艦隊これくしょん 総旗艦アンドロメダ、二度目の航海もまた数奇なり   作:稲村 リィンFC会員・No.931506

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 黎明。明け方。


 場所は再びマリアナ諸島サイパン島。


 ここんとこずっと政治やら何やらの胸糞悪い話しだらけ書いていたから、少しハッチャケちゃる!


 駆逐棲姫お姉ちゃんがアンドロメダを抱き枕にしていた理由の一端が明かされます。


第31話 Dawn

 

 

 恩師キリシマから、深海棲艦の姫とデキちゃってると言われているとは露知らずなアンドロメダ。

 

 

 そんな彼女は今、幸せそうな寝顔で健やかな寝息を立てていた。

 

 

 

 ここはアンドロメダ達が滞在し、間借りさせてもらっている旧サイパン国際空港のハンガーに併設されている、元はハンガーで働く作業員が疲れた体を休めるために設けられていた休憩室。

 

 その床に敷かれた大きめのマットと寝具に包まれながら、アンドロメダは眠っていた。

 

 

 ここの責任者である飛行場姫としては、大切な客人であり、自身と同じ同胞(はらから)の上位種が好意と信頼を寄せているアンドロメダとその妹であるアポロノームにちゃんとした部屋を用意してあげたかったが、島に存在するホテルなどの寝泊まり出来る施設は、今までの人類との戦闘で軒並み破壊もしくは損傷しており、駐留する同胞(はらから)達が最低限雨風を凌げる程度の修繕は施したが、慢性的に宿舎と呼べる施設が不足していた。

 

 陸上型深海棲艦の中でもトップクラスの実力を誇り、広大な敷地面積を有する飛行場施設とその周辺を自身の本来の艤装を介して侵蝕することによって、事実上の自身の艤装の一部として扱っている飛行場姫の力を持ってしても、島全体の建造物をカバーするだけの力は無かった。*1

 

 将来的にもしかしたら新たな同胞(はらから)として並び立ってくれるかもしれないから、という若干の下心が無いわけでも無いが、客人を無碍に扱う真似だけはしたくなかった。

 

 とはいえ当のアンドロメダとしては半ば押し掛ける形で乗り込んでしまったという負い目から、私の事はあまり気を遣わなくて大丈夫ですと伝え、ただ、私のワガママに付き合わせてしまったにも関わらず、何かと骨を折ってくれた空母棲姫さんと、いつも親身に寄り添ってくれていた事で大好きで掛け替えのない存在となった駆逐棲姫お姉ちゃん、そして消耗著しい愛する妹であるアポロノームがゆっくり体を休める様にだけはしてもらいたとの要望を飛行場姫に頭を下げて願い出た。

 

 しかし駆逐棲姫はアンドロメダの(そば)を離れる気は毛頭なく、アポロノームも車椅子だと移動が億劫だからと言ってやんわりと断った。

 

 空母棲姫はラウンジのソファーで問題無いと言って、心配しなくて大丈夫だとアンドロメダに伝えた。

 

 

 最終的な折衷案として、先の休憩室を一応の宿舎として使用することとなったのだが、ベッドの用意だけは間に合わなかった。

 

 だがその事に関しては誰も文句は言わなかった。

 

 

 そして3人の真ん中にアンドロメダ、左右に駆逐棲姫とアポロノームが挟む形でその日は就寝した。

 

 その際に当たり前の様にアンドロメダを抱き枕にする駆逐棲姫と、それを嬉しそうに、さも当然の様に受け入れている姉の姿にアポロノームは目を白黒とさせ、また「アポロノームも私を抱き枕にしますか?」と笑顔で尋ねてくる姉に、いや寧ろ抱き枕にしてくれることを大いに期待しているとしか言えない、姉の期待に満ち溢れた眼差しに、アポロノームが大層困惑する事態が発生したとかしなかったとか…。

 

 

 そんな一悶着だらけの夜が明けつつある翌日の早朝、まだ日は上り切ってはいないが、外は薄暗くも白みを帯び出していた。

 

 起き出すにはまだ早く、誰もがもうひと眠りと考える様な、そんな時間帯。

 

