もしくは処刑編。
◆ ◆ ◆
「っ……何者、ですか!?」
「お初に御目に掛かります、陛下。王となられる御身を出迎えるのにこのような無作法を働いた事、まずはお許しください────そして我が名は“グィネヴィア”。ブリテンを治める王の妃である者」
ビスクドールのように美しいその少女は、微笑みを浮かべて優雅に一礼する。
────グィネヴィア。
アーサー王伝説における主人公アーサー王の妃であり、最重要の登場人物の一人。アーサー王にまつわる様々な媒体の中で気高く美しく高潔な貴婦人として形容されながら、その実際の行動は日和見的な裏切り者である事が多いという酷くアンバランスな人物だ。
実力・勢力共に成長途上で後ろ盾を必要としていた最初期のアーサー王を真っ先に支持した、円卓の管理者レオデグランス王の娘。そして同時に、円卓最強の騎士と名高いランスロット卿と密通し、円卓と宮廷を崩壊へと追いやった大戦犯だ。
その名を冠した、大悪魔。
その名乗りに偽りはなく、【アナライズ】の示すその銘は『邪龍グィネヴィア』。その表示するレベルは既に50を越えている紛れもない高位悪魔…………ヨグ=ソトースの半分未満か。
「敵ではないというならば、なぜこのような真似を? 答え次第では、たとえ貴女に戦うつもりがなくても容赦はしません」
「それは無論、アーサー王である御身をお迎えする為ですわ、陛下」
油断なく聖剣を構えた変わらぬ微笑みを浮かべた少女の表情に、一切の揺らぎはない────その行動に迷いはなく、そして罪悪感もないという事。
アルトリアがわずかにたじろいだのは、これだけの事をしておいて一切の敵意を見せない少女に毒気を抜かれたか、それとも不気味さを感じたか……まあ、後者だろうな。
まともに話を聞いていい、そんな相手じゃない事はアルトリアにも理解できるのだろう。
だが。
「失礼ながら陛下、貴方はこうお考えなのではありませんか────このままでは貴方は王にはなれない、と。私と来ていただければ、私が責任を持って貴方にこのブリテンを捧げましょう」
「っ、それは…………!」
「あー、コイツこんな事言ってるけど、どうせ実際にはアルトリアを素材に大量破壊兵器作りたいだけだからね、アーサー王っていう名前の」
アルトリアの構えた聖剣の切っ先がその内心の動揺を示すかのようにわずかに揺れるが、そこに相手が余計な言葉を差し挟むより先に口を出すと、図星だったのだろうグィネヴィアはすごい目でこちらを睨みつけてくる。生憎と、これっぽっちも迫力なんて感じないのだが。
「………………ええ、まあ、それはまあ。……アリスさん、貴方と一緒にいると悩みも感動もあったものじゃありませんね」
「そりゃね、どうせ悩みなんてさっさと解決するに越した事はないし、こんなの相手にいちいち感情動かすとか時間の無駄だって」
「……本当に、貴方がいてくれて良かったと思いますよ」
想像以上にあっさりとメンタルを持ち直したアルトリアは、苦笑いしながら肩をすくめると、その聖剣の切っ先をグィネヴィアへと向けた。
「貴方が何を目的としていようと、民を巻き込んで何一つ恥じる様子を見せない時点で私の敵だ。私が貴方の誘いに乗る事はない」
アルトリアの精神が中身のない薄っぺらい煽り程度では揺るがない事くらいは理解できたのだろう、グィネヴィアは小さく溜息を吐き出すと、傍らに待機していたガーゲットへと視線を向けた。
「…………では、仕方ありません。少々強引な形になりますが、無理矢理にでも、こちらに来て頂くまで。無礼をお許し下さい、陛下────さあ、ガーゲット!」
「承知……やれ!」
待っていたとばかりに指示を出したガーゲットの命令に応じて、動きを止めていた兵士達が一斉に行動を開始する。エンジンに再点火した機械仕掛けのように再び動き出した戦場は、僕とアルトリアを中心にして迅速に展開していく。最初に打ってきた敵の一手は僕を取り囲むように展開する城壁型の結界、アルトリアとの分断狙いだろうが────。
「アルトリア、先行って。すぐ追いつくから」
「分かりました! 後ろをお願いします!」
「オッケ、任された!」
グィネヴィアへと向かおうとするアルトリアの前にガーゲットが立ち塞がる。分厚い装甲の耐久力に信を置いたどっしりとした構えから、両手剣による鋭く重厚な突きを主体とする変則的なフェンシングだ。グィネヴィアと合わせ、二対一の状況を放置しておくのは、あまりよろしくないな。
視界内に表示されたCOMPメニューにアイコンを表示する悪魔召喚プログラムを操作し、結界壁の外側に数体の仲魔を召喚してアルトリアの援護へと向かわせる。アルトリアに関しては、彼らに任せるとして。
我が身を取り囲む結界を軽く小突きながら【アナライズ】────基本的には一神教のテンプレートに基づく、ロンドン塔を模した牢獄結界。その特性は守護の聖堂というよりは処刑場、機能的には中にいる敵を逃がさず、その敵に対する攻撃力を増幅するものであり、本物のロンドン塔が健在である限り概念的な強度が向上して強化されるとかいう堅実な構造の術式なのだが。
「────聖母の慈悲は無限なり、っと」
軽い詠唱を挟んで慈悲と赦しの術式を発動し、結界の壁が存在しないかのようにすり抜けて、そのまま外に出る。僕の背後では結界内部に放り込まれたマハラギダインストーンが発火して、結界それ自体をオーブンのように機能させ、限定された閉鎖空間内で収束した超高熱の業火が僕を火刑に処すべく一点集中で燃え滾るものの、悲しいかな、既に抜け出してしまった以上は何の意味もなく。
置き捨てた結界の壁へと手を触れながら発動するのは⑨ニキ御用達、結界突破術式ジェリコのアレンジ版だ。旧約聖書における都市国家ジェリコの陥落に由来するその術式は、本来であれば弾頭に障壁突破の性質を与える業としてホワイト・グリントなどで多用されるものだが、僕はそれを眼前の結界を破砕しつつ、さらに結界を展開した術者をも城壁の一部と見做して諸共に破砕する攻撃術式として使用。
術式が破られた事により、牢獄結界に内包されていた【マハラギダイン】の業火が術式を維持していたラインに沿って送り返され、既に全身の骨を砕かれている術者達に向かって牙を剥く。広場に停車していた装甲車が内側から発火し、護衛のため周囲に布陣していた兵士達を巻き込んで大爆発、車体が揺れて窓を覆う分厚い防弾ガラスが内側から砕け、炎が噴き出した。
「ヨシ!」
軽く指差し確認の真似事をしてみれば、足元が巨大な影に覆われる。そちらを振り仰げば、脚部ホイールを最大限に稼働させながら円錐型の突撃槍を振り上げたナイトメアフレームの吶喊だ。
その足元に【ムド】を乗せた【マハザン】を撃ち込んでやれば、衝撃波に巻き上げられた土砂が呪殺属性を帯びて一種のチャフとなり、視界を塞ぐと同時に電子的・魔術的な探知能力を撹乱。相手の目を潰したところに【
「じゃ、まずは軽く幼女ネキの真似をしてみるとしよう」
破壊されたナイトメアの四肢や頭部が残骸となって地面に落下する中、頭上に向けた人差し指を、そのまま円を描くようにしてくるりと一回転。現れるのは鳩と白百合を図案化した純白の光輪────僕のCOMPの本体でもある【ヘイロー】が、不可視モードを解除して照明を点灯するように輝き出し、僕の頭上にまるで天使の光輪のような形を描き出す。
同時に、僕の裡でシュブ=ニグラスに阻まれて普段は顕現できないペルソナ『運命・モイライ』がタロットカードのような形態で具象化し、それを指先で弾けば、跳ねたカードは【ヘイロー】の光輪へとぶつかって、【ヘイロー】を媒介にした魔晶化────オーバーソウルを発動する。
「────オーバーソウル【
僕の頭上に浮かんでいたヘイローがその形状を変え、僕の身体を中心にして波紋状に多重展開する光輪と化し、その上を超高速で滑走しながら無数の刃が走る。『ワールドトリガー』に登場する“星の杖”の再現は、オーバーソウルの開発者である幼女ネキが掲示板で、オーバーソウルの最初の具体例として発表したものだ。
幼女ネキが開発した星の杖はマグネタイトで編んだ輪の上にフツヌシのブレードを滑走させるというものだから構成そのものは別物だが、外観はほぼほぼ同様のもの。
「見た目だけは、だけどね」
モイライとはギリシャ神話において運命を司る三柱の女神達────すなわち運命の糸を紡ぐクロトー、糸の長さを測るラケシス、糸を断ち切るアトロポス。北欧神話におけるノルンとも同一視され、現在・過去・未来を司るともされる。
クロトーが回す糸車を車輪とし、そしてその上を滑走するブレードは命運を断ち切るアトロポスの鋏だ。
波紋を描くようにして連続で展開される光輪の上を、無数のブレードが滑走する。命運を切断する致死の刃は“現在”を司るラケシスの権能により、過去にも未来にも存在する事なく、ただ“現在”という時間の中だけを稼働する────言い替えるなら、剣を振るうという過程を0秒で終了させ、切断という結果のみを刹那の間に完了させる。
その速度は光よりも速く、しかし余分な音や衝撃波も伴わず、回避どころか反応一つ許されない。もしその可能性があるなら、それは事前に攻撃を先読みして回避するか、異なる時間軸への退避を可能とする権能域の業くらいのものだ。
「剣撃系は本領じゃないんだけど……まあ関係ないね。エンチャント【マハザンマ】&多重【逕庭拳】かーらーの、【ベノンザッパー】!」
波紋のように展開する【
だが適当に振り撒いているように見せかけた衝撃魔法の本領は単純な破壊ではなく、それに混ぜ込むように衝撃波に乗せ放たれるマグネタイトの糸だ。【
