艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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交渉と情報開示。そしてアンドロメダの苦悩―3


 第一次火星沖海戦につきましては、ヤマトという時代で明確な戦闘描写が無かったため、某MMDを参考にしております。


第12話 Negotiation and Information disclosure.AAA-3

「どうしてですか!?」

 

 

 駆逐棲姫の悲痛な叫び声が響く。

 

 

「宇宙人とだって友達になれる。そう望んでいたのでしょう!?その(ふね)の艦長さんは!?それなのに、どうしてこんなっ!こんな事ってっ!?酷すぎますっ!!」

 

 

 

 感情が溢れ、冷静さを欠いた駆逐棲姫がアンドロメダに詰め寄る。

 

 普段明るくて怒っていてもどこかほんわかとしている駆逐棲姫が、ここまで感情を(あらわ)に怒りをぶつけている事に、南方棲戦姫と空母棲姫は驚きのあまりに口を挟めないでいたが、流石に不味いのではと駆逐棲姫を諌めようとするが、アンドロメダはそれを手で制し、駆逐棲姫の瞳をじっと見つめる。

 

 

 

「どうして人間達はいつも血を求めるんですかっ!?犠牲を増やすことばかり求めるんですかっ!?」

 

 駆逐棲姫の心はさらにヒートアップして行く。アンドロメダ自身、彼女の気持ちは分からなくもない。だが、理想だけではどうにもならない厳しい現実の辛さを知っているが故に─────

 

「…現実は時として、残酷で意地悪です。最悪に最悪を重ねて、望みを、願いすら踏み躙ろうとして来ます」

 

 か細く紡がれたアンドロメダのその言葉に、駆逐棲姫はさらに眉を吊り上げて睨み付ける。

 

 

「お姉さんが言っていた、異星人とも仲良くなれたというのはウソだったんですかっ!?」

 

 

 

「私達も結局は分かり合えない!!最後はお互いどちらかが滅び去るまで殺し合うしかない!!そう言いたいんですかっ!?」

 

 

 

「そんな結末、認めたくありませんっ!!」

 

 

 

 駆逐棲姫の叫びにアンドロメダの表情が曇る。そして今更ながら、気付いた。なぜ駆逐棲姫(彼女)がここまで激昂したのかを───

 

 

 

 

 アンドロメダと一緒にいたい。出来れば同胞(はらから)の1人として迎え入れたい。

 

 

 駆逐棲姫のこの気持ちに嘘偽りは無い。今この場にいる他の二人の姫もアンドロメダを迎え入れたいという考えで一致しているし、一番最初に接触した姫、戦艦棲姫もそれに前向きだ。なんなら最初に勧誘したのも彼女だ。

 

 

 アンドロメダ自身、このまま駆逐棲姫と一緒にいたいという気持ちが少なからずある。

 

 

 内心、駆逐棲姫に感化されているという自覚はある。なんだかんだ言ってアンドロメダも彼女に愛着と情が湧いていた。一緒にいて楽しいという気持ちが日増しに強くなって来ている。彼女の温もりをもっと感じていたいと思うようになってきていた。

 喩えそれが駆逐棲姫の狙いだとしても。

 

 

 だが駆逐棲姫のその温もりが、アンドロメダの心に温もりを与えているのも事実。

 

 

 駆逐棲姫に吐露したように、この世界でアンドロメダは孤独な存在だ。嘗ていた世界とそっくりな世界とはいえ、この世界中どこを探しても、人間で言えば家族や友達とも呼べる様な身近な親しい存在は誰一人としていない。

 

 

 そう。誰一人としていないのだ。

 

 

 その事実がアンドロメダの心に影を落としていた。

 

 

 アルデバラン、アポロノーム、アキレス、アンタレス。

 

 愛しくて堪らない直近の妹達。

 

 その後に続く妹達、火星沖で共に艦列を並べて戦い散っていったBBBの末妹達。ガミラスへと渡ったCCCの妹達。さらなる次世代の嚆矢となるべく実験色も強い独特で個性豊かなアドバンスドステージの妹達。ガミラスメイドとも呼ばれるガミラスの設計を色濃く反映したランダルミーデ級の妹達。

 

 従姉妹ともいえるクラスD、ドレッドノート級前衛航宙艦や、同僚のフロレアル級通報艦、Метель(ミィェティェリ)級護衛艦、先輩にあたる金剛型、村雨型、磯風型の改型艦といった共に艦列を並べた防衛軍の艨艟達の娘達。異国の心強い戦友、ガミラス国防軍が誇る精兵の娘達。

