「さーて。まずはどの依頼から行く。」
特務支援課結成から二日後、今日から本格的に活動を開始した特務支援課の面々は早速支援要請を始めていた。
支援要請とは通常業務に加え、一般市民や観光客、警察の他部署などから送られてくるもので、内容は落とし物探しから魔獣退治まで幅広い。
5人は警察の受付でレベッカと担当のフランから説明を受け一度支援課に戻り要請をこなすために出発したところだった。
「そうだな。街の案内をしながらこなしていくならまずは歓楽街の要請に行こうか。」
「おっ。いいねぇ。あそこには色々あるからな。」
「仕事中ですから、あそんでる暇はありませんよ。」
歓楽街と聞いてテンションが上がるランディとそれを諫めるティオ。
「歓楽街か、まずはどっちに行くんだ。」
「ああ、まずはレストランの横を通って………
「っ!……いつつ。」
「大丈夫か?ったく、無茶しやがって…」
クロスベルの南東側にある旧市街を歩く特務支援課達。
痛そうに肩をさするロイドを戦兎が心配している。
「ウチのリーダーは無茶ばかりだなぁ。」
「全くもう。こんなことはもうしないでちょうだい。」
軽い調子のランディと呆れたエリィの声が続く。
この日特務支援課達は一通りの支援要請を終えた頃に、課長のセルゲイから「旧市街でイザコザが起こってるから行って来い。」と言われ現場に向かった。
そこでは旧市街を拠点にする2つの不良グループの構成員が今にも喧嘩を始めそうな雰囲気になっていた。
特務支援課で制圧した後現れた、互いのリーダー達の仲裁でその場は収まったが、彼らは後々相手を完全に潰すためだと言う。
この話を聞いたロイドは、ただの不良グループが互いを潰すまで闘うのは何か理由があるはずだと考え、それぞれに事情を聞くようにした。
まず、武闘派を謳う荒々しいグループ、サーベルバイパーのリーダー、ヴァルドに話しを聞くことにしたのだが、その条件としてロイドはヴァルドと模擬戦をすることになったのだ。大きな怪我も無く済んだものの、並外れたヴァルドのパワーに体の各所にダメージを受けていた。
「それにしても闇討ちですか…」
ロイドが体を張って聞けた話では、サーベルバイパーのメンバーが夜一人で歩いていた所を襲われたのだと言う。犯人の顔は見ていないが、その際の傷から相手のグループ、テスタメンツのメンバーの使うスリングショットによるものだと考え、報復のためにテスタメンツを潰す、ということだった。
「ひどいことするもんだな。不良の喧嘩にしちゃあやりすぎだ。」
「どうするんだ?テスタメンツの方をとっ捕まえるのか?」
「いや、テスタメンツ側の事情も聞いてから決めよう。『真実は、見ている人間によって様々な姿形に捉えられる。だからいくつもの証言を照らし合わせてみないと本当の真実は見極められない。』………それも捜査官の仕事だ。」
表情を引き締めてロイドは言う。
「なるほどねぇ…」
「情報の多角的分析が必要という事ですか。」
「流石本職の捜査官だな!」
そうこう言ってるうちにテスタメンツの拠点であるプールバーの前まで来た。
「ここか…」
「こっちのリーダーはヴァルドほど戦闘好きって感じはしなかったが、どうなるか………」
「あはははははははッ!!いいね!すごくいいよ!そんなクサイ台詞、そうそう聞けるもんじゃない!ロイドって言ったっけ!?いや~、気に入っちゃったよ!」
「……別にウケを取るために言ったんじゃないんだけどな。」
テスタメンツの拠点に入った特務支援課はリーダーのワジから話しを聞こうとしていた。
話したところでこっちにどんなメリットがあるのか。
そんなワジの質問に対してロイドは、「もし君たちが、ほんの少しでも疑念という闇を抱えてるのなら…それを晴らす手伝いはできると思う。それが俺たちの提供できるギブさ。」と言ったのだ。それを聞いたワジは大爆笑である。
「それで、どうなんだ?『本気で潰し合う理由』、教えてくれる気はあるのか?」
「フフ、まぁいいか。」
ひとしきり笑ったワジはカウンターの椅子に座り直す。
「あんな決め台詞まで聞かされておひねりを出さないほどケチじゃない。」
「おっ、ホントか?」
「だけど…」
戦兎の声を遮るワジ。
「確かヴァルドとやりあったんだろう?」
「あぁ、あくまで模擬戦だが。」
