艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

19 / 115
 交渉と情報開示。そしてアンドロメダの苦悩


 お待たせ致しました。今回は些か難産でございました。

 アンケートにご協力いただき、誠にありがとうございました。本話より妖精さんの新キャラクターが登場致します。

 
 先に謝っておきますが、今回医療に関する描写がありますが、私の知識不足や勘違い等から間違っている可能性があります。
 後、私は2202に対しましてアンチな考えでありますため、些かバイアスがかかった書き方になるかと思います。

 後半は人類側の話となります。


第17話 Negotiation and Information disclosure.AAA-8

「お姉さん!大丈夫ですか!?」 

 

 突然の事に、駆逐棲姫はパニックを起こしそうになるが、あわててしゃがむと踞ったアンドロメダの背中をさする。

 

 

「ゲボッ!ゴホッ!」

 

 

 胃に固形物を入れていなかったため、出てくるのは飲んでいたハーブティーと胃酸の苦い液体だけだ。

 

 一通り胃の中にあった物を出したが、それでも吐き気は治まらずに激しく肩で息をしだす。

 

 

 苦しんでいるアンドロメダ(大切な妹分)に何も出来ない事への自身に対する苛立ちや焦燥で、次第に涙を浮かべる駆逐棲姫。

 

 

「落ち着きなさい!貴女が取り乱してもどうにもならないわよ!」

 

 

 見かねた南方棲戦姫が駆逐棲姫を諌めるが、彼女自身も軽くパニック状態だった。

 

 そもそも深海棲艦には病気の概念が無く、*1医療知識に疎い為にどう対処して良いのかが分からなかった。

 

 それでも空母棲姫は兎も角アンドロメダを安静にした方が良いと考え、仰向けに寝かせようとした時───

 

 

バカモンっ!仰向けに寝かせると次嘔吐した時に物が逆流したり気道を塞いじまうぞ!!

 

 

 

 突然の怒声に驚き振り向くと、赤十字のマークを付けた白衣を着た妖精の集団が立っていた。

 

 その姿から知識としては疎くとも医療関係者であるとは認識できるが、目を引くのはその先頭に立つ禿頭に眼鏡姿の妖精が『美伊』とプリントされた瓶、酒瓶を持っている事だ。

 

 

 おそらく彼(?)が責任者なのだろうが、本当に医療関係者なの?と空母棲姫は首を傾げるが、その妖精とも面識のある駆逐棲姫は、その姿を見ると泣きながら藁にも縋る思いで「ドクターさん!どうしたら、どうしたら良いんですか!?」と激しい剣幕で尋ねる。

 

 

「お嬢ちゃんはそのまま艦長の背中をさすっていてあげなさい」

 

 

 落ち着いた声でそう告げながらアンドロメダの近くに寄る。

 

 

「ドク…ター……」

 

 

 その姿を捉えたアンドロメダが力無く呼ぶ。その顔色は土気色に変わっており、まるで死人の様である。

 

 

「全く、無理をしおって」

 

 

 そう悪態を付きながら助手の医療班妖精に指示を出し、吐き気を抑えるツボ、足三里(あしさんり)*2労宮(ろうきゅう)*3を押させる。

 

 

 

 

 暫くして落ち着いたタイミングでアナライザーに持って来てもらった水で口を濯がせた。

 口の中の残留物によって吐き気が再発するのを防ぐ為だ。

 

 

「ありがとう、ございます。ドクター、皆さん」

 

 

 まだ顔色は良くないが、それでも先ほどの土気色の顔よりかは遥かにマシになった。

 

 

「お前さんは無理し過ぎなんじゃ。タンクベッドに入って休んでおりなさい」

 

 

「いえ、大丈夫です…!まだ、やることがありますから…」

 

 そう言って立ち上がろうとするが、それをドクターは制する様に手に持った酒瓶で小突く。

 

「駄目じゃ!嘔吐した時は体力を激しく消耗しておる!あんたは先ず休むことが大切じゃ!」

 

