艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 謎。

 …本来のタイトルは次回に持ち越し。

 本来前置きのつもりで書いていた部分が、気付けば矢鱈長くなりましたので切の良いところで先に投稿致しました。

 それにしても、第7話投稿からおよそ半年。作中ではまだ1日経っていないという筆者でさえ驚いている事態…。
 払暁に戦闘開始⇒戦闘終了⇒正午過ぎまで三姫会談⇒アポロノーム墜落からのサイパン島到着⇒飛行場姫との会談(今この辺り)

 …ホント展開が遅くてスンマセン。


 アポロノーム墜落に関するあれこれがメインとなります。


第23話 MYSTERY

「うっわ、ホンットにぼろぼろだな…」

 

 

 夕方、ハンガーで横たわる見るも無惨な有り様となった自身の艤装を見て、肩を落とすアポロノーム。

 

 

 あの後真志妻大将に関してはアナライザーが一度改めて調査することとなり、また飛行場姫が夕食の仕込み時間が近いからと、2つ3つ程の話で一旦お開きとなり、アポロノームはアンドロメダに頼んでハンガーへと連れてきてもらった。

 

 無論、姉を自称する駆逐棲姫が当たり前の様に付いてきているが、まぁ監視なのだろうとアポロノームは思っていたが、ニコニコと微笑む顔を見ているとなんとも言えない複雑な気分となる。

 

 それに(じつ)の姉であるアンドロメダが駆逐棲姫の事を姉と呼んで懐いてしまっている以上、最早諦めるしかないかと思い、深く考えないようにした。

 

 閑話休題。

 

 

 

 艤装のメインフレームに残されたログによれば、大気圏外から緩やかな角度で降下し、艦首から海面に突っ込みそうになったその寸前でメインエンジンと共に艦首部下部スラスターが起動してギリギリ水平飛行に移行。

 

 しかし高度があまりにも低く、上昇に失敗して艦底部が着水、更に速度が速すぎた影響で水切り石の様に水面をバウンド。

 

 

 その際にエンジンの制御システムが異常を察知してセーフティーが作動しエンジンが緊急停止。

 

 

 後はご存知の通り、ビーチに乗り上げて擱座。

 

 

「あん時は訳もわかンねぇ状態で兎に角必死だったからなぁ…」

 

 

 アンドロメダ()に車椅子をゆっくりと押して貰い、自身の艤装の有り様とタブレットに映る、今判っている範囲の損傷情報を見ながらそう呟く。

 

 アポロノームが言うには、気付いた時には既に大気圏へと降下を開始しており、エンジンだけでなく全ての航行システムが()()()()()()()かなり焦ったという。

 

 

「ですが艦首部や艦底部だけならばまだしも、何故艦上部の装備までこんなに破損しているのでしょう?落下だけのダメージならば、こんなことにはならないはずです」

 

 

 アンドロメダがアポロノームの背中越しにタブレット画面を覗き込み指差しながら告げ、視線を艤装に移す。

 

 アンドロメダ(クラス)の特徴でもある艦首部のコーンユニットは完全に圧潰し、波動砲口もへしゃげて艦首部スラスター共々内部構造が剥き出しになり、カナード翼は両方とも接合部から脱落、対艦グレネード投射器も外装が剥離したりと、土星決戦で『アンドロメダ』が受けた艦首部の損傷よりも酷い有様だった。

 

 

「主砲の砲身なんか、これみたいにひん曲がってポッキリと折れちゃってますもんね。う〜んっ!」

 

 

 隣を歩く駆逐棲姫が、折れ曲がって使い物にならなくなった為に深海棲艦側にサンプルとして提供された主砲砲身を手に持ち、試しにと力を込めるが、砲身はビクともしない。

 

 

「たはぁ!駄目だ。ビクともしないよ!これがこんなことになってるってことは、相当な力が掛かっているよ!て言うか、これどんな材質でどーやって作ってんの!?」

 

 

 肩で息をしながらそう語る駆逐棲姫。

 

 過去に艦娘との戦闘で()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことがあると語っていたが、流石にアンドロメダ(クラス)の砲身は無理なようである。

 

 

「あ〜、よくは覚えてないんだが、たしか落下前から砲は損傷していた気がする。作り方とかは、製造元にでも聞いてくれ」

 

 

 アポロノームは後頭部を()き、苦笑しながら駆逐棲姫に答えると、アンドロメダはその答えに首を傾げる。

 

 

「貴女が現われる直前に次元震が検知されていましたが、これもグラビティ・ダメージによるものなのでしょうか?」

 

 

「だけどよ姉貴、グラビティ・ダメージって確か波動エンジンやその関連だけだろ?けどこれ見てくれよ」

 

 

