艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 死中に活あり


 後編の上となります。

 すみません。本来の予定では今回で戦闘終了だったはずが、なんかその前段階がえらく長引きましたので分けることにしました。

 今回回想シーンがメインとなりますのでアンドロメダ五姉妹が勢揃い致しますが、個々のイメージ等は私個人の解釈といいますか妄想?が全面に出ておりますので、人に依りましては嫌悪感があるかもしれませんので、その辺りはご注意して下さい。
 それとヤマト2202に関する独自解釈てんこ盛りです。

 五姉妹全員が揃う何て多分これが最初で最後だろうからと、欲だして全員出したのが間違いだったかなぁ…?(文字数的に)

 

 読者様の一人、かいただ様との感想のやり取りにて、アンドロメダはヤマトの技術ノウハウを継承して造られた戦艦だから、ある意味親子という設定の解釈が成り立つと気付き、それを設定として盛り込む事と致しました。また、ヤマトが母親ならば父親はやはりあの方しかいないと改めて気付く事が出来ました。かいただ様にはこの場をお借りしてあつく御礼申し上げます。


第8話 Find a way out of a fatal situation 後編上

 約1ヶ月前、地球圏月軌道─────

 

 

 

 そこには地球連邦が誇る最新鋭艦隊、通称波動砲艦隊の艨艟達が、出撃の時を待っていた。

 

 待機する大艦隊の中央で、5隻の大型戦艦が鎮座するかのように艦列を並べている。

 

 

 その真ん中、艦体にANDROMEDAと書かれた艦の甲板で、1人の女性が物鬱気な表情で周りに集う艦達を見ていた。

 

「…ここにいる娘達のどれだけが、無事に帰ってこられるのかしら?」

 

 ガトランティス(蛮族共)との総力戦。それに備えるために地球と同盟国ガミラスはその総力を結集して戦力の拡充、整備に取り掛かった。

 

 だがガトランティス(蛮族)の正体を暴くために惑星テレザートへと旅立ったヤマトさんから次々ともたらされる目を疑いたくなるような信じがたい情報の数々によって、それは幾何級数的に肥大化。そしてどんどん(いびつ)なモノへと変わっていった。

 

 数字の上では確かに強力な大戦力を揃えられたが、その中身は相当お寒いのが実情。

 

 

 人間(ヒト)が足りない。(ふね)を動かす人間(ヒト)がまったく足りない。(ふね)を指揮する人間(ヒト)はもっと足りない。艦隊を率いる人間(ヒト)は───お察し下さい。

 

 

「波動砲さえ撃てれば良い」

 

 

 そう揶揄した司令部のスタッフがいるそうだが、実は一番人手が足りないのが司令部なのだ。

 

 肥大化する戦力に比して、それらを維持管理する為に必要な後方担当スタッフの人数が破滅的に不足していた。

 

 現在人事部は必死になって軍の第一線から退いた老兵、傷痍軍人の現役復帰を呼び掛けるだけでなく、民間からも手当たり次第にリクルートしている真っ最中だが、焼け石に水。

 

 司令部もまた、一つの戦場なのだ。

 

 だがそれが血を流して戦う戦場の将兵と比べ、世間一般的に評価されることは殆ど無い。それが裏方の辛い現実だ。どんなに歯を食い縛って地獄の様な毎日を耐えようともだ。

 

 先の揶揄には羨望と皮肉が入り混じった複雑な感情の現れでもあった。

 

 

 

 そもそも時間が足りなさすぎた。

 

 

 先のガミラス戦役終結から2年。()()2年しか経っていないのだ。

 

 国連から地球連邦へと名称は変わりはしたが、組織の再編成が完了してはいなかった。

 そのために随所に歪みが生じている。その小さな例の一つが軍の表記UNCFだ。本来なら既にEFCFになっていたハズだったが、書類や記録媒体、制服に制帽や腕章、艦や施設等への表記の変更を行う手間隙に時間を費やす暇や予算があるなら、それよりも先にすることが!があまりにもありすぎて先送りにされ続けている。

 

 また人事も拡大する規模に対して人手が足りずに兼任が相次いでいる。その最たるモノが艦隊司令と艦長の兼任人事だ。

 

 

「この軍隊では、敵に、勝てない…」

 

 

 艦内の自室にて、以前に山南艦長が沈痛な面持ちでそう呟いていたのを聞いた。

 

 軍艦は次々と出てくるが、それの慣熟訓練は最小限度ギリギリまで絞っている有り様。

 

