艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり 作:稲村 リィンFC会員・No.931506
大変お待たせ致しました。
若干強引ですが、どんどん進めますぞー!!
最後にお姉ちゃんズが暴走します。…どうしてこうなった!?
「お姉さん、駄目です!!」
「離して下さい!」
「だから落ち着きなさいって!!」
暴れるアンドロメダを駆逐棲姫と南方棲戦姫が二人がかりで羽交い締めにして押さえ付けていた。
アンドロメダは冷静さを失い、アポロノームが墜落したと思われるサイパン島に向けて今すぐにでも発進しようとしていた。
だが現地は今混乱の極みにあり、そこへ見ず知らずのアンドロメダが現れたとしたら、混乱により拍車が掛かってしまうことになりかねない。
サイパン島駐留部隊を纏める姫から第一報が入ってから、空母棲姫は何とか情報を整理し通信相手の姫にこちらの事情を説明しようとしたが、相手はパニック状態であり、まともに会話が成立していなかった。
それを見た駆逐棲姫と南方棲戦姫が現地にいる他の姫達に通信を繋ごうとしたのだが、相当混乱しているみたいで通信がかなり錯綜しており、なかなか繋がらなかった。
アンドロメダはアンドロメダでアポロノームに通信を試みたが一向に反応が無いため、いてもたってもいられないアンドロメダは痺れを切らして直接現地へと飛ぶべく妖精達に発進準備の命令を下したのだが、それを見た駆逐棲姫が慌ててアンドロメダの腰にしがみつき、続けて南方棲戦姫が羽交い締めにしたのである。
「あんたがサイパンに行ったとして、もし戦闘になったらどうするのよ!?困るのはあんたの妹でしょ!?」
「お姉さんの気持ちは痛いほど分かります!お姉さんの妹という事は私にとっても大切な妹なんですから!ですがここでお姉さんが取り乱して暴走しても、何の解決にもなりません!」
二人にそう言われたアンドロメダは、不承不承ながらも引き下がらずを得なかった。
アンドロメダとしても、戦闘は本意では無い。
だがいつでも発進出来る様に準備だけは継続させた。
その間も空母棲姫は連絡を取り合っていたが、漸く相手も落ち着き出した様で、ある程度纏まった情報のやり取りがどうにか出来る様になった。
どうやら通信相手の姫は墜落の一部始終をたまたま見ていたらしい。
おおよその概要は以下の通りである。
サイパン島周辺を哨戒飛行していた自身の哨戒機が偶然、南の空から猛スピードで接近する謎の飛行物体を発見。
謎の飛行物体はサイパン島南のオブヤン・ビーチ沖で着水するも、勢いを止めきれずにそのままビーチの砂浜に乗り上げる形で擱座して漸く停止。
着水直前に謎の飛行物体は何か箱状の物体を投棄。
投棄された物体は盛大な水柱を上げながら水没。
その着水した音と水柱、そして墜落に気付いた
物体から妖精らしき者達が武器らしき物を持って出てきて、物体を守るかの様に布陣して部隊を威嚇。
現場は一触即発状態だという。
そして物体の操縦者と思しき存在は、墜落の衝撃の為かコンソールに突っ伏したままで詳細が分からないとのこと。
それを聞いたアンドロメダは一気に不安な表情となり、発作的に再び発進しようとしたが、そのことを見越した駆逐棲姫がアンドロメダにしがみついて再び未遂に終わらせた。
とはいえこのままだと最悪の事態が発生する危険性がある。
妖精達にいくら危害を加えないと言っても、聞く耳を持たないらしい。
おそらく妖精達もこの事態にパニック状態なのだろう。
「私が直接赴いて宥めなければ、それこそ戦闘になりかねません!!お願いです!行かせてください!!」
そう言ってアンドロメダは土下座までして三人に頼み込んだ。
これには三人も即座には反論が出来なかった。
本来ならば妖精の戦闘力などたかが知れているというのが今までの常識だったのだが、アンドロメダという従来の常識が悉く通用しない存在が目の前にいる以上、最悪は想定すべきである。
「…少しだけ待っていてください」
空母棲姫は考える素振りをした後にそう告げると再び通信を行う。