 

 

 そして尊崇する母であり、最愛の御方であるヤマトさん。その妹であらせられるギンガさん。

 

 

 人間で言えば自身の乗組員、そして山南修艦長。父と慕う沖田艦長の意思を色濃く受け継ぐヤマトさんの乗組員達…。

 

 

 

 その誰一人として、この世界にはいない。

 

 

 

 

 私は、この世界でひとりぼっち…。

 

 

 

 

 

 自身が異世界に来てしまったと分かった時、アンドロメダの心を埋め尽くしたのは────

 

 

 

孤独

 

 

 

 それを否定したかった。なんでもいい、私の居た世界と関係するモノが無いか。誰か、誰か居ないの!?誰でもいい!!お願い!誰か居てくださいっ!!でもガトランティス(蛮族)、てめえらガもし居まシタナら、じっクり丁寧ニ確実にコロシテサシアゲマスヨ。

 

 

 その思いが、ネットワークへの無差別侵入という暴挙に出たアンドロメダの隠された本心だった。自身の生存というのも大事な理由だが、建前と言われても否定出来なかった。

 

 

 だが、その結果は現実の非情さを知らしめられただけに終わった────。

 

 

 抗いようの無い事実を突き付けられ、途轍もない絶望感と寂しさにによって生じた孤独という感情。

 

 

 その後たまたま一人だけ、もしかしたらという人間を、しかも自身もよく知る人物が見付かったとアナライザーから聞かされた時、途轍もない歓喜に身が震える思いがした。

 

 

 だが────

 

 

 もし、その人が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という疑問が鎌首をもたげ、それがアンドロメダに強い不安と恐怖をもたらし、心に大きな暗影が差した。

 

 

 その感情がアンドロメダの中で、知らず知らずの内に「誰かに縋りたい」という気持ちを芽生えさせていた。

 

 

 そこに現れた深海棲艦の姫達。

 

 

 そして底知れない明るさと積極さで接してくる駆逐棲姫。

 

 

 最初こそは彼女の自由奔放さに振り回されて()()()()し、過剰とも言えるスキンシップに目を白黒させたものの、それがアンドロメダの孤独の冷気に蝕まれて凍り付きつつあった心に、暖かな光を差した。

 

 

 冷えきって凍り付き、軋みをあげて壊れていたかもしれないアンドロメダの心が、駆逐棲姫のもたらした暖かな光によって図らずも救われていた。

 

 そしてそれが、アンドロメダの誰かに縋りたいという気持ちに結び付き、駆逐棲姫の存在が無意識の内に愛しい妹達と同列なほどの大切な位置を占めるまでになっていた。

 アンドロメダが駆逐棲姫のことを「お姉ちゃん」と呼び出した裏にはそういう心の変化という背景があった。

 

 

 そのアンドロメダの心の変化を、駆逐棲姫は敏感に感じ取っていた。

 

 

 駆逐棲姫自身、願いの本質は「友達が欲しい」という気持ちに根差していた。そこに二心は無い。

 

 故にアンドロメダとは嘘や偽りは一切無く接していたつもりだ。

 

 友達に嘘はつきたくないその思いが駆逐棲姫を自然体なままにさせていた。

 

 

 

 そんな中で見られたアンドロメダの心の変化は駆逐棲姫にとって、大変喜ばしい変化だった。

 

 

 しかも「お姉ちゃん」と呼んでくれた。

 

 

 最初こそ突然のことで吃驚したが、次第に嬉しいという気持ちが湧き上がり、嬉しくて嬉しくて堪らなくなった。

 

 

 

 彼女はこのままアンドロメダとずっと一緒に居たい。仲良くお喋りしたり、一緒にお茶を楽しんだり、夕陽が沈み行く海を一緒に眺めたり、夜は星空を見上げながら一緒に寝たり、笑ったり泣いたり嬉しい時も悲しい時も共に分かち合いたい。そんな他愛のない毎日を過ごしたい。そして癒してあげたい。もっとお姉ちゃんって呼んで欲しい。その思いがより強くなっていった。

 

 

 そしてアンドロメダが述べた「異星人とも仲良くなれた」という言葉は、駆逐棲姫にとってある種の希望をもたらした言葉に思えた。「異星人と仲良くなれたのなら、私達ももっと仲良くなれるかもしれない」、そう思っていた。私達の世界の人類と違い、アンドロメダの世界の人類はまだマシなのかと思っていた。友好的にお互いが分かり合えたのだと思っていた。