 先日、演習宙域へと視察に赴いた際に、その片隅で教練支援艦のカトリさんが「あの娘達やその乗組員を生きて帰れる様にするためでなく、死なせに逝くために訓練している様なもの」と泣きながら漏らしていたのを偶然、彼女は見てしまった。それを慰めていたカシマさんが一瞬、彼女に送った普段の優しい表情からは想像つかないほどの鋭い視線は、一生忘れる事は無いだろう。

 それが彼女に向けられたモノではなく、行き場の無い怒りが漏れてしまったのだと、その後浮かべた悔恨の表情を見るまでもなく察した。

 

 

 

 人間(ヒト)(ふね)も少しずつ捨て鉢になりつつあると、最近肌身で感じていた。

 

 

 あえて言えば、AIが全面的に戦略の意思決定に大きく関わるようになってからは特にそう感じる。

 

 AIによる効率化。だがそれによって組織は人間性を失いつつあった。そして人間(ヒト)はどんどんAIの決定に自らの意思決定を委ねる半ばロボットの様になりつつあるように思えてならない。人間(ヒト)機械(AI)を使うのではなく、機械(AI)人間(ヒト)を使う。その先にある未来は────

 

 そこまで考えて、彼女は自身の思考に対して自嘲気味に笑った。

 

 自分もまた兵器(機械)なのだ。それが人間(ヒト)の未来を憂う。それがとても滑稽に思えてならなかった。

 

「姉貴!」

 

 その女性、アンドロメダは不意に掛けられた声のする方に向けて振り向く。その表情は今さっきまでの自嘲の笑みではなく、愛しき者に向ける微笑みを湛えていた。

 

「アポロノーム?どうかしました?」

 

 振り向いた先に居たのは、僚艦にして彼女の姉妹艦である3番艦のアポロノームの姿。

 

 相変わらずのややボサボサした肩まで延ばした髪とその上にちょこんと軍帽を斜めに乗せ、制服を着崩した様な姿に苦笑しながらも暖かく迎える。

 

 

「いや、別に用ってわけじゃねぇんだが、暇なんでよ。姉貴の顔を見に来た」

 

「あらあら。でも嬉しいわ」

 

 アポロノームのこういうちょっといい加減な所がアンドロメダは好きだった。

 

 

「そういやよ、姉貴はあいつら、ガト公共についてどう思うよ?」

 

「そうですね…」

 

 問われた質問に、顎に手を当てて考えるアンドロメダ。

 

 

 真剣に考え込む姉の姿に、そこまで深い意味があって聞いたわけではないと、あわてて伝えようとするが────。

 

 

「アポロノームは相変わらず姉上を困らせているようですね?」

 

 と、不機嫌そうに小言を言う別の女性がアポロノームの後ろから現れた。

 その声の(ぬし)に覚えのあるアポロノームはビクッと肩を跳ねさせながら声の(ぬし)の名を告げる。

 

「げぇっ!アルデバランの姉貴!?」

 

 アンドロメダと一部を除いてそっくりな出で立ちだが、ピシッとした立ち姿と眼鏡を掛けたやや吊目気味の双眸が、お堅い雰囲気を醸し出していた。

 

「まったく、いつ出撃命令が出てもおかしくないというのに、貴女ときたら」

 

「勘弁してくれ!こんな時までアルデバランの姉貴の説教は受けたくねぇよ!つーか、そっちこそなンでここにいんだよ?」

 

「愛する我が姉上のお美しいご尊顔を拝する為。それ以上の理由などありますか?」

 

 澄ました顔でハッキリいけしゃあしゃあとそう言われて二の句が継げなくなるアポロノーム。

 

 そんな妹の姿を尻目に、アルデバランはアンドロメダの前に立つと、恭しく片膝をついて跪いた。

 

「アルデバラン、出撃前のご挨拶に参りました」

 

 それっぽい口上を述べているが、本心をついさっき言っておきながら堂々としている。だが嘘は言っていない。

 

 普段通りといえば普段通りだが、とはいえ今さっきアポロノームに述べた発言と相反する物言いに、当のアポロノームは大いに肩を竦めた。

 

 だがアンドロメダは、可愛い妹の茶目っ気であるとして、特段気にする素振りは一切見せなかったが、普段より強張ったアルデバランの顔を見て、彼女の心の内を察した。

 

「貴女も緊張している様ですね?アルデバラン」

 

 その指摘に気恥ずかしそうに顔を赤らめるアルデバラン。

 

「流石は姉上です。わたくしの心中などお見通しの様で感服致しました。不肖アルデバラン、姉上のおっしゃる通りいささか緊張しております。ですがこのアルデバランは姉上の御為(おんため)に粉骨砕身の覚悟で戦いに挑む所存であります。愛しき姉上の為とあらばたとえ火の中、水の中、如何なる戦場であろうとも喜んで馳せ参じ、愛するあなた様の下へと勝利をもたらしてご覧にいれましょう。愛しております姉上。わたくしの身が───!?」