同時に【逕庭拳】による衝撃魔法まで埋め込んだ地雷原とあって、戦術も何もない数に任せた侵攻は犠牲者を増やすだけの愚策にしかならない。中には【浮足玉の脚】よりはメジャーな【リフトマ】で突破を図る者もいたが……マグネタイト糸を介した接触起爆は、地形ダメージとは別物扱いで対象外なんだよね。
流石にそんな状況を放置しているわけにもいかないのだろう、散発的ながら銃撃や魔法による反撃が飛んでくるが、そちらは周囲に滞空する無数の糸でダウジングによる探査を行い、攻撃そのものを“探す”事で攻撃に先回りして念糸を張り巡らせるオートガード型の念糸操作術式【
蜘蛛の巣のように張り巡らせたマグネタイトの糸は全属性を網羅する僕の反射耐性を反映し、銃撃・魔法の区別なく糸に触れた敵の攻撃を弾き返し、敵に向かって送り返す。
そして。
「だからってのんびり詰将棋してる暇もくれてやらないけどね。カス子ネキ直伝の【傀儡操術】────【無間等活地獄】」
糸車から放たれたマグネタイトの蜘蛛糸が絡み付いた死体を【ネクロマ】と【ドロイド】で支配下に置き、ペルソナ『シュブ=ニグラス』の末端を断片的に憑依させて強化し、【メディアラハン】でまとめて修復しつつ使役する。戦場のどこにでも転がっているその辺の死体を雑に使役するというその技は、丹念に製作した人形を洗練された指揮能力で統率するカス子ネキのオリジナル【傀儡操術】には到底及ばない手妻だが、不可視の糸と不可視の地雷で動きを制限された雑魚を追い立てるには十分過ぎる。
「糸に捕まるか、地雷踏んで死ぬか、屍者に食われて死ぬか、もちろん【
そして────おっと。
背後から振り下ろされる大鎌の刃を防いだのは【
「【エストマ】でステルスからの、【マッパー】【光玉の目】【宝探し】とかその辺を組み合わせて相手の意識の隙と“殺せる道筋”を探り狙い撃つコンボ、か。まあ、それは悪くはないんだけど……────」
常時展開した【マッパー】で常に自分の精神的な隙を探知しつつそこにトラップを仕掛けておけば済む話だとか、僕が意識していなくても念糸操作術式【
マグネタイトで構成された無数の鉤爪が【辺獄舎の絞殺縄】の糸の上を滑走しながら【アクセルクロー】を発動、チェーンソーのような切断力を発揮して大鎌型の霊装の刃をあっさりと斬断。それに動揺した兵士も、背中から生やしたマグネタイトの刃で真っ二つに引き裂いて仕留めて終了。
総じて、雑魚にしてはちょっと強いだけの雑魚兵士、か。
それでも向こうにとっては英雄の一人だったらしく、それがあっさり殺された事実に、兵士達が動揺のざわめきを漏らす。
後はその大鎌持ちの死体の腰に付いていたベルトポーチからハンディタイプの通信機を毟り取り、そのマイクを通じて【死んでくれる?】と囁いてやれば、電子的なプロテクトも保護術式も個人の耐性や装備も何もかもを貫通し、ネット回線越しの遠隔呪詛と同じ要領で相手の通信回線を通じて拡散した呪詛が敵兵達を即死させる。
たまたま通信機が壊れて繋がってなかったヤツとか、まだまだ探せば残敵はいないでもないけど、その辺は周辺を徘徊している【無間等活地獄】の死人傀儡が片付けるか、後からやってくるモルガンネキの部隊がどうにかするだろう。
「アルトリア、ただいま!」
「……随分と、早かったですね!」
ガーゲットの振り下ろした剣をエクスカリバーで弾き、反撃に一太刀振るったアルトリアは、一旦距離を取って後退し、聖剣を構え直す。その肩がわずかに上下しているのを見て、とりあえず壷中天からスポドリのペットボトルを取り出して投げ渡し、代わりに僕が前に出る。
鞘から引き抜いたショートソードを芯にマグネタイトを収束させて形成した巨大な鉤爪を構えてガーゲットと向かい合い、左右に従えたモーターギアを高速回転させながら、しかし意識はグィネヴィアの方へ。コイツだけ、まだまだ本領を出していない。
「お見事です、陛下。流石は本物の聖剣、本物のエクスカリバー。そしてその担い手たるアーサー王陛下────やはり、聖剣に対抗するなら聖剣が必要。ですので、こちらも聖剣を抜かせていただきましょう」
その宣言に合わせ、グィネヴィアの背後で空間が裂ける。割れた空間の亀裂から溢れる純白の後光の中からグィネヴィアが無造作に抜き放ったナニカ、その刀身から溢れる聖性を帯びた純白の光輝は、間違いなく強大な力を持つ聖剣の一振り。
その形態は刃渡り80㎝程の典型的な西洋剣ながら、尖った切っ先を持たない長方形の刀身に刃はなく、武器としての性質は鈍器に近い。だがその刃が破壊力を持たないなどという事があるわけもなく、刀身から溢れた純白の光芒が高圧マグネタイトの光刃を形作り、その刀身に乗った術式が絶対的な切断力を実現する。
「まさかその剣────カーテナですか!? 王家に伝わる戴冠の祭具……それはキャーリサ王女が持ち去り、先日ガイア連合に回収されたはず……!?」
担い手に大天使の力を宿し、あらゆる次元を斬り裂く権能を振るうイギリス王室の戴冠王器────ガイア連合製の大結界が敷かれたロンドンにこれだけの大軍勢を転移させてきたのも、この聖剣あっての事か。
もっとも。
「ええ、その通りですわ。キャーリサ王女といえど、流石に真作のカーテナを譲ってはいただけませんでしたから。これはかつて、清教徒革命の折に真作のカーテナが紛失した際に喪われた代替のカーテナ────カーテナ=セカンドとでも呼ぶべき代物。ですがそれでも、王家の聖剣には相違ありませんので」
「なるほど。グィネヴィア────その始まりからしてブリテン王妃の地位を持つ悪魔であれば、カーテナの力を引き出す事は可能、と」
多分あれは本来、兵器化したアルトリアに使わせる予定だったんだろうな、エクスカリバーと二刀流とかで。まあ今となってはどうでもいい話だが。
「ええ。ですので、こうして────【全次元切断術式】と呼ぶのでしたっけ。こういう事も────………………っ、そんな!?」
「はい残念。使わせないよ」
グィネヴィアの手に握られたカーテナから溢れ出す白光が一気に膨れ上がり、その力を解放しようとした刹那────唐突に、カーテナ=セカンドが帯びていた純白の光が揺らぎ、薄れ、聖剣がその出力を一気に減じていく。当然、その刀身から放たれようとしていた【全次元切断術式】も力を失い、霧散していった。
戸惑ったように自らの聖剣を確かめて愕然としたグィネヴィアの視線が、僕の手元を凝視する。
僕が壷中天から引っ張り出したのはもう一振りの聖剣────グィネヴィアの握るカーテナ=セカンドを鏡に映したように全く同じ形をした第三の聖剣こそ。
「っ…………馬鹿な、それはオリジナル……カーテナ=オリジナル!? 何故!? どうして貴様が、その剣を…………!?」
「そりゃ誰がマン島の大司教を殺したと思ってるのさ。固有ドロップの一つや二つ持ってるに決まってるだろ」
その色合いがわずかに異なる程度で、白く揺らめくマグネタイトの燐光を帯びた刃のない銀色の刀身のカタチは、カーテナ=セカンドと何一つ変わらない。
だがこちらが真作というだけあってその力は段違い、その力を共鳴させこちらから干渉してやれば、セカンドの発動を阻止する事くらい訳もない。
「……何でアリスさんがその剣を使えるんですか? 聖剣って資格がなければそうそう簡単に使えるものじゃありませんよ」
「王権神授説なんて御大層な論理を持ち出して一神教の世界観を取り込んでしまった弊害だねぇ。せっかく神格化するなら最低でも王家の血統オンリーで完結させなきゃ、バックドア代わりに使われるのがオチだってのに……多分ガイア連合なら、僕以外にも何人か使える人、いると思うよ」
眼前の空中に浮かべたモーターギアの刃を指先で弾いてその回転を加速させながら肩をすくめると、驚きに困惑、驚愕、疑惑と、カーテナ=オリジナルを手にした僕へと様々な意図の籠った視線が集中する。中でも劔冑の分厚いバイザー越しに強烈な視線を送ってくるのが、アスカロンVIIを装甲したガーゲットだ。
「貴様、それは我が国の、キャーリサ殿下の………………猿が軽々しく触れていいものではないぞ!」
確か国宝だっけコレ。
まあ滅んだ国のブランドなんて今さら意味があるわけもなし、後生大事に奉っても雑な飾り物になるか、さもなければメシアン共に冒涜されるのがオチというもの、こうしてこちらで実用品として有効活用した方が歴代イギリス王家の皆さんにとっても喜ばしい事じゃないのかな、と思うのだが……ガーゲットにとってはそうでもなかったらしい。
なので煽ってみる。
「殿下……あーあー、名前くらいは聞いた事があるかな。確か、マン島で有象無象の畜鶏と一緒に死んだ有象無象の家畜のトップだったか。家畜の家畜なんぞが家畜の中でトップになったからって何が嬉しいのかちょっと理解できないけど、本当に雑に死んだから特に印象に残る死に方でもなし、王家とか言われても生憎と鶏のブランドには詳しくないからね、ちょっと名前とか言われても分からんし、ごめんねー」
「貴っ様………………遺品を悪用するのみならず、殿下の志まで冒涜するか、この外道がぁああああああああああ!!!!!!」
顔真っ赤。
いや劔冑の装甲越しじゃ分らんけど、覿面に効いたらしい。忠義に溢れる敵を煽るなら、忠誠の対象を嘲笑うのが一番……とは、僕の内界に宿る傾城傾国の女狐の知見である。
そうして、誰しも精神的な耐久値に限界がある事を示すかのように。
ぷつり、と神経の千切れる音が聞こえるかのように。
アスカロンVIIの背部に装備された大型の合当理────マギジェットスラスタから鮮烈に赤く輝く噴炎が吐き出され、反動でアスカロンVIIが爆発的な加速を得る。ガーゲット当人の肉体的な限界すら越えかねない殺人的な加速を経て放たれるのは、螺旋型の大剣を軸に高速回転するマグネタイトの円錐槍による直突き。
