艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 明かされる『真実』の一面と新たな謎。


 お待たせ致しました。リアルで同僚が病気でぶっ倒れて執筆する時間と気力が枯渇しておりました。


 アポロノームと再会したアンドロメダ。

 色々と情報ぶっ込みました。やや時事ネタ(?)らしき物も…。


 アンケートにご協力頂き、誠にありがとうございました。
 投票の結果、秘書艦は金剛さん。副艦は霧島さんに決定致しました。

 登場は今少し先になると思いますが、出来るだけ早く登場させられるように頑張ります。
 また今回落選となりました娘達も何らかの形で出すことになると思います。


第22話 One side of the "TRUTH" revealed and a new mystery.

 

「お騒がせ致しました」

 

 

 アポロノーム()を伴ってアンドロメダはラウンジへと戻って来た。

 

 そして開口一番に居並ぶ姫達に頭を下げながら突然飛び出したことを謝罪した。

 

 とはいえ姫達も、アンドロメダの事情に関しては空母棲姫から聞いており、そのことに理解を示し気にしなくていいと答える。

 

 

 

 車椅子に乗るアポロノームは居並ぶ姫達に、驚きを禁じ得なかった。

 

 

 人のカタチをしているが、人ならざる者達。

 

 

 護身用の南部97式拳銃(コスモニューナンブ)アンドロメダ()に『ヤマト』とガミラス軍人メルダ・ディッツ少尉との初邂逅の際のエピソードを引き合いに出され、「礼儀に反する」からと、自身の艤装に置いてきたが、正直白兵戦となったら89式機関短銃や空間騎兵隊等の陸戦部隊が使用している銃剣付きAK-01レーザー自動突撃銃、実体弾を使用する99式突撃銃は完全にオモチャだろう。

 

 最低でも『ヤマト』に乗艦しているという空間騎兵隊の隊長が考案し、『ヤマト』艦内で製造したと言われている二式空間機動甲冑なるパワードスーツが必要だろうが、有ったとしても、火力は兎も角として防御力の問題から最終的に捻じ伏せられてしまいそうな程に力の差があると、アポロノームは直感的にそう感じた。

 

 

 だが、彼女達からは一切の敵意を感じられない。

 

 

 それどころか、未だ回復しておらずにまともに歩けない自分の事を心配し(いたわ)るかの様な雰囲気を感じる。

 

 

 直前にアンドロメダ()から心配はいらないと聞いていたし、何ならずっと一緒にいる駆逐棲姫(自称、姉)も自身に対して興味津々で些か圧倒されたが、節々で体を気遣ってくれていた。

 

 

 先にこの世界に来ていたアンドロメダ()はファーストコンタクトからずっと彼女達と親しい友好的な繋がりがあるようだが、自分はそのアンドロメダの妹ではあるが初対面であるし、墜落の影響で迷惑を掛けた。

 

 

 それなのに、彼女達の雰囲気はまるで身内の様な存在に対する、親しみに似た感じである。

 

 

 正直、どう振る舞うべきか悩んでいた。

 

 

「この度は救助の手を差し伸べて頂き、感謝の念に絶えません」

 

 

 当たり障りの無いように、言葉を選びながら出来るだけ丁寧に喋る様に心掛けた。

 

 途中で舌を噛まないかヒヤヒヤしたが、対面にいる姫達が段々と笑いを噛み殺している表情になっていくのを見て、怪訝な表情になる。

 

 だがよく見るとその視線は自身の後ろ側、車椅子を押してくれていたアンドロメダ()に向いていた。

 

 振り向くとアンドロメダ()が吹き出さないようにと必死に耐えている、なんとも可笑しな変顔になっていた。

 

 

「ご、ごめんなさいアポロノームっ。で、でも貴女がそ、そんな丁寧な喋り方が出来たなんて、思わなかったから、つい」

 

 

「ちょ、ちょっと待て姉貴!俺だってこんくらい出来らぁ!」

 

 