 

 主砲の全力速射の様に語り続けていたアルデバランだが、不意に自身の顔がやわらかい物に包まれる感触がしてその語りを中断した。

 

「そう無理して気負わなくても大丈夫ですよアルデバラン。貴女は私よりも優秀な娘です。いつもの様に落ち着いてやれば、貴女なら出来ます。私が保証します。ですからもっと自分に自信を持ってください」

 

 アルデバランの頭を自身の胸に抱き締めて撫でながら、優しくそう語りかける。

 

 アンドロメダの言葉に嘘偽りは無い。事実谷艦長との相性の良さも相まって演習等の成績はアルデバランが僅かではあるが、アンドロメダよりも良かったのである。

 

 だが当のアルデバランはアンドロメダの胸に抱き締められ、しかも頭を撫でてもらっている事で完全に舞い上がってトリップ状態になってしまい、アンドロメダの言葉が耳に入っているかはかなり怪しいが…。

 

 一頻り撫で続けるとアンドロメダはアルデバランを放したが、アルデバランは未だ凄く惚けた表情で余韻に浸っていた。

 

 

「ハハッ!姉さん達も相変わらずですな」

 

「ねえさま~」

 

 そこにまた別の二人が現れ、一人がアポロノームに抱き付く、寸前で向きを変えてアンドロメダに抱き付く。

 

「アキレスにアンタレスも。いらっしゃい。来てくれて嬉しいわ」

 

 抱き付いてきた今現在の就役艦では末の妹であるアンタレスを抱きとめながら、もう一人の妹アキレスに微笑みかけた。

 なんだかんだ言って、今この宙域にいるアンドロメダの妹達が全員集った。

 

 

 その後は特に他愛の無い会話だったが、姉妹がこうして揃うのも久し振りのために、どことなくリラックスした雰囲気が流れるが、それでも時局が時局なだけに、次第に会話の内容はこの戦争に関する最近の話題へとシフトしていく。

 

「ハッキリ言わしてもらうと、錬成途中の兵でまだマシな連中を総ざらいしているんだ。それでも足りねぇからとガミラスの機械人形まで動員している有り様だ。予備の人員は期待出来ねぇし長期戦は難しいだろうな」

 

 そう語ったのはアキレスである。彼女はアンタレスと共に集結命令が下りる直前まで教練宙域で新編成された部隊の訓練を見ていた。

 

「なのDEATH!って言いながら、僚艦とごっつんこしかけた娘達もいたわ~。見ていてヒヤヒヤものですよ~」

 

 一同同時に溜め息が漏れる。

 

「こう言っちゃナンだがよ、時間断層、あれ便利なのは分かるがもて余し気味じゃねぇか?」

 

 そう吐き捨てるようにアポロノームは言う。

 

 

 『時間断層』

 

 

 イスカンダルから譲渡された惑星を再生する驚異のオーバーテクノロジーの塊とも言えるシステム、『コスモリバースシステム』がもたらした副産物。

 

 その空間の内部では外部と比較して時間の流れが10倍の速度で進む。

 

 その特性を利用して地球はそこに一大()()工廠を建設した。

 

 この宙域にいるアンドロメダ姉妹を初めとした軍艦全て、この時間断層工廠で建造された。そして今も次々と新造艦が建造され続けている。

 

 だが軍艦が10倍の速度で出来ても人間(ヒト)の錬成は一朝一夕にはいかない。

 

 なら時間断層の中で訓練をと思うかもしれないが、事はそう簡単には行かない。

 

 人間(ヒト)がその空間の特性に耐えられないのだ。

 

「乗る人間(ヒト)がいないのに、(ふね)だけは吐き出され続けている…」

 

 悲しそうな表情でアンドロメダはそう呟いた。そしてそのセリフは奇しくも自身の艦長である山南艦長が戦後に呟いたものと同じだった。

 

「となりますと~、やはりあの話も本当のようですね~。私嫌ですよ~、誰もいない寂しい無人の艦隊なんて~…」

 

 アンタレスのおっとりしながらもどこか怒りとも諦観とも取れる物言いに、全員の顔が曇る。

 

 人間(ヒト)が足りなければAI制御の無人艦にすればいい。間違ってはいないが、なんとなくその考えに嫌悪感があるのだ。

 

「時間断層有る限り戦力は無尽蔵と芹沢さんは周りに言って勇気づけてはいるがな…ありゃ半分自分に言い聞かせているみたいに思えるよ」

 

「色々と言われている方ではありますが、長く軍政畑にいらした方です。薄々勘づいてはいるのでしょう…」

 その論理の落とし穴に。とは皆まで言わなくとも全員が認識していた。

 

 10倍の速度で生産出来ると言うが、それはすなわち10倍の速度で予算と資源を消費すると言う事でもある。

 

 そんな資金、ガミラス戦役の影響で国力が大きく落ち込んでいる今の地球のどこにあると言うのか?