「この程度、火星戦線(あの時)と、比べたら…!」

 

 そう語るアンドロメダは、若干目の焦点が合っていなかった。

 

 

 それを見たドクターは、アンドロメダが気力だけを支えに、体力的にはかなり無理をしていると見て、「医者の言うことを聞かんかっ!バカタレ!!」と叱りつけながら懐から注射器を取り出し、アンドロメダに突き刺す。

 

 途端に糸が切れた人形みたいに崩れ落ちる様にして倒れるが、駆逐棲姫があわててアンドロメダの体を支えた為に硬い甲板に顔面からキスする事態だけは避けることが出来た。

 

 

 だがドクターの鮮やかな手際と強引さにドン引きして声も出ない姫様達。回りにいる妖精達も後退りしている。

 

 

「取り敢えず鎮静剤を投与した。全く、うちの艦長も御父上に似て無理をしよってからに、真面目なのも考えモンじゃな…」

 

 

 

 その後野次馬状態の妖精達を解散するように告げ、アナライザーにタンクベッドを起動させると南方棲戦姫と空母棲姫に頼んでアンドロメダを運ばせて横たわらせた。

 

 その際、タンクベッドという聞きなれない代物が何なのかと疑問に感じて質問すると「一時間の睡眠で八時間分の睡眠と同じ効果が得られる装置じゃ」とドクターは答えた。

 

 それを聞いた三人は便利な機械だなという風に感じたが、ドクターは苦虫を噛み潰した顔を浮かべる。

 

「こいつはな、なんでもかんでも効率化しちまおうって考えの中で生み出された狂気の産物じゃよ」

 

「いくら人間(ヒト)の数が足りんからって、休息まで効率化しおってからに…」

 

 

 そう苦々しく語るが、実際にタンクベッドの開発の背景には省力化だけでは解決出来なかった深刻な人手不足によるローテーションの問題があった。

 

 少ない人員で上手くローテーションを組むために、如何に短時間で必要十分な休息を取るか。という課題に対する答えがタンクベッドの開発だった。

 

 

 技術的ルーツに関して、表向きは国連宇宙海軍時代から使用されている、個人用脱出ポットの延命用コールドスリープ技術を発展、応用したものとされている。*4

 

 

 完成当初は軍組織の改編などで激務が続く司令部を皮切りに広く採用され、いずれは民間にも開放される予定だったが、早々に問題が発生した。

 

 

 肉体のリフレッシュは出来ても精神面、特に脳のリフレッシュが上手くいかなかったのだ。

 

 

 最も使用回数の多い司令部スタッフを中心に精神面での不調を訴える者が続出。

 

 開発当初は予想されていなかった弊害に、軍は慌てた。

 

 

 改良、改善は継続して続けるが、別の弊害が発生する可能性があった為に使用には医師の許可が必要とされ、短期間での多用は原則禁じられた。

 

 

 だがガトランティス戦役(あの戦争)が始まってからは、その規定は有耶無耶と化していたという。

 

 使用には医師ではなくAIからの推奨という形になっていた。

 

 完全に人間すら機械の一部と捉えていたという狂気が滲み出ていた。

 

 

「中に入ったまま、死んでいたという事故も、実際にあったそうじゃ…」

 

 

 そう聞かされて南方棲戦姫と空母棲姫は「え?大丈夫なの?」と不安な表情を浮かべ、駆逐棲姫は眉根を吊り上げて「ふざけるなっ!!」と言わんばかりに怒りを(あらわ)にした形相になるが、ドクターは「ちゃんと使えば心配いらんし、艦長はそこまで酷い体調ではない」と言って宥めた。

 だが、艤装が開いて現れたタンクベッドの筐体、その形があまりにも棺桶に似ていた為に「これじゃあまるで話に聞く埋葬ね…」とげっそりしながら南方棲戦姫は呟いた。

 

 