隕星にも迫るほどの衝撃力、直撃すれば格上の相手────20レベルかそこら上の敵ですら重傷は免れない必殺の一撃だ。
「あはは、煽って正解だったな!」
「抜かせぇええええ!!!!」
モーターギア、全弾射出。無駄話をして時間を稼いでいる間ずっと高速回転を続けていた円輪刃六枚、その回転でゴムの性質を持たせた【辺獄舎の絞殺縄】の念糸を引き絞り続けていた。その溜めに溜めた張力は、大砲じみた威力の砲撃となってガーゲットを狙い撃つ。
「何の……この、程度ォっ!!!」
小細工と小回りが売りのモーターギアらしからぬ威力の砲撃を、しかしガーゲットは突撃槍の穂先をわずかに傾け、両手脚を巧みに操り、マギジェットスラスタの方向を補正して、最終的に直線的な突撃の軸をずらす事により、突撃の威力を殺さぬままに、エンジンじみた唸りを上げて回転する円錐型の側面で受け流す事に成功する。
左側頭部、右肩、左肘、右脇腹、左大腿、右脛、計六か所を掠め飛ぶように真鍮色の甲鉄が斬り裂かれるが、戦闘続行に支障なし。後は全身を捻りながら体勢を立て直し、突撃は止まらず、相手の懐に飛び込んで必殺の一撃を叩き込むまで。
────まあ、それが出来ればの話だが。
「それ、砲撃じゃなくてボーラなんだよね」
「っ、何とォ!!!?」
射出された六枚のモーターギア、その合間に張り渡された【辺獄舎の絞殺縄】。弾性と粘性を兼ね備えた念糸がアスカロンVIIの甲鉄を絡め取り、砲撃の勢いのまま後方へと引きずっていく。体勢を崩し、しかしそれでも突撃を続行しようとマギジェットスラスタの出力で拮抗しようと藻掻くが、崩れた体勢を立て直すには足らず。
「アルトリア!」
「了解!」
【魔力放出】の反動を轟の玉璽が吸い上げ、推進力へと変換。水平に構えた聖剣に鮮やかな青銀色の極光を宿し、崩れた姿勢をアルトリアが狙い撃つ。その胴体を深々と聖剣で斬り裂き、腹部から上下に斬断されたアスカロンVIIが鮮血を撒き散らして地面に転がった。
その死に様にグィネヴィアが息を呑み、そして深々と溜息を吐く。
「キャーリサ王女に紹介された者だから物は試しと使ってみましたが、やはり脆弱なヒトの身ではどうにもなりませんか…………叔父様、お願い致しますわ」
『────承知』
グィネヴィアの呼び掛けに応える声、それに伴って弾けるのは視界を焼く灼熱の閃光。白熱するマグネタイト光は雷電の速度を保ったまま収束して具象化、その場に新たな高位悪魔が顕現する。
現れたのは純白の甲冑に身を固めた騎士。
白き甲冑の上から美麗な装飾の施されたサーコートを羽織り、矢印のような逆棘状の槍と菱形の盾、両刃の長剣で武装し、鮮やかな白に彩られた神馬に騎乗する美麗なる軍神────『軍神ランスロット』。純白の騎士は無言のまま手にした槍を旋回させ、こちらに向ける。
「アーサー王口説くつもりで不倫相手同伴とか、常識的に考えて馬鹿過ぎない?」
「…………叔父様」
額に青筋を浮かべたグィネヴィアの短い請願に短く頷きを返し、ランスロットが馬腹を蹴った。純白の騎士が何も言わないのは、グウィネヴィアに遠慮しての事か、それとも不倫野郎と呼ばれたら返す言葉がないからか。
神馬が甲高い嘶きを上げ、その蹄で最初は公園の石畳を、そして次第に流れる風それ自体を足場に蹴立てて走り出す。手にしたその神槍の槍先からは雷電と霧が溢れ出し、ランスロットの騎馬が風を蹴立てて走るたびにその内側から紫電の輝きを散らしていく。
まあ、構わない。
視界の中に表示されるCOMPメニューから悪魔召喚プログラムを呼び出し、新たな悪魔を召喚。
思考トリガーのみの召喚は一瞬────僕の召喚に応えて現れるのは『軍神ホンカンカムイ』。アイヌの英雄神オキクルミと同一視され祀られた源義経という特異な経歴を持つ軍神は、僕のシキガミであるシトナイの本霊にしてオキクルミの母神である神樹チキサニカムイがオキクルミの母であるという縁により召喚が可能となった高位神格だ。
独特の幾何学模様や毛皮で飾られたアイヌ風の装束の上から和装の甲冑を纏う華やかな若武者は、鮮やかな黒毛の名馬に跨ると雷電を纏う神剣クトネシリカを抜き放ち、ランスロットの突撃を迎え撃った。二柱の軍神は互いに雷電を振り撒きながら天を奔り、互いの馬を駆って激突を繰り返しながら空へと駆け上っていく。
「残念だったね。不倫野郎はあっちの相手で忙しいそうだよ」
「…………王妃として、ここまで虚仮にされたのは生まれて初めてですわ」
「それはそうでしょうね……ええ。何だか向こうが可哀そうになってきましたし、アリスさん、ちょっとその辺で…………」
アルトリアにまで憐憫の表情を向けられたグィネヴィアは、屈辱に身を震わせながら全身から白い蒸気のようなマグネタイト光を立ち昇らせ、全身の輪郭を崩しながらその霊基を膨張させ、邪龍グィネヴィアとしてのもう一つの姿────赤竜の化身であるアーサー王と対をなす巨躯の白竜
「アルトリア、合わせて!」
「了解!」
【魔力放出】で生み出した暴風を聖剣エクスカリバーに乗せて増幅し、巨大な大気の鉄槌として射出するアルトリアの【風王鉄槌】。
刃のように収束させた【マハガルバリオン】二発をX字に交差するように射出、六枚のモーターギアを『風の玉璽』のホイールへと合体させる事で出力を増した【雷霆蹴り】に乗せて飛ばした【ザンバリオン】で撃ち抜く事で、発生させた竜巻に呑み込んだ標的を破砕する融合スキル【ソニックトルネード】をそこに上乗せし、巨大な上昇気流が渦を巻きながら天へと昇る。
それは、雪化粧のような純白の鱗を連ねた美麗な白竜へと変身途中だったグィネヴィアを下方から殴りつけ、ロンドン上空を薄っすらと覆う雲の天蓋を突き抜けて、そのまま都市を守るバブル状の守護結界の外、高さ数千キロメートルの高空へと吹き飛ばした。
「なるほど、巨体の悪魔が都市内に現れた場合は、こうやって対処すればいいのですね! 参考になります」
「後は仕留めるだけだ。ここで逃がしたら後々クッソ面倒になるのは目に見えてるからね!」
空に向かってもう一発打ち上げた【ソニックトルネード】の竜巻をアルトリアの轟の玉璽が吸い上げ、ラムジェット理論で圧縮放出する事で放たれる高温高圧────物質が一定以上の圧力と熱を加えられることにより臨界点を越える事により発生するのは、液体と気体の区別すら失われた超臨界流体によって構成される大気の壁だ。
気体の拡散性と液体の溶解性を併せ持つ超臨界流体の渦を風の玉璽の力で操作し、渦巻く嵐の路面へと作り替え、その上を走りながら僕とアルトリアは空へ向かって一直線で駆け上がる。
それを迎え撃つかのように恨み言全開のグィネヴィアが【アイスブレス】や【ポイズンブレス】、あるいは【羽ばたき】に乗せて放たれる【マハシバブー】の緊縛呪といった状態異常の乱れ撃ちを降り注がせるが────それこそ無意味だ。
空の道を駆け抜ける合間に拾い上げたカーテナ=セカンドと合わせ、二本のカーテナで二刀流スタイルになって発動させる【全次元切断術式】によって空間を遮断して弾き、逆に斬断された空間から溢れる残骸物質────見た感じ物質のように見える切断された三次元空間の断面をぶつけてグィネヴィアの鼻面を叩き潰す。
その痛みに思わず悲鳴を上げて首をのけぞらせたグィネヴィアに向かって、あらぬ方角から深紅に燃える魔法の火箭が撃ち込まれた。【アギバリオン】に【エイガオン】【ムドバリオン】【シバブオン】を複合させ呪詛と灼熱で標的を焼き抉る閃熱の一撃は、グィネヴィアの左眼へと突き刺さり、結晶化した呪詛の棘が無数に突き出して眼球と眼窩を内側から引き裂いた。
前肢で顔の左半分を抑えたグィネヴィアが上げた悲鳴を掻き消すように、限界で無理矢理に押し込めた沸騰寸前の怒りの熱で鼓膜を殴りつけるように強烈な叫びが響く。
「私の妹に手を出したのは、アンタかぁアアアアアアアアア!!」
両翼から白い飛行機雲の航跡を曳いて飛来する鈍い赤鱗の龍王ワイバーン、ファッションショーのランウェイを渡るようにその背中に立つのは鮮やかな赤髪の少女────モルガンネキのシキガミ『バーヴァンシー』。中空に浮かぶ白竜を鋭い眦を吊り上げて睨みつけるその表情は、生来の鋭い目つきも相まって相当の迫力だ。
「バーヴァンシーお姉ちゃん……」
「グィネヴィアなんぞより、向こうの顔のが普通に怖いな」
「……後で怒られるでしょうか?」
「大丈夫。それは多分モルガンネキの仕事になるからね」
「もっと怖いじゃないですかそれー!」
飛来するバーヴァンシーの背後には、同様に龍王ワイバーンに騎乗したプーサーニキや英傑シキガミの姿が見える。どうやらモルガンネキが手配したイギリス支部の援軍が到着したようだ。
可能なら彼らが来る前にグィネヴィアを仕留めてしまいたかったのだが……まあ仕方ない。
バーヴァンシーの顔が余程に怖かったのか、それとも分が悪いと気付いたのか、グィネヴィアは翼を打ち振って加速し戦場から離脱しようとするが。
「アリスさん、グィネヴィアが逃げます! 追わないと!」
「大丈夫、その必要はないよ……逃がさないからね!!」
戦場の外、遥か彼方のイギリス支部に設置された儀式場からモルガンネキが発動した収束【メギドラオン】の光弾が彗星のように飛来して、グィネヴィアの背中に直撃。さらにバーヴァンシーが伸ばした呪詛の赤糸がその翼へと絡み付き、英傑シキガミの一体であるトリスタンが放つ疾風属性の魔法矢が片翼を乱打する。
これでもう逃げられないとは思うのだが……だからといって手を緩める理由にはならないな。逃がすものか、逃がさない────そしてもう絶対に逃げられない。
