艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 交渉と情報開示。そしてアンドロメダの苦悩。


 一気に2199本編を終わらせるぞー!!てなわけで巻いて行きます!


第16話 Negotiation and Information disclosure.AAA-7

 愛するお母様の素晴らしき神話の如きご活躍の数々を朗々と語る折角の機会を、自らのミスで()()にしたことで精神的ダメージを受けて塞ぎ込んでしまったアンドロメダ。

 

 結果が分かりきってしまっている話を語っても、つまらないだけだ。

 

 

 とはいえおおよその概略程度は説明しておかなければ話が()()()()()()かもしれないからと、泣く泣く要点だけ掻い摘んで語ることとした。

 

 

 イスカンダルからの二人目の使者、第二皇女サーシャ・イスカンダル様が自らの命と引き換えに地球にもたらしてくれた波動エンジン最後のピース、『波動コア』。

 

 サーシャ様の太陽系進入を支援するために冥王星へと出撃して行った、地球軍最後の宇宙艦隊、第一連合艦隊。

 

 先生から聞いた裏の話は全て伏せた。

 

 

 だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だとされていた事だけは、話した。

 

 

 そして────

 

 

 

 

「古代、儂に続け!」

 

 

「沖田さん、僕は逃げません。『ユキカゼ』は戦線に(とど)まり、『キリシマ』撤退を援護します」

 

 

「多くの犠牲を払ったが、作戦は成功した。ここは退()くんだ!」

 

 

「それがどのような作戦か、問いはしません」

 

「ですが沖田さん、どうか見逃して下さい。僕は断固として戦います。その為に自分は、みんなはここにいるんです」

 

 

「古代…。戦場に巣食う死に魅入られるな」

 

「明日のために、今日の屈辱に耐えるんだ!それが男だ!生きていればこそ、まだ明日に希望は!」

 

 

「だからこそ本艦は戦線に(とど)まり、『キリシマ』の撤退を援護します。このままでは地球艦隊は全滅です。それでは地球を守る者がいなくなってしまいます」

 

「沖田さん、貴方はこんな戦場(ところ)で死んではいけない人だ!地球は、貴方を必要としているんです!」

 

 

「古代、それはお前も同じだ。同じなのだぞ!古代!!」

 

 

「ありがとうございます。散っていった戦友達への手向けとして、その言葉は自分が預かって参ります」

 

 

「古代、頼むっ!分かってくれ!!」

 

 

「お元気で。地球の事を、頼みます」

 

 

 メ号作戦終盤になされた二人の男達の掛け合い。この後流れてくる『ユキカゼ』乗員達による『銀河航路』の合唱。よく聞けば、『ユキカゼ』艦長古代守が乗員へと謝罪する言葉も歌声に混じって聞こえ、その後に古代守も合唱へと加わる。

 

 これから死地へと赴くというのに、その歌声には一切の悲観、悲壮、絶望が感じられなかった。

 

 

 それが余計に聞く者の胸を締め付ける。

 

 

「長官っ!」

 

 

 思えば山南艦長はこの日の事をずっと気にしていた(ふし)があったと、キリシマさん(先生)は漏らしていた。

 

 助けに行きたくとも助けに行けない。その気持ちが(しこ)りとなっていたからこそ、あの日、あの時火星戦線での『ヤマト』救出の即断に繋がったのだと、アンドロメダは硬く信じている。

 

 

「山南君。針路そのままだ…」

 

 

 平坦な声で告げる沖田司令。一拍おいて「針路そのまま!」と告げる山南艦長。だが二人とも本心を圧し殺し、無理に絞り出した声であることは明らかであった。

 

 

 ひときわ大きなノイズが響き渡る。『ユキカゼ』が被弾した際に艦内を駆け巡った爆発音を無線が拾ったのだ。

 

 

 ここで再生されていた音声データが終了した。

 

 

 誰も一言も発しない。

 

 

 あまりにも壮絶。あまりにも悲惨な地球艦隊の最期。

 