 因みにアンドロメダに使用されているタンクベッドだが、将来的に有人型長距離哨戒艇などの小型艇で採用される予定の多機能型タンクベッドの試作品がモデルとなっており、安全性の心配は今のところ無いだろうというのがドクターの見解である。

 

 従来の短時間での休息だけでなく、通常の睡眠や身体の洗浄、バイタルチェックなどの診断に軽い負傷の治療も行える高性能な代物である。

 ただしその分お値段も半端ではなく、量産型では如何にお安く出来るかが今後の課題とされている。

 

 閑話休題。

 

 

 

 一通りの処置を終え、助手達にアンドロメダの事を任せたドクターは、コンソールの上に「どっこらせ」と腰掛けながら、前に居並ぶ姫達を見渡す。

 

 

「え~と、ドクターさん?アンドロメダ(あの娘)に一体何が起きたのよ?」

 

 

 三人を代表して南方棲戦姫がドクターに尋ねると、「神経性の嘔吐…、まあストレスが原因じゃな」という答えが返された。

 

「艦長は地球がイスカンダルとの約束を反故にしたことを、ずっと気に病んでおったからのう」

 

 

 その説明に首を傾げる三人。約束を反故にしたのは人間達で、アンドロメダはその決定に対してどうすることも出来ないハズなのに、どうしてそんなに気にするのか?

 

 

「親と慕う沖田艦長やヤマトさんに対して申し訳ないという気持ちと、()()()()()()()、地球の軍事力を象徴する存在としての自身の立場に対する責務とで板挟みになっておったからのう」

 

「本人は割り切っていたつもりでいても、ストレスっちゅーモンは知らず知らずの内に積み重なるもんじゃよ」

 

 

 そう言うものなのかと思うが、それよりも気になる言葉があった。今、地球艦隊総旗艦と言わなかったか?

 

「え?ちょっと待って。総旗艦って、どう言うこと…?」

 

 

 言葉の意味は分かるが、頭がそれの理解に追い付いておらず、ついそう聞いてしまった。

 

 

「そのまんまの意味じゃよ。地球・太陽系防衛を担う艦隊総軍の頂点。総大将じゃ。なんじゃ?聞いとらんかったのか?」

 

 

 ドクターの説明に目が点になる三人。

 

 

「「「ええーーーーーーっ!?」」」

 

 

静かにせんかバカタレ共ッ!!艦長が起きちまうじゃろうがっ!!

 

 

 

 まさかの艦隊最高位だったという事実に驚愕のあまり叫んでしまった。それを咎めたドクターの怒声が一番大きかったのはご愛嬌。

 

 

 しかし、こう言ってはなんだが、()()()()()というのが率直な感想なのだ。

 

 態度といい、雰囲気といい、ヒトの上に立っていた存在だとは到底想像がつかなかった。

 

 

 それを察したドクターは苦笑する。

 

「まあ威厳は無いかもしれんが、それを上回る真面目で優しい包容力があるところが魅力と、二番艦、妹のアルデバランから言われていたそうじゃ。いわゆる人徳ってヤツじゃな」

 

 

 そう言われるとなんとなく分かる気がした。

 

 

「じゃが真面目で優しい分、気にせんでええ事まで気にして、思い詰めてしまうこともあるんじゃよ。艦長はそれが少し顕著なところがある」

 

「それでいてヒトに心配かけまいと、心の内に(とど)めようとするから、よほど親しい仲か心の機微に敏感な者でなければ気付きにくい」

 

 

 難儀な性格ね。と南方棲戦姫と空母棲姫は思うが、駆逐棲姫はやや複雑な気分だった。

 

 

「…お姉さん、このままだといつか壊れてしまうのではないですか?」

 

 

 初めてアンドロメダ(お姉さん)と出会ったあの日の夜、戦艦棲姫(戦艦のお姉さん)と砲を向け合う姿を見てなんとなく違和感を覚え、半分冗談めかし、半分は直感的に「いつか心が壊れますよ?」と忠告したが、それが現実になってしまうのではないかという恐怖が、駆逐棲姫の中で渦巻き出していた。