「それにまださっきのダメージが残ってるわ。今からもう一戦するのは……」
「いや、彼はさっきの台詞で十分さ。僕がやりたいのは……」
ロイドを庇うように言うエリィに首を振りながら言うワジ。
「そっちの彼。確か戦兎クンだっけ?彼と一勝負したいと思ってね。」
指名された戦兎はキョトンとした後、周りを見回してからワジを見る。
「えっ俺ぇ!?」
ワジの部下達が机などをどかして作ったスペースでワジと向かい合う戦兎。
「別に僕に合わせなくてもキミは武器を使っても構わないよ?」
「いいよ別に。あくまでこれは模擬戦なんだからな!」
先の喧嘩直前だった不良達を制圧した時にも戦兎は武器を使っていなかった。理由は怪我をさせないため。この世界の人間達が元の世界の一般人に比べて頑丈な体をしているのは分かっているが、峰の無いドリルクラッシャーでは大怪我になりかねないからだ。
(とはいえ。さっきのロイドとヴァルドの模擬戦を見る限り、こいつの実力もかなりのものと見ていい。場合によってはボトルくらいは使わせてもらうか。)
戦兎は今日買ったばかりのトレンチコート(お金はロイドから借りた)のポケットにラビットフルボトルを入れていた。
「準備はいいか?」
「いつでも?」
「そんじゃあ…行くぞ!」
言葉と共に走り出す戦兎。勢いのまま右腕でのパンチを繰り出す。
「よっと。」
「うおっ!?」
それを体を傾けて躱したワジはその体勢のままハイキックを放つ。思わぬ攻撃を何とか左腕で受ける。
(おっも!?この体格でこの威力かよ!?)「…んのっ!」
「おっと!」
受け止めた脚を掴んで振り回し、体勢を崩そうとする戦兎。ワジはそれに逆らわず、むしろ勢いを利用して壁に飛び、三角蹴りの要領で飛び蹴りを繰り出した。
「あぶねっ!?」
身を翻して回避する戦兎。
(こりゃ余裕こいて戦える相手じゃねぇな…)
ワジが振り向く前にコートからラビットフルボトルを取り出し握り込む戦兎。軽く振り、こちらを振り向くワジの死角を取るように超スピードで移動する。
「オラッ!」
「おおっと!」
振り向いた瞬間を狙ったパンチを、体を反るようにして回避するワジ。反応速度に驚いた戦兎は、嫌な予感がして顎を両手で守る。
「うぐっ!?」
「戦兎!?」
体を反る勢いで放たれたサマーソルトキックをかろうじてガードした戦兎だが、あまりの威力に体が浮き上がる。
「なめん、なぁ!」
ボトルを振りながら空中で体勢を整える戦兎は、ボトルで上がった身体能力で天井を蹴り、ライダーキックを仕掛ける。
「いいね!」
それを見たワジはガードしたり避けるのではなく、ハイキックで迎え撃った。
バキィ!
鋭い音を立ててぶつかり合った2つの蹴り。蹴りの威力は同等だったが、空中で踏ん張りの効かない戦兎が落下する。
「あいてっ!?うぐぉぉぉ……」
後頭部を床にぶつけて転がり回る戦兎を見たワジがくすりと笑う。
「ふうっ。まぁこんなもんかな。」
「?…もういいんですか?」
終了宣言するワジに転がり回り終えて蹲る戦兎の代わりにティオが聞く。
「あぁ。十分楽しめたし、僕はヴァルドほど戦闘狂ってわけではないしね。」
「おーい。大丈夫か戦兎?」
「おう…何とか…」
「一応回復しておきますよ。」
ランディに起こされながら、ティオに回復アーツを受ける戦兎。
ワジは元々座っていたカウンターの椅子に腰掛ける。
「それじゃあアッバス、説明は頼んだよ。」
「良かったのか?」
「んっ?何が?」
特務支援課への説明を終え、彼らが帰ったあと。部下達が片付けをしている中、カウンターに座るワジにアッバスが聞く。
「彼らに事情を教えたことだ。あのタイプははっきり拒めば無理に聞くことはなかったろう。」
「いいのさ。彼らにも言ったけど、あんなまっすぐな人はそういない。彼らがこれから何をするのか、楽しみだよ。それに………」
ワジは右足に手を添える。
(桐生戦兎………彼も面白そうだ。)
先程戦兎と蹴り合った脚にはまだ痺れが残っていた。
はい。大変お待たせしました。
前回投稿がもう3年近く前…
色々とありました…決闘者になり、褪せ人になり、独立傭兵になり…ごめんなさいモチベが他ゲームに浮気してました。
しかも序章終わってないし…
つ、次こそ序章終わらせますので、またお待ち下さい