 

 思うところが無い訳ではない。だが批判は出来なかった。

 

 批判する()()ならば簡単だ。しかし他に方法があるか?と問われたら、返す答えが思い浮かばない。

 

 

 ユリーシャ様曰く、艦隊が動いたことによってガミラス軍の警戒網に隙が生じたからこそ、太陽系に進入出来た。と語られたという記録があり、陽動作戦を行わないという選択肢は初めから無かったとアンドロメダは語った。

 

 別方面で陽動作戦を行おうにも、第二次以降はガミラス軍も真面に艦隊を動かして来なくなっていたために、乗ってこない可能性が高かったという。

 

 どう足掻いても、地球艦隊は冥王星へと向かうしか無かった。

 

 

 何故陽動が秘匿されたか?

 

 

 ガミラス戦役を通して蓄積されていた、()()()()()()()()()()()()()()による不測の事態に対する恐怖が原因である。

 

 サボタージュならばまだマシだ。だが叛乱やテロが発生したら目も当てられない。

 

 事実、テロが疑われる事件にユリーシャ様が巻き込まれ、以後地球を発ちイスカンダル星があるサレザー恒星系に到達するまでの間、かなりの不自由をユリーシャ様に強いる事となった苦い事態があった。*1

 

 万が一、艦隊乗員が異星人に対する反感や不信感、或いは憎しみなどの拒絶反応によって、予想される最悪の事態が発生してしまったら、それは即、人類の滅亡へと繋がる。

 

 人類存亡の瀬戸際に何を馬鹿な?と思うかもしれないが、人間は感情の生き物だ。

 

 後々振り替えれば、なんと愚かなとしか言い様の無い行動に感情を優先した結果、実行してしまうという事例は人類の歴史を紐解けば枚挙に(いとま)がない。

 

 司令部はそれを恐れ、作戦の真意を秘匿した。

 

 

 ここまで言われたら、何も言い返せない。何よりそれを語るアンドロメダ自身が一番辛い顔をしているのだから。

 

 この時()()()()を務めた『ユキカゼ』艦長古代守の英断と『ユキカゼ』乗員達の犠牲が、結果として地球を、人類を救う大きな切っ掛けとなったのだが、アンドロメダは自身の存在がユキカゼと乗員二十三名の名誉を傷付けていると言う罪の意識があり、彼らに対して申し訳ないという気持ちから、話すのに少なからず抵抗があった。

 

 

「…ノイズに混じって二人の女性の声が僅かに聞こえましたが」

 

 

「私にも聞こえたわ。何かを託したかのような感じだったけど…」

 

 

「うん。それに『やまと』って言葉も聞こえたよ」

 

 

 アンドロメダはあの二人の声が聞き取れたの?と驚いた。

 

 

「ユキカゼさんが先生…、キリシマさんに地球と、地球で待つヤマトさんの事を託されました…」

 

宇宙戦艦『ヤマト』…、イズモ計画の代わりに推進されましたヤマト計画の根幹を成す恒星間航行用超弩級宇宙戦艦、BBY-01『ヤマト』

 

「人類最後の希望を、ユキカゼさんはキリシマさんに託されました」

 

 

 このやり取りは人間の耳にはノイズにしか聞き取れない。聞き取れるのは自身と同じ(ふね)の魂と呼べる存在だけだ。

 

 それが聞き取れたと言うことは、彼女達深海棲艦も私と近しい存在なのだという実感がしたが、今は取り敢えず置いておくこととした。

 

 

 この後『キリシマ』は火星でサーシャ様から波動コアを受け取った要員二名を回収した後、地球へと帰投した。

 

 残念ながらサーシャ様は、搭乗していた宇宙艇の事故が原因で亡くなられ、火星の大地に埋葬されたという…。

 

 それを語るアンドロメダの表情はとても悲しそうだった。

 

 

