艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

105 / 115
 改Метель級護衛駆逐艦、もしくは海風型、あるいは春雨型と呼ばれる波動砲艦隊直掩の宇宙護衛駆逐艦。その2番艦。


 ヤマト2202は不遇な扱いを受ける艦が敵味方ともに多過ぎる。そんな中でも思い入れのある本作でМетель級と名付けた護衛艦を出したくなりました。
 但し独自解釈と設定の改造艦なのは御容赦下さいませ。

 ついでに統制波動砲戦の難点を個人的解釈マシマシでぶっ込みました。


閑話9 波動砲艦隊直掩型護衛駆逐艦海風(ウミカゼ)がt「春雨(ハルサメ)型です!!」あ、はい。

 

 波動砲艦隊。

 

 

 

 その言葉を聞いて、真っ先に思い浮かぶのは前衛武装宇宙艦『アンドロメダ』(クラス)に率いられた多数のDクラス前衛武装航宙艦、所謂『ドレッドノート』(クラス)戦艦で編成された大艦隊だと思います。

 

 

 もちろん、それは一概に間違いではありません。

 

 

 かの土星決戦では、その『ドレッドノート』(クラス)とガトランティス軍の『カラクルム』級戦艦が正面から撃ち合う映像が報道などでよく目にしたでしょうから。

 

 そのためか、あの戦いでの地球艦隊は『アンドロメダ』(クラス)と『ドレッドノート』(クラス)という2つの艦種でのみ艦隊が編成されていたと勘違いされる方もいるかもしれません。

 

 

 

 ですが、それは大きな間違いです。

 

 

 

 確かに波動砲は強力な武器です。

 

 

 

 しかし、波動砲の発射までには大きな『隙』がどうしても生じてしまいます。

 

 

 

 射線の確保、エネルギーのチャージ、最終的な目標への照準固定を行なって初めて発射となるのですが、主砲と比べますとその一つ一つの行程に要する時間がかなり長いのです。

 

 

 また主砲と違って(ふね)そのものを砲身と見立てて、微修正の為に(ふね)を小刻みに動かしての照準となるため、その誤差修正にはかなりの神経と集中力を使う繊細な作業となります。

 

 

 拡散波動砲は広範囲殲滅兵器だから、多少の誤差は問題ない?

 

 バカなことを言ってはいけません。

 

 いくら拡散波動砲とはいえ、分裂した波動エネルギーの散弾が最も効率良く効果を発揮しなければ、相手の残存戦力に反撃のチャンスを与えてしまいます。

 

 1°にも満たないほんの極僅かな角度ズレが、着弾点では大きなズレとなってしまいます。

 

 

 また発射の前後は、波動砲に艦内エネルギーの大半が消費されるという問題から、波動防壁の展開も出来なくなります。

 

 このタイミングを狙われますと、如何に地球軍最新にして最強格の『アンドロメダ』(クラス)といえども、非常に危険な状況へと陥ってしまいます。

 

 

 事実、友邦国ガミラスから地球防衛の増援戦力として派遣されて参りましたフォムト・バーガー少佐が率いる艦隊との合同演習におきまして、波動砲艦隊は完膚無きまでに叩きのめされてしまいました。

 

 

 ガミラス軍最強との誉れを持っていました、今は亡きエルク・ドメル閣下の艦隊にて切り込み隊長を任されておりましたバーガー少佐による艦隊機動は、新生地球艦隊を遥かに上回る激しさ、鋭さ、そして緻密さと繊細さを兼ね備えておられました。

 

 特にどのタイミングで仕掛けたら最も効果的に大きな打撃を相手に与えることが出来るか?という“機”を窺うセンスの高さと、どこが狙いどころであるかを見極める“目”の鋭さには脱帽するしかありませんでした。

 

 

 ですが、その中で何よりも地球軍首脳部の頭を抱えさせましたのが、地球軍必殺の波動砲戦時が最も損害が大きかったことです。

 

 艦隊が波動砲戦隊形、所謂マルチ隊形を組んだタイミングを見計らって、バーガー少佐直率の小艦隊に殴り込まれて一方的に蹴散らされてしまいました。

 

 

 バーガー少佐曰く、「最もカモなタイミングだったぜ」とのことです。

 

 

