メシアン「パ●オとジ●リをガイアニに取られた事です」
◇ ◇ ◇
燕結芽の朝は早い。
その日の体調や気分によって普段からある程度ばらつきはあるものの、いつもだいたい午前4時頃には起き出して、手早く身支度を済ませて故郷の奥多摩で使っていた学校指定のジャージに着替えると、最初に始めるのはランニングだ。
まずはガイア連合大宜味村派出所周辺の道路をコースとして数周。
普通の長距離走のようにペース配分を守って走るのではなく、背中に鍛錬用の木刀を背負ったまま緩急を織り交ぜたペースの変化や方向転換、時には背中に負った木刀を抜いて急なダッシュなどを織り交ぜた実戦想定の走り方を試していく。
途中からは無数の瓦礫が散らばっていて起伏が多く足元が安定しない【銃火暴風怨嗟域】の地形を想定し、途中で正規の道路を逸れて沖縄の森の中での走り込みに移る。手入れのされていない南洋の森の中、地面には無数の樹の根が這い回り、無数の起伏を作り出している。それに足を取られる事なく軽やかに走り抜け、途中で木の幹や枝を蹴って数回の跳躍を繰り返しながら走っていれば、やがて黎明の薄明りの中に普段と変わらないガイア連合大宜味村派出所の影が見えてくる。
「はあ……ここまで動いて疲れないなんて。うん、普通に練習できるって本当に素敵!」
派出所に戻ったら、併設された武道場の鍵を開ける。そして手早く掃除を済ませたらお待ちかね、鍛錬の時間だ。
少し前までは虚弱体質により激しい鍛錬など夢のまた夢だった結芽だが、自由に身体を動かせるようになった今はそれまでの鬱憤を晴らすかのように今は一心不乱に剣を振っていた。剣を振れば振る程、目に見えない形で、しかし確実に自分の技が磨かれていく感触があり、それが本当に心地よい。
まずは素振り、左右100回ずつ。上段、中断、下段と繰り返し続けて、いい具合に体が暖まってきたら型稽古。天然理心流の型は他の流派に比べても随分と特殊だ、綺麗に勝つ事より、負けない事を重視した泥臭い剣────相討ちなどの最悪の状況でも最終的に生き残って勝つ事を目的とする。
そのためには勝てば何でもいいとばかりに剣術のみならず柔術や棒術なども修めるし、何なら太刀を抑えられた状態から反撃に転じる事を想定した型などもある。軽い篭手打ちなどは有効打として認めず、腕を削がれる事すら前提に戦う事を要求する。
派出所の周辺は半ばジャングル紛いの深い森に埋もれているような場所であり、また基本的に大宜味村派出所の中心人物であるゴルドルフとジークの二人は基本、技術屋であり個人研究勢として夜遅くまで研究開発と生産に没頭しては昼近くまで寝ている不健康な生活を送っているので、この時間帯は実に静かなものだ。
同じ時間帯にレオニダスも顔を出すものの、こちらもこの時間はあまり大きな声を上げず、黙々と槍を振るっている。
そうしてしばらく鍛錬を続けていると、やがて時刻は6時を回る。
この時間になってくるとゴッフニキのシキガミとして家事担当を担うユウユウが起き出してきて、朝食を作り始める時刻だ。
結芽も鍛錬を切り上げると、シャワールームに向かい、身体を清めて念入りに汗の臭いを落としてから、軽く制汗スプレーを吹いた後、その日の気分でオシャレな服装を選び、袖を通す。
普段は少し離れた名護市の中学校に通学している結芽だが、今日は休日……それだけに、今日の結芽にはやる事があるのだ。
今日の衣装は薄紫のパーカーにショートパンツというシンプルな構成だ。汗で崩れることも想定し、メイクは最低限……薄過ぎるくらいがちょうどいい。
そんな自分の姿を鏡に映し、一旦ぐるりと回っておかしい部分がないか手早く、しかし念入りにチェックしてから、二階に向かう。
足音を忍ばせて階段を上がり、音を立てないように気をつけてドアをノックする。そんな矛盾した行動を挟み、中からの応答がない事を確認して、静かにドアを開けて中へと入る。その瞬間────。
「あまぁい…………」
思わず、蕩けた声を漏らす。鼻先を甘ったるい空気がくすぐった。
端的に言ってしまえば、生臭い。窓が閉め切られている事もあって空気が籠っている事もあり、部屋の中には情事の名残が色濃く残り、二人分の体臭や汗の臭い、あるいは性臭、そういった諸々の臭いが混ざり合って、ある種の簡易的な混沌を訴えかけている。
未覚醒者にも備わっている尋常の嗅覚であれば、息が詰まるような悪臭と感じるのが普通。そういう類の臭いだ。
だが覚醒者としての結芽の霊的嗅覚は、その匂いを別の形で知覚していた。
例えるなら、どこかほろ苦さの混じった濃厚なチョコレートクリームに似た甘い香り。無意識に大きく深呼吸して肺一杯に吸い込んだ部屋の空気は、舌先にもわずかな甘味が乗っている気がした。
「あさですよー、おきてーおきないといたずらしちゃうよー」
ベッドの上で眠るジークを起こさないように小声で囁きながら、胸の辺りで甘い鼓動が高鳴るのを自覚して、小さな舌で唇の端を舐める。
そっと足音を殺してベッドに向かって足を進めていく結芽は、下腹の中央に大きな穴が開いてその中心を風が吹き抜けていくような、虚無感にも似た奇妙な空腹を感じていた。
「いたずらしちゃうよー…………」
甘ったるく蕩けた声で囁きながら、高鳴る心臓を押さえてベッドを覗き込む。埋め込まれたシキガミパーツの心臓が脈打つ鼓動が全身に広がるようにして、まだ幼い結芽の身体の当人も自覚しない萌芽と結び付き、強烈な衝動を掻き立てていた。
普段から遅くまで寝ているジークは目覚める様子もなく寝息を立てており、その隣に寄り添うようにシロコが目を閉じて眠っている。大きく深呼吸した結芽は、その二人の身体から漂ってくる匂いを胸一杯に吸い込んで、蕩けた頭のままで二人の間に割り込むようにしてベッドの中に入り込んだ。
濃密な匂いが、結芽の身体を包んだ。
大きく息を吸い込むだけで、頭の芯がじんと痺れるような多幸感で胸が一杯になる。心が満ち足りる感触と、もっともっとと欲しくなる焦燥感の二律背反に突き動かされるように、結芽は舌を伸ばし、ジークの胸元に残る情事の名残に舌先を這わせていた。
霊的味覚が伝えてくるのは、ハチミツにも似た甘さだった。ぺろり、ぺろりとミルクを飲む子猫のように、顔を埋めて、情事の残滓を丁寧に舐め取っていく。
その度に飢えにも似た下腹の虚無感がほんの少しだけ埋まっていくのを感じて、唇の端から細く甘やかな吐息が漏れる。
でも、まだ足りない。
もっと欲しい。
欲求に突き動かされるように、もっと深く、深く、結芽は最も強く匂いが漂ってくる布団の奥へと身体を潜り込ませようとして────。
「っぁ痛!」
ぽこん、とその脳天に手刀が落ちた。叩かれた頭を押さえて、結芽は正気に返る。
「痛っ、何するのシロコ!」
「ん、落ち着け馬鹿娘。深呼吸でもして冷静さを取り戻すべき」
「深呼吸………………」
言われるままに大きく息を吸い込むと、依然として霊的嗅覚をくすぐり続ける甘い香りが肺腑を満たす。脳が蕩けるような甘美な衝動のままに結芽はまだ眠っているジークに身を摺り寄せようとして。
「痛っ」
もう一発、ぽこん。
結芽の割り込みを受けたシキガミの普段から表情の希薄な顔が、驚く程近くにあった。至近距離から浴びせられる呆れたような視線を浴びて、ようやく結芽の脳裏に人並みの一般常識が戻ってくる。