その際、通信相手に対する剣幕の激しさに南方棲戦姫と駆逐棲姫は驚いた。
普段、いや戦闘中ですらここまで声を荒げた事は無かったハズだ。
暫くして─────
「…私が繋ぎ役として同行するという条件で、なんとか貴女のサイパン島への来島の了承を得ました。今から向かっても問題はありません」
些か強引な気もしなくも無いが、これで大手を振ってサイパン島へと向かえる。
「待ちなさい。貴女、艦隊はどうする気よ?」
南方棲戦姫が空母棲姫に尋ねる。
彼女達は本来マリアナ方面、つまりサイパン島への増援艦隊を率いていた。それをほっぽらかして行くわけにはいかない。そしてその指揮は空母棲姫が執っていた。因みに南方棲戦姫と彼女が率いる部隊は今回空母棲姫の指揮下に入っている形である。
だが空母棲姫は先に言ったように、現地の姫とアンドロメダとの繋ぎ役として必要なために、同行しないわけにはいかない。
「貴女に指揮権を一時的に委譲します」
そう告げるが「指揮権委譲にはお互いの副艦クラスの立ち会いが必要でしょ?」と返される。
これには指揮権の委譲が確実に行われたという証言が必要であるという理由から作られた取り決めである。
一応、非常時は副艦クラスでなくても良いとはされている。
そのため空母棲姫は駆逐棲姫にその代役をと考えていた。
だが問題は今回の場合、南方棲戦姫側の代役も必要となるのだが、それも駆逐棲姫が代役となるが、そもそも
まさかいくら友好的とはいえ、アンドロメダに代役を頼むわけにはいかない。
アンドロメダともっとも親密な駆逐棲姫とはいえそことは十分に弁えていたために事前に釘を刺した。
しかしこのままだと話が一向に進まないと判断したアンドロメダは「ああもう!分かりました!私がお二人を艦隊が待機している所までお送り致しますから、急いで手続きをしてください!!」とまくし立てて、有無を言わさず垂直上昇を行って離水し、飛び立った。
アンドロメダの強引さに目を白黒させながらも、空母棲姫と南方棲戦姫は振り落とされないようにと艤装にしがみ付く。因みに駆逐棲姫は最早定位置となったアンドロメダの膝の上である。
なお余談だが、アンドロメダの艤装は慣性制御が機能しているため、振り落とされる心配は無かったりする。
委譲手続きを横目に見ながら、アンドロメダはアナライザーやドクターと飛行中も行っていた打ち合わせをしていた。
手遅れかもしれないが、できる限りアポロノームの存在を人類から秘匿すべくアナライザーに工作を指示し、負傷している可能性が高いアポロノームや妖精達の為にドクターを始めとした医療班の準備を指示した。
「銃を下ろしなさい!!」
サイパン島オブヤン・ビーチに到着したアンドロメダは開口一番にそう叫んだ。
緊急事態ということで直接現場へと乗り込んだのだ。無論、事前に許可は得ている。
あの後、指揮権を引き継いだ南方棲戦姫に見送られながら、直ぐ様サイパン島へと文字通り飛んだ。
サイパン島の状況は衛星への工作の為にアナライザーがクラッキングを行った際、ついでに様子を確認しようとしたのだが丁度低気圧の通過に伴う雲が上空に差し掛かってしまい、確認出来なかった。そのため艤装の望遠機能で捉えれる段階に入った時に初めて現場の様子を認識出来たのだが、確かに妖精さん達が銃火器を持ち出してアポロノームらしき周辺で陣取っているのが確認出来た。その更に外周には深海棲艦の方達が妖精達を下手に刺激しないように遠巻きから窺い、海の上には非人間型の深海棲艦達が様子を窺っていた。
微弱だが、アポロノームの識別信号も確認出来た。
この時アンドロメダの心の中でアポロノームの妖精達に対してふつふつと怒りの炎が沸き上がって来ていた。
アポロノームを守りたいという気持ちは分かる。
だが何故、当のアポロノームを放ったらかしにしている!?
アポロノームは未だに意識が回復していないらしく、コンソールに倒れ伏せたままピクリとも動く気配が無い。
混乱しているのは理解できるが、これはいくらなんでもあんまりだ!