 

 

 有るわけがない。

 

 

 殆どガミラスからの借款である。

 

 資源も太陽系内の資源地帯だけでは到底間に合わず、ガミラスから譲渡された資源惑星から輸送船が引っ切り無しに行来している。

 

 その護衛は?軍拡著しい地球連邦防衛軍であるが、その実情はいわゆる地域海軍の域を出ていない。必然的に外洋海軍ともいえるガミラス国防軍に依存している。

 

 波動砲艦隊などという物々しい名前の艦隊を整備しているが、その中核をなすDクラス前衛武装航宙艦、いわゆるドレッドノート級主力戦艦は強力な武装のわりに小さな艦体からモニター艦と揶揄されたり、地球連邦防衛軍の顔とも言えるアンドロメダ級は実質海防戦艦の類いだと一部から言われるほどに外洋での作戦遂行能力が低い。

 これは地球連邦の国防戦略方針が、太陽系内及びその近傍宙域のみを主だった作戦行動範囲として設定して作成されている事に由来しているのが大きい。

 遠洋航海に必要な装備機能を簡素化し、そのリソースを武装の充実に回している。

 そのために外洋での護衛任務に就ける(ふね)がそもそも無いに等しかった。

 

 

 輸送船だって地球連邦が保有する全ての輸送船を洗いざらい掻き集めて動員したとしても、とても足りないし、そもそも恒星間航行可能な船の存在自体が地球ではまだまだ貴重と言っていいほど少なかったから、ガミラスの企業や船会社からレンタルしている有り様だ。

 

 さらに言えば時間断層工廠であるが、設備の維持管理や作業工員としてガミラスの勢力圏で多用されているガミロイドと呼ばれるアンドロイドが使用されている。場所の特性故にそれはやむを得ない。

 そのガミロイドだが、今この宙域に集結している艦隊の(ふね)の中には不足する人員の代わりとして乗り込んでいるのだが、新しい(ふね)ほどその比率が大きくなっている。

 さっきアキレスが言ったガミラスの機械人形とはこのガミロイドの事である。

 

 この戦争、裏では何から何までガミラスに頼りきりというのが実情だった。戦争遂行の為に地球はガミラスに借りを現在進行形で大量生産している真っ最中なのだ。

 

 そのため、口さがない者の中にはこの戦争がガミラスの代理戦争だと言って憚らないのもいる。

 

「こんなんで大丈夫なんかねぇ?地球の、人間(ヒト)の未来は…?」

 

 その呟きに答えられる者は、この場にはいなかった。

 ただ皆漠然とした不安が胸の内に(くすぶ)っているのは確かだ。

 

 しかし、やはり同じ姉妹というだけあってか、考える事は似か依るものなんだとアンドロメダは少しだけ心が暖かくなった気がしたが、現実はそんな暖かさを吹き飛ばすほど、残酷で厳しいものであるとも自覚している。

 

 

「我々は何処から来たのか、我々は何者か、我々は何処へ行くのか。それは神ならざる私達には分かりませんし、ましてや人間(ヒト)ならざる道具でしかない私達に人間(ヒト)の行く末をどうこう出来る訳ではありません。出来る事と言えば、ただ祈るのみです」

 

 

 あまりにも諦観しきった姉の姿に、妹達は何も言えなくなる。

 今ほど世界の事象に対して干渉する事が何も出来ない自身の体が、これ程までに恨めしいと思った事はないと苦虫を噛んだかの様な苦り切った顔になってしまう。

 

 特に、何をおいても姉の事が一番で、ほかの誰よりも愛しており、崇拝していると言って憚らないアルデバランにとって、そんな姉の姿を見るのが何よりも辛かった。

 そのため、話題を変えるべきと考えて頭を巡らすと、ふとある事を思い出した。

 

「そう言えばアポロノーム、姉上になにやら気になる事を聞いていたようですが」

 

 急に話題を振られて一瞬何の事だと訝しむが、直ぐに「ああ、あれか」と思い出す。

 

「別に大したことじゃあねぇし、深い意味があった訳じゃ無いンだが、姉貴はガト公共をどういう連中だと思ってんのかと聞いてたんだ」

 

 その答えにアルデバランは「成る程、確かに興味深い内容ですね…」と自身の顎に手を当てながら返す。

 

 ほかの二人も肯定的な態度を示し、アンドロメダに視線を向ける。

 