 そして『キリシマ』が帰還した地球では、初めてイスカンダルという星の存在とイスカンダルからの申し出を受けたヤマト計画の全容が全世界に向けて公表され、その際に女王スターシャ猊下からのメッセージも公開された。

 

 

「私はイスカンダルのスターシャ。あなた方の地球は今まさに、ガミラスの手で滅亡の淵に立たされています」

 

「私はそれを知り一年前、妹のユリーシャに次元波動エンジンの設計図を託して地球へ送り出しました」

 

「あなた方がもし、それを理解し完成させていたならば、イスカンダルへと来るのです。私達の星には、汚染を浄化し惑星を再生させることが出来るシステムがあります」

 

「残念ながら、私がこれを地球へと届けることはもう出来ません」

 

「今回新たに次元波動エンジンの起動ユニットである波動コアをもう一人の、妹サーシャの手であなた方に届けます」

 

「私はあなた達が未知の苦難を克服し、このイスカンダルへと来ることを信じています。私は、イスカンダルのスターシャ…」

 

 

 

 この時アンドロメダは映像に映るスターシャの姿に対してずっと片膝を床に付けての跪いた姿勢だった。

 

 そして映像が終わった直後───

 

イスカンダル猊下…(ルード・イスカンダル…)

 

───小さくそう呟いていた。

 

 その態度は明らかに()()()()()()()()()()()()()()()()()であり、三人は違和感を覚えた。

 

 

 だがその後の『ヤマト』の公表から続く怒涛の連続により、何時しか忘れ去られた。

 

 

 

『ヤマト出港のため全世界からのエネルギー支援』

 

 

『惑星間弾道弾迎撃と『キリシマ』の奮闘、そして見送り』

 

 

『人類史上初のワープ』

 

 

『木星、ガミラス浮遊大陸での波動砲試射

 

 

『冥王星基地攻略作戦、通称『メ2号作戦』の成功』

 

 

 

────と太陽系を出るまでの間だけでも次から次へととても目まぐるしかった。

 

 

 『ヤマト』自体がかつての式典で復元されて沈められた戦艦大和の遺物に偽装される形で建造された*2という普通なら無茶なというべきなことも、その後のことに比べたら些事でしかない。

 

 

 冥王星でのガミラスによる()()()()()()()()()()()()()反射衛星砲に驚かされていたが、それ以上に木星での出来事が一番衝撃が大きかった様だ。

 

 先に『アンドロメダ』による小惑星帯での試射の映像を見ていたとはいえ、まさか大陸が()()()()()消滅するとは思いもしなかった。

 

 

 この後波動砲の原理『波動エンジン内部で開放された余剰次元を射線上に展開。超重力で形成されたマイクロブラックホールが瞬時にホーキング輻射を放つ兵器である』と説明したが、おそらく頭に入ってはいなさそうである。

 

 

 それほどまでに木星での出来事はあまりにも衝撃が過ぎた。

 

 

 だがここでアンドロメダは更なる衝撃を与えるかもしれない発言をする。

 

 

 ずっと気にしていた、自身が(いか)りと憎しみの『魔』に呑まれて南方棲戦姫に波動砲を撃とうとしたことを。

 

 

 そしてそれが不調のエンジンの暴走を引き起こし、暴発によって広範囲に及ぶ大爆発、或いは局所的ブラックホールを発生させ周辺に展開していた深海棲艦全てを巻き込んで消滅させかけていた事を素直に告げ、謝罪した。

 

 

 駆逐棲姫は先に聞いていたが、南方棲戦姫と空母棲姫にとっては初耳の事態だ。

 

 

 あの時、死を本当に意識したが、まさかこれ程の大事(おおごと)な事態が起きていたとは予想外に過ぎた。

 

 

 だがそれだけだ。

 

 

 二人はアンドロメダが(いか)りに呑まれていたことを察していた。

 

 

 そして防御を貫く為に最大火力を叩き込むという判断その物は間違っていないとアンドロメダに語った。しかし───

 

 

「でもね、だからと言って自滅するような真似は駄目よ」

 

