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オゾン草やら何やら、ベジタブルスカイの象徴というのは割とたくさんある気がするが、一番はおそらく“ポテトの泉”だと思う。
これを再現するにあたって、探求ネキが作り出した構成要素は大きく分けて三つ。
熱をエネルギー源とする高い増殖性能と、ある程度のサイズにまで成長したら自ら適切なサイズに分解する性質を併せ持つ『千本熱芋』。
太陽の熱を浴びるだけで膨大な食用油を生成する『陽向菜』。
生成された高熱の油に適切な量の塩分と栄養分を放出する『ウール石』。
この三つの構成要素を上手く組み合わせる事で、細切りになったイモを流れる油の川に放流しつつ、適量の塩分と共に加熱するという全自動フライドポテト生成ギミックが完成する。これがポテトの泉……ある種、作る側の感覚的にはドミノ倒しやピタゴラスイッチを組む工程にも似ているのだと思う。
クラウドセルを完成させた後、私が真っ先にやったのはポテトの泉の再現だった。塩分と栄養分の調整やポテトの揚げ具合など思ったよりも調整が難しかったが、これもどうにか成功し……その後すぐに【投射呪法】の修行を始めて、それで時間が無くなってしまい、それきり何もやらず仕舞いだったのだが。
その時に思ったのだ。
このポテトの泉、思った以上に応用が利くんじゃないか、と。
そんなわけで、今回のお題はこのポテトの泉である。
アリスもアリスで、クラウドセルの別エリアで同じようにポテトの泉をベースにして何やら作っている。一体どんなものを作っているのか、私とは多分別のアプローチになると思うが、アリスは一体どんな料理を作るのか……それもそれで楽しみだ。
炒飯ネキやドブカスニキの手回しで一日の休暇を貰った私は、普段の仕事からは離れ、しばらく修行で忙しく行く事ができなかった私とアリスの雲上拠点クラウドセルに、久々に訪れていた。
アリスの指示でクラウドセルの固有時間は1000倍にまで加速しており、そのため内部時間においては1000日……約3年分の休暇である。
では早速、千本熱芋の改造を始めていく。
別にそこまで難しいものじゃない。
以前、ウインナースの改造に手を出した時と一緒。同じ技術、同じ手順だ。
「最初のテストケースとして最適なのは……やはりどう考えてもコロッケですね。主原料ジャガイモですし」
と、いうわけで本体がキッチンカーであるザイダベックの内部キッチンでコロッケを調理スタート。トッピングはオーソドックスにコーンと牛肉の二種類と行こう。
ジャガイモを潰して捏ねて、衣を着けて、後は揚げるだけというところまで作ったら、用意しておいた千本熱芋の苗と一緒にアトリエ式錬金釜へと放り込んで概念合成スタート。
こうして完成したのが……名前どうしよう? まあ簡単に『千本コロッケ芋』とでもしようか。
ジャガイモのイモ部分が未加熱のコロッケになっており、千本熱芋同様に一定サイズになると自切する。それが陽向菜を源とする高熱の油の中に落ちると、ポテトの泉同様のプロセスでコロッケが揚げ上がる、という寸法だ。
これを時間加速型壷中天で育てて増やして、クラウドセルに植え替えて、と。
コロッケ芋と陽向菜の群生地帯を作ったら、地形操作スキルで周りの雲大地を成形してそれらが自動的に組み合わさりつつ、いい具合にコロッケが揚げ上がるように地形を構築して、ウール石でプールを作って、最終的にはここに流れ込むように…………────とりあえず『コロッケの泉・試作版』を完成させる。
これが上手くいったら、他の種類のコロッケも作るし、コロッケ以外も作る予定。もちろん、揚げ物の泉は一つ一つ種類ごとに調整が必要だろうけど、その辺も手を抜くつもりはない。
作っている最中に【コロッケ作成】スキルが生えたが、それはそこまで大した問題じゃない。
そもそもこのスキルで作れるコロッケは出来も味も、私が自分で揚げたのと変わらないし。
まあ、楽ではある。
ともあれ。
「これでしばらく様子見を、と……」
一仕事終えたら、ザイダベックのキッチンに戻って一休み。
コーヒーを淹れ、朝方こっそり揚げておいたドーナツを片手に、視界一杯のコロッケ畑を眺めて一息つくと、キッチンに置いていた製作ノートを確認する。
「この調子なら、少なくとも芋系ならポテトチップスや芋けんぴ、それからライドウ御用達の大学芋なんかも作れそうですね。ライドウといえば宮城の幼女ネキですが……彼女も確か自前のベジタブルスカイを所有しているとか……」
自前でベジタブルスカイを購入できるのなら、自前でコロッケの泉を用立てる事くらい難しくはないだろう……いや、マッカの札束で顔を叩かれている技術部やホビー部の状況を考えると、もしかして私が作る羽目になる?
巨大な札束を振り回しながらナマハゲの如き勢いで背後から追い掛けてくる幼女ネキの姿を思い浮かべて、少し背筋が寒くなる。
「ま、まあ将来の事は将来の私が考えるでしょう……きっと、多分! ……それにしても私の方は順調ですけど、アリスの方はどうなっているんでしょうね」
少し目を離した隙に、何やら妙なものを作り出す子である。きちんと用途を考えて作っている場合がほとんどなので基本的には役に立つものを作るのだが、それはそれとして異様に攻撃性と危険度が高いものを作る場合もあって、迂闊に目を離せない危なっかしい部分もある……それでも問題児扱いされる一部黒札よりは大分マシなのだが。
まあ本当に危険なものを作る場合は最低限ショタオジに報告・連絡・相談ができる子なので、そこまで心配する事もないかもしれない
けど────。
「……やっぱり心配です」
無茶をしていないか、気になるところだ。
そんな事をつらつらと考えて余計な方向へとズレていく思考をその都度軌道修正しながら、製作ノート片手に頭を捻り、手を動かして図面らしきものを描いていく。
中心に配したポテトの泉を取り囲むように、円形の広場を十字に切り分けて大雑把に四区画、『唐揚げ』『フライ』『カツレツ』『天ぷら』と書き込んで、その隣には食事用の休憩所を配置……コロッケ用のフィールドに、水飲み場も欲しいか。
正式な図面の書き方なんて分からないから大雑把なものにしかならないが、アニメーター修行の経験が生きている。素手でもコンパスで描いたような正確な円が描けるのは、元々のステータスに加えて、思考した通りに身体を動かせる【投射呪法】の活用法の一つだ。
そんな事をやりつつもコーヒーを飲み終えたら、大雑把に描き上げた図面を切り取ってコルクボードに貼り付け、そして私の方は同時進行で、製作中の試作コロッケの泉の調整へと取り掛かった。
「油の流れる水路の目詰まりは……なし。フライドポテトよりもサイズが大きいですから念のために水路の幅と油圧を大きめにしたのが良かったんでしょうね。塩気の下味は……強過ぎず弱過ぎず、こんなところでしょう。揚げ具合も……良し! 後は……」
ウール石で構成された長方形のプールは煮え滾る油で満たされ、その中にはこんがりと狐色に揚がったコロッケが浮き沈みしている。
これを放置しておくのは普通なら衛生的に問題があるのだが……そこはそれ、探求ネキのミラクルな技術のお陰か、陽向菜油の特性により、太陽光を浴びてさえいればいくらでも鮮度を保つ事ができるらしい。とはいえ、古いコロッケがいつまでも放置されているのはあまり気分がいいものではない。
どこかへ自動的に格納されるような仕掛けを作りたいのだが…………私の技量ではまだまだそこまでの事は無理か。技術も、知識も、何もかもが足りていない。後でアリスに聞いてみよう。
「コロッケだけでも色々と作れますし……とりあえず定番の牛肉コロッケ、コーンコロッケ、野菜コロッケ、カレーコロッケ……ソースは市販のものも悪くはありませんが、やはりここはソースの木でも作って植えた方がいいですね。でないと最悪、量が足りなくなります」
後は周辺にウール石で食事用のデッキを作って屋根を設置、快適な気温を保つように結界を貼り、食事がしやすいように木製の椅子やテーブル、そしてアクアストーンを利用した食器洗い用の水道と水飲み場、自販機なんかを配置してスペースを作っていく。
ソースの木の植え込みも必要か。
「じゃあ、次はコロッケ以外の料理も」
予定している区画は六枠。
唐揚げ。
フライ。
カツレツ。
天ぷら。
コロッケ。
その他。
単純に唐揚げだけでも、醤油や塩の他、ショウガやハーブ、柚子胡椒など様々な味付けが考えられるし、鶏肉系列の揚げ物なら竜田揚げ、チキンカツにチキン南蛮、チキンフリッター、油淋鶏など、色々だ。何ならサバなどの魚の唐揚げだってある。
フライならアジフライやエビフライ、カキフライなどのシーフードから、ポテトやピーマンなども考えられる。
カツだってトンカツやチキンカツ、エビカツなどなど、それこそ何だってありだ。
天ぷらもエビやかき揚げみたいな代表的なメニュー以外にも色々と考えられる。何ならアイスの天ぷらなんて変化球で攻めてもいいだろう。