 マルチ隊形へと移行しますと、主力である戦艦は密集した横隊隊形となり、波動砲へと全エネルギーを集中することになりますから、先に述べました通り波動防壁は展開出来無くなり、一切の迎撃行動が出来なくなります。

 

 無論、魚雷・ミサイルや砲弾といった実弾兵装系統であれば別ですが、密集した隊列が足枷となりまして射角が制限されたり、そもそも隊列中央の(ふね)にはその射角すらありません。

 

 そして隊列外縁部の(ふね)が撃破されますと、次から次へと撃破されて行くという、地球艦隊にとって悪夢のような、阿鼻叫喚の地獄絵図でした。

 

 

「これが実戦ならもっとヤバかったぜ?密集してるから撃破艦の飛び散った破片やら何やらをが散弾になって周囲の艦に襲い掛かるし、何よりも爆散した艦の爆炎が隣の僚艦を焼いちまうからな…」

 

 

 そう語るバーガー少佐の顔は、何かを懐かしむかのような、どこか寂しそうな表情であったそうです。

 

 

 バーガー少佐としては暗に、身動きが大きく制限され、被害が容易に拡大するリスクの大きいマルチ隊形を見直すべきなのではないか?と仰りたかったのでしょう。

 

 

 

 しかし地球軍は別のアプローチによる解決に乗り出しました。

 

 

 

 直掩護衛艦隊の見直しです。

 

 

 

 この時の波動砲艦隊には、改金剛型などに代表されます旧世代型艦の改型艦が護衛の任を務めていましたが、当初より性能不足が指摘されていました。

 

 主に主砲は砲身が存在しないことによる仰俯角の射界問題からくる即応能力不足、対空兵装の不足などが上げられますが、何よりも機関の瞬間的な瞬発力が不足しており、必要な邀撃ポイントへの迅速な展開を行なう戦術機動能力に問題を抱えていました。

 

 機動力で言えば改磯風型がありましたが、今度は火力が足りなさすぎました。

 

 

 そこで注目されましたのが、当時就役仕立ての新鋭艦『Метель』級護衛艦です。

 

 

 元々は船団護衛や通商防衛を担う小型艦でしたが、その能力は十分艦隊の直援任務に耐えられると判断されました。

 

 

 ですがこれに対して用兵側から、「主砲である3インチ、7.6センチ連装砲の速射能力は素晴らしいが、射程、特に高速で接近してくる『ククルカン』級襲撃型駆逐艦や『ラスコー』級突撃型巡洋艦に対しての阻止火力に大きな不安がある」との意見が出てきました。

 

 

 その為、波動砲艦の増産によるリソース配分の問題から建造がキャンセルされていました、磯風型の後継である新型駆逐艦用として既に製造されていました4インチ、10センチ連装砲に換装しました準同型艦を建造することとなりました。

 

 ですが、今度は機関出力が不足するという問題が浮上し、急遽『Метель』級の設計をベースとして、これまた新型駆逐艦用として製造されていました、より高出力の波動エンジンを搭載するため艦体を延長した準同型艦というよりは事実上の新造艦を建造することとなりました。

 

 

 何故新型駆逐艦の建造再開を選択しなかったのか?という疑問に思われるかもしれませんが、これはガトランティスが大量投入してくる『カラクルム』級戦艦に対して新型駆逐艦の火力では対応不能であると、判断されたからです。

 

 対して『Метель』級護衛艦には小口径ながらも分類上は波動砲兵装にカテゴライズされております、波動噴霧砲が艦首に装備されていました。

 

 原理としましては、通常の波動砲の様な波動エネルギーのみを使用するのでは無く、ショックカノンの陽電子ビームを核としまして、その外側に波動エネルギーを纏わせてコーティングし、射程と威力、貫徹力を増大させた、謂わば簡易波動砲と呼べる兵器でした。

 

 流石に通常の波動砲と比べますと大きく見劣り致しますが、それでも戦艦クラスの主砲を遥かに上回る性能を有しており、一撃で十分に『カラクルム』級を撃破可能でした。

 

 

 当初護衛艦には波動噴霧砲では無く、旧型の金剛型や村雨型と同じ様な艦首固定式ショックカノンの装備が予定されていましたが、地球軍はガトランティスが通商破壊に『カラクルム』級を投入してくる可能性を大いに恐れていました。

 

 