 妹達の視線が一身に集まった事に、何だか気恥ずかしい気分になるが、自身の考えを妹達に語った。

 

 

「一言で言えば、『理不尽』。『理不尽』という概念がヒトのカタチを成して徒党を組んだ存在…かな?理不尽が蛮ぞ……こほんっ。彼らの行動の根底であり理念。それを前提に考えれば、色々と説明が付きます」

 

 

 アンドロメダの答えに、それぞれの反応を示すが、共通として言えるのが『納得』だった。

 

「確かにね~。かあさまに対していつも破廉恥な事ばかりしてたと聞きましたし~」

 

「確かにな。思い返すだけでもハラワタが煮え繰り返る」

 

 アンタレスの言葉にアキレスも同意する。余程腹に据えかねていたのか、拳を自身の手のひらに打ち付ける。

 

「母さんへの仕打ちを見りゃ、ガト公共の異常性が良く分かるぜ。戦時中のガミラスの比じゃねぇよ。クソがっ!!」

 

 罵る様に吐き捨てるアポロノームの姿に、アルデバランも同意する。

 

「まったくですね。わたくしも母上が受けた破廉恥極まりない彼奴らの行いの数々には憤りを隠せません。もしもそれが愛する姉上に対して行われたとしたら、わたくしは正気を保てる自信がありません。それに対して、母上を最も愛されておられます姉上は取り乱すこと無く冷静を保っておられましたことに、わたくしアルデバランは流石は姉上と驚嘆した次第であります」

 

 アルデバランの表裏の無い称賛に、何だか申し訳なさそうに顔を僅かに赤らめて視線を反らすアンドロメダ。

 

 その姿に妹達は頭に「(はてな?)」を浮かべるが、唯一事情を知るアポロノームはニヤニヤしながらワケを喋る。

 

「いやいや、姉貴は影で滅茶苦茶荒れてたぜ。それこそ母さんを追って勝手に飛び出すんじゃねぇかとヒヤヒヤするくらいのスッゲー荒れっぷりだったぜ」

 

「ちょ、ちょっとアポロノーム!それは内緒にしてってあれほど!…あっ!!」

 

 アポロノームのカミングアウトにアンドロメダは普段の落ち着いた雰囲気をかなぐり捨てて取り乱すが、それが逆に自爆を招いてしまい、今までに無いくらいに顔を真っ赤にして俯き、手をワナワナと震わせる。

 

「うう~。ヤマトさ…、お母様に知られたら何て言えばいいのよ~」

 

 ヤマト叛乱疑惑事件で追撃に赴いただけに、また総旗艦たる立場上、ヒト前でははしたない真似をしないように心掛けていた。

 

 その努力が今脆くも崩れ去ったのだが、それよりも自身にとって母親とも言える最愛のヤマトからの評価の方が気になった。

 

 あの時、本当は一緒に付いて行きたいという本心を必死に隠しながら、総旗艦としての立場と責務を貫いて啖呵を切っていただけに、その羞恥は並々ならぬものだった。

 

 穴があったら入りたいとはこの事かと言わんばかりに耳まで赤く染まったアンドロメダを、アルデバランが慰めに入る。

 

「姉上。姉上は何も間違ってはおりません。ヒトには時として許せない事、譲れない思いが必ずあります。母上の事で姉上がお怒りになられたのも、それは姉上が誰よりも優しく慈悲深い心と愛情の持ち主だからです。姉上が母上を大切に思い、愛しておられる事をわたくしは良く存じ上げております。わたくしはそんな姉上を誇りに感じておりますし、姉上の妹で良かったと歓喜に打ち震えております。ですがあえて欲を言わせていただきますと、その愛をわたくしにも向けていただけたらと思う所存であります」

 

 若干、我欲が漏れだしてはいたが、それはいつもの事なので皆無視してアンドロメダの慰めに加勢する。

 

「母さんだって母さんの譲れない思いで地球を飛び出したんだ。姉貴にだってそれが受け継がれていたってだけの話さ。母さんも別に気にしないさ」

 

「姉さんの言う通りさ。寧ろ誇っているんじゃないですか?」

 

 アポロノームとアキレスは気にするなと言って慰めるが、アンタレスだけは違う切り口で挑んだ。

 

「アンドロメダねえさまは無理して自分の気持ちを押し隠そうとしますからね~。時には感情を表に出して発散させないと辛いのはねえさまですよ~」

 

 それに関して他の妹達も頷いて同意の意を示した。

 

 アンドロメダは性格柄、抱え込みやすい。いつか耐えきれなくなって爆発するんじゃないかと、常日頃心配していたのだ。

 これを機会にと妹達は口々にその不安をアンドロメダに告げた。

 