 

 その事を素直に話すと、ドクターは驚いた顔をすると同時に、納得もした。

 

 

 何故アンドロメダ(艦長)駆逐棲姫(この娘)の事を大切な存在だと想いだし、気持ちを曝け出す様になったのかを。

 

 駆逐棲姫(この娘)は本心からアンドロメダ(艦長)の事を心配している。アンドロメダ(艦長)はそれを本能的に読み取ったのだと。 

 

 ドクターはこの時ある考えが頭を(よぎ)ったが、それは一旦横に置いて話を続ける。

 

 

 

「…お嬢ちゃんの心配はもっともじゃよ。じゃが、艦長は、既に一度、壊れておる」

 

 

 

 えっ?という声が漏れ、どう言うことと問い詰める視線がドクターに集中するが、そのドクターが手に持っていた酒瓶を突然呷りだしたのを見て呆気にとられる。

 

 

「ふんっ!シラフで彼奴らの話が出来るかっ!」

 

 

 瓶をドンッと置き、渋面を作り吐き捨てるかのように話し出すドクター。

 

 彼奴らとは一体誰なのか?

 

 

「ガトランティス。全てはあやつらが原因じゃ」

 

 

 ドクターが語り出した、アンドロメダ最大のトラウマにして怒りと憎しみの源泉、そして本来なら優しくて温厚なアンドロメダの心に復讐という炎を燃え上がらせて壊し、復讐一辺倒の『魔』に呑まれた悪鬼羅刹へと変貌させ、未だにその時の炎が心の奥底で(くすぶ)り続けて今回の暴走の引き金となった大本の元凶とも言える存在。

 

 

 ガミラス戦役の終わりに『ヤマト』が遭遇した謎の敵、『帝星ガトランティス』。

 

 ガミラスの領域外苑部、国境とも言える小マゼラン外苑部に度々侵入してはガミラス軍と衝突を繰り返していた正体不明の武装集団。

 

 ガミラスから『蛮族』と呼ばれ、忌み嫌われているが、その戦闘能力は『蛮族』と言われるだけあって荒々しく勢いがあり、精強なガミラス軍を持ってしても苦戦を免れず、メルダ・ディッツの父でありガミラス航宙艦隊総司令ガル・ディッツ提督をして「予断を許さない」と言わしめる程の侮れない難敵。

 

 かつて『ヤマト』と激戦を繰り広げたエルク・ドメルは何を隠そう、『ヤマト』と矛を交える為に銀河方面へと転戦してくる直前まで、小マゼラン方面軍防衛司令官として同地にてガトランティス(蛮族)に対する切り札として投入され、その手腕を余すことなく発揮して大戦果を挙げていた。

 

 

 そのガトランティスが、地球への帰路を急ぐ『ヤマト』の前に突如として現れ、いきなり攻撃を仕掛けきたかと思うと(ふね)を─『ヤマト』を─明け渡せと高圧的に迫って来た。

 

 

 その時の通信記録が残っており、アナライザーが再生したが───。

 

 

「我が名は『雷鳴』のゴラン・ダガーム!!マゼラン(グダバ)遠征軍大都督なりぃ!!」

 

 

 緑色の顔の右半分に大きな三本の傷がある屈強だが粗暴さと野蛮さ、豪快さを絵に描いたような強烈な印象を見るものに与える男性が映し出されるが、見た目に違わぬ荒々しく、また一方的で高圧的な物言いに三人は眉を顰める。

 

 

「なにこいつ?人を馬鹿にしているの?」

 

 

 南方棲戦姫が不快感を(あらわ)にそう吐き捨てる。

 

 いきなり殴り掛かって来たかと思えば(ふね)を寄越せとか、傍若無人、驕慢、不躾が服を着て喋っているとしか思えない。

 