低気圧による雲のおかげでアポロノームの姿が衛星から隠されているが、低気圧が通過中ということはいつ降雨が始まってもおかしく無い。しかもこの辺りの雨はスコールが基本だ。このままだとアポロノームがスコールに打たれてずぶ濡れになってしまう!
この時点でアンドロメダは直接乗り込む決心をし、同行している空母棲姫に頼んでその旨を先方に伝えて貰い、ギリキリのタイミングで了承を得た。
まさかの総旗艦の登場に騒然となるアポロノームの妖精達。しかもその総旗艦は明らかに自分達に対して激怒しており、その怒りに当てられて妖精達は萎縮してしまった。
「銃を下ろせと言っているのが聞こえないのかっ!?さっさと銃を下ろせぇっ!!」
怒りのあまりにアンドロメダは口調まで変わってしまっていた。
それによって妖精達をますます萎縮させてしまい、それが更にアンドロメダの怒りを募らせてしまう。
自身の怒りが負のスパイラルを生んでしまっているのだが、感情が
更には周りの深海棲艦達にまで怖がる者が出てしまっていた。
それ程までに、アンドロメダの怒りは凄まじかった。
「お姉さん、落ち着いて」
見かねた駆逐棲姫がアンドロメダの手を握りながら落ち着くように促す。
それによって少しは冷静さを取り戻したアンドロメダは一つ深呼吸をして気分を落ち着かせる。
「地球連邦防衛軍、航宙艦隊総旗艦AAA-1アンドロメダが命じます!銃を下ろし、各員持ち場の復旧に務めなさい!」
その命令にアポロノームの妖精達は漸く銃を下ろした。
そして待機していたアンドロメダの妖精達と合流して艤装の復旧作業を開始した。
「アポロノーム!」
アンドロメダが艤装のコンソールに倒れ伏せたままの
その足元にはドクターが必死に付いて行っていたが、途中から駆逐棲姫に拾われていた。
『アンドロメダ』
おそらく投棄した物体というのがその航空艤装部分だったのだろう。
二基ある主砲砲塔も破損し、本来四つあるはずのX字状の主翼は下二つが完全に折れて無くなり、それ以外の備品の数々も脱落していた。
紛うことなく大破としか言いようがない有様だった。
アポロノームは本当に無事なのか?
アンドロメダはアポロノームの体に触れようとしたが、直前にドクターから傷の具合が分からないから下手に動かすなと止められたため、後ろ髪を引かれる思いを感じながらアポロノームの艤装のメインフレームへのアクセス作業を行う。
「多少の火傷や切り傷、打ち身はあるが、大きな外傷の
ドクターにそう訊ねられるが、アンドロメダは首を横に振った。
「駄目です。システムは生きていますが、墜落の衝撃で艤装のフレームが歪んでしまったのか、作動不良を起こしています」
その答えにドクターは短く唸ると次善の策に移る。
「艦長のタンクベッドを使おう。艦長、バイタルデータはどうじゃ?」
「…大丈夫です。データの取り出しも問題ありません」
そう答えながら、自身のタブレット経由でアポロノームの艤装のメインフレームから自身の艤装のメインフレームへとアポロノームのバイタルデータのインストール作業を行う。
これを行うことで、新たにバイタルデータのスキャンを行うという行程をある程度省略でき、スムーズにタンクベッドの治療システムが使えるようになる。
とはいえアンドロメダの艤装までアポロノームを運ぶ必要があるため、周りで殆ど風景状態だった深海棲艦に頼んで運ぶのを手伝って貰おうとしたのだが、いつの間にか
「必要と思って用意させたわ」と真っ白なボディスーツに身を包み、それと同じくらいの真っ白な長い白髪を湛えた頭に左右一対ずつの赤い誘導灯の様な角を付け、
暫くして─────。
旧サイパン国際空港内、ラウンジ。
外はスコールの激しい雨音が響いているが、ラウンジの中はアンドロメダの泣き声が響いていた。
結果から言えばアポロノームの怪我の具合は軽傷であり、命に別条はないとのことだった。
そのことをタブレットの通信による画面越しでドクターから告げられたアンドロメダは、安心して気が抜けたのか力が抜けてへたり込み、人目も憚らずに泣き出してしまった。