 故に開発されましたのが、波動砲とショックカノンの折衷案とも言える波動噴霧砲です。

 

 

 これの搭載の有無が明暗を分けました。

 

 

 しかし、元々小型の艦体に似合わずこれでもかと重武装を施した(ふね)でしたから、拡張性に問題があり、いくら艦体を延長するとはいえ、それだけでバランスなどの問題無く運用出来るかを確かめるべく、建造途中で艦体の組み立て直前でした『Метель』級最新ロットの1隻を、試験運用の為のテストベッド艦として建造することとなりました。

 

 

 それに選ばれましたのが、私の最愛の姉、『春雨(ハルサメ)』でした。

 

 

 春雨(ハルサメ)姉さんによる試験運用の結果は概ね良好で、機関出力の増大に伴いエネルギー問題は解決され、機動性能も良好。

 

 更には波動噴霧砲の射程延伸と速射能力の向上いう副次効果も得られました。

 

 

 この結果に大いに満足しました軍は、早速正式建造を承認致しました。

 

 その先行量産型の第1ロットとして9隻が同時に起工。

 

 

 完成と同時に春雨(ハルサメ)姉さんを含めた10隻で、第1直掩護衛隊群として編成されることが内定していました。

 

 

 

 私こと海風(ウミカゼ)はその中で最も速く竣工し、春雨(ハルサメ)宇宙護衛駆逐艦の2番艦として就役致しました。

 

 

 

 戦時下ということもあり、事務処理に混乱が生じて書類によりましたら海風(ウミカゼ)型と記載されている物も有るかもしれませんが、それは明らかな間違いです!!

 

 確かに私は春雨(ハルサメ)姉さんのフィードバックから将来のアップデートを見据えて、艦体が少し、そう、ほんの少しだけ延長され、極僅かに性能に差が見られますが、そんなものは誤差でしかありません!!

 

 私は、誰が、なんと言おうとも、由緒正しき春雨(ハルサメ)型の2番艦!誰よりも凛々しくて、誰よりも優しい愛する私の春雨(ハルサメ)姉さんの妹です!!例え連邦大統領であろうとも、その事実は変えられません!!

 

 この私が言うのだから間違いありませんっ!!

 

 それに、姉さんはオーバーホールの際に艦体を延長することが決定していました。

 

 長さが違うから別の艦種だ。などという戯言は言わせません!

 

 …姉さんだって、陰で気にしていたんですよ。普段の優しくて暖か味のある笑顔の裏で、「私は、みんなと違う…。私は、みんなの足を引っ張る駄目な()なんだ…」って、一人で泣いていました。

 

 

 姉さんは、誰よりも努力家でした…。

 

 私達の足を引っ張らないようにと、いつも血の滲む研鑽を続けていらっしゃいました…。

 

 

 正直、見ていて辛かったです…。鬼気迫る表情で自身を追い詰めていくそのお姿に、私は胸が締め付けられる感覚を覚えました…。

 

 

 そんな春雨(ハルサメ)姉さんに、私はいつしか心惹かれ、決心致しました。

 

 

 私が姉さんを支えるんだ!私が姉さんを守るんだ!

 

 

────────
 

 

 

「初めまして。海風(ウミカゼ)さん」

 

 

「え?あっ!えぇっ!?そ、総旗艦!?」

 

 

「はい。貴女達の隊とは今回が初めてですので、ご挨拶に参りました」

 

 

「あ、わざわざありがとうございます!え、え~と、ねえさ、第1直掩護衛隊群旗艦の春雨(ハルサメ)は機関不調の僚艦山風(ヤマカゼ)と共にオーバーホールの為、現在戦列から離れております!」

 

 

「はい。伺っております。そのため今は妹の貴女が代理旗艦を務めているとも」

 

 

「は、はい!身に余る光栄です!」

 

 

「ふふっ。そう気負わなくても大丈夫ですよ海風(ウミカゼ)さん。アルデバランから貴女の事は良く聞いていました。とてもお姉さん思いで、常にお姉さんを陰に日向に良く支える正に縁の下の力持ちと言える、わたくしも見習うべき素晴らしい親友だと、嬉しそうに貴女のことを誇らしく語っていましたよ」

 

 