 ある意味、遠慮会釈で礼儀正しいアンドロメダと正反対、百八十度逆な存在だと言える。

 

 

「実際に馬鹿にしておるんじゃよ」

 

「じゃがこやつでさえ、後から出てくるガトランティスの本隊の連中に比べたら、一番マトモなんじゃよ」

 

「え?これで?」

 

 

 事実である。

 

 

「まだ多少なりとも会話が噛み合っているだけでもマシなんじゃよ」

 

「本隊の連中は話が噛み合わん。常に一方的じゃ。言うだけ言って聞く耳を持たん。そんな連中じゃよ」

 

 

 他に類を見ない最悪レベルの自己中心的な集団であるというのがドクターの見解である。

 

 ガトランティスと比べたら、民主化以前のガミラス帝国すらまだ常識的でマトモな国家であったと言える。

 

 

「艦長は以前、ガトランティスとは『理不尽』という概念がヒトの形をした存在と言ったそうじゃが、言い得て妙じゃよ」

 

 

「人に理不尽な選択を迫り、それで苦しみ破滅していく様を見て悦に浸る。兎も角胸糞の悪い連中じゃったよ」

 

 

(いくさ)の事はワシにはわからんが、それでもこれだけは言える。奴らは餓鬼じゃよ。それもどうしようもないくらいの癇癪持ちのクソガキじゃ!」

 

 

 そう吐き捨てて再び酒瓶を呷るドクター。

 

 

 医者の不養生という言葉が深海棲艦にもあるか定かではないが、それでも心配になるくらいの勢いで飲んで行くドクター。

 

 

 だがそれ以上に、ドクターの説明を聞いてもガトランティスがあまりにも異質過ぎる存在としか思えてならず、逆に想像がしづらい。

 

 

 だがなんとなく仲良くなれる存在では無いと思った。

 

 今聞いただけでも悪趣味、性悪、何をどうしたらこんなねじ曲がった存在が生まれるのか不思議でならなかった。

 

 

「こやつらは千年ほど前に栄えたというゼムリアとか言う惑星で生み出された戦闘用生命体。いわゆる人造人間じゃよ」

 

 

「まあ、その辺の詳しい事はそこのアナライザーに聞いてくれ」

 

 

「「「え?」」」

 

 

 丁度おかわりの酒瓶を持って来る為に席を外し、戻って来たところのアナライザーに三人の目線が集中し、当のアナライザーは「(ハテナ?)」と漏らす。

 

 

「こやつは元々『ヤマト』の乗組員で、ガトランティスの謎を解明する最前線に立っていたんじゃよ」

 

 

 

 再び驚愕の叫びが響き渡り、またドクターから怒声が飛んだ。

 

 

 

「…五月蝿いです」

 

 

 

 

 

───────────

 

 

 

 日本国()()広島県、日本海軍内海防衛艦隊呉軍港、呉鎮守府。

 

 鎮守府内、呉鎮守府司令(けん)内海防衛艦隊司令(けん)総提督執務室。

 

 

「あーーーーーーー!!疲れた!!」

 

 

 一人の女性が扉をバタンと思い切り開け放ち、ずかずかと入室したかと思うと制帽を執務机に投げ捨て、執務机の椅子にドカッと座り込んだ。

 

 それを見た執務机横の秘書艦用机に座る秘書艦の艦娘、陸奥は苦笑しながらも労いの言葉を投げ掛ける。

 

 

「お疲れ様。真志妻総提督」

 

 

 そう、今椅子に行儀悪く座った彼女こそ、日本海軍艦娘部隊の頂点に君臨する総司令である総提督、真志妻亜麻美(ましつまあまみ)大将そのヒトである。

 

 

「あーもう、朝っぱらからいきなり佐世保の在日米軍司令部(無駄飯食らいの巣窟)に呼び出されて散々だったわ!!」

 

