艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり 作:稲村 リィンFC会員・No.931506
今何が出来て、何が出来ないかを十分に把握しないまま行動に移せば、何かしらの不測の事態に陥るリスクが高くなります。
満天の星空が煌めく洋上の一角で、星明かりとは別の光が仄かに灯っていた。
未知の現象に途方に暮れていたアンドロメダだが、このままじっとしていても埒が明かないと気持ちを切り替え、兎も角これからどうするかを決めるためにも今自分が出来る事の把握に努めていた。
彼女がまず行ったのは自身の確認。
なぜ自分が肉体を持った姿となったのかという疑問は幾ら考えてもわからないから取り敢えず棚上げとし、今自分が乗っているアンドロメダ級の艦体を模しているのであろう装置?の確認を行った。
結論を先に言えば、この装置は自身の半身とも言えるアンドロメダの艦体その物だった。
本能?的なモノで薄々そう感じてはいたが、確信に至ったのは今腰掛けている座席に備え付けられていたタブレットを使用した時だ。
外装にUNCF AAA-1 ANDROMEDA*1と刻印されている以外に、見た目は民間で使用されている物と大差が無いが、中身は全くの別物。*2
防衛軍で使用されている軍用の、それも艦内用で使用されているタブレットは艦毎のメインコンピューターと連携しており、権限と正規の登録、認証さえあれば自由にアクセス可能であった。*3
そしてそれは艦に関する最高機密*4の数々とも繋がっており、正規手順で無ければタブレット自体が機密保持のため自己崩壊する仕組みとなっており簡単に解析、複製出来る様な代物ではない。
当然だがクラッキング等の不正アクセスに対するセキュリティーレベルも高い。
アンドロメダ自身の事でもあるため、艦に関する全てを記憶として網羅していた。
自身の記憶とタブレットに表示された最高機密情報に寸分の違いも無い事から、このタブレットが何等かの形で複製された偽物ではなく本物であると結論付けた。
そこからこの装置がAAA-1その物であり、今現在のコンディションも過不足無く把握することが出来た。が、更に別の謎も出てきた。
火星沖でヤマトを救出した時のアンドロメダは改装されたZZZ-0001アンドロメダ改の装備だったが、今の装備は完成時のAAA-1だ。*5
また就役時、パイロットの不足から一度も搭載した事の無い艦載機*6が搭載可能最大数の2個飛行隊分36機が搭載されていた。
しかし主力艦載機として配備が進んでいた新鋭機の1式空間戦闘攻撃機コスモタイガーⅡではなく、一世代前の主力機99式空間戦闘攻撃機コスモファルコンだったが。
それ以外にも様々な差異があるが、一番の違いは────
「あんどろめだサン、ゴ命令イタダイテオリマシタ情報ノ分析ガ完了致シマシタ」
──本来アンドロメダ級には搭載されていなかったはずの自立型コンピューター、通称AUシリーズ──がコンソールのパネルに映し出された。しかも──
「ありがとうAUO「あならいざートオ
そう、本来ならばヤマトに搭載されていたアナライザー
メインコンピューターを立ち上げた際に「私ハ優秀。
何故彼?がここにいるのかも全くわからない。当の本人もアンドロメダ同様気付いたらこうなっていたという。
「丁度良いわ。OMCSのテストも兼ねてこれより半舷休息とします。あの子達にも休むように伝えて」
「ワカリマシタ」
そう言うとタブレットをOMCSの操作画面に切り替え、嗜好品のメニュー画面を表示した。
何にしようか顎に手を当てて悩んでいると、艦体のあちこちがハッチの様に開いて、中から防衛軍の艦内服を着た二頭身のデフォルメされた小人達──本人達曰く、妖精と言うらしい──が各々好きな嗜好品を片手に出てきては、思い思いの場所に腰掛けて喫飲を始めた。
よく見ると中にはラベルに『美伊』とプリントされた酒瓶を持っているのもいた。
誰が飲酒を許可したの?と苦笑しながら、紅茶と茶菓子のスコーンを選択し、一旦タブレットを閉じた。
紅茶が来るまでの間、座席を倒し、手足を伸ばして軽く息を吐きながら瞳を閉じる。
確認していて色々とわかったが、今の彼女は一言で言うなら人間サイズにまでダウンサウジングしたコンパクトな前衛武装宇宙艦だということ。
彼女と装置は一心同体であり、装置を艦体とするなら操作を司る彼女は謂わば艦橋兼艦長だ。
