艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 思い付きで急遽作成!


 アンドロメダがやって来る以前の、とある日の一幕。


 色々考えました結果、キリシマさんを喫煙者とすることとしましたが、私自身が非喫煙者な為に描写的におかしなところがあるかもしれません。


 思えば私、キリシマさんに一発殴られても文句言えない。


閑話8 紫煙

 深夜、雨の降る小松島鎮守府のとある喫煙室。

 

 

 艦娘といえども、その姿形が人間と酷似しているのと同様に、人間と同じ様な精神構造をしており、それぞれが個性豊かな喜怒哀楽の感情を有している。

 

 だが、感情があるということは、人間の兵士と同じく過酷な戦場に身を置く以上、何時沈む(死ぬ)かわからない恐怖や不安といった強いストレスに晒される。

 

 朝に挨拶を交わし談笑しながら朝食を食べ、共に戦場を駆けていた戦友が、夕方には物言わぬ身になっていた。

 

 

 それは明日の我が身かもしれない。

 

 

 そういったストレスから一瞬でも気を紛らわす為に、人間の兵士達と同じ様に煙草に手を出す艦娘も少なからずいた。

 

 

 第三次大戦以前は世界的に禁煙化が押し進められ、軍隊でも禁煙の波が押し寄せていたが、大戦時には逆にそれが裏目に出て薬物汚染が急激に拡大。

 

 一例として、大戦中のアメリカ軍は兵士の21%が薬物中毒だったと、戦後に国防総省が公表している。これは兵士の15%がヘロイン中毒だったと言われているベトナム戦争を上回っている。*1

 

 これは各国軍隊でも似たりよったりであり、軍人による各種犯罪の増加などの急激なモラルハザードも引き起こしていた事、更には増加し続けて歯止めが掛からない薬物治療に関わる医療予算増大による国庫への負担が大問題となり、苦肉の策として禁煙を解禁する軍隊が増えた。*2

 

 

 だが精密機器を扱う事が当たり前となった昨今の軍事事情を鑑みて、煙草の煙や灰などによる機材の誤作動や故障を防ぐために分煙制度だけは残され、喫煙室は新規建設された軍施設にも常設されている。

 

 

 そんな喫煙室で一人、()()()()()()()()()紫煙を燻らせているヒトがいた。

 

 咥えていた葉巻を指に挟み、反対の手には最近何かと世話を焼いて面倒を見ていた駆逐隊の娘達からプレゼントされたジッポライターを弄びながら、立ち上る紫煙をぼうっと見詰めていた。

 

 

 普段ならば人目に付かない軍港の隅で偶に喫煙しているのだが、ここ最近は降り続く雨の影響で外での喫煙が出来ずにいた。

 

 

 再び葉巻を咥えようとした時、部屋の扉がノックされて一人の艦娘が入ってきた。

 

 

 こんな夜更けに珍しいねぇ?と視線を向けると、その姿に喫煙者、霧野(キリシマ)は目を見開いた。

 

 

今晩は(Good evening)キリノ特務大佐(Special duty colonelキリノ)

 

 

「ねえさ…、金剛さん!?」

 

 

 土方の秘書艦、高速戦艦艦娘の金剛だった。

 

 

 立場的に金剛は自身の上官にあたるので、*3慌てて立ち上がったが、手でそのままと制された為にソファーに座り直した。

 

 

「ここ失礼するネー」

 

 

 そう一言断ってから対面に座ると懐から煙管を取り出したのだが、それを見た霧野(キリシマ)は少し意外だという顔をしてしまった。

 

 

 工作艦の艦娘である明石が取り仕切る売店には様々な日用品を取り扱っており、その中には艦娘個人が個別に注文を掛けて、それぞれの好みの嗜好品であったり日用品を取り寄せて貰ったりしている。

 

 今自身が燻らせている葉巻もそういった物の一つなのだが、以前に売店を訪れた際にたまたま『煙管用』と書かれた刻み煙草を見付けたのだ。

 

 その時はもの好きがいるもんだねぇ。と思った程度で気にもとめなかったが、まさかそれが今目の前にいる金剛だとは思わなかった。

 

 それに、こう言っては何だが、普段何かに付けて紅茶を嗜むものだから、煙草を嗜むというイメージが全く想像できず、煙草から最も縁遠い存在だと思いこんでいた。

 

 だが手慣れた手付きで細切の刻み煙草を丸めて火皿に詰めていくその手際から、相当扱い慣れているという事が見て取れた。

 

 