 その南方棲戦姫の一言に頷く空母棲姫と駆逐棲姫。

 

 特に駆逐棲姫は三人の中で最もアンドロメダとの付き合いが長い分、情も深く別離は嫌だという気持ちが最も強く、アンドロメダの背中に抱き付いて顔を押し付けていた。

 

 アンドロメダはそんな駆逐棲姫への申し訳無い気持ちで意気消沈するが、南方棲戦姫はここで敢えてそれを無視して発言する。

 

 

「貴女が何故あそこまで怒りを(あらわ)にしたのか、理由が何なのか、私達はそれが知りたい」

 

 

 その要求、いや要望にアンドロメダは一瞬考える素振りを見せてから答える。

 

 

「…分かりました。ですが今話していることもその事に関わりがありますので、これから更に巻きで進めます」

 

 

 太陽系を出て、ひょんな事から実現したガミラス人との初接触。

 

 ガミラス帝国国防軍銀河方面第707(ナナマルナナ)航空団所属メルダ・ディッツ少尉。

 

 青い肌を持つ純血ガミラス人──それも女性──の姿に驚く三人。

 

 

 『ヤマト』を撃沈寸前まで追い詰めた、宇宙の狼との異名を持つ、ガミラス軍最強と言っても過言ではないエルク・ドメル上級大将率いる第6空間機甲師団──通称、ドメル軍団──との激闘、『カレル163沖海戦』。

 

 圧倒的火力と防御力を誇る『ヤマト』を持ってしても、それを圧倒してくるドメル軍団の練度と組織力。何よりも彼らを指揮をするドメル司令の統率力には舌を巻かされる。

 

 だが突然の転進で『ヤマト』は九死に一生を得る。

 

 

 航海の遅れを挽回すべく、長距離空間跳躍システム『亜空間ゲート』のあるバラン星への殴り込み。そしてその宙域で行われていたガミラス軍基幹艦隊総数一万隻が集う観艦式への大胆不敵な中央突破作戦。

 

 『死中に活あり』を標榜する沖田艦長ならではの『沖田戦法』。

 

 

 大マゼラン銀河へと到達した『ヤマト』。

 

 

 宿敵ドメルとの決着、『七色星団海戦』での死闘。

 

 

 ドメル司令率いる空母艦隊による苛烈極まる猛攻。

 

 艦載機をヤマト近辺にワープさせるというガミラスの最新鋭兵器『瞬間物質移送器』の脅威!

 

 ついには『ヤマト』最大の武器である波動砲も使用不能となり窮地に立たされる!

 

 

 だが、『ヤマト』はその猛攻を耐えきった。

 

 

 さらには一瞬の隙を突いて、戦況を覆した。

 

 

 最後はドメル司令の乗艦、ガミラス最強クラスの超弩級戦艦『ドメラーズⅢ世』との一騎討ちとも言える砲撃戦をも征した『ヤマト』。 

 

 

 そして────

 

 

「私はガミラス銀河方面作戦司令長官、エルク・ドメル」

 

 

 海戦の終盤に行われていた二人の智将同士による通信越しによる会話は、映像として残されていた。

 

 映像に映る、智将エルク・ドメルの姿を初めて見た三人の感想は「若い」だった。上級大将という高位の軍人にしては、あまりにも若い容姿にそう感じたが、アンドロメダから「地球人換算で38歳です」と言われ、本当に若かったと驚く。

 

 

「この様な形で残念ですが、やっと、お会いできましたな」

 

 

 そう語りながら微笑みかけるドメル司令。先ほどまでの血で血を洗うかのような死闘が無ければ、まるで長年の友人に向けるかの様な穏やかな笑みに三人の姫は驚かされる。

 

 

「私が本艦の艦長、沖田十三だ。それは私も同じ思いです」

 

「沖田艦長。貴方の見事な采配に心から敬意を表する」

 

 

 その言葉に嘘偽りがあるようには思えない。心からの称賛であると感じ取れた。

 