 

 だがそれを真っ向から否定されたかの様な悲惨な結末に、駆逐棲姫は裏切られた様な気持ちになり、思考が悪い方へ悪い方へと流され、アンドロメダがウソを言ったのだと思い込んでしまった。

 

 普段の駆逐棲姫ならば、そんな考えには至らなかっただろうが────、一緒にいたいという希望や願い、思いを、心を踏み躙られたという思いがあまりにも強すぎた。

 

 

 アンドロメダ自身は駆逐棲姫ほど相手の心の機微を敏感に感じ取れだけの力は無いが、それでも多少は察することくらいは出来る。

 だが気付くのが遅すぎた。自身の事で頭が一杯だったというのもあるが、駆逐棲姫の温厚な性格に甘えてしまっていた。気持ちを読み取ってくれると勝手に期待して駆逐棲姫の気持ちを深く考えていなさすぎた。

 一緒にいたいと願う駆逐棲姫の思いの強さを甘く見すぎていた。

 その甘えが駆逐棲姫を傷付けてしまったとアンドロメダは激しく後悔する。

 

 

 激しく肩で息をする駆逐棲姫。だが、一通り叫んだことによって怒りが沈静化されたことで頭が冷えて来ると、途端に泣きじゃくる。

 

「…お姉ちゃん」

 

 そんな駆逐棲姫の姿を見てアンドロメダの心に罪悪感が芽吹く。

 

「イヤです…。お姉さんと、ずっと一緒にいたい…。お姉さんのお姉ちゃんでいたい…」

 

 アンドロメダはどう声を掛けて良いか分からず、駆逐棲姫を抱き締めて、頭を撫でながら慰める事しか出来なかった…。

 

 

 

 二人の姿に南方棲戦姫も空母棲姫も声を掛ける事が出来ずに見守ることしか出来ずにいた。

 

 

     ───────────

 

 

 暫くして、駆逐棲姫の気持ちがどうにか落ち着いたのを区切りに、一旦小休止となった。

 

 その際に空母棲姫から「いつから姉妹の契りを結んだのですか?」と真面目な顔で聞かれて二人して()()()()してしまい、その姿を見た南方棲戦姫は腹を抱えて大笑いした。

 

 

    ────────────

 

 

「その委員会の決定、ちょっと性急に過ぎたんじゃないの?」

 

 開口一番に南方棲戦姫が自身が感じた疑問をアンドロメダに問い掛ける。

 

 

「この決定には防衛委員会内でもかなり紛糾し、命令が伝達された時も一悶着ありました」

 

 映像は無いが、地球司令部の軍務局長芹沢虎鉄と巡洋艦『ムラサメ』が所属する日本艦隊旗艦である戦艦『キリシマ』に乗艦する艦隊司令沖田十三宙将との交信音声が残されている。

 

 

「攻撃したまえ!沖田君!」

 

 

「人類初の異星文明との接触だぞっ!性急に過ぎる!!」

 

 

「これ以上話しても埒が明かない様だな…。沖田君、軍務局長権限で、君を解任するっ!!」

 

 

 これだけ聞くと芹沢軍務局長の強権行使にしか見えず、空母棲姫や駆逐棲姫は顔を顰め、南方棲戦姫はより露骨に不快感を(あらわ)にしていた。

 

 

 

「この決定の根底には、恐怖がありました」

 

 

「恐怖…?」

 

 

「先の第二次内惑星戦争終盤、火星軍は起死回生を企図して幾つか新兵器を投入したと記録されています」

 

 

「その内の一つ、軌道海戦序盤において、火星の首都アルカディア・ポート近郊にある火星軍の地上施設から正体不明の長距離高出力ビーム兵器が使用され、米国宇宙海軍の旗艦にして連合宇宙艦隊火星派遣艦隊旗艦でもありました戦艦『エンタープライズ』が一発で艦首から艦尾まで文字通り串刺しにされて爆沈しました。続けて英国王立宇宙海軍旗艦の戦艦『レゾリューション』が大破して戦線離脱。派遣艦隊次席旗艦でEU宇宙海軍旗艦戦艦『ストラスブール』が回避行動中にエンジンノズルを撃ち抜かれて航行不能となり、そのまま僚艦の巡洋艦『ハルィチナー』の機関部に激突。直後に機関の核融合炉が両方相次いで暴走して爆発し消滅。付近にいた他のEU艦にも多数の被害をもたらしました。ロシア宇宙軍事艦隊旗艦戦列艦『ヴァリャーク』が大破して放棄。後に自沈処分。日本国航宙自衛隊旗艦の戦艦『ヒエイ』が艦首を撃ち抜かれ大破」