「夜のとばり、朝のひばり。腐るような、夢のおわり……黄昏を喰らえ! 築基・煉精化気・煉気化神・煉神還虚・還虚合道、以って性命双修、能わざる者墜ちるべし、落魂の陣────領域展開【雲笈七籤・墜落の逆さ磔】!!!!」
空が、色褪せていく。
黄昏色に染まる。
あるいは幸福な夢から醒めて悲惨な現実へと引き戻されるように。
あるいは満ち足りた人生に死の予兆を告げるように。
あるいは繁栄の歴史に終わりを預言するように。
曇りなき高度数千キロメートルの空へと呪いのような黄昏色の染みが滲み出て、その中から溢れ出す無数の影。のっぺりとした影で形作られた黒一色の蟲の大群────イトトンボ、オオミズアオ、オオスズメバチ、カゲロウ、コノハムシといった種類も大きさもバラバラな蟲の群れが天を覆うような大群と化し、空を侵食する黄昏の中から溢れ出し、黄昏の光を纏ったまま自儘に空を飛び回り。
やがて溢れ出した膨大な影蟲の大群の中心から、果てしなく巨大な蚊柱のような影が出現する。
それは翼持つ巨大な蚯蚓のような。
あるいは蜻蛉の翅と地蟲のごとき胴体を持つ妖龍のような。
蟲群との境界すら曖昧な“奈落の虫”が黄昏の光を背負い、眷属たる影蟲の軍勢を引き連れ、空を覆っていく。
────領域展開【雲笈七籖・墜落の逆さ磔】。
個人の心象空間によって世界を侵食し、自分にとって絶対的に有利な戦場を構築する領域展開の中でも、一際異端の性質を持つ業。
本来なら通常の領域展開はその領域を世界から閉じ、閉鎖された異界として敵と術者自身を閉じ込め、逃げ場のない戦場に敵を引きずり出すものだが、この【雲笈七籖・墜落の逆さ磔】は開放型だ。その術式にあえて“領域を閉じない”という縛りを課す事により術式の強制力と効果範囲を引き上げるというもの
反面、領域を閉じないままに心象世界を具現化する行為は、例えるならばキャンバスを用いず空中に絵を描く程の難易度を持つ超絶技巧であり、何より領域を閉じない事で標的の逃走を許すリスクと引き換えになる────逃げられればの話だが。
生憎とこの【雲笈七籖・墜落の逆さ磔】が司る理は物理法則を越えた概念的な“落下”だ。何者であれ領域の空間に囚われてしまえば落下するしかなく、そして落下し続けているのだから飛ぶ事も走る事も、当然ながら空間を越えて転移する事すらできない。
そして同時にこの領域を構築する肝────術式形式【協力強制】。
契約術の変種であり、術式に課した何らかの条件に相手自身が何らかの同意を返す事により契約を成立させ、相手自身の力を上乗せする事で術式の強制力を絶対のものとする技術。
【雲笈七籖・墜落の逆さ磔】の場合、設定された条件は『現実は甘くない。だからお前の都合の良い夢は叶わない』という現実主義に対し『都合の良い希望を抱く』『現実ではその希望が叶わないと自覚してしまう』というものであり。
「逃げ出したよな────勝てないって認めたよな? なら逃げられないなぁ!!!」
捲土重来を期しての撤退を選び、翼を打ち振って逃走するグィネヴィアが落下の理に捕らわれる。協力強制の条件に嵌まった以上、抵抗など不可能。無数の影の蟲に纏わりつかれながら、抵抗する事すらできずに周囲の空間ごと黄昏の空へと引きずり込まれていく。
本来なら他二つの領域展開と多重発動するための業ではあるが、向こうから喧嘩を売ってきた挙句に逃げようとする相手を逃がさないために、これ以上都合のいいものもない。
「アルトリア、どうする?」
「決まっています、決着をつける!!!!」
アルトリアの脚に装着された『轟の玉璽』が轟然と唸りを上げ、【魔力放出】の風を吸い上げてアフターバーナーを全開に加速する。噴射されるその超臨界流体の壁を『風の玉璽』で調整して道を作り、二人掛かりで空を走りながら僕とアルトリアは黄昏の空の中心へと飛び込んでいく。
△ △ △
【悲報】地方防衛スレ・海外版(イギリス)Part.124【マン島、一撃死だった件】
768:名無しの転生者
やっぱり戦後処理は地獄だぜーフーハハー!!!
770:名無しの転生者
それはそう。
772:名無しの転生者
言うて敵拠点を潰しましたハイ終わり、ってな訳にもいかないからな。
775:名無しの転生者
整備部は地獄じゃけん。
777:名無しの転生者
整備部はまだマシだろJK。今回はマークザインが一人で全滅させたせいで、壊れた兵器の修理とかその手のアレがないんだからな。
事務課はもっと酷いぞ。今回の大規模出動の後処理もようやく終わりの目途が立ったところだよ。
779:名無しの転生者
それを言うなら情報部はもっともっと酷いからな!
今ようやくタバコ休憩もらって抜け出してきたところだけど、マン島のメシアン拠点が方々に手を伸ばしていたみたいで、何をどういう風に動かしていたか資料の確認が全然終わらんがな。
特にマン島の首魁だったキャーリサ元王女は旧軍にやたらと影響力が強かったせいでな、ガイア連合内の旧軍人の中にも結構な数の内通者がいたみたいで、多分これから一月くらい旧軍系の構成員の白黒確認でデスマの予定だぜ…………死ねるw
783:名無しの転生者
>>779
イキロ
785:名無しの転生者
乙頑張れ
788:名無しの転生者
どこも地獄なのは一緒なんだな……。
792:ロンドン在住
あの、ちょっといい?
ロンドンの様子がちょっとおかしいんだけど。
796:名無しの転生者
>>792
どうした?
799:名無しの転生者
ロンドンのイギリス支部に居残ってる事務課なんだけど、何かさっきから町の様子が妙なんよ。
やたらと銃声や爆発音が聞こえてきたりして、妙だなとか思って支部の窓から確認してみたら、多分ちょうどパディントンの、ジョースター・ブランドー記念公園あたりで何か煙が上がってるみたいで。
800:名無しの転生者
>>799
どう見ても戦闘。
802:幼女
ちょっと待て、何だその公園kwsk!?
805:名無しの転生者
>>802
某DIO似の現地民がシャドウ生やしてパレス作ったんで、同じくJOJO似の現地民がペルソナコート装備でパレスに突入して殴り合った戦闘跡地を公園として活用しとる。
なお当事者のジョナサンとディオは全力で殴り合った末に和解して、今は仲良くコンビでシェルター経営してるっぽい。
なお専用スレはこちら
つ ttp:gaia.com/test/read.cgi/thread002/3765492534
807:幼女
>>805
感謝。
しかしマジか……そんなものがあるとは。
これはもう、もう一回イギリスに行くしか…………。
809:名無しの転生者
あの、こちら警備部門なんだけど、ちょっと昼頃からアルトリアちゃんの姿が見当たらないんで人員割いて探し回ってたんだが……その状況で街中で戦闘って、マ?
811:名無しの転生者
>>809
マ。
ドローン飛ばして確認したけど、ガイア連合でもメシアンでもなさそうな兵士がたくさん、しかも多脚戦車やKMFまで持ち込んでるっぽい。
813:名無しの転生者
うおおい、こんな状況でアルトリアちゃんがいくえふめいって…………
816:名無しの転生者
どう考えても騒動のド真ん中にいるよね絶対……主人公補正的に考えて。
818:警備
ヤメロォ!
探しに行くの俺達の仕事なんだぞお!
820:名無しの転生者
これは新しいデスマの予感…………
822:名無しの転生者
今ちょっと【千里眼】して確認してみたけど、謎の軍隊と戦闘してるのアルトリアちゃんとアリスネキみたい……。
つ[画像1][画像2][画像3]
825:名無しの転生者
画像に映ったアリスネキが全部カメラ目線なのって…………
826:名無しの転生者
バレテーラ
828:名無しの転生者
ま、まあアリスネキが付いてるなら大丈夫だろ、多分……。
マークザインの同化で余裕やろJK
830:名無しの転生者
いや、マークザインは現在空港で整備中で動かせないんやが……
832:名無しの転生者
なおアリスネキの相棒のシキガミちゃんもマークザイン整備のために空港に出向いてて不在とする。
834:名無しの転生者
アウトォ!
836:名無しの転生者
ま、まあ上澄み勢のアリスネキなら大丈夫だろ……大丈夫だよネ!?
838:ドローン撮影班
現在ドローンで撮影中…………なんだが、ちょっとマズいかもしれん。
839:名無しの転生者
マズイて、何が?
何かヤバい代物でも来てるの?
840:ドローン撮影班
それがな、今日のアリスネキって割とスカート短めのミレニアム制服コス霊装にローラーブレード装備で結構派手に動いてるはずなのに、絶対領域の中が全然撮れへんの。
ドローンの角度とか高度とか色々変えてもスカートの防壁が全然抜けないんよ。
つ[動画]
842:名無しの転生者
あ、何か余裕っぽいですね。
843:名無しの転生者
……一瞬だけだが心配して損したよw
844:名無しの転生者
レベル的に考えてもジッサイ余裕だから仕方なし。
847:名無しの転生者
つーか絶対領域の中とか見ても見慣れたブツがぶら下がってるだけやろJKww
850:名無しの転生者
>>847
それがええんやろがい!
852:名無しの転生者
オメーホモかよwwwww
854:名無しの転生者
何ならお○ん○んが付いてる分お得なまである。
857:名無しの転生者
というかアリスネキ、ミレニアム制服なのに武器がレールガンじゃないって……。
859:名無しの転生者
スタイリッシュなガンカタスタイル+魔法+時折格闘?
言うて衝撃属性とか疾風属性って見た目じゃ分かりづらいし、そもそも本当にそれだけなのかも分からん。
861:名無しの転生者
時折敵があり得ない方向に吹っ飛んだり戻ってきたりするからな。あれどういう仕掛けなんやろ?
