みかん県の話です。
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ガイア連合ラピュタ支部を衛星軌道に打ち上げた、ちょうど同じ頃。
四国霊道環状線の建造に関わる一環として、四国にもう一つ支部を建てる事になった。
場所は愛媛県。
ガイア連合愛媛支部の誕生である。実に素晴らしい。ちょうど瀬戸内海の対岸に位置する呉や広島といった大型支部が存在しているため、そちらへの連絡拠点としての性質を持ち、また四国霊道環状線の存在も加えて実質的に交通の要所といえる。
お隣には銀時ニキが采配する香川支部なんかが存在しており、そちらとの連携も考えていく必要があるな。ひとまず、守護者としてシキガミの一体である比那名居天子に常駐してもらい、看板として活動してもらう。
僕のシキガミとしては少ない、純粋な戦闘型のシキガミだからね。結構強いし、戦力的には不安はない。
それと並行して愛媛県出身の黒札達と連絡を取り、一通り人員を取りまとめていく。とりあえず強いのは原作再現系ゼンラーのベヨネキと、全刀流使いのメシアンスレイヤーな人誅ニキ、爆殺系ペルソナ使いの手首フェチニキ、大剣使いなのにサイレントキリングが得意な再不斬ニキか。
同時に素行に問題がなく余計な紐が付いていないフリーの銀札・銅札の異能者をピックアップして、その辺にも過剰にならない程度に軽く支援を行っておく。
ともあれ四国霊道環状線の建設に合わせ、偶然に交流を持った地元名家『風花家』の工作によって始まったJR松山駅とその周辺地区の再開発工事に紛れて支部建設が開始され、建設される駅ビルのテナントのいくつかを隠れ蓑にする形で支部が建設された。
この駅ビルを基点に、松山市全域を守護する泡状結界が展開される予定。
また支部の地下部分にはラピュタに転移するための大型ターミナルを配置した。
支部の管理システムは情報制御特化型シキガミ群『ヴェリタス』が管理するラピュタのそれをそのまま流用するが、管理用シキガミそれ自体は新造する。このままヴェリタスに任せる形だと彼女達の負担がひたすら増えていくのは目に見えているし、何よりラピュタとの通信経路が断たれた時が怖いので。
と、いうわけでシキガミのモデルは『御城プロジェクト:RE』に登場する『[肝試し]伊予松山城』で。松山市に存在する城をモデルにした城娘だからね。シキガミとしての正式名称は“伊代子”になるかな。
槍を主兵装とするが、ステータス的には物理型というよりはカジャ・ンダ系統の範囲バフ・デバフを主眼に置いた集団補助スキルをメインにした指揮型シキガミで、またブフ・ムド系統の攻撃魔法や【サバトマ】【ネクロマ】などを備えた万能選手。
まあ基本、多数の配下を引き連れて後ろから援護する後衛型だ。物理・魔法を問わず攻撃用のスキルはあくまでも自衛のためのもので、本分は補助にあると割り切った形だが……それでも大半の現地民異能者よりも強いんだよなあ。
しばらくはヴェリタスの補助を受けながら経験を積み、最終的には彼女が松山支部とその周辺、クライナーの運行管理なども担当する予定だ。
さて、愛媛支部の現地民向けの窓口となるのは駅ビル2階から渡り廊下で接続された冠婚葬祭センターで、これは現地民異能者との交流を前提に、坊主や巫女などなど宗教色濃厚な恰好をした人間が日常的に出入りしていても違和感がないように配慮したもの。
表の主要業務である葬儀は日本じゃほぼほぼ坊主の仕事だからな。その一方で結婚式は教会の仕事だが、そちらからメシア教会をどうやって排除していくかが難しいところだ。冠婚葬祭センターの建設が決定したその翌日には、向こうから押し掛けてきたからな。
人員の派遣、教会施設の設置、果ては運営への関与まで厚かましくも提案してきた……全部お断りしたけどな。現状、何をどうやっても信用できないので。
穏健派として地方の片隅に小さな教会を作って大人しくしているくらいなら許すが警戒と監視の目は外さないし、信用が必要な役職を与える事もない。ましてやガイア連合支部の運営への口出しなど絶対に許さない。許すわけにはいかない。
「メシア教会を信用するとか絶対無理。無理の無理。略して絶無」
「そうなの?」
「そうだよ」
などという会話を他の黒札としたのは、駅ビル内をこっそり異界化して作られた一般人御断り・黒札専用のカフェテリアでの話。
例えば新潟の鑑定ニキなんかは、信仰は尊ばれるべき個人の自由であって侵害する事は許されないし、またメシア教会だからといって誰彼構わず排除しようとすべきではなく個々人の人格や行動を見て判断すべし……などと言っているが、僕からすればメシア教会は「組織としても、宗教としても信用できない」。というかそれ以前に「宗教を名乗る資格がない」。
過激派と穏健派に分かれていても、どっちも等しくアウトだ。確かにアイツら別派閥として別れて殺し合ってこそいるものの、そんなのは気を許す根拠にならない。
「穏健派も過激派も確かに戦ってこそいるけどな、あいつらお互いにお互いを異端認定とかそういう事を一切していないんだぜ」
「ああー、なるほど」
「宗教裁判も異端審問も魔女狩りも何一つやっておらず、過激派はあくまでも“メシア教会内の過激派という一派閥”という扱いのまま、過激派の行いはメシア教会内のルール内において何一つ異端と認定されるべきものではないって事だ……穏健派にとっても、ね。確かに戦争しているのは事実だけど、それはあくまでも人間を主体とした“過激派”と“穏健派”という集団の争いであって、その二つが等しく天使共の下部組織である以上、天使共が組織的に調停に入ればいつでも終戦に持ち込める程度のものでしかない」
そんな組織を信用できるか……当然、ノーだ。信用を得たいのであれば、まずはやるべき事をやってくれなけりゃ、ねえ。
具体的には、第一にメシア教会の名においてメシア教会過激派という組織に対して正式に異端認定を下し、それを内外に公示する事。そして第二に、過激派の行いがメシア教会の教義に反する悪行であると、メシア教会そのものの教義・教理に基づいて矛盾なく証明する事だ。
少なくとも、十字教や仏教であれば何一つ問題なくそれができる。何せ数千年以上に渡って数々の異端や異教と、武力だけでなく論理と法理で殴り合ってきた連中……とりわけ十字教など、イエス=キリストが地上を去った数年後には既にグノーシス派と殴り合いを始めていたくらいの連中だ。病気を癒すだの食品を増やすだのとかいった神の奇跡を起こせるだけの雑な地方宗教とは歴史の重みが違う。
神ではなく教義の為に“正しい”という価値観を武器に殴り合う、祭司や魔術師とは異なる『神学者』とは、そういった戦いをこそ本分とする怪物共だ。そういう連中がいるからこそ、宗教は人に救いを与える倫理規範たり得るし、そういう連中の積み重ねがあるからこそ、宗教が人の心を支え、救いを与える柱として機能するのだ。
それができなければメシア教会なぞ、天使とかいう名前が付いてるだけの悪魔の家畜へと人間を貶める軛にしかなり得ない。
正しさを証明する基準を、神の実在から人間の論理へとシフトさせる必要があるのだ。前世と異なり本当に神々が存在しているこの世界で宗教をやるんだったら、人間を悪魔の奴隷にしないためにもそれは絶対に必要な事だ。
……まあ、十中八九無理だろうな、とは思う。
聖典まで含めて十字教を大雑把にパクった程度の上辺で淫祠邪教をコーティングしただけの雑な宗教文化で、論理的な反論など不可能。少なくとも「天使様の言う事は絶対的に正しい」「天使様の言う事を聞きましょう」みたいな、ふわっとしたいい加減な教義しか持っていない時点で話にならない。
ましてや、その天使様の大半が聖書エアプ勢とかいう時点で、もうね、どうしようもない。悪魔と論争してはならないと聖書には書かれているが、普通に人間側が論破して負けるんじゃないかね、こんなんじゃ。
そしてそんな組織のヒモ付きであるなら、例えどれだけ素晴らしい聖人がやってこようが組織に対する疑念の分だけ10割引くらいに考えて信用しないし、たとえ信用できても絶対に懐には入れない。メシア教会が法と秩序に基づく組織である以上、その聖人の後釜というのは将来的に必ず存在するし、その後釜が信用に足るとも限らないのだ。
ガイア連合が組織として穏健派と付き合っていくという決定を下したのであれば、仕方がないので最低限の対応はするが、それはそれとしてラピュタには絶対に入れないし、愛媛でも一定以上の活動はさせない。霊脈には絶対に触らせないし、愛媛県内に存在するシェルターの半数以上の人間が信者になるのも許さない。