 そう言ってだらしなく机に突っ伏した。真志妻大将は朝に弱いから急な出張にご機嫌斜めだった。

 

 

「あら?ところで長門は?」

 

 

 真志妻大将と一緒に佐世保に付いていったはずの、姉妹艦娘である姉の長門が居ない事に気付いて尋ねると、真志妻は突っ伏した姿のまま「あー…」とバツの悪い顔になりながら顔を陸奥の方に向けた。

 

 

「おい総提督、また私を放ったらかしにして行くな!」

 

 

 そう言いながら普段の艦娘としての服装ではなく、日本海軍の軍装に身を包んだ副艦の長門が両手に鞄を持った姿で入室して来た。

 

 

「あ~、ごめん長門~」

 

 突っ伏した姿のまま、手を上げて謝罪を口にする。

 

 そのだらしない姿を見て肩を竦める長門。陸奥はそんな姉の姿に苦笑しながらも、長門から鞄を受け取ると、着替えて来るように促す。

 

 

 

 

 

 暫くして────。

 

 

「それで、彼らの用件はなんだったの?」

 

 

 陸奥が尋ねると、真志妻大将は鞄から『Confidential』、機密と書かれた一つの封筒を取り出して陸奥に渡した。

 

 

 中には書類と写真が一纏めにされた書類の束、それにUSBが入っていた。その書類のタイトルには『Report documents about unidentified Fleet Garl.』と書かれていた。

 

 

「正体不明の艦娘についての報告書?」

 

 

 物騒ねと思いながらその中を読み進めて行くが、次第に表情が険しくなる。

 

「…なにこれ?」

 

 はっきり言って冗談の(たぐ)いじゃないのかと思った。

 

 

「推定全長45フィート、13.716メートルに全幅12フィート、3.658メートルの艤装を扱う艦娘?しかも空中を飛翔し、レーザーないしビームが放てる3連装主砲を4基持ち、ミサイルとおぼしき兵装も使用。更にジェット機の様な艦載機の運用能力に電子戦能力があると思われる?」

 

 

 どこかの誰かが考えた『ぼくのかんがえたさいきょうのかんむす』ですか?とツッコミを入れたくなる程の出鱈目っぷりに呆れそうになる。

 

 とはいえ添付された写真、多分映像を引き伸ばしたのであろうやや画質の荒い写真を見る限りはそれが実在する存在なのだろう。

 

 それにいくら()()アメリカと言えども、冗談や嘘のためだけに態々(わざわざ)日本海軍艦娘部隊のトップを呼び出すとは考えにくい。

 

 

「今朝、南太平洋方面を監視しているアメリカの偵察衛星が()()()()捉えた映像らしい」

 

 

 そう長門が説明し、自身が使う副艦用机のデスクトップを操作して執務室内に備え付けられたプロジェクターを起動。同封されていたUSBの映像を再生する。

 

 

 そこに映し出される、謎の艦娘が姫級二人が指揮する深海棲艦の大艦隊を一方的に蹂躙する映像に、陸奥は息を飲むことしか出来なかった。 

 

 

 映像その物はその海域を捉えていた衛星の軌道通過から途中で終わることとなる。

 

 

 その後に、明らかに深海棲艦の艦載機とはシルエットが違う、プロペラの無い航空機の引き伸ばした映像が映し出される。

 

 

 その翼にエンブレムと思われる錨のマークが描かれているが、そこに気になる文字が刻まれていた。

 

 

 

UNCF

 

 

 

UN(国連)!?どういうこと!?国連ってもう既に存在しないわよっ!?」

 

 

 もう訳が分からない事の連続だ。だがそもそもである。

 

「そもそもこれが私達とおんなじ艦娘であるとする根拠は何なの?もしかしたら人類の新兵器じゃないの?」

 

 もっともな疑問である。

 

 

「陸奥の言いたいことは分かるわ。私達も同じ疑問を感じたのだから」

 

 