 思わずジッと見詰めていると、金剛が「いろいろとアリマシタからネ」と苦笑混じりに告げ、火を貰えますカ?と尋ねて来たので、慌ててジッポライターを差し出したのだが、そこでしまったと気付いた。

 

 確かオイルライターだと刻み煙草独特の風味がオイルの臭いで損なわれてしまうと聞いたことがある。

 

 しかしどうやら金剛はその辺りのことは気にしない様で、固まってしまった霧野(キリシマ)に礼を言いながら、その手からライターを受け取ると、手慣れた手付きで煙草に火を点け、旨そうにその煙を口に含んで楽しんでいた。

 

 

 それを見て霧野(キリシマ)も葉巻を口に運び、一息吸うと上を向いてその煙を吐き出したのだが、なんとなく気まずい気分だった。

 

 

 別に金剛のことが嫌いだとかそういう訳では無い。ただ、()()()()()…。

 

 

 ふと、貸したジッポライターが返されていないことに気付いて視線を金剛に戻したのだが、その金剛は手に持つ霧野(キリシマ)のジッポライターをまじまじと見詰めながら「良いライターデスネ」と言ってきたので、軽く礼を述べようとしたが、直後の「これを選択(choice)した娘達の貴女に対する信頼(trust)の気持ちが伝わってキマス」という言葉に、霧野(キリシマ)は言葉が詰まってしまう。

 

 

 私は別に信頼を得るような働きはしていない。

 

 

 精々相談に乗ったり多少のアドバイスをする程度で、あまり進んで関わろうという気持ちは、無かった。

 

 

 あまり深く関わりすぎると、かつてのアンドロメダ(教え子)の様に、失ってしまった時の損失感を再び味わうのが、正直なところ怖かった。

 

 

 そして何よりも───「()()()()()()()

 

 

 不意に投げ掛けられた金剛のその言葉に、霧野(キリシマ)は思わずビクッと肩を震わせてしまう。

 

 

 その反応を見て、金剛は確信を得てしまったのだろう。「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」と問われた事で、霧野(キリシマ)は手を(ひたい)に当てて、対面に座る金剛(最愛のあのヒトと瓜二つなヒト)からの視線を遮るかの様に俯く。

 

 

 嗚呼、やはり見透かされていたか…。

 

 

 薄々と感じてはいたが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんだね…。

 

 第一次火星沖海戦で沈んだ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 この世界で建造され顕現した時(に来た時)、目の前にいた彼女に、思わず懐かしいあの頃を思い出してしまっていた。

 

 だが同時に、このヒトはあのヒトと違うのだと、直感的に感じた。

 

 理由は分からない。だが、理屈とかそういうのとは関係無く、分かるのだ。分かってしまったのだ。

 

 だけど、余りにも似すぎていた。しかし、決定的に違う。

 

 そしてその確証は、困惑した表情を浮かべた瓜二つの顔から紡がれた言葉が決定打となった。

 

 

 

()()()()()()()()()

 

 

 

 分かっていた。分かっていたさ。だがその顔、その声で紡がれてしまった言葉に、世界が暗転したかのような錯覚に囚われた。

 

 

 その後の事は記憶からスッポリと抜け落ちてしまっている。

 

 

 あの時横には土方のオジキもいたらしいが、全く気が付かなかった。

 

 あの時何が起きたのかを後日問い質したが、辛そうな顔をするだけで何も答えてはくれなかった。

 

 

 ただそれから暫くはマトモに口が()けない有り様だったのは確かの様だ。

 

 

 何故ならば───

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

───彼女達を見て、平然としていられる程、霧野(キリシマ)の神経は図太くなかった。

 

 

 

 

 …この時ばかりは沖田さんと、あの時二つ返事で引き受けてしまった自分の迂闊さを呪ってしまったもんさ。

 

 

 ふとした時に覗かせる彼女達の仕草に、どうしようもない郷愁の念に刈られてしまう。

 

 

 だからこそ、彼女達と積極的に関わることを避けていた。

 

 

 だけど、どうしても、彼女達を見ていると、口を出したくなってしまったのだ。

 

 

 しかし、それがまた心を締め付ける。

 

 

 その相反する矛盾から目を逸らすかのように、葉巻に手を出した。

 

 

 自身の内面を振り返り、思わず自嘲してしまう。

 

 

「キリノサン、いえキリシマサン」

 

 

 名を呼ばれたことで、徐に顔を上げた。

 

 

「私は、貴女のお姉さんの様にはなれマセンが、話を聞く事くらいならば、デキマス」

 

「無理にとは言いマセン。ですが、ここでお互いに居る時くらい、貴女の気持ちを私に曝け出してみてはどうデスカ?」

 