ひとまず、限りなく面倒臭いが表沙汰にならない範囲でステルス弾圧を続けていく方針がベストだろうな。
◆ ◆ ◆
愛媛支部の日常的な運営業務は基本的に情報特化型シキガミチーム『ヴェリタス』が行っているが、名義上の支部長はラピュタ支部と同様に僕になっている。
で、副支部長は地元の霊能名家である風花家の当主『風花真白』なのだが。
風花家はそもそもが霊能ロバカスかつ政治力・資金力特化で霊的な実働はダークサマナー頼みとかいう、お隣の香川県を牛耳る大赦や魚沼の九重家と同じパターンの、まあ割とよくある名家()だったわけだが。
だが例に挙げた二家と異なり、多少の霊能があった先代当主夫妻が数年前に人柱案件で急逝したため、その娘であった真白が弱冠十二歳で現当主の座に就いたという経緯から内部統制が全くできておらず、現風花家は分家やその派閥ごとにバラバラに分かれており、本家の権威は薄く、権力を握っているのは真白当人ではなく分家の寄合衆だ。
ガイア連合の権威でとりあえず表面上は言う事を聞くし、だからこそ松山支部の建設も可能だったのだが、内側は派閥ごと家ごとに思惑が錯綜しており、簡易シキガミによる諜報や遠見の術、占術による先読みなどを駆使して蓋を開けてみれば、もう本当にうんざりするくらいにドロドロの内情が見えてくる。
遺産の取り合い押し付け合いや霊能業務における足の引っ張り合いエトセトラエトセトラ、正直眺めているだけで頭が痛くなってくる。中にはメシア教会に内通している家まで存在しており、もうどうでもいいから余計な事とか考えずに全部まとめて綺麗さっぱり消毒してしまうのが一番賢いんじゃないだろうかと思える程だ。
その最大の原因はやはり、真白自身の幼さだろうな。
扱いやすい。
強く出られない。
人脈も人物眼も足りないし、政界や財界での立ち回りも分からない。
霊能者として活動した経験もない。
だから誰も従わないし、従わなくても仕方ないから問題ない……という雰囲気が風花家内部に蔓延している。要するに舐められているのだ。
だから、まずは真白自身が分家連中じゃどうやっても舐めて掛かれないレベルにまで強くなってもらおう。
真っ先に行うのは鉄板のシキガミパーツ移植。それでレベル上限が上がったら装備を揃え、次はレベル上げの時間だが……ここが問題だ。現状の愛媛にはレベル上げにちょうどいい異界が、中々存在しないしな。仕方ないし修行用の小異界でも用意するか。
装備は……とりあえず以前作成した『闇黒剣月闇』と魔導書『ジャアクドラゴン』…………無理か。あれは曲がりなりにも脳缶ニキのオムニフォースをベースにした、高レベル者専用のデモニカだ。シキガミ移植したばかりの真白には扱い切れない。
まあAIMSショットライザーでいいな。プログライズキーは『ラッシングチーター』、そしてサブのプログライズキーも適当に作った分から使い勝手が良さそうなのを渡して、と。
デモニカなのでCOMPとしての機能も搭載されているから、仲魔も持てる。とりあえず真っ赤なパガーニ・ウアイラに変形する量産型トランスフォーマー型シキガミ『スティンガー』1体と、建設重機トランスフォーマー型合体シキガミ『コンストラクティコンズ』1セットを渡しておく。
後はアガシオンに、アマゾンズドライバー持ちのてらほ君を数体とクローンヤクザ、それから偵察用の簡易シキガミ“鎹鴉”も必要かな。これだけあれば、まあ十分か。
さらに御目付け役として、愛媛支部の看板として活動している天子を随伴させる事も考えたが……まあ、そこまでやらなくてもいいか。
むしろ今は天子には別行動として可能な限り派手に動いてもらい、愛媛支部が稼働している事を本格的にアピールしておく。
それに合わせ、風花家そのものの地盤の強化も必要だな。
元々風花家の経営基盤は土建屋であり、異能者としても占術や風水術を得意とする非戦闘系陰陽師の集団だったらしいが……ともあれ土建関係はガイア系大企業の子会社として買い取りつつ一括で取りまとめ、風花建設として再構築してもらう。
経営トップ層は以前の魔戒騎士絡みの話で知り合ったバラゴニキや、広島在住の富豪系黒札であるゼクロスニキのガイア銀行方面の人脈を頼り、ガイア側から派遣した信用のおける人間をトップ層に据えておく。正直、今の段階ではこっちの人間は信用できない……分家の一部がメシア教会と繋がっている時点で、内実がどこまで腐敗しているか分かったものじゃないからな。
バラゴニキを通じて招聘に応じてくれたのは、呉支部からやってきた『伯爵ニキ』だ。いかにも油断できそうにない腹に一物ありそうな顔付きの彼だが、バラゴニキによると信用も信頼もできる人物であるらしいというから問題ないだろう。
信用して事業を任せていこうと思う。
そして霊能組織としての風花家を補強するための人員も確保していく。クローンヤクザだけでは足りない、というか組織としての体裁を整えるために、やはり人間のメンバーが必要だ。
良さそうな人間がいないか確認してみると、真白の影武者として育てられた双子の弟がいるそうで、その弟である『風花マシロ』君は現在……QBニキの例のケ●ハメ学園に生徒として通っているらしい。とりあえず支援する事にして、こちらに呼び戻す。
装備も色々と用意したが、とりあえずはデモニカの御世話だな。
小隊長になるマシロ君にはAIMSショットライザーと『ライトニングホーネット』プログライズキー。そしてアガシオンとイヌガミ各一体、さらに小隊全員で乗れるトランスフォーマー型簡易シキガミ『トラックス』。
その際に、同時にマシロ君と仲が良い生徒数人をピックアップし、そちらにも援助を出す代わりに風花家付で愛媛支部に就職してもらう。
そっちの装備は量産型のレイドライザーと『インベイディングホースシュークラブ』プログライズキー。後はアガシオン。
とりあえず、これでどうにかやっていくしかないな。何にせよ人材がいないのであれば、どうにかして育てていくしかない、か。
◆ ◆ ◆
さて。
ラピュタ支部の実質的な管理者といえる情報制御特化型シキガミチーム『ヴェリタス』であるが。
その末妹といえるのがセキュリティ機能特化型シキガミ『マキ』だ。普段の業務はラピュタの電脳関係のセキュリティなのだが、情報処理以外にも電子描画を得意とする彼女には僕とダ・ヴィンチが半終末前からちょこちょこと手を出していたとある分野に関する研究を引き継いでもらっている。その研究内容というのが────『ミーム抹殺エージェント』と『反ミーム』だ。
この二つがどういうものかといえば。
見たら死ぬ画像、読んだら発狂する文章といった、認識したり意味を理解したりする事によって致命的な悪影響を引き起こすミームを利用した情報保全機構が『ミーム抹殺エージェント』。これは主に文章や画像にスキルや術式、場合によっては権能の効果を添付する事によって製作されるもので、マキが電子描画に比重を置いた能力を持つのはその製作を主眼に入れているからだ。
視界に入れても認識できない画像、読んでも意味が理解できない単語のように、感覚では知覚できても意識や理解を拒絶する認識阻害が『反ミーム』。これも情報保全に利用するためのもので、これに関しても文章や画像へのスキル・術式の効果添付で運用される。
その辺の技術を研究しつつネットワークやデータベースの保全を司るのがマキの仕事、なのだが。
どうやら最近、DDSのネットワーク上で師匠と呼べる人物に出会ったらしい。何やら北斎ネキなる画家系の黒札であるらしいのだが、彼女に指導される事で急速に腕を上げているらしく、ミーム抹殺エージェント画像の精度と物騒度が急速に向上している。
最近のトレンドは『共感覚性の利用』であるらしい。要するに赤系の色を見れば暖かく感じ青系の色を見れば冷たいと感じるように、“一つの感覚を刺激する事で二つ以上の感覚を得る”というもので、これを用いて特定の感覚データを再現する事にこだわっているらしく、最近は“ムドオンカレーの味を視覚的に感覚再現する事で視認した人間の脳を物理的に吹き飛ばす画像”などという恐ろしいブツを完成させてしまった模様。
それらの技術は、うちの各種大型兵器を運用する上で実に役立っている。単純なステルス技術として扱うだけでなく、例えば反ミーム効果のある画像を大型兵器の表面に展開して一般人の目から隠してみたりとか。
普通の【認識阻害】と違って、写真に撮ったりコピーしたりした先でも効果が残るから、情報伝達の阻害度が違うので便利。
まだ現代社会が残っている日本国内だと、ホエールキングみたいな大型の航空艦を運用するのは大変だからね。光学迷彩とかその他、情報が一般に広まらないための備えは必須だ。