あるいは甘いものならかりんとうにポテトチップス、さらにはドーナツ等々、揚げ菓子の類は何でも行ける。あくまで揚げるだけの工程しかできないのでチョコをまぶしてカラースプレーを振るような見栄え重視の作業は無理だが、オールドファッションやフレンチクルーラーくらいは可能だ。沖縄名物サーターアンダギーなんかも作れるはずだから、そちらを沖縄支部に売り込む事だってできるかもしれない。
作りたい揚げ物を大雑把にリストアップしていき、品目をノートに書き込んでいくと、気がつけばその品目は軽く100を越えていた。
「さて、後はこれと似たような構造をたくさん作る…………うん、まあ…………大変ですよね、さすがに」
千本コロッケ芋をベースに、さらに千本唐揚げ芋を造りながら、軽く頭を抱える。
料理を作るのはいいが、土木工事は流石に専門外だ。
とりあえず思い付きのままに設定した品目は、それこそ馬鹿みたいな分量になっていた。これらを全部揚げ物の泉として落とし込むとすると…………馬鹿みたいな作業量になるだろう。料理の方はどうにかなるが、土木作業はちょっと大変だ。その作業を一人でやるとなれば……うん、まあ、地獄だろう。
手元の製作ノートと、真っ白な雲がそのまま凝固したようなベジタブルスカイ特有の地面を見比べてげんなりした気分で溜息を吐いていると。
「どうやら苦労しているようです、ね、フウカ」
「あ、テノチ。何か用ですか?」
クラウドセルを構成する雲が軽く渦を巻き、その中から姿を現したのは、この浮遊大地クラウドセルの管理シキガミである『テノチティトラン』……略してテノチ。見た目は優雅な白のサマードレスのお嬢様だ。さりげなく私よりも背が高いのはちょっと悔しかったりする。
私のシキガミでもあり、アリスのシキガミでもある……そんな微妙な立ち位置の存在だ。
その本体はこのクラウドセルそのものであり、その中枢は今この場からも遠目に見えるグレート・テオブロマ親樹と一体化している巨大飛行石内部のシキガミコアなのだが、【躯体形成(雲)】なんてスキルを使えばクラウドセルを包む仙境結界の内側であればどこでも、クラウドセルを構成する雲それ自体を圧縮成型し、こんな風に人と変わらないもう一つの身体を作り出して活動する事ができる。
「貴女の様子を見に来ただけです。アリスの方は順調に作業を進めているようなので。かなり大規模な施設を作っているようです、よ。聞きたいですか?」
「聞きません。後の楽しみという事で、アリスが教えてくれるまで取っておきます」
「あら、それは残念です、ね」
私が断ると、テノチは少し残念そうに肩をすくめた。
あれは内心、話したくてたまらなかった顔だ。何なら私も聞きたかったが、こういう場なのだ、ネタバレは厳禁だろう。
「で、貴女が今困っているのは……ふむ。もしかして、工事のための作業員が必要だとか?」
「あー……まあ、そんなところですけど」
「それならインベス達を使えばいいじゃない、ね」
「あっ……」
そういえばそうだ。
このクラウドセルを建造するにあたって、その運営のためにアリスが製作した菌類基盤シキガミ。妖魔ミ=ゴをベースに、生体工学や化学、生物学、機械工学などといった比較的珍しい生産系スキルを保有しているが、基本的にはクラウドセルで取れる農作物の管理や収穫なんかがメインの仕事だ。
だが、それはそれとしてある程度は色々な活動に対応できるように色々と仕込みがされている、らしい。
なお最近は多少の仕様変更がなされたようで、てらほ君などの一部シキガミを参考に、あの不気味感漂う量産型特撮怪人な白キノコの外見から、通常時は『なめこの巣』なんかのなめこシリーズに登場する“なめこ”の姿に擬態するようになっているのだが。
今回は全力で活動するため、始めから特撮怪人モードだ。
「ほら、呼び集めておいたから、ちゃんと命令してあげなさい、ね」
「あ、はい……えっと」
テノチのお薦め通りに周りの空からこちらに向かって集まってくる初級インベス達に声をかけると、甲羅状の背中から拡げた蟲の翅を震わせて着地したインベス達の生白い表皮が赤熱しながら崩れ落ち、その中から立ち上がるのは、頭部と背中に巨大な枝角を伸ばす『シカインベス』だ。
インベスの成体化────そういう仕様があるという事はアリスから聞かされていたが、この目で直接目にするのは初めてだ。
「えと、それじゃ────」
綺麗に整列したシカインベス達に要望を説明し、見本となるポテトとコロッケの泉を見せて、ザイダベックに備え付けられたホワイトボードに大雑把な絵図面を描いてやると、どうやら普通にこちらの言葉と意図を理解してくれたようだ。
統合意識で接続しているせいか綺麗に同じタイミングで頷くと、その腰に微妙に見覚えのあるライダー系のベルトが形成される。その結果、何が起こるのかは大体予想がついたが、どうしてそういう事になるのか、これが分からない。多分、というか間違いなくアリスが何かしら変な機能を組み込んでいたのだろうが。
《Set, WARNING.》
《Would you like a custom selection?》
シカインベス達の背後に工事現場の足場みたいなエフェクトが組み上がり、変身ベルトに特有の電子音と共にその中から伸びる巨大なロボットアームが稼働音を立てて左右からインベス達を挟み込むように動き、その身体に建設重機のようなデザインの展開式デモニカのアーマーを装着させていく。
ヘイローに内蔵された私のCOMPが御丁寧にも、『仮面ライダーシーカー』と、視界に直接その名前を表示してくれた。
呆然とその様子を見守る私の困惑も知らないかのように、インベスが変身した仮面ライダーシーカー達はどこからともなく巨大な剣やハンマーや銃を取り出すと、それを振り回して恐ろしい速度で建設を進めていく。
彼らが剣を振り回せばその辺の土や木が建材に変わり、ハンマーを振り下ろす度に地面に本格的な土台が構築され柱が生えてきて、銃を連射すればその先に壁や足場が構築される。
「……何だか、不可解な展開になってるような?」
あからさまに現実離れした光景を余所に、首を振った私はキッチンカーの姿になったザイダベックの車体から展開したキッチンでひたすら調理と錬成だ。
アジフライ。カキフライ。イカフライ。
チキンカツ、トンカツ、野菜カツ。
海老天、茄子天、カボチャの天ぷらなんかも。
あるいは鳥や鯖の唐揚げ。
そんなあれやこれや各種揚げ物系の総菜類を一つ一つ丁寧に衣を着けて、油で揚げる直前まで調理したら、片っ端から千本熱芋の株と合成。
そうやって新しく生まれていく千本鶏唐揚げ芋、千本茄子天ぷら芋、千本イカフライ芋など、種類は山程……既にイモでも何でもないが、ともあれ出来上がった苗はインベス達に渡して、予定の場所へと植えてもらう。
「……ちょっと疲れましたね」
いくらインベス達の補助があるといっても、単純に考えれば常人であればちょっとで済むような作業量じゃないのだが、異能者の耐久力にしてみれば大した事じゃない。それでも精神的な疲労だけはどうしようもないものだ。
肉体的には何の異常もないはずだが、不可視の泥にも似て肩や背中にへばりつく倦怠感にも似た感覚を、ぐっと背中を伸ばして追い払う。属性を治癒に偏向させたマグネタイトを全身で流動活性化させて疲労を打ち消すが、それで消せるのはあくまでも肉体的な疲れだけだ。
「じゃ、ここはちょっとだけ目先を変えてみましょうか!」
と、いうわけで私が取り出したのは、大きめの鍋一つ────ぱっと見、鍋には見えない代物だが。大鍋サイズのやや大きめなカボチャに鍋の取手を生やしたような奇妙な鍋、その名も『遊球鍋』。元々は探求ネキが開発した『遊球樹』の果実を、生きたまま鍋として加工し、錬金釜・八卦炉としての素材合成・純化機能を組み込んだもの。
これに挽肉とその他、タマネギ、ニンジンとか卵、パン粉その他材料をまとめて放り込み、さらに花椒とニラ、ニンニク、トウガラシを投入して台湾風な辛口の味付けにまとめながら【螺旋丸】の要領で高速で内部を撹拌していく。
元々は高位異能者がスポーツ球技をするための遊戯用ボールとして設計された遊球樹の果実は、衝撃や回転を加える事で美味しさを増し、込められた霊力の属性に応じて霊味が変動していく性質を持つが────この遊球鍋はその性質を利用したものだ。
鍋の内界のマグネタイトを流動操作して鍋の内側の食材を撹拌する事により食材の味を引き出し、霊力によって霊味を加えて操作する事が可能な、ガイア連合調理部が開発した、言わば調理用に特化した錬金釜だ。
だがそれだけに扱いも繊細で、非常に高い技術が要求される。右手で【螺旋丸】を発動しつつ残る左手で錬金を行うくらいの技量があって、なお足りない。その【螺旋丸】で食材と鍋をゼロ距離破壊しないだけの繊細にして過剰なまでのマグネタイト操作能力があって初めてまともに操作できる代物だ。