874:警備
ぐええええええええ……居残りの第3、第4、第5、第6支隊の内、第4、5にモルガンネキ直々の緊急出動命令…………やっぱり緊急出動は変わらんやね……
877:名無しの転生者
>>874
ドンマイ
◆ ◆ ◆
固有領域【雲笈七籖・墜落の逆さ磔】。
落下の理を刻んだこの固有領域の外観は、無数の影蟲が飛び交う黄昏の空────で、あるように見える。
実際にはその光景すら表向きのものに過ぎず、黄昏の空や、それと共に現れる影蟲の大群や、それを引き連れて空を泳ぐ奈落の虫龍ですら、実体の存在しない通常空間と領域の境界線上の光景ですらない。世界を染め上げる黄昏色の空はあくまでも展開した領域の開口部に過ぎず、そしてそれは影の蟲も同様。
影の蟲は落下の理を広範囲へと拡大させるため、小規模な開口部を無数に作り、そこに蟲としての性質を与える事で追尾や誘導といった機能を持たせているに過ぎず、それは黄昏の空の中心に座する“奈落の虫”でさえも同様だ。
ならばこの固有結界の内界とは、どのような光景になるのか。
その世界は、まるで臓腑のようだ。
闇のように濃密な夕陽の光と、光との区別すら曖昧な夕闇を溶かし合わせるようにして、切り絵のように切り刻んだ夕暮れの空を切り貼りして大渦を描き出したような異様な世界は赤黒い闇一色に染まり、その赤はまるで生々しく脈動する何か巨大な生物の臓腑へと呑み込まれているかのようにすら見えた。
その中心に、落下し続ける白竜の姿のグィネヴィアが見えた。
果てのない“空洞”の世界に呑み込まれたら、もう助からない。武器を振っても魔法を撃っても、それらを含めてひたすらに落ち続けるだけなのだから、果てしない落下に囚われて歩く事も飛ぶ事も、上下を定める事すらできないまま死ぬまでひたすら落ち続けていくしかなく、開いたままの領域の出口は無情にも遠ざかっていく。
白い翼を繰り返し羽ばたかせて果てのない空洞から必死に脱出しようとするものの、その羽ばたきが揚力を生み出す事はなく────刹那、何もない空間それ自体に向かって転がり落ちて激突し、その落下の衝撃に悲鳴を上げる。
【雲笈七籖・墜落の逆さ磔】の内部に存在する協力強制────無限落下に抵抗できなくなるだけでなく、何かしらの希望を抱いた瞬間、希望の大きさに比例した威力で落下の衝撃が襲うというもの。むしろ翼を振るう度に傷が増えていく。
この渦巻く黄昏の中で一際目立って夕陽を白く照り返す竜鱗へと狙いを定め、僕はCOMPから爆撃管制アプリを起動。
視界内に浮かぶ無数のターゲットマーカーが標的を捕捉。グィネヴィアの全身をロックオンすると共に悪魔召喚プログラムを通じて呼び出されるのは、メシア系天使を概念加工した使い捨ての追尾誘導弾『穢教滅閃』40発────苦悶の声を上げながら顕現するのは歪み捻じれて霊基それ自体を崩壊寸前まで酷使しながら怨念の塊と化した“元天使”。万能属性の高級型ではない、全て廉価版の呪殺属性弾だが【呪殺ブースタ】や【呪殺貫通】を始めとする呪殺系のパッシブが乗るため呪殺属性を得意とする僕にとってはむしろ万能系よりも強力な武器だ。
「────ターゲットロック、ファイア!!」
迫りくる穢教滅閃の砲弾に気付いたグィネヴィアはぐるりとその首を巡らせてこちらを捕捉し、口腔から連射する【アイスブレス】、広げた翼からは【羽ばたき】を連発し、さらに【マハブフーラ】【マハブフダイン】【マハザンマ】【マハジオンガ】【マハサイオ】と次から次に魔法を乱れ撃ちして弾幕を張り、迎撃を仕掛けようとして────その度に何もない虚空へと激突しては反撃の手を止めてしまう。
この無限大に広がる落とし穴の内界で何かしらの希望を抱けば、“現実”へと激突して落下のダメージを受ける。
希望とは、戦闘においては至極当然の思考だ。助かった、まだ大丈夫、勝てる、行くぞ逆転だ────そんな感情すら含まれており、およそあらゆる戦闘思考に希望が付随する以上、ありとあらゆる戦闘行動を落下の衝撃によって制止されるという事に他ならない。
結果、マトモに撃ち出せた弾幕は半分程度────それでも発動した魔法の迎撃を受け、飛来する穢教滅閃の砲弾群は幾重にも連鎖して穢教滅閃が呪殺属性の黒炎を散らしていく。その中で半分程度の砲弾は弾幕の網をすり抜けてグィネヴィア本体に迫り、巨大な鉤爪から苦し紛れに放たれた【メガクロー】では迎撃し切れずに大量の黒炎を浴びて鱗が砕け、皮膚や肉が焼け爛れてグィネヴィアは悲鳴を上げる。
結果、弾ける爆炎をくぐり抜け、急降下してくるアルトリアと僕の存在を察知したグィネヴィアは体勢を立て直し、その両翼を打ち振って【羽ばたき】に乗せて飛ばしてくる【マハシバブー】に対して、こちらは【ザンダイン】をぶつけて相殺。衝撃波の槍に貫かれて緊縛の暴風が弾け飛び、グィネヴィアの元まで押し寄せた余波がその鱗を波立たせ、引き裂いた嵐の合間を僕達はA.Tで駆け抜けていく。
その背後から躊躇なく落下の異界へと飛び込んでくるワイバーンの騎影が一騎。その背に乗っているのは真っ赤な髪を靡かせたバーヴァンシーだが、普段からきつめの顔立ちが今では明らかに怒り狂っているだろう事がありありと分かる。
「ちょっとアルトリア、一人で突っ込んでるんじゃないわよ! そんな事だから毎度毎度『アーサー王の異名は猪』とか言われるのよ、このお馬鹿!」
「一人じゃありません! ちゃんとアリスさんと一緒に行動しています! むしろバーヴァンシーお姉ちゃんこそ部隊の他の方達を置き去りにしてるじゃないですか!」
「そういう問題じゃありません! 後でお母様に叱ってもらうから覚悟しておく事ね!」
「なっ…………お姉ちゃん!?」
あー………………僕知らない。
グィネヴィアを取り囲むようにモーターギアを飛ばし、それを基点に【
コイツにはアルトリアの経験値になって欲しいので。
王妃の権能を持つ不倫女とか絶対にいらんので、邪龍なら邪龍らしく将来の騎士王のため、立派な手柄首になって欲しい(薩摩並感。
そうこうしている内に、救援部隊の他の面子も領域内に突入してくる。イギリス支部の最大戦力でありアルトリアの父でもあるプーサーニキを筆頭に、主力の英傑シキガミであるランスロット、ガウェイン、トリスタンの三騎士が揃っている。
未だ戦後処理が終わらないマン島の駐屯部隊から躊躇なく最大戦力を引き抜いてきたらしい。モルガンネキも、よくやるものだ。
「アルトリア、無事か!」
「お父さん! はい、色々とありましたが大丈夫です! ほぼほぼどうでもいい事ばかりでした!」
「アルトリア、少し背が伸びたかな。それに、その……………………少し図太くなったような?」
「ふ、太ってませんよ!? せいぜい先月と比べて2㎏程度ですから!!」
背後で感動的かつ微妙にぐだぐだな家族の会話が繰り広げられている様子だが、まあ僕が邪魔しちゃアレだろうし、親子の会話の合間に邪魔が入らないように整えつつ用意をしておくか、って事で。
既にステータス低下は掛けられるだけ掛けてあるので、【辺獄舎の絞殺縄】を全身に絡めてー、魅了、幸福、睡眠、麻痺、凍結その他色々ありったけの状態異常を掛かるだけ掛けて身動き一つ取れない状態で拘束してーの、【万色悠帯】でアナライズして耐性やスキルを丸裸にしーの……案の定、生意気にも【不屈の闘志】と【食いしばり】と【生還トリック】を持っていたので、【
「でもあまり無茶な事はしないように。アリスニキが一緒だからといって万が一という事もあるんだ。もし何かあったら本当に洒落にならないからね」
「だ、大丈夫ですよ! 私だって一人前の騎士なんですから!!」
「それは否定しない。だけどね、それでも君が僕やモルガンにとって大切な娘である事には変わりないんだ。ちゃんと帰る場所があるという事を忘れてはいけないよ。何より────」
と、そんな事をやっていると軍神ランスロット────イギリス支部所属の英傑シキガミではなく、グィネヴィアが引き連れてきた間男の方が【雲笈七籖・墜落の逆さ磔】の開口部から紫電を散らす霧の渦と化して飛び込んでくる。
レベルも技量も総じてグィネヴィアより数段上で、割と高位の異能者であるアルトリアを基準にしても結構な強敵だったが、槍と純白の神馬を失った上に、何より背中を始めとして全身のところどころに深い傷を負っている辺り、ホンカンカムイはいい仕事をしたのだろう。
「────特に今回は、警備をすり抜けてこっそり本部を抜け出してきただろう。その行為は、君が思っているよりも大勢の人に迷惑を掛けているんだ。せめて一人くらいは護衛を付けていかないと」
「う、それは……申し訳ないと…………」
「はいはい、後でアタシが一緒に謝りに行ってあげるから、今はしっかり叱られなさいな」