「あ、ありがとうございます!アルデバランさんからも、総旗艦のことはお聞きしておりました。わたくしの姉上も春雨(ハルサメ)に負けず劣らずの素晴らしい姉です。と、いつも仰られておりました」

 

 

「ふふっ、アルデバランらしいですね。アルデバランは春雨(ハルサメ)さんもとても素晴らしい良く出来た娘だと、いつも褒めていました。いつか私も春雨(ハルサメ)さんと会ってみたいものです。その時は、ご紹介してくださいますか?」

 

 

「はい!その時は是非!!春雨(ハルサメ)姉さんも喜びます!」

 

 

────────

 

 

 あの時は本当に驚きました。

 

 

 これから一大決戦へと赴くという緊張と恐怖、そして何よりも、何時如何なる時も常に一緒で、お互いを励まし合っていました心強い春雨(ハルサメ)姉さんが隣に居ないことへの不安から、私は怖くて震えていました。

 

 そこへ突然、地球艦隊の総旗艦であらせられますアンドロメダさんが現われたのですから。

 

 

 一時期訓練でお世話になっておりましたアルデバランさんから聞いておりましたが、本当に笑顔が美しくて優しい雰囲気のお方でした。

 

 それに、なんとなく、総旗艦の纏う雰囲気が何処と無く春雨(ハルサメ)姉さんと似ている感じが致しました。 

 

 

 アンドロメダさんが去られた後に気付いたのですが、体の震えが治まっていました。

 

 

 本当に、あの方は不思議なお方です。少しお話しただけで、心が安らいだのですから。

 

 

 アンドロメダさんならきっと、いえ、間違いなく春雨(ハルサメ)姉さんとも仲良くなれる。そんな気が致しました。

 

 

 ですから、お二人を引き合わせる為にもこの戦い、何が何でも敗けるわけにはいきませんっ!

 

 

 

 …その時はそう決意に燃え上がっていました。

 

 

───────

 

 

 土星。

 

 

 私達春雨(ハルサメ)姉妹で編成されました第1直掩護衛隊群の初陣の地。

 

 

 

 春雨(ハルサメ)姉さんと妹の山風(ヤマカゼ)を欠いた、私達第1直掩護衛隊の8隻は、艦隊戦に直接加わること無く、総旗艦とその妹の方々の周辺で警戒態勢を維持していました。

 

 また私達以外の直掩護衛隊群も、各々担当の艦隊周辺で警戒の任に就いていました。

 

 

 

 序盤の艦隊戦は地球艦隊の優位に進み、護衛隊群は戦闘よりも被弾しました友軍艦の救援に走り回る事に終始していました。

 

 

 

 しかし、遂に()()()がやって来ました。

 

 

 

 土星宙域へとワープして来た、ガトランティスの本隊である白色彗星。

 

 

 地球艦隊は直ちに統制波動砲戦による総攻撃を行うべく、全艦隊をマルチ隊形へとシフトを開始。

 

 

 ここからが、私達護衛隊群の本番です!総旗艦達へは、指一本たりとも触れさせません!

 

 

 この時直掩護衛艦としての真価を遺憾無く発揮致しました。

 

 

 群がる敵艦を、波動噴霧砲によって敵艦の射程外から一方的に狙い撃ちし、次々と撃破致しました。

 

 

 常に2隻1組(ツーマンセル)による目標に対しての三角測定状態を維持し、交互射撃による弾幕を形成する。

 

 

 本来ならば命中率の上がる斉射が推奨されますが、春雨(ハルサメ)姉さんの指導の下、共に研鑽を積み上げた私達は全護衛隊群の中でも最高の命中精度を誇っていました。

 

 ですから交互射撃でも次々と命中させる事が出来るという芸当が可能でした。

 

 

 

 戦いそのものは、地球軍の惨敗に終わり、幾つもの護衛隊群が彗星へと呑み込まれ壊滅しましたが、私達はなんとか1隻も欠けることなく、無事に安全圏まで離脱出来ました。

 

 春雨(ハルサメ)姉さんとの研鑽が無ければ、私達も危なかったかもしれないと、後になって冷や汗が止まらず、恐怖で震えました。

 

 春雨(ハルサメ)姉さんには感謝の気持ちしかありません。姉さんのお陰で、私達はみんな無事だったのですから。

 

 

 

 …ですが、あの戦いで、総旗艦のお心が、壊れてしまったということに、私はショックを隠すことが出来ませんでした。

 

 そして私の中で、ある恐怖が湧き上がってまいりました。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と。

 

 

 優しくて暖かい、何処と無く2人は雰囲気が似ていると思ったからこそ、それが杞憂で済む心配とは、到底思えませんでした。

 

 

 私は、いえ私達は絶対に姉さんを悲しませたりはしない!悲しませるようなことがあってはなりません!