熟成を加速するために内部時間の加速機能も付いているが、それだって起動しようものなら操作難度は倍増しで跳ね上がる。
……私が【螺旋丸】を使えるようになった最大の理由である。遊球鍋を扱おうとするなら【螺旋丸】の習得は必須、というかこの鍋を使えるようになるまでの道程の傍らに転がっているのが【螺旋丸】、というようなイメージだろうか。
「メンチカツ……というか辛口の台湾風ミンチカツですから火炎属性をメインに……辛くなり過ぎないように土行……地変属性を足して甘味を増しつつ、ゆっくりと治癒属性を交えて油のコクを深めていく形で────」
といった具合に遊球鍋で練り上げたタネを小判型に成形し、小麦粉・溶き卵・パン粉で作った衣を着けて、後は油で揚げるだけ────というところまで出来たら、後は千本熱芋の苗と合成して完成────千本黄金台湾ミンチカツ芋。
普通に揚げれば絶対に最高の出来になっていたはずの逸品、自分の手で揚げる事ができないのが残念だが、それは仕方なし。
後はインベス達の仕事を見届けて……完成した揚げ物の泉の出来を確認するだけだ。
◆ ◆ ◆
そうして完成したのは、予定以上に巨大なグランドキャニオンを思わせる大渓谷だった。その渓谷の至る所から高熱の蒸気が噴き出しているその様はまさに地獄……ある種の火山・温泉地帯が“地獄”と呼ばれる事があるが、まさしくそれに酷似した地獄地帯だ。
もっとも、その周囲に漂う臭いは温泉特有の硫黄臭ではなく、強烈に食欲と空腹感を刺激する揚げ物の臭いだ。
中央に広がる巨大な熱湯ならぬ熱油湖からは常に大量のポテトフライが湧出し、その周辺からも灼熱の食用油の泉が絶え間なく湧き出しては、多種多様な揚げ物がいつでも食べられる鮮度で浮かんでいる。
まさに食べ放題だ。
そんな大峡谷地帯────名付けて『揚げ物地獄谷』の一角で、激しい戦闘が繰り広げられていた。
「クリスマスには鮭を食うシャケ!」
「クリスマスじゃなくても鮭を食うシャケ!!」
「とにかく何でもいいから鮭を食うシャケ!!! ノーチキン! イエスシャケ!! つまり何でも鮭が最高シャケ!」
などと世迷言を叫びながら、いかにも怪しげな鮭怪人『フード サモーン・シャケキスタンチン』が合わせて3体、タイミングを合わせて三方から飛び掛かり────そして銀光が三閃。
「あべし!」
「ひでぶ!」
「たわば!」
一瞬でバラバラに解体され、綺麗な鮭の切り身だけを残し、マグネタイトの残光を散らして消滅する。蒼銀色の少女は、大気の中で緩やかに霧散していくマグネタイトの残滓を左右の剣先から散らして、くるりと舞い踊るようにターンを決めた。
サモーン達が振るっていた新巻鮭ブレードは、あれでも道南支部トップスリーの一角である邪視ネキの大鎌の一閃すら受け止められる程の逸品なのだが、さすがに【全次元切断術式】の搭載された空間断裂の刃まで防ぐような機能は搭載されていなかったらしい。
「シャゲャ~~~~!!! 何でサモーン三体掛かりで掛かってあっさりやられてるシャケァ~~~~~!!!? 今度は十体……いや百体くらいでまとめて掛かるシャケ!!」
などと語尾付きの胡乱な口調でびったんびったんと跳ねる魚型の悪魔は、アリスとそのシキガミであるシトナイの協力で召喚した私の新しい仲魔、アイヌ神話にて語られる自然霊カムイの一柱である『妖精チェプコロカムイ』だ。
“魚の主”を意味する名を持つこの神格は元々、アイヌ人達にとってのソウルフードである鮭の大群を呼び出す権能を保有していたのだが……とある黒札三人組のやらかしにより妙に強い悪魔『フード サモーン・シャケキスタンチン』が日本各地で目撃されるようになった結果、チェプコロカムイの持つ鮭呼びの権能もまた、通常の鮭のみならずサモーンの大群を召喚する能力としてアップデートされてしまったらしい。
フードとして食材調達もでき、護衛として戦力にもなる……そんな私にとっても実に有用な悪魔は、今回はアリスが契約した二体目のシキガミの試運転の相手として召喚されていた。
そしてこの場に、もう一人。
「ッ、三人が一人残らず一撃か……剛剣ってよりかは馬鹿みたいに鋭い切れ味のせいだな。なら力はそこまででもねえ、か……」
真っ二つになり鮭の切り身を残して消えていくサモーン達の姿を見て呆れたように溜息を吐くのは、やはりシトナイの協力を得て召喚した私の仲魔の一体、北海道への縁で呼び出す事ができた『猛将ヒジカタトシゾウ』。
なお見た目は『ドリフターズ』の土方歳三だ。
類稀な戦術指揮と、分析能力。それを用いてサモーン達を統率している。
猛将悪魔として存在が確立した影響で妖刀としての性質を得た名刀和泉守兼定を肩に担ぐようにして、阿修羅のごとき凶相に意外な程に知性的な光を宿しながら、銀閃を散らして空間切断の死の舞踏を舞う少女の姿を観察している。
「ただ倒す事を狙うんじゃねえ、最初の二太刀は回避でも防御でもいいからこっちの剣に対処させて体勢を崩して、最後の一太刀で確実に仕留めろ」
「ふふん、分かってるじゃないか。もっとも────本当にそれが可能なら、ね」
鮮やかな蒼銀の輝きが、まるで挑発でもするかのようにクラウドセルの空に悠然と躍る。
月光から削り出したような蒼銀の髪を風に躍らせ、左右の手には双の聖剣カーテナ。光のごとき速度で空中を駆け抜け、空間跳躍を繰り返しながら空中を駆け抜ければ、その周囲には時空を切り抉る斬線が刻まれ、そしてサモーンが真っ二つに両断されて次々と倒れていく。
雷光のように鋭角のターンを繰り返しながら飛翔する蒼銀の軌跡に数拍遅れて湖の霧と紫電が彩り、そこに置き捨てるかのように白熱する【全次元切断術式】の残光が弧を描く。
見上げれば、高速飛行術式【ペリー・ダンサー】の幾何学模様に酷似した白翼を多重展開して背後に浮かべ、優美に佇むかのように空中に浮かぶのは銀色の髪を靡かせる少女の姿。蒼銀色の軽鎧を身に纏った彼女の銘は『メリュジーヌ』────アリスのシキガミ、その二体目。
やはり、強い。
さすがはアリスと契約した二体目の専用シキガミ、というだけの事はある。
「確か、素材はアルビオンとランスロットのフォルマに、聖剣カーテナが二本と他色々……本霊は複合型、倶利伽羅龍王と鬼神ヴァジュラパーニ、鬼神カルティケーヤ」
倶利伽羅龍王────仏教神話における不動明王が持つ神剣に絡み付く龍神だ。すなわち竜にして降魔の利剣という珍しい特性を持つ神格。
鬼神ヴァジュラパーニ────仏教でいえば執金剛神、
鬼神カルティケーヤ────インド神話に起源を持つ惑星神にして、仏教においては神速の代名詞である韋駄天として崇められる護法の神格。
それら二つが合わさった結果、その両手に宿る聖剣カーテナには不動明王の降魔の利剣とインド神話のヴァジュラの属性が加わり、空間を斬り裂くと共に火炎・雷電の属性を宿しているようで、戦っている最中もその手首から伸びる双剣から鮮やかな炎と雷光を散らしていた。
まあ、その辺の戦いを私はあまり見ていないのだが。
むしろ目の前での調理作業の方が重要である。
念動操作のお玉で鮭クリームシチューを煮込む大鍋を掻き回しつつ、右のフライパンではサーモンフライを揚げ、左に置かれたまな板の上では術式【御厨子】に内包された【
念動属性魔法の制御と分割操作を極めれば、こうして手が何本もあるかのような多重制御による同時調理ができるようになる。もちろん空間把握と慎重なタスク管理は、マルチタスクが必要な料理人の基本だ。
今日のお昼ご飯は鮭尽くしに決まり。
メインディッシュは鮭のクリームシチューだが、アリスは喜んでくれるだろうか。
大抵の料理は大喜びで平らげてくれるアリスの事だから大丈夫とは思うが、しかしだからといって手を抜く理由にはならない。
そして、そんな私を余所に、チェプコロカムイが呼び出すサモーン軍団は高速で飛び回るメリュジーヌに翻弄され、次々と鮭の切り身と化していっている模様。
左右の聖剣を交差させ、払い、そして蒼銀の少女は光芒と化した。
超音速飛行からの【疾走居合】────【光翼】に『轟の玉璽』『牙の玉璽』を術式として組み込んだ【ペリー・ダンサー】を三重展開し、飛翔するメリュジーヌが残す霧と紫電の軌跡に沿って二振りの聖剣による白熱する弧が閃いて、その度に鮭の怪人が真っ二つに両断されていく。
一体が腰の部分で両断され、一体が脳天から真っ二つになり、一体が無造作に斬り捨てられた。
速い。
一瞬で音速を越える領域にまで加速し、慣性すら自在に制御しての空中機動は速く、精密で、隙もなく、それでいて優美な舞踏を見ているかのように美しい。
泡を食ったチェプコロカムイが泡を食って追加のサモーンを召喚し、それを引き連れて土方歳三が突撃していくが、私は特に気にしない事にして淡々と調理を進めていく。
デビルシフターであるアリスは準大食い族だ、食材は多ければ多い程に良い。
幸いにも、私が習得した【投射呪法】は調理ペースの高速化にも役立っていた。
