艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 過酷な戦場


Это ужасное поле битвы

 

 

 〜回収されたドライブレコーダーの音声データより〜

 

 

 

Ви́ктор(ヴィクトル)、すまないが煙草くれないか?」

 

 

「あん?Михаи́л(ミハイル)、お前持ってたろ?」

 

 

「あぁ、…人にやっちまったよ」

 

 

「珍しいな?お前が人に煙草を全部渡しちまうなんて」

 

 

「…お前は、ここの連中どう思う?」

 

 

「そういうことか…。ほれよ」

 

 

「すまねぇ」

 

 

 

 

「若え奴らばかりだ。どうしてもКиевский(キエフ)を思い出しちまう」

 

 

「良くねぇな。この国も。そのうち今はもう存在しねぇ国の仲間入りか…」

 

 

「あの国みたいに徴兵年齢引き下げて根こそぎ動員してないだけ、まだマシだがな」

 

 

「違えねぇが、あんま変わんねぇよ。お前だってこの国の異常な人口の減り具合を知ってんだろ?どの道おしめぇだよ」

 

 

「…ああ」

 

 

「この国はそれを選んじまったんだ。俺達にゃどうすることも出来ねぇよ。

 

 …精々使()()()()()()を見付けてピックアップするくらいさ」

 

 

「難しいもんだな。マシな奴は居なくもないが、ここを経験してもなお軍に残ろうとする奴は離れたがらないだろうし、なにより軍が手放したがらないだろ。任期満了でそのまま退役した連中も、リクルートに応じるとは思えん」

 

 

「やらねぇよりかはマシだ。Драгунова(ドラグノフ)でドローン撃ち落としたアイツみたいな掘り出しモンはそうそう出て来ないだろうがな」

 

 

「カネイのことか?懐かしいな…。アイツも今は国家警備隊を引退して後進を育てながら家族とМосква(モスクワ)暮らしだったな…」

 

 

「…正直カネイの奴がここに居てくれたらって考えちまうぜ」

 

 

「言いたいことは分かるが、流石に無茶だぜ?あの丸っこい敵機にライフル程度じゃ刃が立たないだろ?」

 

 

「ッたく。厄介な時代だぜ。昔はドローン。今は海の魔女共が飛ばす化け物の使い魔共に怯えなきゃならねぇ」

 

 

「ドローンと違って妨害電波は意味が無い上に、数も多いから防空ミサイルでは焼け石に水。オマケにドローンよりも速いし硬い。お陰でドローン対策として再評価された自走高射機関砲が更に脚光を浴びた訳だが、ここじゃ本土からの海上輸送が寸断されている問題で碌に配備が進んでないし、配備されても片っ端から破壊されちまっている。

 

 …おいあれ、あそこに転がってるのはШилка(シルカ)の残骸じゃないか?」

 

 

「…酷えな。砲塔が完全に消し飛んでやがる」

 

 

「目立つ重装備の類いは真っ先に破壊される。特に戦車や自走砲を始めとした装甲車両は連中にとっては高価値目標と認定されている。…配布された資料にそう書かれていたな」

 

 

「自走砲は陸地から魔女共でも手が届かねぇ距離で脅かせる数少ねぇ手段だ。当然魔女共だって黙っていねぇ。化け物の使い魔を飛ばしてくる。遠目からだと自走砲も戦車もクリソツだ。しかも図体がデカいから余計に目立っちまう」

 

 

「暫く前にダーダネルス海峡(地中海方面)で本国軍の連中とやり合って、砲兵隊にボコボコにされたことがトラウマになっているんだろうな」

 

 

「多分な。その反省からか、それまでおざなりだった対地攻撃が対砲兵攻撃を兼ねた砲兵潰しで使い魔共を飛ばす事が増えた。それを追い散らすために基地航空隊が航空優勢の防御幕を展開し、撃ち漏らしは高射機関砲の出番となる訳だが、ここじゃいかんせん台数が足りねぇ。効果的な対空射撃が出来ねぇから突破されて好き放題に破壊されちまう」

 

 

「だからトラックを改造、と言うか重機を荷台にポン付けした急造の自走高射機関砲が重宝されている。…まぁそれは短期間で数を揃えやすい事もあって何処も似た様なもんだし、かと言う俺達も使ってるが、それはそれとして対空監視用のレーダー車輌が足りないのも悔やまれる」

 

 

「…実際、さっきヤられたのも対空警戒の目が文字通り肉眼だけが頼りだったからな。しかも使い魔の連中ときたら、どんな魔法を使っているのか知らねぇが、飛んでるわりには推進器の類いの音がほとんどしねぇモンだから、周りの騒音に簡単に掻き消されて耳も頼りにならねぇ。あれか?魔女のバァさんの呪いってやつか?」

 

 

「おいおい、一応見た目はうら若き乙女みたいな容姿なんだ。それに本当に魔女なら魔法でバァさん呼びを聞かれたかもしれないぞ?それで憤慨されたらヤバいだろ?」

 

 

「ハハハ。違いねぇ」

 

 

 

「«Дума(デュマ)より全車へ!警戒!敵機来襲!!»」

 

 

 

「おい嘘だろ!?本当に魔女のバァさんの呪いかっ!!?」

 

 

「言ってる場合かっ!?…来たぞっ!掴まってろ!!」

 

 

「おぉ…、боже(神よ)…っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

блядь(ブリャーチ)!今のは危なかったな…。あ~あ…、せっかくの煙草がちょん切れちまった…。

 

 ヴィクトル、無事か?…ヴィクトル?おいっ!?…嗚呼、Пиздец(畜生)っ」

 

 

「«ミハイル!そっちは大丈夫か?»」

 

 

「デュマ隊長、俺は無事だが、ヴィクトルが殺られた…。破片を頭に喰らって、即死だ…」

 

 

「«…блядь.(くそっ。)

 

 すまないがまだ暫くはそのままにしていてくれ。こちらの航空優勢が徐々に押し込まれ、移動場所が変更されたとの通達があった。これから直ぐに移動を再開する。動けるな?»」

 

 

Поньо.(ポーニャル。)風通しが良くなりましたが、まだなんとか動きます」

 

 

「«Поньо.(分かった。)念の為に上空直掩が付くらしいが、劣勢の中でどこまで当てになるか分からん»」

 

 

Поньо.(了解です。)

 

 …すまない、ヴィクトル。お前の煙草、貰うぞ」

 

 

 

 

「…ふぅ~。

 

 Совсе́м,(まったく、)Это ужасное поле битвы.(ここは酷い戦場だ。)

 

 

 …いや、戦場に良いも悪いも無いな」





Драгунова(ドラグノフ)でドローン撃墜

 これクルスク方面で実際にウクライナの武装ドローン、バーバ・ヤーガをロシア国家警備隊(Федеральная служба войск национальной гвардии Российской Федерации 日本ではロシア国家親衛隊やロスグヴァルディヤとされている。ロシア連邦政府に属する国内軍組織。)と契約し所属する日本人兵士(アヴディエフカの戦いに傭兵・民兵として参加。その後に国軍として契約)が成し遂げた実話を元にしています。


魔女のバァさんの呪い

 スラブ民話で登場する魔女、Ба́ба-Яга́(バーバ・ヤーガ)のこと。


 深海棲艦の空母ヲ級を初めてみた時の私の率直な感想が魔法使いの様だと思った事から、現場レベルで深海棲艦の呼称ネタとして使用。



 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。
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