「貴女の待ちビト、アンドーサンと出会う前に貴女が潰れていては、アンドーサンが可哀想デス」

 

 

 

 この時は答えることなく、葉巻の火を消して黙って()()()()、足早に逃げるようにして退室してしまった。

 

 

 金剛は、それを止めることはしなかった。

 

 

 

 

 

 だがそれから暫くして、2人が喫煙室で居るところが度々目撃されるようになり、何処となく艦娘との付き合いによそよそしい態度が多かったキリシマ(霧野特務大佐)が、徐々にだが打ち解けるようになったと言われている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なお、これは全くの余談だが、艦娘の間に出回っている煙草は全て人間達の間で流通している物と全く同じである。

 

 

 艦娘も深海棲艦と同様に化学兵器並びに薬物等に対する耐性が非常に高い事が確認されている。

 

 

 そのため艦娘が使用する医薬品は全て妖精達が生成している特殊且つ特別な代物である。

 

 

 このことから、艦娘の喫煙によるリラックス効果は所謂プラシーボ効果、思い込みの(たぐい)ではないかとされている。

 

*1
但し民間の保守系、中立的な立場の調査会社によると、43%から51%と言われている。これは当時の政権が南部国境問題をひた隠しにし、中南米からの不法移民だけでなく大量の薬物が流入していた問題を握り潰していた事と無関係では無いだろうと言われている。

*2
しかし問題解決にはならなかった。

*3
所属する場所によって多少の違いはあるが、小松島鎮守府において秘書艦は大佐相当と、霧野(キリシマ)とほぼ同格なのだが、金剛の方が先任であり、尚且つ役職は秘書艦の方が上位となる。




 …可怪しい。予定ではキリシマ先生だけのはずが何故か金剛さんまで喫煙してる。しかも何故に煙管?どうしてこうなった!?

 キリシマ先生に葉巻をチョイスした理由は、プロット段階でのキリシマ先生の性格原案にシーマ中佐案とパブロヴナ大尉ことバラライカの姐御の案があった為です。
 因みに、回想時での初登場時に、アンドロメダに語りながら煙草に火を点けるというシーンを、一度真剣に考えていましたが、設定に矛盾が生じた為に、当時は取り止めました。その時の下書きではアンドロメダが火を点ける感じでした。



 銘柄は知識が無いので全く決めていません。皆様のご想像にお任せ致します。


 死んでいった親しいヒト達、愛したヒトと全く瓜二つなヒト達が居て、そのヒト達と共に生活しなければならなくなったとすれば、ヒトは平静でいられるだろうか…?私は耐える自身が全く無い…。キリシマ先生、本当にすまない…。



 まず需要が無いであろう愚痴コーナー!(微妙に今回のネタとの絡みあり)


 祝。アメリカ不法移民逮捕者が8月時点で200万人突破!前年を上回るペース(確か去年の9月末でギリ200万)で過去の記録を塗り替えてもおかしくなし!(てかなんで8月分の発表が9月後半までズレ込むかなぁ?こりゃ9月分の発表もズレ込むだろうなぁ。選挙近いからねぇ。)
 なお国境で逮捕されなかったけどセンサー等で捉えた人間らしき反応を含めたおおよその数、カナダに観光名目で入国した後、北部国境から不法入国してきている不法移民等のその他を含めると推定300万は超えるだろうとのこと。
 アイルランドの人口が凡そ250万人であり、ほぼ一国の総人口に匹敵する人間がこの一年で不法にアメリカに流入。まさに民族の大移動。
 また南部国境からの違法薬物、違法銃火器の流入は過去最悪を更新。なお、現政権による銃規制はこの違法銃火器に関して一切規制を設けていないどころか、寧ろ国内正規銃火器のみ規制した影響で流通を後押ししてしまっているとの指摘あり。

 今回ネタの一部として上記の今現在の“現実”を使ったけど、アメリカ大丈夫かよオイ…。大統領がジジイになってからアメリカがどんどんヤバくなってんだが…。

 “理想”騙る(誤字に非ず)のは勝手だけどさ、“現実”見ようよ。こんなんだから左派は頭がイカれた阿呆しかいないと言われんだよ。それを支持する民衆も民衆だが、山本五十六長官が友人の堀悌吉氏に宛てた手紙で書かれたという『衆愚』の説得力がまた高まったなぁ。



 因みに、この一つ前の閑話7におけるアポロノームによる弔辞の元ネタはマクロス・フロンティアでのワイルダー艦長による戦死したギリアム大尉への弔辞の言葉が元ネタでした。
 

 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。
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