艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 遅くなりました。残業やら身内の法事やら何やらで中々執筆する時間がありませんでした…。

 そうこうしている内に艦これアニメが始まってしまった。


 引っ張るのも何ですので、今回で真志妻大将の正体を明かします。


第28話 Japanese Navy Komatsushima Naval Base-4

 

 

「アメリカの事はアメリカに、Iowa(アイオワ)に任せましょう」

 

 

 こちらからアプローチ出来ることは今の所無いしね。と付け加えながら、アメリカの事は静観することとした。

 

 

 いくら自分達に対して影響があるとはいえ、他国の問題である以上は下手に手出しする訳にはいかない。

 

 最悪、内政干渉として外交問題へと発展しかねない。*1

 

 

 現地で頑張っているIowa(アイオワ)の為にも、彼女への攻撃材料へと繋がりかねない行ないはするべきではない。

 

 出来ることはIowa(アイオワ)が齎してくれた警報への備えくらいである。

 

 

 歯痒い限りだが致し方無い。

 

 

 兎も角今は喫緊の課題であるアンドロメダを今後どうするかである。

 

 

 真志妻としては、アンドロメダが日本での庇護を求めて来たならば、快く受け入れるつもりである。

 

 

 その際に“色々”と面倒事が起きるだろうが、艦娘の事であれば労を惜しまないのが真志妻である。

 

 それに日本国内であれば、()()()()()()()()()()出来る、こんな混沌とした世界でも一定層の反吐が出そうになる人間共にはとても喜ばれる()()()()()()()()()()()”を()()()()()()()()()()()()()したら、なんとかなる。

 

 今まではそれで何とかなっていたし、改革に必要だけど不足する予算の足しや、いつも頑張ってくれている艦娘達にひもじい思いをさせないためにも結構消費してきたが、まだまだ“山吹色のお菓子”のストックはたっぷりあるから、どうにかなるはずだ。

 

 

 ただ失脚工作の一件が気掛かりではあるが、どうにかして時間を稼ぎつつ、慎重に対応して潰すしかない。

 

 ひょっとして失脚工作の真の狙いは資産没収を狙っている?という予想が頭を過るが、もしそうならば最悪だが、寧ろ突破口にも成り得る。

 

 欲深い人間ほど、予定されている山分けでの取り分よりも多くを欲しがる生き物だし、あわよくば協力者を蹴落としてでも独占したいと考えている。

 

 

 上手く行けば内ゲバによる内部崩壊を狙えるし、当面の邪魔者を纏めて一掃できるかもしれない。

 

 

 だから、まだまだ絶望には程遠いと自身を奮い立たせる。

 

 私のお金は大好きで大切な艦娘(家族)みんなを養う為のもの!それを掠め取ろうとするなら、容赦はしない!それ相応の報いをくれてやる!と、普段以上にヤル気を漲らせていた。

 

 その取っ掛かりでもあるアンドロメダの今後をどうするかで、躓くわけにはいかなかった。

 

 

 

 ここで真志妻は小松島へと出発する直前に得た最新情報であるマリアナ諸島サイパン島へと墜落した謎の物体に関する事を開示した。

 

 

「もしかしたらアンドロメダさんの事とまったくの無関係かもしれませんが、私達には判断が付きません。何かお気付きになられた点はありませんか?」

 

 

 そう言われて土方達は資料に目を落とすが、最初に提供された戦闘中のアンドロメダの資料よりも量が少なく、添付された画像も粗くて()()()()である。

 

 しかもその物体を捉えた画像は黒煙を上げている影響で判然としない。

 

 

 だが霧野(キリシマ)はそのカラーリング、そして黒煙から微かに覗く特徴的な艤装の外観を見逃さなかった。

 

 

「なんだい、なんだい!アポロノームの嬢ちゃんまで来ちまったのかい!?」

 

 

 そう言って大仰に肩を竦める霧野(キリシマ)に真志妻と長門の視線が集中した。

 

 

「あの娘の妹さね。3番艦アポロノーム。いやはやまさかとは思っていたけどねぇ…」

 

 

 霧野(キリシマ)が述べた言葉、特に最後の文言に長門が「それはどういうことだ?」と首を傾げた。

 

 

「なんとなくだけどね、アンドロメダ姉妹、特に一番最初に建造された5人は、みんな姉妹愛がとても強い娘達だったよ。その中であの娘はアポロノーム嬢ちゃんのことを一番可愛がっていた」

 

「嬢ちゃんもなんだかんだ言ってもあの娘にかなり懐いていたからねぇ。春雨(ハルサメ)海風(ウミカゼ)の2人が同時に顕現した時みたいに、強い思いが互いを呼び寄せて、ひょっとしたらって思ってたんだよ」