「一応、アメリカ軍(向こう)に協力している妖精さん達による分析結果が根拠だ。コロラドやメリー達は深海棲艦同士の内輪揉めを疑った様だが、妖精さん達はそれを真っ向から否定したらしい。奴ら、深海棲艦が使う生態艤装にしては技術体系が明らかに違いすぎる。私達艦娘が使う機械式艤装の技術的延長線上の可能性が一番高いというのが、妖精さん達の見解だ」

 

 

 長門からの説明を聞いても、首を傾げる陸奥。  

 

 

「でも私達艦娘は第二次世界大戦時代の軍艦がモデルでしょ?いくらなんでも()()はイレギュラー過ぎるわよ?」

 

 正直、これはスタ○・ウォーズや銀河英雄○説の様なSFに出てくる宇宙戦艦なんじゃないの?と言いたくなる。

 …実はあながち間違いで無かったりするのだが。

 

 

 妹のその反応に、長門は軽く溜め息を吐きながら、やれやれと首を横に振った。

 

 

 

「…陸奥、忘れたのか?『小松島の裏ボス』の事を?」

 

 

 そう長門に言われて、「あっ!」と思い出す。

 

 

 そうだった。徳島にある外洋防衛艦隊小松島鎮守府にいる『()()()()()()』の事を。

 そしてそこの提督であり外洋防衛艦隊司令でもある、『小松島の鬼竜』という異名を持つ中将や、その関係者もある意味イレギュラーな存在であったという事も。

 

 

 

「昼一番に小松島まで飛ぶわ。外洋防衛に関連しないとも限らないし、それに在日米軍(無駄飯食らい)の連中、私達に調査を命令(お願い)してきたから」

 

 その真志妻大将の言葉に渋い顔になる陸奥。なんとなくそうだろうとは予想していたが、相変わらずアメリカは戦勝国面(宗主国ムーブ)を貫きたいようだ。

 

 そんな陸奥の心情を察した真志妻大将が苦笑しながら窘める。

 

 

 

「仕方無いわ。御自慢だった第7艦隊はほぼ壊滅。第3艦隊はこちらのAL/MI作戦と平行して行われたハワイ奪還作戦に失敗して以降、西海岸への防衛強化(引きこもり)で動けない。まあ、私達も作戦に失敗したのだから()()()()だけどね」

 

「南米海域に展開していた第4艦隊は第3艦隊に吸収合併。そして艦娘だけでの作戦行動は現実的では無い」

 

「となると、後は属国(日本)圧力を掛ける(お願いする)しかない」

 

 

 艦隊は壊滅しても、佐世保にいる在日米軍司令部の地上部隊だけでも首都広島を制圧出来る兵力は健在だった。

 

 長門や陸奥はアメリカの露骨な恫喝(お願い)に強い不快感があった。

 

 

「コロラドやアイオワ、イントレピッドとか艦娘達はみ~~~んないい娘達なんだけどね~。向こうの艦娘部隊の司令官、ガーフィールド准将も人間にしては話のわかる立派な御仁だし…」

 

 

 それに同意する長門と陸奥。特にコロラドとメリーランドとはかつてのビッグセブン同士という事もあり、仲が良かった。さらに言えば長門は空母艦娘のサラトガとも仲がいい。

 

「まああの国は今の政府が政府なだけにね~。それはこっちも余り人の事言えないけど」

 

 

 そう言ってくつくつと笑うが、二人は笑うに笑えなかった。

 

 その二人の態度から、いささかばつが悪そうな顔を浮かべると、一つ咳払いをした。

 

 

「愚痴を言っても仕方無いわね。さあ二人とも、仕事仕事!長門は小松島にアポを取って。陸奥はヘリの手配をお願い」

 

 

 指示を出すと二人は即座に動きだす。そして自身は出張の間に溜まった書類の決済に取り掛かりながら、麾下の内海防衛艦隊への指示を出していく。

 

 

 

 やることは山積みだが、真志妻大将の心はこの謎の艦娘に対する興味で尽きなかった。

 

 

 何かが起こる。それも途轍も無く大きな事が。

 

 

 根拠は無い。ただの勘だが、面白くなりそうな予感がしてならず、口元が大きく歪む。

 

 

「(敵か味方か、そんなのはどうでもいいわ。私の復讐(やりたいこと)の役に立ちさえすれば…)」

 

 

 そう内心で呟きながら、暗い笑みを浮かべる真志妻大将。

 

 彼女の真意は一体何なのか?