◆ ◆ ◆
支部の設立に伴って松山駅地下に専用のターミナル……転送システムではなく、列車用の格納庫が竣工した。四国霊道環状線の管理・防衛を担う可変型シキガミ列車『クライナー』の試作型が配備され、そして少しずつ試験運用が行われていく予定。
そして先日、魚沼のロボ工場から試作型クライナーの第一号が回ってきたので、早速だが試験運用を始める予定。クライナーの乗員には機体運用と警備、防衛戦闘を担当するクローンヤクザを10体ほど、さらに維持と整備に向いたBALLSを10体ほどと、その統率を担うシキガミであるハレの分身体を1体。
プラスして、カブトゼクターの試作機を本番仕様の1号機と同型に調整し直したダークカブトゼクターも搭載しており、これはひとまずハレの分身体に使わせる予定。これで、不意にメシアンとかその辺の襲撃があっても問題なく返り討ちにできるだろう。
ひとまず記念すべき最初の運行として、香川との間に路線を敷いてその上を一往復する事に成功。その直後に僕自身が点検に出向いた結果、運行後の路線にも問題はなし、と。
そうして、そのデータを元に車両管理型簡易シキガミ『シャショット』が製造された。列車の操縦や運行管理なんかに特化した量産型シキガミ……見た目は『シンカリオン』シリーズのシャショットそのままだが、単体でクライナーを運転する事も可能。
見た目通り直接戦闘は不可能、基本デスクワーク向けのシキガミである一方、呉のロボ研製の機体で操縦者と機体とのリンクを行う操縦補助型シキガミの機能をベースにした廉価版でもあり、ガイアポイントカードをセットする事によりクライナーの出力リミッターや各種機能を解放していく機能を持つ。
そのための製造ラインを用意して……これで、四国霊道環状線の運用も多少は楽になるだろう。
で。
────電車というシステムを基盤に駆動する機械式のお百度参り、それがこの四国霊道環状線の本質だ。その線路は風水理論をベースにした人造の霊脈であり、そこから供給される膨大なマグネタイトを吸い上げて列車を走らせ、さらには線路自体の保線を行い、維持する事が可能。
そしてそれを用いて終末後の四国そのものを覆う大規模な結界を展開し、霊的地盤を確保するのが四国霊道環状線の最大の目的。
その為には最低でも四国全域、つまりは愛媛・香川・徳島・高知の四県にまで路線を伸ばし、日常的に列車を巡回させる必要がある。
それに必要なのは霊道である線路を保持するための防衛力だ。
線路を保護する単純な防御力や、また線路を始めとする各種施設を維持するための管理能力も欠かせないし、また襲撃や事故に備えて防衛や修復のための戦力を迅速に送り出すためのシステムも忘れてはならない。その辺をどうするか、なんだよな。
ひとまず現状の防衛戦力は見た目人間に偽装できるクローンヤクザで充当しているし多分それが最適解なんだろうが、それはそれとしてその内にでも自作のシキガミ兵とかその辺のロマン要素も用意したいものだ。
でもまあ、ひとまずの防衛戦力としては……モビルワーカー辺りがベストかな。北神奈川支部で開発され、現在では農耕用重機として全国販売されているこれを、線路監視用にカスタマイズしていく。
まずは線路上を走れるように足回りを改装し、特徴的な三本足の脚部の内の二本と、さらに増設した二本の脚部に線路用のホイールを仕込み、線路の上を走る事ができるようにしたのが第一。線路上を流れるマグネタイトを吸い上げて走るので、コスパも割と良好だ。無論、従来通りの三脚走行で公道を走る事も可能になっている。
後部には兵員輸送用の貨客ユニットを牽引させ、そこに防衛用の戦闘員と保線作業員を兼ねたクローンヤクザやBALLSを積載して移動する。ユニット上部には対装甲用の迫撃砲と対人用の機銃をまとめた自動銃座を配置する。
装甲表面には反ミーム塗装による認識阻害を施す事で一般人の目を気にせずに運用する事も可能だ。
とりあえずこれで、モビルワーカー・保線警備カスタムが完成。しばらくは、これを走らせる事で誤魔化すとしよう。操縦者は、まあクローンヤクザで十分だろう。
とはいえ、現状における最大の問題点は“線路”だ。現状、愛媛-香川間に敷かれた線路はただの鉄材ではなく、木行と相性の良い翠木鋼の合金樹材に、世界樹としての性質を持つ生命樹の枝と根を素材として合成したものを利用し、それを芯にして線路に一定間隔で打ち込んだ聖域鉄杭や、各駅の地下に設置したダンジョンコアの効果を伝播させる事で線路それ自体を一括で異界化している。
それの何が問題なのかといえば────とにかく生産量が足りない、この一語に尽きる。
生命樹の素材がね……大量に欲しいんよ。しかも結構お高い。
それなりに稼いでいるから装備の素材程度であれば大した問題じゃないんだが……何せ物が線路の素材で、しかも四国を丸ごと覆い尽くすための巨大結界の素材だ。
必要量を用意するとなれば天文学的な資金が欲しいし、そもそも現物も生産できない。
現状はトランスフォーマー型シキガミやホエールキングなどの売り上げもあるからそこまで問題になってはいないが、将来的な保守管理に掛かるコストを考えると、ちょっとこのままにしておくのはあまりよろしくない。
線路そのものを低コスト化するか、あるいは素材やアイテムを量産できるように研究を進めるか、どちらかを解決するしかないんだが────この生命樹、とにかく量産が難しい。
何せ世界樹────つまりは世界に一本しか生えていないという概念を持つ代物で、それを量産なんてそもそも概念レベルで矛盾している。とはいえ線路の結界化には世界樹の概念を使っている以上、それを外すわけにもいかないという……矛盾である。
現在、僕の手元にあるのは三株……山梨とラピュタ、そして愛媛支部で栽培している三本だが、そこから採取した分と、蓬莱島から買い付けた分と合わせてようやく愛媛-香川間の路線開通における必要量を稼ぐ事ができた。
そこで目を付けたのが『菓子の木』だ。分類上はトリコ再現グルメ食材だが、作成者は探求ネキではなく破魔ネキ……破魔ネキも色々と作っているんだよなあ。ともあれ、生命樹をベースに改造する事で生まれたこの菓子の木は、文字通り多種多様な菓子を果実として生やす植物だ。
元になったのが生命樹であるだけにこちらも世界樹としての性質を帯びているが、しかし生命樹に比べればその因子は薄く、生命樹と比べればの話だが量産に対するハードルが低い。
プラスして、樹の株それ自体を増やすのではなく、単純に大きく成長させて一度に取れる素材の量を増やす方向性で増産を図っている。
◆ ◆ ◆
僕のシキガミの一体である声楽再現能力特化型シキガミ『幽谷響子』の話。
人魚ネキの夢鎮めの歌による精神治療能力の再現を主眼に開発された彼女は、ちょうど先日まで人魚ネキの元で研修を受けていたのだが……人魚ネキが合格点を出すだけのレベルと技量に到達した事で、ちょうど先日こちらに帰還した。
ひとまずお祝いとして、専用装備にしてデモニカとしても機能する音属性の聖剣『音銃剣錫音』と、それと対になる魔導書『ヘーゼルナッツとグレーテル』を送る。響子のシキガミ素材にも使用されている高レベルコダマのフォルマを大量に使い、また女神サラスヴァティーや妖魔ムーサといった音楽系悪魔のフォルマも組み込んだ、音楽系権能の増幅器だ。
そして、その彼女を講師として、シキガミ向けの音楽塾を開設しようと思う。
教導内容は音楽系異能の制御と強化、特に人魚ネキ関連で重要インフラと化している【子守歌】による夢の傾向操作に関わる技術を重点的に教えていく予定で、メインは声楽なんだが楽器演奏の指導なんかもメニューに組み込んである。能力的には人魚ネキのダウングレード版という事で声楽特化として制作した割に、サリエリのペルソナを持っているから楽器演奏も指導できるんだよな、この子。
なので【教導】スキルの向上を兼ねて、まずは個人講座みたいなレベルの高いヤツではなく、比較的グレードの低い仕事から始めてみる。ちょうど製造部が量産に着手している『好きな総菜発表アガシオン』というものが存在しているんだが、こいつらに歌が与える精神作用への傾向操作を習得させるための指導を、響子に任せる事になった。
元々は終末後の環境を見越して、アガシオンがオオゲツヒメやハトホルのような食物神へ悪魔変化する事を期待して、大量の料理データベースを詰め込んだものだ。そのためにまず歌の傾向操作ができる人魚ネキに依頼して、歌自体に多彩な料理の味や食感、果ては料理に関する豆知識などの情報を詰め込んだ“好きな総菜発表ドラゴン”の歌を歌ってもらい、それをアガシオンに習得させるという手法が取られ……その教導部分を響子が担当する事になった。