「あぅ……お姉ちゃん…………」
窮地のグィネヴィアを救うべく背後を衝く形で現れた軍神ランスロットの前に立ち塞がるように、英傑シキガミのランスロットが聖剣アロンダイトを抜き放ち、その突撃を真っ向から受け止める。そうして同じランスロット同士の対決────にはならず、同時に反応したガウェインとトリスタンが素早くカバーに入り、力で押し切ろうとした軍神の肩や足にトリスタンの牽制射撃が入ると共に、ランスロットとガウェインの二人掛かりで相手の剣を押し返す。
こちら側はランスロットに加えてガウェインとトリスタンまで揃っているのに、ランスロット単騎の相手が勝てるはずもなく三対一で圧倒され、それに気を取られているところに背後から追い掛けてきたホンカンカムイに背中を深々と斬られて撃破。
それに合わせて、家族の対話というか父親からの説教もそろそろ切り上げ時のようだ。タイミング的にもちょうどいいだろう。
「あ、そろそろ終わりました?」
「あ、はい………………ええ。終わりましたけど…………って、もうほぼほぼ終わってるし…………」
「うん、こっちも一通りやれるとこまで片付けといたから、とりあえず不倫ドラゴンにトドメ刺しちゃって」
「あっはい…………何だか微妙に納得しづらいような……アリスさんが絡むとこうなるんですね……」
いまいち釈然としない表情を浮かべて溜息を吐いたアルトリアが前に出て、死に体の白竜に向かって聖剣を翳し、その切っ先を向けた。
プーサーニキやバーヴァンシー、彼女の家族たちに見守られ、大きく深呼吸すると共に、その聖剣に清らかな光が灯る。
「アリスさん……私は、王になろうと思います。お父さんやお母さんのように、孤高であれど、友と、臣下と、民と共に歩んでいく…………そんな王に」
「アルトリアがそうしたいと思うなら、それでいいんじゃない?」
「ええ。ですから、今は────見届けてください」
振り上げたエクスカリバーの刀身の上で、鮮やかな蒼銀の輝きが膨れ上がる。溢れる星の輝き────ブリテンの王としての権能がこの国の地下を流れる龍脈から膨大な力を吸い上げ、王として一歩前へと踏み出したアルトリアの握る聖剣の刀身へと収束していく。
「この灯りは星の希望。地を照らす命の証。決着をつけるぞ!! ────【
そうして聖剣が振り下ろされる。
刀身から溢れた極光が解き放たれた。
ブリテンそれ自体を熱源とする莫大な命の奔流が生み出す極光は、グィネヴィアである白竜へと直撃し、荘厳に燃え上がる蒼銀の輝きが視界を焼いていく。
既に息をするだけの肉塊と化していた邪龍グィネヴィアはその巨体からすればほんのわずかな残骸を残し、焦がれたエクスカリバーの輝きによってその命を完全に終えた。
そうして半終末前の旧王朝の残滓に端を発した事件は、完全な終幕を迎えたのであった。
◆ ◆ ◆
リザルト。
グィネヴィア……つまり白竜アルビオンのフォルマが入手できた。
そして同時にランスロットのフォルマも、だ。
二つとも、今回の事件の報酬として受け取った。
元々、マン島攻略のMVP報酬として英傑シキガミの作成は決まっていたわけだが、どんなシキガミを作成するかまでは未定だったのだが……それも今回の一件で決定した。
グィネヴィア=アルビオンとランスロットのフォルマ。
⑨ニキがパイロットスーツ代わりとしても愛用しているコスプレ霊装『アロンダイト』の運用データ。
英傑シキガミの方のランスロットが持つ【無窮の武練】のスキルカード。
モルガンネキが無惨ニキから提供された技術を元に完成させた“サーヴァントカード”の、試作第三号。
二本のカーテナ。
バージルニキから購入した【次元斬】【剣術】のスキルカード。
僕自身の血肉、人体数セット分。
その他諸々の素材。
その辺を組み合わせ、シキガミ素体に突っ込んで。
「カーテナ……二本ともですか。確かにブリテンそのものの象徴であるアルビオンのフォルマを利用すれば、英国圏内でしか使えないカーテナも問題なく扱えるよう術式を組む事は可能ですが……しかし思い切りましたね」
「言うて、僕一人だと使わない代物ですから。それくらいならそれ相応の使い手を別に用意すべきでしょう」
報酬が豪華すぎる…………という程でもない。ぶっちゃけ、ロンギヌスの穂先とカーテナ二本はむしろいらん厄ネタを国外廃棄するための大義名分みたいなものなので、それを引き取るための迷惑料も兼ねている。
で、そんなこんなで諸々色々話し合って後。
ロンドン市内、旧ロンドン・ヒースロー空港。
半終末期が訪れる前のロンドン大都市圏に存在した六つの国際空港の筆頭であり、かつてのイギリス国内における最大規模を誇った空港だ。半終末期が訪れると共に国外交通がほぼ死に絶え、民間空港としての役割はほぼ廃れてしまったものの、今はガイア連合イギリス支部によって改装され、ガイア連合の空軍基地としての役割を果たしていた。
半終末前から発着する便は減ったとはいえ軍用となった空港が稼働していないわけでもなく、ロンドン周辺の空域を定期周回する哨戒機や、イギリス各地に物資を輸送するための輸送航空艦などが行き来しており、空港の構内にはひっきりなしに航空機や航空艦のエンジン音が響いている。
それは航空機が科学のみによってではなくオカルトによって稼働するようになってからも、何一つ変わっていない。
そんな旧ヒースロー空港の滑走路上にはガイア連合呉支部に所属する航空艦ホエールキングの一隻が停泊しており、その隣には五機の人型機動兵器が並んでいる。
エルフ・ブル。
シャイニングガンダム。
ジェフティ。
アヌビス。
そして、Mk.Sein。
マン島攻略の援軍に到着した五機の機動兵器はイギリス支部と呉支部との技術交流を兼ねてロンドンで整備を受け、既に万全の状態だ。各機体の足元にそれぞれのパイロットとそのシキガミ達が集合しており、またホエールキングにも呉から派遣されていたロボ研や整備部の面々が既に乗り込んで、出航の時を待っている。
どうやら、この場に到着したのは僕が最後であるらしい。
「すいません! ちょっと遅くなりました!」
既に空港のエントランスで、イギリス支部で世話になった人達とは挨拶を済ませてある。
その後ちょっとだけ休憩したら、思ったよりも時間が立っていた。少しばかり思うところがあったとはいえ、やはりのんびりし過ぎたのはいけなかった。時間に余裕がないのは、やはり良い事じゃない。
「いや、問題ない。5分前行動とまでは行かないが、まだ3分前。十分に時間内だ」
「厳密には二分半だぞ。アンタにしちゃカウント甘くないか?」
「四捨五入すれば一緒だ。どうせ間に合ったのだから、大した問題ではない」
自分の存在をアピールしながら駆け込み乗車よろしく手を振って滑り込むと、コートの内側から取り出した懐中時計の表示を確認したバージルニキの脇腹を、ダンテニキが軽く小突いた。
「それよりマスター、時間までまだ3分あるけれど、本当にやり残しはないの?」
「大丈夫だよ。後でいくらでも、どうとでもなるし」
「そう。……ならいいけど」
イギリスで時を過ごす事、おおよそ一週間。邪龍グィネヴィアとジョージ・ガーゲット中佐率いる一派が起こしたロンドン市内での内紛……あんな事件はそうそう起こらず、それなりに平穏な時を過ごす事ができた。
モルガンネキと作成中の英傑シキガミに関して話し合ったり。
アルトリアが請け負った悪魔退治に同行したら、やたらと高レベルのメシアン残党が襲ってきたり。
アルトリアがレベル上げの異界攻略に行くのに付き合ったら、その異界が敵対的な高位悪魔に乗っ取られていたので解放したり。
近場の孤児院に慰問に行くアルトリアに同行したら、その孤児院が過激派メシアンに乗っ取られていたので制圧して子供を救出したり。
普通にイギリスを観光して、同行するアルトリアと一緒に悪魔関連の事件に巻き込まれたり。
アルトリアと一緒にマン島の戦後処理に出向いたら、道中の船で巨大なクラーケンに遭遇したり。
マン島の過激派拠点から見つかった資料についてイギリス支部の情報部と話し合いつつ、捜査に協力したり。
情報部の依頼を受けてイギリス支部に属する旧イギリス軍からの転向者の中に潜むメシアン……というかキャーリサ大司教のシンパの洗い出しに協力したり。
アルトリアの出向に付き合ってトムニキが管轄するお隣の支部であるホグワーツに出向いて、軽い授業をしつつ決闘騒ぎに巻き込まれたり。
同じくホグワーツにて、アルトリアが発見した謎の地下室に踏み込んだらそこが異界化していて、異界の主だったやたらと巨大な邪龍バジリスクを仕留める事になったりとか。
まあだいたい平穏………………あれ?