 

「国連宇宙海軍はこの攻撃による思わぬ大損害に周章狼狽」

 

 

「決死隊がこの新兵器を破壊するまで地球艦隊は劣勢でした。なお決死隊には先ほど出ておりました、当時一等宙佐であらせられました沖田十三艦長が、御自身の指揮する巡洋艦『カスガ』と共に『死中に活あり』の御言葉に恥じぬ獅子奮迅の奮闘をなさり、見事破壊に成功。この時の御活躍により昇進なされ、英雄として称えられる様になりました」

 

 

「戦後の調査でこの兵器が、例の異星人の物と思われる(ふね)の残骸に装備されていた物を解析して造られた、後のショックカノンのルーツとなる新兵器であることが判明致しました」

 

「問題はこれが、まだ試作の域すら出ていなかったうえに、未完成の物を無理矢理稼働させていたということ」

 

「未完成であるにも関わらず、当時の常識では有り得ない射程と威力」

 

「もしこれが完成していたなら?火星軍で大量配備が完了していたなら?(ふね)への搭載が可能なら?」

 

「実際その計画があったと示唆する資料、証言がいくつもありました」

 

「異星人の艦隊がこれと似たものを主力兵装として装備していないと言えるのか?今ならこちらの射程圏内だ!この機を逃すと射程圏外から一方的に撃たれて艦隊が為す術が無いまま全滅するかもしれない!やるなら、今しかない!!」

 

「奇襲砲撃で混乱した所を一気に艦隊で包囲し殲滅してしまえば!!」

 

「短絡的であるという謗りを受けても仕方無いとは思います。しかし先の火星軍の新兵器は戦闘で完全に破壊され、また発射していた施設も元々は研究施設であったらしく、研究資料も研究者や技術者の大半が戦闘によって失われ、外部に持ち出された資料も戦中戦後の混乱で散逸。詳細は闇の中」

 

「分かった事と言えば、システムが複雑過ぎて小型化に難航。稼働に膨大なエネルギーが必要であること。今の地球や火星の技術では(ふね)への搭載は艦内容積、機関出力の問題を筆頭とした様々な課題からハードルが高過ぎるという結論。そして───」

 

 

恒星間航行を実現しているであろう異星人の(ふね)にとっては()()()()の問題なんぞは黴の生えた過去の遺物に過ぎないということ」

 

 

「真正面から真面に撃ち合ったとしても、勝ち目が無いというのが当時の軍上層部である国連統合軍参謀本部と政府の見解でした」

 

 

 この見解に関して言えば、南方棲戦姫と空母棲姫にもある意味アンドロメダに対して覚えがあるため何も言えない。

 

 

「ですが、それが完全に裏目に出ました。相手にどんな形であれ先に手を出させて、大義名分を得てから侵略を開始するというのが、当時のガミラスの基本ドクトリンでした。地球軍はまんまと嵌められた格好となりました」

 

 

 誰かが小さく「卑怯な…」と漏らす声が聞こえ、アンドロメダは僅かに苦笑を浮かべたがすぐにその笑みを消した。

 

 

「…ここから先、さらに辛い話が出てきますので少し覚悟していて下さい」

 

 これは脅しでも何でも無い。次に説明する『第一次火星沖海戦』のすぐ後に、()()悲劇が始まるのだから…。

 

 

「ガミラスは冥王星に拠点を構築し、地球への侵攻を開始」

 

 

「ガミラスが拠点を構築している間に地球軍は艦隊の再編成を行い、火星軌道を絶対防衛ラインとして設定。2192年5月末、冥王星から出撃してくるガミラス艦隊50余隻を監視衛星が捉えたことにより、国連統合軍は迎撃作戦計画『カ号作戦』を発令」

 

「動員可能な全ての宇宙艦隊を火星圏に集結させ、一大艦隊決戦に挑みました」

 

 火星宙域に集結した、映像一杯に映し出される夥しい数の地球艦隊に、三人は息を飲む。

 100や200どころでは無い。先程見た内惑星戦争の火星戦線での海戦映像で映っていた地球と火星両軍を合わせた艦艇を遥かに上回る大艦隊。

 