そして艦橋設備と言えるこの座席だが、元の艦長席を意識しながらもコンソールはかなり簡略化されている上に座席の側面には戦闘機の操縦で使う様なコントロールスティック(サイドスティックタイプ)やスロットルレバーがある等、1人で操作するための機器類が設置されている等の差異が見られる。
武装面に関してもAAA-1と大差無いのだが、主砲である40.6センチ3連装収束圧縮型衝撃波砲塔*7がほぼ艦首方向への集中配備型*8となっていたり、艦橋周辺に本来配置されていた武装は2基のパルスレーザー砲塔とミサイル発射管以外無くなっている。
魚雷にミサイル、砲弾といった各種実弾兵装のストックは定数を満たしているが、補給のあてが無いために使用は可能な限り控えたい。
もし戦闘が発生した場合は残弾の心配が無いショックカノンを軸に戦う事になるだろう。
問題はサイズが小さくなった分、威力と射程距離がどれ程下がったかである。
それに関しては艦首に装備されたアンドロメダの最強兵器、2連装次元波動爆縮放射機──通称、拡散波動砲──にも同じことが言えるが、波動砲はそれ以外にも重大な問題を抱えていた。
それは──、と思考を巡らせていると仄かに鼻腔を擽る芳ばしい香りに気付き、うっすらと瞳を開く。
「オ待タセ致シマシタ。御注文ノ紅茶トすこーんデス」
模型サイズにまで小さくなったコスモシーガルの背面に器用に乗ったアナライザーが、茶運び人形の様に盆を持ってホバリングしながら近付いてきていた。
盆の上には白い湯気を漂わせるティーカップとスコーンが盛られた皿が置かれている。
座席を起しながらそれらを礼を言って受け取ると膝の上に乗せ、カップを手に取り注がれた紅茶の香りを楽しんでから一口啜って風味を楽しむ。
と言っても、これが初めて飲む紅茶(そして初めての飲食)だから良し悪しはわからないが…。
「山南艦長なら、違いが分かるのでしょうけど…」
「合成品デスカラ、本物ヲ知ル方ニハ物
何の気なしに呟いた言葉をアナライザーに聞かれて、羞恥から顔を赤に染めた。
それを隠すかのように茶菓子のスコーンを一つ手に取ってかじり付いた。
ふとコンソールの辺りから視線を感じて顔を向けると妖精達がコンソールの上に集まり、こちらを物欲しそうな表情で見ていた。
何かしら?と小首を傾げるが、よく見ると彼等の視線はアンドロメダが手に持つスコーンに集中していた。中には涎を垂らしている子までいる。
それを見て悪戯心が刺激されたアンドロメダは、手に持つスコーンを右に左に上に下にと動かした。するとそれに釣られて妖精達も視線を追随させた。
そんな妖精達の可愛らしい姿に笑みを溢しながら、残ったスコーンを皿ごと差し出すと、彼等は満面の笑みを浮かべ、しきりに頭を下げながら持っていった。
その後ろ姿を眺めながら紅茶を更にもう一口啜ると、アナライザーに視線を向ける。
「今のところOMCSの稼働に問題は無さそうね」
「ハイ。デスガ波動えんじんノ不調ニヨリ、OMCSノ稼働二必要ナえねるぎーノ供給ガ不安定ナ為、稼働二制限ガ付キマスガ…」
その報告にアンドロメダは形の良い眉を顰め、手に持つカップに視線を落とした。
カップに注がれた薄い琥珀色の液体に、眉根を寄せた自身の顔が写る。
分かっていた事だが、いざ面と向かって改めて言われると、少なからず気落ちするモノがある。
少し前に、艦の心臓である主機、次元波動エンジンが原因不明の不調により、出力が一定ラインを越えると忽ち作動が不安定になり、最悪暴走する可能性があると、エンジンの確認を行っていた機関科の妖精から報告されていた。
これによりエンジンの出力を下げざるを得ず、また其れによって様々な弊害が出ていた。
最も深刻なのは戦闘に関してである。
攻撃の要であるショックカノンは、自慢でもあった速射能力を抑えるか、威力を抑えるかしなければならず、防御の
そして何より、波動エネルギーを大きく消耗し、エンジンへの負担が大きい波動砲は事実上使用不可と言っていい。
一応撃てなくは無いが、エンジンへの負担を抑えるためにチャージに時間を掛ける上に、一度撃つと行動不能になると予測結果が出ていた。
ガミラス戦役で金剛型や村雨型に初めて搭載された最初期のショックカノンみたいな状態だ。
それに比べたらOMCSはまだマシな問題と言える。
また本来のホームグラウンドである宇宙まで上がることも出来ない。
アンドロメダの見立てでは火星沖でのエンジンの暴走が原因ではないかと考えているが、それが正解だとしてもエンジンの不調が良くなるわけではなく、内心頭を抱えていた。
唯一の救いは補機である4基のケルビンインパルスエンジンには異常が無かった事位か。
