碧と交差する創造の軌跡   作:桐那谷透

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序章第一節

ガラガラガラ…

 

人気の無い倉庫の扉が開かれる

 

「ゲホッゲホッ!なんだよここ!埃だらけじゃねーか!」

 

扉を開けた茶髪の男が顔の前を払いながら言う。男の横を通り黒髪の男が入ってくる。

 

「それくらい我慢しろー。戸籍もない金もない俺たちが屋根のある拠点に住めることだけでも感謝しろよ。俺に。」

 

黒髪の男、桐生戦兎(きりゅうせんと)は手近なテーブルの上を払う。

 

「何でお前になんだよ!この倉庫を第・六・感!で見つけたの俺だぞ!」

 

「その後持ち主と交渉したり機械修理で当面の資金工面したのはてぇんさい物理学者の俺だからな。バカのお前には到底不可能だ。」

 

「誰が馬鹿だよ!せめて筋肉つけろよ!」

 

茶髪の男、万丈龍我(ばんじょうりゅうが)は戦兎の胸ぐらを掴み体を揺さぶる。

 

「わかった!わかったから揺らすな!埃が…ゲホッゲホッ!」

 

「ゲホッゲホッ!」

 

二人が暴れたことで倉庫内に埃が舞い上がる。

 

「はぁ、とりあえずは掃除だな。全部は無理でもせめて寝るところの確保だけでもしないと。」

 

そう言って戦兎は懐から取り出した白いパネルの他様々な機械をテーブルに置いていく。

 

「あ。そういえばあれあるだろ。ほら太陽トレーナーだったか何だったか。」

 

「太陽トレーナー?あぁ、ライオンクリーナーか。確かにあれ使えば早いな。」

 

「…お前自分で使ったもんくらい把握しとけよ。」

 

「把握してるよ!いっぱいあるから思いつくのに時間かかってるだけだし!」

 

そう言って戦兎は先程テーブルに置いた機械に手を伸ばす。

 

「よし!そうと決まれば…」

 

 

『…………ケテ…』

 

 

「ん?」

 

歯車とレバーのついた黒い機械を手に取ったとき、戦兎の耳にどこからか声が聞こえる。

 

「?万丈何か聞こえたか?」

 

「あん?何かって何だよ?」

 

 

『…………ケテ…』

 

 

「お?」

 

「…聞こえたみたいだな。一体どこから…」

 

辺りを見回す戦兎はテーブルに置いた白いパネルに目をつける。

 

「これからか?」

 

戦兎がパネルを手に取ると急にパネルから強烈な閃光が放たれ周囲が光に包まれる。

 

「うおっ!何したんだよ戦兎!」

 

「何もしてねぇよ!けど、前にも似たようなことが…」

 

光が消えたときには戦兎と万丈、テーブルにあった機械も白いパネルも消えていた。

 

 

 

「ええっ!?」

 

ゼムリア大陸クロスベル自治州駅前通りの階段を降りた先にある扉の前。そこに5人の人間が集まっていた。

驚きの声を上げた茶髪の青年、ロイド・バニングス。

 

「も、潜るって……」

 

腰ほどまであるプラチナブロンドの長髪のどこか品の良さを感じさせる女性、エリィ・マクダエル。

 

「おいおい。どういうことッスか?」

 

長い赤髪を、首の後ろで束ねた男性、ランディ・オルランド。

 

そして青い長髪を、ツインテールにした少女ティオ・プラトー。

 

「お前たちの総合能力、および実戦テストのためだ。」

 

その四人に向かい合う壮年の男性、セルゲイ・ロウ。

 

「ジオフロント内部はそれほど手強くはないが魔獣のたぐいが徘徊している。それらを掃討しながら一番奥まで行ってもらおう。」

 

彼らはクロスベル警察の新設される部署、特務支援課のメンバーである。

 

 

「この『特務支援課』がどんな仕事をするのか、これから素敵な場所でじっくりと教えてやろう。」

 

そう言って連れてこられたのがここ、ジオフロントへの入口であった。

魔獣の掃討は捜査官の仕事ではないのではないか?