あらかじめ設定した通りの正確な肉体操作が可能な【投射呪法】は、想定外の連続である戦闘行動よりも、むしろこういった精密動作の繰り返しである製作作業にこそ向いた能力なのではないだろうか。
そんな私を余所に、戦況は佳境に差し掛かっているようだ。
【マハアクエス】を目晦ましに踏み込んだサモーンの【水竜撃】を、強化されたカーテナ・オリジナルの回転に巻き込むように弾き上げ、がら空きになった胴に膝蹴りからの、【ペリー・ダンサー】の翅を光弾に変えての掃射。
吹き飛ばされて地面に転がる相手に一瞥も送る事なく上空へと舞い上がったメリュジーヌは、不壊の聖剣アロンダイトと一体に鍛ち直されたカーテナ・セカンド弐式を振るって【全次元切断術式】を飛ばし、左右から押し寄せてくる鮭怪人の群れを薙ぎ払う。
全身に弾痕を刻まれて床に転がった個体の前に割り込んだ新たなサモーンが新巻鮭ブレードを盾のように構え、そこに向かってメリュジーヌが放った追撃、光弾の一連射を防ぎ止める。その隙に駆け寄った別のサモーンが【ディアラマ】でその傷を癒すも、最初のサモーンに撃ち込まれていたマーキングを通じて【飛雷神の術】で転移したメリュジーヌが双刃を振るい、残るサモーン二体が両断されて倒れ伏す。
「さて、残りの敵数は……と、そういえばこっちを忘れちゃいけないね」
そうして倒したサモーン達がフォルマとしてドロップした大量の鮭の切り身を確保すると、それを抱えたメリュジーヌは【写輪眼】の視界ですら瞬間移動にしか見えない速度でこちらへと移動すると、抱えた魚肉を差し出してくる。
「我らが愛しの姫君の大事なごはんだ。存分に腕を振るって、最高の出来に仕上げるといい」
「言われるまでもない……ですが、それはそれとしてアリスの認識はお姫様なんですね」
「そうだけど、それが何か?」
「……まあ、何一つ問題ないと思いますけれど」
ぶっちゃけた話、私も人の事を言えない。
肩を竦めると、私は調理を続けることにした。とりあえずこの新しい鮭をどうするか……鮮度も中々だし、そうだ、サーモンステーキなんてどうだろうか。
◆ ◆ ◆
さて。
「どうですか?」
「美味しいよ。今日も最高。チャーハンもパラパラだし、後はサーモンステーキ! 脂が乗ってて、それでいてさっぱりしたレモンとも相性ぴったりでいい感じ!」
極まった美少女という存在は、どうやら周囲の世界さえも美しく輝かせてしまうらしい。両眼をキラキラと輝かせながらのアリスは、今日も例えようもないくらいに綺麗だが、さりとてそれをどうやって例えるか。宝石やら花やら、とにかくありきたりの言葉では追いつかないくらいに今日も輝いている。
太陽みたいな満面の笑みを見ていると、思わずこちらまで幸せな気分になってしまうくらいだ。
今日の昼食は鮭尽くし……鮭炒飯に鮭クリームシチュー、サーモンフライにサーモンマリネ、サーモンステーキ……ついでに、作ってみて思った以上に問題なかった各種揚げ物の泉から収穫した揚げ物色々も並べてあるが、すでに半分くらいが平らげられている。
デビルシフターでもない限りはそう滅多にいないレベルの食事スピードだが、裏を返せばデビルシフターの食欲にも対応できるという事。ただ、これが食堂出禁爆食勢の食欲にも対応できるかどうかは、まだまだちょっと自信がない。
「それで、鮭はともかく揚げ物はどうでしょう? 作る側としてはどうしてもコストや手間に目が行きがちですから、食べる側からの意見も聞きたいところですが」
「美味しいし、たくさん食べられて幸せ。特に台湾風ミンチカツ、これが多分一番手間が掛かってるよね。すっごい美味しい」
「分かりますか……」
籠に積み上げていた揚げ物の山が、びっくりするようなスピードで見る見る内に減っていく。
それに釣られるようにして、私も白身魚のフライを一つ箸で拾い上げた。取り皿に移し、ソースを付けて口に運び……揚げ方が少し中途半端、な気がする。店で買ったりするなら妥協の範囲内だが、自分で作ったものがこれだと、少し物足りない。
「問題は、この揚げ物の泉……幼女ネキに目を付けられるんじゃないかと……」
命の危険とかそういうアレじゃないのだが、それはそれとして何かしら気に入った技術を見掛けると金銭感覚がブッ壊れた額の投資を突っ込んでくるせいで話を断り辛く、手が抜けなくなり、技術開発の優先度が上がってしまい、結果として技術者が過労に陥ってしまう……などという話で、
「まあ存在を知られたら間違いなく凸してくるだろうね。でも多分大丈夫だと思うよ。ラニシリーズだっけ、あれがある以上あの子は自前で料理・農業・建築ができる技術者集団を抱えてるみたいなものだから、そっちに技術を教え込む事でかなりの手間を縮められると思う。何なら、もう揚げ物の泉の基本テンプレートは出来上がってるんだから後はバリエーションを増やすだけだし、そちらに関しての研究は全部そっちのラニシリーズに丸投げしてもいい」
「ふむふむ……なるほど、そんな考え方が」
テノチがCOMP越しの警告を寄越したのは、ちょうどそんな折だった。
『盛り上がっているところ悪いけど、クラウドセルに接近する機影ありです、よ』
「機影? 民間機や一般悪魔……最悪、メシアンという可能性は?」
私やアリスはスキルとして有する【ヘイロー】の中にCOMP機能を入れているから、その通話と同時に、テノチの顔をデフォルメした半透明の非実体アイコンが視界に直接表示される。
そんなテノチの警告に最初に反応して、アリスが跳ねるように顔を上げる。可憐な美少女にしか見えないその顔には、さっきまでの幸せそうな表情に取って代わって少し険のある警戒が浮かんでおり、それが少し寂しい。
『ガイア連合製のシキガミ機ですから、誰がどう見ても一般機や一般悪魔ではありません、ね』
「なら安心だ」
『つまり、お客様という事です、ね』
客。
事前のアポイントメントなんかはなかったと思ったが……いや、そもそも現在のクラウドセルを包む仙境結界は時間速度調整中につき閉鎖状態になっており、外界からの連絡は非常に取りづらい。少なくとも通常回線でのやり取りは不可能だ。
テノチアイコンの隣に小さなウィンドウが現れ、そこに表示された画像にはクラウドセルにゆったりとした速度で近付いてくる一台の機影が映っていた。ヘリコプターに似た胴体の左右から伸びるウイングの両端に可動式のプロペラエンジンを取り付けたティルトローター機。
その装甲表面をくすんだ黒と暗灰色を基調にした夜間都市迷彩で覆われている辺り、どうやらミリタリー趣味の人らしい。
「えっと確か……オスプレイでしたっけ、一時期悪い意味で有名でしたね。誰ですか、結構な大所帯で来てるみたいですけど」
『向こうから通信が来てますね。出します、よ』
テノチの操作で視界に新たなウィンドウが展開する。そこに映し出されていたのは案外見慣れた顔の組み合わせだったが、その組み合わせ自体は思ったより珍しいものだった。
片方、眼鏡を掛けた緩い顔つきの美少女────雁桐慈奈子、通称“象ネキ”。私やアリスのクラスメイトで友人であり、同じ黒札。
ガワ問題のキャラとは異なり特に脂肪を貯め込んでいるという事もなく普通に美少女だが、そこはやはり不摂生すればすぐに太ってしまう体質らしく、最近【食没】を習得したらしい。
そしてもう一人、同様に眼鏡の少年────平野コータ、通称“指揮官ニキ”。やはり私達と同じ月詠学園の生徒であり、同じ黒札。そしてアリスの親友である男子生徒三人組の一人で、やたらと鋭い目つきのが特徴的だ。
さらに二人とも結構な数のシキガミを引き連れてもいる。
同じく私の友人である古戸エリカとは違って一人の旦那に入れ込むのではなく、普通に複数のシキガミを恋人にしている逆ハータイプの黒札である慈奈子は三人の旦那型シキガミをフルメンバーで同行させている。
それどころか指揮官ニキこと平野君に至っては、ファーストシキガミである『スプリングフィールド』に、秘書役の『カリーナ』、そしてその二人に次ぐ腹心の404小隊4体……合計で6体ものシキガミを連れている。これでフルメンバーには程遠いというのだから驚きだ。
「うーん……いや、何事かな?」
「ですね」
私からするとアリスと二人っきりの時間を邪魔されたのはちょっと不満だが、どちらもそれなりに付き合いのある相手である事は間違いない。
『アリス、フウカ。侵入を許可しますか?』
『許可してもらわないと困るッスけど!? 仙境結界、開けてくれませんッスかね』
「ま、いいんじゃない? 二人にも手伝ってもらいたい事があったわけだし」
「……否定はしませんけど」
今の私の顔を鏡で映したら、また随分と恥ずかしい膨れっ面が見られた事だろう。
◆ ◆ ◆
グレート・テオブロマ親樹の近くに設けられたヘリポートに着陸したオスプレイからぞろぞろと降りてきた慈奈子と平野君の隣で、オスプレイがその機体構造を無数の装甲護符に分解し、平野君のシキガミの一人であるカリーナの背後に展開した専用壷中天へと吸い込まれるようにして回収されていく。
「いやー、悪いっスね。せっかくの逢瀬を邪魔しちゃって」
