「ね、サンデー。実は私ねダートから芝に転向するんだ。走りがターフ向きなんだって。もう君とレースを走らないと思うと寂しいよ」
友人の突然の告白には驚いた。ダートに向いていないとはどういうことなのか、確かに三冠では一度も勝てていないが全て入着している。
「なんで、ダートでだってちゃんと結果を出してるじゃん!なんで芝なんかに転向するの!」
「私だって芝レースなんてやりたくない、みんなと泥だらけになって走りたい!でも、もう負けたくないんだ。私はパワーがどうしてもないんだ。だからスピード勝負ができる芝に行くんだ」
「本当に芝に行っちゃうの?」
「そうだよ、でも芝で最強だと証明する。1番になるためにBCターフで勝つんだ」
「わかった。あなたは芝の1番を目指すんだね。俺はダートの1番を目指すよ」
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三冠から一月少しの間隔しか空いていないのにレースをすることになったのは驚いた。トレーナーが何を考えているのか分からない。
「スタートしました。サンデーサイレンスまずまずのスタート。先頭に立ちます。最初の2ハロンは23.3、サンデーサイレンスがハナを取って逃げていきます」
調子がイマイチだから足を多めに使い好位置をキープしていく。
「次の4ハロンは47.3、速いペースで進んでいきます」
足を結構使っているが後ろが粘っているそんなに今日は良くないのかな。ふと後ろの馬の気配が消えた。しまった、ペースが速すぎる。スッと右後ろにウマ娘が入ってきた。仕掛けなきゃ。
「サンデーサイレンスが3コーナーで後続を突き放す!ケンタッキーダービーの勝ち馬サンデーサイレンスが先頭で最後の直線に入っていきます」
使いすぎた足が動かなくなってきた
「サンデーサイレンス思ったより伸びないか!後ろからプライズドが来た!プライズドがサンデーサイレンスを交わしたところでゴールイン!なんと勝ったのはプライズド!サンデーサイレンス負けました!」
負けた理由は分かりきっていた。疲労だ。トレーナーが今回出したことを悔いるインタビューをしている。何故出走することになったのか、今回自分の疲労状態を適切にトレーナーに伝えられていたのか疑問に思った。とにかくミーティングを行う必要がある。BCに向けて完全な状態に仕上げるためトレーナーの言いなりではいけない、それは分かっていたが今日まで実行できていたのか、今回の敗戦だけでなく以前のレースをも振り返る必要があると感じる。
「ウィッティンガムトレーナー、今日のミーティングは長くなるな」
そう言うとトレーナーは少し嫌そうな顔をして頷いた。
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「初の芝でレコードに迫る記録を出しましたホークスター!後続を突き放しました!」
私の圧勝劇をシルバーホークトレーナーは特に喜ぶ事なく見ていた。
「やっぱり芝ではトップレベルだな。これではっきりした」
そう言い残すと彼女は帰っていった。これは想定範囲内と言う事だろう。いずれかは芝の王道距離、12ハロンも行けそうだなと思う。目指すはBCターフ。サンデーと共に頂点に立つために。