 

 

「思いは時として世界を超える。てね」

 

 

 普段の何処か冷めた感性でいることの多い霧野(キリシマ)からしたら珍しい、なんともロマンティックなセリフである。

 

 春雨(ハルサメ)海風(ウミカゼ)という実例から、本人としてはそんなつもりは無いのかもしれないが、それでも珍しい物が見れたと、真志妻と長門は思った。

 

 

「ん?だが待てよ…。となるともしかしたら…」

 

 

 何か良くない事が頭を(よぎ)ったのか、顰めっ面を作り思考に耽る霧野(キリシマ)だったが、部屋の扉がノックされた事で思考が中断された。

 

 

 入室してきたのは、用事で退出していた春雨(ハルサメ)海風(ウミカゼ)だったが、そこに同行者がいた。

 

 

「遅くなりました」

 

 

 土方の副艦、金剛型高速戦艦艦娘の霧島である。

 

 

 あの後春雨(ハルサメ)達と別れてから各部署への連絡業務や各所からの報告が舞い込んだ為に到着が遅れた。

 

 

 そしてもう一人。

 

 

山風(ヤマカゼ)、ご苦労。帰還して直ぐですまないが、報告を頼む」

 

  

 春雨(ハルサメ)の妹、山風(ヤマカゼ)である。

 

 

 いつもおどおどとし、ダウナーな性格からあまり積極的な行動をとらないイメージをいだかれ勝ちだが、必要と判断したらかなりの積極性を発揮するという二面性が山風(ヤマカゼ)にはある。

 

 そして長姉春雨(ハルサメ)をして、「突撃癖があり、狂犬の異名のある夕立(ユウダチ)以上の凶行を起こしかねない、一番気を付けなければいけない妹」と言わしめる程の、不安定な一面があった。

 

 

 今回とある事から他の姉妹達と共に、外洋防衛艦隊に所属する外洋パトロール艦隊として展開中の特設艦娘支援母艦『りつりん』*2へと増援目的で出撃していた。

 

 

 正午過ぎにマリアナ諸島方面からの電波発信が突然急増したのを、鎮守府や展開中の各パトロール艦隊が探知した。

 

 

 万が一の事態に備えて土方は警戒レベルを上げ、展開中の『りつりん』と『どうご』に増援部隊の派遣を決定。

 

 小松島鎮守府最強戦力である白露型姉妹で編成された特殊作戦群*3から、出張中の春雨と海風を除く全員を投入。

 

 丁度2隻に向けて昼食の配給と保存食料の補給を行なう為に飛び立つ予定だった輸送ヘリに便乗して向かった。

 

 

 余談だが、この船にはフェリー時代に乗客用の厨房設備が存在せず、食事はもっぱら自動販売機で購入する冷凍食品や即席麺だった。

 

 

 流石に日々の食事がこれでは士気に影響すると、改装時に厨房設備を増設するという案があった。特に真志妻大将がそれを強く要請していたが、増設などに伴う船体の重心バランス変化の問題から艦娘支援設備が優先され、大容量の保存設備が必要となる糧食関係の給食設備は限定的にならざるを得ないという結論が出され、泣く泣く断念。*4

 

 

 しかし真志妻大将は諦めずに粘り、代案として陸軍がアメリカ陸軍で採用されているフィールドキッチンの一つであるCK、(Containerized Kitchen)『コンテナ化された移動キッチン』を参考にして開発配備を行なっていた次世代型野外炊具の積載を提案。*5

 

 定期的に輸送ヘリで補給することで保存設備を可能な限り縮小しつつ、船内で調理の難しい食材を事前調理して運び込み、出来る限りのボリュームとメリハリのある食事の提供している。

 

 

 食事は前線の兵士にとって最大の楽しみであり、癒しをもたらしてくれる貴重な至福の時間であるが故に、真志妻大将は疎かにしたくなかった。

 

 

 だがその影響でヘリが安全に飛行出来る範囲内でしか活動出来ないというデメリットもあるが、パトロール任務のみならば特にこれといったトラブルは起きておらず、現状において問題とはなっていない。*6

 

 

 当初は厨房設備が備えられている別のフェリーを当てたかったが、経済の低迷と人口減による旅客数激減の影響で船会社も持ち船を慢性的に整備不足のまま半ば放置していたという状況であったため、まともに動かせる船数が不足しており、その中でもこの4隻は比較的マシな部類であったため、背に腹は代えられない状態だった。

 

 

 閑話休題。

 

 

 

 増援派遣そのものに嘘偽りは無いが、それとは別の目的があった。

 

