腰を落としたビルドは赤い装甲に覆われた左足で飛び上がる。先の魔物を飛び越した時以上のスピードで接近するビルド。
魔獣は触手を伸ばして迎撃しようとするが、巧みなステップでそれをくぐり抜ける。
懐に飛び込んだビルドは勢いのまま青い装甲の左拳を叩きつけるが、ブヨンとした感触に跳ね返される。
「うおっと。打撃は効きにくいんだったな。」
魔獣の体当たりを横に飛んで回避しながらビルドは腰のベルトに手をかざす。
するとベルトから細いパイプのようなものが伸び、先程使っていたドリルに取手がついたような武器が現れる。
「はあっ!」
手に取ったそれで魔獣の体を斬りつけるビルド。しかしわずかながら切り飛ばしたゼリーのような体もすぐに元通りになる。
「斬撃も効果無しっと。」
確認するように呟くビルドは再びの体当たりを大きくバックステップで避ける。
距離の開いたビルドに触手が放たれるが、ビルドは武器のドリル部分を取り外し逆さまにしてつけ直す。
そしてまるで銃のように構えると迫る触手を撃ち落としていく。
「あの武器、遠距離にも対応してんのか。」
流れ弾などが子供に向かわないように警戒しながら言うランディ。そのままビルドの銃弾が触手をすり抜け魔獣の体に着弾するが、やはり大したダメージを与えられない。
「戦兎!その魔獣にはアーツが有効だ!戦術オーブメントは持ってないのか!?」
「戦術オーブメント?悪いが持ってない!」
戦兎に弱点を伝えるロイドだったが戦兎の答えに難しい顔になる。戦いに慣れている様子だったのでもしかしたらと持っているのではと思ったのだが違ったようだ。
「くっ!俺たちも加勢する!俺が前衛に加わるからティオ。後方からアーツで」
「大丈夫だって。」
加勢しょうとするロイドを遮るビルド。
「任せろって言ったろ?ヒーローの見せ場を取るんじゃないよ。それに」
そう言ってビルドは新しく鳥のようなレリーフが施された赤いボトルを取り出す。
「俺にも他の攻撃手段はある!」
軽く振ったボトルを武器の取手のスロットに差し込む。
Ready go!
武器から音声が鳴り、ビルドはその銃口を魔獣に向ける。
ボルテックブレイク!!
銃口から放たれたのはこれまでのエネルギー弾のようなものではなく、高温の炎だった。
アーツの気配もなく放たれた炎に虚を突かれたのか、もろに炎を浴びる魔獣。炎がおさまると全身から煙をあげ苦しそうに体をくねらせていた。
「よし!勝利の法則は決まった!」
そう言いながら右手で頭部のアンテナのような部分をなぞり手を開くビルド。彼が再びベルトのレバーを回し始めるとまたもや彼の背後から数式が流れていく。
Ready go!
数式が消えると流れる音声に合わせ飛び上がるビルド。するとどこからともなく白い曲線グラフのようなものが現れ、その一番下の部分で魔獣を挟み込み動きを封じる。
ボルテックフィニッシュ!!イェーイ!!
グラフの頂点から飛び蹴りを放つビルド。その体はグラフに沿って加速しながら魔獣に激突する。
突き出された青い右足の裏の戦車の履帯型のパーツが魔獣のゼリー状の体をえぐり飛ばしながら突き進み核と思しき球体に激突。
一瞬の抵抗のあと、突き抜けていくビルド。
華麗に着地を決める彼の背後で致命傷を受けた魔獣が爆発を起こす。
爆発が収まった場所には魔獣の姿は欠片も残っていなかった。
確実に倒したことを確認したビルドがベルトから2つのボトルを抜き取ると元の戦兎の姿に戻る。
「す、すごい…」
「本当に一人で倒しちまいやがった…」
「まっ、このてぇんさいに任せておけばざっとこんなもんさ。」
笑顔を浮かべた戦兎がみんなのところに行こうとすると、
ズズゥゥン!