若干12歳の少女とはいえ完全な箱入りで育てられたわけではなく、その大半が少女向け雑誌から仕入れた知識とはいえ相応の性知識はあるから、さっきまでの自分の行動がとにかく性的な方向性で恥ずかしい事だと理解はしている。
育った環境からして霊能名家相応の貞操観念だが、そういうのとはまた別問題に、常識的な領域で恥ずかしいという自覚くらいは、ある。
「うぅ…………」
頬が真っ赤に染まっていくのが体感で分かり、しかしそれでも離れずに────結局、ジークが目覚めた時に、一騒動起こす事になったのだった。
◆ ◆ ◆
午後。
その日訪れた沖縄支部には、随分とピリ付いた空気が漂っていた。
ガイア連合沖縄支部は、ガイア連合内では比較的一般的な、大型スーパーマーケット『ジュネス』を表向きの隠れ蓑とした支部だ。そのバックヤードの一角に設置された会議室に集まった面子は、一様に苦虫を通り越してムドオンカレーを噛み潰したような渋い表情を浮かべている。
その顔を見て、結芽は不思議そうに首を傾げた。
「えっと……」
「うん、まあ…………」
上座にいた琉球ニキが、至極言いづらそうに言葉を濁しながらも口火を切った。
「メシアン系の活動家が……」
「えっと、あの?」
「そう、あの」
あの、である。
前日、結芽もジャパリバスの窓越しに観察した、あのメシアン系左翼活動家だ。
「そう。そうなんだよ………………はぁ」
言って、琉球ニキは溜息を吐く。隣に並ぶ他のメンバーも、同じように辟易とした顔をしていた。
肺の中に溜まった重苦しい空気をまとめて吐き出すような溜息が、リノリウムの床の上にゆっくりと沈殿していく。そんな溜息が部屋中に滞留しているかのようなどんよりとした空気が、会議室に満ち満ちていた。
まあ、気持ちは分かる。
土地問題やら米兵の暴行やら平和活動組織側の死亡事故やらとにかく面倒臭く厄介かつ欠片も笑えない問題が山積みになった、全沖縄県民が絶対に関わりたくない戦後の大負債、沖縄基地問題。もちろんガイア連合沖縄支部としても割と本気で関わりたくない。
だがそうも言ってられないのは、この世界におけるその問題に、メシア教が関わっていないわけがなく…………むしろがっつりと関わっているからだ。
その反基地活動家達……表向きメシア教会とはかかわりのない、しかし明確なメシア教会の走狗達が何かを起こす、という話。問題は、何を起こすか、だが。
「で、そのメシアン活動家が何をやる、と?」
「平和行進だってさ」
「ああ、いつもの…………」
普段からメシア教会の走狗である自称平和団体が平和を訴える名目で市内を練り歩く“いつもの光景”。ガイア連合沖縄支部にとっては毎度毎度殺意を掻き立てられる光景であるが、同時に毎年恒例の年中行事的な乱痴気騒ぎでもある。
「ただ、今回はお隣の半島から1000人単位で参加者が渡航してきているらしくて、全員で蝋燭持っていつもの倍くらいの規模で市内を練り歩くって話だ。何やら今回のイベントを主導した活動家が韓国系と関係が深いプロテスタントの牧師って事で、その縁らしいぞ」
「韓国で、プロテスタントか…………」
「そうなんだよなー……」
韓国。
言わずと知れたお隣の半島国家だが、問題はそっちの宗教事情だ。人口の大半が無宗教と言い張っているのは日本と変わらないのだが、それ以外で最も大きな勢力を誇っているのは仏教や道教ではなく一神教、さらにその三分の二近くがプロテスタント教会である。
そしてプロテスタント……別にプロテスタント教会そのものに宗教的な問題があるわけではないのだが、オカルトサイドの事情を頭に入れて考えると話は別だ。
そもそも、プロテスタントというのは一つの宗教・宗派ではない。仏教という一つの括りの中に臨済宗や曹洞宗といった様々な宗派が別組織として存在しているように、日本国内にも聖公会系、ルーテル派、カルヴァン派、バプテスト派、会衆派教会、メソジスト、ホーリネス……と大量の宗派が存在しており、その中にも例えばバプテスト派一つ取っても日本バプテスト連盟、日本バプテスト同盟、沖縄バプテスト連盟、日本基督教団新生会……等々、数え上げるのも本気で面倒臭い数の組織が内包されており、個々の団体が独自に活動を行っている。
これの何が悪いのかというと……単純に、弱い。
ただでさえ思想的には天使崇拝に耐性が薄いのに加え、組織としての規模が小さい分各個撃破される形で、メシア教に乗っ取られやすいのだ。カトリック教会に比べて歴史が短い分、抱えている神秘が薄い事も耐性の低さに拍車が掛かっている。
もっともその辺は、この辺のプロテスタント教会全てを合算しても追いつかない巨大な世界組織を抱え、そして数千年級の神秘を保有するカトリック教会の方が異常であるともいえるが。
そんな具合だから、宗教的にはメシア教会に好き放題食い荒らされているのがお隣韓国のオカルト事情だ。
一応、朝鮮半島土着の神格もいるにはいるのだが、一神教に圧されてほぼほぼ息をしておらず、そして少し後のエジプト決戦で共に参陣した土着異能者達と共にエジプトの自爆芸に巻き込まれ、完全に御臨終する事になってしまう。
なお問題の牧師が宗教者として参加しているプロテスタント団体は、韓国国内に存在するプロテスタント団体に対して“床を舐める”程の濃厚な従属関係にあり、日本軍が行ったとされる戦時中の蛮行を“埋め合わせる”という理由で反戦運動を展開、さらには沖縄県内の反戦団体に韓国国内における抗議活動のノウハウを指導しているという。
「じゃあメシアンの手先って事で間違いないのか?」
「さあ? 肩に乗ってたホーリーゴーストを仕留めた事は五、六回くらいあるけど、自覚的にメシアンをやっているのかは知らん。とりあえず多分脳味噌に羽根は入ってないっぽい」
「…………うーんこの」
敵と、敵に使われているだけの一般人との境界がクッソ曖昧。
頭の痛い話である。
いっその事、名家方式で十把一絡げにダークサマナー扱いの轢き逃げアタックで始末してしまうのが一番楽なのかもしれない。
「で、渡航者は1000人規模か……その半島からの渡航者って、工作員は?」
「いつもの。詳しいところは不明だけど、メシアン世俗派を抱えてる新潟の鑑定ニキのところから警告が来てる。工作員が何人か送り込まれている……らしい。ただ鑑定ニキのところのヤツは中華系だから、韓国筋の詳細は分からないらしくて、結局全部未確定情報」
「うん、まあ……はい」
「ちな、工作員は国家側とメシアン側、両方から来てるらしい」
「何というカオス……!」
不十分な情報。
不明瞭な詳細。
いつもの話である。
もっとも相手の思惑や計画を一から十まで把握できていたとして、その上で勝手にガバをやらかして想定外が発生させて、斜め下を爆走してくる手合いなので油断はできない。
「規模が大きくなるんなら、地元への配慮は?」
「あるわけないだろ」
「ですよねー」
「自分が正義だと思ってる連中は、地元住民から歓呼の声を上げて歓迎されるのが当然だと思っている。トラブルは間違いなく発生するな。あいつらのトラブル管理能力を完全に越えている……とかいう以前にそもそも最初からロクに管理してないからな。真面目に相手しなきゃならない警察や海保の人達には本当に毎度毎度頭が下がるよな……」