 

 妹達の気遣いに、アンドロメダは申し訳ない気持ちになるが、それ以上にその優しさに嬉しく思う気持ちが強かった。

 

 特にアンタレスの忠言は心に響いた。

 

 間違いやおかしいと思ったのなら、忠言する事も大切であるとアンドロメダは考えているし、何よりそれは地球艦隊の皆が尊敬して止まない今は亡きヤマト初代艦長、沖田十三宙将が生前に語ったとされる────

 

『命令に逆らう、

軍人としては間違った行動だ。あってはならない…

だが、軍人であっても一人の人間として行動しなくてはならん時もある。

人は間違いをおかす…もし、それが命令であったとしても、

間違っていると思ったら立ち止まり、自分を貫く勇気も必要だ。

そうわしは思う。』

 

────という教えに沿うものだ。

 

 

 余談だが、アンドロメダを初めとした新世代型地球艦はヤマトのノウハウを継承して造られたという経緯から、ヤマトを母として慕っている。

 ヤマトを母とするなら、父は初代艦長である沖田十三だと考えていた。

 アンドロメダも沖田艦長の事を「お父様」と呼んで慕っている。

 

 父と慕う人物の教えに沿う忠言を無碍には出来ない。

 

 それに皆を心配させていたという己の浅慮を恥じた。

 

 兵器や道具とはいえ、その時その時で調子が違う時があるだろう?それらにも彼女達の様な魂があり、そのメンタルが作用しているからだ。

 

 アンドロメダの事で一抹の不安を抱かせたままでいたなら、この後の戦いに悪影響を与えていたかもしれない。

 

 そう思うと妹達に迷惑をかけてしまったと自責の念に駆られて頭を下げて詫びたが、皆に気にし過ぎと逆に怒られて、笑いが溢れた。

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 艦隊全艦に警報が響き渡り、続けて全艦放送で山南司令の号令が飛ぶ。

 

 

作戦に変更無し!全艦、ワープ準備!!

 

 

 遂に、奴等が、ガトランティス(蛮族共)が来たのだ。

 

 

 その直後に地球圏全域に向けて地球連邦大統領による緊急声明を伝える緊急放送のライブ映像の音声が流れる。

 

 

「地球連邦は本日未明、ガトランティスとの開戦に踏み切りました。今日(こんにち)の地球の戦力は、ガミラス戦役時の比ではありません!必ずや地球市民の生命(せいめい)、財産、国土を守り抜き、明日の未来を勝ち取ってくれるでしょう」

 

 

 

「…いよいよですね」

 

 

 アンドロメダはその放送を聞き流しながら、妹達を見渡す。

 

 皆真剣な面持ちへと変わり、アポロノームとアキレスに至っては好戦的な笑みを口元に湛えていた。

 

 その姿に笑みを浮かべると、一人一人順番に抱き締めてからアンドロメダも表情を引き締める。

 

 

「事ここに至って、多くは語りません。敵は未だ多くの謎があり、戦いは間違いなく厳しい物となるでしょう」

 

 

「ですが、それでも勝たねばなりません。お父様が言われた様に、たとえ最後の1人になっても絶望はしない。その気概で挑みましょう!!そして今日(こんにち)まで孤軍奮闘を続けて来られたお母様の労に報いる為にも、必ず勝利の報を地球とお母様にもたらしましょう!!」

 

「「「「はいっ!!」」」」

 

 

 これが、アンドロメダ達五姉妹が集まった最後の時となった─────。

 

 

 この後の土星沖海戦で、地球艦隊は惨敗を喫した。

 

 

 その戦いでアンドロメダは大破し、アポロノームは、二度と地球へと戻って来ることはなかった──────。

 

 

 

「へへっ、すまねぇ姉貴…。俺ぁここまでだ…。だがせめて、姉貴だけでも…っ!!」

 

 

 大破した影響で一時的にエンジンが停止したアンドロメダを、アポロノームが身を挺して助け出した。

 

 だがそのアポロノーム自身もまた深手を負っており、まさに最期の気力を振り絞って姉を助け出したのだ。

 

 

「姉貴、地球の事を、よろしくな…」

 

 

 そう言い残して、アポロノームは焔へと消えて逝った。

 

 

 爆煙に包まれ、その焔に消える瞬間まで、敬礼し、微笑みを浮かべながらアンドロメダを見送って逝った────。

 

 

 

 

 

「いやああああああああぁぁぁーーーーーッ!!」

 

 

 

 

 

 アンドロメダの悲痛な慟哭が響き渡った───。

 

 

     ─────────

 

 

 

 

 アンドロメダにとってガトランティスとは?