 急増した電波発信、その中に山風(ヤマカゼ)は気になる電波を傍受していた。

 

 

 

「…うん。やっぱりあの電波の中に、防衛軍で使用している周波数が紛れてた」

 

 

 かつて長姉春雨(ハルサメ)と共に受けた改装で、山風(ヤマカゼ)も電子装備が強化されたが、その精度と感度は山風(ヤマカゼ)の方が敏感だった。

 

 

 だからこそ気が付いた。

 

 

「…あれは、間違い無く、総旗艦さんのモノ」

 

 

 複数の雑多な電波の中から手繰り寄せた、懐かしさすら覚える軍の周波数。

 

 

 最初に気が付いた時、まさかと思って目を見開いて驚愕した。

 

 

 そしてそのまま取る物も取り合えず、土方のいる執務室に駆け込んだ。

 

 

 陸地からの電波に邪魔されない所で、出来れば今直ぐにでも“空”に上がってより詳しく分析したいと必死に頼み込んだ。

 

 

「それと、総旗艦さんだけじゃない。もう一人、…間違い無く、妹のアポロノームさん。来てる」

 

 

 流石に目立ち過ぎるからとやんわりと却下され、代わりとして増援名目での出撃命令が出された。

 

 

 

「…傍受した電波とは別に、微弱だけど、アポロノームさんの識別信号も拾った」

 

 

 ここに来て確証へと変わる。

 

 

 2隻目のアンドロメダ(クラス)の登場という事態。

 

 しかもそれがよりによって深海棲艦の勢力圏内であるマリアナ諸島に墜落しているのだ。

 

 アメリカ軍は墜落直後に深海棲艦によって破壊されたと見ているが、それを聞いた土方はその見解を真っ向から否定した。

 

 

「彼女達の武装ではここまで木っ端微塵には出来ませんよ」

 

 

 自身もかつての内惑星戦争、特にガミラス戦役にて前線に立っていた経験から、如何に強力な攻撃でも残骸はかなりの確率で原形を残した状態になることを知っていた。

 

 

 この時土方はチラリとキリシマに視線を向けた。

 

 ここからの話はキリシマにとっては辛い内容となる。一旦退出しても構わないと、視線で伝えた。

 

 

 キリシマは一瞬逡巡したが、構わず続けてくれと促した。

 

 

 その返答に土方は一つ息を吐くと、続きを話し出す。

 

 

 自身も参加した第一次火星沖海戦終盤、友軍残存艦艇の撤退支援で()()()()を務めていた航宙自衛隊第一護衛艦群にて乗艦としていた、キリシマの最愛の姉であったコンゴウに急迫してきた敵新型超弩級戦艦*7の斉射が直撃して沈んだが、艦首部分こそ吹き飛ばされてしまったものの、艦橋のある艦中央から後ろは無事で、九死に一生を得た。*8

 

 他にも宇宙海戦を映した記録映像では、被弾艦がかなり派手に爆発しているシーンが目立つために、一般的には跡形も無く爆散していると思われ勝ちだが、戦場跡には元の(ふね)が何だったのかがある程度は判別出来るくらいの残骸がかなりの確率で見付かる。

 

 ただエンジンの暴走や誘爆による爆発や、波動砲などに代表される様な広範囲破壊兵器だと話は変わってくるが。

 

 

 だが純粋な砲爆撃だけだと、この渡された資料に添付された画像の様に木っ端微塵になることはまず有り得ないし、もし何かしらの理由で波動エンジンが誘爆したのならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 あの時、火星に沈んだアンドロメダの爆発から逆算したら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 この土方の言葉に、キリシマもハルサメ達も賛同し、尚且つ深海棲艦の砲爆撃程度ならアンドロメダ(クラス)の装甲、特に重要防御区画(バイタルパート)を抜けるとは到底思えないと付け加えた。

 

 

 

 これらが意味する所は何か?

 

 

 

「…つまり、偽装爆破?」

 

 

「まあそれしか考えられんね。それに、それを考えた下手人は間違い無くあの娘さね」

 

 

 霧野(キリシマ)のその見解に、真志妻と長門は揃って首を傾げた。

 

 それに対して霧野(キリシマ)は副艦の霧島にあることを尋ねた。

 

 

「マリアナからの電波発信は、今どんな具合だい?」

 

 

「はい師匠。現時点では普段と変わらないレベルにまで落ち着いてきていると、各地の通信隊や『りつりん』、『どうご』など展開中の各パトロール艦隊から報告が上がって来ております」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()。という事じゃ無いんだね?」

 

 

「え?あ、はい。そうですが…?」

 

 