 あんまりなアンドロメダ()の言い様に、ついいつもの口調で噛み付くように反論してしまう。

 

 

「でも、なんだか窮屈そうでしたよ?舌を噛みそうになったのではないですか?」

 

 

 アンドロメダ()に思いっきり見透かされていたことに、アポロノームは言葉に窮してしまう。

 

 だがそこでふと気付いた。

 

 

「姉貴、ひょっとして()()()の事を根に持ってたのか?」

 

 

 あの時とは、土星決戦直前にアポロノームがアンドロメダ()から内緒にしていてと約束されていた事を、姉妹達の前でバラしてしまった一件の事である。

 

 

 アンドロメダはアポロノーム()に気付きましたか?と言わんばかりにニッコリと微笑んだ。

 

 

「はい。あの時の貴女の行いに対する意趣返しです」

 

 

 終始ニコニコ顔で語るアンドロメダ()に、アポロノームはなんだか悔しくなって顰めっ面を作ってしまう。

 

 

 ラウンジの中を姫達の笑い声が満たした。

 

 

 

「少しは緊張がほぐれましたか?」

 

 

 アンドロメダがアポロノームの耳元でそう小さく囁いたことで、アポロノームはアンドロメダ()の真意に気付いた。

 

 

「全く、姉貴には敵わねぇな…」

 

 

 

 お互い程よく緊張感がほぐれたことにより、和やかな滑り出しとなった。

 

 

 

 ラウンジ内に設置されている机と椅子を寄せ合い、そこに全員が着席し、ここからは真面目な話となる。

 

 

 先ずはサイパン島での滞在許可と注意事項、特に住民とトラブルを起こさないでというものだった。

 

 

 だがその住民の話が出た段階でアンドロメダは、この島に人間の住民が普通に暮らしている事についての質問を切り出した。

 

 今となっては疑念の塊でしかないが、各国の公文書の内容を掻い摘んで話した。

 

 

 人類側では深海棲艦に制圧された場所で人が生存出来る可能性は全く無いとされている。

 

 その根拠としてここサイパン島が属するマリアナ諸島が一度人類が奪還した際に確認された事が理由として挙げられている。

 

 人類が奪還した島はマリアナ諸島以外にもいくつか事例があるが、それらは深海棲艦の侵攻前に住民の避難が完了していた島々であった。

 

 だがマリアナ諸島だけは唯一と言っていいほどの例外だった。

 

 

 マリアナ諸島は最大人口のグアム島は別として、二番目に人口が多いサイパン島では嘗てのパンデミックの際に、その対応に住民が反発して発生した事実上の内戦とすらいわれている大規模暴動の結果、半ば無政府状態が続いており、避難が完全には完了しなかった。*1*2

 

 

 後に日米両軍による奪還作戦が実施された際に、生存者は確認されなかったとされている。

 

 奪還作戦以前から衛星や偵察機が撮影した破壊された建物などの映像がメディアを通じて公開されており、それを裏付ける形となった。

 

 

 この話を聞いた姫達は怒りと憎しみ、侮蔑が混じった表情となり、場の空気が一気に重くなる。

 

 

「ですが、これらには不自然な点が多く見られます」

 

 

 最初は気付かなかったが、よくよく思い返してみたら不可思議な点がいくつもあるのだ。

 

 

 一例を上げれば、生存者がいなかったという報告は()()()()()、より細かく言えば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 更に言えば、住民の居住していた地区から偶然かもしれないが()()()()()()()()()()()()()()()

 

 公開された映像は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

 トドメに、その時の上陸部隊が悉く()()()()()()()しているのだ。

 

 

 もっと細かく見ていけばそれ以外にもあるだろうが、なにか可怪しいのだ。

 

 

 明らかに何か隠していると、アンドロメダは強く疑っており、アナライザーに最優先事項として情報収集を再度命じた。

 

 

 そのことを伝えると、アンドロメダが話している間ずっと目を閉じて聞いていた飛行場姫が徐ろに目を開き、口を開いた。

 

 

 