雁桐慈奈子。
シキガミ『カルナ』『アルジュナ』『ビーマ』、計3騎。
「いや本当、俺達としても申し訳ないとは思ってるんだけどな」
平野コータ。
シキガミ『M1903スプリングフィールド』『カリーナ』並びに傘下404小隊所属『UMP45リヴァ』『UMP9レナ』『HK416クルカイ』『G11ミシュティ』、合わせて6騎。
人間とシキガミ合わせ、総勢11人の大所帯だ。
グレート・テオブロマ親樹の根元には、大きな和風建築の邸宅が建てられ、今も建築作業が続いている。将来的にはそちらへと移り住む予定だが、どうせ住むなら大きな家がいい、と派手に大きくしたせいで、まだまだ建設が終了していない。
だからそのすぐ隣に広がる湖に浮かぶ、どこか潜水艦とメガロドンが融合したかのような巨大な生体系シキガミ『U-シャーク』────その体内に内包された異界化した居住空間が、今の私とアリスの住居だった。
そんなU-シャーク艦橋の応接間にて。
「それで、ご用件は?」
「いやフウカ、そんなに怒らなくても」
「怒ってません。ちょっと邪魔されたなって私が勝手に思っているだけですから」
「それ確実に怒ってるやーつ!!」
失礼な。
私がにこやかな笑みを浮かべてお茶漬けを出すと、慈奈子と平野君は顔を真っ青にして震え上がっていた。
「で、それはそれとして二人とも何の用?」
二人の前に置かれたお茶漬けの丼を見てちょっとだけ食べたそうな視線を送っていたアリスが口を開くと、二人はどちらが先に話すか顔を見合わせた末、まず先に口を開いたのは平野君の方だった。
「まずは俺の用件から…………こうして口に出すのは恥ずかしいんだが、ウチのアパートがそろそろ飽和状態でな」
「何、またシキガミ増やしたの?」
「ああ。キノネキの伝手で、ちょっといい銃が手に入ってしまったもんだからさ……その」
「あー、また」
平野コータ。
ガイア連合に所属する黒札の一人であり、キノネキと数人の仲間が立ち上げた『実銃愛好部』のメンバーでもある銃使いなのだが、実のところ彼の適性は製作系寄りで、もう一つシキガミ製造部にも所属しており、普段からシキガミ製作に携わっている優秀なシキガミ製作者だ。
もっとも彼のシキガミマイスターを志したその目的は、自分自身のシキガミを作る事であるらしい。
彼が使役するシキガミ達の大半が銃の擬人化キャラである、という事実が示す通り、銃を素材とした銃使いのシキガミ達。
“付喪神化を促進する”というガイア連合内でも著名な該当者は北神奈川支部のキノネキくらい、という割と珍しい異能を持つ彼は、実銃同好会の伝手で入手した銃火器を付喪神化させては、それをさらにシキガミ素材としてシキガミコアに投入する、などという、ガンマニアが見ればかなりもったいない使い方でシキガミを製作していた。
宮城支部で生産されている量産型ニケの素体を工場一つ丸ごと買い取ってライセンス生産して、シキガミの素体に流用する事でコストダウンを図っているとはいえ、シキガミコアは全てショタオジ製の純正品だ。
そうやって作り出したシキガミ達にチームを組ませ、山梨の修行用異界での出稼ぎ遠征に出す事で、彼はシキガミの製作費用を賄っていた。経験を積んだシキガミには各種依頼を斡旋する事もあった。
その辺り、やっている事の実態は傭兵団の運営そのものであり、そのため『指揮官ニキ』の異名までもらっているとか。
だが、それだけに人員であるシキガミの数はとにかく多かった。
正確なところは私も知らないが、多分もう既に100体は越えているとか聞いた事がある。
そんな有様だけに、彼は自費でマンションを丸ごと一つ購入して寮にして、そこにシキガミ達を住まわせているらしいのだが。
「まあ、別に頭数だけが問題ってわけじゃない。まず、住人は男一人と、それ以外は美女美少女ばかりとか、そんな住人構成をしていたら周りから結構目立つんだよ」
「あー……黒札疑惑が、ってか」
「ああ。見た目人間と見分けがつかなくても、シキガミ達が少なくとも高レベル持ちだ、って程度は、普通の現地民でも気付けるからな」
その辺は納得がいく。
近所付き合いは、人間が社会生活をしていく上では欠かせない話だ。
だが問題は、そればかりでは無いようで。
「ついでに言えば、さらに面倒臭い事情もあってさ」
「何々?」
「最近、天之河の野郎が凸してくるようになったんだよ」
その名前で思い当たる相手など、一人しかいない。
「…………天之河って、あの天之河? クラスの?」
「そう、アイツ」
「あー……」
天之河光輝。
毎度毎度ハーレム要員を引き連れながらアリスにちょっかいを掛けている、あの面倒臭いクラスメイトだろう。
この間は材木座君に剣道勝負を挑んだ挙句、アリスの目の前で惨敗したそうだが、また復活していたらしい。
「またアリス関係ですか?」
「うへぇ……勘弁してよ」
私の隣に座るアリスは、その名前が出た途端にもううんざりといった表情を浮かべて肩をすくめた。
基本的に、好意を向けてくる相手に対してはどんな形であれ真面目に対応するアリスであるが、天之河光輝に関しては別枠らしく、毎度毎度嫌悪と拒絶でもって叩き返されている。
その理由も、アリスや天之河を観察していれば何となく分かる。
まず単純にアリスの親友達、つまり今目の前にいる平野コータに材木座義輝、有田春雪の二人を加えた合計三人に対する態度が最悪だった。
この三人はアリスにとって対等に接する事ができる得難い友人であり、私の目から見ても……それこそ私なんかより余程に真っ当に友人として接している。そもそも彼らが速攻でシキガミを獲得しようとしたのだって、アリスに対してそういう目を向けないため……という時点で、我慢できなかった私からすればもう土下座して恥じ入るレベルで何も言えないレベルだ。
だが、天之河はそんな彼らの存在を全否定して“優しいアリスが相手に対して強く出れないのをいい事に、その優しさに甘える形で無理矢理距離を詰めて下心を押し付けようとしており、アリスは内心では嫌がっているがそれを表に出さず仕方なく彼らと付き合っている”という脳内ストーリーを勝手に捏造し、アリス自身が説明しても馬の耳に念仏で聞き流して聞き入れる事もなく、事あるごとに親切を装って三人をアリスから遠ざけようとする。
材木座君に敗北してからは、その勢いはそれなりに収まったものの、しかし完全になくなったわけでもない。
しかし意外な事に、今回の事案にアリスの存在はあまり関係がなかったらしい。
「いや、ね。俺のシキガミ寮って俺以外全員美女か美少女じゃないか」
「それはそう。シキガミなんだから当然だよね」
それは別に、今に始まった事じゃない。
平野君の専用シキガミの数に関しては黒札の中ではかなり珍しいケースだし、それだけにこれだけ数が多ければ、普通は逆にシキガミだと疑われ辛いはず、なのだが。
「で、それを知った天之河がさ……『彼女達を解放しろ!』ってな具合に凸してきてさ。そのせいであのアホにはシキガミの皆もガチギレしてて、最悪は天之河のハーレムパーティとウチのシキガミ達で抗争になりそうな感じなんだよ」
「あー……シキガミかどうかとか関係ない感じ?」
「そうなんだよ。何というか、アイツらの事情とかどうでもいいから、俺みたいなのが美人と仲良くしてるのはおかしい、何か悪質な裏があるに違いない、っていう」
「うわぁ…………」
つまりアレだ、普段はアリスに向いている矛先が、平野君のシキガミ達に向いているって事だろう。
……迷惑極まりない。
そんな私の意見に関してはアリスも同意見だったようだが、しかしアリスは脇に置かれた麦茶のカップを呑気に傾けているようで、その事態をそこまで深刻に捉えているわけではないらしい。
私が危惧している最悪の事態は、ガチギレ状態のアリスが抗争に参戦した結果、町が火の海になったりしてアリスが責任を取らされるようなシチュエーションなのだが、どうやらその辺は免れたようだ。
「その戦力差なら一方的に勝てるだろうから問題なくない? アイツら基本的に天之河の金魚の糞だからして、アイツらの中で一番強いのはおそらく天之河。その天之河は前回ヨシテルとタイマン張って一方的に叩きのめされた実力。コータのシキガミ達の戦力なら一方的に踏み潰せるでしょ、普通に」
「戦争前提!?」
「むしろ戦争にしかならないんじゃない? まあ最終的にはコータ次第だとは思うけど……シキガミが、主人と、主人との絆を侮辱されたんだ。シキガミの子達からすれば全面戦争以上の選択肢はないでしょ、普通に考えて」
ちらりと視線を送ってみると、平野君のシキガミ達は6人が6人とも、肯定の意を示すようにうんうんと頷いている。
中にはこれ見よがしに銃のスライドを引いたり、シャドーボクシングの真似までしてる子もおり、なかなか鬱憤が溜まっているのかもしれない。
ついでに慈奈子のシキガミ達三人も、その通りとばかりに頷いている。