 そう言って波動エンジンユニットの表示を拡大し、指し示す。

 

 グラビティ・ダメージとは、惑星が発する重力の影響がワープによる全力稼働のために、最もデリケートな状態にある波動エンジンに対して過負荷を掛けてしまう事で起きる、波動エンジンのトラブルの一種である。

 

 だが墜落の衝撃でエンジンノズルは多少変形しているが、それ以外()()()()とあった。

 

 また制御システムが検知したエラーログも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ここでアンドロメダの頭の中で、ある仮説が浮かび上がった。

 

 今自身の艤装の波動エンジンが抱えている原因不明の不調が、グラビティ・ダメージによるものではないのかとアンドロメダは仮説を立てていた。

 

 しかしワープ技術の先進国でもあるガミラスから提供されていたグラビティ・ダメージの症状データと一致するものがなく、通常のワープによるダメージとは違い()()()()()()()()()事を加味して発生した()()()()()()()()()()()()()()だったのではないかと、アンドロメダは見ていた。

 

 ひょっとしたらワープ事故で行方不明になった船の中には次元と次元の狭間である次元断層に落ちるだけでなく、()()()()()()()()()()もいるかもしれないが、そうだったら本来の世界にはデータは残りようがない。

 

 

 ワープには出力次第で次元の壁だけでなく世界の壁を越える機能があるのではないか?

 

 

 自身が沈んだ時、波動エンジンは暴走していた。

 

 

 それがトリガーとなってこの世界に来てしまったのではないかと思っていた。

 

 

 『アポロノーム』が沈んだあの時は、多数の対消滅ミサイルの炸裂による膨大なエネルギー放射が発生していた。

 

 更には直前まで土星宙域は両軍の大艦隊が幾度にわたって艦隊規模のワープアウトが行なわれ、そして地球軍による重力子スプレッドの使用や波動砲の大乱射に白色彗星そのもののワープアウトと、宙域そのものがエネルギー飽和状態となり、かなり不安定になっていた。

 

 

 その状態で対消滅ミサイルの炸裂が最終的なトリガーとなり、局所的に世界の境界面の壁に擬似的な“穴”もしくは“回廊”が出来てしまい、それに吸い込まれたのではないか?

 

 ただし波動エネルギーと比較して瞬間的なエネルギー総量が足りず、中途半端かつ不安定なシロモノであったがために、或いは境界面が開いたのではなく脆くなった所を無理矢理通ったから艤装にダメージが発生したのではないか?

 

 

 アンドロメダはその仮説を顎に手を当てながら語り、アポロノームはそれを難しい顔をしながらも聞いていたが、まあ何とか理解した。

 

 しかし駆逐棲姫は頭から煙を上げて、立ったままフリーズしていた。

 

 たまたま聞こえる範囲にいた見物に来ている非番の深海棲艦達も、互いに顔を見合わせながら、お前分かるか?いや分からない。とアイコンタクトやジェスチャーで交わしていた。

 

 だが、この二人の会話のやり取りを聞いただけで、二人がこことは違う世界からやって来た、謂わば『異邦人』であるという今まで半信半疑で聞いていた話が嘘偽りの無い事実なのだと、実感した。

 

 

 そしてそれが、「この二人も私達と同じなのかもしれない」という、ある種のシンパシーに似た感情を(いだ)くこととなる。

 

 

 深海棲艦の出自には不明な点が多く、彼女達もよく分かっていない。

 

 彼女らは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 運が良ければ同胞(はらから)と一緒だったり、活動中の同胞(はらから)達に偶然見つけてもらえてすぐに合流出来たりするが、運が悪ければ、というか大概はそのまま何日も海の上を当ても無く漂うこととなり、次第に空腹と渇き、そして「私は世界で一人ぼっちなの?」という孤独な感情に段々と蝕まれることとなる。

 

 だからこそ、同胞(はらから)と無事に出会えた時の嬉しさと安堵感は途轍もなく、そこから同胞(はらから)を大切な存在だと強く認識するようになる。

 

 

 孤独というのは本当に辛い。そして空腹から来る焦燥感がそれに拍車を掛けてしまう。

 

 

 時にはそのまま孤独と焦燥に耐えきれず、()()()()()()()()()()()()()暴走した同胞(はらから)が出てしまうという悲しい事態が起きてしまう事だってあるのだ。

 

 

 この二人はおそらくわけも分からずにこの世界へと跳ばされて、気付いたら一人ぼっちな状態で漂流していたのだろう。

 

 

 ある意味では自分達と似たような境遇なのだ。

 

 

 だがひょっとしたら、自分達が味わった以上の孤独に苦しむことになるのかもしれない。

 