そして何より、最大の問題は。
「…………オカルト要素は?」
「さあ?」
「分からないのかよ!?」
「分かるわけないだろ!」
「それはそう」
その場にいた全員で顔を見合わせ、一様に重苦しい溜息を吐いた。普段のようにホーリーゴースト憑きがちらほら混ざっている程度ならまだいいが、それ以上はまずい。
「蝋燭持つんだってな。その蝋燭に細工は?」
「分からない」
「だよなー……」
分からん尽くしである、が。
「だからブラキオニキを呼んだんだよ。天候操作、得意だろ。それで当日に雨を降らせてやれば、蝋燭持って行進するどころじゃなくなるんじゃないか」
「確かに。霊水化した雨なら、権能クラスの炎でもない限りは打ち消せる。雑魚ですらない一般人にも持てる程度の霊装なら尚更だ」
何かしらそれが儀式の要であるなら、それを動作不良に追い込んでしまえば問題ないだろ、という話。とりわけこの手の大規模儀式などは規模が大きくなる程に季節や暦、星の巡りなどが重要になってくるからして、タイミングを逃せば当分同じ事はできなくなる。
と、いう事で、実際に起きるかどうかも分からない儀式を阻止するため、俺が出動する事になったのだった。
◇ ◇ ◇
同じくガイア連合沖縄支部。
表向きは概ねジュネスとして営業している沖縄支部の建物の裏手、大型トラックをそのまま受け入れ可能な商品搬入口がある。基本的にはここに受け入れたトラックから貨物の積み下ろしを行い、バックヤードの倉庫に運び込むためのスペースなのだが、その一角には認識阻害の結界で区切られて一般人の視界からは遮られているガレージが設置されていた。
簡単なオカルト措置を施されただけの一般車両から、呉製のナイトメアフレームまで、沖縄支部に配備されている乗り物類の多くがそこに置かれており、今回の作戦で使用される予定の各種車両がスタッフとしての技能を組み込まれた一反木綿型シキガミ達によって整備されているところだ。
「こんなところまで呼び出してしまって申し訳ない、ゴッフニキ」
「なぁに構わんよ。もし変に遠慮した結果、整備の手が足りず機体のパフォーマンスが落ちて大惨事に繋がったらどうする。それに、ピットクルーの仕事というものも楽しいものだ。気にせず、遠慮なく呼び出しなさい」
整備スタッフとして動き回っているフンドシ型シキガミを指揮しているのは支部長である琉球ニキと、外注スタッフとして呼び出されたゴッフニキだ。ガイア連合の宿痾というべきか独特の整備手順を必要とする車両や機動霊装の類は多く、それに対して沖縄支部の整備スタッフはまだまだ足りていなかった。
そんな、普段にまして喧騒が高くなっているガレージの片隅に非装着状態のデモニカが一機、メンテナンスベッドに駐機されている。赤、青、白のトリコロールカラーに黄の差し色を加えた、実に鮮やかなカラーリングの機体だった。
その装甲のいくらかは取り外され、剥き出しの電子機器や人工筋肉の整備をガンスミスニキが続けており、周囲には工具箱を抱えたり補助を行ったりしている数体のフンドシ型シキガミの姿もあった。
その隣でパイプ椅子に腰かけたまま、両眼を皿のようにしてデモニカの使用マニュアルをどうにか丸暗記しようと苦心していた少年────アスカニキこと佐久間真は、マニュアルから顔を上げると大きく溜息を吐き、傍らに置かれていたミネラルウォーターのボトルを煽り、その中身を喉に流し込んだ。
「頭痛ぇ…………」
目頭を押さえながらパイプ椅子の背もたれに体重を掛けたアスカニキの手元に、清潔なタオルが差し出される。何気なく受け取ったアスカニキがそちらに振り向くと、そこに立っていたのは穏やかに微笑む少女、陶芸家ネキこと藤原肇だった。
「アスカニキ、大丈夫?」
「うぉわ!? 陶芸家ネキ!? ごめん、ちょっと邪魔だったか?」
「そんな事ないよ。頑張ってるところ見てたから、ちょっと応援したくなっただけ」
「お、おう……サンキュ」
しっとりとした穏やかな印象の美少女だが、こう見えて未だ半覚醒で修行中の身であるアスカニキよりも一回り高レベルの地変魔法使いであり、持ち前の陶芸スキルを活かしてアガシオン製作を得意とする優秀な生産者の一人でもある。
その足元、よく見ればその表皮に陶器の質感を持ちながら、普通の獣と遜色なく自然な動きで子犬のように纏わりついているシーサー像────『アガシオン・シーサー』または『アガシオン・テラコッタ』も、彼女の手で製作されたものだ。
もっともアスカニキにとっては、一回り年上のお姉さんといった印象が強い相手だが。
「……大変そうだね、アスカニキ」
「いや、そんな大したもんじゃないよ。他の皆だってこれくらい当たり前にやってるし」
「でも、頑張ってるのは見て分かる。……それに向き不向きもあると思うよ」
「ぐっ……いや、でもだからこそ逆に頑張らないと…………」
「うん、命の危険がないタイプの頑張りなら、やって損はないと思う。頑張って。でも無理しない程度に、適度に休憩は入れてね」
「お、おう……」
少し頬を赤くして照れるアスカニキから視線を外し、周囲を見渡すと、ガレージには他にも何人かの黒札が動き回っている。片隅の作業台では執事ニキが大量の銃器を繊細な手つきで整備しているかと思えば、大型の異能者用ベンチプレスで筋トレを続けている銀剣ニキとマダオニキ、さらにその隣には巨大なバーベルを股間に乗せたままスクワットを繰り返している男狩りニキの姿もある。
黒札ばかりではなく、執事ニキの隣で銃火器の整備をしているガイルや、同じく手持ちのファイズギアの整備を始めている座備賀留真など、現地民異能者の姿も思った以上に多い。
「青春だねぇ、アスカニキ」
「ガンスミスニキ……揶揄わないでくださいよ」
「別に馬鹿にしたわけじゃないさ。ただ楽しそうだなってさ」
「う……まあ否定はしません」
整備中であるデモニカから顔を上げたガンスミスニキは、少女じみた可憐な容貌の額に浮かぶ透明な汗の雫をその袖口で拭うと、隣で彼の手伝いをしていた座備ニャアンからミネラルウォーターのボトルを受け取ってキャップを開ける。どうやら作業も一区切りついたらしい。
「でも、すいません。整備までやってもらって……ちょっとその、ヤプールニキの圧が強くて、断り切れなくて……」
「いいよいいよ。俺もデモニカの沖縄モデル開発に関わってる身だから、他支部のデモニカ開発具合には興味あったし、こうして参考にできる実機を持ち込んでくれるってのは興味深いし、ありがたくもある」
「や、こっちこそありがとうございます。本当、助かります」
などと話していると、陶芸家ネキが少し首を傾げる。
「あれ、そのデモニカって他支部製なの?」
「ああ、北神奈川支部製“ULTRAMAN SUITS”の一着だよ。こう見えて量産型じゃない一品ものの立派なワンオフ機……量産を意識している部分もあるから試験量産型、というか量産試作機かな」
「うん、何かよく分からないけど山梨で修行してたらいきなり北神奈川支部のヤプールニキがやってきて、試作デモニカのテスト協力の依頼を持ってきたんだけど……うん、何か圧が強くて、断り切れなくて……」
「あはは、大変だったね」