 

 アンドロメダを抱き枕にしていた駆逐棲姫がモゾモゾと動き出し、自分をお姉ちゃんと呼んで懐いてくれた、本当に愛しくてたまらない大切な妹分であるアンドロメダを起こさないように、ゆっくりと上体を起こすと、その寝顔をそ~っと覗き込んだ。

 

 

 その幸せそうな寝顔を見て、安堵したかのような微笑みを浮かべる。

 

 

「よぉ、あんたも起きたのか?」

 

 

 反対側で眠っていたはずのもう一人の妹分*2であるアポロノームに声を、但し横で眠る姉のアンドロメダを起こさない様に気遣ってか小声ではあったが、突然声を掛けられたことで駆逐棲姫は思わず体をビクッと震わせそうになったが、既の所で堪えた。

 

 

「すまん。驚かすつもりは無かったんだが…」

 

 

 そう言って半眼で睨んで抗議の意志を示してきた駆逐棲姫(自称、姉)に謝罪し、上体を起こそうとしたが、自身の片腕に違和感があることに気付き、もう片方の手でシーツをそっと捲ると、その原因に思わず苦笑した。

 

 

 アンドロメダがアポロノームの服の袖をギュッと握り締めていたのだ。

 

 

 こりゃ下手に動けないなと思いながらも、握られている腕を支点として少しだけ体を起こして姉の寝顔を見遣る。 

 

 

「いい夢でも見ているんだろうな」

 

 

 姉の穏やかな寝顔を見て、口元に笑みを僅かに湛えながらそう小さく呟く。

 

 

 その呟きを聞いた駆逐棲姫は、少しだけ憂いを帯びた様な顔をしながら、こちらもアンドロメダ(愛しい妹分)を起こさないように注意しながら静かに語る。

 

 

「お姉さんは眠っている時、いつも魘されていました…」

 

「こんなに穏やかで、幸せそうなお姉さんの寝顔は初めてです…」

 

 特にこの時間帯が一番酷かったと付け加えられた。

 

 

 その言葉に、アポロノームは軽いショックを受けた。

 

 今の姉の寝顔からは、到底想像が出来なかった。

 

 

「本当にギリギリだったんだと思います…。お姉さんの心は、細い糸の上を不安定な姿勢で歩いていたかのような…」

 

 

 憂いを帯びた顔で語る駆逐棲姫の言葉を聞いて、先にこの世界に来ていた姉の心情を察するアポロノーム。

 

 姉の心の繊細さは、アンドロメダ姉妹ならば誰もが知っており、また一つの共通認識があった。

 

 

 姉は、アンドロメダは“()()()()()”な一面がある。

 

 

 親しい者が誰一人として居ない、世界で一人ぼっちだったという現実は、寂しがり屋な姉にとって途轍も無い精神的な負担と苦痛となっていたであろうことは、容易に想像が付いた。

 

 だからこそ、今目の前で姉の体をギュッと抱き締め、その温もりを与え続けてくれている駆逐棲姫の真摯で親身な態度に、姉は心惹かれたのだろう。

 

 

 自身の心が壊れ無い様にと、無意識の内に一種の自己防衛本能の働きがあったのかもしれないが。

 

 

「あんたがずっと姉貴のすぐ近くで寄り添ってくれていたから、姉貴は壊れずにここまでこれたんだ。そこは誇ってくれ」

 

 

 そのアポロノームからの感謝の気持ちを含んだ言葉に、駆逐棲姫は首を横に振る。

 

 

「私に出来たのは現状維持だけだよ。お姉さんの心を真に救ったのは、貴女が来てくれたお陰です…」

 

 

 アポロノームの言葉に、私は何も出来なかったと言って否定する駆逐棲姫。

 

 

 そんなことは無い!とアポロノームはつい声を上げそうになったが、既の所で堪えた。

 

 そこでふと気付いた。この2人、ある意味で似た者同士なのだと。

 

 姉のアンドロメダも、自身の功績に対して謙虚というかやや否定的なことをよく述べていた。

 

 そして何よりもアンドロメダには自身に対して自虐的な所があった。

 