 対する沖田艦長もまるで友人に語りかけるような穏やかな口振りで、軍人とは思えないことを言う。

 

 

「ドメル司令、既に勝敗は決した。私は無用な争いは望まない。このまま我々を行かせてくれまいか?」

 

 

 それは、とても勝者とは思えない、真摯な態度だった。 

 

 沖田艦長の器の大きさが現れていた。

 

 

 暫し流れる沈黙。

 

 

「……それは出来ない。貴方も軍人ならそれは分かるはずだ。ここで『ヤマト』を見逃せば、共に戦った部下達は無駄死にだったことになる」

 

 

「沖田艦長。軍人として、いや一人の男として最後に貴方の様な男と戦えたことを、心から誇りに思う。君達地球人(テロン人)と我がガミラスに、栄光と祝福あれ!」

 

 

 直後、ドメル司令は『ヤマト』を道連れにすべく自爆を敢行するが、『ヤマト』は健在だった。

 

 

 何故自爆という方法を選択してまで、『ヤマト』を葬ろうとしたのか?

 

 

 その理由は再び(おもて)へと姿を現したユリーシャ様によって明かされた、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったという衝撃の事実。

 

 

 そう。『ヤマト』がイスカンダルへと向かうということは、ガミラスにとっても自身のテリトリーを侵されるという行為に他ならない。

 

 

 しかも『ヤマト』には大量破壊兵器と言える『波動砲』が装備されている。

 

 

 大陸をも一撃で消し飛ばせるこの兵器がもし、イスカンダルへと行く()()()()自分達の星へと向けられたら?

 

 

 現在、地球とガミラスは戦争状態である。

 

 

 そしてどんな理由であれ、地球を赤く焼け爛れた醜い星へと変えたのは、ガミラスだ。

 

 

 報復しようとする理由には十分すぎる。

 

 

 『ヤマト』にとって波動砲は降りかかる火の粉を払うための、自衛のための手段であったが、そんな都合はガミラスには預かり知らないし、同じ人間である以上、善意という不確かなものに期待するということは、職業軍人であるドメル司令には出来なかった。

 

 

 それ故に、自身の命を擲った。

 

 

 だが、彼が守ろうとしたガミラス本星にはある狂気が渦巻いていた。

 

 

 

 首都『バレラス』とそこに住まう数多のガミラス臣民共々『ヤマト』を葬り去ろうとした総統、アベルト・デスラーの狂気。

 

 

 だがそれも『ヤマト』の活躍と、軌道上に浮かぶ空間機動要塞都市『第2バレラス』の崩壊、それに巻き込まれた狂気の独裁者、デスラー総統の死により未然に防がれた。

 

 

 デスラー独裁体制の崩壊…。

 

 

 ガミラスは副総統レドフ・ヒスの主導のもと民主化へと舵を切り、謀らずも助けられたことで『ヤマト』、そして地球への蟠りが薄れることとなる。

 

 

 

 そして、2199年7月16日、『ヤマト』は遂に約束の地、イスカンダルへと到達

 

 

 だが、波動エネルギーを兵器に転用してはならないというイスカンダル最大の禁忌を、知らなかったとはいえ犯してしまっていた地球に不信感を(あらわ)にするスターシャ猊下。

 

 

 

 スターシャ猊下から告げられた、メ号作戦で戦死したと思われていた『ユキカゼ』乗員の一部と古代守が、実は生きてガミラスの捕虜となり、護送中の事故でイスカンダルへと流れ着いていたことと、その時の負傷がもとで、イスカンダルの地で亡くなったこと────。

 

 

 そして古代守が死の直前に遺したメッセージ。

 

 

「私は国連宇宙軍所属、駆逐艦『ユキカゼ』艦長古代守だ」

 

「私はガミラスの捕虜となり、実験サンプルとして護送される途中、難破した所をイスカンダルの女性に助けられた」

 

「そして、地球の(ふね)がここに向かっていることを彼女から聞いた。このメッセージが届いているということは、君達は無事に辿り着いたということだろう」

 