「まあ結構いい機体だからさ、そんなに毛嫌いせずに使っておけよ」
「うす」
それきり、話題もなく場に沈黙が落ちる。それを少し気まずく感じて、アスカニキは少し茹だって回転率が落ちた頭をどうにか回し、話題を捻り出す。
「あの、ガンスミスニキ」
「ん、何だい?」
「その、今回の事件のメシアン活動家……左翼活動家、ですか。あいつらって悪い連中なんですよね。その……でも、平和活動、なんですよね」
「あー……」
一般的に、日本国内で活動する黒札達の中でも、沖縄で平和活動を行っている手合いに対して抱かれている印象というのは両極端だ。
その天秤の片側にはメシアンさえ絡まなければ平和のために平和的な活動をしている平和な人々、という印象があり……もう片側には平和という御題目の為なら集団的暴力すら厭わない、ほぼほぼカルトと大差ない狂気的な社会悪という印象が乗っている。
アスカニキが平和活動家に抱いているイメージは、どうやら前者の側であったらしいが……この辺、沖縄における平和活動団体の成立と運営にメシア教会が深く関わっている事もあり、ガイア連合から見た今世における平和活動団体のイメージは基本的によろしくない。
この辺、黒札達の前世の世界において沖縄の平和活動家に対するマイナスイメージが大きく広がったのは辺野古沖におけるボート転覆事故────修学旅行で沖縄を訪れた同志社大学付属高校の学生達が、沖縄の平和活動家が普段から抗議活動に使用していたボートに乗せられ、そのまま転覆事故に巻き込まれて女子高生一人が死亡した事故が契機の一つだ。
この事故を知っている世代か、そうでないかでも黒札内での“平和活動”に対するイメージは大きく変化するが、それ以前にメシア教会の関与という一面もあり、やはり黒札からの沖縄平和活動への評価は概ね、低い。
「あの……」
と、陶芸家ネキが手を挙げた。
「沖縄の、よくある平和活動なんですよね。何でメシア教会がそっちに関わってるんですか?」
「あー、陶芸家ネキは沖縄の歴史関係の研修は?」
「ごめんなさい、前の研修は風邪ひいて休んでたので……」
「あ、すいません。オレも知りたいです」
同調したのはアスカニキも同じだ。可愛らしい美少女仕草で首を傾げたガンスミスニキは、ガレージ全体をぐるりと見回して、意外にも興味深そうな視線が自分達の方に集まっているのに気が付いた。
「うーん、ひょっとしてその辺、割と皆詳しくない感じ?」
幹部格の一人である執事ニキがガレージを見回すが、どうやらここにいる三分の一くらい、沖縄支部に配属されて間もない新人黒札や、現地民でも年若い部類の異能者を中心に結構な数が頷いている様子だ。一応大雑把な知識があっても、しっかりと筋道立てて分かっている訳ではない、という人達も結構多い模様。
「じゃ、そういう事なら一通り、知識のおさらいを兼ねて大雑把に説明していこうか」
と、いうわけで臨時授業と相成った。
この世界の沖縄におけるメシアン系左翼活動家という、牛糞に馬糞をトッピングして地獄の釜で煮込んだかのような……という、太古の時代から畑の肥料として人々の日々の生活に貢献している牛糞と馬糞にタイヘン・シツレイな例えがまかり通る極悪なブツが沖縄地方史に姿を現したのは終戦後────歴史上もっとも新しく凄惨な大規模異界『銃火暴風怨嗟域』の成立から少し後、である。
太平洋戦争において最終決戦ともいえる戦いが行われ、日本側・米軍側を問わない数多くの犠牲者が出た沖縄には、当時膨大な怨念が行き場なく滞留している状態だった。
元来、戦前までの沖縄に発生する異界といえばキジムナーなどに代表される自然霊やそれに近い比較的穏やかなものが大半であったのだが、この頃にはあまりにも濃密な死者の怨念が影響し、死霊・怪異系を中心とした凶悪な異界が多数発生していたのだそうだ。
当時、戦争において多数の男手が取られた上、さらに沖縄本土決戦においては民間人も多数被害に巻き込まれた結果、比嘉家、座備家、魚沼家のような有力な霊能家系もダメージを受けており、その状態でこの凶悪な異界の乱発という事もあって本来沖縄を守っていた霊能名家は減った戦力をさらに削られつつある状況だった。
そこで高々と名乗りを上げて舞台に躍り出たのがいつものアイツら────メシア教会である。
この時期の沖縄において危険な異界は死霊・怪異系、メシア教会が得意とする破魔が効く相手だ。だからこれはメシア教会側にとっては余裕で勝てる戦いのはずであり、そして────結局勝てずに最新の大規模異界『銃火暴風怨嗟域』は完成してしまった。
それ自体も特級の問題でもあるのだが────その後の対応も、これ以上ないくらいに問題だった。逆主人公補正でも付いているのかとツッコミを入れたいくらいに、とにかく何もかもが裏目に出たのだ。
『銃火暴風怨嗟域』の成立を許してしまったという事、それ自体がメシア教会にとって特大の汚点であり失点であるのは言うまでもない。だから当然、完成してしまった『銃火暴風怨嗟域』を解体するべく、メシア教会側も手を尽くした。
まずは四度に渡り十字軍級の大戦力を派遣して、あっさり壊滅した。生存者もほぼ皆無。これに関してはある種当然の結末である。
メシア教会の得意技である破魔と治癒がフィールド効果により封じられた上で、メシア教会の主力である天使が苦手とする呪殺が、メシア教会以上の数の暴力と飽和火力で飛んでくるのだから、そりゃ全滅もしようというものだ。
プラスして『銃火暴風怨嗟域』の出口の位置は常にランダム、それを探して地獄じみた環境下を彷徨いつつサバイバルする事も難しい上、さらにメシア教会の探索術式に対してこの異界を荒れ狂う呪殺属性の気がジャミングのように作用する事もあって、その撤退の困難さが生存者の数の少なさに拍車をかけていた。
結果的に四度に渡る十字軍は『銃火暴風怨嗟域』に対し膨大な燃料と強化素材を提供するだけに終わり、その度に『銃火暴風怨嗟域』は拡大した。
当時はまだ理論実証段階だった試作型の天使兵や、逆に当時ですら骨董品扱いだったメシア教会版魔戒騎士の鎧まで持ち出して────その全てが荼毘に付された。
純粋な量に加え、異界に突入したテンプルナイトの中には、戦場でのPTSDの治療と称してオルグしてきた元米軍の太平洋戦争参加者が多数混ざっていたため、彼らは太平洋戦争中に死んでいった日本兵の怨念の対象だったため、その存在が死者の恨みを煽り、そんな彼らを糧としてさらに異界内の凶悪さが増すという……量に加えて質すら完備している完璧な燃料投下だった。
何ならその際、両性具有の天使が男子禁制の御嶽に突入した事で異界のギミックを踏んでさらに問題を悪化させた事もあった。
「しかし、ミニマムサイズが基本な天使共ですら見逃してもらえなかったって事は、探求ネキや幼女ネキなんかもアウト判定って事か」
「まあ、最低でもポークピッツより大きいのは間違いなさそうだからな……いや実際に確かめたわけじゃないが」
「当人達に『貴女のサイズはポークピッツより大きいですか?』なんて聞くわけにもいかないしな」
「どう考えても喧嘩売ってるようにしか聞こえないぞ、絶対」
「そもそも、そんなの聞きたがるのなんて三馬鹿ラスくらいのものだろ絶対」
「あーあいつらは、うん……まあ……」
「うーんこの……」