 何故ならば、二人の話を聞けば世界の境界を越えるという行為は、そう頻繁に起きるものでは無さそうだし、それに伴うリスクも非常に高そうである。

 

 もしかしたら、この世界にはこの二人しか、私達で言うところの同胞(はらから)と呼べる存在がいないのかもしれない。

 

 

 それはそれで寂しい現実だし、あまりにも残酷だ。

 

 

 元の世界には二人の同胞(はらから)が沢山いたことだろう。

 

 それが突然たった二人になってしまったのだ。

 

 もしも自分達が同じ境遇に置かれたら、発狂するかもしれない。

 

 

 そう思うとゾッとした。

 

 

 この二人の内、先にこの世界に来ていたというアンドロメダというヒトが、孤独によって心が壊れて発狂し、暴走した同胞(はらから)の様に見境なく暴れ出していたとしたら、止められる存在がこの世界にいるのだろうか?と。

 

 聞こえてきた話を聞いただけでも、あまりにも戦争の形態やスケールが違い過ぎる。

 

 まだ噂でしかないが、ここに向かって来ていた同胞(はらから)の増援艦隊がアンドロメダというヒトと交戦して、なす(すべ)なく一方的に叩きのめされて敗北したらしい。

 

 しかも驚くべきことに()()()()()()()()()()()()()()というのだ。

 

 その話が事実ならば、手加減されていたことになる。

 

 本気で来られたら、自分達の上位種達*1が束になっても歯が立たないのではないだろうか?

 

 その事に上位種達が気付いたからこそ、敵対するのは愚策と判断して親身で友好的な態度なのではないか?

 

 特に今も二人に寄り添っている上位種*2はそれにいち早く気付いたのではないか?

 

 

 もしかしたら自分達は命拾いしたのではないか?

 

 

 そうだとしたら、彼女達に親身に接するというのは、途轍もない英断だったのではないか?

 

 

 周りの同胞(はらから)達がそう考えているとは露知らず、駆逐棲姫は相変わらずフリーズしていた。

 

 

 少なくとも、ノーマルモデルの深海棲艦達は、アンドロメダ達との敵対関係化だけは絶対にご免だという風潮が出来上がる切っ掛けにはなった。

 

 

 

「と、兎も角、その仮説は検証のしようがありませんし、この話はお仕舞にしませんかっ!?」

 

 

 フリーズ状態から再起動した駆逐棲姫が目をぐるぐると回し、頭をふらふらさせながら二人にそう告げた事で、原因究明は一時棚上げとなった。

 

 

 そこでふと、アポロノームは先の会談の最後で出てきたある話題から波及したある事を思い出し、アンドロメダ()にその話題を持ち掛けた。

 

 

「そーいやよ、姉貴はあの話は本当だと思うか?ま、マンドリンだったか?マウンテンだったか?の話で出てきた()()

 

 

「ああ、マンデリンにブルーマウンテンですか?私も山南艦長と谷艦長がお話されていた時の事を聞いた程度の知識でしたので、正直そこまでは詳しくはなかったのですが─────コーヒー好きでした谷艦長に感謝ですね」

 

 その言葉とは裏腹に、アンドロメダの表情は疲れた様な乾いた笑みだった。

 

「まさかこんな形で谷艦長からお聞きしていました話題が役に立つとは思いもしませんでした」

 

 

 これは本当に偶然に偶然が重なった結果、分かった事である。

 

 

「彼女達が()()()()()()()()を行っていましたとは…」

 

 

「しかもその理由が、()()()()()ときた…」

 

 

 この真実に、二人は頭を抱えることとなる。

 

 

 そんな二人を不思議そうに見詰める駆逐棲姫と深海棲艦達。

 

 

 だが頭を抱えたくもなってしまう。

 

 

 何故ならば図らずして、この戦争の真実の一面を、思わぬ形で知ってしまったのだから─────。

 

 

 

 

*1
姫級のこと。

*2
駆逐棲姫のこと。




 『アルデバラン』艦長、谷鋼三一等宙佐がコーヒー好きというのは独自設定です。

 コーヒー豆って案外儲かるみたいですね。


 本来ならばここからが本番でしたが、長くなりそうのでここで切りました。


 戦争の理由なんてイデオロギー問題とか以外ならば、案外こういった理由が一番有り得るし、これならば色々と説明がつくケースもある。


 腹が減っては短絡的な思考、行動に出やすくなってしまうのは真理だと思う。だが、だからといって無理な代用食の強要も、将来の火種にしかならないと私は考えています。
 食糧問題はそれだけデリケートな問題であり、為政者による下手な統制は時として問題をより複雑化し、混乱を助長して取り返しのつかない最悪の事態を引き起こす危険性を孕んでいるというのが私の持論です。

 …すみません。なんか話が脱線してしまいました。



 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。

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