「出来ることなら、俺も君達の(ふね)で一緒に地球に帰りたい」

 

「だが、それまで俺の体は持ちそうに無い」

 

「最後に、言い残して置きたいことは二つ」

 

「一つは、俺達は異星人とだって理解しあえるということだ。俺はそれをこの星に来て教えられた。それは忘れないで欲しい」

 

「そしてもう一つは、弟の進に伝えて欲しい」

 

「進、俺の分まで生きてくれ!生きて必ず、青い姿を取り戻した地球を瞳に焼き付けてくれ!」

 

「貴艦の航海の安全を祈る。どうか地球へ、無事な帰還を!」

 

 

 イスカンダルからのコスモリバースシステムの譲渡。

 

 

 スターシャ猊下から明かされた、かつてのイスカンダルの愚行。波動エネルギー兵器による大量虐殺の歴史。

 

 

 その歴史を繰り返さないという願いも込めて、コスモリバースシステム譲渡の条件として行われた波動砲の封印と、交わされた約束───

 

地球・イスカンダル和親条約

 

 

 コスモリバースシステムを受け取り、帰路を急ぐ『ヤマト』の前に立ち塞がった、死んだと思われていたデスラーを何とか返り討ちにした。

 

 

 

 そして─────

 

 

 

「地球か、何もかも、みな懐かしい…」

 

 

 

 

 西暦2199年12月8日、『宇宙戦艦『ヤマト』地球に帰還

 

 

 

 再び青さを取り戻す地球。

 

 

 

 それに目を奪われる三人を尻目に、アンドロメダは密かに涙を流していた。

 

「お父様…」

 

 その日、アンドロメダが父と慕う沖田艦長は、地球を眺めながらその58年の生涯を閉じ、永遠の眠りに付いていた。*3

 

「お父様…、せめて一目でも…、アンドロメダはお父様に…、お会いしとう御座いました……」

 

 啜り泣きながら小さく呟かれたその言葉を、駆逐棲姫は聞き取っていた。

 

 

 沖田という人間が、アンドロメダにとって如何に大きな存在であるかを、アンドロメダの言葉と態度から実感した。

 

 人間が大嫌いと広言している駆逐棲姫であるが、沖田という人間は嫌いになれそうに無いと思ったし、自分は沖田という人間の代わりにはなれないとも思った。

 

 アンドロメダにとって大切な存在でありたい。彼女の心の支えになりたいと、駆逐棲姫は考えるようになっていた。だが一番にはなれそうには無かった。

 

 でも、一番で無くても良い。私はお姉さんの頼れるお姉ちゃんとして頑張ろうと前向きに考えた。

 

 

 

 ここで暫し休憩となる。

 

 

 

 南方棲戦姫は新たに出されたコーヒーを、今度は砂糖とミルクをたっぷりと入れて一口啜る。

 

 程好い甘さが染み渡る。

 

 

 ほうっと一息吐くと、頭の中を整理する。

 

 

 

 英雄譚と言ってもいい、『ヤマト』の活躍。

 

 

 しかもあまりにも違い過ぎる戦争のスケール。

 

 

 それに終始圧倒されっぱなしで頭の処理が追い付かず、この休憩は大いに有り難かった。

 

 

 だが落ち着いてくると、ある矛盾に気付く。

 

 

 『波動砲の使用を禁じたはずの地球・イスカンダル和親条約

 

 

 だが、アンドロメダには波動砲が──それも改良型か新型が──装備されている。

 

 何よりも彼女は言った。『太陽系内に侵攻してきた敵性星間勢力の大艦隊を地球艦隊が装備する最大火力、波動砲の統制射撃によって殲滅する』防衛作戦戦略『波動砲艦隊構想』に基づき私は造られた。と。

 

 しかも艦隊ということは、彼女と同じ様な存在がまだ複数いるというわけだ。

 

 

 地球は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということで間違いないだろう。

 

 