 

 そうみんなと誓い合いました。

 

 

 

───────

 

 

「私は、海風(ウミカゼ)やみんなが想ってくれる様な、立派なお姉ちゃんじゃあ無いよ…。私が不甲斐無いばかりに、みんなの期待を裏切って…、最期は、海風(ウミカゼ)を守りたかったのに、結局は巻き込んで沈んじゃったんだから…。私は、本当にどうしようもないくらいに…、酷いお姉ちゃんだよ…」

 

 

 『春雨(ハルサメ)』、『山風(ヤマカゼ)』とも合流して火星戦線にて展開していた第1直掩護衛隊群10隻は、臨時旗艦『アルデバラン』の艦長、谷鋼三一等宙佐の命令により、火星戦線に展開する艦隊から抽出された戦力と共に急遽最終血戦(たけなわ)の地球へと駆け付けた。

 

 だが、次第に敵味方入り乱れる至近距離での殴り合いの大乱戦となって、艦隊は大混乱の末に部隊単位でバラバラとなり、彼女達護衛隊群はその混乱の最中で有力な敵戦力に包囲され、敵中で完全に孤立するという絶望的な状況に陥った。

 

 

 そんな絶望的な状況でも、最後まで希望を捨てずに敵の虎口から脱すべく敵中突破を図ったが、結果は衆寡敵せず、全艦戦没し全滅。 

 

 しかも乱戦の混乱からその事実が判明したのが、戦闘終了後も音信不通で未帰還の為に行方不明扱いとなり、戦後暫く経ってからの戦場跡の調査で、夥しい数の破壊された敵艦の残骸が漂う宙域の中で、第1直掩護衛隊群の物と思われる(ふね)の残骸が漂っているのが確認され、回収された航海ログが記録されたブラックボックスが解析されてからというもので、味方の誰にも看取られずに散華していたという悲惨なものだった。

 

 

 そんな中で『春雨(ハルサメ)』と『海風(ウミカゼ)』の最期はなんとも切ないものだった。

 

 

 大破し沈没間際だった『春雨(ハルサメ)』が、最期の力を振り絞って『海風(ウミカゼ)』に迫るガトランティスの特攻兵器『イーター』との間に割って入って庇い、艦体の至るところを串刺しにされて、爆沈───。

 

 

 春雨(ハルサメ)は消え行く意識の中、自身の艦体から出た爆炎で『海風(ウミカゼ)』の艦体が傷付くのが見え、直後に『海風(ウミカゼ)』から火の手が上がるのが見えたのを最後に、絶望の中で景色が暗転した。

 

 

 

 だがそれは『春雨(ハルサメ)』爆沈による爆発が原因では無かった。

 

 爆発した『春雨(ハルサメ)』の艦体と爆煙を隠れ蓑に、更なる『イーター』が『海風(ウミカゼ)』を襲い、被弾し炎上したのが真相だった。

 

 その後、『春雨(ハルサメ)』の後を追うかのように、『海風(ウミカゼ)』も爆沈。

 

 

 それを皮切りに、他の姉妹達も次々と沈んでいった────。

 

 

 

 

 再び景色が変わり、春雨(ハルサメ)海風(ウミカゼ)はどこだか分からない、見知らぬ建物?の中で目を覚ました。

 

 最初はお互いが居ることに気が付かなかったが、なんとなくお互いが直ぐそこに居るんだと、何故だか()()出来た。

 

 

 だが2人は再開を喜び合う暇無く、思わぬ出会いを果たす。

 

 

 外洋防衛師団司令、現在は宇宙戦艦『ヤマト』の艦長を拝命されていたはずの土方竜宙将。

 

 

 そして、かつての連合宇宙艦隊旗艦、金剛型宇宙戦艦『霧島(キリシマ)』の魂である霧島(キリシマ)。 

 

 

 この時の顛末は割愛するが、兎も角春雨(ハルサメ)海風(ウミカゼ)の2人は現状を理解し、改めて再開を喜び合った。

 

 

 だがその時に、春雨(ハルサメ)の口から先の言葉が漏れだした。

 

 

 守りたかった。沈みゆく(死にゆく)最期の瞬間であろうとも、護衛艦としての本分を貫いて、最期の意地でせめて海風(ウミカゼ)に迫っていた危機からウミカゼを守り抜きたかった。いつもこんな不甲斐無い自分を何かと気にかけて、慕ってくれて、大切に思ってくれていた、大切な、大好きな妹を、なのに───!!