「もちろん僕も他人事とは思えないし、普通に支援する……って言っても後方のバックアップだけだけどね。そもそも普通に勝てる戦いだろうし、それに一番怒ってるのはシキガミの子達だろうから、僕が勝手にしゃしゃり出るのも良くないでしょ」
「まあ、それくらいなら……」
「実はこの間クラウドセルの農園で、いつぞや三馬鹿ラスの人達が使ったドドリアンボムの再生と再生産、それから弾頭加工に成功したんだ。これを使えば────」
「やめましょうね」
「……だよね」
しゅんとしたアリスの顔を見たらどうにもゴーサインを出してしまいたくなるが、ぐっと我慢である。
街中でドドリアンボムとかいう危険物を起爆するとか、最悪のテロみたいなものだろう。
「ま、まあドドリアンボム以外にも色々あるから、色々試してみてよ。ガイアメモリの『ドリアン』とか、キングドリアンロックシードとか」
「……その物騒なドリアン推しは何なんですか」
「ドドリアンボムの副産物だよ」
「嫌な予感しかしないッスねぇ……」
とりあえず平野君が拠点を建てるのは許すらしい。
まあ、これでアリスと二人きりで爛れた日々を送っている状況じゃなかったら私だって普通に二つ返事で許していただろうし、多分そうそう問題はないだろう。
「で、慈奈子は何しにこっちに?」
「うーん、何だかお金の臭いがしたというかね。経済系異能者の勘ってヤツっすよ。そういうネタがあるなら、一枚噛ませてほしいっすよ。資産運用とかで」
「確かに、フウカの作った揚げ物の泉とか、ダイレクトにお金になりそうだもんね」
「幼女ネキが高く買い取りそうっスしね……ああ、幼女ネキといえばガイアメモリとかそっち系の霊装も作ってましたよね。そっちはどうなんスか?」
「一式大喜びで買い上げてったよ。まあ予想通りではあるよね」
そういえば、アリスにはそちらの繋がりもあったか。
宮城系のオラシオニキ…………年代的にはアリスの“父親”の一人でもおかしくはない。
というか、ガイア連合内であればどこに“父親”がいてもおかしくはない、という………………あらためて、ミナミィネキの罪深さを理解した気がする。
「うーん、私としても問題はないと思いますよ。慈奈子に頼るほど、お金になるようなものがあるかは分かりませんけど」
「それもそうだけど、それはそれとして最近は金策の規模も大きくなってきたような気がするし、資産運用を手伝ってもらうのはこっちから言い出そうかとも思ってたくらいだ」
つまり慈奈子の方に関しても、私もアリスも問題はない、と。
これでクラウドセルの住人が一人増えたわけだ……シキガミも含めればさらに増えるか。
そんな事を言い合うと、まあそこで調子に乗るのがこの友人の性格であり。
「フフン……この慈奈子さんの協力は高くつくっスよ」
ドヤ顔で言われると、アリスは無言のまま懐……多分ヘイロー内蔵COMPのストレージから、数枚のカードを取り出すと、トランプのように扇形に広げてテーブルの上に並べていった。
そのカードを視線で追って、平野君が思わずといった感じに顔をしかめる。
「それは……スキルカードか? それも、かなり格の高い……」
「本命の霊装を開発する前の練習として、本霊の権能から抽出してみたんだよね。大日如来の霊格とか、ドゥルガーの武器なんかから」
雰囲気としては全部インド系の神格。
それもかなり上位、最低でも権能域の何かだ。おそらくは神器として顕現するスキル────霊基データとしては、スキル単体でも相当重い代物だろう。
「えっと、これは…………」
「スーリヤの鎧。インドラの槍。アグニの弓。シヴァの鏃。ヴァーユの槍と鎧。必要だよね?」
それを見た瞬間。
「どうか、犬とお呼びくださいっス……!」
ドヤ顔を消して椅子から転げ落ちるように地面に身を投げ出した慈奈子は、綺麗に180°態度を翻してその場に土下座したのだった。
◆ ◆ ◆
そして。
「グェぇええええ~~~~~!!」
私の『揚げ物の泉』と対になるアリスの作品を目にした瞬間、慈奈子が踏み潰されたカエルのような叫び声を上げた。
アリスの作品は、直径1000mの巨大な結界温室と、そこに併設されたやはり巨大なタンクヤードによって構成されていた。
温室の内側に植わっているのは見た感じ、ポテトの泉で使われている陽向菜に見えるのだが、それにしては少しばかり違和感がある。
私の見た陽向菜と比べて、微妙に色が違う。
かなり大掛かりな施設だ。
私の『揚げ物地獄谷』が地形レベルの巨大空間になってしまったように、アリスが建設したこの施設も、かなりの大きさだ。
「……この温室、何でできてるんですか?」
「支柱は日天合金木の合金樹材。温室を作ってる透明板も、同じく日天合金木の合金樹の樹液ベースの樹脂を使ってる。強度もそこそこあるけど、大事なのは太陽光を増幅してくれる事」
「なるほど……それは思いつきませんでしたね。揚げ物の泉にも有効でしょうか?」
「陽向菜の仕様を考えると、多分そっちでも使えるんじゃないかな」
巨大な温室ドームの扉を開けると、お題である『ポテトの泉』の系譜であるはずなのにもかかわらず、その中から漂ってくる強烈な臭いは明らかに食品のものではなかった。
むしろこの臭いは化学薬品……いや、ガソリンのものに近い。
「これは、一体……」
「食べ物だとどう考えてもフウカには勝てないからね。別の方向性を追い求めて、燃料製造装置にしてみたんだ」
陽向菜をベースに改造した幻想植物『石油菜』。
根粒菌と共生するマメ科植物の特性を組み込み、蓬莱島の素材迷宮で使われている産油機構と同じ、石油成分を生成するディラクテリア属の植物プランクトンを取り込んで共生関係を作りつつ、陽向菜の産油能力を調整して原油と同じ成分の油を生成するように改造したもの、だそうだ。
「あの……私、これの価値がそこまで分からないんですけど…………いや、相当すごいっていうのは分かるんですが」
「すごいなんてもんじゃないっスよ。もうね、ヤバい。いいっスか!」
いいっスか、と興奮気味の早口で口走った慈奈子は、手にしたCOMPで手早くネットから拾ってきた画像を空中に投影し、説明を開始する。
「終末到来を見据えた今の時期、ガイア連合内での石油供給源は、実は結構限られてるっスよ」
慈奈子の言葉に合わせ、いくつかの画像が表示される。
まずは新潟の弥彦神社を起点に存在する油田異界。
国内においては最も安全な原油供給源であり、この半終末期においても非常に安定した供給量を誇っているらしい。
「とはいえ油田ひとつで賄える石油量じゃちょっと足りないっスよ。埋蔵量は無限でも、掘り出せる量に限界はあるっスから」
「まあ、確かに」
「それに、そもそも供給源が一つしかないのはどう考えても危険っス。テロの標的になって営業停止状態にでもなったら洒落にならないっスからね」
続いて、海外からの供給。
「この半終末期に、海外?」
「ええ、海外っス。って言っても知っての通り、半終末前から一番の取引先だった中東はもう大半がメシアンの勢力圏っスから、そっちからの輸入はできません。今は……ロシアっスね」
ロシア、と聞いてアリスの方を振り向くと、顔の左右にVサインを二つ並べたアリスがちょっと自慢そうな表情を見せる。どうやらその辺はこの子も関わっているらしい……当然か。
「中東は全滅、その次点の輸入先だったアメリカもアウト。でもロシアは寒冷化がアホみたいに進み過ぎてメシアンすら侵入できないっスから、それをどうにかする技術さえあればむしろ石油が掘り放題なんスよ」
「なるほど」
「だからウラジオストク支部で、シベリア東部方面を中心にした油田発掘プロジェクトが進んでるっス。とはいえシベリアでの開発作業はガイア連合としても中々大変なものがあるし、メシア教会側としても石油は欲しいっスから取ったり取られたりって状態で、中々情勢的に安定しない、って問題があるっスよ」
中華戦線程じゃないけれど、かなり物騒な紛争地帯になっているようだ。
その辺を考えると、これからのアリスの事が心配になってくる。私に出来る事は料理くらいだから……せめて、アリスがこっちにいる時くらいは、全力で美味しい料理を作ってあげたい。
「基本的にはこの二つっスね。それ以外にも蓬莱島の素材迷宮とか北神奈川支部産のバイオマス燃料とか、その辺色々な取り組みはされてるっスけど、その大半が地産地消の扱いで輸出品目には入ってないし、原油不足を解消するには少し足りない具合っスね」
高位素材に分類されるBBコーンをベースにしたバイオマス燃料用トウモロコシは、取り扱いにも相応のレベルを持った農業型異能者が要る。
素材迷宮でコンスタントに燃料資源を獲得するためには、素材迷宮に挑戦できる異能者の数を揃える必要がある。
どこの支部でも揃えられるような条件では、ない。
「えっと、じゃあこれは……」
「太陽光さえあれば、原油と同じ成分の燃料をいくらでも生産可能、っスよね……多分」
「うん、ベースは陽向菜だからね。日に当てたら勝手に油が出て、それを物理タンクと電脳異界のそれぞれに流し込んで蓄積する。そっちも太陽光さえあればいくらでも品質を維持できるよ」