当初は指導法の確立に手間取ったものの、その辺もどうにか片付いて結果『好きな総菜発表アガシオン』も無事にロールアウトした………………そして不良在庫になった。
製作に際して全力でこだわりを注ぎ込んだ製造部の黒札達からすれば不満の残る結末だったが、まあ仕方ないだろう。十中八九食糧危機が訪れるであろう終末期を見据えて考えれば、食べた事すらない料理の情報を直接頭に流し込む機能なんて組み込んだ以上、まあそうもなる。発生するのは地獄の飯テロだ。
製作に人魚ネキまで巻き込んでおいてこの結果か……とは思うのだが、残念ながら当然といったところか。
好きな総菜発表アガシオンの売れ行きは置いておくとしても、響子の音楽指導がアガシオンに対して一定の成果を上げた事は事実だ。だから次のステップとして、正式な授業の開講に移る事にする。
で、あくまでも最初という事で試験的に希望者を募って講座をスタートさせようとしたのだが、希望者が想像以上に多かった。それだけ人魚ネキの歌に対する需要が高まっていたという事だろうが、それはそれとしてこれだけ数が多いと響子一人で捌き切るのは無理がある。
仕方ないので第一期は抽選という事で、10人ほどを選んで指導する事になった。
これに関して、今回実施するのは時間加速した異界の中で技術指導のみ行う簡易促成コースであり、レベル上げと並行して本格的な指導を行う長期育成コースなどはまだまだ難しいところだ。将来的にはそちらの指導も視野に入れつつ、現在は少人数講座としてちょっとずつ進めていく感じ。
◆ ◆ ◆
四国霊道環状線の話。
愛媛・香川間の路線の敷設に成功したのが先日の話ながら、列車ニキの率いる旋風寺社は既に徳島・高知へと路線を伸ばす為の工事を始めている模様。その辺のアレコレが可能になったのも、四国各地の霊能名家が全力でバックアップしているためであり、また日本各地のガイア連合支部からもこの計画が注目を集めており、各所から支援を受けているからでもある。
クライナーも正式な量産型として二号車、三号車がロールアウトし、正式な稼働が始まっている。もっとも、四国霊道環状線の大結界基点としての真価が発揮されるのは、四県に跨る環状線が完成してからの話になるわけだが。
で、その辺の設備の話であるのだが。
松山駅の大深度地下に大規模地脈抽出炉“
原理的には飛行石にほぼ等しい。
膨大なマグネタイトが流れる地底、霊脈のマグネタイト流の奥深くに、マグネタイトの蒐集・増幅機能を持った五行炉を設置。霊脈から汲み上げたマグネタイトを増幅し、霊脈を涸らさないように吸った分のマグネタイトを霊脈に再還元しつつ、増幅分のマグネタイトは太極炉術式を介して地上駅に設置された飛行石ネットワークへと送電される。
そして地上駅へと送電されたマグネタイトは、四国霊道環状線の路線そのものを加速用サーキットとして増幅され、出力を増しながら各駅の飛行石へと還元され、さらにそちらの太極炉術式を介して衛星軌道のメガソーラーへと送電・増幅され、また霊道環状線の増幅サーキットへと還元されてさらに出力を増し、最終的にはラピュタ支部か、または四国各地の地下に設置された貯蔵施設へと蓄積される仕組みだ。
飛行石は太極炉術式のネットワークに繋がった炉心が増えれば増える程に力を増すからな。それが霊脈と直結した大規模炉心であれば尚の事、ラピュタの中枢炉心や衛星軌道のメガソーラー、あるいはフォーゼシステムやメテオシステムの出力増加も見込める。
それがメインの目的だが、それ以外にも結界動力や非常時の電源エトセトラエトセトラ、ともあれマグネタイト収入は多ければ多いほど良いし、使い道なんていくらでもあるからな。とりあえずホワイトブロイラー式マッカ造幣異界に流し込んでマッカに換金する形で蓄えておこう。
◆ ◆ ◆
松山市、堀江港。
JR四国予讃線堀江駅から徒歩5分の位置にある廃港だ。かつては呉の仁方港との間に仁堀連絡船と呼ばれる定期連絡船が結ばれていたが、赤字により廃止。それ以降は同じく呉の阿賀港との間に呉・松山フェリーの航路のみが運行されていたがこれも廃止され、今は利用されていない。
現在は桟橋や待合室といった各種設備が撤去され、閑散とした土地だけが残っている廃港であるが……この港の利権を買い取った。この港を、四国方面の海上保安を維持するための拠点として整備していきたいと思う。
つまり、軍港だ。
まず堀江港の最寄駅である堀江駅は、都合のいい事に四国霊道環状線の一部として改装済みのJR四国予讃線に含まれている。だから堀江駅から堀江港までラインを繋ぎ、そこからマグネタイト供給を確立させる。同時に港を守る泡状結界と、さらに半地下形式のドックを建造し、そこにとりあえずホエールキング一隻を配備。
警備は見た目人間に見えるため市街地にも問題なく配備できるクローンヤクザをメインに、各種簡易シキガミやアガシオン、イヌガミによる巡回でカバー。
またガイア連合呉支部と連携し、呉・松山フェリーの定期連絡船に梃入れして、これをガイア連合資本で復活させる。呉支部と愛媛支部の共同事業という形だが、これに関してはこの事業で人脈を作って、将来的な事業の橋渡しをしておくという意味の方が強い。
さらにもう一つ重要な事業として、サクナ米の生産地であるサクナヒメがいる離島支部に対して、貨客船と貨物船を兼ねてホエールキングを利用した定期連絡便を配備する。そしてそれが軌道に乗ってきたら定期便の航路を伸ばし、瀬戸内海の海中に潜む蜃を本体とする小世界型異界である『初音郷』へと繋がる瀬戸内定期便とする。
基本的には自給自足が成り立っているらしき初音郷だが、それでも外界の品が不要という事にはならない。医薬品、嗜好品、その他諸々欲しいものはいくらでもあるし、限定的にとはいえ郷が外界へと開かれた以上、欲しいものなんて今後ますます増えていくだろう。
そしてデビルシフターとペルソナ使いを除く生身の人間が終末までターミナルを利用できない以上、ターミナルによる物資輸送にも限界がある。また密輸課を頼るにしても、彼らとて決して暇じゃないのだ、むしろ忙しい。本体が海中に存在する異界への大規模輸送なんて、それこそ潜水輸送艦でもなければ困難だからな、そういう意味で、ホエールキングはうってつけだ。
だがこれで初音郷への物資輸送量も大幅増加、その気になればジュネスの開店だって可能だろう。そうして最終的には終末後の瀬戸内海で経済圏を作り上げるのが目的だな。
同時に呉のロボ研で製造されたジオン水泳部の水中モビルスーツを購入し、カスタマイズした上で海上保安用に配備する。
購入する機体は……高速展開能力に優れたハイゴッグか。ベースは水中型の機体ながら小型軽量化が図られており、ホワイト・グリントに搭載されたオーバードブーストの技術を転用したジェットパックを装備する事で水中から高速で飛び出して離水、果ては長距離を高速飛行する事すら可能とする代物だ。
お隣の香川支部や対岸である呉支部、同じ瀬戸内海の御近所さんであるサクナ島や初音郷支部に何かあっても、スクランブルすれば5分で辿り着く事ができる仕様だ。まあ、香川やサクナ島はともかく残り二つに関しては、こっちが出動しなきゃならないような事態が起きるかどうかも怪しいところだが。
これをベースに、松山支部向けに改装していこう。そういえば以前、佐渡支部のパピヨンニキがアッガイの現地改修仕様を作っていたな。あのデータは、確か技術部のデータベースにあったはず……うん、あったな。じゃあ、これを参考にして、と。
まずはコクピットブロックからだな。有人制御の操縦席から、自動操縦を前提にした大型演算ユニットを格納した無人機仕様に換装。その上で演算ユニット上に電脳異界を構築して“書斎”とし、そこに簡易シキガミを用いたシキガミコアを格納して本体とする。これによりパイロットを必要とせず自律稼働ができ、また機体そのものに【ディア】系統の治癒が有効に働くようになる。
機体内部には中型のターミナルユニットを搭載するが……実際にはコイツが最大の武装だな。最速で現地に到着し、搭載されたターミナルをゲートとして防衛シキガミ群を吐き出して橋頭保を確保する緊急侵攻ユニットとしての在り方がコイツのコンセプトだ。
表面装甲は水撃属性特化合金樹材を利用したストランドボード装甲護符を使用。さらに装甲表面にはホエールキングに使用されたのと同質の異界テクスチャ添付技術を使用して、表面装甲に掛かる水圧負荷を常に一定に保ち、深度に依存しない水中潜行を可能にする。
