫しては手に負えなくなって撤退するまで、地雷原に埋まっている地雷をタップダンスしながら一つ残らず踏んでいくがごとき盛大な自爆をやらかした事で、他地方の大規模異界と並ぶ神話規模の代物にまで発達してしまった。

・AK-47カラシニコフ・ガイアモデル
 世界で一番くらいに有名なアサルトライフルのコピーモデル。実銃同好会の工場で生産されたもの。
 異界攻略を目的として、銃器系修羅の類ではない一般的な黒札が使う銃火器として、まず間違いなくベストチョイスの名銃。
 多種多様な環境条件を持つ異界を攻略するにあたって、極寒のツンドラから灼熱の砂漠まで問題なく稼働する耐久性は必須。自衛隊での訓練を受けたにしても付け焼刃であるため、少年兵でも問題なく運用できるだけの扱いやすさも重要。また、面倒臭くなって整備をサボるヤツとか絶対出てくるため、そういった面でも比較的問題なく撃てる整備面における耐久性もあって困るものではない。
 これ以上条件が揃っている理想的な銃器などそうそうあるわけもなく、ぶっちゃけカオ転の世界だとこれ使ったら他の銃が一生使えなくなるくらいには優秀だと思われ。

・スパルトイ型アガシオン
 血涙鬼・彼岸様『凡庸でありふれた転生者達の小話』より。
 ガイア連合製アガシオンのバリエーションの一つ。
 性能的には耐久寄りの前衛物理型アガシオン。物理耐性持ちの弱点なしという時点で、壁として十分以上に優秀ながら、魔力が低いため魔法攻撃に対してはそこまで強くないのが難点。
 本来はギリシャ系魔術によって使役されるスパルトイを、アガシオンを基盤とする事で誰でも扱えるくらいにダウングレードさせつつ成長性を追加したもの。なお成長性そのものは通常型のアガシオンと比べると低い部類に属する。
 なお基礎能力の向上のため、アガシオンとしては本来標準装備の『小瓶や指輪、洋燈などに封じられて主人の命令でそこから出てくる』能力をオミットされているため、実際の運用には封魔管による召喚術の習得がほとんど必須となっている。

・反発歌呪符
 史実の沖縄において方言札制度が施行されるにあたって、かえって内部での方言使用が盛んになった例も存在し、「方言取締令」を出した沖縄県立第一中学校長の山口沢之助の名前から「大和口 札取る毎に思うかな 方言の札はやめ沢之助」という反発歌が貼り出された逸話まで存在する。
 その逸話を元に「方言札が存在する事で方言使用が加速する」という論証として、方言札の呪詛を緩和・軽減する術式。
 開発はゴッフニキ、製造はジーク。
 『銃火暴風怨嗟域』における対方言札のピンポイントなメタ装備だが、作成には相応のレベルと素材が必要。

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