 

 

 

 

「この書類、サインの位置が間違っているぞ。これも。これもだ」

 

 

「ヴぇ?」

 

 

 

 …兎も角、日本を中心として人類側もアンドロメダに対する行動を取り始めた。

 

 

 今後、アンドロメダを取り巻く環境は更に複雑な物となっていくだろう。

 

 

 アンドロメダの運命は、未来はどうなるのか、それはまだ分からない。

 

 

*1
但し過労による体調不良はある。

*2
胃腸の働きを整える、嘔吐を止める。

*3
メンタル・自律神経を整える。

*4
実際は意識不明状態だったユリーシャ・イスカンダルの生命維持装置の技術がかなりの割合で使われている。




「蛮族はミナゴロシ…。ふふふ…。ウフフ……」

「お姉さん、怖い…」


ピンポンパンポン♪

「選手の交代をお伝え致します。情緒不安定なアンドロメダ(主人公)に代わりまして、ドクター(飲兵衛)が登板致します」


 いや、当初はアンドロメダに続投させるつもりでしたが、書いていたらやはり暴走しました。例、雷鳴のゴラン・ダガームの記録映像に対して若本節某国家元帥の様に銃を発砲…。タブレットを握り潰すなど…。が発生、話が進まなくなりましたため、退場して頂きました…。



解説


足三里

 胃腸の働きを整える、嘔吐を止める。


 膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみに人さし指をおき、指幅4本そろえて小指があたっているところ(膝の少し下)


労宮

 メンタル・自律神経を整える。


 手を握ったときに、人差し指と中指の先端の中間にあるツボ(手のひら)


 後もし横になるなら、右脇腹を下にして膝を曲げた姿勢が一番リラックス出来ます。再び吐いても逆流したり気道を塞ぐ心配はありません。


 嘔吐には色々と原因がありますから、必要でしたら早期に医師の診断を受けることをおすすめ致します。



真志妻亜麻美海軍大将

 日本海軍艦娘部隊の総司令。また日本海軍全ての提督の頂点に君臨しているために総提督とも呼ばれている。

 年齢不詳。



ドクター

 妖精達は勿論、艦長であるアンドロメダの健康管理を行っている妖精。何故かいつも酒の入った瓶を持ち歩く。
「浴びるほど酒を飲んでも目は曇らない」とは本人談。

 はい。アンケートの結果医者的立場の妖精さんを出させていただきました。お気付きかと思いますが、モデルは佐渡先生です!(ただし旧作モデル) 

 実は第2話で酒を飲んでいた妖精は彼でした。



 初、人類側!初艦娘は長門姉妹!!そして日本登場!!ただし早速不穏だらけ!!アンドロメダの明日はどっちだ!?
 
 
 

 いやぁ、何度も書いたり消したりを繰り返す難産でした…。
 兎も角、2202はわかり辛い!正直旧作のガトランティスの方が遥かに書きやすいという事が改めて分かった!2202ズォーダーは何言ってるのかサッパリ分からん!なんとなく内容が薄っぺらく感じてしまうのは気のせい?ズォーダー絡みはバッサリカットしたい!!といっても軽く薄くは書きますが、それが限界!!地球艦隊の戦いはツッコミ祭りかダメ出し祭りになりそうなのでさらっと流します!多分…。

 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。

アメリカ大統領選挙のイメージは?

  • 直接選挙
  • 間接選挙
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。