まーた時間が開きまして申しわけありません!
旧市街の事件の解決に戦兎の差し込みシーンが少なすぎたので全カットして説明会にしました。
ビルド側の事情はまだ話せないことばかりなので主に軌跡側の説明ですね。
特に軌跡世界は独自用語に加えて国際情勢がややこしいのでここらでガッツリ説明をしてます。
「それでは只今より、旧市街での不良グループ襲撃事件の総括とそれに伴うゼムリア大陸及びクロスベルの状況についての講義を始めます。」
「「イェーイ!」」
「真面目に聞いてください。」
夜の特務支援課のビルの1階、普段は食事やミーティングをしているスペースではちょっとした講義が行われていた。
講師はティオとエリィ。生徒は戦兎、ランディ、ロイドである。
「まずは先の事件のまとめですね。事件の内容としては旧市街を拠点としている不良グループ、「サーベルバイパー」と「テスタメンツ」の構成員が深夜に襲撃を受けました。それを理由に元々仲の悪かった2つのグループが抗争に発展しかけていたのが私達が介入した時の状況です。」
「その真相はクロスベルに根を張るマフィア、「ルバーチェ商会」の構成員によって抗争を起こすために偽装されたものだったのよね。」
「共和国から進出してきた黒月を警戒して戦力確保に動いていた商会。その末端が功を焦って起こしたものだった、というのが事件の顛末です。」
「はいっ!」
「何ですか?戦兎さん。」
意外とノリ良いなと思いつつ、半ば分かっている質問をする戦兎。
「どうしてルバーチェ商会を捕まえないんですか?」
「それは簡単に言うと、ルバーチェ商会が政治方面にも強い影響力を持っているからね。」
「影響力?」
「はい。ではそれを説明するために今のクロスベルの置かれている特殊な状況について説明していきます。」
「今のゼムリア大陸には大きな国が2つあるわ。」
用意していたホワイトボードに貼られた地図を用いてエリィが説明を引き継ぐ。
「それが西のエレボニア帝国と、東のカルバート共和国。この2つの国は昔から緊張状態が続いているの。けど2年前にリベール王国で結ばれたエレボニア、カルバード、リベールの三国による不戦条約によって緊張状態はかなり緩和されたわ。」
「確かに、条約の前は結構頻繁に演習してたぜ。その度にこっちまで気を張らないといけねぇから迷惑極まりなかったなぁ。」
もう退屈そうに背もたれに体を預けながらランディが言う。
「その2つの国はどうしてそんなに対立してるんだ?」
「…それについては、具体的な理由があるわけでは無いの。互いにこの大陸で大きな力を持つ大国同士。覇権を巡って争うのは、ある種仕方のないことなのかもしれないわね。」
「そしてそのニ大国に挟まれているクロスベルは古くから交通の要所であることと、豊富な七耀石資源を抱えていたために2つの国が領有権を主張。かつてはクロスベルを巡って両国の武力衝突が繰り返されていたそうです。」
「そして今から70年程前にエレボニアとカルバードの双方を宗主国とすることでクロスベルは一定の自治権を認められ、自治州になったの。」
「宗主国が2つってのはよくあることなのか?」
エリィは苦い顔をしながら首を振る。
「クロスベルのような2つの国を宗主国としている自治州はかなり特殊なの。ゼムリア大陸には他にもオレドやレマン等の自治州があるけれど、それらはアルテリア法国を宗主国としているわ。けれどクロスベルは敵対関係の2つの国が宗主国になっている。恐らく互いに相手に渡したくないがための妥協点としてこのような形になったのだと思うけど、その為にクロスベルの政治は大きな問題を抱えているの。」
「どうしてなんだ?クロスベルの政治は議会での話し合いで進められているんだろう?仮にも自治権を認められているなら片方に肩入れでもしなければ真っ当に運営出来そうだが。」
ある意味真っ直ぐなロイドの疑問にエリィは首を振る。
「議会はあるわ。けど、その議員達の多くはどちらかの国の後ろ盾を得ているの。自分達の国が有利になる主張ばかりする上、クロスベル自身が力を持てるような主張は潰されてしまう。」
「そんな…」
「彼らからすれば、相手の国が力を持つのも。クロスベルが独立出来る程の力を持つのも避けたいことなのでしょう。」
「そしてそれは政治以外にも影響しているわ。クロスベルは軍を持てないように規定されているし、代わりに存在する警備隊もニ大国の意向を無視しての増強は出来ないわ。」
「そしてそんなクロスベルで大きな影響力を持つのがルバーチェ商会です。」