 霧野(キリシマ)の質問の真意が分からず、霧島は首を傾げながら答えたが、山風(ヤマカゼ)はそれの意味する所を察した。

 

 

「…戦闘が起きたことを示す通信の兆候も、()()()()()()()も確認されていない」

 

 

 山風(ヤマカゼ)からのその答えに、霧野(キリシマ)は頷いたが、その意味を察した土方と斉藤は深刻な表情となった。

 

 

 このやり取りに真志妻達は付いて行けていなかった。

 

 

 だが、春雨(ハルサメ)海風(ウミカゼ)から、もし自分がアンドロメダと同じ立場ならば間違い無く山風(ヤマカゼ)が想像した事、大切なモノが傷付けられたことに怒り狂って下手人共を皆殺しにするか、この場合()()()()()()()()()()()まで止まらないだろうと聞かされて、漸く理解したが、同時にそこまでやるのか?という疑問が湧いてくる。

 

 いくら大切な存在とはいえ、明らかに限度を超えている。

 

 

「…それだけあの娘にとって、アポロノームの嬢ちゃんの存在がとても大きいのさ」

 

 

 霧野(キリシマ)はアポロノームがアンドロメダを庇って散って逝った最期と、それが齎した影響を語った。

 

 キリシマ本人は直接見た訳では無いが、他の(ふね)から聞いたことによって、あの時何が起きたのかを正確に掴んでいた。

 

 

「…あの娘は誰よりも優しい娘だった。いや、優し過ぎたんだ」

 

 辛そうな表情で、絞り出すかの様にして語るキリシマ。

 

「…だから、耐えられなかった」

 

 ここに居る誰よりもアンドロメダとの付き合いが長く、誰よりもその心を理解し、危惧していたが故に、その“脆さ”からくる“狂気”が容易に想像出来た。

 

「もしも、似たような事が起きたら、…深海棲艦のムスメっ子達が()()()()()いたなら、今頃サイパン共々きれいサッパリ跡形もなくこの世から完全に消滅しているさね」

 

 

「あの娘は、大切なモノが傷付けられる事を極端に嫌う」

 

 

「大切なモノを守るためなら、あの娘は平然と冷徹冷酷な鬼にでも悪魔にでもなるよ」

 

 

 

 真志妻はゾッとした。そして気付いた。

 

 

 これは私達に対するある種の“()()”だ!

 

 

 もしもの場合はその武力が容易に自分達へと降り掛かることになるぞ?と暗に告げているのだ!

 

 

 しかし同時にある疑問が浮かぶ。

 

 

 何故偽装爆破を行なったのか?

 

 

 しかも深海棲艦の勢力圏内で行なったということは、どう考えても深海棲艦が協力しているということになる。

 

 

 長門もその答えに辿り着いたのだろう。(ひたい)から汗が流れている。

 

 

 でも何故?

 

 

 何かしらの利害関係が一致しているのだろうか?

 

 

 分からない。

 

 

 ならば最初に確認された戦闘は?

 

 

 

 その疑問を察した霧野(キリシマ)は机の上に戦闘中を捉えた画像の資料を広げ、そこから被弾した深海棲艦の主力空母、人類コード空母ヲ級を捉えたものをピックアップして真志妻達に指し示した。

 

 

「よく見な。一見すると容赦無く攻撃して蹂躙している様に見えるが、当てているのはどれも艤装部分。しかも本体へのダメージが入らないけど、戦闘能力を奪う絶妙なポイントのみを狙い撃ちしている。この戦艦なんざ主砲を融解させているだけだ。まったく器用なモンさ」

 

 別の画像に写る、空母ヲ級の護衛を務めていた深海棲艦の主力高速戦艦である戦艦タ級を指差すと、肩を竦めた。

 

 見れば戦艦タ級が展開する主砲全てに陽電子ビームが掠めて使用不能となっていた。

 

 

 これを見た春雨(ハルサメ)達は率直に凄いと感心した。

 

 おそらく自分達も()()()()()()()()()()()()()()であれば同じ事が出来るだろうが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 そのためこのアンドロメダの実力と、何よりも実際に実行しようと決意したその決断力と度胸に只々脱帽するしかない。

 

 

 だがわざわざこの様な事を選択したという事は───。

 

 

「あの娘にとって、深海棲艦は()()()()()()()()()()()()()()という意志の表明さね」

 

「あんたがここに来て土方のオジキに話した言葉通りさね、この戦争に本来ならば私達は関係無かったのと同じ様に、あの娘にも関係の無い物だった」

 

 

 ならば何故火蓋を切ったのか?