「こればかしはどうにもならないわね。防衛軍と合流してドック入り出来たら良いのでしょうけど」
それは万に一つも無い叶わぬ願いでしょうけど。と内心では思いながら、カップを傍らに置くと気を紛らわせる様に残った食べ掛けのスコーンを口に放り込んで咀嚼して飲み込むと、別の話題に切り替えるべくアナライザーを再び見やる。
「貴方に命じていた件、
「ワカリマシタ。結論カラ先二ノベサセテ頂キマスト──」
「コノ惑星ハ92.57%ノ確率デ
その報告に額に手を当て「やはりか…」と呟きながら、天を仰いだ。
アンドロメダが仰いだ夜空の先で輝くは──
『南十字星』
傍らに置いたティーカップを手に取り、夜風に当り少し冷めてしまった紅茶を啜る。
問題は、増えるばかりで一向に減りそうに無い。
「本当に、どうしてこうなってしまったんでしょうね…」
アンドロメダのか細い呟きに、アナライザーは何も答えなかった。
「もうやだおうちにかえりたい…」(´;ω;`)
「あんどろめだサン、オ気ヲ確カニ」(;´゚д゚)ゞ
「みんな、わたしもいまそっちにいきます…」エンジンスロットルレバーに手を掛ける
「止メテクダサイッ!!」
万全の状態で出してしまうと単なる無双物になりそうな気がしましたから、波動エンジンを不調にしましたけど(それでも実は十分強いのだが…)、どういう存在が居るかわからない場所に単身放り込まれて、尚且つ実力が十分に発揮できない状況って、現実逃避したくなるくらい酷いよなぁ…。と書いてて罪悪感が湧いた…。ごめんよアンドロメダ…。
それにしても、異世界転生物の主人公って一体どう言った精神構造しているんだ…?(考えたら負け?)
もし今回腰を据えての確認作業を行わずに行動に移していたら、波動エンジンが再び暴走して爆発し、そこで終了という可能性が実はありました。安全確認、指差し確認は念入りに!
しかしこう疑問に思われた方も居ると思います
「何もない海上で、しかも夜中に明かりを灯しながらずっと同じ場所に留まっていると、艦娘か深海棲艦どちらかの哨戒部隊に発見されるのではないか?」と。
はい。確かにその通りです。夜中なら僅かな光でさえ遠くから認識出来ます。
ややネタバレになりますが、実は既にガッツリ発見されています。
その辺りの事は次回以降でしっかりと書きますが、その前にこの世界についての情報をアンドロメダ(とアナライザー)だからこそ出来る方法で入手した情報を確認する回になる予定です。
アンドロメダの装備について補足
重力子スプレッド
勿論装備されていますが、重力圏内、ましてや惑星上で使って大丈夫な代物なのかが分からなかったために敢えて書きませんでした。
艦載機の離着艦について
ヤマトの第2格納庫からの離着艦と同じシステム。
そのため一度離水し、ある程度の高度まで上がらなければ運用出来ない。
OMCS(オムシス)
Organic Material Cycle Systemの略。この装置のお陰で長期航海での食糧不足の心配が大きく緩和されたが、その材料に関して、某S技師長曰く「知らない方が幸せだと思うよ」と言うことらしい…。
尚、稼働には膨大なエネルギーが必要となる。
南部97式拳銃(通称、コスモニューナンブ)
アンドロメダの個人装備としてホルスターに収まっている。一応、自衛用小火器だが…。
その他補足
Advanced Ability Armamentの略について
本来は直訳すると『高度な能力の兵器』となります。
UNCF表記について
地球連邦防衛軍であるならEARTH FEDERATION COSMO FORCEでEFCFが本来は正しく、2205ではEFCF表記なのですが、2202時点ではUNCFと表記されていました。アンドロメダの艦体(艦首ラム付け根部分)にも『U.N.C.F AAA-0001-2202』と表記されていました。
アナライザーの起用について
西暦2200年代の艦娘なら、艤装に妖精だけでなく補助AIが装備されていてもおかしくないと思いましたが、ただのAIだとキャラが単調過ぎると思い、急遽登場して頂きました。
妖精さん(主に戦術長や機関長的なポジションの妖精さん)を喋らせて良いか駄目か。
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喋らせて良い。
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喋らせては駄目。(アナライザーが翻訳)