ずっと気を張り詰めていた緊張の糸が切れたというのもあるだろう。
何せアポロノームの艤装の処理のために空母棲姫と駆逐棲姫の立ち会いのもと、飛行場姫とサイパン島駐留護衛艦隊責任者である、頭にアンテナ状のカチューシャを付け、腕に黒いロンググローブを装着したもう一人の姫級ハイエンドモデル、『泊地棲姫』と協議を行い艤装本体はアンドロメダの艤装共々空港内のハンガーに繋留することとなり、アンドロメダがアポロノームの艤装を曳航作業を行ったのだが、ただでさえボロボロの艤装をこれ以上傷付けないように気を遣い、尚且検査と治療中のアポロノームが自身の艤装内のタンクベッドにいるため余計に緊張していた。
その後アンドロメダは水没した航空艤装も念の為引き揚げてもらったが、何故投棄したのかその理由が分かった。
格納庫内部で火災が発生し、弾薬庫や燃料庫へと延焼する寸前だった。
投棄の判断がもう少し遅ければ、アポロノームの体は間違い無く消し飛んでいた。
何故ならば艤装の操縦席の真後ろに航空艤装が鎮座していたのだから。
また、もし火災が発生しておらず、切り離す必要が無くそのまま着水したとしていたら、更に最悪だった。
航空艤装の影響で重心が非常に高いため着水、あるいは海岸に乗り上げた段階でつんのめって転覆し、アポロノームが艤装に圧し潰されていた危険性が高かった。
ある意味、アポロノームは幸運であったと言える。
とはいえ艤装は手の施しようが無かった。
特に航空艤装は火災と水没の影響で内部は酷い有様だったと確認した妖精から報告があった。
艦載機は予備機を含めて全損。弾薬や予備部品は一部を残して使用不能。
…そして、中にいた妖精は、全滅だった。
殆どの妖精が炎に焼かれ、破損し飛び散った機材にズタズタにされ、一部の無事だった妖精が自身の犠牲と引き換えに、主人であるアポロノームを守るために、艤装本体と航空艤装を強制パージするための接合部分に仕掛けられた炸裂ボルトを起動させた事が、後に判明した。
アンドロメダは妹を救ったこの勇敢な妖精に感謝の念と犠牲になった妖精に心の中で小さく祈りを捧げると、妖精達に使える物資と
偽装爆破の準備をさせた。
既にアナライザーが衛星に細工を施し、墜落した物体が火災を起こしているかの様な映像に差し替えたり、熱源探知機能にも細工を施したが、幸運なことに墜落直後から雲が差し掛かった様で、細工を実行に移す必要は無さそうである。
何故ならば後は誘爆により木端微塵になったかのように偽装するだけだからだ。
ここで飛行場姫が待ったを掛けた。
「弾薬の爆破だけならば、残骸が少なすぎるし爆発の痕跡が小さ過ぎて逆に怪しまれるわよ」
飛行場姫は非情かもしれないけど、と先に述べながら、最早使い物にならない航空艤装ごと吹き飛ばす事を提案してきた。
しかしアンドロメダは首を横に振って飛行場姫からの提案を断った。
無論、妹の持ち物だからとか犠牲となった妖精達への同情といった感情論からではない。
実はを言うと、アンドロメダも飛行場姫からの提案と同じことを考えていたが、ある重大な問題から断念していた。
『アンドロメダ』の艦体には地球では産出されない鉱物資源を加工して作られた特殊金属が使用されていた。
おそらく艤装にもその特殊金属が使われているだろう。でなければアポロノームの艤装は墜落の衝撃でもっと大きく損傷し、内部のシステムも全滅していた筈である。歪むだけで済む筈がないし、メインフレームの破損も深刻だっただろう。
問題は、やはりと言うべきか、この世界の地球でもその特殊金属を作り出すのに必要な
特殊金属を新たに入手することが出来無いというのは痛い。
どんなに大切に扱っても、どんなに強力な金属素材でもいつかは摩耗して使い物にならなくなる。
そのことはアンドロメダにとって頭の痛い問題だった。
だがあることに気が付いた。
ならば
まだ再加工をどうするのかといった課題はあるが、それは一旦棚上げすることとした。