同時に、一般人対策として装甲表面には水中迷彩を兼ねた反ミーム効果を付与して軽度の認識阻害と記憶喪失を引き起こすフラクタル塗装を付与。覚醒者相手にはあまり意味がない代物だが、まあ一般人への情報漏洩は防げる、と。
動力源は五行炉と太極炉術式の組み合わせ、いつものメテオシステムだ。これに四国霊道環状線から送電されるマグネタイトを受け取る事により、ほぼ無尽蔵のバックアップを得ており、当初の想定を上回る強力な武装を搭載できる。
プラスして中枢五行炉には、以前仮面ライダーデュランダルに搭載した魔導書『オーシャンヒストリー』の廉価版を搭載する事で、時間の消し飛ばしこそ使えないものの、水中環境、とりわけ高水圧環境への適応性を高めており水中での戦闘能力を重視した形だ。またオーバードブースト起動時にはサブで組み込んだ魔導書『天空のペガサス』『ピーターファンタジスタ』二冊を追加で起動し、更なる高速機動も可能になる。
主兵装は両腕に仕込んだ高周波ユニット。大雑把な構造はバンブルビーの複合兵装腕部に仕込んだものと同様に『天使の子守唄』を攻撃転用したもので、腕部の鉤爪と合わせて曲の効果を上乗せ可能な高周波ブレードや震動破砕兵器として、また衝撃・神経複合属性の霊子加速砲としても使用可能。
バンブルビーとは異なり単価の高い人魚ネキ主演の原曲ではなく、響子の歌を原曲としたより安価なものを組み込んだ事で、性能こそ下がっているが量産性が向上している。
またオプション装備としてハンドミサイルユニットを装着する事もできるが、これに使用するミサイルの弾頭に穢教滅閃を組み込めないか……は、現在研究中。
ともあれ、そんな具合にハイゴッグの瀬戸内海仕様現地改修は完成。
◆ ◆ ◆
さて。
以前作成に協力した『好きな総菜発表アガシオン』なのだが、現在の売れ行きは絶不調であり、在庫がガイア連合の倉庫を圧迫しており、事務課から苦情が来たそうで、この不良在庫をどうにかできないか、と技術部の一部から打診があった。好きな総菜発表アガシオンの開発には僕も関わった身であるので無関係ではないし、それが不良在庫になっているのは何とかしてやりたいところ。
なので、どうにか利用法がないかと思案していたら、ふと思いついたので試してみる事にする。
愛媛支部の港湾開発の一環としてホエールキングを用いた物流システムを構築した隠れ里『初音郷』だが、この初音郷にいくつか存在している特産品の一つに『穢教滅閃』が存在する。これは基本的に初音郷に在住の現地民術者や有志黒札達の手による職人芸の産物なのだが、これを『好きな総菜発表アガシオン』を利用して工業化していこうと思う。
この『穢教滅閃』は、大正時代に活躍した初代葛葉キョウジが愛用した仲魔弾の術式をベースに、メシア教会から拿捕・鹵獲した天使を素体として凌遅刑同然の“特別で面倒臭い処置”を行って威力を上げた消耗品であり、発動すれば万能または呪殺属性の高威力攻撃として機能する。
またメシアン天使を素体としているため、攻撃対象が同じメシアンやメシア教会系の天使であれば弾頭が“救いを求めて飛んでいく”ため自動追尾効果も発生するという便利な副次効果もある、そんな兵器だ。
で。
穢教滅閃を単なる仲魔弾とは一線を画した威力に仕上げているのは、凌遅刑────古代中国や朝鮮半島で行われた、時間を掛けて対象をゆっくりと切り刻んでいく極刑にも似た、単純ながら大変かつ凄惨な処置であり、それにより素体の正気を奪い、“狂化”する事により素体の攻撃性能を霊基が崩壊する限界まで引き出す事で、その威力を尋常の仲魔弾の何倍にも引き上げているのだ。
そのため穢教滅閃の製作に携わっているのはメシア教会の被害者などを始めとした特別な“素質”────つまりは天使やメシアンに対する格別な憎悪や悪意を抱いていたりする、それこそ天使やメシアン相手であれば時間を掛けてじっくりとその身を切り刻む凶行すら可能とする精神性を持つ人材であるが……そんな彼らですら“特別で面倒臭い”と形容するほどに、天使の加工は尋常でなく多大な労力と根気を必要とする重労働だ。
その加工は決して簡単なものではない。ただ機械的に、単純に素体を切り刻めばいいという話ではないのだ。必要なのは霊基すら歪める程に極悪な“苦痛”……じっくりと時間を掛けて天使の肉体を切り刻み、丁寧に少しずつ削ぎ落としていくのも、全てそれが必要だからだ。
温い刻み方では苦痛が足りず普通に殺すだけで終わってしまい、さりとて強くし過ぎれば霊基ごと対象を破壊してしまい『穢教滅閃』としては役に立たず、商品にならない。注意深く相手の精神と肉体の状況を見ながら、最大の苦痛を与えつつ少しずつ精神と霊基を歪めていく事により、砲弾として最良の状態まで加工していく必要がある。
大事なのは対象を傷つける事ではなく、苦痛を与える事。
原理的にはおそらく、いつぞや黒死ネキが持ち込んできた“魔法思念料”の技術と、それを応用した脳缶ニキの技術に近い。脳缶ニキが思い付きでやったこの技は、悪魔を概念情報レベルで加工して製造した魔法思念料を“情報生命体としての疑似悪魔”と見立て、それを自爆させる事で疑似的なキョウジスペシャルとして超高威力の魔法を発動させるものだ。
だが穢教滅閃がやっているのはその逆。天使=本物の悪魔を、虐待と苦痛によって概念情報レベルで純化する事により、ほぼほぼ魔法思念料に近い域にまで加工している。
なので。
対象の霊基を直接破壊しないが苦痛になる類の刺激を継続して与え続け、最低でも人格破壊にまで持ち込む事。これを実現するために『好きな総菜発表アガシオン』を利用する────曲がりなりにも彼らは人魚ネキの持つ“歌を介した精神誘導の傾向操作”を継承した存在だ、決して不可能というわけではないはずだ。
しかし元々【子守歌】を始めとする歌による精神干渉、特に夢の傾向操作は本来非常に難易度の高い技術だ。元来集合的無意識への干渉に非常に高い適性を持っていた人魚ネキだからこそ低レベルの頃から問題なく扱えていたものだが、それを通常のアガシオンで実現しようとすれば、そのハードルは非常に高い。
だから、ここは数で攻める。
スキル【合唱】による限定的な合体魔法により歌の効果を増幅、歌による精神効果の方向性を“飢餓”と“食欲”に限定したものを、素体となる天使へとエンドレスで聞かせてやるのだ。
無論それだけだと効果がイマイチなので、もう一押し。佐渡島支部で刑罰用と銘打ってパピヨンニキが研究していた『ソイレントグリーン』を使う。
これは呪殺系スキルや呪術の類と高い親和性を持つキクリ米をベースに、魔人ブラックライダーの権能の欠片を持つ低位悪魔を利用して“飢餓”の属性を付与したものを主原料として、そこにケシの花の粉末やゾンビパウダー、屍鬼ワーカホリックのフォルマ粉末などといった各種素材をブレンドして水飴で固めたカロリーバー型食品だ。
その実態は、元々は調理部が“より不味い食べ物”を追求して作ってみたジョーク製品をベースにした代物だからとにかくマズいし、三食分で一日に必要なカロリーと栄養素が得られるにも関わらず、食べても満足感も満腹感も何一つ湧いてこないどころか、むしろいくら食べても『物足りない』という感覚が湧いてくるとかいう嫌がらせのような代物である。
これを無理矢理食わせられながら、食べた事もないグルメの味や食感を脳に直接流し込む好きな総菜発表アガシオンの歌、それも歌の傾向操作によって飢餓感を与える事に特化したものを延々と聴かせられる……うん、割とイケるのではないだろうか。
実際問題、イヌガミなんかを作る時の伝統的なやり方にしても、対象を怨霊化させるために利用されるのは“飢え”だ。そういう意味では実に教科書通りの製法といえるかもしれない。
要は飯テロである。
と、いうわけで天使召喚プログラムを利用して召喚した過激派天使を素体に試験したところ、およそ10日間ほどで工程を終了させ、立派な砲弾に仕上げられると確認できた……短い。いや、ちょっと短くない!? 一神教のイメージって、聖人であれ預言者であれユダヤキリストイスラム問わず数年くらいは断食しても平然としてるイメージあったから時間加速型の異界を用意して試験したのに、必要なかったとかどういう事なのやら。
まあ確かに断食するのは信者である人間の方であって、天使が断食してるイメージとかないし、よくよく考えれば天使って聖人とは違って堕落する事が始めから逸話に組み込まれている代物だからして、精神というか堕落に対する耐性が低いのか。
とはいえ10日は、さすがに短過ぎるんじゃないだろうかね…………高位の大天使とかなら違うのか?