 自身の出自や建造さ(生ま)れてからのこの方、常に政治的な建前やら本音やらに振り回され続けて来た。

 

 それらの煩わしい事に、半ば諦めの境地に達していた(ふし)があった。

 

 そして自分なんかよりも、と言って他人を立てる言動が多かった。

 

 

 根底は違うが、自分なんかと思う所、それに何よりも妹をとことん愛するその姿はまさしくアンドロメダと似ている。

 

 

 一瞬、アンドロメダがいずれ次女アルデバランの様に、姉が好き過ぎるあまりに姉至上主義となってしまうのか?という未来予想図が頭の中で浮かんだが、いやいくらなんでもそれは考え過ぎか?と思い直すが、アンドロメダは()()シスコンアルデバランの姉であるし、アンドロメダはアンドロメダで母親であるヤマトを狂愛するマザコンである。*3

 

 その愛のベクトルが駆逐棲姫にも向けられたら…。

 

 

 だがアポロノームはあることを失念していた。

 

 

 アルデバランのシスコンっぷりがあまりにも強過ぎるために霞勝ちだが、アンドロメダも妹達のことを大切な存在として慈しみ、とても愛して可愛がるシスコンでもあるということに。

 

 またなんだかんだ言って自身もアンドロメダのことが大好きだし、よく悪戯の標的にされていたが、同型の空母(タイプ)である妹のアンタレスのことを可愛がり何かと気に掛けていた。

 

 アンタレスもそんなアポロノームの事が好きだったが、何故か長姉アンドロメダに甘える時みたいに率直な態度にはなれず、愛情の裏返しからか、その表現が悪戯として表れていた。

 

 そして姉妹の中で最も影が薄いとの陰口を言われていたアキレスも、仲睦まじい姉妹達を見る事が大好きだったし、実はプチ姉至上主義者(アルデバラン)だったという噂もある。

 

 アンドロメダ(タイプ)の五姉妹は、程度の差はあれど全員シスコンだったと言えるのだ。

 

 

 閑話休題。

 

 

 駆逐棲姫はアンドロメダが“寂しがり屋”であることを、かなり早い段階から見抜いていた。

 

 

 だからこそ、アンドロメダが自分の事をお姉ちゃんと呼んでくれた事に、そしてアンドロメダが自分に心を開いてくれたという事に素直な喜びの感情が溢れた。

 

 

 だけど、どんなに頑張っても本当の姉妹の様にはなれないという達観にも似た気持ちもあった。

 

 

 そしてそれはある意味で証明された。

 

 

 夜な夜な、特に明け方になると魘されていたアンドロメダに、駆逐棲姫は抱き締めてあげることしか出来なかった。

 

 それによって魘される事はかなり落ち着く事が出来たが、今みたいな健やかで幸せそうな寝顔にはならなかった。

 

 その事実が、()()()()()()()()()()との覆しようのない、どうにもならない差の様に思えて、駆逐棲姫の心に暗い影を落としていた。

 

 

「おいおい、落ち込むことは無いだろう?俺とあんたとでは姉貴と過ごして来た時間の長さが違うんだぜ?」

 

 

 駆逐棲姫の心の内をある程度正確に見抜いたアポロノームが、そう声を掛ける。

 

 アンドロメダ姉妹の中で最も面倒見がよく、気遣い上手とされているアポロノームだからこそ、恩人であり、敬愛する姉が大切に思うヒトが落ち込んでいる姿は、見るに忍びなかった。

 

 

「だけどよ、姉貴が惚れたあんたが()()()()で諦めちまうのか?」

 

 

 駆逐棲姫が徐ろに顔を上げ、アポロノームの顔を見遣る。

 

 アポロノームの顔は、いつも浮かべる不敵な笑みでは無く、慈愛に満ちた微笑みを浮かべていた。

 

 その顔を見た駆逐棲姫は、ああ、やっぱりこの2人は姉妹なんだなぁと実感した。

 

 顔の作りは違っても、微笑みを浮かべた際に見せる雰囲気はアンドロメダと瓜二つだったのだ。

 

 

「これから長い付き合いになるんだ。あんただってもっと姉貴の掛け替えのないヒトになれるさ」

 