 

 

 春雨(ハルサメ)の瞳から悔恨と、何よりも一番大切に思っていた妹を巻き込んで沈んで(死んで)しまったという思い込みから来る自己嫌悪から、滂沱の涙が溢れ出してしまった。

 

 

 そんな姉を見て、海風(ウミカゼ)は平静でいられ無かった。

 

 

 このヒトは、春雨(ハルサメ)姉さんは、誰よりも優しいおヒト、いや、優し過ぎる。

 

 だから、抱え込もうとしてしまう。

 

 抱え込んで、自らを傷付けてしまう。

 

 

 やめて…。やめて下さい姉さん!自らを傷付けるのは、間違っています!!

 

 

 あの時、姉さんが沈んで、頭が真っ白になってしまいましたが、それでも、あれは姉さんのせいでは無いと、断言出来ます!

 

 ですから、どうか、ご自身責めて自らを傷付けないで下さい!!

 

 

「謝らないで下さい春雨(ハルサメ)姉さん!寧ろ私があの時もっとしっかりしていれば、姉さんが沈むことはありませんでした!!」

 

 

 お互い水掛け論になりそうになり、そこへ今まで傍観に徹していた土方が割って入ろうとしたが、隣に控えていた霧島(キリシマ)がそれを止め、私に任せて欲しいと目で訴えかけた事で、土方は引き下がった。

 

 

「お互い、自分を責め合ったところで、過去が変わるわけ、じゃあ無いんだよ」

 

 

 割り切れとは言わないけど、2人同時にこうして新たに生を受け、再開出来たんだ。これは奇跡というものさね。だから、その奇跡を噛み締め、感謝しながら、前を向いて進みな。と、叱責混じりの激励の言葉を2人に投げ掛けた。

 

 

 その霧島(キリシマ)の言葉には、様々なものを見てきたが故に出せる、独特の“重み”があった。

 

 

 そしてその霧島(キリシマ)の言葉を受けたことで、春雨(ハルサメ)は先程とは違う涙を流し、海風(ウミカゼ)はその心に決意の火が灯った。

 

 

 

 姉さん、春雨(ハルサメ)姉さん。海風(ウミカゼ)は今度こそ姉さんを、愛する姉さんを完璧にお守り致します!

 

 もう二度と、姉さんを悲しませる様な事は、この海風(ウミカゼ)が起こさせません!!

 

 

 それにあのヒト、アンドロメダさんとの約束のためにも、私はより一層の精進を致します!

 

 ですから、もっと私を頼って下さい。私が姉さんを慕うように、姉さんも私をいつでも頼って下さいね!

 

 

 姉をどこまでも慕い、どこまでも愛する2番艦は、決意を新たにそう心に誓った。

 

 





 ある方の作品で出てくる海風君の風味がどうしても出てしまう…。しかも相方が春雨という時点でモロに影響出てる…。あの方の名物、“海風劇場”は見ていて面白い。それに触発されてアルデバランでやらかしてしまいました…。


補足

 波動噴霧砲

 所謂小型波動砲。

 ある意味ショックカノンのブーストというような若干の独自解釈を盛り込みました。

 これによる長距離狙撃をハルサメ達は行なっていました。



 4インチ10センチ砲

 本当は5インチ12.7センチ砲を予定していましたが、それだと軽巡洋艦クラスのパトロール艦、本作における『フロレアル』級通報艦の主砲と同一となるために断念。間を取って4インチ10センチ砲を選択。ていうか、調べるまでパトロール艦の主砲は最低でも6インチ15センチクラスの砲だと思ってた…。