「…アタシ達は当時、無人島だった隣のテニアン島に拠点を構えたわ。グアム島は島内を滅茶苦茶に破壊されていたから拠点化に時間が掛かりすぎると判断したのと、サイパン島に人間達が暮らしている事が事前偵察で分かったから、出来るだけ巻き込まないようにするためにね」

 

 

 そこからはアンドロメダとしてはまさかと思いつつも、当たってほしくなかった内容だった。アポロノームは話について行けずに目を白黒させてしまっているが、今は可愛そうだが放置した。

 

 

 テニアン島を制圧後暫くして、潜水艦からの巡航ミサイルと思われる飛翔体による攻撃が開始されたが、何故かサイパン島まで攻撃された。

 

 最初は誤爆かと思われたが、その後も着弾が確認されたため、流石にまずいと判断してサイパン島に迫るミサイルも迎撃したが、戦力が分散してしまい焼け石に水だった。

 

 

 

「そうこうしているうちに人類が艦娘達と手を組み、反攻作戦に出て小笠原諸島と沖縄が奪還された段階でアタシ達は島を放棄して撤退することになったわ」

 

「小笠原諸島制圧部隊は消耗戦を嫌って早期に撤退出来たけど、沖縄戦線はそのタイミングを逃して消耗戦に引き摺り込まれてね。ここから戦力を抽出しすぎて戦力に余裕が無くなったのと、執拗なミサイル攻撃の影響で、ここで戦うには無理があったからね」

 

 

 その間もサイパン島への散発的なミサイル攻撃が続いていたが、撤退が確認されたらサイパン島への攻撃も無くなるだろうと、その時は思われていた。

 

 

「…ですが、その見立ては、甘すぎた」

 

 

 泊地棲姫が悔しさを滲ませた沈痛な面持ちで、絞り出したかのような声でそう告げた。

 

 飛行場姫が言うには彼女はあの日、撤退する部隊の()()()()を務めていたという。

 

 小笠原諸島戦線で制圧部隊の責任者であった彼女は、麾下の部隊が無事に安全圏まで撤退するまでの間、自らの直援部隊と共に最後尾で粘り強く抵抗し、追撃部隊に大きなダメージを与えてから見事に撤退を成功させたという実績があり、また戦力の再編も完了していたために今回も撤退する部隊の最後尾で()()()()として布陣していたという。

 

 

 そして見てしまった。

 

 

 艦娘の追撃部隊との遅滞戦闘を繰り広げながら、サイパン島方面から黒煙が上がるのを。

 

 

 まさかと思い偵察機を飛ばしたら、島は地獄絵図と化していた。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 その凄惨な光景に動揺し、指揮が疎かになった一瞬の隙を突かれ、やや優勢だった戦況は一気に覆され部隊は潰走。

 

 

「気付くべきだった…。私達が拠点としていたテニアン島だけでなく、サイパン島にまでミサイルが何度も飛来していた時点で、すでに人間達は島の住人達すらも標的にしていたのだと…!」

 

 

 懺悔するかの様に、怒りと悲しみが入り混じった痛々しい顔で語る泊地棲姫。

 

 

「ちょっと待ってくれ!」

 

 

 あまりの内容にたまらず叫んだアポロノームの声がラウンジに響いた。

 

 

「あんた達が嘘を言っているとは思えないが、いくらなんでもそれは───」

 

 

 アンドロメダ()と違って、ついさっきこの世界に来たばかりで情報も殆ど無い、精々ここが異世界で、目の前にいる深海棲艦達がこの世界の人類と敵対しているという程度の知識しかないアポロノームには、どうしても信じきれなかった。

 

 

 だが────

 

 

「残念ナガラ、事実(ジジツ)デス」

 

 

 不意にアナライザーの声がアンドロメダの懐から発せられた。

 

 

「アナライザー、やはり()()()()()()()

 

 

 アンドロメダは懐から携帯用の小型タブレットを取り出しながら、アナライザーにそう尋ねる。

 

