子夜
年が明けエクリプス賞年度代表ウマ娘を獲った俺は叩きで2戦した後、イージーゴアとのマッチレースとしてアーリントンチャレンジカップが設定された。それを目標にトレーニングしていたときだった。
「トレーナー息を切らしてどうしたんだ。年なんだから…」
「イージーゴアが骨折してそのまま引退するらしい。私としてはそのまま出るつもりだが、サンデーはどう思う?」
「そのまま出ればいいと思うよ。ここまでやってきたんだし、残念だけどこのまま出よう」
「そうだな、もうすぐレースだしこのまま頑張ろう。しかしサンデー、なんか歩き方おかしくなかったか。もう一回歩いてみろ」
「こうか?あんまり違和感ないんだけどな。こんなタイミングで怖いなぁ、何かおかしいところでもあるのか?」
「なんか左足庇ってないか。一応トレーニング終わらせて検査行くぞ」
「レントゲンですが…あーここの靭帯がだいぶ損傷してますね。これでは…」
「XYZ靭帯が切れているのか…」
「トレーナーどうしたの?神妙な顔してさ」
「もうこうなってしまったら引退か…」
「このXYZ靭帯は人間にはない、ウマ娘が高速で走るために存在する靭帯です。ここが切れると高速で走った時に脚を支え切れなくなります。しかも靭帯の長さがこの通り、アキレス腱と比べても1.5倍くらい太く、長いので移植もできないんです」
「え、じゃあもう走れないの?」
「いえ、人間と同じくらいの速さなら気にしなくても大丈夫です。しかし時速30キロ以上だと関節が耐え切れず骨折します。なので絶対に速く走らないでください」
「はい……分かりました」
「おい!トレーナーのオファーが一件も無いってどういう事だよ!」
「現役時代の素行が悪いって断られたんだ。トレーナー業は半ば世襲制みたいなところがあるがこんだけ実績残してるのに」
「イージーゴアはもうチーム集めてんだろ。なんだよこの差。ふざけてんのか」
「イージーゴアは父親がトレーナーで母親は名ウマ娘だからな。しかしこんなにオファーがこないとは……。サンデー、最後の手を使うしか無いかなこれは」
「日本に行くのか。あんまり乗り気じゃ無いんだけど家は借金すごいからな」
「日本に行くなら君の方が詳しいはずだ。結果だけ教えてくれよ」
「じゃあ電話するね」
『はいこちらURC副理事長の吉田 善照です』
『もしもしサンデーサイレンスです。善照さん。実は話があるんです』
『サンデーちゃんか。なんでも話を聞くよ』
『実はトレーナーのオファーが来なくてね。日本で働かせて欲しいんです』
『URCとしては大歓迎だけど…。一回両親とトレーナーを交えて話そう』
「トレーナーや両親とも話したいって」
「そうか、なんだか思ったより早い別れになったな」
「うん…日本でも頑張るよ」
「サンデーさんが日本に行く費用も全てURCが持ちますし借金も払いましょう。サンデーさんが来てくださるならなんだってしますよ」
「い、いやサンデーの働き口だけでも十分なので…」
「我々が十分じゃありません。それではひとまずはこれで。困ったらすぐ呼んでくださいね。それではサンデー、来月までによろしくね」
そして私は日本に飛び立った。