 

 

 それに対しても霧野(キリシマ)には心当たりがあった。

 

 

「あくまでこれは私の勘だけどね、この戦いは元々は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と私は考えている」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()。そう見せ付ける事で多少なりとも人類に信用させる狙いがあった」

 

 

「そして本来ならばそのまま人類の勢力圏内へと向かう予定だったんだろうね」

 

 

 そう言うと霧野(キリシマ)は紅茶を一口飲んで口の中を潤した。

 

 

「…まさか、これら全て安藤さん、いえ、アンドロメダさんが思い描いた状況なのですか?師匠?」

 

 

 震える声で霧島が尋ねてくるが、霧野(キリシマ)は苦笑しながら「多分ね」と答える。

 

 

「ということは、わざと映るように衛星に細工も?」   

 

 

 この霧島の疑問に対して、霧野(キリシマ)よりも先に金剛が自身の推論を述べた。

 

 

「霧島、それをするとSatelliteに不自然な挙動をさせてしまいますカラ、露骨過ぎて逆に怪しまれてしまいマスヨ?多分timingを合わせたのでショウ。どうデスカ?」

 

 

「…恐らくはそうでしょうね」

 

 

 ここで霧野(キリシマ)は真志妻と長門を見遣る。

 

 

「あの娘は何もあんた達に対して悪意があって、だまくらかしてやろうとかいう腹積もりは無かったと、私は断言するね」

 

 

「しかし何故このような小芝居を?あ、いえ、我々を信用させたいという考えは理解できますが、まるでアンドロメダがこちらを疑っているかのように感じましたので…」

 

 

 長門がそう霧野(キリシマ)に尋ねる。

 

 

 まぁもっともな疑問さね。と霧野(キリシマ)も思った。

 

 信用を得るための、偶然を装った事実上の手土産と言えるこの戦いだが、手が込み過ぎているとも言えなくもない。

 

 

 

「疑っている、と見た方が自然だろうね…。それなら偽装爆破を行なった事にもある程度説明が付く」

 

 

「人類にアポロノームを触れさせたくなかった。強すぎる“力”は時として良くない誘惑や災いを呼び寄せる…」

 

「この世界の人類が、“()()()()()()”に興じると見て“()()()()”になってるのかもしれないねぇ…」

 

 

 霧野(キリシマ)が語った“()()()()()()”と“()()()()”という言葉に、土方は内心で苦笑していた。

 

 その言葉はかつて在地球ガミラス大使ローレン・バレル氏が、波動砲艦を増産し軍拡へとひた走る地球に対し、釘を刺した際に投げ掛けた言葉だった。

 

 

 もし人類がアポロノームに使われている技術を手にしたら、まあ間違い無く“危険な火遊び”をするだろうなと思った。

 

 解析出来るかは分からないが、それでもそれがまた新たな疑心暗鬼を生む。

 

 

 ここでふと疑問が浮かぶ。

 

 

 アンドロメダが人類を疑うようになった、その理由と原因が何なのかと。

 

 

 

「あ、あの…」

 

 

 ここで山風(ヤマカゼ)がおずおずとしながら挙手をして発言を求めた。

 

 

「…多分、長門さんの疑念、間違ってない。です」

 

 

 山風(ヤマカゼ)の一言に、ざわめきが起こる。

 

 

「…総旗艦さん、()()()()()()()()()()()()

 

 

 何故そう言い切れるのか?という疑問の眼差しが山風(ヤマカゼ)に集中する。

 

 

「…()()()()()()()()()()()()()を、行なっている形跡が、見付かった」

 

「しかも、明らかに国のデータベースを司る、メインフレームを狙って…、情報を抜き取っていた」

 

 

「待ってくれ山風(ヤマカゼ)、何故それがアンドロメダが人類を疑っていることに繋がる?いやそもそも()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 待ったをかけた長門が鋭い目つきで山風(ヤマカゼ)に問い詰める。

 

 

「…見付けたのは偶々。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()では到底真似出来ないスピードと、鮮やかさや大胆さ、それなのに()()()()痕跡を悟られない慎重さで侵入してるのを、目の当たりにした」

 

 

 その思わぬカミングアウトに全員の目が点になる。

 

 

 え?今この娘なんて言った?アメリカの国防総省にアクセス?しかもさっき!?どゆこと!?