 その際のアンドロメダの表情は、一番当たってほしくなかった予想が当たってしまったかという思いから、かなり苦々しく顰めていた。

 

 

「ハイ。巧妙ニ改竄サレテイタリ、消去サレテイタリシマシタガ、ナントカ(サガ)シアテテ(マト)メルコトガデキマシタ」

 

 

 アナライザーからの返答に頷くと、アンドロメダはタブレットを机の上に置き、投影スイッチをタップした。

 

 するとデフォルメされたアナライザーが空中に映し出される。

 

 ホログラフィを初めて見た姫達の間で驚きの声が上がり、そんな彼女達にアナライザーは軽く挨拶すると、アンドロメダに報告を行なった。

 

 

 軍、政府機関、各種メディア、公共民間の垣根無く徹底的に容赦無く調べた。

 

 その際にアポロノームのメインフレームとも共同で行なったために、作業が捗り、より早く情報が集まったという。

 

 

 

 結論から言えば、『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』という方針が定められていた。

 

 

 その()()をより強固なものにするために、サイパン島の住人達は犠牲の羊、必要な犠牲、コラテラル・ダメージとして選ばれた。

 

 

 また上陸部隊には内々に『サイパン島で生存する者は人類の敵に与する人類の裏切り者達であり、これを一人残らず殲滅せよ』という秘密命令が下されていた。

 

 

 その罪は全て深海棲艦に(なす)り付けて、『悪逆無道な人類の敵、深海棲艦』という確固たるイメージを民衆に植え付けようとした。

 

 そしてその本来の実行犯達は、上陸支援艦隊の()()により秘密裏に処理されるはずだったが、何故か()()()()()()したという。

 

 未確認の新種の深海棲艦らしき存在が出現したという通信が艦隊から発せられたが、結局詳細は分からなかった。

 

 

 アポロノームはこんなことが許されるのかと、怒りに顔を歪めながら思った。

 

 だが何よりも腹立たしいのは、明らかに度を越した検閲などの情報統制が行なわれていることだ。

 

 

 『矛盾を指摘すること、反論すること、疑問に思うこと、それらに関連する全ては徹底的に排除しなければならない

 

 

 明確にそういう指示があったことを示す物的証拠として、政府関係者や各種メディア上層部のやり取り、報道内容の方向性や方針を定めたオンラインミーティングの画像や音声データに、厳重にプロテクトされていた書類や資料が見つかった。

 

 またソーシャルメディアの検閲システムのアルゴリズムを解析した結果、間違い無いという答えに辿り着いた。

 

 

 その話を聞いていた姫達もアポロノームと同様に怒りの形相になるが、しかしアポロノームと比べ、その姉であるアンドロメダは机の上に両肘を立てて手を組み、口元に持ってきていた姿勢で、*3眉根こそ寄せているが、やや落ち着いた雰囲気である。

 

 理不尽を嫌っていると聞いていた姫達は、そんなアンドロメダの態度に疑問に思う。

 

 それはアポロノーム()も同じだった。

 

 

 アンドロメダとしては、()()()()の情報統制指示は、まぁ、ガミラス戦役で国連や地球軍も似たような事をやっていたために、*4非難する気にはなれなかった。

 

 

「身内の恥を晒す様で気が引けますが…」

 

 

 そう前置きを言ってから静かに語りだす。

 

 

「人類初の星間戦争であるガミラス戦役で最初に引き金を引いたのは我々地球軍なのですが、その事実はずっと隠蔽されていました。異星人であるガミラスへの敵愾心を煽るために」

 

 

 姫達の間で動揺が走る。

 

 

 世界は違えど、人間達の考えることは変わらないのかと、失望と侮蔑混じりにそう考えた。

 

 駆逐棲姫や空母棲姫もその事実にショックを隠しきれずにいた。

 

 アポロノームは地球軍ということもあり、そのことはよく知っている。だが───。

 

 

「だけどよ、姉貴!」

 

 

 ここでアポロノームは気付いた。

 

 アンドロメダ()は組んだ手の甲に指が食い込み、目が完全に座っていることに。

 

 

ですが、我々地球軍の名誉にかけて断言致します!