まあ効率よく生産できるなら文句は言うまい。とりあえず良好な結果が得られたなら問題なし、ダ・ヴィンチやヴェリタスの面々、そして工場の設備その他に造詣が深いロボ部のスティーブニキなどと相談しつつ、飢餓効果を軸とした穢教滅閃工場の建設に取り掛かる。
メシア教会への皮肉を込めて、工場の外観は一神教の教会を模した聖堂風の建築にしてやった。現地民・黒札問わずメシア教を忌み嫌う者が多い初音郷の住人からは反対の声が上がったが、中を一通り見せたら比較的簡単に理解を得る事に成功した。
工場長は専用に製造した工場管理用シキガミ『エリザベート・バートリー』。
【槍術】【拷問技術】やアガシオン統率用の【カリスマ】スキルなどを搭載し、さらにフリスビーニキ作のスキルカード合成アプリ『技教の館』を使い【子守歌】でランクダウンガチャを試した結果の各種スキル【音痴】【殺人音波】【ジャイアンボイス】【竜声雷鳴】【チェイテの夜】も組み込まれている。
響子に歌の傾向操作レッスンを任せたところ、凶悪なジャイアンボイスの前に響子が悲鳴を上げるなどといったトラブルが発生したが、どうにかその辺もクリアして音痴モードと通常の歌声を使い分ける事もできるようになり、表に出して問題ないくらいには仕上がった。
なお工場には食堂が併設され、隠れ里という初音郷の特性上から産業スパイが入り込めるような環境ではないという事もあって防音処理を施したガラス張りの壁越しに、★サンドバッグに吊るされた工場内の天使達からは利用客達が食事をする光景を目にする事ができるようになっている。
調理部で訓練を受けた料理人シキガミがグルメ食材をふんだんに使った料理は初音郷の住人からも好評で、既に多数のリピーターが付いている模様……何となく、料理以外の理由も大きそうだがその辺にはツッコまない方が賢明かもしれないな。
◆ ◆ ◆
ガイア連合愛媛支部の終末対応として、ガイア系列の各種企業を片っ端から誘致していく。終末期を見据えて、終末が訪れるまでには四国霊道環状線の大結界で守られた四国圏内だけで各種産業を賄えるようにしておきたいというのがひとまずの目標だが、一方でこれに関しては地元名家の風花家がいまいち頼りないので、その代わりとなる企業連合を作っておくという意味合いもある。
まずバラゴニキに紹介してもらった猫曽木ファンドからマッカと引き換えに出資してもらい、松山市に本社を置く農業機械製造メーカーを買収。『ガイア農機』と名前を変えて北神奈川支部とライセンス契約を行い、表では農機としてのモビルワーカーのライセンス生産をスタート。
その一方で、裏では世界で最もオーソドックスな小銃であるAK-47と自衛隊で制式採用されている89式小銃、そしてその銃弾の生産を開始する。
また福島支部と取引を行い、そっちで作っているアースムーバーのライセンス生産にも着手した。
他にも、手の届く限り色々な企業を誘致していく。
ジュネスは基本だ。松山駅ビルにも既に一店舗入っている。
繁華街にはウシジマローンの支店も出してもらい、ついでにオマケとして隣に雀荘『沼』の支店を設置する。
呉の有澤重工からも関連企業や研究所をいくつか誘致する事に成功。
霊山同盟のスマートブレイン社ともライセンス契約を結び、一番売れているG-3系デモニカの生産工場を建設。
僕と関係の深い飛電インテリジェンスからはAIMSショットライザーや、その簡易量産型であるレイドライザーの量産をスタート。
佐渡のパピヨンニキに買収された日本ハムからも、デモノイド工場を誘致して食肉系デモノイドの生産を開始、既にジュネスを通して一般流通の段階に入っている。
列車ニキがトップを務める旋風寺系の工場も建設されて、クライナーの量産も少しずつ始まっている。
なお近所に勝手に教会を建てようとしていたメシア教会が原因不明のガス爆発に巻き込まれて関係者全員爆死したらしいが、多分ダークサマナーの仕業だろう。
原因不明なのにガス爆発だと分かる理由は永遠の謎だが、ダークサマナーの仕業なのは間違いない。
さらにそこから数キロほど離れた高級フィリピンパブで地元の県会議員と会談中だったメシア教会司祭も首と胴体が泣き別れになって死亡したが、それもガス爆発のせいなのでダークサマナーの仕業だ。
それと同時期にちょっとした出張に出ていた手首フェチニキと再不斬ニキの二名に臨時ボーナスが支払われたのも事実だが、もちろんダークサマナーの仕業なので二人とも無関係である。ダークサマナー最低だな。
また農業方面でも試験的にキクリ米やサクナ米の作付けを進めていこう。農協との協働に関しては、愛媛支部所属の黒札から地元名家の伝手を使わせてもらう……ぶっちゃけ風花家よりもそっちの方が頼りになりそうだからな。
それ以外にも農協と共同するだけでなく、山奥なんかを中心に潰れた霊能名家が管理していた拠点跡地が、ガイア連合の霊脈管理下で維持されているため、その辺を買えるだけ買い占めて仙境結界を設置し、防衛戦力を配備して正式に拠点として整備するだけでなく、簡易シキガミによる農場化を進めていく。
その辺は、現地の霊能名家出身でもある再不斬ニキに伝手として働いてもらった。
米だけではない、愛媛といったら蜜柑だ。近年ではミカンの生産量も和歌山に抜かれて全国トップシェアの地位から転げた愛媛県だが、しかし愛媛みかんの価値がなくなったわけじゃあない。
ひとまず試験的に農業部に協力を要請し、通常の蜜柑に霊木化を施した霊能食材化ミカン株の試験栽培を開始する。ミカンとして代表的な温州みかんを始め、伊予柑、ポンカン、デコポン、せとか、清見など各品種を取り揃えて、いろいろと試してみよう。
これが成功したら作付面積も増やすし、また新規で柑橘系のトリコ再現グルメ食材なんかの栽培も視野に入れていこう。
なお、またもや近所の園芸業者に偽装して農園周辺地区の買収を企てていたメシア教会拠点の人員が首を刎ねられて全員死んだらしいが、死因はガス爆発なので不審な点は一切ないし、ダークサマナーの仕業なのは間違いない。
再不斬ニキと手首フェチニキに臨時ボーナスと臨時休暇が出たのも事実だが、その辺は完全に無関係だし真相はダークサマナーの仕業という事で間違いない。ダークサマナー最低だな。
また五島部隊の伝手で松山市に存在する自衛隊松山駐屯地とコンタクトを取り、そちらにオカルト対応の各種兵器を売り込んでいく。主な兵装はデモニカであるAIMSショットライザー、レイドライザーとオカルト89式小銃、多脚戦車にモビルワーカー、そしてトランスフォーマー型簡易シキガミの『トラックス』だな。
そうしてさらにオカルト事件のいくらかへの対応をそちらに回し、実戦経験を積んでもらう。
またAIMSショットライザーで使うプログライズキーの強化型として、人工衛星を介した戦術データリンクシステム対応の『アサルトウルフ』プログライズキーを開発。
そういう事をやっていると、当然ながら風花家分家の各所からは売り込みとしても十分なものから単なる罵倒、あるいはその辺を通り越して脅迫みたいなのまで、色々と文句が飛んでくる。ガイア連合の落とす利権構造から半ば締め出された形になるから、向こうの立場からすれば当然だな。
ただ……メシア教会の力を背景にした脅迫、これに関してはいただけない。何をどう想定しても将来的に禍根しか残さないのは容易に想像できる……という以前に、脅迫なんてやられた時点で既に敵対宣言、もう殺すしかない。
とりあえず再不斬ニキは男の娘型嫁シキガミと北海道に新婚旅行中だし、手首フェチニキも嫁シキガミを連れて初音郷でバカンス中という事で、彼らを過労死させるわけにもいかないので、今回はどうするか……そうだな。
せっかくだから、愛媛県各地に点在する風花家の分家それぞれに招待状を出して、軽く宴席を設けるとしよう。会場は────松山市を一望できる上空2000m、“葬送曲”の甲板上でいいだろう。
現在、“葬送曲”は上下反転した状態で甲板を地面に向けた状態で航行しているが、艦全域に展開する大規模重力制御術式により艦内の重力は反転しており、軽く頭上を見上げれば松山市の市街が一望できる。そんな絶景を見上げながら、最高級赤ワイン『喜劇』で乾杯といこう
『喜劇』はガイア製の銘柄だ。錬金術を利用して作られた新種のブドウ『パブテスマ』を原料とする霊能ワインであり、飲めば【ディア】程度の治癒効果があり、また酔いが回りやすく信心が強い者には自白剤のような効能を発揮したり、他にもボトルで殴れば【黒龍撃】効果があったりするが、最大の効果は『死後、天国に行くにはサマエルの裁きを通過しなくてはならない』という一方的な誓約を魂に刻印する────メシアン信徒の死後の魂の行き先を強制変更するというものだ。
対天使特化であるため行き先が極楽浄土やらヴァルハラやらカムイモシリやら一神教関係ない場所であればサマエルとはすれ違いもしないが、メシアンに魂まで売り渡してしまっているのであれば……悲惨な事になるだろうね。
まあ、どうせ死後の話なので今から頑張って善行を積んで積んで積みまくればワンチャン天国行きも有り得るかもしれんが、ともあれ。
話を聞いた分家連中の顔色は様々だ。余裕の表情で周りを伺う者、何も考えてなさそうな者、顔を引き攣らせてワイングラスを見つめる者、蒼褪めた顔で震え出す者、憤怒に顔を歪める者などなど、見ているだけでもバラエティに富んでおりちょっと面白い。