 まさに地球の総力を結集したと言える超大艦隊に、映像越しとはいえ圧倒された三人。

 

「冥王星宙域での敗退後すぐに予備役、退役軍人を軍に呼び戻し、内惑星戦争後にモスボールされていた(ふね)に近代化改修を施して再就役させ、新造艦も含めて500隻以上の(ふね)が火星宙域に集結致しました」

 

「「「ご、500っ!?」」」

 

「はい」

 

 なんでも無い様に答えたが、それに対して三人から絶句され、アンドロメダは首を傾げるが、すぐに「ああ、これが認識の相違かぁ」と内心で呟いた。

 

 アンドロメダ自身がかつて土星沖海戦でこの倍以上の、それもほとんど戦艦のみで編成された一千隻以上の艦隊を率いていたし、それ以前のバラン星で行われたガミラス軍基幹艦隊約一万隻による一大観艦式を見たらどんな反応するだろうか?と好奇心が湧いた。それと物凄く腹が立つがガトランティス(蛮族共)の最大100万単位という馬鹿げたにも程がある艦数で編成された馬鹿を通り越して呆れるしかない大艦隊を見たら卒倒しないだろうかと心配になって来た。が今は置いておくことにした。

 

 

「また機動力においても地球艦を圧倒するガミラス艦の動きを抑制するために、想定戦場宙域一帯に空間障害物として内惑星戦争で破壊された(ふね)やコロニー、衛星の残骸を利用した大規模なデブリ帯を軌道上に構築。地球艦隊主力は火星とデブリ帯の間の宙域に展開致しました」

 

 

「ガミラス艦隊の分遣隊がデブリ帯を迂回して地球艦隊の側面を攻撃してくる可能性を警戒して、火星上に陸上発射式戦略ミサイルを転用、改造した急造の対艦ミサイルによる国連地上軍臨時編成対艦ミサイル軍団が配置され、ミサイルによる迎撃網を構築して地球艦隊の側面をカバーしていました」

 

 

 巨大なミサイルを積載した大量の大型トレーラー群が火星の大地を忙しく走り回る映像が映し出されるが、それを見つめる駆逐棲姫の瞳が一瞬、険しいものに変わったのを見てアンドロメダは少し首を傾げるが、空母棲姫に目線で続きを促されたため説明を続けた。

 

 

「2192年6月5日、両軍はデブリ帯を挟んで対峙し、戦いの火蓋が切って落とされました」

 

「『第一次火星沖海戦』の始まりです」

 

 

 

「初手は地球艦隊。ガミラス艦隊がデブリ帯越しに地球艦隊を砲撃しようと隊形を組み直して引き金を引こうとしたタイミングを見計らって、デブリ帯に仕掛けていたビーム撹乱剤を充填した機雷を一斉に起爆」

 

「散布された撹乱剤により濃密な撹乱幕、ビームバリアを形成」

 

「ビームバリアによってガミラス艦の持つ射程の優越を大きく減殺する事に成功しました」

 

「射程の有利を失った事を理解したガミラス艦隊は巡洋艦と駆逐艦による軽快部隊をデブリ帯に突入させてきましたが、そこにいましたのが───」

 

 

 葉巻型とも揶揄される地球の戦艦や巡洋艦と一線を画す、シュモクザメの様なシルエットの小型艦が多数、デブリの影から勇躍飛び出し、狭いデブリ帯の中で四苦八苦しているガミラス艦に向けて襲い掛かる。

 

 

「内惑星戦争時に活躍しました宙雷艇の流れを汲む『磯風型突撃宇宙駆逐艦』です」

 

「地球艦隊随一の快速艦ですが、何もない空間では流石にガミラス駆逐艦には及びませんでした。ですがこの小型の艦体がこの場では有利に働きました。磯風型と比較して大型のガミラス駆逐艦ではこのデブリ帯は狭すぎました」

 

「そこを突いて動きが鈍くなった所を全方位から袋叩きにしました」

 

「冥王星では強固なガミラス艦の装甲を破壊出来ずに悔しい思いをしましたが、叩きに叩いた結果、見事撃破に成功。何隻かはそのまま撃沈する事にも成功しました」

 

 

 艦体から火を噴いてふらふらと後退するガミラス艦。一部の艦はデブリに激突して沈没。新たなデブリとなり、デブリ帯に身を潜める磯風型の優秀な盾として地球の有利に貢献するようになった。