 

 

我々の軍はこの世界の野蛮人共と違い、無抵抗の民間人に対して平然と銃を撃ち、それを誇り悦に浸るような蛮族の軍ではありません!!

 

 

 机に自らの拳を叩きつけながら、そう力強く断言した。

 

 

 とはいえこれはアンドロメダ自身、確証がある話ではなかった。

 

 

 だがアンドロメダは()()()()()()()と自分達の地球の人間が一緒くたにされる事が正直我慢ならなかった。

 

 

 少なくともアンドロメダはパンデミックから今に至るまで、この世界の人間達、特に権力者共が執拗なまでの陰湿で陰険な情報統制や改竄をやたら好んで多用することを既に掴んでいた。

 

 特に第三次大戦前後は酷い、いや醜い有様だった。

 

 その一例として、サイパン島の様な手法で民衆を欺いて騙し、基金という形で金銭を無心させていた。

 

 更には極東にある世界のATM国家からあの手この手で騙しに騙してかなりの大金を無心させていた。*5

 

 

 他にもまだまだあるが、兎も角アンドロメダはこの世界の地球人は自分達の世界の地球人と似て異なる存在、有り体に言えば()()()()()()()であると認識することで、ギリギリ怒りの爆発を抑えていた。

 

 

 それでも隣に座る駆逐棲姫(お姉ちゃん)がアンドロメダの怒りがこれ以上溢れ無い様に手を握った。

 

 

 また飛行場姫も話題を変えるついでに気になった事を聞いた。

 

 

「ところで、未確認の新種の深海棲艦って話は本当なの?」

 

 

 その飛行場姫からの問いに、アナライザーは(くだん)の通信記録のみの情報しか真面に無いが、状況的にそれが一番可能性が高いと、人類側は見ている様ではあるが、確固たる証拠は無いという。

 

 

 飛行場姫曰く、当の深海棲艦側でもこの辺りの事は、不明の案件であるという。

 

 

 泊地棲姫もその深海棲艦らしき存在のことが気になっていた。

 

 あの時テニアン島から同胞(はらから)全員が退去したのをしっかり確認してから自身も退去したし、引き返した同胞(はらから)もいない。

 

 自身が引き返す事も考えたが、戦線は崩壊し、自身も戦艦艦娘からの砲撃が直撃して重傷を負ってしまい、最後は悔恨から泣き叫びながら部下に引き摺られるようにして離脱した。

 

 気絶する間際に血を吐き「オノレッ!忌々(イマイマ)シイ艦娘共メ!!」と、怨嗟の叫び声を残しながら…。

 

 無論、艦娘(彼女)達は義務を果たしているだけなのだから、艦娘(彼女)達に怒りをぶつけるのはお門違いだとは理解している。

 

 だがそう叫ばずにはいられない程に、あの時はただただ悔しくて仕方無かった。

 

 虐殺を止める事が出来ない自身の無力を噛み締めながら気を失ったあの時の事は、今でも悪夢としてフラッシュバックしている。

 

 

 それから数ヶ月後、人類の反攻作戦はチューク諸島目前まで到達したが、補給線が寸断され、上陸部隊が海の藻屑となり、追い打ちを掛けるかのように同時期に今までなんとか保持し続けていた太平洋の要所であるハワイ諸島と更にはアリューシャン列島までもが相次いで失陥したことにより、日米の連絡線が寸断されたことで中止となった。

 

 そして再びマリアナ諸島へと戻って来たときに、人類が拠点を再構築していたグアム島ではなく、真っ直ぐサイパン島へと向かった。*6

 

 

 島にはもう、誰も生き残ってはいないだろうと思いながらも。

 

 

 

 だが────。

 

 

 

 彼らは、生きていた。

 

 

 その人数こそ大きく減らしていたが、生き残っていた。生きていてくれた。

 

 

 