 それはそうと、なんで地球軍はヤード・ポンド法とメートル法をごちゃ混ぜにして艦を建造した!?同盟国ガミラスはメートル法なのに!馬鹿なの!?愚かなの!?(欧州棲姫感)
 因みにアンドロメダ級はヤード・ポンド法で建造したらしい…。ぜってーCCCやランダルミーテ建造の際に揉めてるよ…。
 制作陣、ホントこーゆー所テキトーだよなぁ…。



 『春雨(ハルサメ)

 テストベッドのプロトタイプ艦としての意味合いが強く、後に続くウミカゼ達と比べて少し小柄で性能もやや落ちる。

 但し従来の『Метель』級よりも性能が優越しており、『海風(ウミカゼ)』が就役するまでの試験運用期間中は『Метель』級と組んでいたのだが、その際に準同型艦であるのにも関わらず、その性能の差から、嫉妬などの僻み、妬みを乗組員共々受ける。
 その後就役した『海風(ウミカゼ)』達と部隊を組むのだが、自身よりも優れている事で少しだけ疎外感を感じてしまい、やや自虐的になってしまう。

 しかし、そんな自分を姉と呼んで慕い、心から受け入れてくれた海風(ウミカゼ)やその妹達のお陰で自虐な一面は鳴りを潜め、明るく振る舞うようになる。

 なお、乗組員達は「足りないところは技量でカバーだ!」と猛訓練に突き進んだ。

 後のオーバーホールによって全長は『海風(ウミカゼ)』達とほぼ同じとなり、同時期に機関の修理でドック入りしていた妹の『山風(ヤマカゼ)』と共に通信や索敵などの電子機器を一新。旗艦としての能力の強化が図られた。


 『春雨(ハルサメ)』の最期はそんな旗艦機能故に集中的に狙われた事が起因している。
 兵装や通信機器は破壊され、戦闘不能となったことで旗艦を『海風(ウミカゼ)』に移譲(『山風(ヤマカゼ)』は乗組員の練度不足で指揮能力に不安があった。)した直後に、まだ機能していた、他艦よりも優れたレーダーを積んでいたからこそ発見した『イーター』群を見て、咄嗟に『海風(ウミカゼ)』を助けるべく盾となった事で爆沈。

 なお、この『イーター』群はヤマカゼのレーダーでも捉えていたが、練度不足から警報を発するのが遅れてしまった。
 このことは山風(ヤマカゼ)にとって深い心の傷となっている。

 この後、第1直掩護衛隊群は旗艦と次席旗艦を同時に失った事で指揮系統を損失するも、戦闘を継続。包囲部隊に大損害を与えるも全艦戦没し、全滅した。



 
いつもの(?)愚痴コーナー!!(ヤケクソ)

 リアルでサウジアラビアを始めOPECプラスが原油減産決定か…。
 なんかアメリカのジジイがそれに発狂して武器売らないとか制裁するとか息巻いてるけど、恫喝外交の内政干渉じゃないの?テルール、恐怖政治。あのジジイのヒステリックさ見てるとその本性がよく分かるぜ。あんなのが過去最高の得票を得た?無理があり過ぎるだろう。かつてビンラディンから「あいつスッゲー無能だからアメリカを内部から破壊するのにうってつけw」(意訳)って言われて、副大統領時代にテロの標的から態々外してくれていたという逸話や、アフガニスタンの実験を握ったタリバンから「おめーには用はねーんだよ。自称大統領サマw」(意訳)とけんもほろろな扱いだったらしいけど、的を得ていたな。
 て言うか、ジジイ、テメェ就任当初サウジアラビアとの武器売買契約一方的に打ち切ったクセに、何寝言言ってんだよ。サウジアラビアって中東におけるアメリカの重要な同盟国なんだろう?
 そんな同盟国すらこんな扱いって…。いやまあ、民主党政権は大概滅茶苦茶な対外政策やらかしてたけどさぁ。これは流石にヤバいだろ。台湾も日本も、最悪を想定する覚悟を決めなきゃならん時か…。
「常に最悪の事態に備えて行動する」芹沢虎鉄

 てかこれ、本編での第三次大戦のアメリカ中東派兵の口実ネタとして考えてたんだけど、まさかリアルで起きちゃう?

 勘弁してくれ…。

 …調べてたらあのジジイ、過去にサウジアラビアをならず者国家呼ばわりして罵倒しとったわ。



 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。