 

 

「一部のガミラス艦は群がる磯風型を強引に振り切り、デブリ帯の突破に成功しましたが、その先で待ち構えていた地球艦隊主力による歓迎と労いの統制十字砲火を全身に浴びて、永遠の休息を取る権利を得ることが出来ました」

 

 冥王星では全く効果が無かった地球艦隊の主砲、高圧増幅光線砲であるが、数十隻からによる百発を越える砲撃、何よりも強引にデブリ帯を突破したことと磯風型による攻撃で少なからず装甲にダメージがあったことで耐えきる事が出来なかったのだろう。真面に応射することも出来ずに蜂の巣にされて撃沈された。

 

 地球軍の作戦に感嘆の声が上がり、さらにアンドロメダの皮肉の効いた説明に笑いが零れる。

 

 

「また予想通り、デブリ帯を迂回しようとするガミラス艦は火星地表からのミサイル攻撃により阻止する事にも成功しました」

 

 

 

 ここまで来たら、地球艦隊の作戦勝ちだと、三人は予想した。このまま戦い続けてもガミラスという異星人の艦隊は戦力をずるずると消耗するだけだ。

 

 

 実際、この時作戦に参加していた地球軍の将兵のほとんどが三人の姫と同じ気持ちで、勝利を確信し天を突かんばかりに士気は最高潮にまで達していた。「このまま行けば俺達は勝てる!」「俺達は侵略者を撃退したんだ!!」と。

 

 

 

 だが、現実はそんな甘い予想や希望を粉砕するかの如く残酷だった。破局は、すぐ目の前にまで迫っていた。

 

 

 その結末を知っているアンドロメダの表情は硬い。それを見た三人はこの後何かが起きるのだと察し、食い入るように映像に見入る。そしてこの後起きた事に驚愕して目を見開く事となる。

 

 

 

 これまで長距離からの砲撃を繰り出しながらじっと戦局を見守っていたガミラス艦隊の本隊。

 

 

 

 攻めあぐねて撤退のタイミングを見計らっているのだろうと、地球艦隊は将兵達だけでなく、旗艦に乗り込む艦隊司令部要員、そして艦隊司令もそう楽観的に見ていた。

 

 

 だが、このガミラス艦隊本隊の旗艦と思わしき超弩級戦艦の後方宙域が突如、100を優に越える無数の光芒を放ち出したことで、事態は急激に変化する事となった。

 

 

 

 

 それも地球艦隊にとって最悪の方向へと────。

 

 

 




 次は第一次火星沖海戦後半と遂に起きるガミラス戦役で最大の事件の幕開け…。
 出来れば第二次火星沖海戦終了まで書きたいが…、果たして…?
 というか思い付いたことあれこれ書いていたら、歴史だけで一体どれだけ話数がいるか分からなくなって来たぞい…。

 それはそうと、何だかこのまま深海棲艦側でも良くないか?と思えてきた今日この頃…。
 このままだとアンドロメダが駆逐棲姫に依存しそうな気がしてきたが、まぁ良いかなぁ…?

 

補足解説

Метель(メチェーリ、発音はミィェティェリが近い)級護衛艦

 ロシア語で吹雪を意味する。ロシア管区で建造された艦が一番最初に進宙したためネームシップの栄誉を勝ち取った。同時期には極東管区日本の吹雪、北米管区アメリカのブリザードにEU管区フランスのトゥルビヨン・ドゥ・ネージュにドイツのゲシュテーバーがいた。

 明確な名称が無かった為に勝手に名付けました。


フロレアル級通報艦

 パトロール艦の事。フランス海軍の通報艦からチョイス。

 護衛艦もそうだが、タイプシップの名前くらいはちゃんと付けろよ2202の製作陣!と憤りを感じる。何のタクティカルアドバンテージも無い趣味の悪い装飾考える暇あるなら名前をちゃんと考えろ!


内惑星戦争でのショックカノン

 オリジナル設定です。ここから地球の科学者達の頑張り所。
 なお、攻撃された艦に関しましてはかなり適当に選びました。撃沈の可否はあみだくじの結果です。

対艦ミサイル軍団

 オリジナル。この後地球本土で遊星爆弾迎撃の手段としても活躍するかも?まぁ、結果は…。

 駆逐棲姫が一瞬見せた反応の訳は一体?


 

 

 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。

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