何だか平穏の定義がゲシュタルト崩壊している気がするが……アルトリアの主人公補正に引っ張られでもしたか……ま、別にいいか。
ともあれ。
邪龍グィネヴィアが起こしたあの事件。
あの事件の絵図を描いたのは、マン島の過激派メシアンのトップだったキャーリサ大司教であったらしい。元々軍事畑の出身であるキャーリサ大司教は旧イギリス軍に強い影響力を持っており、半終末当時の国家体制の崩壊に際してガイア連合に所属するようになった旧イギリス軍人に対してもその影響力は保たれていた。
何せ、正当な王家の姫なのだ。しかも無能どころか、半終末以前から高いカリスマと実力を内外に示していた将来の希望となり得る傑物であり、その生存もはっきりしていた。忠誠の対象が民衆や社会であればガイア連合の一員として誠実に戦ってくれるだろうが、旧王室や旧政府に忠誠を誓っていた連中であればどうか。
彼らが忠誠を誓ったのはかつてのイギリスであってガイア連合ではないし、いかにイギリスの民を守るという大義名分があろうが、いかにアルトリアがアーサー王の再来であろうが、転ぶ────あるいは表返る者はそれなりにいてもおかしくはない。
その筆頭が、ジョージ・ガーゲット中佐だったようだ。
元々人種差別的な傾向があったものの真っ当な軍人だった彼は、メシア教会過激派による核攻撃とそれに続く異変や軍事侵攻によって旧来の国家体制が崩壊して後、軍人として真っ当に民間人を保護しつつ保護しつつ半ば流されるようにしてガイア連合へと合流し、しばらくの間は真っ当に兵士を率い、民衆を守りながらガイア連合の指揮下で指揮官として真面目に活動していたらしい。
一方で、一時期とはいえ彼は元々キャーリサ大司教……いや、キャーリサ元王女の下で部下として働いていたという経歴があったようなのだが、メシア教に対する信仰など欠片も持ち合わせていない彼が隠れメシア教徒に対するテストに引っ掛かる事もなく、その経歴は見逃されていたようだ。
だがその内にキャーリサ元王女の接触を受けて以来、熱烈な王家の支持者となり、ガイア連合内部における立場を貪欲に拡大しつつ、その傍らでキャーリサの元へ様々な内部情報を流すスパイとして活動するようになったそうだ。
キャーリサへの忠誠は厚く、彼女の計画の最重要部分を任されるだけの深い信頼関係すらあったようだ。
まさか頭に羽根を入れられるでもなく、メシア教や天使に対して一欠片の信仰心も抱いていない人間が、どうしようもない馬鹿というわけでもないにもかかわらず、洗脳も受けず自主的にメシア教会の為にスパイ活動を行うなど、ガイア連合に側にとっては完全に想定外だったといえる。
そして、その彼がキャーリサから任された仕事の一つが“グラストンベリーの確保”だったが、順調に地位を高めていったガーゲットはそれに関しても無事に成し遂げ、自身の子飼いの部隊と共にグラストンベリー近郊に置かれたシェルターの守護者としての地位に就く事に成功した。
聖杯絡みの伝説において、グラストンベリーはブリテンに聖杯や聖槍を持ち込んだイエス・キリストの弟子アリマタヤのヨゼフがイギリス最初の教会を建立した場所だとされ、同時に西暦1100年頃のイングランド王ヘンリー二世のプロパガンダによってアヴァロンと同一視されるようになり、その次代であるリチャード獅子心王の時代にはグラストンベリー修道院からアーサー王の墓地が発見されるに至る。
このためメシア教会にとって転移用のゲートを設置する事が可能であり、またメシア教会がこのグラストンベリーをブリテン侵攻への橋頭保とすれば、その勢力拡大に対しキリスト教伝播の概念により概念的なバフが見込めるとの事で、ガイア連合からも積極的に戦力増強が行われており────その軍備が、この間のテロに使われたという事だ。
そして何より重要だったのが────メシア教会の天使兵改造技術を利用した最終兵器アーサー王の素体としてのアルトリア・エヴァンズの確保だ。
今は廃れたメシア教会側の技術の一つにメシア教会式英雄合体というものがあり、これはデビルサマナーシリーズに登場したドリーカドモンを素体とする英雄合体に近しいものだそうで、ドリーカドモンの代わりに信仰の深い(洗脳済み)子供に過激派天使をインストールする事で素体とし、そこに適当な悪魔と合体させる事で疑似的に英雄合体を再現し、中身過激派天使な英雄悪魔を製造する事ができるとかいう代物だそうな。
この素体にアルトリアを使用し、戴冠王器であるカーテナ=セカンドを埋め込む事で、キリスト教の守護者としてのアーサー王を製造する事ができるはず、とかいう予定だったそうな。
セカンドとオリジナルという二本のカーテナの間にある繋がりを利用し、カーテナ=セカンドと一体化したアーサー王を、カーテナ=オリジナルを持つキャーリサが制御する。
そして、エクスカリバーを通じて王としての権限を行使するアーサー王がブリテンの龍脈を支配下に置き、その出力でもって【全次元切断術式】を行使してイギリス国土を通常空間から切り離す事で内外の通行を断ち切れば、カーテナを通じて絶大なバフを受けるメシア教会側が優位に立つ事ができる。
後は打倒したガイア連合の技術力を取り込みつつ内部統治に努め、カーテナに付随する大天使ミカエルの権威でもって外部の他のメシア教会勢力に拮抗しつつ、ガイア連合にも勝てるだけの勢力を育てていく────。
そんな感じの計画だったらしい。
キャーリサの死体が持っていた手記に、そんな感じの記述が残っていた。
計画を実行に移すより先に、開戦初日で本拠であるマン島がキャーリサ諸共一人の生き残りもなくあっさり全滅しなければ、の話だが────そう、呉から派遣されたMk.Seinのせいだね。
しかも残されたキャーリサシンパにとっては最悪な事に、Mk.Seinによる同化には物理的な破壊効果が伴っていなかった。これが核兵器か何か……例えばメシア教会が大好きなICBMのように拠点を跡形も残さず消滅させてしまう類のものであればまだ良かったのだが、そういうの一切存在していない。
このためマン島には電子・紙媒体問わずメシア教会の資料がほぼ完全に近い状態で残っており、それを漁れば、誰がどういう形でキャーリサに協力していたのかという記録がモロバレするのだ。水面下に潜って起死回生を図るという可能性すら存在しない。
現地に戦力を派遣して証拠隠滅────などという事も不可能だ。現地戦力はマン島の駐屯部隊と一緒に綺麗さっぱり全滅しているし、今からマン島に突撃して証拠を消してこれるような特記戦力もなし……そんなんあったら、最初から投入している。
こうなってはもう本当にどうしようもなく────せめてキャーリサ抜きでも当初の戦術目標を貫徹し、最終兵器アーサー王を完成させ、キャーリサの遺志を果たす。制御の要となるカーテナ=オリジナル抜きでも王妃であるグィネヴィアがいれば最低限のコントロールはできるだろうという目算もあった。
そうしてそんな目標のため、ガーゲットと協力者のグィネヴィアは全力で動き出したのだとか。
時間的な猶予も乏しい……タイムリミットはマン島を調べた戦後処理部隊が協力者に関する資料を発見するまで。最速なら数日といったところ。
そのため好機を伺い偵察を出していたところ、都合よくアルトリアが一人でコッソリイギリス支部を抜け出してお忍びで遊びにいくという最大の好機に遭遇。
誘拐を敢行した部隊は全滅したようだが、かといって内通が発覚するまでの近日中に同様の好機が都合よく訪れるなどという希望的観測ができるほどに無能でもなかったガーゲットとグィネヴィアは、監視部隊が最後に行った通信の出元となる座標を目指し、カーテナ=セカンドの【全次元切断術式】による転移で全部隊を市内に投入し、アルトリアの誘拐へと踏み切ったのだとか。
この誘拐も本当なら、マン島から攻め寄せる物量を迎撃するのにイギリス支部が忙殺されて、ガイア連合がアルトリアの警護に戦力を回せない隙に余裕を持ってゆっくりと済ませるはずだったんだ。それがまさか、計画を実行に移す前にマン島の方が陥落して、しかも証拠隠滅すら出来なくなるとか普通思わないじゃんね。
事を起こす前から肝心の勝算が消し飛んだ上に、退路まで完全に潰された状況…………傍から見ればもう笑うしかないね。おお哀れ哀れ。そんな状況だからこそ、一縷の望みを賭してあんなアホみたいなイチバチの吶喊を仕掛けてくるしかなかったわけで。
ご愁傷さまです。ざまぁ。
まあでも、アルトリア単体なら余裕で封殺できる戦力は揃っていたんだ。だからこそグィネヴィアもあれだけ余裕だったわけだが……うん、まあ。
黒札現地民問わず有力な異能者や英傑シキガミを含むガイア連合イギリス支部の特記戦力に関しては彼らも認識してきっちり下調べをしていたし、アルトリアの同行者がそのどれにも該当しない事は確認済み。
だから監視部隊の報告から想定された敵戦力は足手纏い付きのアルトリア単騎って具合で、それでも油断せずありったけの戦力を投入して出撃してきたところに……その足手纏いが、実はガーゲット側の全戦力をまとめたよりも強いバリバリ戦闘型の黒札だったとか想定外じゃんね。
しかもカーテナ=オリジナルが奪われていてしかも普通に使ってこられたせいで、最後の切り札だったカーテナ=セカンドすら役立たずにされるし。
踏んだり蹴ったりとはこの事である。ウケる。
その辺の事情は、イギリス支部所属のネクロマンサーが口寄せしたガーゲットの副官(故人)から聞き出した話だ。
とはいえ、そんな敵側の事情はぶっちゃけどうでもいいのだ。もう終わった話だから。
まあ正直、その辺の寒々しい事情をみっともなく並べ立てて不幸自慢をやらかさなかった事だけは、あの襲撃者……グィネヴィアとガーゲットを評価してもいいのかもしれないな。
どうでもいい話ではあるが。
「そろそろ時間だぜ。搭乗して待っていた方がいい」
「はーい」
ドモンニキに促され、二人で連れ立って滑走路に駐機していたMk.Seinへと向かう。他の面々もそれぞれの機体に向かい、搭乗していく。
白く塗装された巨体は僕とシトナイが近づくと共に腹部に搭載されたコクピットのハッチを独りでに開放し、開いたハッチからするすると昇降用ワイヤーが降りてくる。そのワイヤーに手を伸ばそうとして、しかし僕はその手を止めて振り返った。
飛行場の喧騒に紛れて聞こえてくるのはジェットエンジンに酷似した、しかし確実に異なる駆動音。振り返ると、轟の玉璽で空港の滑走路を爆走してくる元気な王様見習いの姿があった。
そのまま大空に飛び立ちそうな具合だがそうはならず、こちらの眼前で急停止……し切れずにあらぬ方向へと走っていきそうになるのを、【辺獄舎の絞殺縄】を張り巡らせてクッション的なものをつくって受け止めてやる。
「すみませんアリスさん……助かりました」
「いや、いいって。それよりアルトリア、そんなに急いでどうしたの?」
「最後に、少しだけ話したいと思いまして。そこまで多くは話せませんが、それでも一言くらいは、と」
「そっか。……本当に時間ギリギリだから、ちょっとだけね」
そうして。
ほんのわずかな時間だけ、僕とアルトリアは静かに向かい合っていた。
「アリスさん、今回は本当に色々と、ありがとうございました。たくさん、助けていただきました」
「きっと、大した事じゃないよ。僕じゃなくても、多分他の誰かが同じように上手くやってたよ」