「実際問題、沖縄支部のメンバーに生やしてるのっていたっけ? いたらきちんと申告してくれないとヤバいんだけど」
「えーと、今のところ判明してる限りだと確か────」
次いでメシア教会側が考えたのは、異界に流れ込む霊脈のマグネタイトを遮断し、異界を弱体化させる事だった。
このため、当時日本という国家の弱体化を狙っていたGHQをそそのかし、沖縄に米軍基地を建設させるべく誘導し、さらに建設された基地の敷地にも様々な仕掛けを施して…………結果として『銃火暴風怨嗟域』に宿る怨念を煽り、ついでに土地管理の問題で発掘・埋葬ができない遺骨も増えた結果、異界の攻略難易度が悪化するという結果を招いた。
加えて沖縄全土での地脈位相の乱れを引き起こした末、さらなる異界の乱立を引き起こし……それらの異界は怨念・地獄という属性の類似性から数日も経てば『銃火暴風怨嗟域』に接続、取り込まれる事でさらに『銃火暴風怨嗟域』のギミックを複雑化させた上で、それらの異界に流れ込むマグネタイトの流動経路はそのまま『銃火暴風怨嗟域』へと繋がったため、結局『銃火暴風怨嗟域』が強化されただけの結果に終わってしまった。
幸いにもこの時、『銃火暴風怨嗟域』の最奥で異界の怨念を抑えていたニライカナイが遺骨を回収した結果、それらの遺骨が異界そのものの弱体化ギミックとして成立する結果にはなった。その代わりこの時の負担が祟り、ニライカナイがこの異界を抑えていられるタイムリミットも縮まったのだが。
その次に考えたのは、異界内に満ち溢れる怨念の鎮魂だった。
『銃火暴風怨嗟域』を構成している大本は太平洋戦争の戦死者たちの怨念だ。だからこれを鎮め慰撫する事で、異界の弱体化を狙った……この考え自体は決して間違いとはいえなかったのだが、そのためにメシア教会がやった試みは、最悪の結果を招いた。
まず、何も考えずに沖縄全土に聖堂クラスの教会設備を乱立させた結果、多くの土着神格の弱体化を招き、それがさらに『銃火暴風怨嗟域』の最奥で異界の怨念を抑えていたニライカナイの弱体化に繋がり、結果、『銃火暴風怨嗟域』がさらに凶悪になるという完全な逆効果。
そして、それに加えてさらに凄惨な結果を引き起こしたのが、太平洋戦争終戦の数年後に行われた大規模慰霊祭である。
当時、沖縄全土に十ヶ所以上も設置されていた教会設備を連携させ行われたこの儀式の中心になったのは、ちょうど現在の大宜味村のすぐ近く、沖縄県国頭郡に位置する米軍北部訓練場の森林内にあったカテドラル級大聖堂だった。
まずは太平洋戦争の戦死者達を丁重に弔い慰霊する形で始まったこの儀式は、『銃火暴風怨嗟域』に取り込まれた戦没者達の魂に対し死後洗礼を行い、生前からメシア教徒であったと位置付ける事によりメシア教式の儀礼でその魂を回収、それによる異界の縮小・弱体化を狙うものだった。
だが、既にその時点で『銃火暴風怨嗟域』の規模はコントロール不能な域に拡大し切っており、そことパスが繋がってしまった事でパスを通じて『銃火暴風怨嗟域』側から莫大な呪力が逆流、むしろ大聖堂を中心とする各教会施設が急速に侵食を受け位相反転、異界化した空間構造ごと取り込まれて『銃火暴風怨嗟域』へと次々に落下する事態に陥った。
当然だが生還者はゼロ。
さらに『銃火暴風怨嗟域』に落ちた十ヶ所以上の教会設備は異界内における一種の楔と化し、現在でも『銃火暴風怨嗟域』を安定して存在させ続けている。特に中心となったカテドラル級大聖堂には特大の高位悪魔が居座っており、これを攻略しない事には『銃火暴風怨嗟域』の攻略に絶対必要なギミックの一つが解除できないと予想されている。
そうやってこれっぽっちも涙ぐましくない余計な努力とそれによる大小様々な失敗を積み重ねていった末、ようやく力尽くでの攻略は不可能と結論付けたメシア教会の方法論は二つのプランに収束していった。
一つ、太平洋戦争の戦死者の鎮魂。
一度目からしばらく失敗ばかりを続けてきたものの、直接的な攻略が不可能である以上、間接的に弱らせるしかない。少なくとも、方法論としては間違っていない。
だが成功してもその効果は焼け石に水、大抵は失敗して何も起こらない……ように見えて、何気に異界内の怨念を煽っているせいで異界の攻略難易度を微増させている。そして時折無駄に発生する大惨事。
幾度かの失敗を伴う半分以上が無駄、それ以外はほぼほぼ逆効果な努力が惰性のように続けられていた。
そしてもう一つ、より熱を入れて進められていたプランが────“『銃火暴風怨嗟域』の発生は日本並びに沖縄県民がやった事に見せかけてメシア教は責任から逃れる”というものだった。
当然あのメシア教会のやらかす事が単なる責任逃れで終わるわけもなく、彼らがやろうとした事はそれよりも遥かに悪辣で大掛かりな愚行。
要するに、拡大を続ける『銃火暴風怨嗟域』の攻略を諦め、将来いつか『銃火暴風怨嗟域』が現世に溢れ出した時に備えてその被害を最小限に留めるため、沖縄と日本を生贄にし、その被害を沖縄と日本に集中させる事で自分達への被害を防ぐ、というものだった。
そんな彼らが最初に手を付けたのが“太平洋戦争における犠牲の神話化”であった。
そのために、当時日本という国から戦争を行う能力を奪いたかったGHQと結託し、歴史の修正作業を始めたのだ。
都合の良い資料ばかりに過度な重要性を強調し、都合の悪い資料の存在は黙殺した。
偶発的な事故を悪意によるものと書き換えた。
美談は意図的に伝えず、時には信憑性のない噂として矮小化させ、風化させた。
一介の個人が暴走して引き起こした事件は、似たような事例が全体に蔓延していたかのように言い換えた。
存在していない架空の虐殺を真実として扱い、大々的に取り上げた。
それらの修正に反対意見を述べる者がいれば、歴史を歪める悪として徹底的に叩いた末に黙殺した。
そうやって、日本を危険視していたGHQと結託し、学校教育やメディアなどを通じて戦争の犠牲や悲劇を徹底的に吹聴し、太平洋戦争によって発生した犠牲を歴史上の神話として祀り上げ、それら全てが日本という国の責任であり、日本が背負うべき罪であると国民に対して吹き込み始めたのだ。
当然、これも『銃火暴風怨嗟域』に対して悪影響を引き起こした。
沖縄戦が太平洋戦争のある種神聖化された象徴として扱われる事により、太平洋戦争の被害によって発生した無数の怨念が環太平洋域の一帯から引き寄せられ、『銃火暴風怨嗟域』へと収束していったのだ。
そして同時に、太平洋戦争の犠牲と責任という概念がある種の神話、信仰として成立した事により、『銃火暴風怨嗟域』が持つ異界としての格が上がった。単純に強くなったのではなく、神秘としての深度が増した。
こうして四度の十字軍や大規模鎮魂儀式の失敗を経て、『銃火暴風怨嗟域』は成長し、メシア教会にとって史上最大級の不良債権として成立した。
「あの、それ何から何まで全部逆効果になってるんじゃ……」
「そうだよ!」
「えぇ…………」
自分がトンだわけでもないのに実に背中が煤けている琉球ニキの言葉が、全てを物語っていた。
「そんなんだから、まるでダメな汚物、略してマダオって呼ばれるんだよ」
「「「「「「マダオニキぇ………………」」」」」」