「さあ飲むといい。この杯はお前達の運命と共にある────」
意訳:飲まなきゃ殺す。
征服王を真似た僕の発言は多分、そんな風に聞こえたんじゃないだろうか。まあ、メシアンと結託して脅しをかけてくるとか、もう殺すしかないレベルでの敵対宣言と一緒なんで、それほど間違っちゃいない。
空の上だし逃げ場はないからね、
普通に飲んだ連中は見逃す。笑っていようが震えていようが関係なく、態度を明確にした以上はそれ相応の扱いをする……少なくとも、この場ではな。
怯えたように固まっていて飲もうとしない連中……放置。そっちよりも優先順位が高いのがちらほらいるからな。
真っ先に逃げ出したヤツは、逃げ場もないからアマゾンドライバー装備のてらほ君達に秒で捕まり、そのまま天子に率いられたクローンヤクザ達がそのまま連行して取り調べを開始。
それを見て土下座して命乞いを始めたヤツも、同じくクローンヤクザによって連行されるが……逃げたヤツよりは温情のある扱いにする予定。
意を決して口に含んだ瞬間その場に座り込んで光るゲロと一緒に大量の羽根を吐き出し始めたヤツは、会場スタッフの九十九型自動人形に命じて医療室に急患として緊急連行。その直後に吐いたゲロと羽根が本来の姿である天使に変化して暴れ出す────直前に、僕の隣にいたブレイクがシキガミとしての本体でもある可変小太刀で一刀両断に仕留めてみせた。
顔を真っ赤にしてグラスを床に叩きつけ、懐から拳銃を取り出したヤツ……これは許さん、許す必要もないしボッシュートだ。反ミーム装甲によるステルスで甲板の隅に潜んでいたコンストラクティコンズの合体形態『デバステーター』が姿を現し、間抜けを摘み上げてそのまま頭上へと放り投げる……前に、『喜劇』のボトルの口を喉に突っ込んで無理矢理ワインを飲ませるパワハラを行ってから、投擲。死後の世界への逃走など許すものか。
いきなり姿を現したデバステーターの姿に怯える分家当主達を余所に、投げ飛ばされ宙を泳ぐ老人は情けない悲鳴を上げながら緩い放物線を描いて頭上へと飛んでいき、甲板から少し離れた辺りで思い出したかのように地上本来の重力に捕らわれ、そのまま遥か頭上の空中へと真っ逆様に落下していく。
地上に迷惑が掛かってもアレなので懐のラブコアメダルから権能を引き出し、エロースの霊基から引き出した必中の権能を少し弄って、人間に衝突しないように。プラスして反ミーム術式を追加して、事件が表社会へと流出しないように……死体は、後で回収すればヨシ。
まあ、死ぬだろう。あるいは生きていても別にどうという事もなく大した事のない雑魚敵が増えるだけ、と……うん、死んだな。衛星からの監視画像から、我慢できなかった間抜けは松山市内の路上に落下して汚い花火になって飛び散る様子が映像に映し出され、その場に中継された。
「杯は運命と共にある、と言ったはずだがな。それを投げ捨てればどうなるか、分からなかったのかね」
慄然とした表情でこちらを見やる分家当主達だが……知らんがな。とりあえずそちらに視線を送ると、今までグラスを手にしたまま周囲を見回すだけで飲んでいなかった連中が慌ててワインを飲み始め、むせて周りの連中に背中を叩かれていた。
こうして、ガイア連合愛媛支部&風花家本家と分家連中との力関係のマウント取りは完了した。
◆ ◆ ◆
さて。
マウント取りができたからといって、分家連中が心の底から屈服するかといえば、そんな事はない。マウント取りなんて所詮は単なるマウント取りに過ぎないのだ。しかも、脅しを掛けたのは当主連中だけだからして、まあどうしようもない。
今まで行ってきた悪行の隠蔽に走る者、どうにか既得権益を保持しようとする者、服従しても反発した配下を抑え切れずクーデターされる者、その他諸々。何ならこちらの歓心を買おうと隣の分家に勝手に攻撃を仕掛ける奴らまで出てくる始末……ちょっと脅しが過ぎたかもしれん。
最初に銃を抜いた当主がいた分家は、まだマシな部類だ。あの後、最速で部隊を動かして制圧したからな。霊山同盟支部の鷹守家への対応をモデルとしてトップに傀儡の次期当主を据え、近所にはジュネスの支店を建築して霊能組織として再出発している。
抱えていた異界からは天使が湧き出しているわ、霊地の要所にはメシア教会の聖堂が建っているわ……うん、クッソ面倒臭い。まあ、この辺のメシア教会は基本的に過激派寄りなのが唯一の救いだな、穏健派として仲良くやっていく必要がないというのは楽で良い。
ともあれ、そんな具合で、ここしばらくは実働部隊を率いて反乱や抗争を徹底的に潰して回る事、おおよそ一ヶ月…………潰した家の勢力を吸収したりさせたりで、いくつかの分家の統廃合を行い、最終的には『桃地』『西瓜山』『枸橘』『通草野』『栗霰』『無梨』『林檎』の七家が存続する事になった。
なお、この中の桃地家に関しては再不斬ニキの実家だったりするから、とりあえず一番信用できるところだな。
しばらく研究や開発も進められなかったが、それもようやく一段落したので、やっておきたかった構想や開発を一つ一つ進めていく事にしよう。ひとまずは、七家専用に武器でも作ってみようか。
……しかし、終末まで後どれだけの猶予があるものかね。
タマヤ与太郎さんのところに干柿鬼鮫似、というか暁一党そっくりの黒札集団がいた事は覚えているけど、桃地再不斬似の黒札も既にどこかで出ていそうで怖い……。
無惨ニキのメシア教への対応はというと。
過激派:敵組織なので敵として扱う。捕虜にしても意味がある集団ではないので情報収集の価値がなければ駆除する。ぶっちゃけ敵対的悪魔と大差ないので、倒したら資源化・収益化したい。
穏健派:宗教失格。組織としては同盟対象なので最低限そういうものとして扱うが、それはそれとしてやる事やるまでは過激派予備軍なので信用はしない。真っ当な宗教として扱って欲しかったら、まずは過激派が神に逆らう異端であると内外に宣言した上で、自分達の教義に基づいてそれを証明する事。つまりは、正しさの基準を神の実在から人間の論理へとシフトし、勢力が増えた後に天使側が再過激派化させようとしても人間の論理で論破できるようになる事。
ともあれ、とりあえず次回は……「木星から来るもの」「沖縄編続き」「アリス編続き」のどれか。
~割とどうでもいい設定集~
・ガイア連合愛媛支部
無惨ニキの地上における拠点の一つ。支部長は無惨ニキ、副支部長は現地民異能者の風花真白。
四国霊道環状線の中核であり、また瀬戸内海を挟んで対岸に呉支部や広島支部が存在しており、そちらとのアクセス的にも重要な交通の要所。
瀬戸内海には初音郷やサクナ島なども存在しており、その辺との定期便も運航している。
支部そのものは愛媛県松山市の松山駅内部に存在しており、管理用シキガミ『伊代子』が常駐している。
・風花真白
元ネタは『舞-HiME』。愛媛県が舞台という事で。
現地民異能者。ガイア連合愛媛支部の副支部長、金札持ち。地元の霊能名家である風花家の当主。
副支部長として愛媛支部に所属する現地民異能者を管理するのが仕事。主にデスクワーク担当。
装備としてAIMSショットライザーと『ラッシングチーター』プログライズキーを渡されており、仮面ライダーバルキリーに変身可能だが、レベル上げ以外ではほぼ出番がない。
・風花家
地元名家。
現当主は風花真白。
政治力・資金力特化の土建屋系名家。
前当主であった両親が人柱案件で死去したために弱冠十二歳で当主の座に就いたという経緯から、風花家内部の統制はほとんど取れていない。
元々は分家の寄合衆が互いの足を引っ張り合いながら実権を握っており、中にはメシア教会(過激派含む)と裏で繋がっている者まで存在していたが、ガイア連合愛媛支部が発足して以来その辺を徹底的に潰して回り、最終的には元から繋がりがあったか後から恭順の態度を示した『桃地』『西瓜山』『枸橘』『通草野』『栗霰』『無梨』『林檎』の七家が分家として存続する事になった。
また土建屋関連はFGOのカリオストロ伯爵にそっくりな伯爵ニキが仕切っている。
・伊代子
元ネタは『御城プロジェクト:RE』の『[肝試し]伊予松山城』。
ガイア連合愛媛支部の各種施設、並びに松山駅を中心とする四国霊道環状線のシステムを統括管理する施設管理と防衛、また愛媛支部の組織運営補佐などを主業務とする。
槍を主兵装とするが、実態はカジャ・ンダ系統を中心とする範囲バフ・デバフを主体とした魔法型で、多数の配下を引き連れての集団戦に秀でた指揮官タイプ。また他にもブフ・ムド系統を中心とした攻撃魔法、【サバトマ】【ネクロマ】を利用した絡め手なども可能な万能選手。
・風花マシロ
元ネタは『舞-乙HiME』。漫画版に登場した男の娘の方。
現地民。ガイア連合愛媛支部に所属する異能者、金札。霊能名家である風花家の人間であり、副支部長である風花真白の双子の弟。
元は結嵌学園の生徒だが、風花家の戦力を補強するために呼び戻された。元同級生の部下を引き連れて実働班のリーダーとして活動している。
装備としてAIMSショットライザーと『ライトニングホーネット』プログライズキーを渡されており、こちらも仮面ライダーバルキリーに変身可能。
・マキ
元ネタは『ブルーアーカイブ』。
情報制御特化型シキガミチーム『ヴェリタス』の末妹。
セキュリティ機能特化型。