 しかしそこで生存者の口から─────

 

 

 

 

深海棲艦の(むすめ)に助けられた

 

 

 

 

─────という耳を疑う言葉と共に、生き残りの住人達から感謝されるまさかの事態が発生した。

 

 

 詳しく聞くと、あの地獄の日、軍隊の人狩りにより島は地獄絵図と化した。

 

 そこへ突然、小柄な体型に比して不釣り合いな程の長大な大砲のような兵器を装備した色白で瞳に紅い燐光が灯る(むすめ)が現われて軍隊に殴り込み、瞬く間に戦車などの兵器を破壊し、兵隊達を皆殺しにした。

 

 更には沖合にいた軍艦も悉く沈めて。

 

 

 全てが終わった後、生き残りの住人に「ごめんなさい。ごめんなさい」と謝罪しながら泣いていたという。

 

 その後現われた白い肌、白っぽい服と帽子、黒髪に左腕にシールドの様な装備をした(むすめ)と合流して去っていった。

 

 

 それらを聞いて、最初は艦娘が味方の蛮行に耐えかねて暴発したのではないか?と考えたが、この特長と一致する艦娘が分からなかった。

 

 

 一応、住人達には「あなた達を助けたのは私達ではない」と説明したが、逆にこれらの話し合いが住人と深海棲艦が交流する切っ掛けとなり、以来、お互いある程度の距離を保ちつつもかなり友好的な付き合いが出来るようになった。

 

 

 とはいえ深海棲艦はかつて南太平洋が核攻撃を受ける前、現地の住人とそれなりに良い関係を構築していたが、核攻撃によって味わった深い喪失感と悲しみのトラウマからかどうしても壁を作ってしまい、住人達も人ならざる者達との付き合い方におっかなびっくりだったりと、暫くはギクシャクしていた。

 

 

 だがそれを打ち破ったのが、好奇心の塊である子供達だった。

 

 

 子供達には人ならざる者とかの小難しい事はどうでもよく、ただ珍しいもの、そして強いものに対する憧れが刺激された。

 

 それになんだかんだ言って、深海棲艦(彼女)達は優しかった。

 

 子供達の中にはあの日、両親を亡くした孤児も少なく無く、女性の姿形を成している人型の深海棲艦達に優しかった母親の姿を重ねることもあった。

 

 

 そのことに一番胸を打たれたのが、撤退時に見た惨劇がトラウマとなっていた泊地棲姫であった。

 

 彼女は護衛艦隊の責任者としての役目を果たしつつも、島内で部下と共に孤児の面倒を見る孤児院の保母の様な事をしているという。

 

 先ほどロビーで遊んでいた子供達は、泊地棲姫が面倒を見ている子供達だという。

 

 子供達の面倒を見ている時の泊地棲姫は本当に楽しそうで穏やかな顔をしていると、そう飛行場姫に言われて泊地棲姫は少し恥ずかしそうに顔をほんのり朱に染めていた。

 

 そういえばロビーで子供達と会った時、泊地棲姫に手を振っていた子達がいたなとアンドロメダは思い出し、また泊地棲姫もそんな子供達に優しく暖か味のある微笑みを向けていた。

 

 

 そこへ、アポロノームが何故そこまで人間の住人達に気を遣うのか?と飛行場姫に尋ねた。

 

 アポロノームとしては、人間に対して思うところが無いのかと気になったのだ。

 

 

 その問いに対して飛行場姫はあからさまに不機嫌な雰囲気を醸し出した。

 

 

「力無き者を甚振って、なんになるというの?何が楽しいの?」

 

「確かにアタシ達だって、人間に対して思うところが全く無いわけでは無いわ」

 

 

 そう言いながら右腕の義手に触れると、鋭い目つきでアポロノームを睨みつけた。

 

 

「だけどそれにあの人間達、そして子供達に何の関係があるの?」

 

「あんたはアタシ達がそういった分別が出来ない存在と思っているわけ?」

 