顔を引き攣らせた慈奈子の疑念をアリスがあっさりと肯定すると、慈奈子はその表情をもにょもにょと複雑そうに動かして額を押さえた。
「これ、アタシ一人だと普通に手に余るっスね。色んな伝手を回る事になると思うので、ちょっとアリスさんの手を貸してくれないっスか?」
「いいけど、そこまで大事?」
「っス。伯父さん……バラゴニキはともかく、⑨ニキにコンタクトを取るなら呉支部と繋がりのあるアリスさんの伝手が欲しいっスから」
……どうにも、洒落にならないレベルの大事であるらしい。
慈奈子さんのシキガミはカルナ、アルジュナ、ビーマの三騎とかいう逆ハーレム仕様。
言うまでもなくファーストシキガミがカルナであり、そこからパーンダヴァ繋がりでアルジュナ、ビーマ。
防御型のカルナ、射撃型アタッカーのアルジュナ、高機動近接・補助型のビーマという事で、割とバランスが取れた組み合わせだったりする。
揚げ物の泉は…………絶対幼女ネキが喜びそうだなぁという。
ポテトフライもよく食べてたからなあ。
最初に探求ネキが作ったポテトの泉の仕組みを見て、これイモ部分を他の揚げ物に挿し替えれば普通に他の揚げ物も全然イケるよね、と思ったのが最初。
揚げ物食べ放題とか一度はやってみたい……。
ところで塵塚怪王と入力しようとすると“塵塚怪翁”と変換される不思議。
うん、まあ。
~割とどうでもいい設定集~
・ポテトの泉
緋咲虚徹様『【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく』の『058:〝そう言う物〟と言う概念の有り難み』より。
ベジタブルスカイ名物の一つ。
高熱の食用油が溢れる油泉から大量のフライドポテトが生成される超特殊な自然環境。
吸熱により成長し、ある程度育ったら自切するジャガイモ『千本熱芋』、太陽光を浴びる事で栄養豊富な油を大量に生成・蓄積し放出する『陽向菜』、マグネタイトを栄養素・塩分に変換して蓄積し、一定以上の熱を帯びた液体に触れる事でそれらを放出する鉱物『ウール石』という三要素を組み合わせる事で構築されたもの。
幼女ネキなどもベジタブルスカイを所持しているためか、事務課占拠事件の際を始めとして、時折このポテトの泉産のポテトフライを食べているところが散見される。
三つの構成要素の内、フウカは『千本熱芋』に目を付け、アリスは『陽向菜』に目を付けた。
・千本コロッケ芋
ポテトの泉のパーツの一つ、ある程度育ったら自切するジャガイモ『千本熱芋』をベースにフウカが開発した幻想植物。
ジャガイモのイモ部分が未加熱のコロッケになっており、後は普通に揚げるだけで出来上がりになる。
基本的な性質は千本熱芋とほぼ同様で、熱を吸い上げて成長し、塊茎が一定以上に成長すると自切する。
これが通常のポテトの泉と同じプロセスで高熱の陽向菜油の中に投入される事で、熱々のコロッケが湧き出す『コロッケの泉』が完成する。
この千本コロッケ芋や、それによって作られるコロッケの泉自体は揚げ物系のフォーマットに過ぎず、コロッケ部分を同じ製法かつ様々な別の未加熱揚げ物に挿し替える事で様々な揚げ物を自動で調理する事が可能で、既に同系列の『千本鶏唐揚げ芋』『千本カキフライ芋』『千本茄子天ぷら芋』『千本ドーナツ芋』など、中味も肉・野菜・海産物問わず色々と作られている。
特にフウカが全力で作った『千本黄金台湾ミンチカツ芋』は絶品。
なお、どう考えてもイモではないが色々と今更である。
・ソースの木
揚げ物の泉周辺に生やす低木。
フウカが開発した幻想植物。
葉っぱがソース袋になっており、葉っぱを一枚千切ると、葉の内側からソースが分泌される。葉はその辺に捨てれば自然に分解して大地に還るエコ仕様。
中味となるソースは木によって異なり、カゴメソース、とんかつソース、醤油、めんつゆ、ケチャップなど、各種取り揃えている。
・仮面ライダーシーカー
元ネタは『仮面ライダーギーツ』。
星杖ニキや材木座義輝が使用したブジンソードと同系列のデモニカであり、『パワードビルダーバックル』『コンテナバックル』を装着した建設作業特化形態。
大剣・ハンマー・銃を使い分けて装備し、振り回すと足場や壁などが勝手に建築されていく。
・遊球鍋
調理部の発明。
元々は緋咲虚徹様『【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく』の『078:束の間?の休息』にて探求ネキの手によって高位異能者がスポーツ球技をするための遊戯用ボールの素材として開発された遊球樹の実がベース。
遊球樹の実はタマヤ与太郎様『【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策』でも幼女ネキへの誕生日プレゼントとしても登場している。
一定サイズにまで肥大化させた遊球樹の果実を、生きたまま鍋として加工し、アトリエ式錬金釜・八卦炉としての素材合成・純化機能を組み込んだもの。
衝撃や回転を加える事で美味しさを増し、込められた霊力の属性に応じて霊味が変動する遊球樹の果実の性質を利用し、鍋の内界のマグネタイトを流動操作して中の食材を撹拌する事により食材の味を引き出し、霊力で霊味を加えて操作する事が可能な、いわば調理用に特化した錬金釜。
なお、その取扱いは極端に難易度が高く、右手で【螺旋丸】を発動しながら残る左手で錬金作業を行うだけの技術があって初めてまともに操作が可能となり、そしてそれだけできたとしても調理師としての腕前とは全く別の話、という非常にハードルの高い調理器具。
熟成を加速するための内部時間制御も可能だが、それはそれで起動すれば操作難度が倍増しで上昇する。
本来は戦闘系でないフウカが【螺旋丸】を使える最大の理由。
・揚げ物地獄谷
フウカがポテトの泉をベースに作った大量の『揚げ物の泉』を集中的に設置している場所。
見た目グランドキャニオンと地獄温泉を悪魔合体させたような壮大な景観だが、感動以前に揚げ物の匂いが強烈過ぎて大抵の人間にとっては景色どころではない。
中央に広がる熱油湖からは常に大量のポテトフライが湧出し、その周辺にも様々な揚げ物の泉が大量に配置され、様々な揚げ物グルメが楽しめる一大スポットとなっている。
・妖精チェプコロカムイ
フウカと契約している仲魔。元はアリスのシキガミでありアイヌ系の本霊を持つシトナイの協力で召喚された。
北海道原産のカムイの一柱、アイヌ人のソウルフードであり、大量に採れる鮭の数を体現するカムイ。
その名は『魚を支配するカムイ』であり、口から零した鱗を振り撒くと、それが大量の鮭になると信仰されていた。
元々は伝承通りに普通の鮭を大量召喚するだけの単純な食物神だった。
しかし貧弱一般メガテンプレイヤー様『【カオ転三次】幼女ネキの謎を解明するため、黒札調査隊は宮城県の奥地〇〇町出張所へと向かった――。』の『20』にて、三馬鹿ラスのやらかしの結果あちこちのガイア連合支部にてサモーン・シャケキスタンチンが湧くようになるという事案が発生。
その結果、チェプコロカムイが召喚可能なラインナップにもサモーン・シャケキスタンチンが追加され、高い戦闘能力を持つサモーンの大量召喚という破格の権能により、本来は戦闘系の権能を持たないチェプコロカムイがカムイの中でも戦闘能力ランキングの上位に躍り出た。
・猛将ヒジカタトシゾウ
ガワは『ドリフターズ』の土方歳三。
フウカと契約した仲魔の一体。
名刀和泉守兼定による近接戦闘を得意とするが、それ以上に類稀な戦術指揮・分析能力を持つ。
北海道繋がりの相方である妖精チェプコロカムイが大量召喚するサモーン・シャケキスタンチンの指揮担当。
・メリュジーヌ
ガワは『Fate』シリーズの妖精騎士ランスロットことメリュジーヌ。
立花アリスの二体目のシキガミ。
本霊は龍神倶利伽羅龍王、鬼神ヴァジュラパーニ、鬼神カルティケーヤの三柱合一型であり、そこにランスロットとアルビオンの性質が組み合わさっている。
元はモルガンネキが手掛ける英傑シキガミの一体として設計され、そこにアリスが獲得した軍神ランスロット、及び邪龍グィネヴィア=アルビオンの素材に加え、聖剣カーテナ=オリジナル並びにカーテナ=セカンド、聖剣アロンダイトを加えて完成した。
両腕に備えたカーテナから放たれる【全次元切断術式】による【次元斬】により空間切断と転移を併用しながら【光翼】に『轟の玉璽』『牙の玉璽』を組み込んだ高速飛行術式【ペリー・ダンサー】での高速戦闘を行う。
戦闘力は非常に高く、前線で戦うアリスと共に戦う“僚機”をコンセプトとして設計されている。
なお【光翼】はディストピア様『【カオ転三次】終末が約束された世界で生き抜きたい 』の『第30話』にて、『Fate』のワルキューレが使う白鳥礼装を再現するために開発された、破魔属性の飛行術式。
白い衣にしか付与できない弱点を持つ一方で、【光翼】のベースになった【炎翼】の仕様を引き継いでおり、形状変化により光の腕、刃への変形や光弾による射撃なども可能。