 

 

 皆の疑問が見事にシンクロしている中、山風(ヤマカゼ)は素知らぬ顔で淡々と話し続ける。

 

 

「…こんな芸当が、()()()()で出来るのは、私か、私と同じ様に電子装備が強化されている春雨姉(ハルサメねえ)

 

 

 妹からの言葉に春雨(ハルサメ)は「へっ!?」という表情になるが、直後に「…春雨姉(ハルサメねえ)はシロ。()()()()()()それをやる理由が無い」と山風(ヤマカゼ)が付け加えた。

 

 

「…後は地球艦隊総軍、それを率いるために、随一の電子装備と演算能力を備えたアンドロメダ(クラス)、つまりは総旗艦さん、アンドロメダさんしか有り得ない」

 

 

「…そして、ここからが本題」

 

 

「総旗艦さんがアクセスしていたのは、軍の作戦詳報に関連する最重要機密資料…」

 

「…タイトル、『マリアナ奪還作戦(Recapture Operator of Mariana)』、別名『マリアナの浄化作戦(Purification Operator of Mariana)』」

 

「…その骨子、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。…ひっ!」

 

 

 瞬間、部屋の温度が急激に下がったかのような気がした。

 

 そして、山風(ヤマカゼ)の顔が恐怖で引き攣り、涙目となった。

 

 

 今まで聞きに徹していた真志妻の顔が、雰囲気が、一気に変わっていた。

 

 

 

 憤怒

 

 

 

 真志妻の全身から、怒りが溢れているかのように、オーラの様なモノが見えるほどの憤怒の色に染まっていた。

 

 

「…あれは、ヤハり計画さレてたモノだったノね?ふ、ふフっ、うフフふッ!」

 

 

 押してはならないスイッチが入ってしまったのか、普段とは全く違う声音とイントネーションで、しかも裂けたのではないかと心配になるくらいに口元を吊り上げて笑い出し、強烈な怒気や殺気と共に、その瞳からは()()()()()()()()()が漏れ出していた。

 

 

 

「総提督っ!!」

 

 

 

 そんな真志妻を見た長門がすかさず一喝し、手を振りかぶり、容赦無くその頬を思い切り叩いた。

 

 

 瞬間、部屋に平手打ちの鋭い音が響き渡った。

 

 

 長門の思わぬ凶行に、春雨(ハルサメ)達が悲鳴を上げる。

 

 

「あ…、う…。なが…と…」

 

 

 虚ろな瞳となった真志妻に、再度長門が平手打ちをした。

 

 

「落ち着いたか?」

 

 

 いくら艤装を身に着けていないとはいえ、()()()()()ならば一撃で頚椎に深刻なダメージを与えかねない戦艦艦娘からの平手打ち。

 

 

 だがここで春雨(ハルサメ)達はある異常に気が付く。

 

 

 平手打ちを受けたはずの真志妻は、首が折れて垂れ下がる訳でもなく、打たれた頬が腫れたりすることもなく()()()()()()()()()だ。

 

 

 そしてその当の真志妻は痛がる素振りも一切無いまま、虚ろだった瞳が元に戻ると、顔を徐々に青褪めさせた。

 

 

「…()()かい?」

 

 

 ()()()()()()()()を知る霧野(キリシマ)がそう漏らし、土方は執務室に常備してある水差しからコップへと水を注ぐと、真志妻へと差し出した。

 

 

 状況が掴めない春雨(ハルサメ)姉妹はおどおどとし、山風(ヤマカゼ)に至っては完全に怯えきってしまい、春雨(ハルサメ)海風(ウミカゼ)の影に隠れてしまっていた。

 

 

「…ちょいとワケありなのさ」

 

 

 コップに注がれた水を呷る真志妻を横目に見ながら霧野(キリシマ)春雨(ハルサメ)達にそう告げた。

 

 

「すまん。事前に話をしていなかった俺の落ち度だ」

 

 

 そう言いながら申し訳無いと言った表情で土方が頭を下げ、春雨(ハルサメ)達にも水を差し出した。

 

 

 ここでしばし間が空く。

 

 

「ごめんなさい。取り乱してしまって…」

 

 

 落ち着きを取り戻した真志妻が、頭を下げた。

 

 心無しか、すこしばかりしょんぼりとしてしまっている。

 

 

 かつてのマリアナ諸島奪還作戦で起きたサイパン島での虐殺は、真志妻にとって大きなトラウマとなっていた。

 

 

 それでも彼女自身は、あの事件の真相を出来れば知りたかった。

 

 

 あれが()()()()()()()()()()()()()()()()だったのか、或いは()()()()()()()()()()()()()()()だったのか。

 

 

 本心から言えば、出来れば前者であってほしかった。

 

 

 だが現実は最悪だったと、謀らずも知ることとなり、そのショックから()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「まったく難儀な体だねぇ」

 

 

 そう言って肩を竦める霧野(キリシマ)に、真志妻は乾いた笑みを返した。

 

 

「あの、真志妻大将…、貴女は、いったい…?」

 

 