ここまでの主役は、アメリカ系メシア教会の話である。
当時、日本におけるメシア教会の活動の主導権を握っていたのは在日米軍系────在日米軍のトップであるGHQと結託し、また太平洋戦争の戦禍に乗じて戦傷やPTSDの治療という名目で洗脳した元米兵を組織に取り込んで積極的に戦力として活用していたアメリカ系の組織である。
この派閥の流れを汲むのが、後に半終末の直前になって過激派メシアンとの抗争から逃れて日本に落ち伸びてくるトールマン派閥のメシアンであり……ガイア連合沖縄支部が後に来日するトールマン派閥を信用しなかった最大の理由、その一つであるのだが。
だがここにもう一つ、メシア教会内の派閥が関わってくる────メシア教会世俗派である。
現在はガイア連合新潟支部を管轄する鑑定ニキの傘下に入っているこの集団は、メシア教会の中でも理想や教義に拘泥せず“清浄なままではなく、俗世の穢れに塗れて人々を救うべき”というスローガンの下、第一が自己保身で残りは金、性欲、権力といった欲望で一杯になっている頭の中身をフルに使って活動していた派閥であり、それゆえ他のメシアンがあまり手を出さない商業や内政を得意とする集団だ。
それゆえにメシア教会内部では一段低い扱いを受けがちだが、その反面ガイア連合の内部においては、内圧の厳しいメシア教会の中でも天使や高位異能者のカリスマやプレッシャーに晒されてなお、未だに自己の欲望を希求するそのスタンスはむしろ下手な穏健派メシアンよりも信用がおけると評価されており、半終末期においては鑑定ニキの庇護の下にガイア連合と太いパイプを保持し、中華戦線の兵站を担う事になった。
そのルーツはメシア教会側に着いた中華系の名家であり、元は横浜の中華街に根を張っていたところを鑑定ニキに拾われたという話だが────この当時における世俗派もまた、メシア教会内部において一段低く扱われながらも、その一方で他のメシアンには真似できない“役割”を保持する事により、メシア教会内部に一定の勢力と発言力を確保していた。
そんな彼らが、動いた。
当時のメシア教会が沖縄に配していた支部、『銃火暴風怨嗟域』に対する観測所の役割を負っていた聖堂に対し、米軍系メシアンの元締めだったアメリカの大司教が中心となり、各地のメシア教会を管轄する司教達を引き連れての集団視察を行ったのだ。
その中に、当時東アジア一円を管轄していた世俗派の司教も随行していた。アメリカの大司教に対する胡麻擦りのために参加した彼は、しかし沖縄におけるメシア教会の取り組みを実地で目にした結果────これは金になる、と確信したのだ。
そうなれば、後の話は早かった。
特大の不良債権である『銃火暴風怨嗟域』から手を引きたかった在日米軍派閥と、彼らが築き上げた地盤を利用してビジネス化を狙った世俗派、双方の利害が一致した結果、沖縄の主導権は世俗派に移管され、中華系メシアンと繋がりが深かった半島系メシアンから派遣されてきた世俗派の司教が沖縄のメシア教会を仕切る事になった。
世俗派の動きは早かった。
まずは中華系メシアンと繋がりが深かった中国左翼系政党のパイプを利用して、日本の左翼系組織とコンタクトを取り、沖縄における“平和”活動組織を作り上げた。その創立メンバーの中には当時の左翼系組織の中でもとりわけ過激な集団のメンバー────例えばかつての日本皇太子襲撃テロ事件の主導者なども混ざっており、自然その活動も当初の想定以上に過激なものとなっていったが、それをメシア教会が問題視する事はなかった。
なお、このテロリストの男に関しては現在、凶悪テロリストの主犯格という前歴を隠して沖縄県議会で議員をやっているというから業が深い話である。
「ちなみに、その議員の身の上についてはWikipediaにも載ってるよ」
「……マジで?」
こうして、GHQを抱き込んだ在日米軍系メシアンが始めた平和活動の地盤が、世俗派が引き込んだ左翼系組織のコネクションと接続した。
これにより日本のマスコミや教育業界が急激に左翼系思想に傾倒していく事になるが、やはりというべきかメシア教会がそれを問題視する事はなく、また記者クラブを中心とするマスコミ関連の抱き込みに成功した事もあり、何か事件が起きたとしてもマスコミ側が自主的に報道しない自由を行使する事により、世間においても長らく問題が発生する事はなかった。
そうしてメシア教会世俗派の後押しを受け、新任の沖縄司教が精力的に立ち回り行ったのは────沖縄における反戦・反基地活動のビジネス化だった。
まず平和という美名の名の下に反基地活動を徹底的に美化し、それを出版社やマスコミを通じて喧伝し、その過程で左翼系政党やメディア業界などからも多額の寄付を募った。
そして、さらに傘下に引き入れた日本国内のプロテスタント系宗教団体を通じて教育界、とりわけミッション系の私学などを窓口として学校団体の修学旅行などを利用し、修学旅行を通じて沖縄を訪れる学生を中心に学校団体が反基地活動に金を落とす仕組みを作り上げた。
商業化した事で、米軍系メシアンが始めた“太平洋戦争の神格化”という一大事業もさらに力を入れて進められる事になった。何なら米系メシアンよりもこちらの左翼系メシアンの方がより大量の資金と熱量を注ぎ込んだといってもいい。
そうして反戦団体を看板として回転する巨大な集金機構を作り上げ、その頂点に沖縄のメシア教会を置く事で、メシア教会世俗派は毎年のように莫大な資金を稼ぎ出した……本来なら『銃火暴風怨嗟域』という時限爆弾付き不良債権の単なる監視所に過ぎない沖縄メシア教会が、那覇の一等地に大きなビルを本拠として構える事ができる程に。
「ちなみに、我が弟の
「
「仕事のついでに姪の様子を見に来た、と言ったらおかしいかね。どうやら上手くやっているようで安心したよ。その調子で頑張りなさい」
一同が振り向いた先に立っていた長身の男性『座備議連』を見て、ニャアンが驚いたように目を見開いた。
普段は沖縄県議会の議員として、県政とガイア連合沖縄支部とのパイプ役を務めている彼だが、今日はいつものスーツ姿ながら、その脇には大きめのクーラーボックスが下げられている。
「父が運営する農園で取れたシークワーサーの差し入れだ。霊的作物としての果樹栽培がようやく軌道に乗ってきたそうでな。試食も兼ねて持ってきたのだ。良かったら食べてくれ」
「ご馳走になります!」
◆ ◆ ◆
空。
青く晴れた沖縄の空に点々と浮かぶ、白い雲。
その一つの上に隠れて、ゆったりと二機の機影が浮かんでいる。
片や、ガイア連合沖縄支部が保有する小型のヘリコプター。機種そのものは比較的有り触れた民生用だが、各種対オカルト処置が施され、一部には呉ロボ研などで開発された特殊素材で補強されている。沖縄支部に所属する座備賀留真がヘリパイロットを務めており、その隣のシートには空挺降下の心得があるガイルが乗り込んでいる。
そして、その隣に浮かぶもう一機────ジャパリバス・飛行形態。車体上部からは大型バルーンを展開して車体を浮揚させ、さらに機体後部に格納されているプロペラエンジンを展開して推進する。航空力学とかその辺はオカルト技術でまるっと無視して、飛行船としての機能をかなり無理矢理にポン付けした機体であるが……とにもかくにも飛行の安定性だけは悪くない。