「さっきのあんたのお姉さんの言葉と(かぶ)るけど、絶対悪を演出し、『敵』という存在を意図的に作りたがるような下衆連中とアタシ達を一緒にしないでほしいわね」

 

 

 飛行場姫は殺気を滲ませながら、そうアポロノームに言い放った。

 

 周りの姫達もアポロノームを視線だけで射殺(いころ)さんばかりに睨み付けた。

 

 

 流石のアポロノームもこれにはたじろぎ、軽率な質問だったと、即座に陳謝した。

 

 アンドロメダもアポロノーム()の失言に対して姉として、また地球軍として謝罪し、アポロノーム()にせめて言葉を選ぶようにと叱責することで、この問題の幕引きとした。

 

 

 

 

 ここで気分転換とすべく、コーヒーブレイクと相成った。

 

 

 

「それにしましても、(くだん)の謎の深海棲艦というのは気になりますね…」

 

 

 初めて飲むコーヒー*7の苦さに顔を僅かに顰め、砂糖とミルクを入れて掻き混ぜながら、そう呟いた。*8

 

 

「情報が少なすぎてアタシ達もお手上げよ」

 

 

 アンドロメダの呟きに飛行場姫が肩を竦めながら返した。*9

 

 一応、同胞(はらから)の中には『()()()』と呼ばれる単独や少数グループで活動する存在がいるにはいるが、基本的に好き勝手に暴れたりと気儘な連中ばかりで把握しきれていないが、それでも既知の個体が殆どで、新種がいれば噂くらいは流れる。

 

 だが今回の個体は確認されてから既に数年が経っているが、あの時確認されたのみで、一向にその足取りが掴めないでいた。

 

 子供達の様子を見に行くために、今は一旦席を外している泊地棲姫は「そのヒトには感謝してもしきれない。それでも一度ちゃんと会って感謝の言葉を伝えたい」と常々思っているという。

 

 

「モシカシタラ、コノ(ヒト)ナラバナニカ()ッテイルカモシレマセン」

 

 

 不意にアナライザーがそう告げて、ホログラフィに一人の人間を投影した。

 

 

「真志妻亜麻美大将、日本海軍艦娘部隊総司令ト内海防衛艦隊司令ヲ兼任サレテイル(カタ)デスガ、当時少将デ横須賀鎮守府第五艦隊ノ司令官トシテ、てにあん攻略ノ指揮ヲ前線ノ支援母艦カラ()ッテオリマシタ」

 

 

「デスガ、作戦後ニ突然大佐ニマデ降格サレ、当時警備府デ僻地アツカイノ小松島基地ニ配置変換サレテイマスガ、ソノ理由ガハッキリシマセン」

 

 

「シカモ麾下ニイマシタ艦娘達全員ニモ、ナニカシラノぺなるてぃーガ()セラレタ異例ノ事態ダッタトアリマス」

 

 

 

───────

 

 日本国瀬戸内海上空。

 

 ヘリの機内で真志妻大将が小松島鎮守府へと出発する直前に在日米軍から通信で送られてきた資料に目を通していた。

 

 

「マリアナ諸島サイパン島に謎の物体が墜落…、詳細は低気圧の通過により不明…。最終的に深海棲艦が破壊した模様…か…」

 

 

 海岸に散乱する破片や残骸を写した写真を見ながら、溜息を吐いた。

 

 

「サイパン島…、つくづく因縁浅からぬ地ね…」

 

 

 そう沈痛な面持ちで呟く真志妻大将の様子を向かい側の座席で(うかが)っていた長門が心配そうな声音で「大丈夫か?」と尋ねる。

 

 

「ありがとう長門。大丈夫よ。()()()は貴女達にもいっぱい迷惑掛けちゃったんだから、今更…」

 

「総提督」

 

 

 不意に長門が真志妻大将の言葉を遮った。

 

 そして真志妻大将の双眸を、悲しみを湛えた瞳で見詰めながら、ゆっくりと言い含めるかの様に語り出す。

 

 