 

 

 『理不尽』

 

 

 理不尽がヒトの形を成し、徒党を組んで全宇宙に破壊と不幸をもたらす。

 

 

 ヒトに理不尽極まりない選択をさせ、それでいて全てを破滅の谷底へと突き落とし、それに苦しむ様を見て悦に浸る野蛮の徒。

 

 

 そして、全てを奪っていく。

 

 

 

 あの時、アポロノームが逝ってから誰も笑わなくなった。

 

 

 ガトランティス(蛮族共)は私達から笑顔を奪い去った。

 

 

 

 あの時、あの時エンジンが止まらなければ、いや、再起動がもっと早ければと何度悔やんだことか。

 

 

 だがいくら悔やんでも、時間は巻き戻らない。アポロノームは私達の所へは帰って来ない。

 

 

 妹達は私に責任は無いと言ってくれた。それが逆に辛かった。

 

 

 

 私達は、徐々に心に潜む復讐と言う名の『魔』に取り憑かれていった。

 

 

 復讐の鬼へと変貌していく妹達に、私はどうすることも出来なかった。

 

 

 そして追い討ちを掛けるかの様に、遂にはお母様、愛するヤマトさんまでガトランティス(蛮族共)は魔の手にかけた!!

 

 

 その時、私の心の箍が外れた気がした。

 

 

 私も復讐の鬼へと変貌していった。

 

 

     ──────────

 

 

 私はガトランティス(蛮族共)が嫌い。

 

 

 

 私のヤマトさんを悲しませた!

 

 

 

 私はガトランティス(蛮族共)が憎い!

 

 

 

 私達からアポロノームを奪った!

 

 

 

 私達姉妹から笑うことを奪った!

 

 

 

 私からヤマトさんまで奪った!!

 

 

 

 戦争だから?そんなこと、知ったことかっ!!

 

 

 

 奪うというならば、奪われる覚悟は当然あるだろう!?

 

 

 

 ならば私も鏖殺して(奪って)やる!!徹底的に!!

 

 

 

 

     ─────────

 

 

 

 アンドロメダの心に宿った復讐の炎は、火星沖でのヤマト救出によって大きく鎮火され、また異世界に転移したという未知の超常現象や、その後の深海棲艦達との出会い等の影響で頭が一杯一杯になったのと、特に天真爛漫、天衣無縫を絵に描いたような明るく接してくる駆逐棲姫と過ごしていく内に、心がかなり揉み(ほぐ)されたことが大きい。

 そして何よりこの世界にガトランティスがいないのだから、復讐の必然性が無くなった。

 

 だが、だからといってアンドロメダの心に宿った復讐の炎が、完全に無くなっていたわけではなかった。

 

 心の奥底で僅かに(くすぶ)っていたほんの小さな火種が、ガトランティスの存在の可能性という可燃物に反応して、爆発してしまったのだ…。

 

 

     ─────────

 

 

 3連装4基12門の収束圧縮型衝撃波砲(ショックカノン)から橫薙ぎのスコールの如く撃ち掛けるショックカノンの陽電子ビームが悉く南方棲戦姫(目標)手前で消される。

 

 それでもアンドロメダは砲撃の手を緩めない。

 

 完全に頭に血が昇り、普段の優しい微笑みを湛えた顔は憤怒に歪み、瞳はどろりと濁り、溢れた怒りで途轍もない殺気を放ち、口元は犬歯を剥き出した獰猛な表情へと豹変していた。

 

 

 そしてショックカノンの効果が無いことに、さらに怒りが増幅されていく。

 

 また時折、反撃の砲弾が飛来してくるが、直撃する物は全て波動防壁が弾き返していたが、それすらも今のアンドロメダには怒りへと繋がってしまっていた。

 

 

「おのれ…!」

 

 その声はまるで、地の底から響くような、怨嗟にまみれたものだった─────。

 

 

波動砲、発射用意!!

 

 

 遂に、出してはならない禁断の命令を発してしまったその瞬間───

 

 

 

 

「狼狽えるな!!」

 

 

 この海域全てに響き渡る様な男性の怒声に、アンドロメダだけでなく、深海棲艦達も驚いて動きを止めてしまう。

 

 

 

 

「そんな…今の、声は……」

 

 

 その声が誰の声かを知るアンドロメダは、その有り得ない事実に呆然としてしまう。

 

 

「おとう…さま…?」

 

 