その座席に集まっているのは俺とレオニダス&シロコのシキガミ組に、俺の直衛を務める結芽と、さらに狙撃銃の入ったハードケースを抱えた執事ニキだ。上空で天候操作を行う俺の護衛に加え、何が起こるか分からないという事もあり万が一の事態を想定して現場に急行、空挺降下と上空からの支援を行うための面子だが。
「その想定が外れる事を願っているよ。じゃ、行ってくる」
ジャパリバスのドアから飛び出し、足元の雲を一時的に固化して足場にして距離を取り、そこで悪魔変身を発動────変身するのは龍神イチモクレン。鍛冶の神格である天目一箇神と同一視される暴風雨神であり、元は多度大社に祀られる隻眼の龍神だ。
俺が変身したその姿はまさしくモンハンのアマツマガツチ────古代魚のそれに似た雄大な体躯から、ある種の深海魚の鰭を思わせる純白の被膜を無数に生やした東洋龍。ただ隻眼という一点だけが、俺の知るアマツマガツチとは異なっている。
『でかいな……始まりの六人を別としても、やはり黒札は次元が違うという事か……』
「ちゃんと修行しないと、そこまで強くはなりませんけどね。その辺は普通の異能者と一緒です」
「やはり日々鍛えるのが一番大事という事ですな!」
通信越しにガイルが感嘆の声を漏らすのを、ジャパリバスの座席に座った執事ニキが肩をすくめて訂正し、レオニダスが胸を張る。感想は三者三様といったところ。
それを余所に、いつの間に【軽身功】の一つでも身に着けたか、空中を跳ねるような軽快な身のこなしで結芽とシロコがこちらの背中へと飛び移ってくる。
「じゃ、お邪魔するねジーク。ひゃー、大きいねえ。ジークの背中だと思うと、ちょっとドキドキするかも」
「結芽、今は仕事中。真面目にやるべき」
「もう。はいはい分かってますよ。ほら早くやろう」
俺の場合基本的には鍛冶仕事のために使う形態だが曲がりなりにも元は嵐を司る龍神、雨くらいは呼べる。
空中に浮かぶジャパリバスの荷台には農業用の大型ポリタンクが固定されており、そこから伸びるホースの先端を持ったシロコが、そこに取り付けられたシャワーヘッドのレバーを操作する事で、タンクに蓄えられていた霊水が放出される。
空間拡張されたタンクに蓄えられていた霊水は500リットル程度、それを呼び水に暴風雨神の権能を使って雨雲を生成し、沖縄一帯を覆っていく。何もないところから雨雲を呼び集めて雨を降らせるのも不可能じゃないが、しかし水源があった方がやりやすい。
今回の仕事で大事なのは強い雨を降らせる事ではなく、長時間雨を降らせ続ける事だ。今日から丸一日、沖縄の天気は雨……外出を控える事がオススメされる程の豪雨には程遠いが、しかしこの雨天で火をつけたままの蝋燭を持ち歩くのは、点火したライターを再点火せず一日持ち歩く事より困難だろうな。
◇ ◇ ◇
「────お布施が足りないよ、お布施が」
降り始めた雨を窓越しに見守りながら、男が溜息を吐いた。
沖縄の戦後オカルト史上、メシア教会と限りなく深い関係を持つ平和活動団体の中核メンバーの一人である彼『九能秀臣』は現在、一つ悩み事を抱えていた。
つまり、金がない。
自分が所属する平和活動団体が、組織として活動するための資金が足りない。
その資金を稼ぐために、自身の組織で行う平和行進イベントの計画を大掛かりなものに変更し、組織として縁があった韓国のプロテスタント教会から大量の人員を呼び寄せて、さらに彼らから“参加費”を回収する事を考えていた。
だが、突然のこの雨だ。
「ちょっと不味いねえ。雨でイベントを延期すると、参加者の宿泊費用だけで足が出ちゃうよ……」
半島から1000人単位で渡航してきた人間の接待が可能な施設や人員など、平和団体は持ち合わせていない。だから外部のホテルなどに宿泊させるしかないのだが、そのための資金が足りない。
昔は、こうではなかった。
いくらでも金が湧いてきた。
自分達の正義を語り馬鹿な学生を丸め込んで革命の闘士に仕立て上げるビジネスは楽しかったし、そうやって自分達の元を巣立っていった学生達の中でも見込みのある者達は、今ではメシア教会の指導の下、日本や世界各国の様々な場所で本格的な活動に携わっているという。
そんな実りある有意義な仕事の報酬として流れてくる資金は莫大で、少なくとも平和活動団体が組織として活動を行う上で、資金に困窮する事はなかった。
それが今や、日々の活動資金にすら滞る有様だ。
左翼系平和活動団体ネットワーク、ひいてはその母体である沖縄のメシア教会がそのような状況に追い込まれたそもそもの発端になったのは────意外な事にガイアアニメーション、通称ガイアニの台頭だった。
沖縄メシア教会を中心とした平和活動団体ネットワークの資金源は、その名の通り平和活動を看板とする平和活動ビジネス……主に沖縄を訪れる修学旅行生などを対象とした平和関連イベントの参加費用だったり、あるいは平和のためという美名を名目にした反政府活動に対する左翼系政党や大陸・半島国家からの支援金であったりした。
その内、金銭面での比重が大きかったのは後者、平和活動という看板を利用した寄付金集めであり……そのための顔となっていたのが日本アニメ界の巨匠と名高い、とあるアニメ監督だった。
自然の美しさや平和の尊さ、戦争の虚しさなどを主題に数々の名作を手掛けてきた彼が沖縄平和活動の小団体の代表となり、そして最大のスポンサーになった事により、平和活動ビジネスに流れ込む寄付金の総額は数億円にまで膨れ上がった。
個人として多額のポケットマネーを振り込むだけでなく、象徴として寄付を集める看板という利用法、さらにはイメージの浄化────左翼系平和団体の杜撰で暴力的な活動の実態を、かつて巨匠が手掛けたアニメ作品の世界観のように穏やかで優しい理想のイメージで覆い隠すという利点により寄付の間口を大きく広げた事により、集金効率は右肩上がりに跳ね上がった。
また、巨匠と彼が束ねるアニメスタジオが作ったアニメ作品は、テレビ局にとってのドル箱だ。だから巨匠が参加している団体が事件を起こせば、それは彼が作ったアニメ作品のイメージを悪化させ、そのアニメで稼いでいるテレビ局の収入が下がってしまう。
だから沖縄で平和活動を行っている団体のイメージを毀損するような事件が起きても、自発的に“報道しない権利”を行使して報道を自粛してくれるという大変ありがたいオマケ効果まで付いてきた。
その巨匠が唐突に、平和団体と袂を分かった。
元より終末を見据えて文化……というか娯楽の多くを保全するべく東奔西走し、多くのクリエイターを保護しているガイア連合が、数々の国民的アニメーション作品を手掛けてきた巨匠を放置しておくはずもない。
ガイアニ傘下の声優プロダクションを接点として全力で取り込みに掛かった結果、ガイア連合は彼と彼の率いるアニメプロダクションとの間に一定の繋がりを構築する事に成功した。
この繋がりを通して当初、巨匠はガイア連合沖縄支部に平和活動への支援を要請したのだが、逆に沖縄支部からメシア系左翼団体の活動実態、並びにその真の活動母体であるメシア教会との繋がりを伝える“黒の章計画・序章”を見せられた事により、巨匠は沖縄平和活動への支援を完全に断つ事を決意。