 それに関してどうこう言うつもりはない。…多少、彼女の世界の地球人類に対して不快感が有るが、それを彼女に言っても仕方がないし、それは彼女という存在に対する否定にしかならない。

 

 彼女を傷付ける様な事は言いたくない。彼女とは末長く良いお付き合いを続けたいと思っている。

 

 

 それにこの後その事についても話すだろうから、こちらから切り出す物でもないだろう。

 

 そう頭の中で一応の結論を出した時、横にいた空母棲姫が主計科の妖精に礼を言いながらカップを返すと、心配そうな顔で南方棲戦姫の顔を見やると────

 

「大丈夫でしょうか?彼女、さっき少し顔色が…」

 

 そう囁かれ、南方棲戦姫はスッと視線をアンドロメダがいる方向へと向ける。

 

 

 今彼女は「すみません…。少し気分が…」と言って、少し前から艤装のエンジンユニット部分に駆逐棲姫と共にいるのだが───

 

 

 

ゲボッ!

 

 

 

 突然自身の胸を押さえて苦しみだし、片手を艤装の甲板に付く様にして踞ったかと思うと、嘔吐したのを見て、驚いてカップを落としそうになった。

 

 

 駆逐棲姫が慌ててアンドロメダの(そば)にしゃがみ込み、声を掛けながら彼女の背中をさすりだした。

 

 

 自身の主人(アンドロメダ)の異変を察知したアナライザーと妖精達もあわてて艤装から出て来ては、アンドロメダに駆け寄っていく。

 

 

 南方棲戦姫と空母棲姫は突然の事態に一瞬固まってしまったが、妖精達の邪魔にならない様に注意しながら二人はアンドロメダの(もと)へと向かった────。

 

 

 

 

*1
出典、国連、地球連邦政府公式文章(大本営発表)

*2
アンドロメダ曰く、資源払底による影響で建造の際に貴重な資源としても再利用されたとの記録がある。

*3
余談だが、その日は沖田艦長の誕生日でもあった。






 巻きで話を進めた事で、色々と内容が抜けてしまっていることを気にしたアンドロメダは、軍がガミラス戦役後に『ヤマト』の航海記録を映像解説付きで纏めた公式資料『UNCF BBY-01 YAMATO Reminiscence voyage』のデータを入れたメモリースティックを南方棲戦姫に渡した。

「ちょっと待って、私達これを再生出来る機材持ってないけど」

「陸上施設型のあの娘、ほら、眼鏡をかけた物を集めるのが好きなあの娘なら持っているかもしれません」

 なお全くの余談だが、後日その眼鏡の深海棲艦のいる所に南方棲戦姫と空母棲姫が押し掛けたが、規格が合わず再生出来なかった模様。
 さらに後日、物凄く焦って慌てた姿のアンドロメダが、通信機越しに物凄い勢いで謝罪している姿が目撃されたという噂があるが、真偽は不明である。

 


 巻きに巻いて無理矢理一話に纏めた!ホントにこんなので良いのかなぁ?



 ちなみに新生地球軍の主力艦であるクラスD、ドレッドノート級戦艦開発にはガミラス軍ガイデロール級戦艦が設計の参考となっているため、クラスDにはガミラスのDNAが入っている。
 つまりクラスDの拡大発展型であるアンドロメダにもガミラスのDNAが入ってしまっている。その為2205で明かされた『呪い』とも言えるイスカンダルとガミラスの関係の影響がアンドロメダにも出てしまっており、イスカンダルに対して忠節の様な行動が無意識に出てしまう。
 だからイスカンダルが貶されたりする言動には敏感である。

 そしてそれは─────


 


 次回、いよいよガトランティス戦役。アンドロメダは最後まで話しきれるだろうか?少なくとも口は悪くなる。

 …書き終えて気付いたけど、二話連続で総旗艦を倒れさせてしまった。しかしまあ、次はアンドロメダの大っっっっっ嫌いな蛮族共絡みだしなぁ。

 


 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。

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