 春雨(ハルサメ)が、意を決して問い質した。

 

 

 それに対して長門が少し辛そうな顔をしながら「後日改めて説明するから今は──」と言ったところで、真志妻が止めた。

 

 

「実際に見てもらったほうが早いわ…」

 

 

 そう言うと真志妻は静かに席を立ち、机から離れると周りに何も無い事を確認してから、春雨(ハルサメ)達のいる方向へと向いた。

 

 

 そして瞳を閉じ徐ろに息を吐いて脱力したかと思うと、急激にその体が縮みだした。

 

 

 それを見て声を出して驚く春雨(ハルサメ)達。

 

 

 だがそれを知る土方や霧野(キリシマ)と斉藤、長門に金剛姉妹は何も言わずに黙って成り行きを見守っていた。

 

 

 土方より一回り小さかったくらいの真志妻のその身長は、今や春雨(ハルサメ)達よりも更に小さくなり、それと同時に右腕は衝角と小さな砲郭を備えた艦首状のパーツに覆われ、()()()()()()()()()()()が形成された。

 

 そしてその背中に煙突と物見台が設置されたマストを背負った小柄な少女が現われた。

 

 

 

「私は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()結果、()()()()()()()()()()()()()()生み出された────」

 

 

 

「私は、()()()()()()()

 

 

 

 

「その()()()()、です」

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
と言っても当のアメリカ、そしてEUの政策執行機関であるEU委員会は平然と他国の政治や選挙に対して、大なり小なりの干渉行為を公然と行なっている。特にEU委員会はEU加盟国に保守的政権が誕生することを病的なまでに嫌がり、先代の委員会委員長時代にパンデミックなどのEU内で発生した非常事態時をスムーズに解決することを名目に、意思決定と対応統一を理由とした権限の拡大以降、欧州中央銀行と結託し、保守政党が政権与党として選出された国に対して欧州中央銀行からの資金融資を即時凍結を警告するという、あからさまな恫喝による内政干渉を行なっていた。パンデミックと第三次大戦でのロシア東欧戦争への介入の影響による深刻な経済不況に喘ぐEU加盟国には、欧州中央銀行からの融資凍結は経済の壊滅に直結するため、この恫喝に従わざるを得なかった。なお、凍結理由として「外国勢力からの選挙介入、工作があった疑いがあり、民主主義が破壊された可能性があるため」とのこと。しかし介入工作があった事を裏付ける証拠とされる物はどれもこれもが抽象的で曖昧なものばかりであり、具体的な証拠の類いは一切提示されていない。

*2
元々は徳島を母港とする民間フェリーを海軍が買い取り改装した特設船。姉妹船『しまんと』『どうご』『びざん』も同様に買い取り改装が施されて運用されている。

*3
春雨(ハルサメ)型の表向きの扱い。

*4
実際涙を流して悔しがったと言われている。

*5
陸軍サイドからの協力もあったとされる。

*6
既に艦娘運用に念頭に置いた新鋭艦が就役しているのだが、上層部の決定で来るべき再反攻作戦の為にと温存されており、前線には1隻も回されていない。これに真志妻大将は反発し、後のためにと言うのならば、習熟訓練も兼ねて外洋防衛艦隊に配備して運用すべしと具申を上げ、工作も行なっているが、こちらは上手くいっていない。そもそも昨今の影響で工業技術、建造能力が低下したことによる欠陥を抱えた失敗作、公共事業として発注しただけのハコモノという噂もある。

*7
増援として現われたハイゼラード級航宙戦艦

*8
それでも乗組員の殆どが戦死し、自身も重傷を負ったが。





 真志妻亜麻美大将は元人間の、人工的に作られた艦娘でした。真志妻を平仮名にして逆から読むと?

 ただし、人為的という影響から様々な弊害が出ています。

 詳しくはまた次回。ただ少しだけ明かすなら、この人造艦娘の背景にはパンデミック時に発生したとある問題も絡んだ大量の血の上に出来た胸糞悪い話になります。


 本当ならばアンドロメダと邂逅した時にと思いましたが、話の流れ上前倒し致しました。



 ハッカー山風(ヤマカゼ)
 
 ヤマカゼは過去の経緯から少し(?)箍が外れています。

 何故国防総省にアクセスしていたかは次回。

 ある意味ハルサメの妹の中で一番最狂はこの娘かも…。

 本人はアンドロメダ自身がアクセス──クラッキング──を行なっていたものだと思っている為、アンドロメダとのハッカーとしての技量差に少しだけ憧憬の念を抱いた。



補足と解説


 現実でEU委員会の委員長、似たようなことをハンガリーとイタリアに対してやっててマジで引くわ…。西側権利者の左傾化やば過ぎ。西と東の違いが分からん…。権力者って社会主義LOVEなんやなぁ。