何なら、その次の作品を手掛けた際には、沖縄の平和活動団体を支援した事を“自身の罪であり最大の後悔”とまで公式の場で言い切り、関係を断って……そしてこれまで平和活動団体に流れていた分の支援は、ガイア連合沖縄支部に向かう結果になった。
この結果、これが平和活動ビジネスを牛耳っていた沖縄メシア教会に対して多大な打撃を与え、当時は那覇市の一等地に豪勢なビルを建てていた彼らが僻地のプレハブ小屋暮らしへと転落していく第一歩となっていったのだった。
そんな歴史に思いを馳せながら、活動家は窓の外に降り続く雨を険しい顔で睨みつける。
「ガイア連合だっけ……本当に困った事をしてくれるねえ……どうしたものか」
この雨。
だが、それならそれでやりようは、ある。
少し大変になるが、しかし問題はない。参加者達も平和のために戦う立派な闘士なのだ、この程度の逆境は文句も言わずに従ってくれるだろう。
そんな皮算用が通用する時代も、既に過ぎ去ろうとしている事からは目をそらして。
こうして。
降り続く雨の中、誰も望んでいなかった蝋燭平和行進イベントは開始される事になったのだった。
ジブリなんて大御所を、ガイアニが見逃すわけがないんだよなあ……。
血涙鬼・彼岸様の『凡庸でありふれた転生者達の小話』で、『銃火暴風怨嗟域』に対する監視所以上の役割がなさそうな沖縄メシアンが豪華なビルを建てられるくらい優雅な暮らしを満喫していた記述を見て「これはどこかに“資金源”がありそうンゴねえ(ニチャァ」と思ったのが今回の話を書き始めた切っ掛け。
そこから色々調べ始めて現地の平和活動団体が宮崎駿やら韓流プロテスタントやら、とにかくカオ転世界なら使えそうなネタばかりだと思ってからの今回。
なお、多分カオ転世界で辺野古ボート事故は起きない。
もしくは起きるけど琉球ニキ辺りが偶然通り掛かって救助してくれるので罪のない学生が巻き込まれて死ぬ事はない。運命力万歳。そういう事にしておく。
~割とどうでもいい設定集~
・アスカニキ
血涙鬼・彼岸様『凡庸でありふれた転生者達の小話』より。
ガイア連合沖縄支部に籍を置く黒札。ガワは種運命のシン・アスカ。
純戦闘型に寄った霊才とペルソナ適性を持つ模様だが、『第二十六話 彼女は最高にキュート(異論は無視します)』の段階ではまだまだ半覚醒状態の様子。
山梨で覚醒修行を受けていたところ、ヤプールニキに目を付けられて赤青白のトリコロールカラーに黄色の差し色が入った新型のULTRAMAN SUITSを押し付けられる。
その後、一旦里帰りしてきた際に今回の事件に巻き込まれた。
・陶芸家ネキ
血涙鬼・彼岸様『凡庸でありふれた転生者達の小話』より。
ガイア連合沖縄支部に所属する黒札の一人。ガワはアイマスの藤原肇。
地変属性魔法のエキスパートで、学生の身ながら既に自分のアトリエを持ち、アガシオンの壺や沖縄支部の特産品の一つアガシオン・シーサーの製作に携わるアガシオン関連の生産職。
元は岡山支部の所属ながら、メシアンのストーカー被害に対する避難を兼ねて沖縄支部に移籍した。
・ヤプールニキ
山親父様『【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅』より。
ガイア連合北神奈川支部の技術担当の片割れであり、『ULTRAMAN SUITS』開発者の片割れ、そのはっちゃける方。
新たに開発されたULTRAMAN SUITSの装着者としてアスカニキに目を付け、強引に押し切って押し付けた。アスカ・シンなので。
後でこの所業がキノネキ・イデニキにバレて両者に厳しいお仕置きを食らう。
・座備議連
元ネタは『ガンダム』シリーズ。ギレン・ザビ。
沖縄の名家の中でも零細が枯渇しているため後方支援に回った家系である座備家の長男。賀留真、土通流の兄。普段は沖縄県議会で議員として、ガイア連合沖縄支部とのパイプ役を務めている。
座備家の霊才が枯渇しているという事もあり、異能者としてのレベル上限はかなり低い。なお霊才としては支援系に偏っているので、やはり当人の戦闘力はあまり期待できない一方で、少佐ニキの廉価版よろしく演説を通じて広範囲に支援効果を撒く能力を持ち合わせており、そっちの有用性には期待できるはず。
庭の手入れや囲碁が趣味。
仲良しザビ家なので家族仲は良く、姪に当たるニャアンも可愛がっている。
・龍神イチモクレン
ブラキオニキことジークの悪魔変身形態の一つ。
その姿はモンハンのアマツマガツチ。
一目連。
鍛冶神にして暴風雨神。
本来は生産のための変身形態ながら、雨風を操る事が可能で空も飛べる。
・九能秀臣
元ネタは『クローズ』。
平和活動団体の中核メンバーの一人であり、自分達がメシア教会の下請けである事を理解している数少ないメンバー。集金活動と米軍基地への嫌がらせ以外の主な
なおメシア教会の正確な活動内容はあまり把握していないが、知っていても大して良心を傷めない類の外道。
平和活動を通じた集金機構が機能不全を起こしている事を理由とする資金難をどうにかするための平和行進イベントを企画するが、想定外のガバが重なり始めている。
・日本アニメ界の巨匠
ご存じジブリの人。
元々、沖縄の平和活動団体と繋がりを持つ、最大の資金源だった。現実でも。
だがこっちの世界では、ガイアニとガイア連合と黒札がジブリなんて大物を見逃すはずもなかったので速攻で攻略された。
黒の章を視聴させられたせいでSAN値が大幅に削れた模様。
・黒の章計画・序章
メシア教会が沖縄県内外でやらかした様々な悪事をまとめた証拠資料の数々の中でも、主に正式なメシア教会の構成員ではない平和活動団体にまつわるスキャンダルをまとめたもの。
限りなく不快だが、まだまだ序の口という程度の甘口作品。あくまでも序章のため、黒の章計画の中でも
・メシア教会のプラン
“『銃火暴風怨嗟域』の発生は日本並びに沖縄県民がやった事に見せかけてメシア教は責任から逃れる”というもの。
単なる責任逃れではなく、いずれ『銃火暴風怨嗟域』の影響が外界に溢れ出す時に備え、『銃火暴風怨嗟域』自体を沖縄・日本に対する呪詛として確立する事で、その被害を沖縄・日本のみに限定し、世界(ひいては自分達)に対する被害を最小限に収めるというプラン。
最初に概要を構築したのはメシア教会の中でも、太平洋戦争後のGHQと繋がりがあった米国系メシアン派閥。
このためメディアや教育などを利用して太平洋戦争における日本の戦争責任を過剰に大きく喧伝し始めた。
結果としてこれは太平洋圏内における戦死者の怨念マグネタイトを『銃火暴風怨嗟域』へと収束させ、『銃火暴風怨嗟域』の神秘の更なる強化・深化を引き起こした。
そして不良物件となった沖縄メシア教会を引き取って商業化を成功させたのが同メシア教会内の、メシア教会世俗派。単純な歴史の修正作業だけでなく、修正した歴史を利用した集金システムと、それを中枢に据えたある種の人的ネットワークを構築した。そのせいで“太平洋戦争の犠牲の神話化”が安定したともいえる。
なお同じ世俗派でも、現在は新潟支部を率いる鑑定ニキの下に着いている中国系とは系統が異なる、韓国系世俗派のルートであるため、中国系からは統率し切れないし完全な情報も入ってこない。