 

 そう言って駆逐棲姫の頭を撫でた。

 

 これは姉であるアンドロメダがいつも自分達にしてくれていたことを、こうすれば気分が落ち着くというのを経験から、そして本能的に理解していたからこそ、無意識の内に真似たのだ。*4

 

 アンドロメダよりも少しだけ力が強いが、それでもその手を通して伝わって来る温もりと、優しさに、駆逐棲姫は心が軽くなった様な気がした。

 

 そして次第に瞼が重くなり、駆逐棲姫はアンドロメダを再び抱き締めながら穏やかな寝息を立て出した。

 

 

 それを見たアポロノームは駆逐棲姫にシーツを掛け直してあげると、自身ももう一眠りしようかと思って横になったのだが。

 

 

「ありがとう。アポロノーム」

 

 

 いつの間に起きたのか、瞳を開けたアンドロメダが今まさに眠りに就こうとしていたアポロノームを微笑みながら見詰めていた。

 

 

「何だ?姉貴も起きていたのかよ?」

 

 

 そう落ち着いた様な体裁を装いながら喋るアポロノームだが、その内心はさっきまでの駆逐棲姫とのやりとりが聞かれたか?という気持ちでかなり焦っていた。

 

 

「はい。アポロノームが私にいい夢でも見ているんだろうな。と呟いた辺りから」

 

 

 その姉からの返答に、アポロノームは羞恥から顔を真っ赤に染めて身悶えた。

 

 

 全部聞かれてたのかよぉっ!?

 

 

 本人が聞いている前であの話は、流石のアポロノームでも恥ずかしくて仕方無かったのだ。

 

 

 穴があったら入りたい!とばかりに耳まで真っ赤になった顔を手で覆うアポロノームを見遣りながら、アンドロメダはその頭に手を伸ばして優しく撫でてあげた。

 

 

「ありがとうねアポロノーム。いつもこんな不甲斐無くて駄目な私を、陰日向に支えてくれて」

 

 

 優しくも、自身を卑下した陰のある言葉を紡ぐ姉に対して、アポロノームは「世界が変わっても、姉貴は変わらねぇな…」と心の中で嘆息した。

 

 

「姉貴…」

 

 

 だからこそ、アポロノームは悲しかった。

 

 今まで姉を()()()()()“地球連邦”という軛は、この世界には存在しないのだ。

 

 地球連邦航宙艦隊総旗艦というその“立場”に縛られ、姉は“自由”というものを奪われ、いや、自ら封じていた。

 

 本当ならば母さん、ヤマトさんにもっと甘えたい。褒めてもらいたい。抱き締めてもらいたい。頭を撫でてもらいたい。もっとその温もりを肌身で感じたい。そんな気持ちの一切に蓋をして、今まで振る舞っていた。

 

 …ある意味その反動が、自分を含めた誰に対しても優しく、慈しむという姉の振る舞いに繋がっていたのかもしれない。

 

 ならばせめて、この世界ではもっと自由に、自身の心が“こうありたい”と願い、思い描く様に振る舞ってもいいんじゃないか?もっと自分のありのままの気持ちを曝け出してもいいんじゃないか?

 

 そうアポロノームは心の底から思っていた。

 

 勿論、“向こう”にいた時と比べたら、姉は遥かに自由に振る舞っている。

 

 おそらく他の地球艦の連中が今の姉の姿を見たら、まず間違いなく思わず二度見、いや三度見くらいはしてしまうだろうと確信している。

 

 

 だが、それでもアポロノームからしたら何処かぎこちなく思えていたのだ。

 

 

 それが今確信へと変わった。

 

 

 姉の根幹は全く変わっていない事に。

 

 

 そしてあることに気付いた。

 

 

 姉は()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()としていることに。

 

 

 その事をアポロノームから語られたアンドロメダは、一瞬きょとんとした顔となった。

 

 

「…ヒトとは、常に演じ続ける生き物である」

 

 

 ポツリと呟かれたアンドロメダの言葉に、アポロノームは首を傾げた。

 

 