 アメリカでは公文書の非公開期間は最長75年とされています。…これ例のP社がCDC(Centers for Disease Control and Prevention、アメリカ疾病予防管理センター)だったかFDA(Food and Drug Administration、アメリカ食品医薬品局)に提出した、今EU議会での証言で物議をかもしている例の“ワ”に関する資料の情報公開請求で「絶対に見せたくないぞー!」と駄々こねて裁判沙汰になった時に提示した年数とも符号すんだよなぁ…。結局裁判所から「つべこべ言わんとさっさと出さんかいワレ!」(超意訳)と言われて渋々小出し小出しで出してるけど、どんだけ見せたくないんだよ…。

 まぁそれは兎も角として、極左新聞代表格のワシントン・ポストですら今の政権は三権分立が機能していないと庇いきれなくなって匙を投げて批判記事書き出した…。
 ジジイが選挙対策の目玉政策としてぶち上げた学生ローンの徳政令出したときの予算執行で、憲法に規定されている議会の優越を完全無視して大統領令で無理やり通した事に対してかなり強い文言で批判してた。まぁそれ以前にジジイがその政策の内容すらマトモに記憶出来てないことにも驚いたが…。
 もしこの状態が是正されなかったら、今以上に憲法が形骸化して好き勝手な法案がバンバン通過して今回出した大統領特別秘密令無期限非公開指定みたいなのが出てきても可怪しくないと思い出しました。というかその兆候が既に出ているという状況ですが…。(リアルワ○ルかよ…?)

 

『りつりん』『しまんと』『どうご』『びざん』

 筆者が勤め先の都合で九州に飛ばされたときにお世話になったフェリー。
 徳島が母港という事で港湾整備も含めて使えるかもと判断。
 状況的にフェリーを運用する会社も維持管理に苦労してそうだし、廃棄するにもその為の解体予算が捻出出来そうに無いだろうから、軍のお買い上げに飛び付いてそう…。

 2隻態勢で四国沖、太平洋側の近畿地方沖を巡回している。

 艦娘の出撃は旧車両甲板部からウィンチを使用して昇降しております。緊急時は甲板からヘリを出したりしますが、露天係止のため潮風による塩害という問題から使い勝手はイマイチだったりします。


真志妻大将の山吹色のお菓子!

 ワイロの定番!

 真志妻大将の個人資産はどえらいモンです。

 なお、出処は人造艦娘の問題と密接に関わっています。「あの○○(ピー!)共を○○(ピー!)しにした時、慰謝料として有り金全部強だ…、有り難く頂いたわ。お陰でみんなにひもじい思いや嫌な思いをさせなくて済みそうだから、そこだけは感謝してる」


第一次火星沖海戦での金剛型

 この時点までの外惑星防衛戦で『コンゴウ』『ハルナ』『キリシマ』以外の5隻が戦没。第一次火星沖海戦で『コンゴウ』と『ハルナ』が戦没し、『キリシマ』だけが残された。
 この時『コンゴウ』が『キリシマ』の目の前で戦没し、時間を稼ぐ為に反転逆撃に出た『ハルナ』が敵艦に体当たりを敢行して爆散。キリシマにとっては最も辛い記憶の一つとなった。


愚痴コーナー!(ただし愚痴を言うとはいっていない)

 もうすぐ中間選挙だ!頼む共和党!ジジイと極左化著しい民主党の暴走に歯止めを掛けてくれ!!

 ブラジルがどえらい事になっているみたい。というか現職大統領の対抗馬、あまりにも酷過ぎて以前にブラジル国民が盛大にNO!!を突き付けたヤツだし、あれどう考えても当選するには無理がある…。そりゃ民衆ブチ切れて当然だし警官隊が合流するのにも頷ける。なんか国軍も合流するかも?という話もあるみたいだが…。

 中間選挙の結果如何によったら、アメリカでも同じ事態になるか?今も民主党サイドの不正というか疑惑が出て来てるし…。国勢調査の疑惑…。連邦最高裁判決の無視…。憲法、州法の意図的違反…。

 民主党よ、不正に力入れるよりも先にやることあるだろう…。

 というか裁判所からわざわざ「決まりをちゃんと守らんかいゴラァ!」(意訳)って判決出されなきゃならないって、法治国家として情け無いにも程があるだろう…。信じられるか?これが民主主義を世界に押し売り…ゴホン。世界に推進してきた超大国の実態なんだぜ…。




 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。

アメリカ大統領選挙のイメージは?

  • 直接選挙
  • 間接選挙
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