「その、このことに関しては、()()()()()()()()()()()()。辛いなら、私達を頼ってくれ…」

 

 

「長門…」

 

 

「あの時の貴女の事は、()からも聞いていますし、何かあったらよろしく頼むと何度も頭を下げられました」

 

 

「総提督、一人で抱え込んだりしないでくれ。みんなに、また寂しい思いをさせないでくれ…。頼む…」

 

 

 そう言って頭を下げる長門に、真志妻大将は何も言えなくなる。

 

 

 あの時何があったのかは、勿論真志妻大将は知っている。

 

 だがそれは同時に彼女にとっての強いトラウマでもあり、また当時艦隊を率いていた長門にとっても簡単には割り切ることが出来ない大きな、大き過ぎる出来事だった。

 

 

 後に歴史の重要な転換点となったとされる、マリアナ諸島サイパン島の悲劇の詳細が判明するのは、まだ先の、ほんの少し未来の事である。

 

 

*1
これにはマリアナ諸島の主権国であるアメリカ合衆国への強い反米感情が絡んでいる。マリアナ諸島は全域が米国領であるが、北マリアナ諸島はコモンウェルス、米国自治連邦区という自治が認められた地区であったが、パンデミック時に自治政府と米国政府の間でパンデミックの対応を巡って諍いが発生。業を煮やした米国政府が軍隊を動員して武力で自治政府を解散させ、米国政府が指定する対応を強制させたが、逆にパンデミックの被害を拡大させてしまい、住民の間で反米感情が高まり暴動へと発展した。その後の深海棲艦の侵攻への避難の際にも米国が主導して行なったが、住民の反米感情は未だに収まっておらず、少なくない人数が避難を拒否した。

*2
因みにだが、北マリアナ諸島とグアム島とでは行政区分に違いがある。

*3
所謂ゲンドウポーズ。

*4
特に開戦劈頭の先制攻撃の隠蔽。

*5
救いがたいことに()の国の為政者たちは特措法を制定し新たな徴税としてしまった。

*6
この時グアム島は補給線の維持が困難であるとの判断から、前日に放棄されており、再構築された拠点も主要設備と滑走路を爆破処理されていた。

*7
しかも本物。

*8
なお、アポロノームと駆逐棲姫はより大量の砂糖とミルクを投入していた。

*9
因みにこちらは香りを楽しみながらストレートで飲んでいる。




 本当にお待たせして申し訳ありません。


 待たせておいてなんですが、少し愚痴ります。

 リアルアメリカマジで大丈夫なのか?あのジジイが大統領なってからどんどん悪い方向にしか行ってねぇし、FBIは連邦“脅迫”局の略だと言われ、憲法違反に法律違反の捜査ばかりで旧ソ連のKGBと違いが分からんし、州の裁判による情報公開でSNS検閲の実態が出てきたり、ジジイは国民に喧嘩売るし、憲法法律が軽んじられたりと、まんま独裁国家じゃねぇか。
 インフレや南部からの不法移民止まんねぇしサウジアラビアの王族に喧嘩売るし、元海兵隊員によるアフガニスタン撤退の暴露とかが出てきたりと言い出したらきりがない。
 中間選挙で共和党が勝利しねぇとマジであの国は更にヤバいことになるぞ。その煽りでうちの国も(既にアウトな気もするが…)もっとヤバくなるぞ…。

 以上、愚痴でした。


 今の悩み。絶対正義、絶対悪を可能な限り排除するつもりが、人類が微妙に絶対悪になりつつあり…。バランスって難しい…。

 元々は深海棲艦=絶対悪、侵略者という考え方を避ける方針で考えていたというのもありますが…、流石に泊地棲姫保母さんはやりすぎたかな?


 『ヤマト』とメルダ・ディッツ少尉とのエピソード。

 メルダ・ディッツ少尉が交渉相手に銃を持って相対するのが地球(テロン)人のやり方か?と痛烈に批判をしたというエピソード。


 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。

アメリカ大統領選挙のイメージは?

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