その旨を説明すると飛行場姫は納得したが、爆発の痕跡の偽装をこちらに任せてほしいと新たに提案してきた。
「使えなくなった弾薬も、今の貴女達には貴重な物でしょう?ならアタシ達に任せてちょうだい」
この提案にアンドロメダは悩む。
確かに飛行場姫の申し出はありがたいが…。
「代価として破片のいくつかを貰えないかしら?」
最終的にアンドロメダが折れた。
まごまごしていると雲が切れてしまうかもしれないというのもあるが、下手にいざこざを起こして拗れる事態を避けたかったという理由もある。
ここで下手に拗らせると今回の事で何かと骨を折ってくれた空母棲姫や、親身になって気遣ってくれる駆逐棲姫の顔に泥を塗ることになるし、何よりもアポロノームの安静を保ちたいという気持ちが強かった。
そして飛行場姫の号令により、部下の
泊地棲姫が合図すると沖にいた部隊が艦砲射撃を実行。
更には飛行場姫も自身の代名詞でもある航空隊を飛び立たせると、トドメと言わんばかりに猛爆を加える。
立ち上る爆煙と舞い上がる砂埃を見ながらアンドロメダはやりすぎでは?と思ったが、飛行場姫は「これでアタシ達が破壊したってことにできるでしょ?」と告げる。
その説明に確かにと思う。
煙や砂埃が晴れると、現場は砲撃や爆撃の跡がくっきりと見え、自分達の脅威を排除すべく深海棲艦が攻撃したのだと分かる有り様だった。無論積み上げられたスクラップは木端微塵となり、辺り一面に散乱している。
そして話はラウンジに戻る。
一通りの作業を終えて、改めてお互いの紹介をすべく、飛行場姫に空港内ラウンジへと招かれたのだが、清掃の行き届いた内装や正常に稼働している空調や電灯等の設備にアンドロメダは驚かされた。
その反応を見た飛行場姫はニヤリと笑みを浮かべると「飛行場施設ならアタシ本来の艤装を接続すると使えるのよ」と自慢するかのように胸を張りながら説明した。
アンドロメダ自身、人類側のレポートを読んだ際に陸上型深海棲艦には通常の深海棲艦とは違った『特技』とも言える特殊能力があるかもしれないと示唆する記載があった為に、知識としては知っていたが、実際に見るとやはり驚かされてしまう。
だが何よりも驚いたのが、
そのことに唖然としていると「ああ、この島の住民の残留組よ」と飛行場姫が軽い感じで言ってきた。
「危ないから最初は追い返していたんだけどねぇ、人間の子供達のパワーにはさすがのアタシも負けるわ」
そう言って朗らかに笑う飛行場姫。他の姫や深海棲艦達もにこやかにしているし、人間達の表情にも表裏が無かった。
何よりも無邪気に遊ぶ子供達を見れば、それがここのいつもの風景なのだと容易に想像できる。
空母棲姫もさも当然の様に振る舞っている。*1何よりもちらりと見た
この時、アンドロメダの心に黒い感情が芽生える。
大好きなお姉ちゃんが受けた仕打ち、そしてその優しい心に大きな傷を負わせた
そうこうしている内にタブレットのコールが鳴り響き、ドクターからアポロノームの容態は心配いらないと伝えてきた。
それによってアンドロメダの心に芽生えた黒い感情は鳴りを潜め、代わりに安堵の気持ちが湧き上がり、それが涙となって溢れ出した。
それを咎める者はいなかった。
深海棲艦の中でも姫級には姉妹、或いは姉妹の様な仲の存在が複数存在する。
だからこそアンドロメダの反応に理解できるし、自身も同じ反応をするだろうと思った。
そして─────。
『「…ん。…あ、姉貴…?」』
タブレットからドクターとは違う声が微かに聞こえてきた。
『「ん?おお、気が付いたようじゃぞ!」』
そのことに居ても立っても居られなくなったアンドロメダは、ラウンジを転がるようにして飛び出すと、自身の艤装があるハンガーにまで一目散に駆け出していた。その後ろからは当たり前の様に駆逐棲姫も付いてきていた。
空港設備ハンガー内。
本来ならば旅客機等の飛行機を整備するこの場所に、アンドロメダと大破したアポロノームの艤装が並ぶように鎮座している。
とはいえアンドロメダの艤装は着陸用ランディングギアを展開しているが、アポロノームの艤装は地面に横たえる形である。