警察学校を卒業し、難関の捜査官の資格も取得しているロイドが疑問を口にするが、セルゲイは特務支援課は違うと言いロイド達に携帯端末のようなものを渡す。

 

「これは…」

 

「新型の戦術オーブメント?」

 

「へえ……ずいぶん洒落たデザインだな。」

 

「第5世代戦術オーブメント、通称『ENIGMA』……ようやく実戦配備ですか。」

 

「ああ、財団の方から先日届いたばかりの新品だ。お前たちの適性に合わせてすでに調整もされている。」

 

セルゲイはENIGMAの使い方のレクチャーをティオに頼むとロイドに入り口の鍵を渡す。

 

「それじゃあ、一通り魔獣を掃討したら本部に戻ってこい。細かい話はその後してやろう。」

 

それだけ言ってセルゲイは本部に戻ろうとする。

 

「ちょ、ちょっと課長!」

 

「ああ、それとロイド。」

 

ロイドが呼び止めるとセルゲイは思い出したように振り向き、

 

「とりあえずお前、リーダーな。」

 

「えっ。」

 

「今の所、捜査官としての正式な資格を持っているのはお前だけなんだよ。そんじゃ任せたぞ。」

 

固まるロイドをよそにセルゲイはそのまま去ってしまう。

 

「ハッハッハ。押し付けられちまったなぁ?」

 

「ふふ、でも捜査官の資格を持っている人がいて心強いです。ロイドさん、よろしくおねがいしますね。」

 

「あ……いや、呼び捨てでいいよ。見たところ、歳も近いみたいだし」

 

ランディとエリィに声をかけられようやく動きだすロイド。

「そう?ちなみに私は18だけど?」

 

「ああそれなら同い年だ。えっとあなたたちは?」

 

「俺は21だが、堅苦しいからタメ口でいいぜ。よろしくな、ロイド、エリィ。」

 

「ええ、こちらこそ。」

 

「ああ、よろしく頼むよ。」

 

そして最後の一人に目を向けるロイド。

 

「……えっと……それで、君の方は……?」

 

「…14ですが、問題が?」

 

少し不満げに答えるティオ。

 

「い、いや〜。別に問題があるわけじゃ……って、14歳ッ!?」

 

「ハハ、なんだ。見た通りの歳ってわけか。」

 

「驚いた……そんな若くて警察に入れるものなのね。」

 

「いやいや!どう考えてもおかしいから!確か一般の警察官でも16歳以上だったはずだし……」

 

勘違いしそうになるエリィに訂正しロイドは訪ねる。

 

「日曜学校も卒業していない子がどうして警察なんかに…」

 

「……正確に言うとわたしは警察官ではないです。エプスタイン財団から出向要員ですので。」

 

当然の疑問だろうと答えるティオに3人は驚く。

 

「ええっ!」

 

「エプスタインっていやあ、さっきの戦術オーブメントの……」

 

「そう……なるほどね。ここ数年、クロスベル市が財団と協力して大規模な計画を進めているのは聞いていたけど……」

 

「『導力ネットワーク計画』ですね。そちらにも少しは関わっていますがわたしの出向目的は別にあります。これです。」

 

そう言ってティオは機械でできた杖のようなものを取り出す。

 

「それは……」

 

「機械仕掛けの……杖?」

 

疑問を浮かべる二人にティオは説明する。

 

「『魔導杖(オーバルスタッフ)』といいます。この新武装の実戦テストのためわたしは財団から出向しました。……ロイドさん。ご理解いただけましたか?」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

聞いてくるティオにロイドはさらに質問する。

 

「もしかして……その杖を使って君も戦うのか?」

 

「……捜査官の資格があるのにずいぶん察しが悪いんですね。」

 

子供を戦わせられない、ある意味当然の考えで聞くロイドに少しジトッとした目をしながらティオは答える。

 

「『実戦』テストのために出向したと言いましたが?」

 

「うっ…」

 

「まあまあ。ここでモメても仕方ないぜ。」

 

たじろぐロイドの肩を叩きランディが言う。

 

「この先のジオフロントってのがどれだけ危険かは知らないが……まずは、あのオッサンが押し付けてきた任務をクリアする事を考えようや。」

 

そう言って入口の扉に目を向けるランディ。

 

「そうね……納得できない事も多いけど。」

 

「………分かった。すまない、ティオ。気分を悪くしたなら謝るよ。」

 

二人に言われたロイドはティオに謝る。

「別に……あなたの反応は常識的だとは思いますから。ところで、」

 

魔導杖をしまいながら皆に聞くティオ。

「わたしの武装はこの『魔導杖』ですが……皆さんの武装は何ですか?」

 

「ああ、それじゃ…俺の得物は、これだよ。」

 

そう言ってロイドは両手に武器を手にする。

 

「それは、警棒の一種……?」

 

初めて見る武器に疑問を浮かべるエリィに、ランディが答える。

 

「トンファーか。東方で使われる武具だな。殺傷力よりも防御と制圧力に優れているらしいが…」

 

「なるほど。警察官らしい装備ね。」

 

「色々試してみたんだけど、これが一番しっくり来てね。」

 

そう言ってトンファーをしまうロイド。

 

「で、エリィとランディの得物は?」

 

