艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり 作:稲村 リィンFC会員・No.931506
後半ネタバレです。
ちょっと本編で悩みが発生した為に気晴らしを兼ねて作りました。まあ少々時系列やら描写に強引な点がありますが、ご了承下さい。
「わざわざすまないねぇ、ユウナギ…。あんたも大変だっただろうに…」
寂れた古いドックにその
「…いえ。この程度、
ガミラス戦役後に就役した改金剛型宇宙戦艦の一隻であり、一時期『ヤマト』クルーが主要メンバーを務めていたユウナギが、目を伏せながら呟くような掠れた声で返した。
アンドロメダ
その報を目の前にいる女性、キリシマに伝えるために、ユウナギはここに来た。
キリシマはヤマトがテレザートへと旅立つ際に、乗組員をヤマトの元に届けて見送ってから、徐々に体が動かなくなりつつあった。
元々まともに整備されること無く、ガミラス戦役後からずっと地下ドックに放置されていたのを稼働させた為に、遂にガタが来てしまったのだろう。
それでも最後に、軍の馬鹿共に一泡吹かせ、再びヤマトの旅立ちを見送れたことで、キリシマは内心満足していた。
だが最近では車椅子で移動することもままならず、この艦長席でずっと座っている毎日である。
そのためどうしても外界の事に疎くなってしまい、時折誰かが報告と話し相手も兼ねて彼女の所に訪ねて来ていた。*1
今回の事は、本来ならば帰還を果たしたアンドロメダ姉妹の三人の内誰かが伝える事となっていたが、あまりにも損傷が激しすぎて動く事がままならず、*2代理としてユウナギに白羽の矢が当てられた。
そのユウナギ自身も、先のガトランティス戦役最終血戦に参加した際に大破した己の艦体の状態を
「そうかい…。あの娘にまで、私ゃ先を越されちまってたのかい…」
そう語るキリシマの頬に一滴の水滴が流れたのを、ユウナギは見逃さなかった。
「
「涙なんて、とっくに枯れちまったと思っていたよ…」
暫し流れる沈黙────。
「久しぶりに夢を見たんだ。あの娘と初めて会ったときの夢さ」
「あの娘、初対面の私への第一声がおばさんだったんだよ?」
「面食らったもんさ。まったく失礼な娘だねぇって…」
泣いているとも、笑っているとも言える顔で語るキリシマに、ユウナギは何も言えなかった。
「…ユウナギ」
「はい…」
「すまないけど、しばらく、私を一人にしてくれないかね…」
艦橋に一人残されたキリシマは俯くと、
「コンゴウ姉さん…、ハルナ姉さん…、ヨシノ姉さん…、ミョウコウ姉さん…、ヒエイ…、ヒュウガ…、フソウ…」
かつての航宙自衛隊時代から共に艦列を並べて宇宙の海を行き、ガミラス戦役で
「ムラサメ…、ユウギリ…、アブクマ…、ヤクモ…、アタゴ…、ツルギ…、クラマ…、イブキ…、ナチ…、ムラクモ…」
ガミラスとの初接触で沈められ、メ号作戦で全滅した村雨型宇宙巡洋艦の娘達…。
「テルヅキ…、シマカゼ…、アヤナミ…、シキナミ…、イソカゼ…、カゲロウ…、タチカゼ…、フユツキ…、ミナツキ…、シラヌイ…、ハツシマ…、アヤセ…」
カ2号作戦終盤でキリシマを庇ってガミラス艦と刺し違えた、沖田司令のご子息が艦長だった
「ユキカゼ…」
地球の事を託して、しんがりとしてガミラス艦隊へと単艦突入して逝った娘…。
「スラヴァ…、メチェーリ…」
歴史から抹消された、恩人でもある旧ロシア軍事宇宙艦隊最後の
止めどなく、懐かしい名前が出ては、その顔が頭の中で鮮明に蘇り、消えていく────。
そして永遠に続きそうな
「みんな…」
「…私は、私は後何人、見送ればいいんだい?」
「後何人に先立たれたら、私は
「今度は私の可愛い教え子が、
キリシマの肩がワナワナと震えだした。
「馬鹿…。あんたまで死に急ぐことは、無かったじゃないか…、若いの…」
堰を切ったかのように、キリシマの瞳からは先ほどと比べ物にならない大粒の涙が溢れ出していた。
「アンドロメダ…、あんたは大馬鹿者だよ!!残される者の気持ち、あんただって嫌というほど味わっただろう!?」
土星から帰還した際に、一度だけだがアンドロメダはキリシマの元を訪れていた。
その姿は、色々なものを見てきたキリシマをして、見ていられないほどに憔悴しきっていた。
「馬鹿…、馬鹿…!」
「なんで…、なんでみんな…、みんな私を置いて先に逝っちまうのさっ!?」