「…はぁっ?!」
「嘘でしょ!」
「…二体目!」
「まずい!」
「「兄ちゃんにげてー!」」
戦兎の後ろに落ちてきたのは今倒したのと同じ魔獣。仲間を倒されて怒っているのかすぐさま戦兎に触手を振りかぶる。
「やっべっ!」
流石に変身している暇はないのか両腕で上半身を庇い少しでもダメージを減らそうとする戦兎。そこに魔獣の触手が振り下ろされる瞬間、
「やれやれ。中々の力を持つようだが、倒してすぐ警戒を解くのはいただけないな。」
突如上から聞こえてきた言葉に皆の視線が上を向く。
「なっ…」
声の主は一瞬で魔獣に接近したかと思うと瞬く間に魔獣を切り刻み細切れにしてしまった。
「マ、マジかよ…!?」
「し、信じられない…」
「……見えませんでした。」
「お、俺の見せ場が……」
皆が驚きの声を上げるなか、約1名変なところで落ち込んでいるが、
「すっ、スッゲー!」
現れた男に走り寄るリュウとアンリ
「すげーっ!さっきの兄ちゃんもすごかったけど、すごすぎるよ、アリオスさんっ!
うっわ〜っ!いいもんみちゃったなぁ!」
「あ、ありがとう、アリオスさん!でも、どうしてここに…?」
「ああ、広場のマンホールに子供が入っていくのを見たという報せがあってな。」
武器をしまいながら話すアリオス。
「しかし無茶をする。もしものことがあったらどうするつもりだ?」
「ううっ……ごめんなさい。」
「その……悪かったよ。」
気を落とす二人に薄く笑みを浮かべながら声をかけるアリオス。
「フ……まあ、無事ならそれでいい。
もう夕方だ。とっとと出て家に帰るぞ。」
「うんっ!」
「わ、わかりました!」
元気よく返事をする二人を連れて戻ろうとするアリオス。ふと気づいたように固まったままの5人に体を向ける。
「どうした?お前たちは戻らないのか?」
「え、ああ……」
アリオスの声にようやく動き出す5人。
「そうですね。一緒に戻らせてもらいます。」
「なら、グズグズするな。先程のようなこともある。
最後まで気を抜かないことだ。」
そう言って二人を連れてあるき出すアリオス。
「……………」
「かあ〜っ!なんていうオッサンだよ?
まとってるオーラが尋常じゃないというが……」
「ああ、半端ない人だったな。」
「……腕前の方も普通ではありませんでした。
いったい何者何でしょう?」
「そう、あの人が…」
一人、彼のことを知っている様子を見せるエリィ
「お嬢、知っているのか?」
「名前くらいだけどね。
というか、何で私をそんな風に呼ぶのかしら?」
「いや、何となくノリで。」
「ああ、何となくわかるかも。」
ハハハと笑いながら返すランディに同意する戦兎。
「それで何者なんだよ、あの凄まじいオッサンは。」
「ええ、多分ー」
「ーアリオス・マクレイン。」
エリィの言葉を引き継ぐロイドに四人の視線が向く。
「クロスベルタイムズで何度か読んだことがある。
遊撃士協会・クロスベル支部に所属する最強のA級遊撃士。」
皆に背を向けながら話すロイド。
「どんな依頼も完璧にこなし、市民から絶大な信頼を得ているクロスベルの真の守護者…
《風の剣聖》アリオス・マクレインだ。」
先に戻った3人の後を追って出口から出た5人はアリオスを撮影している女性に気付く。
「なんだ?」
「いや〜、アリオスさん!またしてもお手柄でしたねぇ!」
角度を変え撮影を続けながら話す女性。
「ずさんな市の施設管理の下、危機に陥ってしまった少年たちを鮮やかに救出した手際のよさ!