 まさか一万文字突破するとは…。


 少し今回はいつも以上に無理矢理感があるような…。それでいて矛盾が発生していないかがちょっぴり怖い…。

 時間断層関連は以前から思っていた疑問をや想像した問題点を書き連ねました。
 カットしましたが、ガトランティスが通商破壊を行ったことで生産に支障が出たり、フル稼働の影響で設備に故障が相次いだりとか、ガトランティスは通商破壊するつもりはさらさら無いけど地球・ガミラスはそんな事分からないから迂回航路を設定し、その影響で輸送ダイヤが崩れたりして原材料に不足が発生したりという話も入れたかったですが、泣く泣く削りました。て言うかそんな話に需要ありますかね?ガミラスへの借金疑惑とか…。
 個人的に、どう転んでも地球は時間断層工廠は手離さざる終えなかったんじゃないか…。借金の担保で…。すっごい世知辛い話ですけど、結局小国の悲しさは勝っても敗けても外国の食い物にされるリスクはどちらも大して変わらないという事実…。勝っても支援した国への借りの返済で首が回らなくなる…。


 一番最後の、多分誰の声かはバレバレですよねぇ…。



アンドロメダ姉妹解説

AAA-3 アポロノーム
 外観のイメージキャラクターは艦これのフフ怖さんこと軽巡艦娘の天龍さん。
 ボサボサ髪で軍帽は斜めに被り、制服は着崩している。
 艦長の安田俊太郎さんが某MMDにて乗艦していた村雨型宇宙巡洋艦の艦名が天龍だった事から、アポロノームは天龍さんでなくてはならないとの使命感に駆られました。身長はアンドロメダよりも4㎝高い194㎝。
 一人称は「俺」。姉に対しては「姉貴」か「○○の姉貴」。妹は名前で呼ぶ。ヤマトに対しては「母さん」。
 ちなみに五姉妹の中である部分が一番デカイ。


AAA-2 アルデバラン
 外観はアンドロメダ似のやや吊目で眼鏡を掛けているのが特徴。
 お堅い感じだが、姉のヤマト大好きに似たのか重度のお姉ちゃん大好きっ娘。ただ好きすぎて最早崇拝や信仰に近く、麾下の艦隊の娘達にアンドロメダの素晴らしさを布教している残念美人。しかし仕事はキッチリとこなしている。
 最初は銀英伝のムライ中将をイメージした姉妹の纏め役にするはずだったが、何時の間にやらシスコン艦になってもうた…。書いてて一番キャラが暴走してしまったけど書いてて一番楽しかった。
 一人称は「わたくし」。アンドロメダに対しては「姉上」。妹達には名前で呼ぶ。ヤマトに対しては「母上」。
 五姉妹の中で一番小さい。

AAA-4 アキレス
 外観のイメージキャラクターは艦これの木曽。軍帽は斜めに被っているのが特徴。アポロノームとは違い、制服はちゃんと着ている。
 アンドロメダの事が好きだが、どちらかと言えば姉妹愛の延長線上みたいな感覚。姉妹の中で一番真面(?)なのだが、そのせいか一番影が薄いのでは?と悩んでいる。
 一人称は「オレ」。姉に対しては全員「姉さん」。妹は名前で呼ぶ。ヤマトに対しては「お母さん」。
 五姉妹の中で二番目に小さい。 


AAA-5 アンタレス
 外観のイメージキャラクターは艦これの天龍型の怖くて可愛い方さんこと龍田さん。ただし外観のみで性格はやや幼くてイタズラ好き。語尾が間延びしたおっとりとした喋り方が特徴。
 同じ空母型であるアポロノームの事が大好きだが、そのイタズラ気質からか素直でない。ただ同じくらい長姉アンドロメダのことも好きな為によく甘えている。
 一人称は「私」。姉全員「ねえさま」と呼ぶ場合が多いが「○○ねえさま」と呼ぶ場合もある。ヤマトに対しては「かあさま」。
 五姉妹の中で二番目にデカイ。

AAA-1 アンドロメダ
 我らが主人公ながら、実は外観イメージは特に決めていなかった。そのために今回改めて再設定。結果イメージとしてはグレネーダー微笑みの閃士の主人公、天道琉朱菜(アニメ版)を髪の毛の長さを腰よりやや上にまで短くして、後ろで纏めている。大きな出ている所を少し小振りにした姿が近いかな?これに伴い、プロローグ後書きのアンドロメダ紹介文を一部変更。
 一人称は「私」妹達は全員名前で呼ぶ。ヤマトに対しては「お母様」か「ヤマトさん」。
 五姉妹の中で真ん中の大きさ。


特別出演

カトリ カシマ

 練習艦と言ったらこの二人でしょう。というか気付いたら出ていた。


なのDEATH!

 なのDEATH! 





 今回はここまでとなります。参考や励みになりますので気が向きましたら、お気軽に感想をよろしくお願い致します。

 それではまた次回。

アメリカ大統領選挙のイメージは?

  • 直接選挙
  • 間接選挙
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