キリシマの慟哭が艦橋の中で木霊しては、消えていく───。
「…私ゃぁ、もう疲れたよ」
この日を境に、キリシマの衰弱は激しくなって行った────。
それから暫くして────。
「ああ、ヤマト…、かい…?」
地球へと帰還を果たしたヤマトは、いの一番にキリシマの場所を訪れたが、キリシマの変わり様に言葉を失った。
キリシマは、ほとんど骨と皮だけの痩せこけた姿となってしまっていた。
「遅かった、じゃないか…?あまりにも、遅いから…、あんたも
ヤマトは遅くなった事を詫びようとしたが───。
「すまないねぇ…、折角、来てくれたのに、お迎えが、来そうなんだよ…」
いや、漸くと言うべきかねぇ…。と力無く笑いながら語る。
そのキリシマの言葉に、ヤマトはさらにショックを深める。
もうこの時キリシマの目はほとんど何も見えず、耳も僅かに聞き取り辛くなっていた。
色々と話したかったが、ヤマトは短く己の決意を語った。
「私は、あの娘の分も、
そのヤマトの決意に、キリシマは短く「…そう、かい」とだけ答えて、僅かに微笑みを浮かべた。
「ヤマト…、背負い、すぎるんじゃ、ないよ…」
その言葉を最後に、キリシマの姿はヤマトの目の前で光の粒子となって、消えて逝き始めた───。
「キリシマさ─!──娘は─あの娘──────!!」
消えて逝くキリシマの姿を見たヤマトは、慌てて何かを伝えようとしたが、その言葉がキリシマに伝わることは無かった────。
この日、激動の時代を戦った、一隻の古びた宇宙戦艦の解体が決定され、その
…どこだいここは?
ここが死後の世界ってヤツなのかい?
ん?あんたは!?
久しいじゃないか…。いや、あんたにとっては初めましてだったね。
まさかあんたが出迎えに来てくれるなんてね…。
…なンだって?
はぁ…。あんたは死んだ後でも無茶を言うんだねぇ…。
はんっ!謝んなくたって
それで?頼みってのは?
なるほどねぇ…。
まったく誰に似たんだか、あの娘もあの娘で相当難儀な娘だねぇ…。
あんたが心配するのも分かるよ。
まあいいさ。引き受けるよ。
水くさいこと言いなさんなって!他ならぬあんたの頼みさ、無下にはしないさね!
それに、よく言うだろう?手の掛かる娘ほど可愛いって。
…ああ。伝えとくよ。
私もあの娘の事は好きだし、出来れば
はは!別に良いじゃないか!私達はあんたと違い人間、じゃあないんだよ!
あの娘が誰を好きになろうとも、例えそれが人間サマの敵であろうとも、それはあの娘の自由さね!
…じゃあね。会えて嬉しかったよ────
沖田さん──────。
日本海軍外洋防衛総隊小松島鎮守府敷地内
そこにはイレギュラーが居た。
色々と規格外であるが為に、新人からは近寄りがたい存在として恐れられているが、古参の者達からは親しみを込めて「先生」と呼ばれている。
だが何故先生なのかは、実は誰にも良く分かっていなかった。
とは言えその呼び名が既に定着してしまっている以上、疑問に思っても誰も変えようとはしなかった。
そしてそのイレギュラーは
そのイレギュラーが今、鎮守府のトップに呼び出されて執務室へと続く廊下を一人の艦娘に車椅子を押されながら進んでいた。
その手には、広島から送られてきた資料が握られているが、記載された文章はほとんど無視してずっと写真の部分ばかりを見ていた。
「…やっとお出ましかい?」
「え?」
「いや、なんでもないさね。ただの独り言さね」
「(まったく、遅かったじゃないか…。若いの…。)」
「(母親に似て、ヒトを待たせるのが得意だねぇ…)」
「(だがこれでようやく、約束が果たせる…)」
この日、なんだかとても上機嫌な先生、イレギュラーな艦娘とされるキリシマの姿が目撃されたと、とある記録に残されていた。
以前ちらっと出しましたイレギュラー、そして『小松島の裏ボス』とはキリシマさんでした!
キリシマさんが先に来ていました!キリシマさんがこの世界に現れた時の詳細はまたいずれ本編で語ります。
ユウナギはちょい役で出て貰いました!本当ならばそのシーンもヤマトさんの予定でしたが、時系列的にヤマトさんが地球にいない時期でしたので急遽登場していただきました!なお、本編では登場の予定は今のところございません。
それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。