最新号にバッチリスクープさせてもらいますから!」
どうやら記者らしい女性の話にテンションを上げるリュウ。
「すっげぇぇ!オレたち雑誌に載っちゃうの!?」
「で、でもそれって、なんかうれしくないような…」
逆にアンリは少々呆れた様子。
「グレイス。あまり騒ぎ立てないでくれ。」
女性、グレイスを知っているらしいアリオスが窘める。
「確かに市の管理も問題だがこの子たちの行動にも問題がある。
偏った記事には感心しないぞ。」
「いえいえ、あくまで読者のニーズに応えているだけですから♪
それに今回は面白いゲストもいるみたいですし。」
アリオスの注意も軽く受け流すグレイス。そして視線を今出てきた5人に向ける。
「!?」
グレイスはアリオスの横を通り抜け5人たちの姿も写真に納める。
「クロスベル警察の未来を背負う『特務支援課』初めての出動!
しかし力及ばず、いつもと同じように遊撃士に手柄を奪われるのだった!
ああ、未熟さを痛感した若者達は果たしてこの先に待ち受ける数々の試練を乗り越えられるのか!?」
芝居がかった口調で言うグレイス。
「な、なにを…」
(おいおい…いったいなんだってんだ?)
(マスコミの人間みたいですけど…)
(どうやら《クロスベルタイムズ》の記者みたいね。)
(記者…かぁ)
戦兎の頭には仲間の一人が浮かんでいた。
「彼らに関しても決めつけはあまり感心しない。」
困ったようなロンドたちに助け舟を出すアリオス。
「一応、この子達を最初に助けたのは彼らだ。
まあ、ツメは甘かったようだが。」
「!!」
「なにおう!」
「あらら、やっぱりそうなんだ。」
次の一言に顔を険しくするロイドと抗議の声を上げる戦兎。どこか納得したようなグレイス。
「ま、記事で色々書くと思うけどあんまり気にしないでね?
お姉さんからのエールだと思ってこれからも頑張ってちょうだい。」
励ましているのかどうなのかわからない言葉をかけるも、すぐにアリオスのほうに振り返るグレイス。
「それでアリオスさん。一度、独占インタビューをですねー」
「それに関しても前に断っているはずだが…」
少しうんざりしたようにため息をつきながら子供たちを連れていくアリオス。グレイスも彼を追いかけて行ってしまう。
「…何でしょう、今の。」
ジトッとした顔で言うティオ。
「俺たちのことをピエロに仕立てようってはらみてぇだが、結構好みのお姉さんだけどちょいとクセがありそうだなぁ。」
「まあ、記者ってのは一癖も二癖もあるやつばっかりだからな。」
「ふう、そんな問題じゃないでしょう。」
ランディと戦兎に呆れたようにするエリィ。そして動かないロイドに声をかける。
「それでロイド、どうするの?」
「あ、ああ…」
エリィに声をかけられ動き出すロイド。
「…セルゲイ課長が出した課題はクリアしたし、いったん警察本部に戻ろう。
子供たちや戦兎さんの件についてもきちんと報告しないと…」
その時ロイドのポケットからピピピピという音がなる。
「これは…」
「んっ?携帯か?」
ロイドはポケットから音が鳴るものを取り出す。
「さっき貰った戦術オーブメント…もしかして通信が入ってきているのか?」
「ええ、そうみたいですね。」
ロイドの疑問に答えるティオ。
「そこの赤いボタンを押せば通信モードに切り替わります。」
「ああ、これか。」
ティオに教えられ、通信に出るロイド。
「えっと、ロイド・バニングスです。セルゲイ課長ですか?」
「あっ、ロイドさん!」
自分達がこのオーブメント持っているのを知っているのは課長ぐらいだと思ったロイドだが帰ってきた声は女性のものだった。
「あの、わたしです。先ほど受付でお会いした、」
「あ、さっきの…えっと一体どうしたんですか?」
相手が誰かを思い出し、要件を聞くロイド。
「えっと、それがですね…その、急いで警察本部に戻ってきていただけますか?なんでも副局長がお呼びみたいで…」
「ふ、副局長?」
大変遅くなりまして申し訳ありません。
戦闘シーンだけだと短いかなと思って序章終わらせようと思ったのですが事情説明がうまくかけない。このままだとヤバイと思いジオフロント脱出までで一旦投稿します。
あとは決闘者になったことが原因ですかね。はい、すいません。
次で序章終わらせます。来週、遅くても再来週までには何とか。
感想、閲覧ありがとうございます。失踪だけはしないように頑張ります。