やっと本題ですね。と言いながらティオは説明を続ける。
「ルバーチェ商会は昔からクロスベルを根城にしているマフィアで議会にも強い繋がりがあるとされています。」
「もしかして警察が捕まえられないってのは…」
コクリと頷くティオ。
「はい。警察もルバーチェ商会を犯罪組織であると理解していても決定的な証拠がなくては逮捕出来ません。そして…」
「その証拠を見つけようと捜査すれば上からの圧力…か。」
〜〜〜〜〜
「クロスベルの情勢とルバーチェ商会についてはこんなところね。」
「中々長かったなぁ〜」
「本当にややこしい状況なんだな。」
講義が一段落して体を伸ばすランディと目元を押さえる戦兎。
「さて、次は導力についてですね。」
「よっ!待ってました!いやぁやっぱ物理学者としては知っとかないと!」
その言葉に戦兎は元気を取り戻して聴く体勢になる。
「導力器が発明されたのは現在の七耀暦1204年から約50年前の1150年。C・エプスタイン博士が発明しておりこの出来事は導力革命と呼ばれています。」
「へぇ~50年前…50年!?」
バンッ!と机を叩いて立ち上がる戦兎。それにびっくりするロイド達。
「びっくりしたぁ…そんなに驚くことなのか?」
「驚くわ!俺の世界で1番使われていた電気でも実用化から普及まで100年以上はかかってる!いったいどうやって安定的な生産を…」
「静かにしてください。説明を続けますよ。」
ホワイトボードに書き込んでいくティオ。届かない所はエリィに手伝ってもらいそれに微笑ましい顔を見せたランディを睨みつける。
「…ふぅ。導力器(オーブメント)とは、七耀石(セプチウム)という鉱石を加工して作られる部品を用いた物を指します。内部で七耀石から導力(オーバルエネルギー)を取り出して動く仕組みです。」
「七耀石…導力…」
「七耀石自体は導力革命以前から発掘されていましたが、多くは宝飾品として使われていたそうですね。」
「今では大陸中に広まり、導力灯を始めとした家庭内導力器。飛行船や鉄道等の輸送手段。それに通信技術にも使われているわ。」
「それとロイド達も持ってる戦術オーブメントか…」
懐から取り出した戦術オーブメントを見るロイド。
「身体能力の補助やアーツを始めとした戦闘用の機能を持つオーブメント。今持っているそれはエプスタイン博士の技術と理念を受け継いだエプスタイン財団が開発した第5世代戦術オーブメント《エニグマ》ですね。従来の機能に加えて通信機能が備わっています。」
「確か戦兎の分のエニグマは今手配中なんだっけか?」
「はい。こちらで取ったデータを主任に送って作ってもらっています。…届いてもバラさないでくださいよ。」
「す、するわけないじゃん!」
内心ドキリとする戦兎。ジト目で見てくるティオから目を背けるように顔を横に向ける。
苦笑いのロイドとエリィ。かっかっかと笑うランディ。呆れたため息をつくティオ。
「とりあえず、説明するのはこれくらいかしら?」
「お、おう!この世界のこと、かなり分かったぜ!」
「まぁ分からないことがあったらまた聞いてもらって構わないから。」
「おっともうこんな時間か。そろそろ飯の準備するか〜。」
「あぁ俺も手伝うよ。エリィとティオは座っててくれ。疲れたろう。」
「そう?じゃあお願いするわね。」
「ではお言葉に甘えて。」
「うっし!俺も手伝うか!」
ご飯の準備に立ち上がるランディ。講義を終えた2人に休むように言ってロイドと戦兎はランディに続いてキッチンに行く。
「戦兎、料理できんのか?」
「舐めんなよ〜これでも仲間の中ではそれなりに…」
〜〜〜〜〜
数日後。
クロスベル市外にある農村。
畑を見下ろす柵に座っている男がいた。
「かしら〜!!」
そこに走ってくる三人の男。それぞれ赤、青、黄の品を身に着けている。
「なんだお前ら。うるせぇなぁ。他の人達に迷惑だろうが。」
頭と呼ばれた男は柵から降りて男達に向かっていく。
「それどころじゃないっすよ!」
「これ!これ見てよ!」
「頭絶対に驚きますよ。」
赤いバンダナを巻いた男に差し出された新聞を手に取る。
「驚く?んな簡単に俺が驚くかよ。何なに?クロスベル旧市街で…んっ!?」
そこに書かれていたのは旧市街の事件に関する記事と写真。男が見ていたのはその写真に写っていた戦兎だった。
ちなみに軌跡世界の長さの単位は
1リジュ=1センチメートル
1アージュ=1メートル
1セルジュ=100メートル
です。
改めて調べてみてミリとキロに相当する単位が無いことにびっくり。リジュはミリでセルジュはキロだと思ってた…