またミーム画像を操る関係から高い描画能力を組み込まれており、ミーム抹殺エージェントと反ミームに関する研究を進めており、それをセキュリティに応用する他、様々な分野への応用も試行されている。
・シャショット
元ネタは『シンカリオン』シリーズ。
愛媛支部で生産されている量産型シキガミ。
クライナーの操縦や運行管理などに特化した列車管理型で、基本的にはデスクワーク担当。また呉ロボ研製のロボット兵器の操縦補助を行う専用シキガミの機能を簡略化した廉価版でもあり、ガイア連合所属の異能者がクライナーを操縦する際には、主操縦者のガイアポイントカードをセットする事でクライナーの出力リミッターや各種機能を解放していく機能を持つ。
・モビルワーカー・保線警備カスタム
北神奈川支部で開発・販売されているモビルワーカーを線路監視用にカスタマイズしたもの。
一般道路・オフロードに加えて線路上を走る事ができるように改装された上で、機体後部には兵員輸送用の貨客ユニットを搭載しており、防衛用の戦闘員と保線作業員を兼ねたクローンヤクザやBALLSを搬送する。
後部貨客ユニットには迫撃砲と対人機銃をまとめた自動銃座を搭載しているが、反ミーム塗装による認識阻害により一般人の目を気にせずに運用が可能。
・菓子の木
ディストピア様『【カオ転三次】終末が約束された世界で生き抜きたい』より。
破魔ネキ作、トリコ再現グルメ食材。
探求ネキが作った生命樹をベースに製造された、多種多彩な菓子を実らせる果樹。
その枝や根などの素材が、生命樹と共に四国霊道環状線の線路の素材となっている。
・響子の音楽塾
無惨ニキのシキガミの一体である幽谷響子を教師として開講している、シキガミ向けの音楽塾。
メインは声楽として、元は人魚ネキの技能である【子守歌】による夢の傾向操作に関わる技術を重点的に教えていくが、それ以外にも楽器関連の教導も可能。
元々人魚ネキの歌への需要がとんでもなく高かったために受講希望者も殺到していたが、さすがに捌き切れないという判断で最初は少数人数を選んで指導していく形になり、響子が経験を積むのに合わせて少しずつ規模を拡大していく予定。
・大規模地脈抽出炉“祖国”
大深度地下、霊脈が流れている位置に超大型五行炉を設置し、霊脈から膨大な生体マグネタイトを汲み出して増幅と還元を行い、太極炉術式ネットワーク上でさらに増幅を繰り返しながら地上や衛星軌道の五行炉へと遠隔送電され、最終的にはラピュタ支部や地上の貯蔵施設へと蓄積される仕組み。
・堀江港
松山市に存在する港。
元々は廃港になっていたがガイア連合の拠点として整備され、サクナ島や初音郷など瀬戸内海上に存在する離島支部への定期便が出向しており、物資供給の要にもなっている。
ホエールキングや水中モビルスーツなどを運用するための港湾施設も兼ねている。
・ハイゴッグ改
呉支部で開発された水中モビルスーツの一種、その愛媛支部における現地改修仕様。
佐渡で試験運用が行われているアッガイの改修型を参考に無人機としての運用が可能になっている。
ホワイト・グリントに搭載されたオーバードブーストの技術を転用したジェットパックを装備する事が可能で、水中から高速で飛び出して離水、あるいは長距離を高速飛行する事により、四国・瀬戸内海一帯の緊急事態にスクランブル出動が可能。
機体内部にはターミナル端末を内蔵し、これを利用して出動先への電脳異界を介した迅速な兵力移動が可能。
・穢教滅閃
血涙鬼・彼岸様『凡庸でありふれた転生者達の小話』より。
メシア教・過激派系天使を素材とし、そこに半ば原型がなくなるまで凌遅刑じみた“処置”を行う事により加工する自爆特攻(させる)兵器。キョウジ式仲魔弾を応用した、ある種のミサイル。
40レベル未満の天使であれば即死させられる威力を持つ高威力兵装であり、またメシアン・メシア系天使に対して使用した場合は“救いを求めて飛んでいく”ためほぼ必中ともいえる自動追尾効果を発揮する。現状存在しているバリエーションは万能・呪殺属性のどちらか。
威力は高く、素材も一発につき雑魚天使一匹とコストパフォーマンスは優秀だが、製造に伴う“処置”はかなりの重労働かつ精神を削る作業であり、製作には単純なコストや技術以上に精神・心理的な素質が必要となっている。
・穢教滅閃加工所
初音郷名物「穢教滅閃」の製造をオートメーション化した工場。管理者としてシキガミ『エリザベート・バートリー』を置いている。
在庫が大量に余った『好きな総菜発表アガシオン』の在庫処分を目的の一つとしており、大量の好きな総菜発表アガシオンが製造工程に関わっている。
その実態は、人魚ネキの技術である歌の精神効果調整を応用し、好きな総菜発表アガシオンの歌の作用を“飢餓”と“食欲”に限定させた上で、佐渡支部から入荷した囚人用食料『ソイレントグリーン』を目一杯詰め込む事で、ひたすら飢餓感を煽って飢えさせるという、オカルト全開で行われる飯テロ。
なお併設された食堂では、防音処理を施したガラス越しに多数の天使に対して瀬戸内海の豊富な海の幸やグルメ食材を利用した料理を食べる様を見せつけながら食事をとる事ができ、既にある種の名所になりつつある。また別料金を支払う事で入る事ができるラウンジでは、★サンドバッグに吊るされた天使に対して直接食事の様子を見せながらの食事ができるようになっている。
・エリザベート・バートリー
元ネタは『Fate』シリーズ。
穢教滅閃加工所を管理するシキガミ。技術ツリー的には幽谷響子と同じ声楽型シキガミに属するが、その歌声は響子のものとは真逆の、聞く者に苦痛を与える事に特化している。
【槍術】【拷問技術】やアガシオン統率用の【カリスマ】の他、【音痴】【殺人音波】【ジャイアンボイス】【竜声雷鳴】【チェイテの夜】などを組み込まれている。
・猫曾木ファンド
アンナ・D・メタボ様『【カオ転三次】俺たちの喜怒哀楽録』より。
ガイア系列関連企業の一つである投資会社。終末に向けた投資活動や企業買収活動などを行っている模様であり、ガイア連合の企業活動における重要な一翼を担っている。
代表取締役はコクリュウニキ。
・ガイア農機
元ネタは井関農機。別名ISEKI。実在する農機メーカー。愛媛に本社があるが、実質的な本社機能は東京に存在するとか。
ガイア連合愛媛支部によって買収され、ガイア連合北神奈川支部のモビルワーカーを農機としてライセンス生産する事になった。
また裏では銃器・銃弾の密造やアースムーバーのライセンス生産も行っている。
・アースムーバー
タマヤ与太郎様『【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策』より。
ガイア連合福島支部のロボ部で研究されている機体シリーズ。
建設重機としての機能を持つ人型機動兵器。
建設重機仕様のトランスフォーマー型『コンストラクティコンズ』とニッチを食い合った競合相手。
・手首フェチニキ
元ネタは『ジョジョ』シリーズ。
ガイア連合愛媛支部に所属する黒札。
本名吉良吉影。
ほぼ元ネタ通りにどう見てもキラークイーンのペルソナを使う爆破系能力者。
性癖スレの住人。「手首が綺麗な子」と注文して寄越されたモルガンネキ謹製の英傑シキガミ『ガレス』に後付けで【変化(手首):A】スキルを搭載するくらいの重症者。
ダークサマナー畑出身者。
元々は一般人だったのだが生来の手首フェチ性癖を実行に移すより少し前にペルソナ能力に覚醒した上で裏の存在を知り……悪魔相手なら犯罪にならずに手首切り取り放題じゃんね、という結論に達し、悪魔を殺害した際に好きな部位のフォルマを残す【解体】スキルを自力獲得。
そして手首が取れそうな悪魔を安定して大量に保有している場所……となると、それこそメシア教会を襲うのが鉄板……という本当にしょうもない理由で、ガイア連合の存在を知る前から妖怪“手首おいてけ”として各地のメシア教会への襲撃を繰り返していた。なお犯罪(ry
なお【解体】スキルは普通に便利だったのでスキルカード化して売りに出す事で一財産になっている。
・再不斬ニキ
元ネタは『NARUTO』。
ガイア連合愛媛支部に所属する黒札。
大剣による近接戦闘、サイレントキリングと【フォッグブレス】、水撃系魔法と色々得意とするバランスの良い異能者。また治水系の異能も持つため農業部にも所属し、稲作関連を中心に農業系スキルも習得している。
男の娘好きであり、自身の立場を利用して男の娘ハーレムを築いている。
現地民の名家であり風花家の分家である桃地家の出身者であり、農協への伝手にもなっている。なお実家の後継者とかその辺に関しては、そもそもガイア連合には男の娘でも普通に妊娠させる技術があるので問題になっていない。
・喜劇
ポポァ様『【カオ転三次】本霊デビルなの バ レ バ レ 』より。
脳缶ニキが開発した赤ワイン銘柄。錬金術生成種の新種ブドウ『バプテスマ』を原材料とする。とても美味しい。既に世界各地に行き渡っている。
飲めばHP回復、ボトルに詰めて殴れば【黒龍撃】。また酔えば自白剤じみた精神作用がある。しかし最大の効果は飲んだ際の“行き先変更”……死後に強制的にサマエルの裁きを挟み込むというもの。
飲んでも効果があるのは死後なので、死ぬ前に悔い改めて善行を積めば特に問題はない有情仕様。なお飲んだ直後に死んだ場合はその限りではない。