アンドロメダは脇目も振らずに自身の艤装に飛び乗ると、タンクベッドから上体を起こしていた人物と目が合う。その傍らにはドクターが立っていた。
「アンドロメダの、姉貴…?」
最初こそは驚きの顔を浮かべていたが、現れたのが自身のよく知るヒトであったが故に、恐る恐るではあるが、その名を呟いた。
「アポロノーム…、本当に、アポロノームなのですね…?」
もう会えないと思っていた愛しき妹が今、眼の前にいる。
「姉貴…、窶れたな…」
確かに少しだけ頬が痩けた様な気はしていた。だが自身の体のことよりも姉の姿を見て心配そうにそう声を掛ける妹に、アンドロメダは感極まる。
嗚呼、間違い無い。アポロノームだ。私の大切な、愛する妹の一人。
ヤンチャでガサツな言動が目立つが、姉妹の中で誰よりも面倒見が良くて、気遣いが出来る優しい心を持った自慢の妹。
だからこそあの時、自らを犠牲にしてまで────。
「馬鹿!馬鹿!!アポロノームの馬鹿!!もう離しません!絶対に離しませんよアポロノーム!!」
アポロノームに抱き着いて嗚咽をあげるアンドロメダ。
そんな姉に申し訳無さそうにしながらも抱き返してその頭を撫でるアポロノーム。
「すまねぇ。俺が不甲斐無いばかりに、迷惑を掛けた」
ふと姉の後ろから付いてきていた駆逐棲姫と目が合う。
駆逐棲姫も若干目が潤んでいた。
「ドクターから話を聞きました。姉を、アンドロメダをずっと支えてくれて、ありがとう」
そう言って駆逐棲姫に頭を下げるアポロノーム。
そんなアポロノームに微笑みを浮かべる駆逐棲姫。
「当然です!なんて言ったって私はお姉さんのお姉ちゃんなんですから!貴女も私のことをお姉ちゃんって呼んでも良いんですよ!」
胸を張ってそう言いながら
そんな
しかも
「な、なぁ姉貴?そろそろ離してくれねぇか?」
ずっと抱き締めたまま離さない姉に対して、苦笑いを浮かべながらそう尋ねた。体からミシミシというなんだかとても不吉で嫌な感じがする音がしている気がするのだが…。
「…もう離しませんよ?」
瞳のハイライトが消えた
それを傍から見ていたドクターの呵呵笑いとアポロノームの悲鳴がハンガー内に響き渡った。
アポロノームの脊椎損傷まで、後─────。
参番艦「まさか零番艦!?実在していたのか!?」
壱番艦「そう言えばそんな話もありましたね」
鬼竜「なんだか胃が痛くなってきたんだが」
先生「諦めな」
英雄「なんか、スマン…」
ちょっと強引ですがサイパン島に到着です!
ようこそサイパン島へ!
飛行場姫と泊地棲姫が登場!サイパン島と言えば飛行場!ならば飛行場姫の出番だなと登場して頂きました。泊地棲姫を選びました理由は、ある意味初恋の姫級深海棲艦だからです。とはいえ今回は顔見せ程度で次から本格的に出てきます。また他にも姫級が居たりします。
なんだか深海棲艦が単なるお人好しになっていってるな…。とはいえドンパチしていてもなんだかんだ言って上手く付き合える時は意外なほど上手く付き合える場合もあるし、下手に扇動したりして煽る連中(マスゴミとか権力モンスターとかマスゴミとか致命的に空気読めない奴とかマスゴミとか)がいなければ火のないところに煙は立たない。
一応、次回以降にサイパン島の今に至る経緯やら何やらの解説回になるとは思いますが、日本サイドの話になるか、はたまた閑話が先かもしれません。
それにしましても、現在実施しておりますアンケートの現在の結果に些か驚いております。まさか金剛さんがぶっちぎりのトップになるとは…。正直金剛姉妹で接戦になると予想しておりました。
それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。
アメリカ大統領選挙のイメージは?
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直接選挙
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間接選挙