・術式【御厨子】
元ネタは『呪術廻戦』。宿儺の術式。
主に魔力依存で触れたものを切断する【
ただし戦闘中に【竈】を発動するためには事前に標的に【捌】【解】の双方を当てておく必要があるという縛りが入っている。
原作再現を意識してガイア連合料理部が開発した術式であるが、この術式は使用者の調理技能に応じて出力・概念強度が上がる仕組みのため、戦闘系の術者が普通に使ってもあまり強くはならない。
・平野コータ
元ネタは『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』。
ガイア連合に所属する黒札の一人。通称は『指揮官ニキ』。
本霊は魔王チリヅカカイオウ。
フウカ・アリスのクラスメイトの一人で、材木座義輝・有田春雪の二人と合わせて男子生徒三人組。目つきが悪い方のデブ。
山親父様『【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅』より実銃愛好部の他、シキガミ製造部にも籍を置いている。また、モデルのモデルがヒラコーなので意外と絵が上手いがヒラコー絵になる。
実銃愛好部に所属しているだけあってガンマニアであり当人も戦闘時は銃を使うのだが、あまり特定の銃器にこだわる事はなく、むしろある程度使用して付喪神化が発生したらあっさりとシキガミ素材として使用し、新たなシキガミを作成する。
異能者としての適性は百鬼夜行の主としての指揮統率・シキガミ作成に加え、キノネキと同様に付喪神化促進の能力を持つ。
基本的には多数のシキガミを指揮する集団戦闘をメインとする物量型。
自身が戦う場合は基本的に銃火器を使うが、異能者としての戦闘・武器適性は素手系以外の武装全般であり武器種を選ぶ事はなく、むしろ戦闘用に留まらず大半の道具を十全に、しかも消耗させずに長く扱い、使いこなす事ができる。一方で投擲武器や消耗品に関しては、自分が使う分には苦手。
シキガミ作成が得意で、『ドールズフロントライン』の戦術人形を元ネタにするシキガミを多数従えており、そろそろ100体の大台に乗る頃合いだが、全部ショタオジ製コアを搭載した専用シキガミ。
素材やらマッカやら何から何まで用意した上で、生産性を高めるために宮城で生産されている量産型ニケの設計を流用しているとはいえ、シキガミボディも全部自作しているからこそ可能な荒業。
この数のシキガミが一つの意志で統率された武装集団として動く上に、全員が量子論分身を習得しているため数が多く、しかも殺しづらい。
この数の専用シキガミを依頼やシキガミ遠征として派遣する傭兵団としての活動が主で、それに加えてシキガミ製造にも携わっている。
さすがにこの数の専用シキガミを連れておくのは難しく、そのためアパートを丸ごと一棟購入して住居に充てていたが、山梨の現地民異能者である天之河光輝とトラブルを起こしかけたため、アリス・フウカを頼ってクラウドセルへの移住を計画する。
今回登場した中では、スプリングフィールドがファーストシキガミであり常に傍にいる護衛担当。
カリーナが秘書・オペレーター役にプラスしてオスプレイ型ボディ展開による移動手段担当。
404小隊は同じく護衛担当。
・U-シャーク
アビャゲイル様『【R-18】アビャゲイルの投下所第二支部【カオス転生ごちゃまぜサマナーN次創作】』より。
KSJ研で製造されたシキガミ『
原子力潜水艦とメガロドンを足して二で割らないような具合の代物。
空も飛べるし海中も泳げる、さらに地中すら水中同然に泳ぐ事が可能で、稼働環境を選ばない。多分ホエールキング同様、比較的簡単な改修で宇宙にも対応できる。
元は終末後の蓬莱島における外部との往来手段として開発された機体。
『【R-18】アビャゲイルの投下所第三支部【カオス転生ごちゃまぜサマナーN次創作】』にて、KSJ研の三人とも血が繋がっている事が判明してしまった事により、各種継承権放棄の対価&養育費代わりとしてKSJ研から贈呈された個体。
多脚戦車に代わるアリスの移動手段になる予定なのだが、現在は時間加速中のクラウドセルに留まり、艤装・内装・カスタマイズが進められる傍ら、建築中の住居に代わりフウカ・アリスの仮設住居の代わりとして運用されている。
・ドドリアンボム
貧弱一般メガテンプレイヤー様『【カオ転三次】幼女ネキの謎を解明するため、黒札調査隊は宮城県の奥地〇〇町出張所へと向かった――。』の『24』より。
蓬莱島の食欲界に存在するトリコ再現食材の一つで、兵器レベルの悪臭を放つ危険果実。原作では『100㎞以内の草木が一瞬で枯れ、冬眠していた熊が飛び起き、周囲の川や海に魚が浮いた』とか。
緋咲虚徹様『【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく』の『140:グルメ狩猟祭』の際に三馬鹿ラスが入手したものが、爆弾『ドドリアンボムボム』として加工された。
シキガミを持たない三馬鹿ラスが、本来はシキガミに搭載される黒札用の魂保護術式の代わりとして用意した自決用の爆弾がドドリアンボムボム。
起爆すると爆破範囲に悪夢のような悪臭が撒き散らされる。肉体だけでなく魂そのものの方にもドドリアンボムの悪臭が移るため、主に天使を始めとする敵性悪魔に魂が持ち去られるリスクを減らす事ができる。
悪臭を消すためにはドドリアンボムを食べる必要があり、そのためには食欲界ですら稀少なドドリアンボムを実食する必要があるという……。
完成したドドリアンボムボムは黒札マタギとして塩漬け依頼を実行していた三馬鹿ラスを狙ってメシア教会の天使が襲撃を仕掛けた際に実際に使用され、天使の群れを撃退したのみならず、襲撃を察知して漁夫の利を狙っていた他組織の切り札的異能者を多数巻き込んで悪臭漬けにし、その解消のため彼らはガイア連合から多大な借りを押し付けられる事になった。
その後、三馬鹿ラスに付着した悪臭は未登録覚醒者の検知器として、スパイ摘発や新規覚醒者の検出などに役立てられる事にもなった。
また終末後にはベヒモスの劣化分霊に対してスナイパーグレネードランチャーを使用した狙撃で使用されたが、その際には狙撃を受けたベヒモスが貪欲の悪魔であるにもかかわらず悪臭のあまり食事ができなくなり、餓死に追い込まれたとか。
アリスは三馬鹿ラスが襲撃を受けた際に起爆されたドドリアンボムボムの爆発跡に残ったドドリアンボムの果肉の残滓を周辺の土ごと回収し、治癒魔法の応用で果実を再生。
この再生果実から種子を摘出し、クラウドセル内の隔離区画で栽培、弾頭加工したものが、アリスが再生産したドドリアンボムとなる。
また、それを利用してガイアメモリ『ドリアン』や『キングドリアンロックシード』が製作された。
・石油菜
ポテトの泉のパーツの一つ、太陽熱で膨大な食用油を生成する『陽向菜』をベースにアリスが開発した幻想植物。
原種の陽向菜と違い、見た目が黒い。
こちらは食用油ではなく、原油と同じ成分の油を生成するように調整されており、太陽光を浴びる事による浄化能力も原種から引き継いでいる。
根粒菌と共生するマメ科植物の特性を組み込み、蓬莱島の素材迷宮に組み込まれた産油機構で使われているディラクテリア属の植物プランクトンとの共生関係を作り、さらに陽向菜の産油性能をそのままに原油と同成分の油を大量に生成可能。
日天合金木の合金樹材を多用した太陽光増幅温室で栽培され、生産された疑似原油は現実と電脳異界それぞれに建築されたタンクヤードに自動的に蓄積される仕組み。
・ガイア連合の石油事情
食料と共に海外からの輸入が途絶えて困る一番厄介な資源が、原油。
国内の産油拠点は新潟の弥彦神社を起点とする油田異界だが、油田一つで原油の国内生産を完全に賄えるかどうかは微妙だし、何より新潟だけに頼り切ってしまうのはリスクの分散から考えても必ずしもよろしくない。
半終末前はその大半が中東、それからちょっとだけアメリカに頼っていたものの、中東はイスラム・ユダヤ教徒いった一神教の聖地であるからして、どう考えても真っ先にメシア教会に制圧されている可能性が高く、またアメリカもメシア教会過激派にとってのホームグラウンドみたいなものだからアウト。
これに代わる最大の海外産油拠点が、日本からも比較的距離が近く、またメシア教会であっても活動が困難なロシア国内。
特にウラジオストク支部からそう遠くないシベリア東部方面を中心とする油田発掘プロジェクトが進んでいるが、こちらはメシア教会過激派との抗争が激しく、情勢的に安定していない。
他には産油機能のある蓬莱島の素材迷宮、北神奈川支部で研究されているバイオマス燃料などの取り組みも存在するが、この辺に関しては他支部などに輸出されている様子がなく、また要求される能力から考えても簡単に技術移転ができるようなものでもなさそうなので、おそらくこれらは全国的な原油不足を解消する類のものではない。