中央広場近くの階段を降りた先にあるビル。
警察署にて副局長からの小言を言われた後、セルゲイ課長からの通信で案内された特務支援課の拠点だ。
セルゲイ課長から特務支援課についての話しを聞いた四人は特務支援課で続けていくかどうか一晩考えることになった。
「ふぅ。」
夜、ビルの前でロイドは悩んでいた。このまま特務支援課で続けていくか。課長から聞いた話は遊撃士の真似事の人気取りのようなもの、自分の目標からは遠くなるのではないか。
他の三人に話しを聞いて見れば三人ともすでに心は決まっているようだった。
「よっ。悩んでるみたいだな。」
「戦兎さん。」
入口の扉を開け戦兎が出てくる。戦兎についても行くところはなく、時間も遅いということで今日はビルに止まってもらい、次の日に話しを聞くことになった。
戦兎はロイドの隣の手すりに背中からもたれかかる。
「詳しい事情は知らないけど、俺で良ければ相談に乗るぞ?」
この悩みは特務支援課としてのものなのであくまで部外者の戦兎には聞かなかったが、せっかくそう言ってくれるならと戦兎の言葉に甘えることにする。
「実は自分たちの特務支援課は新設された部署なのですが、その活動内容は市民の人気取りとしての側面が強いと課長に言われましてね。配属の辞退は可能だと言われたのですが、」
「どうしようか迷っていると。」
「………はい。すみません。こんな悩み聞かされても困ってしまいますよね。」
苦笑いするロイドに戦兎が言う。
「なぁ、そもそも何で警察官になりたいんだ?」
「何でなりたいか、ですか。…俺には目標になる人がいてその人みたいになりたいから、ですかね。」
「…なるほどな。」
「………」
しばらくの沈黙の後、戦兎が口を開く。
「その目標の人に近づくにはどこにいるかは重要なのか?」
「えっ?」
戦兎は続ける。
「俺には警察官のあれこれはわからないけど、別に目標の人みたいにってのは同じ地位になりたいわけじゃないんだろ?
目標がはっきりしてるならどこにいてもどんな立場でもたどり着けると俺は思うけどな。」
「どんな立場でも………」
「それに他の三人は続けるんだろ?アイツらならいい仲間になれると思うぞ。」
戦兎の言葉に考え込むロイド。その時中央広場の方に目を向けた戦兎が何かに気付く。
「まっ、大事なことだからな。存分に悩むといいさ。もしかしたら答えはあの子達がくれるかもな。」
「あの子達?」
戦兎は手すりから背を離しおやすみーと言い残してビルに歩いていった。
「ふぁーあ。よく寝た。ベッドだけでもあって助かった。」
そして朝、遅めに起床した戦兎が一階に降りてくるとちょうどロイド達が奥の部屋から出てきたところだった。
「戦兎さんおはようございます。」
「おはようございます。」
「おはようさん。」
「おう、おはよう。
いい顔になったな。その様子だと続けるみたいだな。」
「はい。昨夜はありがとうございました。」
「大したことはしてないさ。それに決め手はあの子達だろ?」
「お見通しですね。それでは遅くなりましたが戦兎さんのお話を聞かせてもらってもいいですか?」
「おう。こっちにも聞きたいことがあるしな。」
挨拶を交わした特務支援課の面々と戦兎はロビーのテーブルに座る。
「さて、何が聞きたい?」
「そうですね。まずというか、一番聞きたいのは、あなたはいったい何者なんですか?」
「ま、当然の疑問だな。」
「あなたが嘘を言っているようには見えなかったので、気が付いたらあそこにいたと言うのは本当だと思います。でも魔獣やオーブメント自体を知らない様子も見られたのが気になって。」
「すごいなロイド。そんなこと気づいてたのか。」
感心するランディに笑みを向けるロイド。
「でも一番気になるのは魔獣と戦ったときのあの力です。」
「私もあんなものは見たことがないわ。」
「私もあんなことが可能な技術は聞いたこともありません。」
エリィとティオも昨日の戦闘を思い出しやはり心当たりがないと口にする。
「戦兎さんは何か悪事を働くような人には見えない。何か事情があるなら話してくれませんか?力になれるかも知れません。」
真剣な目で聞きかけるロイド。警察官として疑うよりもこちらを心配しているその様子を見て、戦兎はくしゃりと笑う。
「やっぱりあんたらいい奴だな。こんな見ず知らずの人を心配するなんて。」
「ありがとうございます。それじゃあ話してくれますか?」