「誰の言葉だったかは忘れましたが、“ヒトとは産まれたその時から、誰かに望まれた、求められた姿や役を演じながらその生涯が過ぎ去っていく生き物である”と言い表した言葉だそうです」

 

 

 私にも当てはまる言葉ですね。と語るアンドロメダに、アポロノームはどう返していいのか分からず、困り果ててしまう。

 

 

 そんな妹の姿を見て苦笑するアンドロメダ。

 

 

「ふふ。ごめんなさいアポロノーム。そしてありがとう。私は幸せ者です。私のことを、心配してくれる貴女やお姉ちゃんがいてくれるお陰で、私は、この世界でも、孤独じゃ、ないんだと…、実感できます…」

 

 

「貴女や…、お姉ちゃんが、いてくれる……、だけで……、私は………」

 

 

 そこで言葉が途切れた。

 

 

 駆逐棲姫に抱かれている温もりと安心感からか、アンドロメダは再び瞼を閉じ、健やかな寝息を立てて眠りについていた。

 

 

 

 そんな姉の姿を見てアポロノームは申し訳無いという罪悪感に囚われ、視線を部屋の天井へと向ける。

 

 

 天井の一部、剥き出しの鉄骨の梁に完全装備に身を包んだアンドロメダとアポロノームの警務隊妖精達が控えており、アポロノームが視線を向けたことに気付いてサムズアップを返してきた。

 

 

 深海棲艦の事を信用し切った訳では無いアポロノームは、万が一を懸念してアンドロメダには内密のまま、自身の警務隊妖精に周辺警戒の指示を出したのだが、途中からそれに気付いたアンドロメダの警務隊妖精達が、自分達も協力すると願い出てきた。

 

 そしてハンガーの到る所に監視ポイントを設置し、交代で警戒の任に就いていた。

 

 

 アンドロメダがそれを知ったら止めただろうが、アポロノームとしたら万が一が現実に起きて、それによって姉を失うのではないかという不安があった。

 

 

 アポロノームもアンドロメダと同様に、姉妹を失う事に対して強い恐怖感をその心に抱いていた。

 

 

 だからこそ、万が一の時は再び自分を犠牲にしてでも!という思いでいた。

 

 

 だがそれはアンドロメダに対する二重の裏切りだった。

 

 

 自分との再会に、人目も憚らずに涙を流して喜んでくれたことに対して。

 

 

 そして何よりも、自分と恩義のある駆逐棲姫の2人と共にいられることに対して、大きな幸福感を感じている姉の気持ちを踏み躙ってしまったことに、途轍も無い罪悪感を感じていた。

 

 

「…何やってんだろうな、俺は」

 

 

 よかれと思ってやったことが、実際には空回りしていた挙げ句、逆にアンドロメダの負担や迷惑になりかねない事であることに気付き、アポロノームは自身の考えなさに対して腹が立ってきた。

 

 

 だが、思い返せばいつもそうだった。

 

 

 いつも考えが足りないばかりに、度々姉に迷惑ばかりかけていた。

 

 そしてその度に「大丈夫ですよ。貴女のその素早い決断力と行動力が、貴女の良いところなのですから。そう自分を卑下しないで下さい」と言って慰められていた。

 

 

 俺はいつもアンドロメダの姉貴に迷惑を掛けてばかりだ…!

 

 

 そう思うと段々と悲しくなってきて、瞳から涙が溢れて来た。

 

 

 その時、突然体が引っ張られて、頭がなんだかとても柔らかいものに包まれた感覚がした。

 

 

 何事かと思えば、寝惚けたアンドロメダがアポロノームの体を自身の胸に抱き寄せたのだ。

 

 

 突然の事態にアポロノームは内心で慌てふためくが、肌を通して、とくん…、とくん…、というなんだかとても優しい音が伝わって来ていることに気付き、なんだろう?と一瞬考えるが、すぐにそれが姉の体の中で脈打つ鼓動の音であると気付いた。

 

 

 その音を聞いていると、段々と心が落ち着いてきた。

 

 

 (ふね)の魂だった時には感じたことの無い、触れ合うことで感じる温もりとは違う不思議な、それでいてなんだかとても心が温かくなり、癒され満たされる感じがした。

 