「そうかもしれません。でも、今回助けられたのはアリスさんにですから」
「……そっか。うん、そうかもね」
もう本当に時間がない。だから伝え合うのは一番大事な事だけで。
「……また、会えますか!?」
「会えるよ、絶対。そりゃ今生の別れってわけじゃないんだ、いつでも会えるし」
「そう、ですか……」
「本格的な終末が来たらね、デビルシフターやペルソナ使いじゃない普通の異能者でも、ターミナルでの移動が解禁される。だからガイア連合の勢力圏内なら割と気軽に行き来できるようになるし、そうしたら割と気軽に、お互い遊びに行けるようになる」
「ええ。お母さんから、そう聞いています」
ごう、と、どこかの飛行機のエンジン音が空から響いてくる。それはまるで、もう時間がないぞと急かされているようで。
「だから、ね。終末が来る前に、また一緒に遊ぼうよ」
「…………はい、必ず! 約束ですよ!!!」
そうして。
一つの約束を交わし、僕とアルトリアの道は一旦分かたれていく。
僕はMk.Seinのコクピットに飛び込むように乗り込み、アルトリアは機体の発進に巻き込まれないようにその場から踵を返し、走り去っていく。
まるで鋼鉄の子宮と例えられるMk.Seinの操縦席の中で、視神経に介入して視界に直接投影される形で外の光景が────走っていくアルトリアの背中が映し出される。
「マスター、思い残しはないかしら?」
「全然。もうやるべき事は全部やったから」
「そっか……良かったわね、マスター」
全身の神経がMk.Seinの機体へと一体化していく融合の感覚と共に、Mk.Seinの白亜の機体が重力を無視してゆったりと空中に浮かび上がる。他の四機やホエールキングもまた同様に空中に浮かび上がり、そうしてジェフティとアヌビスが空間転移を発動し。
そうして、僕は再び日本へと帰還したのだった。
~なおアリスが帰った後~
アルトリア「あれ、宮城のイズナちゃんから荷物が届いていますね。これは漫画本……にしてはかなり薄いようですが、冊子、いえ同人誌と呼ぶのですね、なるほど。作者は……ええとNAMAMONO……聞いた事のない名前ですが、日本の漫画家でしょうか?」
アル「こ、これは……こんな、エッ、エッ…………せ、せんしてぃぶな漫画本…………アリスさん!? 実はア、アリスさんが実は男の子で…………何てものを書いてるんですか~~~~~!!! ましてや■■■■したり■■■■したり、あまつさえ■■■■なんてプレイまで……!!?」
アル「…………そっ、そういえば黒札の方々は同性愛くらいは当たり前だと聞きましたが、アリスさんの場合はどうなのでしょうか?」
バーヴァンシー「え? アイツ男だってお母様が言ってたけど」
アル「じゃ、じゃあまさかこの本の内容は真実……ッ!? いえ、それ以前にお姉ちゃん、いつからそこに!!?」
バー「どうしたのよアルトリア、そんなに慌てて。何読んでんの?」
アル「あっ、ちょっと待ってください見ちゃ駄目で…………アッー!!!!」
バー「…………」
アル「…………」
バー「…………」
アル「…………」
バー「…………か」
アル「か?」
バー「家族会議ぃッ!!!!!!」
などという話があったりなかったり。
その後、電話越しに幼女ネキをガン詰めするモルガンネキの姿が見られたり。
ガーゲット軍に関しては……だいたいアリスのせい。
本編前 :「グラストンベリー占拠して、アルトリア攫ってアーサー王に改造する大事なお仕事! ガンバルゾー!」
マン島陥落時:「おうち、なくなっちゃったワン……ご主人さまも死んじゃったワン……しかも証拠隠滅もされてないせいで内通バレまで秒読み状態……詰んだwwwwwもう最低限アーサー王だけでも完成させて仇討ちするしか生き残る道がぬぇ……!」
襲撃時 :「全戦力集めたよりもっと強いヤツが護衛についてたでゴザルwwwwwしかも何でかカーテナ=オリジナルまで使ってくるせいで頼みの綱のカーテナ=セカンドが役立たずで使えぬえwwwww詰んだwwwwww」
本当ならイギリス支部がマン島からの大侵攻への対処に手一杯になっている隙に後方のアルトリアを狙い撃ちして誘拐する予定だった。
ガーゲットもグウィネヴィアもランスロットもアルトリア一人だと強敵だし、何ならKMFとか多脚戦車が暴れるのでロンドンも酷い事になってたし、その状態でグィネヴィアにレスバされると四次青王が五次青王になるくらいの後々まで尾を引くメンタルダメージを食らって後々まで非常に面倒な事になってた。
なお現状のアルトリアはリリィ+ヒロインXくらいのメンタル。かなり図太い。聖杯問答でも冷静さを失わずにレスバできるレベル。
運命力「気合い入れてシナリオこさえたはずなのに、何か知らん内に知らないヒロイン枠が生えてきて、シナリオ難易度がガタ落ちしてる件wwww」
~割とどうでもいい設定集~
・邪龍グィネヴィア
元ネタは『カンピオーネ!』。
アーサー王目当てでガーゲット一党に協力していた高位悪魔。
その実態はアーサー王伝説においてアーサー王を裏切りランスロットと密通した事でキャメロットを崩壊に導いた王妃グィネヴィアであり、同時にブリテンに秩序と平和をもたらした赤竜の化身アーサー王と対をなし、ブリテンに破壊と混乱を引き起こす白竜アルビオンの化身としての存在。なので種族が『邪龍』。
本人の戦闘力はといえば、騎士でもないので物理的には竜種由来のフィジカル頼り、魔術師でもないためにレベル相応のステータスによる出力任せに魔法を連射するくらいしかできないものの、軍神ランスロットを守護者として召喚する事ができた。
その本性はアルビオンとしての白竜ながら、ブリテンの王妃という資格を持ち合わせている以上、本来は正当な王族にしか扱えないカーテナを王族として振るう事ができる。
アーサー王を使ってブリテンを破壊する計画に釣られてキャーリサに協力していた。
性質的にはFGOのオベロンにも近い存在で、キャメロット崩壊の原因になった傾国の女という事で、偶然にもアリスが変身する妖獣チェフェイと同じ属性を持っていた。
・カーテナ=セカンド
元ネタは『とある魔術の禁書目録』。
ピューリタン革命にて行方知れずになったカーテナ=オリジナルの写しとして鍛造された、二振り目の戴冠王器。
本家のカーテナ=オリジナルには劣るものの、オリジナルの写しとしてオリジナル同様に、使用者に大天使ミカエルの権能を与え、配下を天使軍として強化するし、【全次元切断術式】も使える。
本来はイギリス王家に属する正当な王族しか扱えないはずだが、王妃としての性質を持つグウィネヴィアには何の問題もなく振るう事ができていた。
弱点として、本家のカーテナ=オリジナルが出てくればそれだけで出力が二割くらいに下落するし、何ならオリジナルの方から積極的に干渉された場合には大半の力が封じられてしまう。
・【星の杖】
オルガノン。
『ワールドトリガー』の黒トリガーを元ネタとするオーバーソウル。
ベースはペルソナ『運命 モイライ』であり、触媒は自身のヘイロー、またはモーターギア。
自身を中心にして展開する光のリングの上を高速で滑走するブレード群。
ブレードは命運を断ち切るアトロポスの鋏であり、その刃の軌道上に立った者は“これから先生き残る確率”を切り落とされるため、極端に“死にやすくなる”。
リングは運命を配るクロトーの糸車であり、“運命を持つ”相手にとっては回避する事が極端に難しくなっていると同時に、糸車としての性質によりブレードの陰に隠れて【辺獄舎の絞殺縄】の念糸を紡ぎ出し、散布する事が可能。
さらに現在を司るラケシスの権能により、そのブレードは“現在にのみ存在する”=時間停止に等しい無時間攻撃を可能とする。
・【風導八卦白蛇】
名前の元ネタは『PSYREN』。
ダウジングを基盤とする占術により敵の攻撃を事前に探知する事により、攻撃に先回りして念糸を張り巡らせる念糸操作術式。
・【無間等活地獄】
元ネタは『神咒神威神楽』。
【ネクロマ】と【傀儡操術】を基盤とする死体操作術。
戦場のあちらこちらに転がっている死体を【ネクロマ】と【ドロイド】で支配下に置きつつ、ペルソナ『シュブ=ニグラス』の触手の末端を憑依させて強化、【メディアラハン】で修復しつつ人形として使役する。
これに関しては、本来なら蘇生・治癒で戦線復帰してくる敵を蘇生させず、復活を妨害するための仕込みでもある。
・【雲笈七籖・墜落の逆さ磔】
元ネタは『相州戦神館學園万仙陣』、及び『Fate』シリーズのオベロンの宝具。
アリスの扱う領域展開の一つ。三つの中では一番ゴテゴテしているが、一番大人しい性能を持つ。本来はコンボ前提で使う技。
その光景は無数の影蟲と奈落の虫が舞い飛ぶ黄昏の空……のように見えるが、それはあくまでも外から見た場合の話。黄昏の空どころか影の蟲も奈落の虫も全ては“動く開口部”であり、触れたものを空間ごと領域内に引きずり込むためのもの。
領域本来の情景は、切り絵のように切り取られた夕暮れの空が渦巻く無限の落とし穴。
『落下』の理を持つ領域。
この領域の理に触れた者は無限の落下に囚われ、跳ねる事も飛ぶ事もできなくなる移動不能の状態に陥り、無限の空洞の中で脱出不能の状態に陥るのに加えて、【リフトマ】や【浮足玉の脚】などに属する対地形ダメージの防護を根こそぎ剥がされる。
同時に【協力強制】が働いており、『希望を持つ』『その希望に不安を抱く』の条件に合致した相手はこの領域が持つ理に抗う事ができなくなると共に、領域内で希望を抱く度に発生する『落下』による激突ダメージによる行動阻害を受ける事になる。
また、領域を閉じない縛りを課す事により領域の異界規模と異界法則の強制力を引き上げた開放型の領域であるが、理に触れた者を移動不能にする性質があるため『敵が逃げる』というリスクを負う必要がなく、むしろ自在に飛び回る領域の開口部は『落下』の理が作用する事により、領域と開口部が維持されている限りアリジゴクの巣のように周囲の空間そのものが領域へと雪崩れ込む事で、ブラックホールのように周囲にあるものを空間ごと吸い上げ続けるという危険極まりない特性を持つ。
要約すると、主要な効果は以下の三種。
・『落下』の強制による移動・脱出不能。
・【リフトマ】【浮足玉の脚】による対地形ダメージ・異界法則に対する防護の剥奪。
・協力強制。『希望を抱く』『その希望に対して不安を抱く』事をトリガーに、異界法則に対する抵抗不能と、希望を抱く度に概念的な落下衝撃による物理ダメージによる行動阻害。
・【協力強制】
元ネタは『相州戦神館學園』シリーズ。
ある種の魔術契約。
相手が自覚するしないに関わらず何らかの形で相手の同意を得る事により、術式やスキルの強制力に相手自身の力を上乗せし、術者側が押し付ける法則に対する抵抗を不能とする技法。
言い替えるなら、相手自身の死刑執行書に相手自身の手でハンコを押させる詐欺。
おおむね原作通りの性能で再現に成功している。
構築に要する理屈付けにはある種当人の人生観が反映されるような、全身全霊を賭す必要がある上に、実際の術式構築と発動には単純な術式構築能力よりも詩文と詐欺の才能が必要とされ、また大抵は妙に面倒臭く捻られたり制限と制約が多くなったりするため、戦術運用にもかなりのセンスと詐欺の才能が必要となる……つまり非常に難易度が高い。