「ああ。一部には俺の推測を交えた話になるけどな。それと、話す前に一つ確認したいんだが、」
「日本って国に聞き覚えはあるか?」
「………」
「………」
「………」
「………」
「おーい。大丈夫か?まあ信じられないのも無理はないが。」
一通り説明が終わると特務支援課の四人は沈黙したまま動かなくなっていた。
「いえ。信じない訳ではないのですが、ちょっと頭がパンクして……」
「まあ無理もねえさ。兄ちゃんの話は驚くばっかりだったからな。」
「ええ。信じられないというよりは理解しきれないというか、」
「そりゃそうですよ。まさか、」
「「「「別の世界から来たなんて…」」」」
「戦兎さんの持っていたこの通信端末もかなり高性能です。
導力技術を使わずにここまでのものを作れる人をわたしは知りません。」
「それに端末に記録されていた写真の景色も見たとこがないわ。
クロスベル以上に近代化が進んでいる町並みみたいだけどそんな所に心当たりもない。」
「えーと何だっけ?戦兎のいた国が日本って名前でパンドラボックスとかいうアーティファクトみたいなやつのせいで3つに別れたんだったか。」
「そしてそのうちの一つ、東都で時折現れる怪人、スマッシュと人知れず戦う正義のヒーローとして活動していた。
そのための力が昨日の」
「そう。ライダーシステムで変身する仮面ライダービルドって訳だ。」
戦兎のだいぶ簡略化した話しを聞いた四人は話しを整理し直してようやく理解する。何とかぎりぎり飲み込んだといったところではあるが。
「そんで3つに別れた国をもとに戻して、スマッシュたちとの戦いが終わったあと」
「仲間の一人とともに光に包まれて気が付いたらあそこにいたと。」
「そうなんだよなぁ。ったく、どこいったんだあのバカ。」
机に突っ伏す戦兎。
ようやく落ち着いてきたロイドは気を取り直して話しを進める。
「とりあえず戦兎さんの事情はわかりました。それでこれからどうするつもり何ですか?」
「そうだなぁ。機械修理とかしてお金稼ぎながらあのバカ探すかな。俺がここにいるならそんな遠くには飛ばされてないと、思う、けど。」
体を起こしとりあえずのプランを話す戦兎。その時黙っていたセルゲイが口を開く。
「なら戦兎。お前、特務支援課に入らないか?」
「ええ?!」
セルゲイの提案に驚くロイド。
「それっていいのか?俺警察じゃないどころかこの世界の人でもないけど。」
「もともといろんな奴らがいるんだ。科学者兼正義のヒーローがいてもいいだろ。身分証明とかはこっちで何とかしてやるさ。」
「ええ…それいいんですか?」
「聞きようによっては身分の偽造ですけど…」
呆れたようなロイドとエリィ。
「何だお前ら嫌なのか?」
「嫌とは言いませんけど、なんでまた?」
質問するランディにセルゲイが答える。
「強いて言うなら面白そうだからかな。こいつなら色んなもんをぶっ壊して行きそうな予感がしてな。」
戦兎に向き直るセルゲイ。
「まあお前さん次第だ。別に今すぐ決めなくてもいいが、」
「いや、折角だしやらせてもらおうかな。」
「ほう。」
即答した戦兎にロイドが聞く。
「ちなみに理由は?」
「警察なら不審者とかであのバカの情報が入るかもしれないからな。」
「不審者なんですか?」
仲間がそれでいいのかというティオ。
それと、そう言いながらセルゲイを見る戦兎。
「面白そうだからな。」
「くくっ。そりゃ良かった。」
立ち上がった戦兎はいきなりのイベントに頭を抱えるロイドの前に立つ。
「というわけで、これからよろしくな。リーダー。」
ロイドも立ち上がり、戦兎が差し出した手を取る。
「状況についていくのに精一杯だけど、こちらこそよろしく。戦兎。」
大変遅くなりました。しかも序章終わってない。本当にすみません。
序章って特務支援課結成までじゃなかったんですね。大分記憶があやふやでした。2章書くときは一回章終わりまで通してから書き始めようと思います。
戦兎の説明ですが、細かいところは大分ぼかしてます。ライダーシステムの出どころとかラスボス周りとか。軌跡世界の宇宙の認識がどの程度かわかりませんがこの上宇宙人まで出てきたらロイド達はパンクしそうですし。
あと特務支援課への所属経緯がかなり無理矢理感あると思います。流してくれると助かります。
次回こそ序章終わりまで…いけるはず。3月中には次を上げるつもりです。気長にお待ち下さい。
それではまた次の機会に。
そういえばビルドのラスボスもメガネだな。仮の体だけど。