「私は、これね。」

 

そう言ってエリィが取り出したのは銀色の銃。

 

「導力銃……少し古いタイプですね。」

 

「ずいぶん綺麗な銃だな……」

 

「競技用に特別にカスタムしてもらったものよ。旧式だけど、狙いの正確さは期待してくれてもいいと思う。」

 

「おっ、自信満々だねぇ。そんじゃあ、俺はコイツだ。」

 

そして最後にランディが巨大なそれを取り出す。鉄の棒の先端に機械と斧の刃のような形のパーツがついている。

 

「それは…ずいぶん大きな武器だな。」

 

「中世の騎士が使ったていたハルバードみたいな形ね…」

 

「…財団の武器工房で見かけたことがあります。導力を衝撃に変換するユニットがついていますね。」

 

「ああ、スタンハルバードだ。ちょいと重くて扱いにくいが一撃の威力は中々のもんだぜ。」

 

「なるほど。ティオの杖がどういうものかは判らないけど…魔獣との戦闘になったらバランスよく戦えそうだな。」

 

全員の得物を見たロイドがそう分析する。

 

「確かに…」

 

「ま、そのあたりも考えて俺たちを集めたのかもしれんな。あのオッサン、とぼけた顔して結構したたかそうだったし。」

 

「…そうですね。わたしの魔導杖の性能はおいおい説明するとして…先ほど支給された、戦術オーブメントの性能を説明しましょうか。」

 

「それじゃあ、とにかく中に入ってみよう。まずは安全に気をつけて進んだ方が良さそうだ。」

 

「ええ、そうね。」

 

「…了解です。」

 

「んじゃ、行くとしますか。」

 

戦術オーブメントの使い方を把握した四人はジオフロントに足を踏み入れる。

 

 

 

「はあ!」

 

ロイドのトンファーによる一撃がコウモリのような魔獣を壁まで吹き飛ばす。勢いよく壁に叩きつけられた魔獣はそのまま動かなくなる。

 

「ふぅ」

 

「おつかれさん。中々やるじゃないの。」

 

「ああ。そっちこそ凄いパワーだな。」

 

ジオフロント内部をロイド達は道中の魔獣を退治しながら順調に進んでいた。

 

「俺とロイドが前衛、お嬢さん二人が後ろから援護。まあ即席のチームならよく出来てる方だろ。」

 

「そうだな。戦闘に問題は無い。あとは早いとこもう一人を探さないとな。」

 

そう言ってロイドが視線を向けた先にはエリィの側にいる男の子がいた。

 

ジオフロントの探索を進めていたロイド達は途中、中央広場のマンホールから迷い込んだ男の子、アンリを発見する。すぐに保護した四人だったが、アンリから友達、リュウが一緒に入ったことを聞く。魔獣から逃げる時にはぐれたらしい。ロイド達は一刻も早くリュウを見つけるためアンリを連れたままリュウを探すことにする。

 

「しっかしそれなりに進んだがどこにいるのやら。」

 

「魔獣から逃げていたならアンリみたいにどこかに隠れているかもしれない。声が聞こえないか気にしながら進もう。」

 

より警戒を強めながらロイド達は扉をくぐる。

扉の先には広めの通路の先に一際大きな扉があった。おそらく一番奥の部屋への扉だろうがそれよりも先に5人の目にとまったのは通路の真ん中に倒れている黒髪の男性の姿だった。

 

「っ!大丈夫ですか!」

 

声をかけながらロイド達は男性に駆け寄る。

 

魔獣に襲われたのかと心配したが、目立った外傷はないことに少しホッとする。そうしていると男性がゆっくりと目を開ける。

 

「ん……ここは…」

 

目を覚ました男性が体を起こす。

 

「大丈夫ですか?どこか痛いところとかは。」

 

ロイドが声をかけると周りに人がいることに気づいていなかったのか少し驚く。

 

「うおっ。あ、ああ。とりあえずは大丈夫だ。」

 

そう言うと男性は服をはたきながら立ち上がる。

 

「えっと、あんた達は?」

 

困惑を浮かべながら尋ねてくる男性にロイドが代表して答える。

 

「自分たちはクロスベル警察の特務支援課のもので、自分はロイド・バニングスといいます。あなたは?」

 

男性は聞き覚えのない単語にハテナマークを浮かべながらも答える。

 

「俺は戦兎。桐生戦兎だ。」

 

いまここに特務支援課と愛と平和を守るヒーローの軌跡が交差する。

 




今回が初投稿になります。
自分で見たいのは自分で書けの精神で始めました。
一応2話の投稿は1月中の予定です。まだかけてませんが。
評価もらえたらやる気がアップ…するかも?
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