 

 嗚呼…、これが生きているってことなんだ…。

 

 

 触れ合うことで直接感じる姉の温かい体の温もりと、肌を通して伝わってきた規則正しい鼓動を聞いて感じた心の温もりを感じたことで、さっきまでの泣き出しそうだったアポロノームの顔と心から悲しみの色は消えていた。

 

 

 

 …これは、癖になりそうだ。そう頭の片隅で思いながらも、瞼が次第に重くなっていることを自覚した。

 

 

 そしてアポロノームはアンドロメダの胸に抱かれたまま、再び眠りに就いた。

 

 

 

 その一部始終を妖精達がガン見していたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 余談だが、アポロノームの独断専行とも言える妖精達への警戒指示だが、アンドロメダは勘付いていた。

 

 元々アンドロメダも最低でも歩哨程度は立てようかな?と考えていたのだが、()()()()が気掛かりで取り止めた。

 

 

 飛行場姫は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言っていた。

 

 

 ということは、飛行場施設その物が飛行場姫の完全なるテリトリーであり、そこにいる限りは常に彼女から見られている可能性が非常に高い。

 

 

 そもそもここは深海棲艦の領域である以上、下手なことをすべきでは無いとの結論を出した。

 

 

 だが、アポロノームはそこまでは考えなかった様である。

 

 無論止めようとはしたが、アポロノームの指示の方が一歩早かった。

 

 その時には既に配置に付いてしまっていた。

 

 

 おそらく隠れたとしても、飛行場姫には手に取るようにその居場所は把握されてしまうだろう。

 

 

 そこでアンドロメダは万が一アポロノームの妖精が暴発することを警戒して、密かに自身の警務隊妖精に対して最悪の場合は力ずくでも止めるようにとの指示していた。

 

 

 そしてもしもの時には自身が全ての泥を被るという覚悟を決めていた。

 

 

 結論から言えば、飛行場姫もこの妖精達のことは完全に把握していたし、下手人がアポロノームであることも把握していたが、この事でアンドロメダが色々と気を遣っていることも気付いていたために、貸しと言うことで敢えて問題にはしなかった。

 

 

 

 ついでに言えば、寝落ちしながらアンドロメダが語った事だが、あれは寝落ちしたフリをしながらアポロノームに少しだけ釘を刺そうとしたものだったのだが、寝起きで頭がちゃんと回っていなかったためか、あまりにも遠回しな言い回しとなってしまったがために上手く伝わらず、泣き出してしまったアポロノームを見て傷付けてしまったと焦ってしまい、思わず寝惚けたフリをして抱き寄せてしまったのだった。

 

 そしてアポロノームが落ち着いたことで安堵して緊張の糸が切れてしまったためか、本当に寝落ちしてしまった。

 

 

 だがそれでも、今までになくとても幸せそうな寝顔であったと、一部始終を見届けていた妖精は仲間達に語ったという。

 

 

 また起床を告げに来た飛行場姫も、幸せそうに眠る3人の姿を見て思わずほっこりとしてしまい、本来の目的を忘れて暫しそのまま眺めていたという。

 

 

 

*1
飛行場姫曰く、自分の姉ならば片手間で島一つくらいならば侵蝕出来るだけの実力があるという。

*2
駆逐棲姫主張。

*3
そして父親と慕う沖田のことも愛しているファザコンでもある。

*4
但し、逆にテンションが爆上がりしてしまうというケースも偶にある。






 …おかしい。予定ではアンドロメダと駆逐棲姫お姉ちゃんが互いに甘え合い、アポロノームがそれに巻き込まれるという話にするハズだったのに、どうしてこうなった!?

 …多分書いたり消したりした影響かな?



 今回愚痴コーナーはお休みです。ネタは一杯あるのですが、投稿を優先致しました。




 それではこれにて失礼致します。励みや参考になりますので、お気が向きましたらお気軽に感想をよろしくお願いいたします。

この後深海棲艦の姫級同士による会議を予定しているのですが、その方法について。

  • 深海棲艦のルーツ(独自設定)による方法。
  • 人類の文明の利器、Zoomなどのを拝借。
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